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明細書 :サイアロンセラミックス多孔体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4420171号 (P4420171)
公開番号 特開2003-246676 (P2003-246676A)
登録日 平成21年12月11日(2009.12.11)
発行日 平成22年2月24日(2010.2.24)
公開日 平成15年9月2日(2003.9.2)
発明の名称または考案の名称 サイアロンセラミックス多孔体及びその製造方法
国際特許分類 C04B  35/599       (2006.01)
B01D  39/00        (2006.01)
B01D  39/20        (2006.01)
B01J  20/08        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
FI C04B 35/58 302A
C04B 35/58 302Y
B01D 39/00 B
B01D 39/20 D
B01J 20/08 C
B01J 20/30
C04B 38/00 303Z
C04B 38/00 304Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2002-049935 (P2002-049935)
出願日 平成14年2月26日(2002.2.26)
審査請求日 平成17年1月25日(2005.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】大司 達樹
【氏名】楊 建鋒
個別代理人の代理人 【識別番号】100102004、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 政彦
審査官 【審査官】武石 卓
参考文献・文献 Yoshihisa Beppu et al,CORROSION BEHAVIOR OF POROUS SILICON NITRIDE AND SIALON CERAMICS,Ceramic Engineering & Science Proceedings,米国,Wiley;American Ceramic Society;Hoboken, N.J.,2001年,Vol.22, No.4,pp.285-290
楊建鋒 他,多孔質サイアロンセラミックスの作製と特性,日本セラミックス協会秋季シンポジウム講演予稿集,日本,日本セラミックス協会,2001年,14th,pp.122
調査した分野 C04B 35/599
B01D 39/00
B01D 39/20
B01J 20/08
B01J 20/30
C04B 38/00
REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
JST7580(JDreamII)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有し、少なくとも35体積%の気孔率を有する、高気孔率を維持しつつ、耐熱性、耐食性及び機械的強度を兼ね備えたサイアロンセラミックス多孔体であって、
窒化ケイ素を主成分とし、アルミナと窒化アルミニウムを添加、或いはシリカと窒化アルミニウムを添加し、焼結助剤として1重量%以下の微量のイットリアないしイッテルビアを添加して焼結することにより生成させた一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表される単結晶のβサイアロン結晶相を有してなり、高分解能電子顕微鏡観察により粒界に非結晶相がなく、平均気孔径が大きくても2μmで且つ曲げ強度が少なくても50MPaであることを特徴とするセラミックス多孔体。
【請求項2】
主成分であるβサイアロン結晶相以外のセラミックス成分を含有しないことを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス多孔体。
【請求項3】
気孔率が35体積%以上、60体積%以下の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミックス多孔体。
【請求項4】
出発原料が、βサイアロン組成になる原料粉末の、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及びアルミナの各粉末と、焼結助剤のイットリアの混合物から成り、サイアロン結晶粒子が、主として、一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表されるβ型サイアロン系であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のセラミックス多孔体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有し、少なくとも35体積%の気孔率を有する、高気孔率を維持しつつ、耐熱性、耐食性及び機械的強度を兼ね備えたサイアロンセラミックス多孔体を製造する方法であって、
平均粒径が大きくても3μmの窒化ケイ素粉末に、アルミナと窒化アルミニウムを添加、或いはシリカと窒化アルミニウムを添加し、焼結助剤として1重量%以下の微量のイットリアないしイッテルビアを添加して混合し、これを成形した後、少なくとも6気圧の窒素雰囲気中又は窒素を含む不活性雰囲気中において1200℃以上で1900℃以下の温度で焼結して一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表される単結晶のβ型サイアロン粒子を生成させて緻密化を阻害し、それにより、微細な気孔を多量に含み、かつ粒界ガラス相が存在しない組織を有するセラミックス多孔体とすることを特徴とするセラミックス多孔体の製造方法。
【請求項6】
サイアロンのz値、焼結助剤の添加及び焼結条件を調整することにより、気孔率を制御することを特徴とする、請求項5に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体からなることを特徴とするフィルター、触媒用担体、又は吸着機能を有する耐食性部材。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サイアロンセラミックス多孔体、その製造方法、及びその用途に関するものであり、更に詳しくは、微小な気孔を多量に含み、しかも、耐食性が優れた高強度なサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法、及び当該サイアロンセラミックス多孔体からなるフィルター、担体、及び吸着機能を有する製品に関するものである。本発明のセラミックス多孔体は、耐熱性、耐食性及び耐熱衝撃性が要求される高温脱塵フィルター、触媒用担体、及び吸着材等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、多孔質セラミックスは、例えば、脱塵、ガス分離、固体分離等の各種フィルター材料、触媒担体、吸着材、吸音材、断熱材、センサーなどとして利用されている。当該多孔質フィルターは、特に、高温の腐食環境下での脱塵フィルターや触媒担体等として利用される場合には、優れた耐熱性、耐食性、耐熱衝撃性、強度などが求められる。しかしながら、上記多孔質セラミックスは、フィルターや触媒担体等の用途においては、高い気孔率が求められる場合が多く、そのような場合には、耐熱性、耐食性、耐熱衝撃性、強度などの特性が損なわれることが多い。
【0003】
このような多孔質セラミックスとしてよく知られているものに、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、チタニア、コーディライト等の酸化物系セラミックスと、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の非酸化物系セラミックスがある。これらのうち、酸化物系セラミックスは、一般に、化学的安定性に優れているが、耐熱性、耐熱衝撃性、強度に劣る場合が多い。一方、非酸化物系セラミックスの場合、窒化ケイ素セラミックスは、耐熱衝撃性や強度に優れているが、耐食性に劣り、また、炭化ケイ素セラミックスは、耐熱性、耐食性に優れているが、耐熱衝撃性、強度に劣る場合が多い。
【0004】
窒化ケイ素粉末をアルミナ及び窒化アルミニウムと一緒に焼結すると、ケイ素はアルミニウムと、窒素は酸素と置換され、サイアロン(Si-Al-O-N)になる。サイアロンセラミックスは、粒界相が残されないため、耐熱・耐食性の向上が期待できる。従来、高気孔率のサイアロンセラミックス多孔体の製造方法として、例えば、特開平6-116054号公報に記載されているように、まず、緻密体を作製して、得られた焼結体について、エッチング処理し、サイアロン結晶粒子以外の相を溶出除去することにより、多孔体を製造する方法がある。しかし、この種の製造方法は、作製工程が複雑なために、コストが高く実用化にはその適用が難しいという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高気孔率を有し、しかも、耐熱性、耐食性及び機械的強度を有するサイアロンセラミックスを開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、窒化ケイ素とアルミナ及び窒化アルミニウムの反応により、β-サイアロン結晶を生成させて焼結体の緻密化を抑制して、サイアロンのz値、焼結助剤の添加及び焼結条件を調整することにより、高耐食性のサイアロンセラミックス多孔体が作製でき、これにより所期の目的が達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、上述のような従来技術の欠点を解決し、高気孔率を維持しつつ、耐熱性、耐食性及び機械的強度を兼ね備えたサイアロンセラミックス多孔体を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記特性を有するサイアロンセラミックス多孔体を簡便な操作手段で作製することを可能とする当該サイアロンセラミックス多孔体の製造方法を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、上記サイアロンセラミックス多孔体からなる優れたフィルター、担体、及び吸着機能を有する耐食性部材を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有し、少なくとも35体積%の気孔率を有する、高気孔率を維持しつつ、耐熱性、耐食性及び機械的強度を兼ね備えたサイアロンセラミックス多孔体であって、
窒化ケイ素を主成分とし、アルミナと窒化アルミニウムを添加、或いはシリカと窒化アルミニウムを添加し、焼結助剤として1重量%以下の微量のイットリアないしイッテルビアを添加して焼結することにより生成させた一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表される単結晶のβサイアロン結晶相を有してなり、高分解能電子顕微鏡観察により粒界に非結晶相がなく、平均気孔径が大きくても2μmで且つ曲げ強度が少なくても50MPaであることを特徴とするセラミックス多孔体。
(2)主成分であるβサイアロン結晶相以外のセラミックス成分を含有しないことを特徴とする、前記(1)に記載のセラミックス多孔体。
(3)気孔率が35体積%以上、60体積%以下の範囲であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のセラミックス多孔体。
(4)出発原料が、βサイアロン組成になる原料粉末の、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及びアルミナの各粉末と、焼結助剤のイットリアの混合物から成り、サイアロン結晶粒子が、主として、一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表されるβ型サイアロン系であることを特徴とする、前記(1)から(3)のいずれかに記載のセラミックス多孔体。
(5)前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有し、少なくとも35体積%の気孔率を有する、高気孔率を維持しつつ、耐熱性、耐食性及び機械的強度を兼ね備えたサイアロンセラミックス多孔体を製造する方法であって、
平均粒径が大きくても3μmの窒化ケイ素粉末に、アルミナと窒化アルミニウムを添加、或いはシリカと窒化アルミニウムを添加し、焼結助剤として1重量%以下の微量のイットリアないしイッテルビアを添加して混合し、これを成形した後、少なくとも6気圧の窒素雰囲気中又は窒素を含む不活性雰囲気中において1200℃以上で1900℃以下の温度で焼結して一般式Si6-zAl8-z(zは4以下の自然数を示す)で表される単結晶のβ型サイアロン粒子を生成させて緻密化を阻害し、それにより、微細な気孔を多量に含み、かつ粒界ガラス相が存在しない組織を有するセラミックス多孔体とすることを特徴とするセラミックス多孔体の製造方法。
(6)サイアロンのz値、焼結助剤の添加及び焼結条件を調整することにより、気孔率を制御することを特徴とする、前記(5)に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
(7)前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体からなることを特徴とするフィルター、触媒用担体、又は吸着機能を有する耐食性部材。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。本発明は、窒化ケイ素に添加した窒化アルミニウムとアルミナがすべて窒化ケイ素の結晶に溶けるため、単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有することを特徴とするセラミックス多孔体に係るものである。また、本発明は、出発原料が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及びアルミナであり、焼結助剤が微量添加であり、温度の上昇に伴いサイアロン結晶粒子を有するセラミックス多孔体とすることを特徴とするセラミックス多孔体の製造方法に係るものである。
本発明のサイアロン結晶粒子は、焼結中に窒化アルミニウムとアルミナが窒化ケイ素の結晶に溶け、この反応によって自形の結晶が生成して、α相からβ相への相転移を行う。この自形のβサイアロン結晶粒子は、きわめて耐熱性に優れ、高温ガス雰囲気下で化学的に安定である。従来の焼結方法による窒化ケイ素セラミックス多孔体などの骨格は、粒子が粒界を介して結合したものであり、耐食性に劣るのに対して、本発明のセラミックス多孔体の骨格は、均一な、かつ単一な組織であり、耐食性に優れている。
【0008】
本発明では、原料粉末として、窒化ケイ素と、窒化アルミニウム及びアルミナ、或いはシリカ及び窒化アルミニウムが用いられる。窒化ケイ素としては、平均粒径3μm以下の窒化ケイ素粉末が好適であり、窒化アルミニウムとしては、平均粒径5μm以下、アルミナとしては、平均粒径5μm以下、シリカとしては、平均粒径5μm以下の粉末がそれぞれ好適である。原料粉末は、所定の組成比のサイアロンセラミックスになるように各粉末を混合する。また、本発明においては、1重量%以下のイットリアないしイッテルビアの酸化物を添加する、これらの酸化物は、焼結する時にサイアロン結晶の中に溶解し、また、その酸化物の量により密度を制御できることが特徴である。本発明で添加される焼結助剤としては、上記イットリアないしイッテルビアの酸化物が使される。
【0009】
本発明のサイアロン結晶粒子としては、焼結助剤が微量であるため、柱状のものだけではなく、同軸状のものが得られる。また、本発明のセラミックス多孔体は、単純なβ-サイアロン結晶粒子からなるが、α-サイアロンやβ-サイアロン等の2種類以上の粒子からなっていてもよい。本発明のセラミックス多孔体は、気孔径が2μm以下の開放した微細な気孔を多数有し、表面積が大きいうえ、気孔率が40%前後であり、しかも、目的に応じてこれらを制御することができ、フィルターや触媒担体等として優れた機能を備えている。また、曲げ強度が50~100MPaと高強度であるから、構造体として高い信頼性を備えている。
【0010】
次に、本発明の方法を更に詳しく説明する。本発明のセラミックス多孔体は、一般式Si6-z Alzz 8-z (zは4以下の自然数を示す)で表されるβ型サイアロン系である。本発明のセラミックス多孔体は、基本的には平均粒径3μm以下の窒化ケイ素粉末とアルミナと窒化アルミニウムをz=0~4のβサイアロンとなるように計算し、適当な量の焼結助剤を混合する。この場合、窒化ケイ素粉末にシリカと窒化アルミニウムの組合せで添加してもよい。これを成形した後、非酸化性雰囲気中において1200℃以上の温度、より好ましくは1500℃~1900℃の温度で焼結する方法により、目的のセラミックス多孔体を製造することができる。
【0011】
非酸化性雰囲気は、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガス、水素ガスや一酸化炭素ガス等の還元性ガス、又はそれらの混合ガスであってよい。より高強度のものを得るためには、焼結温度を1500℃以上とすることが好ましい。しかし、焼結温度が過度に高くなると、気孔径や粒径が大きくなり、焼結体の強度低下を招くことになる。本発明の窒化ケイ素質多孔体の製造方法において、イットリア粉末及びイッテルビア粉末などの酸化物は焼結助剤として働き、また、サイアロンになる成分のアルミナと窒化アルミニウムは焼結助剤として働き、相転移を十分に行い、得られる焼結体に強度を付与する。更に、焼結助剤として、例えば、イットリア粉末を1重量%以下で添加すると、緻密化があまり促進されない範囲で焼結性が向上する。
【0012】
また、本発明の窒化ケイ素質多孔体の製造方法において、その焼結温度が上昇しても、サイアロン結晶は低い温度で合成されるため、気孔率を維持することができる。また、z値の増加に伴ない、アルミナと窒化アルミニウムの添加量も増加するため、密度が増加する傾向がある。しかし、z値の増加に伴ない、著しい粒成長がある。焼結においては、温度分布が均一になるように、5~10℃/分の速度で焼結温度まで上昇させ、その温度に適当な時間保持して焼結することが好ましい。
以上説明した本発明の方法によれば、単一なβサイアロン粒子からなり、優れた強度、耐熱性、耐食性、耐熱衝撃性を有するサイアロンセラミックス多孔体、その製造方法、及び当該サイアロンセラミックス多孔体からなる優れたフィルター、担体、及び吸着機能を有する部材(製品)を提供することができる。
本発明において、上記フィルター、担体、及び吸着機能を有する部材(製品)とは、従来、サイアロンセラミックス多孔体及びこの種のセラミックス多孔体が通常利用されているあらゆる種類の部材(製品)を包含するものであることを意味する。
【0013】
【作用】
本発明では、窒化ケイ素に添加した窒化アルミニウムとアルミナがすべて窒化ケイ素の結晶に溶けるため、単一なサイアロン結晶粒子からなり、粒界相が存在しない組織を有するセラミックス多孔体が得られる。このように、本発明では、焼結する際に、試料の中に単結晶のサイアロン粒子が生成されるため、緻密化が阻害されることになり、それにより、微細な気孔を多量に含むセラミックス多孔体が得られる。また、本発明では、サイアロンのz値と焼結条件により気孔率が制御でき、また、単結晶のサイアロン粒子の生成により粒界相が存在しないため、優れた耐食性が得られる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を参考例及び実施例に基いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
参考例1
(1)セラミックス多孔体の作製
平均粒径0.55μmのα-窒化ケイ素粉末(宇部興産(株)製E10)に一次粒子径0.6μmの窒化アルミニウムとアルミナ微細粉末(大明化学製のTMD)を、表1に示したようにz値が0.5、1.0、2.0、3.0、4.0になるように加え、これらをボールミル中で湿式で混合した。表1にβサイアロンの各組成(重量%)を示す。この混合粉末を、乾燥後、10~30MPaで成形し、寸法が約55mm×35mm×12mmの成形体とした。この成形体を窒素雰囲気の電気炉に入れ、1700~1900℃で2~8時間焼成した。尚、表1中、窒化ケイ素を主成分としないものは、参考例として示したものである。
【0015】
【表1】
JP0004420171B2_000002t.gif【0016】
(2)多孔体の特性
得られたセラミックス多孔体の気孔率と嵩比重を水浸法で測定し、曲げ強度をJIS R1601に準拠した3点曲げ試験法により測定した。焼結前後の寸法から収縮率を求めた。気孔径分布は約5mm×5mm×5mmの小片を試料として水銀圧入法により測定した。その結果をサイアロン多孔体の特性としてまとめて表2に示す。尚、表2中、気孔率が35%未満、曲げ強度が50MPa未満のものは、参考例として示したものである。
【0017】
【表2】
JP0004420171B2_000003t.gif【0018】
得られた試料は、z値と焼結条件により気孔率を50%以下に制御できる多孔体であった。上記試料をX線回折によって同定したところ、結晶質のβサイアロンだけが確認された(図1参照)。また、上記試料を高分解能電子顕微鏡で観察した結果、粒界に非晶質相が全くないことが分かった(図2参照)。曲げ強度は、気孔率が同程度の場合、z値が低いほど高い。
耐食性を評価するために、z=0.5、1、2の試料を1M HCl溶液に70℃で120時間に置き、質量と3点曲げ強度の変化を調べた。その結果、腐食前後の質量と強度に差異はなく、耐食性に優れた多孔体であることが分かった。
【0019】
実施例
(1)セラミックス多孔体の作製平均粒径0.55μmのα-窒化ケイ素粉末(宇部興産(株)製E10)に一次粒子径0.6μmの窒化アルミニウムとアルミナ微細粉末をz値が0.5になるように加え、更に、焼結助剤として平均粒径2μmのイットリア粉末を0.05、0.10、及び0.15重量%加え、これをボールミル中で湿式混合した。これらの混合粉末を乾燥後、10~30MPaで成形し、寸法が約55mm×35mm×12mmの成形体を得た。この成形体を窒素雰囲気の電気炉に入れ、1700~1900℃で2~8時間焼成した。
【0020】
(2)多孔体の特性
得られた多孔体の気孔率と嵩比重を水浸法で測定し、曲げ強度をJIS R1601に準拠した3点曲げ試験法により測定した。焼結前後の寸法から収縮率を求めた。気孔径分布は約5mm×5mm×5mmの小片を試料として水銀圧入法により測定した。それらの結果をイットリア添加サイアロン多孔体の特性としてまとめて表3に示す。尚、表3中、気孔率が35%未満、曲げ強度が50MPa未満のものは、参考例として示したものである。
【0021】
【表3】
JP0004420171B2_000004t.gif【0022】
得られた試料は、イットリアの添加量と焼結条件により気孔率を50%以下で制御できる多孔体であった。イットリアを過度に添加した場合は、アルミナと低融点の粒界ガラス相を形成し、ほぼ緻密な焼結体となる。表3に示した程度のイットリアの微量添加は、試料の緻密化への影響が少なく、また、粒界の拡散を活性化させ、粒子間の結合が促進される。従って、イットリアの無添加の試料に比べると、曲げ強度がほぼ2倍に向上する。イットリアもβサイアロン結晶に可溶であるため、その微量のイットリアはβサイアロン結晶に溶解して、粒界に残留するガラス相はほとんどない。このため、1200℃での曲げ強度を調べたところ、すべて室温強度の80%以上の値を示した。
【0023】
上記した参考例1及び実施例1の結果から、本発明のセラミックス多孔体は、単一なβサイアロン結晶からなり、微小な開気孔を有する気孔率の高い多孔体であり、しかも、優れた耐食性が備えていることが分かる。40%の気孔率を有する多孔体の曲げ強度は、イットリアを添加していない場合には60MPaであるのに対し、イットリアを添加した場合では100MPaに向上している。また、1200℃の高温での強度低下が少なく、優れた耐熱性も示した。
【0024】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、サイアロンセラミックス多孔体、その製造方法、及びその用途に係るものであり、本発明によれば、1)焼結によりβサイアロン結晶を主成分とし、粒界相が存在しない組織を有するセラミックス多孔体を作製することができる、2)z値、焼結助剤の添加量及び焼結条件を調整することにより、気孔率を制御することができる、3)強度、耐食性及び耐熱性等に優れ、しかも微細な開気孔を多量に含む、気孔率が50%以下のセラミックス多孔体を提供することができる、4)このセラミックス多孔体は、高温腐食環境下で優れたフィルター、担体、及び吸着機能を有する部材として有用である、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した試料についてX線回折により同定した結果を示す説明図である。
【図2】実施例で作製した試料について高分解能電子顕微鏡により観察した粒界像を示す説明図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1