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明細書 :金属酸化物ナノチューブ及びその製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3821223号 (P3821223)
公開番号 特開2004-026509 (P2004-026509A)
登録日 平成18年6月30日(2006.6.30)
発行日 平成18年9月13日(2006.9.13)
公開日 平成16年1月29日(2004.1.29)
発明の名称または考案の名称 金属酸化物ナノチューブ及びその製法
国際特許分類 C01B  13/32        (2006.01)
C01B   3/00        (2006.01)
C01B  33/12        (2006.01)
B01J  20/10        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
FI C01B 13/32
C01B 3/00 B
C01B 33/12 Z
B01J 20/10 A
B01J 20/30
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2002-150356 (P2002-150356)
出願日 平成14年5月24日(2002.5.24)
審査請求日 平成14年5月24日(2002.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】清水 敏美
【氏名】ヂォン,ヂォンホア
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開2003-049154(JP,A)
特開2002-159848(JP,A)
特開2001-253705(JP,A)
Jong Hwa Jung et al.,高分子学会予稿集,2002年 5月10日,Vol.51, No.2,pp.173, IID19
Jong Hwa Jung et al.,Chem. Mater.,2002年 3月19日,Vol.14, No.4,pp.1445-1447
浜崎暢央 他,繊維学会予稿集,2001年 9月20日,Vol.56, No.3,pp.53, 1D01
Jong Hwa Jung et al.,Chem. Commun.,2000年11月10日,Vol.2000,pp.2343-2344
調査した分野 C01B 13/32
B01J 20/10
B01J 20/30
C01B 3/00
C01B 33/12
特許請求の範囲 【請求項1】
Brunauer-Emmett-Teller(BET)法により測定した場合に1~2nm及び3~7nmの範囲にある2つのピーク穴径を有する穴径分布を有し、該1~2nmのピーク穴径に相当する穴径分布を有する中空シリンダー状の2本のナノチューブから成り、該2本のナノチューブが該3~7nmのピーク穴径に相当するナノチューブ間のピーク間隔を有する二重らせんを構成し、水酸基を含んでもよいケイ素酸化物のみから成金属酸化物ナノチューブ。
【請求項2】
水中又は水とアルコールの混合液中で下記化学式
【化1】
JP0003821223B2_000008t.gif
で表される化合物1及び下記化学式
【化2】
JP0003821223B2_000009t.gif
(式中、A及びBは、それぞれ同じであっても異なってもよく、糖の残基を表し、Rはアルキル基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す。)で表される化合物2とを溶解させて静置することにより形成するらせん状繊維を鋳型として形成された請求項1に記載の金属酸化物ナノチューブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属酸化物ナノチューブから成る気体吸蔵材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属酸化物ナノチューブから成る水素吸蔵材。
【請求項5】
水中又は水とアルコールの混合液中で下記化学式
【化1】
JP0003821223B2_000010t.gif
で表される化合物1及び下記化学式
【化2】
JP0003821223B2_000011t.gif
(式中、A及びBは、それぞれ同じであっても異なってもよく、糖の残基を表し、Rはアルキル基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す。)で表される化合物2とを溶解させて静置する段階、更にケイ素酸化物の前駆体を混合する段階、更にケイ素酸化物の前駆体をケイ素酸化物とするための触媒を混合する段階、前段階により生成したゲルを焼成する段階から成る、水酸基を含んでもよいケイ素酸化物のみから成る金属酸化物ナノチューブの製法。
【請求項6】
前記ケイ素酸化物の前駆体がケイ素のアルコキシドである請求項に記載の製法。
【請求項7】
前記最初の段階が水とアルコールの混合液中で行われ、該アルコールの炭素数が4以下であり、混合液中のアルコールの割合が10~50重量%である請求項5又は6に記載の製法。
【請求項8】
前記触媒が塩基性触媒である請求項5~7のいずれか一項に記載の製法。
【請求項9】
前記化合物1及び化合物2の合計に対する化合物1の割合が20~90モル%であり、前記化合物1に対する前記ケイ素酸化物の前駆体中のケイ素の割合が10~150倍当量である請求項5~8のいずれか一項に記載の製法。
【請求項10】
前記A及びBが、それぞれ同じであっても異なってもよく、アルドピラノースの6員環に結合するいずれか一の水酸基の水素を除いた残基を表す請求項5~9のいずれか一項に記載の製法。
【請求項11】
前記アルドピラノースがグルコピラノース又はガラクトピラノースである請求項10に記載の製法。
【請求項12】
前記化合物1のアルカノイルアミノ基(-NHCOR)が糖残基Aに対してパラ位にあり、前記化合物2のアミノ基(-NR’H)が糖残基Bに対してパラ位にあり、A及びBが同一の糖残基であり、Rが炭素数6~20の直鎖のアルキル基であり、R’が水素原子である請求項5~11のいずれか一項に記載の製法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自己集積性をもつ有機化合物から成るハイドロゲルを鋳型にして製造されたケイ素酸化物のみから成る金属酸化物ナノチューブに関し、より詳細には、ケイ素酸化物から構成される中空シリンダー状微小構造を持ち気体吸蔵能、特に水素吸蔵能を有する金属酸化物ナノチューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、特定の構造の有機物が溶液中で自己集合することにより形成されるナノメートルサイズの集合体の研究を行っており(John, G.; Masuda, M.; Okada, Y.; Yase, K.; Shimizu, T. Adv. Mater. 2001, 13, 715. : Masuda, M.; Hanada, T.; Okada, Y.; Yase, K.; Shimizu, T. Macromolecules 2000, 33, 9233. : Nakazawa, I.; Masuda, M.; Okada, Y.; Hanada, T.; Yase, K.; Asai, M.; Shimizu, T. Langmuir 1999, 15, 4757. : Shimizu, T.; Masuda, M. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 2812.:特願2001-239014:特願2001-248636等)、このような研究の途上で、気体吸蔵能、特に水素吸蔵能が優れたナノチューブを見出した。
【0003】
このような水素吸蔵能を有する材料として、カーボンナノチューブやカーボンファイバーなどのナノメートルオーダーの空間や空隙のある材料が知られている(WO00/40509、特開2002-54559等)。特に、一部のカーボンナノチューブにおいて、4~8重量%の水素吸蔵力を示した実験例はあるが、実質的ではない高い圧力条件であったり、液体窒素温度条件下での測定例であるという欠点を有しており、不可逆な条件下のみで作用するため、繰り返し使用ができないという欠点も有している(例えば、J. Richter, R. Seidel, R. Kirsch, M. Merting, W. Pompe, J. Plaschke, H. Schacker, Adv. Mater., 12, 507 (2000). P. Chen, X/ Wu, J. Lin, K.L. Tan, Science, 285, 91 (1999).)。
一般に、普通乗用車が500km走行するに必要な水素ガスを車内に貯蔵するためには、3重量%程度の水素吸蔵能力が必要とされ、これが実用レベルとして目標とされている。しかし、ばらつきはあるが水素吸蔵能力として、単層カーボンナノチューブで約3重量%以下、カーボンファイバーで約1.5重量%以下、活性炭で約0.6重量%が知られており、この目標に達しているとは言い難い。そればかりか、単層及び多層カーボンナノチューブは非常に高価であり、大量生産が不向きなど多くの解決すべき問題があった。
【0004】
また、この他の水素吸蔵材料としてナノメートルオーダーの空隙を有する水素吸蔵合金、メゾポーラス材料、多孔性有機材料などが知られているが(特開2002-105609等)、実用化レベルに充分な水素吸蔵能力を示す性能に達していない。特に水素吸蔵合金では比重が大きい、毒性がある、あるいは希少高価な金属が有効成分であったり、水素吸脱着に伴い微粉末化するなどの解決すべき問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の金属酸化物ナノチューブは、特定の構造の有機物が溶液中で自己集合することにより形成されるナノメートルサイズの集合体の研究の途上で見出されたものであり、本発明は、簡便にかつ安価に製造が可能であり、しかも大量生産、繰り返し使用が可能であり、気体吸蔵能、特に3重量%程度の水素吸蔵能を有するナノチューブを提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既に、水中で下記化学式
【化1】
JP0003821223B2_000002t.gif(式中、Aは糖の残基を表し、Rはアルキル基を表す。)で表される化合物1が自己集合することによりらせん状繊維が得られることを見出していた(特願2001-239014)。本発明者らは、このらせん状繊維を利用することにより、金属酸化物のみから成るナノチューブを作成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、この化合物1の一部を下記化学式
【化2】
JP0003821223B2_000003t.gif(式中、Bは糖の残基を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す。)で表される化合物2で置き換えると、同様にらせん状繊維が形成される。これにケイ素酸化物の前駆体(例えば、アルコキシド)を加えると、化合物2のアミノ基(一級アミノ基(-NH)及び二級アミノ基(-NRH))とこの前駆体との水素結合により、このらせん状繊維の表面にケイ素酸化物の前駆体が吸着する。その結果、このらせん状繊維を鋳型として、このらせん状繊維を取り囲む構造をしたケイ素酸化物の前駆体から成る集合体が形成される。
【0008】
これにこのケイ素酸化物の前駆体からケイ素酸化物(即ち、金属がエーテル状酸素を介して結合する構造体)への形成反応を触媒作用する触媒を添加することにより、このらせん状繊維を鋳型としたケイ素酸化物の構造物が形成される。この状態では、ケイ素酸化物と上記有機化合物(化合物1と化合物2とから成るらせん状繊維)とから成るゲルとなっているが、らせん状繊維を取り囲む構造を維持したまま、高温で焼成して有機物を除去すると、ケイ素酸化物のみから成るナノチューブが形成される。
【0009】
即ち、本発明は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法により測定した場合に1~2nm及び3~7nmの範囲にある2つのピーク穴径を有する穴径分布を有し、該1~2nmのピーク穴径に相当する穴径分布を有する中空シリンダー状の2本のナノチューブから成り、該2本のナノチューブが該3~7nmのピーク穴径に相当するナノチューブ間のピーク間隔を有する二重らせんを構成し、水酸基を含んでもよいケイ素酸化物のみから成る金属酸化物ナノチューブである。
この金属酸化物ナノチューブは、水中又は水とアルコールの混合液中で下記化学式
【化1】
JP0003821223B2_000004t.gifで表される化合物1及び下記化学式
【化2】
JP0003821223B2_000005t.gifで表される化合物2とを溶解させて静置することにより形成するらせん状繊維を鋳型として形成されることが好ましい。
【0010】
上記式中、A及びBは、それぞれ同じであっても異なってもよく、糖の残基を表す。また、A及びBが同一の糖残基であることが、らせん状繊維を効率的に形成するために好ましい。この糖は単糖類、オリゴ糖類、又は多糖類のいかなる糖であってもよいが、単糖類であることが好ましい。この単糖類としては、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミンなどのヘキソース、Lアラビノシドやキシロースのペント-スなどいずれでもよいが、特にアルドピラノースが好ましい。ピラノースにはα及びβの2種類があるがいずれでもよい。このアルドピラノースとして、グルコピラノース、ガラクトピラノース、マンノピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、グロピラノース、イドピラノース、タロピラノース等が挙げられる。アルドピラノースとしては、グルコピラノース又はガラクトピラノースが好ましい。
【0011】
また、残基とは糖のいずれか一の水酸基の水素を除いた残基を表すが、好ましくはアルドピラノースの6員環に結合するいずれか一の水酸基の水素を除いた残基を表す。
また、化合物1においてアルカノイルアミノ基(-NHCOR)が糖残基Aに対してo位、m位又はp位のいずれにあってもよいが、パラ位にあることが好ましく、化合物2においてもアミノ基(-NR’H)が糖残基Bに対してo位、m位又はp位のいずれにあってもよいが、パラ位にあることが好ましい。
【0012】
一方、上記化学式1中のRはアルキル基を表す。このアルキル基は直鎖であっても、分枝鎖を有するものであってもよいが、直鎖が好ましい。炭素数は好ましくは6~20、より好ましくは10~20、更に好ましくは10~14である。このようなアルキル基としては、例えば、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。
また、上記化学式2中のR’は水素原子又はアルキル基、好ましくは水素原子を表す。アルキル基としては、炭素数は4以下が好ましく、更に直鎖が好ましい。
化合物2は、相当するニトロフェニルアルドピラノシドを常法により還元して得ることができ、化合物1は化合物2に長鎖アルキル脂肪酸クロライドを反応させて得ることができる。
【0013】
この金属酸化物は、化合物1と2とから形成されるらせん状繊維の表面上のアミノ基にその前駆体が吸着するケイ素酸化物である。
このケイ素酸化物は、必ずしもSiO組成式で表されるもののみでなく、水酸基を含むものであってもよい。
【0014】
例えば、アルコキシシリカから得たケイ素酸化物の場合には、ケイ素原子まわりの構造が4種類(Q1、Q2,Q3,Q4)ある。一つは、4本の手がすべて酸素原子につながりそれらは隣のケイ素とつながっているもの(Q4)であり、第2番目は4本の一つだけ水酸基で終端し、その他は酸素につながっているもの(Q3)であり、第3番目は2本が水酸基で終端し、残り2本が酸素につながっているもの(Q2)であり、最後は3本が水酸基で終端し、残り1本が酸素につながっているもの(Q1)である。ケイ素のNMRを測定すると、それぞれを区別することができるので、存在割合がわかる。本発明のシリカナノチューブの場合には、Q4/Q3が2~6にある。
【0015】
本発明者らは、この金属酸化物ナノチューブが、上述の穴径分布を有することによるものと考えられる、気体、特に水素を吸蔵する能力のあることを見出した。即ち、本発明は、上記いずれかの金属酸化物ナノチューブから成る気体吸蔵材である。特に、本発明は、この気体が水素である水素吸蔵材である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の金属酸化物ナノチューブの製法は、水中又は水とアルコールの混合液中で下記化学式
【化1】
JP0003821223B2_000006t.gifで表される化合物1及び下記化学式
【化2】
JP0003821223B2_000007t.gif(式中、A、B、R及びR’は上記のとおりである。)で表される化合物2とを溶解させて静置する段階(第1段階)、更にケイ素酸化物の前駆体を混合する段階(第2段階)、更にケイ素酸化物の前駆体をケイ素酸化物とするための触媒を混合する段階(第3段階)、前段階により生成したゲルを焼成する段階(第4段階)から成る。この第1段階~第4段階はこの順序で行う。
【0017】
第1段階においては、化合物1と化合物2を混合して、水中又は水/アルコール混合溶媒中に溶解させる。この第1段階は、水とアルコールの混合液中で行われることが好ましい。このアルコールの炭素数は4以下であることが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールが好ましい。この混合液中のアルコールの割合は10~50重量%が好ましい。この混合液中のアルコール成分が多すぎると、ゲル化が起こらず成分は溶解したままであり、鋳型としての有効ならせん状繊維の極微小分子集合体が形成しにくい。この混合液中のアルコール成分が少なすぎると、各成分を有効に分散又は溶解させることが困難となる。
溶媒(混合液)中の化合物1と化合物2の濃度は、約1~20g/l、好ましくは約5~10g/l程度が適当である。
【0018】
化合物1と化合物2の合計に対する化合物2の割合は20モル%以上、好ましくは20~90モル%が適当である。この割合が少なすぎると、得られる分子集合体の形態は顆粒状となり、繊維状集合体とはなりにくい。得られた分子集合体の成分分析から、いずれの割合で混合したときも、化合物2は約20%含まれることがわかった。目的の中空シリンダー状微小酸化物構造体を効率よく得るためには、化合物2の全体に対する存在比は40~50%が最も望ましい。
この第1段階においては、化合物1と化合物2が溶媒中に溶解することを促進させるために、若干加熱してもよい。その後は、化合物1と化合物2との自己凝集によってらせん状繊維を形成させるため、室温で静置することが好ましい。らせん状繊維を形成に要する時間は、ゲルの形成を見て定めればよく、通常半日以内である。
【0019】
第2段階においては、らせん状繊維が形成されてからケイ素酸化物の前駆体を混合する。このケイ素酸化物の前駆体は、上記のケイ素酸化物を形成させるものであればどのような形態であってもよいが、このケイ素のアルコキシドが好ましい。例えば、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジエトキシイソプロピルシラン、アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。原料の入手のし易さやコストから、テトラエトキシシランが好ましい。
【0020】
この段階でケイ素酸化物の前駆体を加えると、このケイ素酸化物の前駆体は、前段階で形成した分子集合体(らせん状繊維)表面上に吸着する。即ち、この段階では、この分子集合体(らせん状繊維)中に部分的に取り込められた化合物2との水素結合相互作用や静電的な相互作用によって、ケイ素酸化物の前駆体であるアニオンが強く集合体表面上に吸着される。
化合物1に対するケイ素酸化物の前駆体中のケイ素の割合は好ましくは10~150倍当量、より好ましくは50~100倍当量である。
室温で約1日~10日間ほどこの反応混合液を放置する。放置期間が長いほど、らせん状繊維の分子集合体表面上へのケイ素酸化物前駆体の吸着量が増加し、焼成後得られる中空シリンダー状微小ケイ素酸化物構造体の厚さが大きくなる。好適には、4~8日間がよい。
【0021】
第3段階においては、ケイ素酸化物の前駆体を重合させてケイ素酸化物とする。前述のようにこのケイ素酸化物は水酸基を含んでもよい。この重合のための触媒としては、塩基性触媒が望ましく、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物などが挙げられる。触媒量は、化合物1の仕込みと重量比で同程度量でよい。また、pH値としては、4~10程度が適当であるが、最適には7~10である。
なお、第1段階から第3段階においては、順に前段階が完全に完了してから次段階を行うことが最も好ましいが、前段階が完了する前又は完了を確認する前に次段階を行ってもよい。
【0022】
第4段階においては、第3段階の生成物から有機物を消却除去させるために焼成反応を行う。この処理により、有機物である分子集合体(らせん状繊維)を鋳型として、ケイ素酸化物のみから成る金属酸化物ナノチューブが得られる。
まず、第3段階の生成物を、100~200℃で2時間程度加熱し、その後500℃に温度を上げる。これらは、いずれも窒素ガス雰囲気で行うのが好ましい。最初に比較的低温で焼成反応を行うのは、まず初めに溶媒である水分やアルコール成分をゆっくり蒸発させるためである。
その後、焼成を、空気雰囲気下で500℃で4~6時間行う。焼成時間は、サンプル量や焼成装置の能力に大きく依存し、小型装置だと、サンプルがミリグラムオーダーであると数時間、グラムオーダーだと数日の焼成が必要となる。
【0023】
【発明の効果】
本発明においては、既に見出していたらせん状繊維(特願2001-239014)を利用して、ケイ素酸化物のみから成る全く新規なナノチューブを作成することに成功した。この金属酸化物ナノチューブは、気体吸蔵材料、特に水素吸蔵材料として極めて有用である。実施例に示すが、この金属酸化物ナノチューブの単位体積当たりの水素吸蔵能はきわめて高い。そのため、この金属酸化物ナノチューブは、水素の製造、貯蔵・輸送、利用技術において有用である。特に水素製造、水素発電用の施設で使われる貯蔵関連材料、水素自動車用の燃料貯蔵材料、燃料電池用材料など、エネルギー・環境分野での利用価値は非常に高い。
【0024】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。以下の実施例において、形成するらせん状繊維やナノファイバーは、EF-TEM(エネルギーフィルター付透過型電子顕微鏡)(Nakazawa, I.; Masuda, M.; Okada, Y.; Hanada, T.; Yase, K.; Asai, M.; Shimizu, T. Langmuir 1999, 15, 4757.)、NMR、FT-IR及びXRDにより観察した。なお、薄層クロマトグラフィーのRf値としては、ヘキサン/酢酸エチル(容積比6/4)混合溶媒を展開溶媒としたときの値をRfとした。
【0025】
製造例1
p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド(東京化成製)(250mg)をメタノール/テトラハイドロフラン混合溶媒(20ml/5ml)に溶解させ、10%パラジウム炭素(250mg)をその溶液中に加えた。水素ガスを窒素ガス雰囲気下、室温で3時間、反応溶液中に導入した。反応混合物はパラジウム炭素を除去するために濾過を行い、ろ液を真空下蒸発させ、乾固させた。この残査をテトラハイドロフラン/クロロホルム混合溶媒(1/1,容積比)を溶離液とするシリカゲルカラムクトマトグラフィーを用いて精製して、p-アミノフェニル-β-D-グルコピラノシドを得た。
Yield 80-90 %; 1H NMR (300MHz, DMSO- d6): δ =3.44-4.10 (m, 6H), 4.76 (s, 2H), 5.25-5.31 (m, 3H), 5.60(s, 1H), 6.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.37-7.46 (m,5H); FT-IR (KBr): ν= 3312, 2909, 1635, 1510, 1364, 1217, 1089, 1005, 1035, 999, 806, 706 cm-1; MS (NBA): m/z: 360 [M+H]+; elemental analysis calcd (%) for C19H21NO6: C 63.50, H 5.89, N 3.90; found: C 63.18, H 6.04, N 3.78.
【0026】
このようにして得たp-アミノフェニル-β-D-グルコピラノシド(250mg)をテトラハイドロフラン(20ml)に溶解させ、ラウロイルクロリド(300mg)とトリエチルアミン(1.0g)を加えた。反応混合物は5時間、環流した。反応溶液は濾過して、固体を除去し、ろ液は真空下、蒸発させて乾固させた。残査はメタノール/クロロホルム(1/1,容積比)を溶離液としたシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、ドデカノイルアミノフェニル-β-D-グルコピラノシドを得た。
Yield 80 %; 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 0.9 (t, 3H), 1.5-3.0 (m, 15H), 3.50-4.13 (m, 6H), 4.76 (s, 2H), 5.25-5.31 (m, 3H), 5.63 (s, 1H), 6.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.30 (d, 2H); FT-IR (KBr): ν= 3340, 2912, 1630, 1510, 1364, 1217, 1089, 1005, 1035, 999, 806, 706 cm-1; MS (NBA): m/z: 452.27 [M+H]+; elemental analysis calcd (%) for C24H37NO7: C 63.84, H 8.26, N 3.10; found: C 62.15, H 8.37, N 3.30
【0027】
実施例1
製造例1で得たp-ドデカノイルアミノフェニルグルコピラノシド(3mg)とp-アミノフェニルグルコピラノシド(3mg)を、水-メタノール混合溶媒(10:1,体積比、1ml)に70℃に加温して溶解させ、次にテトラエトキシシラン(20mg)を加え、その後ベンジルアミン(6mg)を添加した。
徐冷して得られたゲルをそのまま、攪拌などを行わずに室温下、7日間放置した。その後、この試料を窒素ガス雰囲気下、まずは200℃で2時間、その後、500℃で2時間焼成を行った。その後、空気中で500℃で4時間焼成を行い、有機物を完全に除去した。その結果、金属酸化物微小構造体(金属酸化物ナノチューブ)が得られた。
【0028】
この金属酸化物ナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察した。この走査型電子顕微鏡写真を図1に、透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。二本のナノチューブから成る二重らせん状の繊維が観察される。
さらに、得られた二重らせんシリカナノチューブの焼成前と焼成後の透過型電子顕微鏡写真(エネルギー損失型分光法)を図3に示す。エネルギー損失型分光法を併用した電子顕微鏡観察(例えば、日本油化学会誌、第47巻、第10号、197頁~203頁、1998年)に行うことにより、ケイ素と炭素それぞれのナノ構造対中の元素分布図を作成した。焼成前(A~C)ではケイ素(B)及び炭素(即ち、有機物)(C)の存在が確認されたのに対し、焼成後(D~F)では、ケイ素(E)のみの存在が確認され、炭素(F)は確認されなかった。このことは鋳型である有機物が完全に除去されたことを意味する。
【0029】
得られた金属酸化物ナノチューブを用いて、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法により窒素ガスの吸・脱着等温曲線を求めた。すなわち、金属酸化ナノチューブを300℃で71時間、高真空下で完全脱気したのち、ゆっくりと室温に下げた。次に、液体窒素温度条件下(約-195℃)で、連続的に既知量の窒素ガスを試料セルに加えて圧力を測定する操作を繰り返して、吸着等温線を得た。同様に相対圧力を1から徐々に下げた時に試料から脱離したガス量を測定することで、脱離等温線を得た。図4に得られた穴径サイズ-体積曲線を示す。
その結果、二つのピーク穴径(図4の曲線のピーク)が認められ、この金属酸化物ナノチューブの穴面積は450~500m/gであることがわかる。これら二つのピーク穴径(1.2~1.5nm及び約5nm)は、1.2~1.5nmの穴径は、電子顕微鏡で観察できた二重らせんの個々のナノチューブの中心部に存在する中空シリンダーに、約5nmの穴径は、ナノチューブとナノチューブとの間に形成されたナノスペース空隙に帰属すると考えられる。
これらの結果から、得られたナノチューブは、金属酸化物のみから成り、図5に示すように、外径が約2.5nm、内径が約1.2~1.5nm、かつ長さが数百μmの中空シリンダー状のナノチューブが二重らせん(二本のナノチューブ間の間隔が約5nm)を構成していると考えられる。
【0030】
また、得られた金属酸化物ナノチューブを窒素ガスの吸・脱着と同様な方法により完全脱気したのち、水素ガスを一定温度で、1~10MPaと圧力を変化させながら導入し、その際得られた重量変化量より吸・脱着ガス量を求め、吸・脱着等温曲線を得た。図6に実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブの水素の吸・脱着等温曲線を示す。
この金属酸化物ナノチューブの10MPa、273Kにおける水素吸着能は3.66wt%であった(曲線A)。同様に10MPa、288Kにおける水素吸着能は約3.22wt%(曲線B)、10MPa、298Kにおける水素吸着能は約3.0wt%(曲線C)を示した。
【0031】
実施例2
実施例1のp-ドデカノイルアミノフェニルグルコピラノシドの代わりにp-ドデカノイルアミノフェニルガラクトピラノシド、p-アミノフェニルグルコピラノシドの代わりにp-アミノフェニルガラクトピラノシドを使用して、実施例1と同様の操作を行ったところ、同様に二重らせんシリカナノチューブが得られた。
実施例3
実施例1のp-ドデカノイルアミノフェニルグルコピラノシドの代わりにp-テトラデカノイルアミノフェニルグルコピラノシドを用いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、同様に二重らせんシリカナノチューブが得られた。
【0032】
実施例4
実施例1のベンジルアミンの代わりにヘキシルアミンを用いて、実施例1と同様の操作を行ったところ、同様に二重らせんシリカナノチューブが得られた。
比較例1
コレステロールとジアザクラウンエーテル部を分子両端にもつゲル化剤(5mg)を等モル量の過塩素酸カリウムの存在下で1グラムのジクロロメタンに溶解させて、カリウム錯体を得た。それを、テトラエトキシシラン(15mg)、ベンジルアミン(6mg)を含む1-ブタノール(95mg)に加え、加温して溶解させたのち、室温下、1日放置した。得られたゲルは真空乾燥し、そのあと、窒素ガス雰囲気下、200℃で1時間、500℃で2時間、さらに空気雰囲気下、500℃で4時間、乾燥し、焼成反応を行って、内径が約300~500nmの多層シリカナノチューブを得た(J.H. Jung, Y. Ono, S. Shinkai, Langmuir,16, 1643 (2000))。
この多層シリカナノチューブの水素吸蔵能を評価したところ、10MPa、298Kで0.58wt%であった(図6、曲線D)。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブのフィールドエミッション走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図3】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブの焼成前と焼成後の透過型電子顕微鏡写真(エネルギー損失型分光法)を示す図である。A~Cは焼成前のものを示し、D~Fは焼成後のものを示す。AとDは繊維全体の影像を示し、BとEはケイ素の元素分布図を示し、CとFは炭素(有機物)の元素分布図を示す。なお、DとFの下部の半円は測定容器を示している。
【図4】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブの穴径分布曲線である。
【図5】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブの構造を示す図である。
【図6】実施例1で得られた二重らせんシリカナノチューブと円筒型シリカの水素の吸・脱着等温曲線である。A~Cは実施例1のナノチューブのもので、Aは273K、Bは288K、Cは298Kにおける水素の吸・脱着等温曲線を示す。Dは比較例1のナノチューブの298Kにおける水素の吸・脱着等温曲線を示す。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図2】
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