TOP > 国内特許検索 > 木質系熱圧成形材料の製造方法 > 明細書

明細書 :木質系熱圧成形材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4794076号 (P4794076)
公開番号 特開2003-011109 (P2003-011109A)
登録日 平成23年8月5日(2011.8.5)
発行日 平成23年10月12日(2011.10.12)
公開日 平成15年1月15日(2003.1.15)
発明の名称または考案の名称 木質系熱圧成形材料の製造方法
国際特許分類 B27N   1/00        (2006.01)
B27N   5/00        (2006.01)
FI B27N 1/00
B27N 5/00 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2001-203247 (P2001-203247)
出願日 平成13年7月4日(2001.7.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年3月13日 日本木材学会発行の「第51回日本木材学会大会研究発表要旨集」に発表
審査請求日 平成20年6月4日(2008.6.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】金山 公三
【氏名】古田 裕三
【氏名】今西 祐志
個別代理人の代理人 【識別番号】100102004、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 政彦
審査官 【審査官】木村 隆一
参考文献・文献 特開平10-166323(JP,A)
特開2001-001318(JP,A)
特開平11-077622(JP,A)
特開平07-178727(JP,A)
特開昭60-206604(JP,A)
調査した分野 B27N 1/00-9/00
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
木質系材料を細かく粉砕して微粉末とし、これを水蒸気で処理して軟化させて流動性を持たせ、金型内に流し込んで熱圧するか、あるいは微粉末を金型に入れ、水蒸気処理を行いながら圧締し、成形した後、冷却して固めることにより、任意の三次元形状を付与したプラスチック類似の木質系成形材料製造する方法であって、
前記木質系材料を、0.1~1500μmの粒径に細かく粉砕し、かつ分級によって粒径を1~1000μmに調整して微粉末とし、少なくとも50MPa以上の圧力で圧締し、木粉を流動化させて成形することを特徴とする木質系成形材料の製造方法。
【請求項2】
前記木質系材料を、細かく粉砕し、かつ分級によって粒径を90~355μmに調整る、請求項に記載の木質系成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記水蒸気が、170~230℃の温度域のものである、請求項1に記載の木質系成形材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック類の代替となる、任意の三次元形状を付与した木質系成形材料の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、木粉等の木質系材料に所定の温度での水蒸気処理を施すことにより流動性を与え、木粉等の木質系材料に任意の三次元形状を付与した成形体を作製することを可能とする、新しい木質系成形材料の製造方法、及び木質系材料が本来持っている生分解性という長所を損なうことのない、資源・環境問題に対応し得る新しいタイプの木質系成形材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木質系材料の中でも、木材は、加工性に富んだ材料であり、「切る」「削る」「接合する」などの加工方法によって、広く一般に用いられている材料である。該木材は、場合によっては、大きい面積を持った面材、あるいは非常に長い軸材として使用されることもあり、その際には、木材をある程度細かくして「接着する」ことが行われる。しかし、このような加工方法の場合は、複雑な三次元形状を付与することができず、材料の用途が限定される。そこで、従来、任意の三次元形状を付与した製品を製造するために、細かく粉砕した木材に大量の樹脂を混入して原料に流動性を持たせ、これを溶融して金型に流し込み、冷却・固化させる成形加工が行われている。
上記先行技術に関連する文献を以下に例示する。
(1)日本木材学会編:「木材の加工」、文永堂出版、pp.1-9(1991)
(2)日本木材学会編:「すばらしい木の世界」、海青社、pp.46-49(1995)
(3)日本木材学会編:「木質資源材料」、海青社、pp.139-186(1999)
【0003】
しかしながら、従来の成形技術の場合、原料に流動性を持たせ、金型の隅々まで原料を流し込んで複雑な三次元形状を付与した材料を製造するために、原料に樹脂を重量比で40%程度混入する必要がある。
このように、従来の成形技術は、細かく粉砕した木材を大量の樹脂と混合させて固めることを基本とするものであり、木材が本来持っている生分解性という長所を損なうものとなっており、廃棄の際に問題が生じる。そして、木材と樹脂を混合した材料を、逆に木材と樹脂に分離することが不可能であるため、リサイクルの際に問題が生じる。また、現在は、埋蔵資源の枯渇が懸念されている状況にあるので、埋蔵資源を由来とする樹脂を利用した成形技術においては、可能な限り樹脂の割合を抑える工夫が必要とされるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、木質系材料の持つ生分解性という利点を生かし、資源・環境問題に対応し得る新しい木質系成形材料を製造することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、木粉等の木質系材料に所定の温度での水蒸気処理を施すことにより原料に流動性を持たせ、これを成形することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、再生産可能な資源である木材のみを原料として、接着剤を使うことなく、複雑な三次元形状を付与した材料を、樹脂を混入することなく環境負荷の小さい形で成形することからなる木質系成形材料の製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、プラスチック類の代替となる、任意の三次元形状を付与した木質系成形材料を簡便な操作で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)木質系材料を細かく粉砕して微粉末とし、これを水蒸気で処理して軟化させて流動性を持たせ、金型内に流し込んで熱圧するか、あるいは微粉末を金型に入れ、水蒸気処理を行いながら圧締し、成形した後、冷却して固めることにより、任意の三次元形状を付与したプラスチック類似の木質系成形材料製造する方法であって、
前記木質系材料を、0.1~1500μmの粒径に細かく粉砕し、かつ分級によって粒径を1~1000μmに調整して微粉末とし、少なくとも50MPa以上の圧力で圧締し、木粉を流動化させて成形することを特徴とする木質系成形材料の製造方法。
前記木質系材料を、細かく粉砕し、かつ分級によって粒径を90~355μmに調整る、前記()に記載の木質系成形材料の製造方法。
)前記水蒸気が、170~230℃の温度域のものである、前記(1)に記載の木質系成形材料の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、原料である木質系材料の微粉末を水蒸気で処理して流動性を向上させた後、金型内に圧入して冷却・固化させることにより、任意の三次元形状を付与した木質系成形材料を製造することを特徴とするものである。
本発明において、原料の木質系材料は、適宜のものでよく、特に制限されるものではない。木質系材料の微粉末は、例えば、木材チップを乾燥した状態でスパイラルミル等で粉砕し、ふるいによる分級を行って作製される。この場合、好適には、木粉粒子の形状は、球状に近くて長細くなく、粒径0.1~1500μmの粒径に微粉化されたものであり、かつ分級によって粒径1~1000μmに調整したものであることが望ましい。
【0007】
次に、この木粉を水蒸気で処理して軟化させて流動性を持たせ、金型内に流し込んだ後、熱圧するか、あるいは木粉を金型に入れ、水蒸気処理を行いながら圧締し、成形加工する。この場合、金型としては、好適には、例えば、ピストンシリンダ金型が使用されるが、木粉を押出成形あるいは射出成形できるものであれば適宜のものでよく、特に制限されるものではない。圧締の圧力は50MPa程度であり、より好ましくは、100MPa以上である。ここで、水蒸気処理とは、木粉をある温度の水蒸気にある時間さらすことを意味し、例えば、木粉を入れた圧力容器を高温の水蒸気で満たして一定時間処理することなどを意味する。
例えば、水蒸気処理は30分程度行われるが、この水蒸気処理は、木粉粒子の硬さを低下させて木粉を流動化させればよく、その処理時間は、特に制限されるものではない。次いで、これを室温(約20℃)に冷却し、固化させることにより、所望の三次元形状を付与した材料が作製される。
【0008】
本発明の木質系成形材料の製造方法によると、例えば、木粉に水蒸気処理を施すことによって、木粉粒子を軟化させ、それにより、木粉の流動性を向上させることができる。その後、木粉を金型内に圧入することによって金型の隅々まで原料である木質系材料の微粉末が行きわたることとなり、これを冷却・固化させることで、複雑な三次元形状を付与した材料を成形・作製することができる。
前記水蒸気の温度としては170℃以上、より好適には180~230℃が望ましく、それにより、木質系材料の微粉末の粒子が著しく軟化され、木粉の流動性を大きく向上させることができる。この場合、170℃を下回ると、木質系材料の微粉末の粒子があまり軟化されず、木粉の流動性を十分に向上させることができない。
なお、本発明において、原料である木質系材料の微粉末は、特に木粉に限定されるものではなく、例えば、光合成によって炭素を固定して成長する植物一般に対しても、本発明の製造方法は適用可能である。
【0009】
本発明による木質系成形材料を金属やプラスチックを原料とした材料の代替とすることにより、製品の廃棄の際の環境負荷を小さく抑えることが可能となり、同時に、当該木質系成形材料には樹脂を混入していないので、リサイクルの際に木材と樹脂を分離するという問題が生じることを回避できる。更には、本発明の木質系成形材料は、再生産可能な資源である木材等の植物材料のみを原料としているために、資源問題に対する根本的な解決策となり得る。
本発明により得られる木質系成形材料を、金属やプラスチックを原料として製造された材料の代替、例えば、電化製品の筐体の代替などとして用いることにより、材料の廃棄やリサイクルに関連するいわゆる資源・環境問題に対する解決策となることが期待できる。
【0010】
【作用】
本発明は、木粉等の木質系材料を所定の温度での水蒸気処理を施すことにより、流動性を持たせ、金型内に流し込んで熱圧するか、あるいは微粉末を金型に入れ、所定の水蒸気処理を行いながら圧締し、成形した後、冷却して固めることで、任意の三次元形状を付与した木質系成形材料を製造するものである。例えば、所定の粒径に粉砕された木粉に170℃以上、より好適には180~230℃の温度での水蒸気処理を施すことによって、木粉粒子を軟化させ、それにより、木粉の流動性を向上させることで、木粉が金型の隅々まで行きわたることを可能とし、これを冷却・固化させることで、金型の複雑三次元形状に対応した複雑形状を付与した材料に成形加工することが可能となる。水蒸気処理の温度を所定の温度域に調整することにより木粉の流動性を向上させることができ、また、木粉粒径を所定の範囲に調整することにより成形体の弾性率、曲げ強度を制御することができる。
【0011】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)製造方法
スギとヒノキの混合チップを100℃で乾燥した状態でスパイラルミルを用いて粉砕し、ふるいによる分級を行って原料木粉を得た。用意した木粉の粒径は250~355μmである。図1に示すように、金型A、金型B及び木粉1.5gをこの順に金型Cに入れ、30minの水蒸気処理を行った後、5minの圧締を行った。金型内部の隅々まで木粉が行きわたって成形が完了すれば、T字型の成形体が得られるようにした。圧締圧力は139MPaである。なお、作業性や将来の環境問題への対応を考慮して接着剤は使用しなかった。
【0012】
(2)結果
得られた成形体を図2に示す。同図において、水蒸気処理温度は、上から順に80、130、175℃である。80℃の水蒸気処理の場合、木粉は金型内をほとんど流動していないが、水蒸気処理温度が高くなるにつれて金型内の隅々まで木粉が流動するようになり、175℃の水蒸気処理の場合には金型の隅々まで完全に木粉が行きわたっていることが分かる。これにより、十分な温度での水蒸気処理は、木粉の流動性の向上に有効であることが分かった。
【0013】
実施例2
(1)製造方法
スギとヒノキの混合チップを100℃で乾燥した状態でスパイラルミルを用いて粉砕し、ふるいによる分級を行って原料木粉を得た。用意した木粉の粒径は90μm以下、106~150、150~180、180~250、250~355μmである。木粉1.5gを金型に入れ、30minの水蒸気処理を行った後、30minの圧締を行い、円形断面棒 (断面直径3mm、長さ30mm) を作製した。圧締圧力は139MPaである。作業性や将来の環境問題への対応を考慮して接着剤は使用していない。作製した円形断面棒について、中央集中負荷による3点曲げ試験を行って、弾性率及び曲げ強度を調べた。
【0014】
(2)結果
図3に、成形体の曲げ試験結果のうち、木粉粒径とかさ密度及び弾性率との関係を示す。木粉粒径が変化しても成形体のかさ密度はほとんど変動しないが、弾性率は大きく変動して、木粉粒径が150~180μmの場合に最大値4GPaを示している。図4に、木粉粒径とかさ密度及び曲げ強度との関係を示す。曲げ強度についても、先の弾性率と同様な傾向が見られ、木粉粒径が変化しても成形体のかさ密度はほとんど変動しないが、曲げ強度は大きく変動して、木粉粒径が150~180μmの場合に最大値26MPaを示している。
【0015】
図5に、曲げ試験を終えた試験体の破断面のSEMを示す。これらを見ると、成形後も原料である木粉の形状が残っており、木粉粒径が小さい場合には繊維が短くて空隙が小さいこと、木粉粒径が大きい場合には繊維が長くて空隙が大きいことが分かる。強度的には、繊維が長くて空隙が小さい方が有利であると考えられるが、曲げ試験の結果は、木粉粒径が106~150μm程度の場合に最大値を示した。これは、繊維長と空隙サイズのバランスがとれていたことによるものと考えられる。
【0016】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、木質系材料を細かく粉砕して微粉末とし、これを水蒸気で処理して軟化させて流動性を持たせ、例えば、金型内に流し込んで熱圧し、成形した後、冷却して固めることを特徴とする、任意の三次元形状を付与した木質系成形材料の製造方法に係り、本発明によれば、1)プラスチック類の代替となる、任意の三次元形状を付与した新しいタイプの木質系成形材料を製造することができる、2)木材等の植物材料のみを原料として、複雑な三次元形状を付与した成形材料を簡便な操作で作製することが可能となる、3)本発明の木質系成形材料の製造方法を用いることにより、金属やプラスチックを原料とした材料の代替材を、環境・資源問題に対応した形で作製することが可能となる、4)大量に発生する廃木材のリサイクル方法として有用である、という格別の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法による木粉の成形手順を示す。
【図2】水蒸気処理温度を様々に変えて作製した成形体の違いを示す。
【図3】本発明の製造方法により作製した成形体の、木質系材料の微粉末の粒径とかさ密度、弾性率の関係を示す。
【図4】本発明の製造方法により作製した成形体の、木質系材料の微粉末の粒径とかさ密度、及び曲げ強度の関係を示す。
【図5】本発明の製造方法により作製した成形体の3点曲げ破断面のSEMを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4