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明細書 :(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4521527号 (P4521527)
公開番号 特開2005-077145 (P2005-077145A)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成17年3月24日(2005.3.24)
発明の名称または考案の名称 (ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法
国際特許分類 C01B   3/02        (2006.01)
G01N  27/26        (2006.01)
G01N  31/16        (2006.01)
FI C01B 3/02 A
G01N 27/26 341A
G01N 31/16
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2003-305085 (P2003-305085)
出願日 平成15年8月28日(2003.8.28)
審査請求日 平成18年7月5日(2006.7.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】中島 隼人
個別代理人の代理人 【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100123548、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 晃二
【識別番号】100092015、【弁理士】、【氏名又は名称】桜井 周矩
【識別番号】100093713、【弁理士】、【氏名又は名称】神田 藤博
【識別番号】100091063、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 英夫
【識別番号】100102727、【弁理士】、【氏名又は名称】細川 伸哉
【識別番号】100117813、【弁理士】、【氏名又は名称】深澤 憲広
審査官 【審査官】大竹 秀紀
参考文献・文献 特開平10-252699(JP,A)
特開昭63-248701(JP,A)
特開昭58-015002(JP,A)
桜井誠(外4名),熱化学水素製造ISプロセスにおけるブンゼン反応高ヨウ素濃度化のための検討,化学工学会秋季大会研究発表講演要旨集,1998年 9月 1日,p. 98
桜井誠(外4名),熱化学水素製造ISプロセスにおける二液相分離特性の検討,化学工学会年会研究発表講演要旨集,1999年 2月25日,p. 359
清水三郎(外3名),ニッケル・ヨウ素・硫黄系熱化学水素製造プロセスIV. ブンゼン反応,電気化学および工業物理化学,1985年 2月 5日,第53巻、第2号,p. 114-118
調査した分野 C01B 3/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
熱化学水素製造プロセスにおいて使用する、ヨウ素とヨウ化水素酸と硫酸と水とを含む溶液中のヨウ素、ヨウ化水素酸及び硫酸の濃度(mmol/g)を定量分析する方法であって、
当該溶液から供試試料を分取して水で希釈して試料(1)を調整し、当該試料(1)の上澄み液を試料(1)’として採取し、
当該溶液から別の供試試料を分取してヨウ化カリウムを添加し、さらに水で希釈して試料(2)を調整し、
当該試料(2)の一部を分取して、ヨウ化カリウム及び水を添加して、標準液として0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを用いるヨウ素還元滴定を行い、ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量A(ml)を求め、
当該試料(1)’の一部を分取して、ヨウ化カリウム及び水を添加して、標準液として0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを用いるヨウ素還元滴定を行い、ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量B(ml)を求め、
当該試料(1)’の別の一部を分取して、水を加えて、標準液として0.1規定の水酸化ナトリウムを用いる中和滴定を行い、中和滴定用の標準液の消費量C(ml)を求め、
当該試料(1)’のまた別の一部を分取して、塩酸及び水を添加して、標準液として0.02mmol/mlのヨウ素酸カリウムを用いるヨウ素酸塩滴定を行い、ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量D(ml)を求め、
当該試料(2)の希釈率と当該ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量Aに基づいて当該溶液中のヨウ素濃度(mmol/g)を求め、
当該ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量A及びBに基づいて当該試料(1)’の希釈率を求め、
当該試料(1)’の希釈率と当該ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量Dに基づいて当該溶液中のヨウ化水素酸濃度(mmol/g)を求め、
当該試料(1)’の希釈率と当該中和滴定用の標準液の消費量C及び当該ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量Dに基づいて当該溶液中の硫酸濃度(mmol/g)を求める、
定量分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学水素製造プロセスに関し、より詳しくは、熱化学水素製造プロセスにおいて使用する(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼しても地球温暖化を招く二酸化炭素を排出しないので、環境に優しい将来エネルギーとして期待されている。近年、水素を製造する方法として、高温の核熱を用いて水を分解し水素を製造する、熱化学水素製造プロセスが開発されている(例えば、非特許文献1参照のこと)。
【0003】
この熱化学水素製造プロセスは、次の三つの反応から構成されている。
【0004】
【化1】
JP0004521527B2_000002t.gif

【0005】
反応(1)はブンゼン反応として知られており、この反応により二種類の酸(ヨウ化水素酸と硫酸)が生成される。反応(2)、(3)では、反応(1)により生成されたそれぞれの酸が熱分解され、水素及び酸素に加えて、同時に、反応(1)の原料であるヨウ素及び二酸化硫黄が生成される。これらの反応を閉じた系で行うことにより、水及び熱を供給するだけで、循環物質であるヨウ素及び二酸化硫黄を消費することなく、水素と酸素とを得ることができる。
【0006】
ここで、反応(1)のxは反応以外に多量のヨウ素を必要とすることを表している。ヨウ素はヨウ化水素酸に溶解するため、ヨウ化水素酸の密度は硫酸の密度よりも大きくなる。したがって、反応(1)により生成した酸溶液は、密度差により軽液相(硫酸を主成分とし、ヨウ素及びヨウ素水素酸を不純物として含む)と重液相(ヨウ素及びヨウ素水素酸を主成分とし、硫酸を不純物として含む)とに分離され、次の処理工程に送られる。
【0007】
これらの相の組成(ヨウ素/ヨウ化水素酸/硫酸)を知ることは、処理工程での操作条件を決定するために重要であり、その分析には従来、イオンクロマトグラフィーやICPを利用する方法があった。しかしながら、イオンクロマトグラフィーは前処理に数時間を要し、ICPは測定機器が高価であり、前処理を必要とするという不都合がある。
【0008】

【非特許文献1】中島隼人ら、外3名,熱化学法ISプロセスの閉サイクル連続水素製造試験,化学工学論文集,化学工学会,1998年,第24巻,第2号,p.352-355
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、主として熱化学水素製造プロセスにおいて有用な、(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法であって、前処理を含む分析時間を短縮することができ、また安価な分析機器を使用することができる分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、要するに、(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法であって、ヨウ素還元滴定、中和滴定、ヨウ素酸塩滴定を組み合わせて分析することを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、熱化学水素製造プロセスにおいて使用する、ヨウ素とヨウ化水素酸と硫酸と水とを含む溶液中のヨウ素、ヨウ化水素酸及び硫酸の濃度(mmol/g)を定量分析する方法であって、
当該溶液から供試試料を分取して水で希釈して試料(1)を調整し、当該試料(1)の上澄み液を試料(1)’として採取し、
当該溶液から別の供試試料を分取してヨウ化カリウムを添加し、さらに水で希釈して試料(2)を調整し、
当該試料(2)の一部を分取して、ヨウ化カリウム及び水を添加して、標準液として0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを用いるヨウ素還元滴定を行い、ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量A(ml)を求め、
当該試料(1)’の一部を分取して、ヨウ化カリウム及び水を添加して標準液として0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを用いるヨウ素還元滴定を行い、ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量B(ml)を求め、
当該試料(1)’の別の一部を分取して、水を加えて、標準液として0.1規定の水酸化ナトリウムを用いる中和滴定を行い、中和滴定用の標準液の消費量C(ml)を求め、
当該試料(1)’のまた別の一部を分取して、塩酸及び水を添加して、標準液として0.02mmol/mlのヨウ素酸カリウムを用いるヨウ素酸塩滴定を行い、ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量D(ml)を求め、
当該試料(2)の希釈率と当該ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量Aに基づいて当該溶液中のヨウ素濃度(mmol/g)を求め、
当該ヨウ素還元滴定用の標準液の消費量A及びBに基づいて当該試料(1)’の希釈率を求め、
当該試料(1)’の希釈率と当該ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量Dに基づいて当該溶液中のヨウ化水素酸濃度(mmol/g)を求め、
当該試料(1)’の希釈率と当該中和滴定用の標準液の消費量C及び当該ヨウ素酸塩滴定用の標準液の消費量Dに基づいて当該溶液中の硫酸濃度(mmol/g)を求める、
定量分析方法が提供される。
【0011】
また、本発明は、要するに、(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法であって、電位差滴定が可能な滴定装置を使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法によれば、(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析において、前処理を含む分析時間の短縮と分析機器に要する経費の節約が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法を提供する。
本明細書中において、「(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液」とは、熱化学水素製造プロセスにおけるヨウ素、ヨウ化水素酸、硫酸を含む全ての溶液をいうものとする。以下、本発明の定量分析法について順を追って説明する。
【0014】
(分析用試料の調製)
(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の原液を1g量りとり、水を加えて試料重量を100gとし、試料(1)とする。これは、ヨウ素還元滴定、中和滴定、ヨウ素酸塩滴定の全ての滴定分析に用いる。試料(1)はヨウ素濃度により固体のヨウ素が沈殿することがあり、その場合には、上澄み液を試料(1)'とし、次に述べる試料(2)を加えて調製する。
【0015】
次いで、原液を1g量りとり、これに数gのヨウ化カリウムと10ml程度の水を加えて溶解し、ヨウ素の沈殿がないのを確認した後、水を加えて試料重量を合計で100gとして試料(2)とする。これは、ヨウ素還元滴定に用いる。
【0016】
(滴定分析)
本発明では、以下の3つの滴定分析を使用する。
1.ヨウ素還元滴定によりヨウ素(I2)を測定する。
標準液:0.1規定のチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3
【0017】
【化2】
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【0018】
2.中和滴定により[H+]を測定する。
標準液:0.1規定の水酸化ナトリウム
3.ヨウ素酸塩滴定により[I-]を測定する。
標準液:0.02モル液のヨウ素酸カリウム(KIO3
【0019】
【化3】
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【0020】
以下、補正の必要な試料(1)'の場合について述べる。
はじめに、試料(2)から10gを量りとり、これに数gのヨウ化カリウムと水を加えて溶解し約40mlとして、ヨウ素還元滴定により終点を求め、この時の標準液の消費量A(ml)を得る。次に、試料(1)'を用いて同様の操作を行い標準液の消費量B(ml)を得る。また、試料(1)'から10gを量りとり、これに水を加え約40mlとして、中和滴定により終点を求め、標準液の消費量C(ml)を得る。さらに、試料(1)'から10gを量りとり、2規定の塩酸数mlと水を加え約40mlとしてヨウ素酸塩滴定を行い、標準液の消費量D(ml)を得る。
【0021】
(各成分濃度の算出)
原液中の各成分の濃度(mmol/g)は、試料の希釈率X(調製試料重量/原液量)に標準液の消費量Y(ml)と規定度N(またはモル濃度M)を乗じたものを、試料の重量W(g)で除して求められる。
【0022】
【数1】
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【0023】
(規定度の単位は(当量/リットル)であるが、チオ硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウムともに1モルが1当量に相当するので便宜的に(mmol/ml)と表す。)
【0024】
a.原液のヨウ素(I2)濃度
試料(2)の分析結果を用いて以下の計算を行う。(7)式において、希釈率X=(100g/1g)=100、ヨウ素還元滴定の分析で得た標準液の消費量A(ml)、チオ硫酸ナトリウムの規定度N=0.1mmol/ml、試料の重量W=10gを代入する。また、(5)式に示したようにヨウ素(I2)は2モルのチオ硫酸ナトリウムと反応するので、(7)式を2で除してヨウ素の濃度が得られる。
【0025】
【数2】
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【0026】
b.希釈率の補正
試料(1)'の希釈率X'は、滴定試料の調製中にヨウ素が沈殿したため、上澄み液の希釈率となり、次式で求められる。
【0027】
【数3】
JP0004521527B2_000007t.gif

【0028】
沈殿ヨウ素量は、原液のヨウ素量から上澄み液のヨウ素量を差し引いて以下のように求められる。
【0029】
【数4】
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【0030】
また、上澄み液のヨウ素濃度は、試料(1)'についてヨウ素還元滴定を行うことにより得た標準液の消費量B(ml)を用いて(8)式から(B/2)が求められるから、
【0031】
【数5】
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【0032】
したがって、沈殿ヨウ素量は(10)式から(11)式を差し引いて、
【0033】
【数6】
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【0034】
となり、試料(1)'の希釈率は、
【0035】
【数7】
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【0036】
となる。厳密には、上澄み液のヨウ素濃度を求める時の希釈率はX'を用いるべきであるが、(8)式で用いた値(X=100)でも、各成分濃度への影響は0.2%程度なので実用上さしつかえない。
【0037】
c.原液のヨウ化水素酸(HI)濃度
試料(1)'の分析結果を用いて以下の計算を行なう。ヨウ化水素酸量は[I-]量に等しいので、(7)式に希釈率X'、ヨウ素酸塩滴定により得た標準液の消費量D(ml)、ヨウ素酸カリウムのモル濃度M=0.02mmol/ml および試料の重量W=10gを代入する。また、(6)式に示したようにヨウ素酸塩滴定ではHI 5モルとヨウ素酸カリウム 1モルが反応するので、(7)式に5を乗じて
【0038】
【数8】
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【0039】
が得られる。
d.原液の硫酸濃度
試料(1)'の分析結果を用いて以下の計算を行う。硫酸量は[H+]総量からヨウ化水素酸に起因する[H+]量([Iー]量に等しく、(14)式の値)を差し引いた殘量を硫酸の当量数2で除して求められる。[H+]総量は、(7)式に希釈率X=X'、中和滴定で得た標準液の消費量C(ml)、水酸化ナトリウムの規定度N=0.1mmol/ml、試料の重量W=10gを代入し、
【0040】
【数9】
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【0041】
が得られる。したがって、硫酸濃度は((15)式-(14)式)/2となり
【0042】
【数10】
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【0043】
が得られる。
以上、本発明の(ヨウ素+ヨウ化水素酸+硫酸)溶液の定量分析法は、電位差滴定が可能な滴定装置を使用することにより行うことができる。