TOP > 国内特許検索 > シリコーンラダーポリマーを用いる新規イオン感応膜 > 明細書

明細書 :シリコーンラダーポリマーを用いる新規イオン感応膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4013033号 (P4013033)
公開番号 特開2003-114212 (P2003-114212A)
登録日 平成19年9月21日(2007.9.21)
発行日 平成19年11月28日(2007.11.28)
公開日 平成15年4月18日(2003.4.18)
発明の名称または考案の名称 シリコーンラダーポリマーを用いる新規イオン感応膜
国際特許分類 G01N  27/414       (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI G01N 27/30 301G
G01N 27/46 351J
G01N 27/30 301R
G01N 27/30 301W
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2001-308173 (P2001-308173)
出願日 平成13年10月4日(2001.10.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年4月10日 発行の「Analytical Sciences Vol.17,No.4」に発表
審査請求日 平成16年9月14日(2004.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】辻村 豊
【氏名】脇田 慎一
【氏名】山根 昌隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
審査官 【審査官】野村 伸雄
参考文献・文献 特開平02-271247(JP,A)
特開平07-198676(JP,A)
特開平08-015219(JP,A)
特開平03-259739(JP,A)
特開平08-145941(JP,A)
特開平03-277954(JP,A)
特開昭62-207950(JP,A)
特開2000-150501(JP,A)
特開2001-064423(JP,A)
特開2000-191822(JP,A)
特表平03-502135(JP,A)
辻村豊、外2名,カリクス(4)アレンイオノフォアオリゴマーを含むシリコーンゴム感応膜を用いるナトリウムイオン選択性電極,日本化学会講演予稿集,社団法人日本化学会,1997年 3月12日,Vol.72,p. 111
調査した分野 G01N 27/414
G01N 27/416
JSTPlus(JDream2)
CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の一般式(F):
【化1】
JP0004013033B2_000004t.gif
(式中、Rはメチル基、エチル基又はフェニル基であり、Rは水素又はエチル基であり、n=100~1000である)で表されるシリコーンラダーポリマーを支持体として用い、ジメチル-オクタデシル-3-トリメトキシ-シリルプロピルアンモニウムクロライドを30~40wt%含む硝酸イオン感応膜を、電界効果型トランジスタのゲートに接続した導電性基板上に保持させた硝酸イオン感応性電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
電界効果型トランジスタが、MOS型トランジスタである、請求項1に記載の硝酸イオン感応性電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
電界効果型トランジスタが、単極電界効果型トランジスタである、請求項1に記載の硝酸イオン感応性電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
導電性基板が銅板である請求項に記載の硝酸イオン感応性電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
請求項に記載の硝酸イオン感応性電界効果型トランジスタ及び参照電極を含む硝酸イオン濃度測定器。
【請求項6】
請求項に記載の硝酸イオン濃度測定器を用いて、サンプルのイオン濃度を測定する硝酸イオン濃度測定法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感応膜材料を新規ガラス系材料であるシリコーンラダーポリマー(SLP)を導入した、耐久性に優れたセンサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の環境問題において温暖化や酸性雨等は地球的規模であり、今世紀の大きな解決課題の一つと言える。すなわち、このようなグローバルな問題には、より多くの情報をネットワーク化することで効果を上げる事が期待できる。ゆえに何時でも何処でもセンシング可能なセンサー開発は重要であり、その中でも半導体化学センサーは大いに期待されている。
【0003】
本発明で検討したイオンセンサーであるイオン感応性電界効果型トランジスタ(ISFET) (J. Janata, Chem.Rev. 1990, 90, 691)はこの半導体化学センサーの一種であり、水溶液中のイオンを定性・定量分析する道具である。これを硝酸イオンなど酸性雨成分のイオン分析に用いれば上記の酸性雨対策に役立てることができる。一般にイオンセンサーの心臓部である感応膜マトリックス部分には可塑化ポリ塩化ビニルが膜材料として使われることが多いが(G. J. Moody, R. B. Oke, and J. D. R. Thomas, Analyst, 1970, 95, 910; M. A. Arnold and R. L. Solsky, Anal. Chem., 1986, 58, 84R; R. L. Solsky, Anal. Chem., 1990, 62, 21 R)、その耐久性には不安がある(K. Kimura, T. Matsuba, Y. Tsujimura, and M. Yokoyama, Anal. Chem., 1992, 64, 2508)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本研究では感応膜材料を新規ガラス系材料であるシリコーンラダーポリマー(SLP)を導入することにより、耐久性に優れたセンサーの構築を目指した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
項1. シリコーンラダーポリマーを支持体として用い、さらに、イオン感応物質を含むイオン感応膜。
項2. イオン感応物質が硝酸イオン感応物質である、項1に記載のイオン感応膜。
項3. イオン感応物質がジメチル-オクタデシル-3-トリメトキシ-シリルプロピルアンモニウムクロライドである、項2に記載のイオン感応膜。
項4. ジメチル-オクタデシル-3-トリメトキシ-シリルプロピルアンモニウムクロライドの含有率が30~40 wt %である項3に記載のイオン感応膜。
項5. MOS型電界効果型トランジスタのゲートに接続した導電性基板上に、項1~4のいずれか1つに記載のイオン感応膜を保持させたイオン感応性電界効果型トランジスタ。
項6. 項1~4のいずれかに記載のイオン感応膜が、単極型電界効果型トランジスタのゲート上に形成されたイオン感応性電界効果型トランジスタ。
項7. 項5に記載の感応性電界効果型トランジスタ及び参照電極を含むイオン濃度測定器。
項8. 導電性基板が銅板である項5に記載のイオン感応性電界効果型トランジスタ。
項9. 次のステップを含む、イオン感応性電界効果型トランジスタの製造方法:
(1)金属酸化物半導体電界効果型トランジスタのゲート端子を導電性基板に結合させる、
(2)該導電性基板をガラス管に結合させる、
(3)イオン感応物質とシリコーンラダーオリゴマーを溶媒に溶かしたものを、導電性基板の外表面上にキャストする、
(4)シリコーンラダーオリゴマーのポリマー化を完結させて、イオン感応膜を得る。
項10. 項7に記載のイオン濃度測定器を用いて、サンプルのイオン濃度を測定するイオン濃度測定法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、イオン感応膜材料として、シリコーンラダーオリゴマー(SLO)を原料とするシリコーンラダーポリマー(SLP)が例示される。シリコーンラダーポリマーとは、ラダー(梯子状)構造を有するシリコーン樹脂であり、シリコーンラダーオリゴマーの重合反応により製造される。
【0007】
SLOは(F)のようなものである。(F)において、R1は、C1~C4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はハロゲン、C1~C4のアルキル基、アルコキシ基などの置換基で置換されたアリール基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基である。(F)において、R2は、メチル基、エチル基、または水素などが挙げられ、好ましくは水素又はエチル基である。(F)において、nは10~75で、好ましくは10~40である。
SLOの例として、(A)、(C)、(E)などが挙げられる。
【0008】
SLPはSLOが重合したもので、n = 50~1500、好ましくはn = 100~1000である。
【0009】
【化1】
JP0004013033B2_000002t.gif【0010】
SLPは次の理由で、本発明において用いられるのが好ましい:
(1)原料のSLOはアルコール、エステル、ケトン等の極性溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤に可溶で多種多様な溶剤が使用可能なため扱い易い。
(2)SLPは鉄、アルミニウム、銅、セラミックス等との密着性が優れている。
(3)SLP作製のためのコーティング液には例えば染料、顔料のような有機物の混合が容易である。
【0011】
イオン感応物質は、イオンを検出できるものであれば制限なく使用できる。イオンの種類として、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、過塩素酸イオンなどが例示される。イオン感応物質として、硝酸トリオクチルアンモニウム(NO3-)、ジメチル-オクタデシル-3-トリメトキシ-シリルプロピルアンモニウムクロライド(QAS:化合物(B))(NO3-、I-)、テトラフェニルポルフィリン(TPP:化合物(D))(D. M.
Kliza and M. E. Meyerhoff, Electroanalysis, 1992, 4, 841; C. Sun, J. Zhao, H. Xu, Y. Sun, X. Zhang and J. Shen, Talanta, 1998, 46, 15)(I-)、化合物(D)およびQASの混合物(I-)、バリノマイシン(K+)、ビス12クラウン4(Na+)、塩化トリオクチルアンモニウム(Cl-)、ノナクチン(NH4+)、ジn-オクチルフェニルリン酸カルシウム(2価陽イオン)、四フッ化ホウ素酸トリオクチルアンモニウム(BF4-)、過塩素酸トリオクチルアンモニウム(ClO4-)、カリックス[4]アレン型化合物(Na+) などが例示される(かっこ内のイオンが、測定対象イオンである)。
【0012】
【化2】
JP0004013033B2_000003t.gif【0013】
感応膜中のイオン感応物質の含有率は、イオン感応物質+支持体の合計量に対し、20~50 wt %で、30~40 wt %が好ましい。
【0014】
本発明における電界効果型トランジスタは、単極型、MOS型(MOSFET)のいずれでも良い。好ましくはMOS型である。
【0015】
本発明における好ましいイオン感応膜及びMOS型電界効果型トランジスタからなるイオン感応性電界効果型トランジスタの具体例は、例えば電界効果型トランジスタのゲート端子をはんだ等で導電性基板に結合させ、該導電性基板を粘着剤でガラス管に結合させ、イオン感応物質とSLOを溶媒に溶かしたものを、導電性基板の外表面上に付与し、乾燥させ、加熱することでポリマー化を完結させて作ることができる。
【0016】
導電性基板は、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、金、鉄、スズ、パラジウム、白金、亜鉛、タングステン、モリブデン、マンガン、金属合金などの金属板、カーボン板などが挙げられる。好ましくは、銅、鉄、アルミニウム等である。導電性基板の厚みは、1~3 mmで、好ましくは2~3 mmである。
【0017】
電界効果型トランジスタのゲート端子を導電性基板に結合させるには、はんだに限らず、電気を通すものであればよい。
【0018】
導電性基板をガラス管に結合させるために、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが好ましく用いられる。
【0019】
イオン感応物質とSLOを溶媒に溶かしたものを、導電性基板の外表面上に付与する方法は、キャスト、スプレー塗布、スパッタリング法、ディップ法やスピンオンコート法などが挙げられる。
【0020】
イオン感応物質とSLOを溶媒に溶かしたものを、導電性基板の外表面上に付与した後の乾燥は、室温で12時間~1日放置して行なわれる。その後の加熱はシリコーンラダーオリゴマーのポリマー化を完結させるため、及び硬化させるために行なわれ、60~80℃で1~3日間、好ましくは70℃で3日間である。
【0021】
本発明におけるイオン感応膜及び単極型電界効果型トランジスタからなるイオン感応性電界効果型トランジスタは、MOS型の場合と同様に、トランジスタのゲート上に、イオン感応膜を形成することにより作ることができる。
【0022】
上記イオン感応性電界効果型トランジスタを参照電極と共にサンプル液に浸したときに生じる両電極間の電位差(イオン感応性電界効果型トランジスタの応答電位)を測定することにより、サンプル液のイオン濃度を決定することができる。
【0023】
次に、一般的なイオンの測定方法について説明する。
【0024】
測定範囲は、通常、上限は10-1 mol/dm3程度、下限は10-4 ~ 10-7 mol/dm3である。
【0025】
イオン電極の応答時間は、電極の種類、構造、イオンの種類、濃度、イオン強度等によって異なる。イオン濃度が低濃度の測定から高濃度の測定に移る場合の応答時間は比較的短いが、逆の場合は長くなる傾向がある。また、定量下限近くでは、応答時間は一般に長くなり、数分を要することがある。
【0026】
測定温度は、例えば室温で測定でき、一定の温度で測定するのが望ましく、試料溶液がかくはん器のモーターなどの外部機器からの温度の影響を受けないようにするのがよい。一定の速さでかくはんしながら測定することが一般的に好ましい。
【0027】
試料溶液は、必要に応じて、希釈、濃縮、抽出などの前処理を行う。
【0028】
測定するサンプルの種類は、雨水、飲料水、海水、河川の水、廃水、工業用水、工場で生産過程において使われる浴槽液(塗装用、めっき用など)など、イオンを含むものはどんなものでもよい。
【0029】
本発明実施例においては、室温で10-6~10-1Mの範囲で一定速度でかくはんしながらイオンを測定した。濃度変化方法として10-6M溶液20mlへ高濃度溶液を順次加えていくインジェクト法を用いた。また、雨水サンプルも含めて試料溶液に対する前処理は行なわなかった。
【0030】
【実施例】
実施例1
SLO(A)をイオン感応膜材料として、QAS(B)をイオン感応物質として用いた。
【0031】
ISFET本体(図1)は、市販の電界効果型トランジスタチップ、ガラス管および銅板を用いて次のように作成した:金属酸化物半導体電界効果型トランジスタ(MOSFET 2SK241(株式会社東芝製、東京))のゲート端子に、はんだで接続された銅ディスク(直径7 mm、厚さ2 mm)を、シリコーンタイプの粘着剤で、ガラス管(外径7 mm、内径4 mm、長さ100 mm)に接着した。80、70、60、50 mgのSLO(A)及び20、30、40、50 mgのQASをそれぞれ2-プロパノール(2 ml)に溶かした。SLO(A)及びQASの該混合物を銅ディスクの外表面上にキャストし、室温で1日乾燥させた。次に、該混合物でコートされた該銅ディスクを炉に入れ、3日間70℃に保ち、ポリマー化を完結させた。顕微鏡によると、該膜の厚さは約20 μmであった。以上のように、感応膜中のQAS含有率が20、30、40、50 wt %のISFETを作った。
【0032】
測定溶液調整用として硝酸ナトリウム、妨害イオン溶液調整用として硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムを蒸留水に溶解して用いた。
【0033】
上記のISFETの、酸性雨の成分でもある硫酸イオン、塩素イオン、硝酸イオンに対して、室温で10-6~10-1Mの範囲でスクリーニングテストを行った。図2にその結果を示す。硝酸イオンに対して得られた検量線は、良好な直線性(検量線の直線部分が長いほど良好)を示し、理論的にも正しい応答(イオン電極測定方法通則、JIS K 0122-1997)を示した。
【0034】
続いて感応膜中における4級アンモニウムの含有量の最適化を、3.0 x 10-6~1.0 x 10-1 Mの硝酸イオン濃度範囲において、25℃で検討した。
【0035】
25℃における、1価の陰イオンにおけるネルンストの式は、
E = E0 + 2.303RT/ZF・log a = E0 - 0.05916・logγC
であり、式中、
E0:25℃における標準電極電位
R:気体定数
T:絶対温度
Z:イオンの価数
F:ファラデー定数
a:イオン活量
C:試料溶液中の陰イオン濃度(mol/l)
γ:活量係数
である。
【0036】
検討の結果を図3に示す。QASの含有量が30及び40%のとき、ネルンスト式の傾きの理論値である-59.2 mV/decadeに非常に近い値、それぞれ-60.6 mV/decade及び-59.6 mV/decadeが得られ、これらが最適と言える。
【0037】
また最適化したISFET(QASの含量が30%及び40%であるもの)は作製6ヶ月後でも、3.0 x 10-6~1.0 x 10-1 Mの硝酸イオン濃度範囲において、それぞれ-60.6 mV/decade及び-61.1 mV/decadeの傾きを維持していた。
【0038】
さらにpHの依存性を調べた。pH依存性測定には硝酸ナトリウム/リン酸-水酸化ナトリウム溶液を目的pHに合わせて調整した。pH依存性測定は、上記のISFETを参照電極と共に測定溶液に浸し市販のISFET-pHメーターで行った。その結果(図4)pH 2~9の範囲では電位も安定しており実用上問題がないことがわかった。
【0039】
センサー特性において迅速な応答は重要な課題であるので、90%応答時間の検討を行なった。その結果を図5に示す。結果として、QAS含有量が30~40%において90%応答時間が5秒以内となった。これは図3における4級アンモニウム塩の含有量最適化と対応する結果となった。
【0040】
硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム溶液を用いて、各種妨害イオン下における硝酸イオンに対する選択係数を、混合溶液法(JIS K 0122-1997)に基づいて測定した。その測定におけるそれぞれの共存イオンの濃度は、硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、リン酸二水素イオン、および酢酸イオンの場合は0.1mol/dm3、安息香酸イオンおよび過塩素酸イオンの場合は1.0×10-4 mol/dm3の一定だった。
【0041】
図6は、ISFETの各種妨害イオン下における硝酸イオンに対する選択係数を表す図で、log kpotNO3- A値がマイナスになるほど選択性が良い。検討の結果、過塩素酸イオン、臭素イオン、安息香酸イオンに対してはかなりの妨害を受けるが、塩素イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、リン酸二水素イオンに対しては良好な選択性を示し、実用性が高いことが分かった。
【0042】
雨水の硝酸イオン測定を10回行った。10回測定した平均により、硝酸イオン濃度が2.0 x 10-5 Mとなり、変動係数が1.8%であった。比較のため、同サンプルのイオンクロマトグラフィーによる硝酸イオン濃度測定を行なったところ、2.1 x 10-5 Mだった。本発明のISFETによる測定値は、イオンクロマトグラフィーによる測定値と良く一致した。
【0043】
実施例2
イオン感応膜材料として、SLO(C)からできたシリコーンラダーポリマーを、ヨウ化物イオン感応物質としてジメチル-オクタデシル-3-トリメトキシ-シリルプロピルアンモニウムクロライド(QAS)(B)及び/又はテトラフェニルポルフィリン(TPP)(D)を用いた。SLOはTPPと相溶性を高めるため側鎖がすべてベンゼン環のもの(C)を用いた。
【0044】
測定溶液調整用としてヨウ化ナトリウム、妨害イオン溶液調整用として硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して用いた。
【0045】
ISFET本体の銅板上にSLO(C)のみ(100 mg)、SLO(C)(80 mg)+TPP(20 mg)、SLO(C)(70 mg)+TPP(20 mg)+QAS(10 mg)、あるいは(SLO(C)(70 mg)+QAS(30 mg)の混合物をクロロホルムに溶かし、SLO(C)のみ、(SLO(C)=80、TPP=20 wt %)、(SLO(C)=70、TPP=20、QAS=10 wt %)、及び(SLO(C)=70、QAS=30 wt %)であるISFET本体を、実施例1と同様に作製した。イオン濃度測定はこれらのISFETをそれぞれ参照電極と共に測定溶液に浸し市販のISFET-pHメーターで行った。
【0046】
ヨウ化物イオンに対するセンサー応答特性において、TPPおよびQASの効果を比較した。下記のそれぞれのISFETにおいて、25℃で、応答電位を測定した結果を図7に示す。
ISFETの感応膜がSLPのみで構成されている場合(図7-a)は、応答範囲もヨウ化物イオン濃度1.0×10-4~1×10-1 Mで検量線の傾きが-85.2 mV/decadeとなり、理論的に正しいとされるネルンスト応答(-59.2 mV/decade)にはならなかった。さらに電位に対しかなりの揺れ(±5 mV)が発生した。おそらく膜の電気的抵抗が大きいためと考えられる。続いて感応膜がSLO(C)(80 wt %)+TPP(20 wt %)の系を検討した(図7-b)。その結果1.0×10-5~1×10-2 Mの範囲で検量線の傾きが-59.4 mV/decadeのネルンスト応答を示し、電位の揺れも±1mV程度に収まった。しかしながら10-2 M以上の高濃度域では検量線は傾きの絶対値が小さく、すなわち感度が減少した。続いてSLO(C)(70 wt %)+TPP(20 wt %)+QAS(10 wt %)の系を検討した(図7-c)。その結果、ヨウ化物イオン濃度1.0×10-5~1×10-1 Mの範囲で検量線の傾き-60.0 mV/decadeのネルンスト応答を示し、この膜の作製条件(SLO(C)=70、TPP=20、QAS=10 wt %)が最適であることが分かった。
【0047】
妨害イオンとしてヨウ化物イオンに対して比較的大きな妨害を示す硝酸イオンおよび過塩素酸イオンを用い、混合溶液法(JIS K 0122-1997)に基づいて測定した。共存イオンの濃度は0.01 mol/dm3で行った。スクリーニングテストを行い、4種のISFET(TPP含量:0、5、10、20 wt%)の感応膜中のTPP含有率とヨウ化物イオンの選択性との関係を調べた。その結果を図8に示す。
【0048】
感応膜中にTPPを5 wt %含有させるだけで選択性は100倍程度向上し、TPPが20 wt %の場合は1000倍以上の選択性が得られた。
【0049】
硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム溶液を用いて、各種妨害イオン下におけるヨウ化物イオンに対する選択係数を、感応膜中にTPPがある場合(図9-a、SLO(C)=70、TPP=20、QAS=10 wt %)及び、ない場合(図9-b、SLO(C)=70、QAS=30 wt %)において、混合溶液法(G. G. Guilbault, R. A. Durst, M. A. Frant H. Freiser, E. H. Hansen, T. S. Light, E. Pingor, G. Rechnitz, N. M. Rice, T. J. Rohm, W. Simon, and D. R. Thomas, Pure Appl. Chem., 1976, 48, 127)に基づいて測定した。その測定において、それぞれの共存イオンの濃度は、塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオンの場合は0.01 mol/dm3、酢酸イオンおよび硫酸イオンの場合は0.1mol/dm3の一定だった。その結果を図9に示す。log kpotI- A値がマイナスになるほどヨウ化物イオン選択性が強い。結果としてTPPを導入すれば選択性は飛躍的に向上した。
【0050】
ISFET(SLO(C)=70、TPP=20、QAS=10 wt %)のpH 1~9におけるpHの依存性を調べた。pH依存性測定にはヨウ化ナトリウム/リン酸-水酸化ナトリウム溶液を目的pHに合わせて調整した。その結果を図10に示す。その結果より、pH 3~9の範囲では電位も安定しており実用上問題がないことがわかった。
【0051】
ISFET(SLO(C)=70、TPP=20、QAS=10 wt %)を作製半年後、該ISFETを用いて応答感度、選択性の測定を行なった。それらの性能は維持されていた。
【0052】
【発明の効果】
本発明は、SLPを半導体化学センサーであるISFETの感応膜材料マトリックスとして導入することにより、イオンに対し応答感度、pHに対する安定性、応答時間、イオン選択性、耐久性において、良好なISFETを提供することができた。
【0053】
感応膜作製は、膜材料を調整・混合し、キャスト、乾燥、加熱硬化という極めて簡単な方法で作製できる。本発明において、SLPはISFET用のイオン感応膜マトリックス材料として非常に優れ、将来性があることが判明した。特に耐久性の点などからフィールドワークへの適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例において作成したISFETを図示したものである。
【図2】図2は、実施例1のISFETの、硫酸イオン、塩素イオン、硝酸イオンに対して行なわれたスクリーニングテストの結果であり、QAS感応膜中含有率は40 wt %である、SLPとQAS膜に基づくISFET の、応答電位対活性をプロットしたものである。図2中、○は硝酸ナトリウム、■は塩化ナトリウム、△は硫酸ナトリウムの検量線を表す。
【図3】図3は、実施例1の硝酸イオン感応膜中における、4級アンモニウム含有量の最適化の結果であり、SLPとQASに基づくNO3--ISFETにおける、QAS含量及び感度間の関係を表す。図3中、QAS含量は、○(コントロール)においては0、△においては20 wt %、●においては30 wt %、◇においては40 wt %、▲においては50 wt %である。
【図4】図4は、実施例1におけるpH依存性測定結果であり、QAS感応膜中含有率は40 wt %である、SLPとQAS膜に基づく実施例1のISFETのpH依存特性を示す。該溶液は、H3PO4-NaOH及び1 x 10-3 M NO3-を含む。
【図5】図5は、実施例1における90%応答時間の検討の結果であり、SLPとQASに基づくNO3--ISFET における、QASの含量(20、30、40、50 wt %)及び応答時間(t90)間の関係を示す。NO3-濃度が1.0 x 10-3 M~3.0 x 10-3 Mで変化するとき、t90値を測定した。
【図6】図6は、実施例1におけるISFETの各種妨害イオン下における硝酸イオンに対する選択係数測定の結果であり、FIM法(fixed interference method)に基づいて測定した選択係数を示す。SLPとQASに基づくNO3--ISFETの、QAS含量が30 wt % (1)のとき、及び40 wt % (2)のときの選択係数を表す。
【図7】図7は、実施例2のISFETにおける、ヨウ化物イオンに対するセンサー応答特性において、TPPおよびQASの効果を比較した結果である。(a)イオノフォアなしのSLO(C);(b) SLO(C)(80 wt %)及びTPP (20 wt %);(c) SLO(C)(70 wt %)、TPP (20 wt %)及びQAS (10 wt %)に基づくISFETの、応答電位対I‐の活量をプロットしたものである。
【図8】図8は、実施例2における硝酸イオンおよび過塩素酸イオンを用いたスクリーニングテストの結果であり、SLO(C)、TPP及びQASに基づくI--ISFETにおける、TPPの含量とClO4-(△) 及びNO3-(■) に対する選択係数の関係を示す。
【図9】図9は、実施例2における各種妨害イオン下におけるヨウ化物イオンに対する選択係数測定の結果であり、FIM法(fixed interference method)に基づいて測定した選択係数を示す。(a)、SLO(C)(70 wt %)、TPP (20 wt %)、及びQAS (10 wt %)に基づくI--ISFET;(b)、SLO(C)(70 wt %)及びQAS (30 wt %) に基づくI--ISFET。
【図10】図10は、1 x 10-3 MのI-を有するH3PO4-NaOH緩衝溶液における、実施例2のSLO(C)(70 wt %)、TPP (20 wt %)、及びQAS (10 wt %)に基づくI--ISFETの、pH依存性の特性を表す。
【符号の説明】
1 銅板
2 ガラス管
3 FET
4 ゲート端子
5 ソース端子
6 ドレイン端子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9