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明細書 :超音波ガイドユニット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4560626号 (P4560626)
公開番号 特開2006-084018 (P2006-084018A)
登録日 平成22年8月6日(2010.8.6)
発行日 平成22年10月13日(2010.10.13)
公開日 平成18年3月30日(2006.3.30)
発明の名称または考案の名称 超音波ガイドユニット
国際特許分類 F16C  29/02        (2006.01)
FI F16C 29/02
請求項の数または発明の数 12
全頁数 12
出願番号 特願2005-099955 (P2005-099955)
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
優先権出願番号 2004241007
優先日 平成16年8月20日(2004.8.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年10月30日(2007.10.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】大岩 孝彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】上谷 公治
参考文献・文献 特開2005-256954(JP,A)
特開平08-170636(JP,A)
国際公開第03/076313(WO,A1)
特開昭63-109512(JP,A)
国際公開第2004/084396(WO,A1)
調査した分野 F16C 29/02
特許請求の範囲 【請求項1】
加振時の節位置に少なくとも1個の張出部を形成する共に水平設置されるロッド状のホーンと、該張出部の周面をガイド面として該ホーンの軸線方向に移動可能な物体であるスライダと、該ホーンの少なくとも1端面に連結固定される超音波振動子とを有し、該張出部はその周面が加振時の腹位置となる外郭寸法を有し、該超音波振動子の超音波振動を縦波としてホーンの端面からその軸線方向に加えると共に、該ホーンのポアソン効果現象により該超音波振動の伝播方向をホーンの軸線方向とは90度直角のホーンの張出部の周面方向へと伝播させて、前記張出部と前記スライダとの間に空気膜を形成して該スライダをホーンの張出部と非接触状態で浮上させることを特徴とする超音波ガイドユニット。
【請求項2】
棒状に形成されたホーンと、
前記ホーンの軸線方向両端にそれぞれ連結固定され互いに同期して該ホーンを軸線方向に加振する一対の超音波振動子と
前記ホーンにおける前記超音波振動子による加振振動の節位置に設けられ、該ホーンの軸線との直交面に沿って張り出した張出部と、
を有し、
前記ホーンが前記一対の超音波振動子にて加振されて生じるポアソン効果現象によって該張出部の周面側に超音波振動を伝播させ、該超音波振動によって前記張出部の周面と被支持体であるスライダとの間に空気膜を形成することで、該スライダを前記ホーンに対し非接触状態でかつ該ホーンの軸線方向に移動可能に支持するようにしたことを特徴とする超音波ガイドユニット。
【請求項3】
前記スライダは、前記張出部を微小なクリアランスをもって囲繞している請求項1又は請求項2記載の超音波ガイドユニット。
【請求項4】
前記張出部とスライダとを前記ホーンの軸線廻りの廻り止め形状としたことを特徴とする請求項3記載の超音波ガイドユニット。
【請求項5】
前記ホーンは、加振波長の1/2波長分程度の全長を有し、その中央に1個の前記張出部を形成したものであり、その軸線上又は軸線延長上の加振時の節位置に相当する部位近傍を支持して基台に連結固定し水平設置されることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項記載の超音波ガイドユニット。
【請求項6】
前記ホーンは、加振波長の1波長分程度の全長を有し、2個の前記張出部を形成したものであり、その軸線上又は軸線延長上の加振時の節位置に相当する部位近傍を支持して基台に連結固定し水平設置されることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項記載の超音波ガイドユニット。
【請求項7】
前記張出部は、その断面形状が四角形であり、その外郭寸法とは軸線からその角への距離で、加振波長の1/4波長分程度であることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項記載の超音波ガイドユニット。
【請求項8】
前記張出部は、その断面形状が四角形であり、その外郭寸法とは軸線からその辺への距離で、加振波長の1/4波長分程度であることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項記載の超音波ガイドユニット。
【請求項9】
前記スライダは、前記張出部の幅の2倍程度の幅を有することを特徴とする請求項5記載の超音波ガイドユニット。
【請求項10】
前記スライダは、前記張出部の幅+加振波長の1/2波長分程度の幅を少なくとも有することを特徴とする請求項6記載の超音波ガイドユニット。
【請求項11】
前記超音波振動子は、複数個取り付け、全同期して駆動されるものであることを特徴とする請求項1~請求項10の何れか1項記載の超音波ガイドユニット。
【請求項12】
前記超音波振動子は、前記ホーンの端面に連結固定された振動合成器の多分岐した各端面に連結固定されることを特徴とする請求項11記載の超音波ガイドユニット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械の案内要素、その中でも、特には、直動案内に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械の案内要素として、従来、滑りや転がり方式の案内要素が用いられてきたが、近年の超精密な加工機や測定機などでは、超高分解能の位置決めや高い運動精度が要求されるため、空気静圧案内が多く用いられるようになってきた。
この空気静圧案内は、運動精度が高く摩擦が無いなどの長所を有するが、反面、剛性や振動減衰性が低く、また、コンプレッサなどの空気源が必要であり、小型のポータブルな機器への適用は困難であるという問題があった。
空気源が不要な案内要素としては、動圧案内があるが、性能が移動速度や回転速度などに依存し易く、空気案内としてはあまり普及していない。
他方、相対する面を高周波振動させると、その間の空気圧力が高まり空気膜(スクイズ空気膜)が発生することが知られており、特開2003-83326号公報に見るような精密位置決め装置が提案されている。
【0003】
しかし、従来公報に提案されているこの構造では、テーブルがレールに跨り乗るように載置されているだけなので、軸受としての剛性が低いという問題がある他、テーブルを浮上させるに最も貢献するのはレールにおける加振時の腹位置付近に生ずる空気膜であろうと考えられることから、レール上にテーブルを浮上させるための空気膜を効率的に発生させているとは言えないものであった。

【特許文献1】特開2003-83326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、ホーンのポアソン効果現象により超音波振動を90度直角の方向へ伝播させることで空気膜を形成することを特徴とし、その際の空気膜を効率的に発生させることのでき、更には、低廉簡易に案内剛性を高くすることのできる、超音波ガイドユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の超音波ガイドユニットにおいては、請求項1記載の発明では、加振時の節位置に少なくとも1個の張出部を形成する共に水平設置されるロッド状のホーンと、該張出部の周面をガイド面として該ホーンの軸線方向に移動可能な物体であるスライダと、該ホーンの少なくとも1端面に連結固定される超音波振動子とを有し、該張出部はその周面が加振時の腹位置となる外郭寸法を有し、該超音波振動子の超音波振動を縦波としてホーンの端面からその軸線方向に加えると共に、該ホーンのポアソン効果現象により該超音波振動の伝播方向をホーンの軸線方向とは90度直角のホーンの張出部の周面方向へと伝播させて、前記張出部と前記スライダとの間に空気膜を形成して該スライダをホーンの張出部と非接触状態で浮上させることを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、ホーンのポアソン効果現象により超音波振動を90度直角の方向へ伝播させることで空気膜を形成するので、この空気膜によりホーン上の物体であるスライダを浮上させることができ、また、ホーンの下側に超音波振動子を設けないから、上下方向にコンパクトに形成することができる。
【0007】
特に、上記構成の超音波ガイドユニットでは、単なるロッド状のホーン全体をガイド面とするのではなく、加振時の節位置に相当する部位で、その周面が加振時の腹位置となる外郭寸法の張出部の周面をスライダのガイド面とするので、振動振幅の一番大きい箇所でスライダと対向する。しかも、その余の部分では近接して対向しないこととなるので、変な歪み等による干渉などを生ずることなく、超音波振動子の振動を効率良くガイド面における空気膜として生じさせることができる
【0009】
請求項記載の発明では、棒状に形成されたホーンと、前記ホーンの軸線方向両端にそれぞれ連結固定され互いに同期して該ホーンを軸線方向に加振する一対の超音波振動子と、前記ホーンにおける前記超音波振動子による加振振動の節位置に設けられ、該ホーンの軸線との直交面に沿って張り出した張出部と、を有し、前記ホーンが前記一対の超音波振動子にて加振されて生じるポアソン効果現象によって該張出部の周面側に超音波振動を伝播させ、該超音波振動によって前記張出部の周面と被支持体であるスライダとの間に空気膜を形成することで、該スライダを前記ホーンに対し非接触状態でかつ該ホーンの軸線方向に移動可能に支持するようにしたことを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、ホーンのポアソン効果現象により超音波振動の伝達方向が加振方向に対し変換され、この変換された超音波振動によって空気膜を形成するので、この空気膜によりホーンに対し被支持体であるスライダを非接触で支持することができる。しかも、単にホーン全体をガイド面とするのではなく、加振時の節位置に相当する部位で、その周面が加振時の腹位置となる外郭寸法の張出部の周面をスライダのガイド面とするので、ホーンにおける振動振幅の一番大きい箇所がスライダと対向する。しかも、ホーンにおけるその余の部分ではスライダと近接して対向しないこととなるので、変な歪み等による干渉などを生ずることなく、超音波振動子の振動を効率良くガイド面における空気膜として生じさせることができる。さらに、棒状のホーンを軸線方向両側から挟む一対の超音波振動子からの超音波振動が同期して1つのホーンに加えられることとなるので、振動が合成され、より大きな振動振幅が与えられ、案内剛性をより高めることができる。また、ホーンの軸線に対する放射方向外側に超音波振動子を設けないから、超音波ガイドユニットを軸線との直交方向にコンパクトに形成することができる。なお、棒状のホーンに断面形状には限定はない。
【0010】
請求項記載の発明では、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記スライダは、前記張出部を微小なクリアランスをもって囲繞していることを特徴としている。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、スライダ張出部を微小なクリアランスをもって囲繞しているので、もって、案内剛性を高くすることができる。
【0011】
請求項記載の発明では、請求項記載の発明において、前記張出部とスライドとを前記ホーンの軸線廻りの廻り止め形状としたことを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、廻り止め形状(非円形状)とされた張出部にスライダが微小なクリアランスを持って遊嵌することで、スライダのホーンに対する廻り止め構造を別途設けることなく、スライダの移動方向をホーンの軸線方向に沿う1自由度に規制することができる。
【0012】
また、請求項又は請求項記載の発明では、請求項1~請求項4の何れか1項記載の発明において、前記ホーンは、加振波長の1/2波長分程度の全長を有し、その中央に1個の張出部を形成したものであるか、加振波長の1波長分程度の全長を有し、2個の張出部を形成したものかであり、その軸線上又は軸線延長上の加振時の節位置に相当する部位近傍を支持して基台に連結固定し水平設置されることを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、安定性あるガイド面を確保し得て、超音波振動子の超音波振動を極力阻害しない状態として設置することができ、コンパクトで実用的な超音波ガイドユニットとして提供することができる。
【0013】
更に、請求項又は請求項記載の発明では、請求項1~請求項4の何れか1項記載の発明において、前記張出部は、その断面形状が四角形であり、その外郭寸法とは軸線からその角への距離であるか、軸線からその辺への距離かであり、加振波長の1/4波長分程度であることを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、スライダの4つの内側の角との間か、4つの辺の中央との間かにおいて、最大となる振動振幅を得て強い空気膜を発生させ、高い案内剛性を得ることができる。
【0014】
また、請求項又は請求項1記載の発明では、請求項又は請求項記載の発明において、前記スライダは、前記張出部の幅の2倍程度の幅を有するか、前記張出部の幅+加振波長の1/2波長分程度の幅を少なくとも有することを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、張出部とスライダとは相応の幅寸法同士をもって確実に対向することとなり、スライダの左右動範囲内において確実な案内剛性を有することができる。
【0015】
また、請求項1又は請求項1記載の発明では、請求項1請求項10の何れか1項記載の発明において、前記超音波振動子は、複数個取り付け、全同期して駆動されるものであるか、これに加えて、超音波振動子は、前記ホーンの端面に連結固定された振動合成器の多分岐した各端面に連結固定されることを特徴とする。
上記構成の超音波ガイドユニットでは、各超音波振動子からの超音波振動が1つのホーンに加振されることとなるので、振動が合成され、より大きな振動振幅が与えられ、案内剛性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、ホーンのポアソン効果現象により超音波振動を90度直角の方向へ伝播させることで空気膜を形成することができ、その際の空気膜を効率的に発生させることのでき、更には、低廉簡易に案内剛性を高くすることのできる、超音波ガイドユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
以下、本発明に係る超音波ガイドユニットについて、図1乃至4を参照して説明する。
10はロッド状のホーン、20はスライダ、30は超音波振動子、40はステー、50は基台であり、ホーン10は張出部としての径拡大部11を2箇所に形成しており、スライダ20はこの径拡大部11を囲繞して該径拡大部11の周面をガイド面として左右動自在である。超音波振動子30はホーン10の両端面15に連結固定され、また、ホーン10の径拡大部11はステー40を介して基台50に連結固定されて、超音波ガイドユニット1を構成し、これをベース60に水平設置して使用する。
【0019】
ホーン10は、超音波振動子30からホーン10に対して加える超音波振動の1波長分程度の全長を有し、加振時の節位置に相当する部位、言い換えれば、左右両方の端面15から各1/4波長分程度の位置を中心として、左右に適当な幅、例えば1/4波長弱の幅寸法Whをもって、径拡大部11を形成している。この径拡大部11は、縦断面形状が四角形状で、その周面が加振時の腹位置となる外郭寸法、すなわち、ホーン10の軸線Cから径拡大部11たるこの四角形状の角12への距離寸法を1/4波長分程度とした形状としている。このため、径拡大部11以外の部分は、断面形状が円形の円柱状であり、全体としては、図4に示すように2箇所に幅広な四角形状のフランジ部がある円柱体、角状鉄アレイのような外観を呈している。なお、径拡大部11の軸線Cにより近い部位を座ぐって肉薄とした締着部13にステー40の片側をネジ止めし、他方を基台50にネジ止めして一体と成し、ベース60に水平設置可能としている。このホーン10は、狭義には超音波振動の増幅部材として把握されるが、広義には振動伝達部材として把握される。すなわち、ホーン10は、超音波振動を伝播する部材であれば足りる。
【0020】
スライダ20は、2個の径拡大部11を跨ぎ、且つ、径拡大部11の幅Wh+1/2波長分程度の寸法より更に広幅の寸法Wsを有して、左右動したときにも径拡大部11から外れない寸法関係にすると共に、径拡大部11を微小なクリアランスをもって囲繞して、ホーン10上で左右動自在となっている。
【0021】
ホーン10の径拡大部11とスライダ20との間のクリアランスは、案内要素としての剛性に大きく影響するので狭い方が望ましいが、図5乃至6に示す方法により、狭くて精度の高いクリアランスでホーン10の径拡大部11を囲繞することのできるスライダ20を製作することができる。すなわち、上下方向に関しては、図5に示すように、スライダ20の左右部材たるスライダ片21の上下面をホーン10の径拡大部11と同時に研削して同じ高さの寸法とした上で、図6に示すように、上下部材たるスライダ片22との間にワッシャーなど既知の厚さのスペーサー23を挟み込んで組み立てれば良い。また、左右方向に関しては、上下部材たるスライダ片22に多少余裕のある座ぐり穴を明けた上で、シクネステープなどのスペーサー24を挟み込んで組み上げ、その後にスペーサー24を取り去れば良い。
【0022】
なお、ホーン10やスライダ20の材質としては、必ずしも金属材料に限られるものではないが、軽くて剛性のあり超音波振動を減衰しない材料が望ましい。また、超音波振動子30は、これに限るものではないが、ワッシャー形状のピエゾ素子二枚を重ね合わせてボルトでユニット化した「ボルト締めランジュバン振動子」などと称して市販されているものが好適である。超音波振動子30は、ホーン10の両端面15にボルトで連結固定され、図示しない従来公知の発信器を備えた電源回路からの通電を受けて超音波領域の振動を発生し、その超音波振動を端面15からホーン10の軸線方向に加振するものであるが、ホーン10は、後述する振動方向変換体としても機能し、超音波振動の伝播方向をホーンの軸線方向とは90度直角のホーンの周面方向へと伝播する。
【0023】
以上の実施態様の超音波ガイドユニット1では、単なるロッド状のホーンをガイド面とするのではなく、ロッド状のホーン10の加振時の節位置に形成した径拡大部11の周面をスライダ20のガイド面としている。これは、軸線上での寸法長さとして、ホーン10の端面15から1/4波長分程度の位置を幅中心として、更に、その軸線から90度直角方向へ1/4波長分程度の寸法の処が、径拡大部11の外周面となっており、この結果、径拡大部11の周面たるガイド面は、振動の腹位置となり振動振幅の一番大きい箇所となっている。また、径拡大部11は相応の幅寸法Whを有しており、スライダと近接して対向する面はこの径拡大部11の幅寸法Whの部分であるので、スライダ20に対しては振動振幅の一番大きい部分を中心に近接して対向していることとなる。逆に、その余の部分では近接して対向しないこととなるので、その余の部分で変な歪みによる干渉などを生ずることがなく、超音波振動子の振動を効率良くガイド面におけるスクイズ空気膜として生じさせることができるようになっている。
【0024】
また、スライダ20は、径拡大部11の周面をガイド面としてホーン10上を左右動可能なように、該径拡大部11を微小なクリアランスをもって囲繞すると共に、径拡大部11の幅より広幅寸法Wsを有している。この幅寸法としては、ホーン上の径拡大部が、1個の場合には、径拡大部の幅の2倍程度の幅、2個の場合には、径拡大部11の幅Wh+加振波長の1/2波長分程度の幅を少なくとも有することが望ましい。このような構成を採ることにより、径拡大部11とスライダ20とは相応の幅寸法同士をもって確実に対向することとなり、スライダの左右動範囲内において確実な案内剛性を有することができることとなる。
【0025】
そこで、このような超音波ガイドユニット1において、左右の超音波振動子30を同調させて駆動すれば、超音波振動子30の振動は、ホーン10の両端面15からホーン10にその軸方向の縦振動として伝播する。このとき、ホーン10の全長は超音波振動子30で加振する振動の1波長分程度の長さとしてあるので、ホーン10上には、図3に示すような定常波が生ずる。すなわち、ここでは超音波を縦波と考えると、ホーン10内部を伝わる超音波はその周波数fと音速Cによって決まる波長λを持ち、周期的に増減する。ここで、λ=C/f[λは波長(m)、Cは固体(ホーン)内を伝播する縦波の音速(m/s)、fは超音波の振動数(Hz)]である。
【0026】
そして、この場合、ホーン10の両端面15で変位の振幅は最大となり、そこから内側にλ/4の距離で最小となり、更にλ/4の距離で再び最大となる。また、応力は、この変位とは逆に、両端面15で最小となり、そこからλ/4の距離で最大となる。一般に、振動振幅が最大となる箇所を腹、最小となる箇所を節と呼んでいる。このことは、ホーン10の軸線上で両端面15からλ/4の位置は振動振幅が零であるので、その部位に極力近い径拡大部11の内側を座ぐって肉薄とした締着部13を支持すれば、超音波振動子30の超音波振動を極力阻害しない状態で設置することができることとなる。なお、電源回路の発信周波数は多少とも調整できるようにしてあるのが普通であるから、加振波長も当然に幅を持った値となり、また、雰囲気温度や長時間駆動により超音波振動子30やホーン10が発熱、熱膨張などもするので、ホーンの全長等の各寸法は厳密に1ポイント的に定まるものではなく、最頻稼働予定の周波数などから設計し、その後に試行してみて、真に最大振幅等が得られる寸法を確認してから、最終製作するのが望ましい。その意味で、加振波長を基準にした場合の寸法は、「程度」とある程度の幅をもった寸法としていることを理解すべきである。
【0027】
ここで、ホーン10の軸線方向の縦振動は90度直角の方向へ変換することができることを、図7を用いて説明する。今、図7(a)のように振動方向変換体70に右方向から圧縮荷重Pが掛かると、振動方向変換体70の水平方向の長さは短くなる。このとき、振動方向変換体70の材料はポアソン効果のために体積を一定に保とうとするので、上下方向には長くなる。逆に、図7(b)のように引張荷重Sが働くと、水平方向の長さは大となるが、上下方向には縮まることになる。つまり、この動作によって、振動方向を90度変換することができるのである。このとき、加振面71から図の固定点Zまでの距離及び固定点Zから案内面72までの距離を、加振振動の1/4波長分となるよう設定すると、加振面71及び案内面72が振動振幅の腹位置となって、効率良く、振動を加振面71から案内面72へと伝達できることとなる。
【0028】
そこで、径拡大部11をホーン10の両端面15から1/4波長分程度の位置を中心に左右、且つ、その軸線から断面四角形の径拡大部11の角12までの距離も1/4波長分程度の寸法で形成すると、超音波振動子30の振動はこの径拡大部11の4つの角12の処で最大の振幅を生ずるようになる。このことは、スライダ20の内側の4つの角を中心にしてスクイズ空気膜を発生させることにつながり、スライダ20はホーン10の径拡大部11の外周面上で浮上するように離反し、外周下面、外周左右面でも同じような離反が起きるので、径拡大部11とは非接触状態となり、径拡大部11の外周面をガイド面とするリニアガイドとして機能するようになる。
【0029】
以上の実施の形態の超音波ガイドユニットによれば、ホーン10や超音波振動子30は可動部分や撓みが生ずる部分がなくて剛性が高く、スライダ20もロ字形の閉じた構造としているため剛性が高く、スライダ20は直動方向の1自由度以外は全て拘束されているため、また、クリアランスは一定とすることができているので、振動振幅の増大によりスクイズ空気圧を高め、案内剛性を向上させることが可能となる。したがって、超音波振動子30の超音波振動を、スライダ20がホーン10と対向する面、すなわち径拡大部11の外周面に、効率良く伝えることができて、より大きなスクイズ空気膜を発生し、スライダ20をクリアランスの間で浮上させることができ、剛性の高い案内要素として提供することが可能となる。また、超音波振動子30はホーン10の端面15に連結固定しているので、上下方向にコンパクトなユニットとなっている。
なお、浮上中のスライダに横方向で非接触の応力を加えてスライダを直動させるのは勿論であり、また、浮上状態で、あるいは、移動後の位置で浮上中断させて、スライダ上のワークの測定や加工等を行うこと勿論である。
【0030】
また、上記の実施の形態では、径拡大部をその縦断面形状が四角形状のものとしたが、本発明はこれに限らず、他の実施の形態として、三角形等の多角形とすることもできるし、円形とすることもできる。多角形であると、スライダとの間のクリアランスの加工精度を得るのが困難となり、円形であると、ホーンの軸線周りに自由度が生じて、別途の回転止め機構を必要としてしまうので、事実上は四角形状が最も望ましいと言える。また、上記の実施の形態では、ホーンの全長を1波長分程度の寸法として径拡大部を2つ形成したが、例えば、図8に示すように、ホーンの全長を1/2波長分程度の寸法として、その中央に径拡大部11を1個形成するようにし、更には、片方の端面15のみに超音波振動子30を連結固定するようにしても良い。また、上記の実施の形態では、径拡大部は、縦断面形状が四角形状で、ホーンの軸線Cから径拡大部たるこの四角形状の角12への距離寸法を1/4波長分程度として構成したが、軸線Cからその辺への距離Lを1/4波長分程度の寸法として構成しても良い。この場合には、スライダの上下左右の各スライダ片の中央において振動振幅が最大となり、これに呼応したスクイズ空気膜が発生して、浮上し、案内剛性を高めることができる。
【0031】
更に他の実施の形態として、図9及び図10に示すように、水平の交差方向に1/4波長分づつの距離で4分岐する振動合成器80を形成し、その3つの端面15に超音波振動子30を各連結固定し、残る端面をホーン10の片側又は両側の端面15に連結固定し、この振動合成器80における分岐の中心点付近の支持部81をステー41に連結固定して、基台乃至ベースに支持させるようにしても良い。この場合、ホーン10上の径拡大部11はステーを取り付ける為に座ぐる必要はなく、振動合成器80の支持部81にてステー41を取り付けるので、加振時の節位置に最も近い位置で支持固定することが可能となり、超音波振動の伝播を阻害することが一番少ない。図示しないが、この支持固定方法を採るためだけに、ホーンの全長を2波長分程度の寸法として、中央から各1/4波長分だけ左右外側に2個の径拡大部を形成し、両端から各内側に1/4波長の位置には、この振動合成器におけると同じ支持部だけを形成して支持固定しても良い。この点からすれば、本発明では、径拡大部を形成するのはホーンの端面から1/4波長の奇数倍の位置で、その1番目と最後の形成を省略して製作する場合も含むものであると理解すべきである。
【実施例】
【0033】
本発明の実施の形態による具体的実施例では、ジュラルミン17Sと呼ばれるアルミ合金を、全長120mmで、円柱部分の直径が31mm、断面正四角形の1辺が53mmの径拡大部の2個あるロッド状のホーンに加工し、図1乃至4に示すと同様な構造の超音波ガイドユニットを作成した。その他の寸法は、この全長120mmを1波長分の長さとして設計し、径拡大部の幅は22mm、スライダの幅は130mm、ホーンとスライダのクリアランスは、上下方向、左右方向とも10μmのスペーサーを使用して形成した。また、超音波振動子としては、本多電子株式会社製の「ボルト締めランジュバン振動子(HEC-3039P4B)」を使用し、周波数38.5~40.5kHzの間で駆動した。
【0034】
このように製作した超音波ガイドユニットのスライダに測定用基準ブロックゲージや反射テープを貼着して、上下方向や左右方向の変位を光ファイバー変位計で測定したところ、上下方向で39.7kHz、左右方向で39.6kHzのときに、径拡大部の外周面が一番振幅し、その際の各振幅は、2.473μm、2.043μmであった。
また、上下方向の振幅が最大となる39.7kHzで加振し、浮上中のスライダを20mm直動させた際の誤差は、上下方向のピーク間で1.572μmであった。さらに、案内剛性としては、上下方向で1.0975N/μm、左右方向で0.2651N/μmであり、何れも、従来構造に比べて性能向上できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態の超音波ガイドユニットを一部は断面として示す正面図。
【図2】図1の超音波ガイドユニットの径拡大部における縦断面図。
【図3】図1の超音波ガイドユニットのホーンのみを取り出し、これと加振波形を同位相的に示す横断面図。
【図4】図1の超音波ガイドユニットのホーンのみを取り出して示す斜視図。
【図5】図1の超音波ガイドユニットのホーンの径拡大部と左右部材たるスライダ片とを同時に加工する際の状態を示す縦断面図。
【図6】図1の超音波ガイドユニットのホーンを囲繞してスライダを組み立てる際の状態を示す縦断面図。
【図7】振動方向が90度変換される様子を示す概要説明図。
【図8】他の実施の形態である超音波ガイドユニットの一部は断面として示す正面図。
【図9】更に他の実施の形態である超音波ガイドユニットの一部は断面として示す正面図。
【図10】図9の超音波ガイドユニットの振動合成器と超音波振動子を取り出して示す平面図。
【符号の説明】
【0036】
1 超音波ガイドユニット
10 ホーン
11 径拡大部(張出部)
12 角
13 締着部
15 端面
20 スライダ
21 左右部材たるスライダ片
22 上下部材たるスライダ片
23 スペーサー
24 スペーサー
30 超音波振動子
40 ステー
41 ステー
50 基台
60 ベース
70 振動方向変換体
71 加振面
72 案内面
80 振動合成器
81 支持部
C ホーンの軸線
L 辺への距離寸法
P 圧縮荷重
S 引張荷重
Wh 径拡大部の幅寸法
Ws スライダの幅寸法
Z 固定点
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9