TOP > 国内特許検索 > 微細中空繊維 > 明細書

明細書 :微細中空繊維

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3699086号 (P3699086)
公開番号 特開2004-250797 (P2004-250797A)
登録日 平成17年7月15日(2005.7.15)
発行日 平成17年9月28日(2005.9.28)
公開日 平成16年9月9日(2004.9.9)
発明の名称または考案の名称 微細中空繊維
国際特許分類 D01F  6/68      
B82B  1/00      
B82B  3/00      
FI D01F 6/68
B82B 1/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 7
出願番号 特願2003-039276 (P2003-039276)
出願日 平成15年2月18日(2003.2.18)
審査請求日 平成15年2月18日(2003.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】小木曽 真樹
【氏名】清水 敏美
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】平井 裕彰
参考文献・文献 特開2003-166129(JP,A)
特開平10-072721(JP,A)
特開平11-322787(JP,A)
特開2002-322190(JP,A)
特開2002-266007(JP,A)
小木曽真樹,有機/金属ハイブリッド型ナノフアイバーへの自己集積とその還元,高分子学会予稿集,Vol.50 No.11,2706-2707
小木曽真樹,ペプチド脂質の自己集積体を鋳型に用いた脂質/金属ハイブリッド及び金属ナノ構造体の合成,日本化学会講演予稿集,Vol.82,195
小木曽真樹,金属キレート形成を駆動力とする有機/無機ハイブリッド型ナノ繊維の構築,日本化学会講演予稿集,Vol.78,17
清水敏美,分子がつくるナノチューブ,工業材料,日刊工業新聞社,Vol.51 No.9,54-57
調査した分野 D01F 6/00- 6/96
B82B 1/00- 3/00
C07H13/00-13/12
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式
RCO(NHCHCO)OH
(式中、Rは炭素数6~18の炭化水素基、mは1~3の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質と遷移金属とから成る微細中空繊維。
【請求項2】
前記遷移金属が21Scから30Znまで、39Yから48Cdまで、及び57Laから80Hgまでのいずれかの金属又はこれらの混合である請求項1に記載の微細中空繊維。
【請求項3】
Rが直鎖炭化水素である請求項1又は2に記載の微細中空繊維。
【請求項4】
平均長さが1~100μmであり、平均直径が10~1000nmである請求項1~3のいずれか一項に記載の微細中空繊維。
【請求項5】
水中で、一般式
RCO(NHCHCO)OH
(式中、Rは炭素数6~18の炭化水素基、mは1~3の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質と遷移金属イオンとを共存させることから成る請求項1に記載の微細中空繊維の製法。
【請求項6】
前記遷移金属が21Scから30Znまで、39Yから48Cdまで、及び57Laから80Hgまでのいずれかの金属又はこれらの混合である請求項5に記載の製法。
【請求項7】
Rが直鎖炭化水素である請求項5又は6に記載の製法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ペプチド脂質と遷移金属により形成される中空の繊維状凝集体に関し、より詳細には、機能性材料として、医薬・化粧品分野、電子情報分野、さらには食品工業、農林業、繊維工業などにおいて利用可能な微細中空繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブに代表されるナノ構造体は、材料化学、情報工学、バイオテクノロジー等幅広い分野で応用されている。近年、カーボン以外の材料例えばジアセチレン系リン脂質誘導体(M.Spector, A.Singh, P.Messersmith, and J.Schnur, Nano Letters, 1, 375, (2001))、カルダニルグルコシド(G.John, M.Masuda, Y.Okada, K.Yase, and T.Shimizu, Advanced Materials, 13, 715 (2001))、ガラクトシルセラミドやその誘導体(V. Kulkarni, J.Boggs, and R.Brown, Biophysical Journal, 77, 319 (1999))からナノチューブが生成されることが見い出されている。
【0003】
本発明者らは、長鎖炭化水素基に糖残基を結合させた糖脂質を水中で自己集合させることにより形成される中空繊維状構造体の研究開発を進めてきた(特許文献1、特開2002-80489、特願2002-35035、特願2002-49238、特願2002-49239、特願2002-61797、特願2002-150356、特願2003-13266)
しかし、長鎖炭化水素基とペプチド鎖との結合体については繊維状構造物を形成するが(特許文献2)、中空繊維状の構造物を得ることは出来なかった。
一方、長鎖炭化水素基とペプチド鎖との結合体にアルカリ金属を結合させたジペプチド化合物が界面活性を有することは知られているが(特許文献3)、このような化合物を用いてナノサイズの中空繊維状構造物を作成する試みは成されていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002-322190
【特許文献2】
特開2002-266007
【特許文献3】
特開昭59-84994
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、広範囲な用途に応用可能な微細チューブ状凝集体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、長鎖炭化水素基とペプチド鎖との結合体に遷移金属イオンとを水中に共存させると、自己集合してナノサイズの繊維状構造物を形成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、一般式
RCO(NHCHCO)OH
(式中、Rは炭素数6~18の炭化水素基、mは1~3の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質と遷移金属とから成る微細中空繊維である。
また本発明は、水中で、一般式
RCO(NHCHCO)OH
(式中、R及びmは上記と同様である。)で表わされるペプチド脂質と遷移金属イオンとを共存させることから成る上記微細中空繊維の製法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の微細中空繊維は、一般式
RCO(NHCHCO)OH
で表わされるペプチド脂質と遷移金属とから成る。
この式中、Rは炭素数が6~18の炭化水素基、好ましくは炭素数2以下の側鎖が付いてもよい直鎖炭化水素である。この炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく。不飽和の場合には3個以下の二重結合を含むことが好ましい。
【0008】
この炭化水素基にペプチド結合で結合するグリシン残基が本発明において特長的な役割を果たしており、このグリシンがポリグリシン(II)型構造と呼ばれる水素結合を形成することにより(Crick, F. H. C.; Rich, A. Nature 1955, 176, 780-781)、中空繊維状構造をとるものと考えられる。このグリシン残基を他のアミノ酸で置き換えても通常の条件(後述の実施例1を参照)においては単に繊維状構造物しか形成せず、本発明でグリシン残基を用いた場合のような中空繊維状構造物を形成しない(後述の比較例1を参照)。
【0009】
また遷移元素は、21Scから30Znまで、39Yから48Cdまで、57Laから80Hgまで、及び89Ac以上の金属をいう。これらを単品で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよいが、単品を用いることが好ましい。この遷移元素は、好ましくは21Scから30Znまで、39Yから48Cdまで、及び57Laから80Hgまでのいずれかの金属であり、より好ましくはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、パラジウム、金、又は白金である。
本発明の微細中空繊維は、このペプチド脂質と遷移金属とから成るが、ペプチド脂質のカルボキシレートアニオンと遷移金属イオンとが結合した下式
RCO(NHCHCO)OX
(式中、R及びmは上記と同様であり、Xは遷移金属イオンを表す。)で表される化合物から成ると考えられる。
【0010】
本発明の微細中空繊維は図1に示す構造をしていると考えられる。即ち、ペプチド脂質と遷移金属との結合物は、外側に遷移金属、内側にペプチド脂質が配位するような厚さが約4.4nm程度の層を形成し、この層が何層(約5~10層ほど)にも中空部分を取り囲むことにより微細中空繊維を構成している。その結果チューブの膜厚は約20~50nm程度になる。なおこのサイズは実施例1のような条件下での値であり、形成条件が異なればサイズは異なってもよい。
この微細中空繊維の平均長さは約1~100μm、平均直径は約10~1000nmである。
【0011】
本発明の微細中空繊維は、水中に上記ペプチド脂質と遷移金属イオンを共存させると瞬時に形成される。具体的には、まず水中に上記ペプチド脂質を溶解させる。ペプチド脂質に塩基を加えることにより脂質末端にカルボキシレートアニオンが形成される。この塩基としては、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなど)やテトラアルキルアンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウム水酸化物、テトラエチルアンモニウム水酸化物など)などの比較的強い塩基が適している。このときのペプチド脂質の濃度は1~50ミルモル/リットルが好ましい。なお、溶媒は水以外でもかまわないと考えられるが現時点で試験した結果は水が最も好ましい。次に、遷移金属イオンを加えるが、水中で遷移金属イオンとなるような前駆体であればどのような構造のものを用いてもよい。最も簡便であるのは遷移金属の塩であり、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などの遷移金属塩を用いることができる。
【0012】
このようにして、水中でカルボキシレートアニオンと遷移金属イオンとが直ちに反応して、ペプチド脂質と遷移金属の結合体が形成され、この結合体は自己集合性である。遷移金属イオンを加えると瞬時に微細中空繊維が形成されるため、適宜微細中空繊維の形成状況を観察しながら遷移金属の供給速度を決めればよい。なお、この際の温度はいかなる温度でもよいが、室温で十分反応は進行する。この繊維状物質を捕集し、風乾又は真空乾燥することにより、空気中で安定な微細中空繊維が得られる。得られた微細中空繊維の形態は、通常の光学顕微鏡を用いて容易に観察することができる。この構造はレーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡、電子顕微鏡を用いることにより、より詳細に確認することができる。
【0013】
【発明の効果】
本発明の微細中空繊維を容易の原料である本発明の脂質は安価であり、その製法も容易である。
本発明の微細中空繊維は医療用の除放性担体や吸着体として用いることができるほか、化粧品分野、食品工業、農林業、繊維工業、などにおける乳化剤、安定剤、分散剤、湿潤剤などとして有用である。また金属や導電性物質をドープしてナノ部品などとして電子、情報分野において利用可能である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
グリシルグリシンベンジルエステル塩酸塩(国産化学製)0.57g(2.2ミリモル)にトリエチルアミン0.31ml(2.2ミリモル)を加えエタノール10mlに溶解した。ここにウンデカンカルボン酸(東京化成製)0.40g(2ミリモル)を含むクロロホルム溶液50mlを加えた。この混合溶液を-10℃で冷却しながら1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.42g(2.2ミリモル)を含むクロロホルム溶液20mlを加え、徐々に室温に戻しながら一昼夜撹拌した。反応溶液を10重量%クエン酸水溶液50ml、4重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの純に洗浄した後、減圧下で濃縮し白色固体(N-(グリシルグリシンベンジルエステル)ウンデカンカルボキサミド)0.50g(収率60%)を得た。
【0015】
得られた化合物0.42g(1ミリモル)をジメチルホルムアミド100mlに溶解し、触媒として10重量%パラジウム/炭素を0.5g加え、接触水素還元を行った。6時間後、触媒をセライトを用いてろ別した後、減圧下で濃縮することにより、白色固体0.16g(収率50%)を得た。この白色固体はN-(グリシルグリシン)ウンデカンカルボキサミドであると結論された。この物理的性状及び元素分析値を次に示す。
JP0003699086B2_000002t.gif
【0016】
実施例1
製造例1で得たN-(グリシルグリシン)ウンデカンカルボキサミド 1ミリモル(ペプチド脂質)をサンプル瓶にとり、これに1倍当量の水酸化ナトリウム40mg(1ミリモル)を含む蒸留水50mlを加え、超音波照射(バス型)を施すことによりペプチド脂質を溶解させた。この水溶液に20ミリモル/リットルの酢酸銅(II)(和光純薬製)50ml(0.5ミリモル)を常温・常圧下で加えると瞬時に溶液が濁り、青色の沈殿物が形成した。
【0017】
この沈殿物の赤外吸収スペクトルを測定した。図2にペプチド脂質ナトリウム塩と青色沈殿物の赤外吸収スペクトルを示す。この青色沈殿物(微細中空繊維)には、ペプチド脂質ナトリウム塩のカルボキシレートアニオンに特異的な1604cm-1の吸収がなくなっており、また1408cm-1の吸収が1419cm-1付近に大きくシフトしていた。この結果は、カルボキシレートアニオンに金属イオンが配位したときに特異的にあらわれる現象であることから、得られた沈殿物がペプチド脂質と金属からなることを示す。
また、この沈殿物を透過型電子顕微鏡により観察した。図3に得られた微細中空繊維の透過型電子顕微鏡写真を示す。その結果、平均長さが1~100μmであり、平均直径が10~1000nmである中空の繊維を確認した。
【0018】
製造例2
バリルバリンベンジルエステル塩酸塩(国産化学製)0.75g(2.2ミリモル)にトリエチルアミン0.31ml(2.2ミリモル)を加えエタノール10mlに溶解した。ここにウンデカンカルボン酸(東京化成製)0.40g(2ミリモル)を含むクロロホルム溶液50mlを加えた。この混合溶液を-10℃で冷却しながら1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(国産化学製)0.42g(2.2ミリモル)を含むクロロホルム溶液20mlを加え、徐々に室温に戻しながら一昼夜撹拌した。反応溶液を10重量%クエン酸水溶液50ml、4重量%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、水50mlの純に洗浄した後、減圧下で濃縮し白色固体としてN-(バリルバリンベンジルエステル)ウンデカンカルボキサミド0.72g(収率71%)を得た。この化合物0.50g(1ミリモル)をジメチルホルムアミド100mlに溶解し、触媒として10重量%パラジウム/炭素を0.5g加え、接触水素還元を行った。6時間後、触媒をセライトを用いてろ別した後、減圧下で濃縮することにより、白色固体のN-(バリルバリン)ウンデカンカルボキサミド0.28g(収率70%)を得た。
【0019】
比較例1
製造例2で得たN-(バリルバリン)ウンデカンカルボキサミド1ミリモルをサンプル瓶にとり、これに1倍当量の水酸化ナトリウム40mg(1ミリモル)を含む蒸留水50mlを加え、超音波照射(バス型)を施すことによりペプチド脂質を溶解させた。この水溶液に20ミリモル/リットルの酢酸銅(II)50ml(0.5ミリモル)を常温・常圧下で加えると瞬時に溶液が濁り、青色の沈殿物が形成した。沈殿物を走査電子顕微鏡により観察した。図4に得られた走査電子顕微鏡写真を示す。その結果、長さが1~100μmであり、平均直径が100nmである微細繊維を確認した。この微細繊維は中空ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微細中空繊維の構造を示す図である。
【図2】実施例1で得た微細中空繊維の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得た微細中空繊維の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】比較例1で得た中空でない微細繊維の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3