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明細書 :非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法及び分離装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3964682号 (P3964682)
公開番号 特開2003-200038 (P2003-200038A)
登録日 平成19年6月1日(2007.6.1)
発行日 平成19年8月22日(2007.8.22)
公開日 平成15年7月15日(2003.7.15)
発明の名称または考案の名称 非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法及び分離装置
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
B07B   7/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 N
B07B 7/00 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2002-001591 (P2002-001591)
出願日 平成14年1月8日(2002.1.8)
審査請求日 平成14年9月12日(2002.9.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】志村 洋文
【氏名】瀬戸 章文
【氏名】平澤 誠一
【氏名】綾 信博
個別代理人の代理人 【識別番号】100072453、【弁理士】、【氏名又は名称】林 宏
審査官 【審査官】橋本 憲一郎
参考文献・文献 特開2002-239377(JP,A)
調査した分野 B01J 19/00
B07B 7/00
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
同じ粒径、同じ質量または同じサイズの非化学量論的金属化合物微粒子でマグネリ相のシェア面数を異にするものを含む微粒子群を吸着ガス雰囲気に導き、それらの微粒子のシェア面に吸着ガスを臨界吸着させた後、臨界吸着に起因して変化した質量または流体中での運動抵抗により、シェア面数を異にする微粒子を分離することを特徴とする非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法。
【請求項2】
非化学量論的金属化合物が、酸化チタン、酸化バナジウム、又は酸化タングステンからなる非化学量論的金属酸化物である請求項1に記載した非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法。
【請求項3】
吸着ガスが希ガス、フロン系ガス、炭化水素、二酸化炭素、四塩化炭素より選ばれた1種又は2種以上の混合ガスである請求項1または2に記載した非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法。
【請求項4】
上記吸着ガス雰囲気に導く微粒子群が、閉鎖空間に納められた金属酸化物ターゲットにレーザーを照射する微粒子作製装置により作製されたものである請求項1~3のいずれかに記載した非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法。
【請求項5】
微粒子作製装置における金属酸化物ターゲットが、酸化チタン、酸化バナジウム、又は酸化タングステンである請求項4に記載した非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法。
【請求項6】
非化学量論的金属化合物微粒子でシェア面数を異にするものを含む微粒子群から、同じ粒径、同じ質量または同じサイズのものを分離する第1の分離装置、
上記分離装置で分離された同じ粒径、同じ質量または同じサイズの微粒子群が導入され、制御装置により雰囲気圧力及び温度が制御された吸着ガス雰囲気において上記微粒子のシェア面に吸着ガスを臨界吸着させる臨界吸着装置、及び、
上記臨界吸着に起因して変化した質量または流体中での運動抵抗により、シェア面数を異にする微粒子を分離する第2の分離装置、
を備えることを特徴とする非化学量論的金属化合物微粒子の分離装置。
【請求項7】
上記第2の分離装置が、微分型モビリティアナライザである請求項6に記載した非化学量論的金属化合物微粒子の分離装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒子のサイズ・構造・機能の相違を有する微粒子の分離方法及び分離装置に関し、本発明の分離方法により、サイズ、構造、又は機能別に分離した微粒子は、種々の分野例えば材料分野、製造技術分野、分離装置分野、構造解析装置分野、光電変換材料分野、触媒分野など広く応用することが出来る。
【0002】
【従来の技術】
従来の微粒子の分離方法は、微粒子の流体中での運動抵抗の相違による方法、微粒子のサイズの相違による方法、微粒子の質量の相違による方法、微粒子の慣性力の相違による方法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、同じ粒径、同じ質量、または同じサイズの微粒子においても、その結晶構造や表面状態の相違によって微粒子の物性ならびに機能は変化している。これらの微粒子を、とくに機能性材料として用いる場合、機能別に分離しないで混合された状態で用いると、性能低下が生じるのを避けることが出来なかった。
従来の粒子の流体中での運動抵抗を用いた分級法や質量分離法は、粒径や質量の揃った微粒子の作製は可能であるが、機能別に分離を行うことまではできなかった。
本発明者は、粒径や質量の揃った非化学量論的金属化合物微粒子で、結晶構造や表面状態によって物性や機能が変化するものを含む微粒子から、特定の機能を持つ微粒子を選択分離することついて考究した結果、微粒子の表面に別の成分の吸着ガスを臨界吸着させ、粒径あるいは質量を増大させることによって、その分離ができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0004】
本発明によれば、その課題を解決するために、同じ粒径、同じ質量または同じサイズの非化学量論的金属化合物微粒子でマグネリ相のシェア面数を異にするものを含む微粒子群を吸着ガス雰囲気に導き、それらの微粒子のシェア面に吸着ガスを臨界吸着させた後、臨界吸着に起因して変化した質量または流体中での運動抵抗により、シェア面数を異にする微粒子を分離することを特徴とする非化学量論的金属化合物微粒子の分離方法が提供される。
上記分離方法においては、非化学量論的金属化合物として、酸化チタン、酸化バナジウム、又は酸化タングステンからなる非化学量論的金属酸化物を用い、また、吸着ガスとして、希ガス、フロン系ガス、炭化水素、二酸化炭素、四塩化炭素より選ばれた1種又は2種以上の混合ガスを用いることができる。更に、上記吸着ガス雰囲気に導く微粒子群としては、閉鎖空間に納められた金属酸化物ターゲットにレーザーを照射する微粒子作製装置により作製されたものを用いることができ、その場合の金属酸化物ターゲットには、酸化チタン、酸化バナジウム、又は酸化タングステンを用いることができる。
また、本発明によれば、その課題を解決するために、非化学量論的金属化合物微粒子でシェア面数を異にするものを含む微粒子群から、同じ粒径、同じ質量または同じサイズのものを分離する第1の分離装置、上記分離装置で分離された同じ粒径、同じ質量または同じサイズの微粒子群が導入され、制御装置により雰囲気圧力及び温度が制御された吸着ガス雰囲気において上記微粒子のシェア面に吸着ガスを臨界吸着させる臨界吸着装置、及び上記臨界吸着に起因して変化した質量または流体中での運動抵抗により、シェア面数を異にする微粒子を分離する第2の分離装置を備えることを特徴とする非化学量論的金属化合物微粒子の分離装置が提供される。
本発明の上記非化学量論的金属化合物微粒子の分離装置においては、上記第2の分離装置として、微分型モビリティアナライザを用いることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に基づいてさらに説明すると、非化学量論的金属酸化物微粒子101を、温度及びガス濃度がコントロールされた雰囲気中に導き、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素等からなる群より選ばれた不活性気体102などの吸着ガスを混合してガス濃度調整を行った後、さらに圧力および温度をコントロールして、非化学量論的金属酸化物微粒子101の表面に形成されたシェア面104に臨界吸着させる。
この時、温度が吸着の臨界点より高ければ、不活性気体はシェア面に吸着されることはなく、温度が臨界より低ければ不活性気体はすべて吸着される。本発明において臨界吸着とは、シェア面に特定の吸着ガスが吸着する下限の状態を言う。
シェア面数の相違によって不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子A106と不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子B107が生じることになる。
非化学量論的金属酸化物微粒子A106と不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子B107は、吸着ガスの量が異なるから、同じサイズの粒子であっても質量が異なるため、分離装置108で分離することができる。
シェア面数の相違は、すなわち、機能の相違であるから、機能の相違により非化学量論的金属酸化物微粒子A106と不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子B107が分離されたことになる。
非化学量論的化合物微粒子は、坩堝中での加熱法や気相化学反応(CVD)、液相法などの化学的手法でも作製できるが、微粒子への不純物の混入がさけられないし、金属酸化物のプラズマ処理や水素雰囲気中での熱処理においては、材料中に温度分布が生じるため、均一な微粒子を生成することができない。また、結晶成長法においては、材料の作製に多大な時間を要するので、レーザーアブレーションによる非化学量論的化合物微粒子が望ましい。
非化学量論的化合物微粒子の中でも、マグネリ相を持つ非化学量論的金属化合物は、本発明における代表的なものであり、光励起により表面において電子を与奪する機能を有することから光電変換素子、光触媒などの新規光機能デバイスの構成要素として用いられている。
本発明で用いる代表的なマグネリ相を持つ化合物は、酸化チタンであり、TinO2n-1の化学式で表され、金属元素と酸素の比(上記化学式中のn)は、この材料特有のシェアー面間隔と関係し、機能を決定する上で重要なパラメーターとなる。しかし、一般な生成法においては、nの値が広く分散されるために、機能発現に支障をきたしている。そこで、この制御がマグネリ相を持つ化合物を利用した機能性材料開発における本質的な課題となっている。
図1及び図2においては、吸着ガスとして希ガスを用いたが、その他の反応性が低く容易に脱離可能なガスや液体、例えば炭化水素類、フロン類、二酸化炭素、四塩化炭素であっても良いことは言うに及ばない。
最後に吸着気体を加熱・脱離させ、純粋なサイズ・構造・機能の揃った微粒子を得ることが出来る。
【0006】
さらに、本発明は閉鎖空間に納められた微粒子作製装置、レーザー照射装置、雰囲気圧力(数Torr~数百Torr)、酸素分圧(0~10%)、温度を制御する制御装置、臨界吸着装置、サイズ別に分離する装置、構造別に分離する装置、機能別に分離する装置を含むサイズ・構造・機能の相違を有する微粒子の分離装置に関する。ターゲットとしては、金属酸化物が望ましく、とくに酸化チタン又は酸化バナジウムなど、非化学量論的金属酸化物を形成するものがより好ましい。
ここで、サイズ別に分離する装置としては、微分型モビリティアナライザやフィルター、質量分離装置、サイクロン、構造別に分離する装置としては、質量分離装置、インパクタ、微分型モビリティアナライザ、遠心分離装置、機能別に分離する装置としては、各種クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0007】
【実施例】
本発明を具体例を挙げて説明する。
(実施例1)
1.レーザーアブレーションによる非化学量論的金属酸化物微粒子の作製
図3に示すように、高純度の不活性ガス201中で、金属(チタン、バナジウム)酸化物ターゲット202をレーザー203で照射する。あるいは不活性ガスと酸素の混合気体中での金属のレーザー照射において、雰囲気圧力(数Torr~数百Torr)、酸素分圧(0~10%)を制御することによって、図4に示す粒径が数ナノメートルから数百ナノメートルの微粒子301が生成する。これらの一部に図5に示すようなシェア面303を持つ非化学量論的金属酸化物微粒子が含まれる。これらの微粒子は同じ元素で構成される物質、同じ粒径、同じ質量においてもシェア面の間隔の相違によって、光吸収率や電気伝導性などの機能に分布があることが判っている。
2.非化学量論的金属酸化物微粒子のサイズ、構造、機能別による分離
図3に示すように、作製した非化学量論的金属酸化物微粒子を含む混合物204を、微分型モビリティアナライザ205に通して、凝集体208を除去した後、クリプトン、キセノン、ラドン、窒素などの臨界温度が低い不活性気体または安定な有機化合物蒸気を混合し、圧力、温度などの条件を制御することによってこれらを特定のシェアー面に選択的に臨界吸着させ、粒径ならびに質量を選択的に増大させた。
その後、不活性気体が吸着した化合物を質量分離装置、微分型モビリティアナライザを組み合わせた分離装置210を用いて分離し、所望のシェアー面を持つ化合物のみを構造の違いによって分離する。
【0008】
(実施例2)
サイズ・構造・機能分離装置
シェアー面間隔の相違による分離方法を用いた装置を図3に示す。
固体の金属(チタン、バナジウム、タングステン)酸化物ターゲット202を、レーザー装置203によって照射し、生成した非化学量論的金属酸化物を含みサイズ・構造・機能にそれぞれ相違がある微粒子群を高純度ガス流201によって搬送する。
生成した微粒子204には、凝集体208が含まれるため、微分型モビリティーアナライザ205によってこれらをまず分離し、粒径の揃った微粒子を得る。次に、臨界温度が低く、化学的に不活性で、分子量が比較的大きい元素(クリプトン、キセノン、ラドン、窒素、安定な有機蒸気など)を混合し、圧力、温度などの条件を制御する制御装置に入れ、臨界吸着装置209において微粒子表面に物理的に臨界吸着させることで、化合物の質量あるいは表面積をシェアー面の数に応じて増加させる。
その後、分離装置210で質量選別あるいは粒径選別を行い、同じ数のシェアー面を持つ化合物のみを分離する。
最後に不活性気体を加熱・脱離させ、基板上に堆積することで、サイズ・構造・機能の揃った微粒子からなる構造体を作製する。
【0009】
(実施例3)
臨界吸着による微粒子の質量変化
酸化チタンにキセノンが吸着した場合の、微粒子の質量変化に関して計算を行った。
ここでは、酸化チタン微粒子は立方体で、キセノンはその4面に吸着したと仮定した。また吸着したキセノンのファンデルワールス半径は2.16オングストロームとした。
酸化チタンの密度を4.9g/cm3として、粒径に対する酸化チタン微粒子一個の質量ならびに、この微粒子表面キセノンが一原子層臨界吸着したときの吸着したキセノンの質量を図6に示す。
粒径が1~100ナノメートルの範囲において吸着したキセノンの質量は、酸化チタン質量の1~100分の1であり、質量分離法によって分離が可能であった。
【0010】
分離された非化学量論的金属酸化物の性質
上記手法で作製、分離された構造の揃った非化学量論的金属酸化物は、可視光において光吸収を持ち、かつ表面において電子の与奪が生じることから、光触媒、太陽電池などに応用ができる。さらにマグネリ相における化学量論比の違いによって導電体から絶縁体まで幅広い電気抵抗の制御が可能となる。また表面におけるシェアー面の存在によって化学的活性が増大するため、触媒などへ応用が可能である。
【0011】
【発明の効果】
分離されたシェアー面間隔の揃った化合物は、光吸収特性の制御、電気伝導性の制御などから、従来にはない優れた光機能素子として応用できることが期待される。本方法では、すべてのプロセスが高純度不活性気体の流れ中で連続的に行われるため、純度が非常に高く、連続生産に適している。
また、本発明の分離方法により、サイズ、構造、又は機能別に分離した微粒子は、種々の分野例えば材料分野、製造技術分野、分離装置分野、構造解析装置分野、光電変換材料分野、触媒分野など広く応用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネリ相をもつ非化学量論的金属化合物への臨界吸着の概念図。
【図2】構造分離の概念図。
【図3】サイズ・構造・機能の相違を有する微粒子の分離装置。
【図4】生成した酸化チタン微粒子の電子顕微鏡像の図面代用写真。
【図5】生成した酸化チタン微粒子の高分解電子顕微鏡像の図面代用写真。
【図6】キセノンがシェア面に一層吸着した場合の粒径に対する質量変化図。
【符号の説明】
101 非化学量論的金属酸化物微粒子
102 不活性気体
103 混合操作
104 臨界吸着
105 シェア面
106 不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子A
107 不活性気体が吸着した非化学量論的金属酸化物微粒子B
108 分離装置
201 高純度ガス
202 固体
203 レーザ
204 非化学量論的金属酸化物微粒子を含む混合物
205 微分型モビリティーアナライザ
206 不活性気体
207 流れ方向
208 凝集体
209 臨界吸収装置
210 分離装置
301 微粒子
302 凝集体
303 シェア面
304 シェア面の電子回折像
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5