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明細書 :集光型光スプリッタ及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4294261号 (P4294261)
公開番号 特開2003-329822 (P2003-329822A)
登録日 平成21年4月17日(2009.4.17)
発行日 平成21年7月8日(2009.7.8)
公開日 平成15年11月19日(2003.11.19)
発明の名称または考案の名称 集光型光スプリッタ及びその作製方法
国際特許分類 G02B   5/18        (2006.01)
B23K  26/00        (2006.01)
G02B   3/00        (2006.01)
G02B   6/122       (2006.01)
FI G02B 5/18
B23K 26/00 G
G02B 3/00 Z
G02B 6/12 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2002-138035 (P2002-138035)
出願日 平成14年5月14日(2002.5.14)
審査請求日 平成17年5月13日(2005.5.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
発明者または考案者 【氏名】中谷 隆幸
【氏名】邱 建栄
【氏名】平尾 一之
個別代理人の代理人 【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】藤岡 善行
参考文献・文献 特開2000-249859(JP,A)
特開昭61-233703(JP,A)
特開2001-291266(JP,A)
特表2001-516468(JP,A)
調査した分野 G02B 5/18
B23K 26/00
G02B 3/00
G02B 6/12
特許請求の範囲 【請求項1】
パルスレーザ光の集光照射で形成された複数の屈折率変化領域が単一のガラス内部に形成されており、屈折率変化領域の少なくとも一つを回折格子,残りの屈折率変化領域の少なくとも一つをマイクロレンズとすることを特徴とする集積型光スプリッタ。
【請求項2】
集光点を光学ガラスの内部に調節したパルスレーザ光で光学ガラスを一方向にスキャンして回折格子をガラス内部に書き込んだ後、ガラス厚み方向(Z軸方向)に集光点を移動させ、Z軸周りに光学ガラスを相対的に回転させながらパルスレーザ光で集光照射してマイクロレンズを書き込むことにより、単一のガラス内部に回折格子及びマイクロレンズを一体的に書き込むことを特徴とする集積型光スプリッタの作製方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ガラス内部に回折格子,マイクロレンズが一体的に作り込まれた集積型光スプリッタ及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来技術及び問題点】
一つの光を複数の光に分岐する素子である光スプリッタには、光導波路型,回折格子とマイクロレンズの組合せによる方式等がある。光導波路型は、Y字を多段に連結させた導波路を作りこむことにより作製される。光導波路型光スプリッタの作製には、フォトリソグラフィー技術が採用されており、基板上に堆積させたガラス膜をエッチングすることにより導波路パターンを形成し、更にその上にクラッド層を堆積させている。
【0003】
回折格子とマイクロレンズの組合せによる方式では、回折格子で分岐した光をマイクロレンズによって光ファイバに集光・結合させている。回折格子及びマイクロレンズはそれぞれ別個に作製され、パッケージ内に実装される。回折格子の作製には、フォトリソグラフィーが採用されている。マスクパターンを用いてフォトレジストにパターンを転写した後、エッチングすることにより回折格子となる。他方、マイクロレンズの作製には、イオン交換法等が採用される。回折格子,マイクロレンズの実装は、位置決めの許容誤差が数μmと厳しいため人手に頼っている現状である。
このように、光導波路型,回折格子,マイクロレンズの作製には多数の工程が必要とされ、生産性の改善が要求されている。また、素子の組合せに際しては、素子相互を極めて高精度で位置決めする熟練した技術が要求される。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、ガラス内部に集光点を設定したパルスレーザの照射により集光点近傍の屈折率が変化することを利用し、回折格子,マイクロレンズを単一の光学ガラス内部に書き込むことにより、工程を簡略化し、熟練した高度技術も必要とすることなく、高精度の集積型光スプリッタを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の集積型光スプリッタは、その目的を達成するため、パルスレーザ光の集光照射で形成された複数の屈折率変化領域が単一のガラス内部に形成されており、屈折率変化領域の少なくとも一つを回折格子,残りの屈折率変化領域の少なくとも一つをマイクロレンズとしている。この集積型光スプリッタは、集光点を光学ガラスの内部に調節したパルスレーザ光で光学ガラスを一方向にスキャンして回折格子をガラス内部に書き込んだ後、ガラス厚み方向(Z軸方向)に集光点を移動させ、Z軸周りに光学ガラスを相対的に回転させながらパルスレーザ光で集光照射してマイクロレンズを書き込むことにより、単一のガラス内部に回折格子及びマイクロレンズを一体的に書き込んで作製される。
【0006】
【作用】
パルスレーザの集光点をレンズ等の集光装置によってガラス内部に設定し、光学ガラスをパルスレーザで照射すると、ガラス表面を疵付けることなく集光点近傍の屈折率が変化する。このパルスレーザの集光照射によってガラス内部に任意のパターンで屈折率変化領域が形成されるため、屈折率変化のラインを周期的に書き込むことにより、光分岐用のDammann型グレーティングや集光用のバイナリ-レンズをガラス内部に直接形成できる(特願2001-202300号,特願2001-224862号)。
【0007】
本発明は、Dammann型グレーティング(光分岐用素子)やバイナリ-レンズ(集光素子)を単一のガラス内部に直接書き込むことにより集積型光スプリッタの作製を可能にしたものである。この集積型光スプリッタにおいては、入射光がDammann型グレーティングで任意個数の光に分岐され、バイナリ-レンズによって光ファイバに集光・結合される。しかも、単独のプロセス内で光学的精度でDammann型グレーティング,バイナリ-レンズが単一のガラス内部に一体的に書き込まれるため、Dammann型グレーティング,バイナリ-レンズ相互の位置関係も高精度に維持される。
【0008】
集積型光スプリッタの作製に際しては、先ずDammann型グレーティングをガラス内部に書き込む(図1a)。すなわち、XYZステージ1にガラス試片Sを載置する。ガラス試片Sを照射するパルスレーザ光Lは、コンピュータ2で開閉動作が制御されるシャッター3を経て対物レンズ4を透過する。コンピュータ2は、シャッター3の開閉をXYZステージ1の移動と同期させる。
【0009】
対物レンズ4は、集光点がガラス試片Sの内部に位置するようにパルスレーザ光Lを絞り込む。集光点がガラス試片S内部に設定されたパルスレーザ光Lでガラス試片Sを集光照射しながらXYZステージ1をX軸方向に移動し、パルスレーザ光Lの集光照射を繰り返すと、屈折率が変化した複数の直線部が平行に配列した屈折率変化領域からなる一次元のDammann型グレーティングGが集光点近傍に形成される。均一な屈折率変化を誘起させるためには、パルスレーザ光Lの強度を適切な値に調節する必要がある。たとえば、石英ガラスをガラス試片Sに使用する場合、ピークパワー密度を1015W/cm2以下に調整することによりクラックの入らない均一な屈折率変化領域が書き込まれる。
【0010】
XYZステージ1の移動方向をX-Y平面に取りパルスレーザ光Lの集光照射を繰り返すと、屈折率が変化した複数の直線部が市松模様に配列された二次元のDammann型グレーティングも作製できる。二次元のDammann型グレーティングは、二次元的な分岐光の生成を可能にする。また、Dammann型グレーティングGに代えて、計算機ホログラム等、他の回折格子も同様なパルスレーザ光Lの集光照射によって作製できる。
【0011】
Dammann型グレーティングGを形成した後、XYZステージ1をZ軸方向に移動し、XYZステージ1をZ軸周りに回転させながらパルスレーザ光Lでガラス試片Sを集光照射し、Z軸を中心とする同心円状軌跡に沿って集光点を移動させるとき、ガラス内部のDammann型グレーティングGから離れた位置にバイナリ-レンズBが書き込まれる(図1b)。Dammann型グレーティングGからバイナリ-レンズBまでの距離は、Z軸方向に沿ったXYZステージ1の移動量によって調整できる。バイナリ-レンズBの書込みに際しても、クラックの入らない均一な屈折率変化領域が形成されるようにピークパワー密度を1015W/cm2以下に調節することが好ましい。
【0012】
この方法では、XYZステージ1をZ軸方向に移動させる簡単な操作により、Dammann型グレーティングGに続けてバイナリ-レンズBが書き込まれる。そのため、従来のように素子相互の位置決めが一切不要になり、Dammann型グレーティングG、バイナリ-レンズBの間に高精度の位置関係が確保され、極めて性能の高い集積型光スプリッタが得られる。
【0013】
【実施例】
全面研磨された4mm×4mm×10mmの合成石英ガラスをガラス試片Sに使用した。4mm×4mmの面が底面となるように、ガラス試片SをXYZステージ1に載置し、底面から0.5mmの位置に対物レンズ4の焦点を調節した。対物レンズ4には、10×(NA=0.3)を用いた。
波長800nm,パルス幅1.3×10-13秒,繰返し周期200kHzのパルスレーザ光Lを描画に使用した。適切な屈折率変化を誘起させるため、パルスレーザ光Lの平均出力を250mW,描画のスキャン速度を25μm/秒に設定した。
【0014】
パルスレーザ光Lの集光照射によって周期45.6μmの1×2Dammann型グレーティングGをガラス内部に書き込んだ。次いで、XYZステージ1をZ軸方向に9mm移動させ、XYZステージ1を回転させながら同じパルスレーザ光Lの集光照射により波長633nmで焦点距離9mmのバイナリ-レンズBを書き込んだ。一般的な光ファイバ用V溝の間隔が250μmであることから、バイナリ-レンズBの焦点面において250μm離れて二つの分岐光が結像するようにDammann型グレーティングG及びバイナリ-レンズBを設計した。
【0015】
パルスレーザ光L集光照射後のガラス試片Sを観察したところ、ガラス内部にDammann型グレーティングG、バイナリ-レンズBが形成された集積型光スプリッタになっており、ガラス表面には何らの疵付きも検出されなかった(図2)。実際に集積型光スプリッタにHe-Neレーザを入射させ、出射光をバイナリ-レンズBの焦点面でCCDカメラにより撮影した。その結果、結像及び強度分布を示す図3にみられるように、設計通り約250μmの間隔で二つの分岐光が確認された。
【0016】
【発明の効果】
以上に説明したように、集光点をガラス内部に調節したパルスレーザ光の集光照射によってガラス内部の所定位置を局部的に屈折率変化させ、回折格子,マイクロレンズがガラス内部に一体的に書き込まれた集積型光スプリッタを得ている。その結果,フォトリソグラフィーを使用した従来の作製法に比較して工程数を大幅に削減でき、人手による素子相互の位置決めも不要になるため、全体として大幅な製造コストの削減が図られる。更には、回折格子,マイクロレンズ以外の光素子を集積化することも可能であり、三次元光集積素子の展開が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Dammann型グレーティングの書込み(a),バイナリ-レンズBの書込み(b)を説明する図
【図2】 作製された集積型光スプリッタの内部構造を示す斜視図(a),Dammann型グレーティング(b)及びバイナリ-レンズ(c)
【図3】 集積型光スプリッタの結像(a)及び強度分布(b)を示す写真
【符号の説明】
1:XYZステージ,2:コンピュータ,3:シャッター,4:対物レンズ
S:ガラス試片,G:Dammann型グレーティング,B:バイナリ-レンズ
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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