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明細書 :マグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体及びその金属間化合物を含有する合金超伝導体並びにこれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3575004号 (P3575004)
公開番号 特開2002-211916 (P2002-211916A)
登録日 平成16年7月16日(2004.7.16)
発行日 平成16年10月6日(2004.10.6)
公開日 平成14年7月31日(2002.7.31)
発明の名称または考案の名称 マグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体及びその金属間化合物を含有する合金超伝導体並びにこれらの製造方法
国際特許分類 C01B 35/04      
C04B 35/58      
C22C  1/00      
C22C  1/04      
C22C 23/00      
H01B 12/00      
H01B 13/00      
FI C01B 35/04 ZAAC
C04B 35/58 105A
C22C 1/00 Q
C22C 1/04 C
C22C 23/00
H01B 12/00
H01B 13/00 563A
H01B 13/00 565Z
請求項の数または発明の数 22
全頁数 12
出願番号 特願2001-001948 (P2001-001948)
出願日 平成13年1月9日(2001.1.9)
審査請求日 平成13年1月9日(2001.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
【識別番号】593177077
【氏名又は名称】秋光 純
発明者または考案者 【氏名】秋光 純
【氏名】銭谷 勇磁
【氏名】村中 隆弘
【氏名】中川 鑑応
【氏名】永松 純
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
【識別番号】100069958、【弁理士】、【氏名又は名称】海津 保三
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 Jun Nagamatsu et al.,Superconductivity at 39K in magnesium diboride,Nature,2001年 3月 1日,Vol.410,p.63-64
D. C. Larhalestler et al.,Strongly linked current flow in polycrystalline forms of the superconductor MgB2,Nature,2001年 3月 8日,Vol.410,p.186-189
A. V. Tsvyashchenko et al.,Electric field gradients in MgB2 synthesized at high pressure:111Cd TDPAC study and ab initio,Solid State Communications,2001年 7月17日,Vol.119, No.3,p.153-158
調査した分野 C01B 35/04
JICST(JOIS)
CAPLUS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウム(Mg)とホウ素(B)とからなる金属間化合物であることを特徴とする、金属間化合物超伝導体。
【請求項2】
MgとBとからなる金属間化合物を含有し、かつ、単一の又は複数の金属元素を含有する合金であることを特徴とする、合金超伝導体。
【請求項3】
前記金属間化合物超伝導体は、化学組成式Mg1 2 で表される組成を有し、Mg層とB層が交互に積層した六方晶AlB2 型結晶構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の金属間化合物超伝導体。
【請求項4】
前記合金超伝導体は、前記金属間化合物を含有し、組成式Mg1-x 2+y (0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で表される組成を有することを特徴とする、請求項2に記載の合金超伝導体。
【請求項5】
前記金属間化合物超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)39Kを有することを特徴とする、請求項1に記載の金属間化合物超伝導体。
【請求項6】
前記合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)39Kを有することを特徴とする、請求項2に記載の合金超伝導体。
【請求項7】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする、金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項8】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、真空中で加熱して形成することを特徴とする、金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項9】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、加圧不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする、金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項10】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、加圧加熱成形して形成することを特徴とする、金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項11】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。
【請求項12】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、真空中で加熱して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。
【請求項13】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、加圧不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。
【請求項14】
Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、加圧加熱成形して形成することを特徴とする、合金超伝導体の製造方法。
【請求項15】
前記不活性ガス中の加熱は、700~2000℃の温度で行うことを特徴とする、請求項7に記載の金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項16】
前記真空中での加熱は、2×10-2Pa以下の真空中で、650~1100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項8に記載の金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項17】
前記加圧不活性ガス中の加熱は、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項9に記載の金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項18】
前記加圧加熱成形は、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で加熱することを特徴とする、請求項10に記載の金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項19】
前記不活性ガス中の加熱は、700~2000℃の温度で行うことを特徴とする、請求項11に記載の合金超伝導体の製造方法。
【請求項20】
前記真空中での加熱は、2×10-2Pa以下の真空中で、650~1100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項12に記載の合金超伝導体の製造方法。
【請求項21】
前記加圧不活性ガス中の加熱は、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項13に記載の金属間化合物超伝導体の製造方法。
【請求項22】
前記加圧加熱成形は、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で加熱することを特徴とする、請求項14に記載の合金超伝導体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大規模な超伝導送電、超伝導電力貯蔵、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス等に利用でき、特に、高い超伝導転移温度を有し、製造が容易で、かつ、展性、延性に優れた全く新規な金属間化合物超伝導体及び合金超伝導体、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超伝導体には、単体金属からなる超伝導体、化合物からなる超伝導体、合金からなる超伝導体、及び複合酸化物からなる超伝導体等が知られている。
単体金属からなる超伝導体には、Pb、Nb等が良く知られているが、超伝導転移温度が低く実用性に欠ける。
金属間化合物からなる超伝導体には、NbGe、NbGa、NbAl、及びNbSnに代表されるAl5型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体、及びPbMoに代表されるシェブレル型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体等が知られている。また、NbBに代表されるAlB型結晶構造を有する金属間化合物超伝導体も知られているが、超伝導転移温度(Tc)が極めて低い(Tc=0.62K,Journal of the Less-Common Metals,67(1979)249-255)。これらの金属間化合物超伝導体には、NbGe(超伝導転移温度:約23K)のように、超伝導転移温度が比較的高いものもあるが、歪みに弱く、また脆いと言った欠点を有している。
【0003】
複合酸化物からなる超伝導体には、La2-x BaCuOの組成に代表されるLa系酸化物超伝導体、YBaCu7-x の組成に代表されるY系酸化物超伝導体、BiSrCan-1 Cu2nの組成に代表されるBi系酸化物超伝導体、TlBaCan-1 Cu2nの組成に代表されるTl系酸化物超伝導体、HgBaCaCuの組成に代表されるHg系酸化物超伝導体等が知られている。これらの複合酸化物からなる超伝導体は、超伝導転移温度が高く、なかには150Kに達するものもある。これらの複合酸化物系超伝導体は、八面体型、ピラミッド型、または平面型からなるCuO超伝導層と、La,Ca、Y,Bi、あるいはHg等の原子と酸素とからなるブロック層(超伝導層とは結晶構造が異なる)とが、互いに積層して構成されるペロブスカイト構造を有している。このように、結晶構造が極めて複雑であることから、再現性よく、大量に生産することが困難であり、また、複合酸化物であることから、展性、延性といった特性に乏しく、超伝導電線として使用することが難しい。
【0004】
合金からなる超伝導体には、Nb-Ti合金が良く知られており、展性及び延性に優れるため、超伝導電線及び超電導磁石等に広く使用されている。しかしながら、合金からなる超伝導体は、超伝導転移温度が低く(Nb-Ti合金で最良のものでも約9Kである)、改善が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑み、超伝導転移温度が高い金属間化合物超伝導体、及び超伝導転移温度が高く、かつ、展性及び延性に優れた合金超伝導体を提供することを目的とする。さらに本発明は、再現性よく、製造コストが低い、これらの超伝導体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の金属間化合物超伝導体は、マグネシウム(Mg)とホウ素(B)とからなる金属間化合物超伝導体であることを特徴とする。
また、本発明の合金超伝導体は、MgとBとからなる金属間化合物を含有し、かつ、単一の又は複数の金属元素を含有することを特徴とする。
前記金属間化合物超伝導体は、化学組成式Mgで表される組成を有し、Mg層とB層が交互に積層した六方晶AlB型結晶構造を有することを特徴とする。
また、前記合金超伝導体は、MgとBとからなる金属間化合物を含有し、組成式Mg1-x (0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で表される組成を有する合金であることを特徴とする。
この構成による金属間化合物超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)39Kを有しており、従来知られているいずれの金属間化合物超伝導体より超伝導転移温度が高く、また、従来知られているAlB型結晶構造を持つ金属間化合物よりも遙かに超伝導転移温度が高い。
また、この構成による合金超伝導体は、超伝導転移温度(Tc)39Kを有しており、従来知られているいずれの合金超伝導体よりも超伝導転移温度が高く、かつ、展性及び延性に富んでいる。
【0007】
上記構成のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体によれば、超伝導転移温度(Tc)が高い超伝導体として、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス等に利用することができる。
さらに、上記構成のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体を含有する合金超伝導体を用いれば、超伝導転移温度が高く、かつ、展性、延性に優れた超伝導体として、超伝導送電、超伝導電力貯蔵等の超伝導電線に使用でき、また、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス用材料として使用できる。
【0008】
また、本発明の金属間化合物超伝導体の製造方法は、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする。
また、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型して真空中で加熱して形成することもできる。
さらに、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、加圧不活性ガス中で加熱して形成することもできる。
さらにまた、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1:2で混合し、ペレット状に成型し、加圧加熱成形して形成することもできる。
【0009】
さらに、本発明の金属間化合物を含有する合金超伝導体の製造方法は、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、不活性ガス中で加熱して形成することを特徴とする。
上記合金超伝導体の製造方法では、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、真空中で加熱して形成することもできる。
また、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、加圧不活性ガス中で加熱して形成することもできる。
さらにまた、Mgを含む原料粉末とBを含む原料粉末とを、化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合し、ペレット状に成型し、加圧加熱成形して形成することもできる。
【0010】
また、金属間化合物超伝導体の製造方法において、不活性ガス中の加熱は、700~2000℃の温度で数秒以上で行えば好ましい。
さらに、金属間化合物超伝導体の製造方法において、真空中での加熱は、2×10-2Pa以下の真空中で、650~1100℃の温度で数分以上で行えば好ましい。
また、金属間化合物超伝導体の製造方法における加圧不活性ガス中の加熱は、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で数分以上加熱してもよい。
さらに、金属間化合物超伝導体の製造方法における加圧加熱成形は、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で数分以上加熱するようにしてもよい。
【0011】
また、合金超伝導体の製造方法における不活性ガス中の加熱は、700~2000℃の温度で数秒以上加熱してもよい。
さらに、合金超伝導体の製造方法における真空中での加熱は、2×10-2Pa以下の真空中で、650~1100℃の温度で数分以上加熱するようにしてもよい。
また、合金超伝導体の製造方法における加圧不活性ガス中の加熱は、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で数分以上で行うこともできる。
さらに、合金超伝導体の製造方法における加圧加熱成形は、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で数分以上加熱するようにしてもよい。
【0012】
上記構成の金属間化合物超伝導体の製造方法によれば、本発明のマグネシウム(Mg)とホウ素(B)とを含む金属間化合物超伝導体を再現性よく、かつ、容易に製造することができる。
また、上記構成の金属間化合物を含有する合金超伝導体の製造方法によれば、金属間化合物を含有する合金超伝導体を再現性よく、かつ、容易に製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
最初に、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の結晶構造を説明する。
図1はこの発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の結晶構造を示す図である。
図2は図1の結晶構造をさらに解り易くするための図で、(a)は側面図、(b)は平面模式図である。
図1及び図2に示すように、本発明の金属間化合物超伝導体は、化学組成式Mg1 2 で表され、六方晶AlB2 型結晶構造を有している。
図3は、下記に説明する製造方法によって形成した本発明の金属間化合物超伝導体の粉末X線回折結果を示す図である。
X線回折測定は、二軸X線回折測定装置(RIGAKU社製,RINT2000)を用いて行った。
図3の粉末X線回折測定のパターンから、結晶系が六方晶であり、空間群p6/mmmに属することが解り、また、a軸及びb軸長が0.3083nm、c軸長が0.3527nmであることが解る。
図4は、この粉末X線回折測定のパターンから単位胞内のMgとBの原子座標を求めたものである。図4から明らかなように、B原子は、ab面内で互いに最密に配列している3個のMg原子の中心に、かつ、c軸方向のMg原子の配列の中間に位置していることが解る。
図3及び図4から明らかなように、本発明の金属間化合物超伝導体は、図1及び図2に示した六方晶AlB2 型結晶構造を有している。
【0014】
次に、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の超伝導特性について説明する。
図5は、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の抵抗の温度特性の測定結果を示す図である。
電気抵抗の測定は、四探針法で行った。
図5から、温度が低下するに従って電気抵抗が下がり、39Kで急峻に電気抵抗が0になっていることが解る。すなわち、本発明の金属間化合物超伝導体は、超伝導転移温度39Kを有している。
なお、超伝導転移温度は、電気抵抗の立ち下がり温度Tconset、及び電気抵抗の立ち上がり温度Tczeroで定義されるが、本発明の金属間化合物超伝導体は、Tconset=39K、Tczero=38Kである。
次に、本発明の金属間化合物超伝導体の磁化率(Susceptibility)の測定結果を示す。
【0015】
図6は、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の磁化率の温度特性の測定結果を示す図である。
磁化率の測定は、直流磁化率測定装置(カンタム・デザイン社製磁気特性測定システム,MPMSシリーズMPMSR2)を使用した。
図6から明らかなように、Tc=39Kから低温側で負の磁化率、すなわち反磁性を示しており、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物は、超伝導転移温度Tc=39Kを有する超伝導体であることが解る。
図6において、零磁場で冷却した場合とH(印加磁場)=100Oeで冷却した場合を示している。磁場冷却で磁化率が小さいのは、進入磁束の存在を示しており、第2種超伝導体であることを示している。
【0016】
次に本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体について説明する。
図7は、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の粉末X線回折の測定結果を示す図である。
測定に用いた合金超伝導体は、下記に説明する製造方法で形成したものであり、組成Mg0.33を有している。測定方法は図3の場合と同じである。
図7において、回折ピークは、Mg金属(六方細密結晶構造)の面指数にすべて一致しており、また、図中に矢印で示した回折角位置にMg金属間化合物に基づく回折強度がわずかに観測されている。すなわち、本発明の合金超伝導体は、マグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有した合金超伝導体であることが解る。
【0017】
つぎに、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の超伝導特性を説明する。
図8は、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の電気抵抗の温度特性の測定結果を示す図である。この図8中に超伝導転移温度付近の特性を拡大して図示している。
図8から明らかなように、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体は、超伝導転移温度Tc=39Kを有する超伝導体である。
【0018】
次に、本発明の合金超伝導体の磁化率(Susceptibility)の測定結果を示す。
図9は、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の磁化率の温度特性の測定結果を示す図である。
磁化率の測定法は、図6の測定と同じである。
図9から明らかなように、Tc=39Kから低温側で負の磁化率、すなわち反磁性を示しており、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体は、超伝導転移温度Tc=39Kを有する超伝導体であることが解る。
図9において、零磁場で冷却した場合とH(印加磁場)=100Oeで冷却した場合を示している。磁場冷却で磁化率が小さいのは、進入磁束の存在を示しおり、第2種超伝導体であることを示している。
【0019】
次に、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体及びマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の製造方法を説明する。
以下に説明する本発明の製造方法によれば、金属間化合物超伝導体になるか、または合金超伝導体になるかは、混合した原料粉末のMgとBの化学組成比によって定まる。すなわち、化学組成比Mg:B=1:2で混合されている場合には、混合粉全体が、Mgの組成式で表される六方晶AlB型結晶構造の単相の金属間化合物超伝導体となる。
また、混合粉が化学組成比Mg:B=1-x:2+y,(0<x<1,-2<y<0及び0<y<2)で混合されている場合には、上記の金属間化合物を含有する合金超伝導体となり、使用目的に応じて組成比を変えることができる。例えば、Mgの組成比を大きくすれば、展性及び延性に優れた超伝導電線を製造することができる。
Mgの原料粉末には、Mg粉末又はMgO粉末を使用することができ、また、Bの原料粉末にはB粉末を使用できる。
【0020】
本発明の金属間化合物超伝導体及び合金超伝導体の製造方法として、いくつか例を挙げることができる。
第1の方法は、Mg粉末、B粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、不活性ガス雰囲気中において、アーク溶解法、プラズマアーク溶解法、又は、高周波溶解法等の公知の加熱方法を用いて700~2000℃の温度で数秒以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。
【0021】
第2の方法は、Mg粉末、B粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、2×10-2Pa以下の真空中で、650~1100℃の温度で数分以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。
【0022】
第3の方法は、Mg粉末、B粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、HIP加圧装置(例えば、神戸製鋼社製,高温高圧雰囲気炉)等を用いて、不活性ガスを充填し、1~200MPaの不活性ガス圧力中で、600~1100℃の温度で数分以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。
【0023】
第4の方法は、Mg粉末、B粉末を撹拌装置で混合して混合粉末を形成し、この混合粉末をペレット状に成型したものを、立方体アンビル加圧装置等の加圧装置を用いて、0.1~6GPaの圧力を加えながら、700~1400℃の温度で数分以上加熱することからなり、この方法によって容易に形成できる。
高圧力は、粒界結合を促進するために必要であり、高温度は、超伝導相を成長するために必要である。
【0024】
なお、本発明の金属間化合物超伝導体及び合金超伝導体は、上記の多結晶焼結体に限らず、多結晶バルク体、大型単結晶、又は薄膜であってもよい。
公知の鍛造装置、超高圧加圧加熱合成装置等のバルク体作製装置を用いれば、軽量、高硬度、及び耐腐食性に優れた多結晶バルク体の金属間化合物超伝導体を製造できる。
また、大型単結晶金属間化合物超伝導体は、再結晶法、単純引き上げ法、浮遊帯域溶融法、フラックス法等の公知の単結晶育成法を使用し、適切なるつぼを使用し、雰囲気制御を行って製造できる。
また、金属間化合物超伝導体の薄膜は、MgとBの組成比が1:2となるような気相源を用いた化学気相蒸着法、又は、MgとBの組成比が1:2であるターゲットをスパッタして形成するスパッタ法を用いて製造できる。また、金属間化合物超伝導体の薄膜を付着させる基板として、Cuなどの金属基板、セラミックス基板、または、金属基板の上にセラミックスを被覆した複合基材等を用いることができる。用途に合わせて適宜の基板を選択すればよい。
また、MgとBの組成比において、展性、延性に富んだMgの組成比を大きくして、または、展性、延性に富んだ他の金属を混合して合成することによって、展性、延性に優れた超伝導合金を製造できる。この超伝導合金は、圧延、押し出し等の加工技術を使用すれば、極細多芯形超伝導線材、超伝導細線、又は、超伝導合金線に加工することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体は、超伝導転移温度が高く、かつ、製造が容易であるから、高性能のジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス等に利用すれば、極めて有用である。
また、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体は、超伝導転移温度が高く、展性、延性に優れ、かつ、製造が容易であるから、大規模な超伝導送電、超伝導電力貯蔵、高性能なジョセフソン素子、高周波素子等の超伝導エレクトロニクス等に利用すれば、極めて有用である。
また、本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の製造方法、及びその金属間化合物を含有する合金超伝導体の製造方法を用いれば、極めて再現性よく、容易に、かつ、低コストで、金属間化合物超伝導体並びに金属間化合物を含有する合金超伝導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の結晶構造を示す図である。
【図2】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の結晶構造を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面模式図である。
【図3】本発明の金属間化合物超伝導体の粉末X線回折測定結果を示すグラフである。
【図4】粉末X線回折測定のパターンから単位胞内のMgとBの原子座標を求めたものである。
【図5】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の抵抗の温度特性の測定結果を示すグラフである。
【図6】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物超伝導体の磁化率の温度特性の測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の粉末X線回折の測定結果を示すグラフである。
【図8】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の電気抵抗の温度特性の測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明のマグネシウムとホウ素とからなる金属間化合物を含有する合金超伝導体の磁化率の温度特性の測定結果を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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