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明細書 :フォトニック結晶欠陥デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3727628号 (P3727628)
公開番号 特開2004-287224 (P2004-287224A)
登録日 平成17年10月7日(2005.10.7)
発行日 平成17年12月14日(2005.12.14)
公開日 平成16年10月14日(2004.10.14)
発明の名称または考案の名称 フォトニック結晶欠陥デバイス
国際特許分類 G02B  6/12      
G02B  6/122     
G02F  1/313     
G02F  1/365     
FI G02B 6/12 Z
G02F 1/313
G02F 1/365
G02B 6/12 D
請求項の数または発明の数 12
全頁数 17
出願番号 特願2003-080916 (P2003-080916)
出願日 平成15年3月24日(2003.3.24)
審査請求日 平成15年4月28日(2003.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】古屋 克己
個別代理人の代理人 【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官 【審査官】日夏 貴史
参考文献・文献 特開2002-323631(JP,A)
特開2003-295143(JP,A)
M.Tokushima et al.,Electronics Letters,2001年11月22日,Vol.37 No.24,p.1454-1455
H.Benisty et al.,IEEE Journal of Quantum Electronics,July 2002, Vol.38 No.7,p.770-785
J.Moosburger et al.,Applied Physics Letters,2001年11月26日,Vol.79 No.22,p.3579-3581
A.Talneau et al.,Applied Physics Letters,2002年 1月28日,Vol.80 No.4,p.547-549
調査した分野 G02B 6/12 - 6/14
G02F 1/00 - 1/39
特許請求の範囲 【請求項1】
周期構造を構成する要素を含み、特定の波長又は周波数範囲の光又は電波を含む電磁界の伝播を抑制するためのフォトニック結晶と、
前記フォトニック結晶の周期構造を構成する要素を局所的に除去した部分である欠陥をとして複数連結し且つ階段状に段を連続して二つ以上含むように導波路を形成した階段状線欠陥と前記階段状線欠陥に対して電磁界を入力するための第1のポートと、前記階段状線欠陥を端部に連続して有する線欠陥とを含む第1の導波路と、
電磁界を入力又は出力するための第2及び第3のポートと、前記フォトニック結晶中に前記第1の導波路に近接して設けられ、前記フォトニック結晶の周期構造を構成する要素を局所的に除去した部分である欠陥を線として複数連結した線欠陥とを含む第2の導波路と、
前記第1及び第2の導波路を各々の線欠陥で近接又は接触して結合する結合部と
を備え、
前記第1の導波路の第1のポートから光を含む電磁界が入射されると、前記結合部により前記第1及び第2の導波路との間で相互に結合が生じ、前記第2の導波路にも電磁界が誘起され、前記第2の導波路では第2のポートへの出力を第3のポートへの出力より大きくして第3のポートへの出力を抑制して前記第2の導波路から電磁界が出力されるようにし、
前記第1の導波路を結合する前記結合部までの前記階段状線欠陥の列数、前記階段状線欠陥の長さ及び/又は間隔、及び、前記第1及び第2導波路を結合している欠陥領域の長さ及び/又は間隔を定めることにより、結合及び/又は分岐する周波数信号の数を含む多重特性、及び/又は、周波数特性を設定するようにした、
電磁波伝送における方向性結合器として機能するためのフォトニック結晶欠陥デバイス。
【請求項2】
周期構造を構成する要素を含み、特定の波長又は周波数範囲の光又は電波を含む電磁界の伝播を抑制するためのフォトニック結晶と、
前記フォトニック結晶の周期構造を構成する要素を局所的に除去した部分である欠陥をとして複数連結し且つ階段状に段を連続して二つ以上含むように導波路を形成した階段状線欠陥と前記階段状線欠陥に対して電磁界を入力するための第1のポートと、前記階段状線欠陥を端部に連続して有する線欠陥とを含む第1の導波路と、
前記フォトニック結晶の周期構造を構成する要素を局所的に除去した部分である欠陥を線として複数連結し且つ階段状に段を連続して二つ以上含むように導波路を形成した階段状線欠陥と、前記階段状線欠陥に対して電磁界を入力又は出力するための第2及び第3のポートと、前記階段状線欠陥を両端にそれぞれ連続して有する線欠陥とを含む第2の導波路と、
前記第1及び第2の導波路を各々の線欠陥で近接又は接触して結合する結合部と
を備え、
前記第1の導波路の第1のポートから光を含む電磁界が入射されると、前記結合部により前記第1及び第2の導波路との間で相互に結合が生じ、前記第2の導波路にも電磁界が誘起され、前記第2の導波路では第2のポートへの出力を第3のポートへの出力より大きくして第3のポートへの出力を抑制して前記第2の導波路から電磁界が出力されるようにし、
前記第1又は第2の導波路を結合する前記結合部までの階段状線欠陥の列数、前記階段状線欠陥の長さ及び/又は間隔、及び、前記第1及び第2導波路を結合している欠陥領域の長さ及び/又は間隔を定めることにより、結合及び/又は分岐する周波数信号の数を含む多重特性、及び/又は、周波数特性を設定するようにした、
電磁波伝送における方向性結合器として機能するためのフォトニック結晶欠陥デバイス。
【請求項3】
前記結合部は、電磁界を結合させるために、前記第1及び第2の導波路の一部である各線欠陥が近接して配置された第1及び第2の欠陥領域を含み、
前記結合部の端部において、前記第1又は第2の導波路の一方の欠陥領域が、階段状線欠陥による導波路の曲がりに至っている場合、他方の欠陥領域が、その曲がりの位置より更に、その階段状線欠陥の方向に数格子定数以上離れてから、階段状線欠陥の曲がりに至るように、又は、途切れるように構成された請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス。
【請求項4】
前記結合部は、前記第1及び第2の導波路の線欠陥の間又は近傍に部分的に非線形媒質部をさらに備えた請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス。
【請求項5】
前記フォトニック結晶は、二次元六方格子結晶又は二次元三角格子結晶又は二次元正方格子結晶であり、
前記階段状線欠陥は、前記フォトニック結晶中に二次元で形成され、電磁界を二次元で形成された結合対象の近接に誘導する請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項6】
前記フォトニック結晶は、三次元面心立方格子結晶又は三次元体心立方格子結晶であり、
前記階段状線欠陥は、前記フォトニック結晶中に二次元又は三次元で形成され、電磁界を二次元又は三次元で形成された結合対象の近接に誘導する請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項7】
前記階段状線欠陥を構成する線欠陥は、一段をなす線欠陥の長さが点欠陥三つ分を超えない、又は、一段をなす線欠陥が最小限の数の点欠陥から構成され、前記線欠陥を段に連続して二つ以上含む請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項8】
導波路を結合している前記階段状線欠陥の列数を調整することにより、周波数帯域特性を設定する請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項9】
前記階段状線欠陥又は他の欠陥は、不連続な欠陥列をさらに含み、遅延線として機能する請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項10】
前記階段状線欠陥又は他の欠陥は、欠陥の周辺及び内部の一部もしくは全部に、量子ドットの埋め込み又は所定のイオンのドープにより実現された非線形媒質領域をさらに含む請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項11】
外部からの制御信号により非線形媒質の実効的な誘電率及び/又は導電率を可変とする領域をさらに含み、電磁界の伝播や相互結合の程度を制御するようにした請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
【請求項12】
前記フォトニック結晶の周期構造を形成する要素は、要素の周囲の材料とは誘電率及び/又は導電率が異なる媒質を用いた請求項1又は2に記載のフォトニック結晶欠陥デバイス
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトニック結晶欠陥導波路、分岐器、結合器、方向性結合器、多重化器、多重分離器等のフォトニック結晶欠陥デバイスに係り、特に、二次元もしくは三次元フォトニック結晶中で電磁界を他の結合対象の近接で誘導するためフォトニック結晶欠陥導波路と、それを用いた光・電磁波伝送のためのフォトニック結晶欠陥デバイスに関する。本発明は、例えば、光を含む電磁界を通信、計測、演算等へ利用する装置、及び、電磁界の伝送線路を用いて実現される回路全般に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来技術について、以下に文献を挙げて説明する。
非特許文献1では、国内外のフォトニック結晶研究の動向をまとめたもので、様々な研究機関(企業,大学,国研等)の成果を、理論的背景に始まって設計技術,具体的な製造法と材料からデバイス等の応用に至るまで比較的詳細に紹介している。
【0003】
また、従来、フォトニック結晶を用いた結合器/分岐器,方向性結合器について設計、製作がなされたものを以下に例示する。
【0004】
非特許文献2は、六方格子結晶中の線欠陥導波路の曲がり、方向性結合器(分岐器)についてシミュレーションを行っているが、およそ電磁界の結合の確認のみで終わっており、具体的な改善案や設計指針等は見られず、また、結合器には言及していない。
【0005】
非特許文献3は、分岐器のみについて実製作例が記載されている。ただし、この文献では、透過が弱く(-40dB以下)、また、結合に寄与する二つの線欠陥の間隔及び結合長の設計が必ずしも厳密ではなく、分岐出力より得られた所望の信号は、同時にもう一方の出力端より出力される信号より、更に小さい。
【0006】
さらに、特許文献1~4には、フォトニック結晶を用いた光デバイスが記載されている。例えば、特許文献1には、フォトニック結晶を備えた簡単で部品点数の少ない光学系で小型化できる光デバイスが記載されている。
【0007】
【非特許文献1】
「フォトニック結晶研究の現状と将来展望 —改訂版— —テクノロジーロードマップを目指して—」,(財)光産業技術振興協会(フォトニック結晶ブレークスルー技術フォーラム),14-013-1,2002(平成14)年3月.
【非特許文献2】
J. Yonekura, M. Ikeda and T. Baba: "Analysis of finite 2-D photonic crystals of columns and lightwave the scattering matrix method", J. of Lightwave Technology, Vol.17, No.8, pp.1500-1508(Aug. 1999).
【非特許文献3】
M. Tokushima and H, Yamada: "Photonic crystal line defect waveguide directional coupler", Electronics Letters, Vol.37, No.24,pp.1454-1455,(22nd November 2001).
【特許文献1】
特開2003-57460号公報
【特許文献2】
特開2002-196296号公報
【特許文献3】
特開2002-169048号公報
【特許文献4】
特開2000-56146号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光伝搬の場合、従来の誘電体導波路では、急激な曲がりを実現しようとすると損失が大きくなるため、導波路同士の接近や乖離は緩やかに行わざるを得ない。その結果として、ある導波路を伝播する光の、他の導波路への結合の実現や回避のためのそれら導波路の配置には、比較的長い距離が必要となる。また、このような光信号の分岐や結合では、特に微小構造を実現しようとするものでは、Y字分岐、結合が多く用いられており、これは、二つの導波路の接点において伝搬モードが大きく乱されるので、あまり良好な結合度、方向性、反射特性等が実現出来ていない。
【0009】
また、フォトニック結晶欠陥導波路を用いた結合器又は分岐器では、線欠陥の急激曲がりが可能であるので、誘電体導波路における上記の様な課題の解決が期待されているが、相互に結合を実現しようとする欠陥同士が結合を強める目的等から著しく近接している場合には、良好な特性を得るために、やはり、それら欠陥に光を含む電磁界を導く際に導波路の配置等によりある程度の電磁波の伝播方向や大きさの制御(界の制御)を行わなければならない。しかし、導波路や曲がりを構成するための欠陥の選び方は、フォトニック結晶の格子構造に依って制限される。フォトニック結晶の格子構造には、二次元では正方格子、三角(六方)格子、三次元では面心立方格子、体心立方格子等があるが、例えば、二次元三角格子では、全く同等な構造を持つ単一線欠陥導波路同士を接なげる一つの曲がりは、60、 120、 240、 300度でしか実現出来ない。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、特に、階段状線欠陥導波路を設けることにより、光を含む電磁界を導く方向に関して、フォトニック結晶の格子構造に単純に従って曲げを行うよりも、より自由な選び方を可能とし、フォトニック結晶上の様々な素子の設計を容易にすることを目的とする。
【0011】
本発明は、フォトニック結晶上での素子として、結合器、分岐器、方向性結合器、多重化器、多重分離器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを構成する際に、近接配置された二つの線状欠陥の端部において片方の線状欠陥の曲がり又は途切れがもう片方の線状欠陥の曲がりから数格子定数以上離れてから為されている構造により、結合度、方向性、反射特性等の改善のための欠陥構成の配置様式の選択肢を広げ、それら特性のより柔軟な調整を可能とすることを目的とする。本発明は、特に、近接配置された二つの欠陥領域(欠陥範囲)の間の距離が小さいときに有用なデバイスを提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、バンドギャップによる電磁界の閉じ込めを用いたフォトニック結晶欠陥導波路の効果により、より小さな分岐器、結合器、方向性結合器、多重化器、多重分離器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを実現することを目的とする。また、本発明は、フォトニック結晶では、複数の欠陥構造を一つの構造中に作成することにより、結合器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを、それらを必要とするデバイス構造中にモノリシックに実現可能とすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明が一部に有する階段状の線欠陥は、上述した様な各格子構造で可能な曲がりと線欠陥導波路を交互に接続することで、これら全体が一つの導波路とみなされる。本発明は、フォトニック結晶中の欠陥同士を連続的もしくは離散的な欠陥列で接なげる場合に、上述の階段状線欠陥をその様式に含むことで、より自由な導波の方向や曲がりを実現し得る。
【0014】
従って、このような階段状線欠陥を含む導波路を用いた結合器、分岐器もしくはそれら両方を併せ持つ方向性結合器では、結合度、方向性、反射特性等の更なる調整が可能となる。また、光を含む電磁界の結合を相互に実現する欠陥同士の間隔を連続的かつ段階的に制御できることになるが、良く結合する界の周波数がその間隔に依存して変化する事が予想され、周波数帯域の調整も期待出来る。ここで、その様な階段状線欠陥導波路は、それ自体が良好な電磁界の伝搬特性を持つことが望ましい。
【0015】
また、フォトニック結晶上で結合器、分岐器もしくは方向性結合器を実現する際に、光を含む電磁界を強く結合させることを意図して特に近接して配置された二つの欠陥範囲の端部において片方の欠陥範囲が線状欠陥導波路曲がりに至っている場合、上記階段状線欠陥導波路を用いるか否かに関わらず、もう片方の欠陥範囲では、その曲がりからその線状欠陥の方向に数格子定数以上離れてから、線状欠陥導波路曲がりに至る乃至途切れるようにすることで、上記結合器、分岐器もしくは方向性結合器の特性を向上させることが出来る。
【0016】
本発明の第1の解決手段によると、
周期構造を構成する要素を含み、特定の波長又は周波数範囲の光又は電波を含む電磁界の伝播を抑制するためのフォトニック結晶と、
前記フォトニック結晶の周期構造を構成する要素を局所的に除去した部分である欠陥を、前記フォトニック結晶中に、線として複数連結して階段状に導波路を形成した階段状線欠陥と、
前記階段状線欠陥に対して、電磁界を入力及び/又は出力するための入力端及び/又は出力端と
を含み、
階段状線欠陥に入力された電磁界を、前記フォトニック結晶中の電磁界の結合対象である他の欠陥に近接又は接触した所定の位置へ誘導し、所定の位置で前記階段状線欠陥と結合対象である他の欠陥との間で電磁界を結合させるための、フォトニック結晶欠陥導波路が提供される。
【0017】
本発明の第2の解決手段によると、
階段状欠陥とともに導波路を構成する線欠陥と、前記請求項1乃至9のいずれかに記載のフォトニック結晶欠陥導波路とを含む第1の導波路と、
前記第1の導波路に近接して設けられ、線欠陥を含む第2の導波路と
前記第1及び第2の導波路を近接又は接触して結合する結合部と
を備え、
欠陥により形成された前記第1及び第2の導波路を所定距離離して配置され、前記第1又は第2の導波路の一方に光を含む電磁界が入射されると、前記結合部により前記第1及び第2導波路との間で相互に結合が生じ、前記第1又は第2の導波路の他方にも電磁界が誘起され、前記第1及び/又は第2の導波路から電磁界が出力されるようにした、電磁波伝送における分岐器、結合器、方向性結合器、多重化器、多重分離器のいずれかとして機能するためのフォトニック結晶欠陥デバイスが提供される。
【0018】
本発明の第3の解決手段によると、
階段状欠陥とともに導波路を構成する線欠陥と、前記請求項1乃至9のいずれかに記載のフォトニック結晶欠陥導波路とをそれぞれ含む第1及び第2の導波路と、
前記第1及び第2の導波路を近接して結合する結合部と
を備え、
欠陥により形成された前記第1及び第2の導波路を所定距離離して配置され、前記第1又は第2の導波路の一方に光を含む電磁界が入射されると、前記結合部により前記第1及び第2導波路との間で相互に結合が生じ、前記第1又は第2の導波路の他方にも電磁界が誘起され、前記第1及び/又は第2の導波路から電磁界が出力されるようにした、電磁波伝送における分岐器、結合器、方向性結合器、多重化器、多重分離器のいずれかとして機能するためのフォトニック結晶欠陥デバイスが提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
1.フォトニック結晶に関する用語説明
「フォトニック結晶」とは、誘電率や導電率の異なる媒質を周期的に並べた構造のことであり、フォトニックバンドギャップと呼ばれる特定の周波数範囲において電磁界の伝搬を抑制するという性質をもつ。フォトニック結晶中の周期構造を一部除去する(欠陥)ことにより、フォトニック結晶中のフォトニックバンドギャップの範囲内の周波数で振動する電磁界は欠陥部分に局在し、その周囲のフォトニック結晶には伝搬できなくなる。更に、欠陥を連続して形成すると、その欠陥の範囲に沿ってのみ電磁波が伝搬し、その周囲には電磁界が漏れなくなり、導波路として機能する。なお、フォトニック結晶の周期構造を形成する要素としては、例えば、空孔、誘電体+空気円孔、空気+誘電体円柱、金属導体要素等の適宜のものを用いることができる。
【0020】
フォトニック結晶は、例えば、その中に光を浸透させないように設計された周期的構造物とすることができる。また、導波管、同軸ケーブル、光ファイバや、フォトニック結晶の欠陥導波路は、電磁波の伝搬方向を制御するためのデバイスともいえる。これらの導波路は、その内部にのみ電磁界を局在させ、その外部に電磁波を漏らさない(外部の電磁界の値を零に留める)、又は、ほとんど漏らさない。あるいは、市販の電波吸収体は、ジュール熱として損失させたり、磁性体を使ってうず電流損失を起こさせたりすることにより、到来した電磁波の大きさを小さくする。さらに、エルビウム・イオンがドープされた光ファイバは、その内を通過する光の大きさを大きくする(増幅)。
【0021】
「点欠陥」とは、フォトニック結晶において、そのフォトニック結晶を構成する周期構造中で、その構造を実現する要素が、その構造中で他の欠陥と連続せずに一つだけ欠けている場合、その欠けている部分を指す語句である。フォトニック結晶の分野では一般に用いられる。また、「線欠陥」とは、複数の点欠陥が連続する部分を指す語句である。
【0022】
図1に、点欠陥及び線欠陥の説明図を示す。この例は、Siスラブ(□)等のフォトニック結晶10に空気円孔(○、周期構造を実現する要素)が周期的(二次元正方格子)に設けられている場合を示す。図1(A)は、欠陥の無い周期構造を示し、図1(B)は、右下に「点欠陥」を一つ有するものを示す。また、図1(C)、(D)は、線欠陥の例を示す。
【0023】
図2は、点欠陥と線欠陥のほかの説明図を示す。図2(A)は、曲がりを含む線欠陥と点欠陥を示し、図2(B)は、連続する二つの点欠陥、又は、要素二つ分の長さの短い線欠陥を示す。
【0024】
「界」とは、場(Field)のことであり、例えば、ここでは電磁界(電磁場ともいう。)のことを言う。電磁波とは、現象としては電磁界の空間的、時間的な振動(特に周期的な振動を指す事が多い。)である。一般に電磁波といえば、その伝搬と共にエネルギーを空間的に移動させる。ある場所において電磁界(電界と磁界)の値の変化が生じると、その変化が、時間と共に必然的にその周辺の電磁界に伝わっていく。
【0025】
これが電磁波(いわゆる電波)の伝搬であり、最初の電磁界の変化が周期的なもの(例えば一秒間に50回の正弦振動)であるなら、その際その周辺に生じるのはその周波数(例えば、50Hz)の電磁波である。尚、光は電磁波の一種である。ちなみに、電波法では”「電波」とは300万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう”ので、3000000MHz(3THz)を超える周波数の電磁波が光(赤外線等)や放射線(X線等)ということになる。
【0026】
また、「界の制御」とは、電磁波の伝搬方向や大きさ(特に前者)を人為的に変化させることを言う。例えば、ある方向から到来してきた300MHzの電磁波に金属板をかざすと、高導電率の金属板中にその電磁波は浸透できないので、必然的に反射される(光と鏡を考えても良い)。
【0027】
2.フォトニック結晶内の階段状線欠陥を含む導波路
図3に、二次元周期構造によるフォトニック結晶欠陥導波路の模式図を示す。また、図4に、三次元周期構造によるフォトニック結晶欠陥導波路の模式図を示す。これらの図は、フォトニック結晶10内にそれぞれ二次元又は三次元階段状線欠陥1を有する導波路の模式図である。これは、フォトニック結晶10の範囲の内外に存在する何らかの対象と相互に結合している一つの連続的もしくは単一の欠陥や、それらに光を含む電磁界を導くための導波路、又は、それらから光を含む電磁界を取り出すための導波路としての、欠陥構造の一部として用いられる。
【0028】
図5に、円を要素とする二次元六方格子結晶構造のフォトニック結晶欠陥導波路の模式図を示す。特に、このフォトニック結晶欠陥導波路は、図示のように、二次元六方格子結晶のフォトニック結晶10において、一段をなす線欠陥の長さが点欠陥三つ分を超えない(一段をなす線欠陥が最小限の数の点欠陥からなっている)、かつ、そのような段を連続して二つ以上含んでいるような階段状線欠陥1を有する。階段状線欠陥1については、周囲の結合対象の存在の如何に関わらず、電磁界の導波方向を制御する又は変化させるための一つの欠陥導波路として有用である。
【0029】
3.フォトニック結晶内の階段状線欠陥によるフォトニック結晶欠陥デバイス
フォトニック結晶では、複数の連続的もしくは単一の欠陥構造を一つの範囲内に作成できることから、例えば、二つの欠陥導波路を適当な距離だけ離して配置し、片方の導波路に光を含む電磁界を入射すれば、それら導波路において相互に結合が生じ、もう片方の導波路にも電磁界が誘起される。この現象を利用して、一つ箇所からの電磁界の入力から二つ箇所以上の出力を得ようとするものが分岐器、二つ箇所以上のどれから入力してもある一つ箇所から出力が得られるようにしたものが結合器、それら二つの構造を併せ持つものが方向性結合器である。その他にも、フォトニック結晶欠陥導波路を用いて、多重化器、多重分離器等の各種フォトニック結晶欠陥デバイスを形成することができる。
【0030】
図6に、方向性結合器の一般的な例の構成図を示す。このデバイスは、二次元周期構造によるフォトニック結晶上に構成された欠陥部分による方向性結合器の模式図を示す。
【0031】
また、図7には、フォトニック結晶に形成された階段状線欠陥構造による方向性結合器の模式図を例示する。図示のようにこの方向性結合器は、フォトニック結晶10は、階段状線欠陥1と結合部2とを構造の一部に有する。また、図には、導波路11及び12、入力端又は出力端となるポート15~18が示される。
【0032】
図8に、強い結合を意図して互いに近接して置かれた二つの欠陥範囲の他の構成図を示す。この方向性結合器は、近接配置された二つの欠陥範囲(欠陥領域)3(ここでは、線状欠陥)の端部において片方の線状欠陥の曲がり、又は、途切れがもう片方の線状欠陥の曲がりから線状欠陥の方向に数格子定数以上離れてから為されている構造例である。
【0033】
4.階段状線欠陥の詳細
階段状線欠陥導波路は、光を含む電磁界を導く方向に関して、フォトニック結晶の格子構造に単純に従って曲げを行うよりも、より自由な選び方を可能とするので、フォトニック結晶上の様々な素子の設計を容易にする。また、これにより、電磁界の強い結合に寄与する複数の欠陥範囲に電磁界を入射する際の方向について選択肢を広げ、その結合の様子を変化させ得る。
【0034】
図9に、電磁界の入射方向の説明図を示す。
図示のように、二次元六方格子の場合の例、又は、二次元正方格子の場合の例で、矢印は入射電磁界の導波方向を示す。なお、楕円内は強い結合を意図して互いに近接して置かれた二つの欠陥範囲を示す。このように、階段状線欠陥により、入射方向の選択肢を広げることができる。同様に出射方向の選択肢も広げることができる。
【0035】
図10及び図11に、方向性結合器の周波数特性の説明図を示す。これらの図は、二次元六方格子結晶上の方向性結合器についての時間領域有限差分法を用いた二次元解析モデルに基づく数値解析結果である。図10は、二つの導波路に階段状線欠陥を有するもの、図11は、一方の導波路に階段状線欠陥を有するものをそれぞれ示す。なお、方向性結合器の図は正確なものではなく模式図である。そして、両方とも、強く結合に寄与する二つの単一線欠陥導波路の間に、フォトニック結晶要素が二列並んだ場合であり、結合長は、一例として、全て64a(aは格子定数)である。なお、フォトニック結晶構造の設計パラメータは、一例として、文献「A. Chutinan, et al. : Appl. Phys. Letters, Vol. 80, pp.1698-1700, 2002. 」等に従う。
【0036】
図10(A)では、従来の六方格子に添った線欠陥を用いているが、図10(B)では、本実施の形態のような階段状線欠陥を用いている。図10及び後述の図11に示す様に、結合に寄与する複数(ここでは二つ)の欠陥範囲(欠陥領域)があるとき、その欠陥範囲の大きさ(ここでは長さ)、お互いの距離が同じであっても、その欠陥範囲への電磁界の入射のためにその欠陥範囲の端部において、数格子定数以上離れてから線状欠陥導波路曲がりに至るような、階段状欠陥導波路構造を採用した場合は、採用しない場合に比べて、所望の出力端(ここでは、方向性結合器の開口4)への出力の大きさを格段に改善し得、また、出力を望まない出力端(ここでは、開口2)においてその出力を格段に抑制し得る場合がある。
【0037】
図11がさらに示すところは、この構造の採用が、誘電体導波路、マイクロストリップ線路等で実現される結合器等の設計に一般的に用いられる分布結合線路に関する理論の適用を、フォトニック結晶線欠陥導波路による結合器等に対しても可能ならしめたという事に他ならない。その結果、同理論が保証する周期的な分布結合を利用し得る事になるので、結合に寄与する二つの線欠陥導波路の長さを変化させることで、結合度を漸次調整する事も可能となる。
【0038】
本実施の形態では、例えば、図10(B)では、規格化周波数が、0.268、0.2685、0.269、0.2695、0.2673、0.2717、0.273-0.2742、0.2758、0.2767等の各付近で、出力3と出力4の一方が極大、他方が極小となっている。すなわち、図10(B)では、図10(A)より多数の規格化周波数の位置を多重、分離、結合、分岐等に活用することができることを示す。さらに、出力2は、規格化周波数が0.275、0.2783の位置にあれば小さくなっている。このような周波数入出力特性を利用して、結合・合波、分岐・分波、多重、多重分離する周波数を増やしたり、所定の周波数を所定の端子に入力又は出力するデバイスを作成することができる。デバイスとしては、例えば、分波器、合波器、分岐器、結合器、くし形フィルター等を含む各種フィルター、多重化器、分離器等が挙げられる。
【0039】
さらに、図12に、線欠陥導波路の周波数帯域についての説明図を示す。この図は、二次元六方格子結晶上の曲がりを有する単一線欠陥導波路についての時間領域有限差分法を用いた二次元解析モデルに基づく数値解析結果を示す。なお、フォトニック結晶構造の設計パラメータは、例えば、文献「A. Chutinan, et al. : Appl. Phys. Letters, Vol. 80, pp.1698-1700, 2002. 」に従う。導波路の図は、模式図である。
【0040】
図に示すように、結合器、分波器、方向性結合器の構造に階段状線欠陥導波路を用いれば、光を含む電磁界の結合を相互に実現する欠陥同士の間隔(縦矢印)、及び、各間隔を挟んで結合している欠陥範囲の長さ(横矢印)を連続的かつ段階的に制御又は変化できる。
【0041】
図13に、階段状線欠陥導波路の結合について説明図を示す。その機能として、良く結合する界の周波数がその間隔に依存して変化する事が考えられ、周波数帯域を調整することが可能となる。
【0042】
以上のように、本実施の形態の構造を利用した線欠陥導波路の周波数帯域(その導波路を通過し得る電磁波の周波数の範囲)が、フォトニック結晶の格子構造に単純に従って曲げを行った線欠陥導波路よりも、拡大され得ることが挙げられる。
【0043】
従って、本実施の形態の様な階段状線欠陥導波路の利用は、対処し得る電磁界信号の周波数を増やすので、単に単一周波数で伝搬する電磁界信号の結合を実現するだけでなく、一つの導波路に周波数が異なる光信号を同時に伝送する方式(例えば波長多重分割方式)に不可欠な、一つの入力端から複数の出力端へそれぞれ異なる周波数の信号を取り出す分波器、あるいは異なる入力端からそれぞれ異なる周波数の信号を入射し一つの出力端に導く合波器の様な素子の、フォトニック結晶上での設計を容易にする事ができる。
【0044】
また、上述では、相互に結合する複数の連続的もしくは単一の欠陥は、例示では適当な距離を離すとしたが、ある一定割合の電磁気学的、光学的な結合を達成できるものであるならば、両者をより近接させる(極端な場合は接触させる)、あるいはその他の欠陥を介して結合させるなどの方法も利用も考えられる。
【0045】
また、以上において、連続的な欠陥と述べたが、これは、幾つかの欠陥をある程度距離を離して離散的に配置することにより形成されても良い。このような不連続な欠陥列からなる導波路は、非常に群速度を遅く出来、遅延線効果があるため、単なる線欠陥構造と比較して、より小さな構造の実現が期待できる。
【0046】
図14に、不連続な欠陥列についての説明図を示す。図には、二次元六方格子における、不連続な欠陥列からなる導波路の例のいくつかが示される。この例は、欠陥範囲(ここでは、単一線欠陥の場合)の領域にフォトニック結晶の要素等を配置し、欠陥列もしくは点欠陥が周期的に存在するようにしたものである(文献「A. Sharkawy, S,Shi and D, W, Prather: "Electro-optical switching using coupled photonic crystal waveguides", OPTICS EXPRESS, Vol.10, No.20, pp.1048-1059(7 Oct, 2002)」参照)。このように、二次元正方格子において、結合に寄与する線欠陥導波路に対し、その導波路自体の構造において線欠陥中に周囲構造とは大きさの異なるフォトニック結晶要素を密に並べることで、方向性結合器としての性能を獲得している。
【0047】
また、欠陥の周辺及び内部の一部もしくは全部に、量子ドットの埋め込みやある種のイオンのドープ等により実現された非線形媒質領域があっても良い。これは、外部からの制御信号等により非線形媒質の実効的な誘電率、導電率(その領域中で増幅効果が見られる場合、実効的な導電率が負であるのと等価である。)を可変とする領域を介在させることで、光を含む電磁界の伝播や相互結合の程度を制御するようにしてもよい。
【0048】
ここで、量子ドット埋め込みによる非線型媒質領域については、例えば、その誘電率及び/又は導電率を制御できる様な媒質を(例えばSiスラブと空気円孔による二次元の)フォトニック結晶の一部として使ったものである。つまり、先刻までフォトニック結晶要素(例:空気と同じ誘電率を持つ媒質)だった部分が、外部制御によって、いきなり欠陥(例:空気と同じ誘電率だったものが、Siと同じ誘電率を持つ媒質)に変化するなら、先刻まで光・電磁波にとって入り込めない壁だった部分にいきなり通路が開かれることになり、界の伝搬方向を所定のように制御することができる(例えば、特開2001-91912号公報参照)。
【0049】
制御の具体的方法に関して、外部からの制御信号については、例えば、次のようなものがある。
(1)外部電磁界を印加する方法
(2)同じフォトニック結晶中に、既に作成された処理対象光・電磁波が伝搬する欠陥導波路とは別に、制御信号としての光・電磁波が伝搬し当該媒質に至るための欠陥導波路を設ける方法
(3)既にフォトニック結晶中に作成された処理対象光・電磁波が伝搬する欠陥導波路中をその光・電磁波とは異なる周波数の光・電磁波信号として伝搬させて、当該媒質に到達させる方法
(4)制御信号用欠陥導波路を別の二次元フォトニック結晶で実現したものを、処理対象電磁波が伝搬する導波路が設けられている二次元フォトニック結晶に、ある媒質を挟んで積層し、当該媒質の位置でのみ挟まれている媒質を除く等して両者を電磁気学的に結合し得るようにする方法(特開2001-242329号公報参照)
【0050】
尚、同じ非線型媒質でも、イオンのドープについては、エルビウム・イオン・ドープ等の光ファイバー増幅器と同様に、フォトニック結晶の欠陥部分及び/又は要素部分(機能性材料)にエルビウム・イオン等の所望のイオンをドープするようにしてもよい。
【0051】
5.フォトニック結晶欠陥導波路の作成
図15に、空気クラッド2次元フォトニック結晶スラブ構造中に形成した、フォトニック結晶階段状線欠陥導波路を用い、結合に主に寄与する二つの欠陥範囲の端部曲がりの位置をずらした方向性結合器の構造例の図を示す。ここでは、一例として、結晶構造の例として六方格子結晶を挙げてある。
【0052】
まずは基盤となる媒質上に、選択エッチング用の層とコアとなる層を形成する。コア部は対応する波長の電磁界がその内を伝搬し得る材料でなければならないので、たとえば光通信の1.55μm帯ではGaAsなどを用いる。選択エッチング用の層はコアと選択比の高い材料(GaAsに対してはAlGaAsなど)を用いる。コア部に周期的な空孔を設けてフォトニック結晶を形成するが、その一部を直線的および階段状に空孔とせずに配列して(欠陥として)直線導波路および階段状線欠陥を形成する。その後、空孔を通して選択エッチングを行うことにより、コアの下部に空気クラッド領域を設ける。また、クラッド部を空気とせずにコアよりも低い屈折率の媒質とすることにより、空気クラッドの場合よりもより強固なデバイスが実現できる。もし二つの線欠陥の間等に部分的に非線形媒質部を用いようとするなら、選択成長により局所的にInAs量子ドットなどを形成することにより実現する。ここでは、階段状線欠陥が両端に接続された導波路(B-B’)と直線状線欠陥導波路(D-D’)とを隣接して配置している。B、B’は曲がりの位置である。階段状線欠陥を含む導波路に電磁界(この場合は光)を入射すると、これが階段状線欠陥Aを経て線欠陥導波路B-B’に導かれ、その一部が、隣接する直線状線欠陥導波路(D-D’)に結合する。この方向性結合器の方向性、結合度は、主として階段状線欠陥を含む導波路の線状導波路部分(B-B’)の長さや、直線状線欠陥導波路(D-D’)との間の距離や結晶構造を調節することにより設計可能であるが、良好な特性を得るためには、入射時に反射の少ないこと等も重要である。
【0053】
二次元又は三次元のフォトニック結晶の欠陥の作成方法は、非特許文献1に記載されているように、適宜の方法を採用することができる。フォトニック結晶中に二次元又は三次元の欠陥構造を作成する各種方法について、さらに以下に例示する。
【0054】
特開2003-43273号公報には、半導体だけでなく、加工の比較的容易なポリマーを意材料にしたフォトニック結晶が記載されている。また、特開2001-72414号公報では、セラミックで作成したフォトニック結晶が記載されており、特開2002-277659号公報には、孔の中に増幅効果などを持たせた別の機能性材料を詰める方法が記載されている。さらに、3次元のフォトニック結晶の作成方法として、自己クローニング法、パイル積み上げ法等の各種作成方法がある(特開2001-249235号公報、特表2001-518707号公報等参照)。
【0055】
【発明の効果】
本発明によると、以上の点に鑑み、特に、階段状線欠陥導波路を設けることにより、光を含む電磁界を導く方向に関して、フォトニック結晶の格子構造に単純に従って曲げを行うよりも、より自由な選び方を可能とし、フォトニック結晶上の様々な素子の設計を容易にすることができる。
【0056】
本発明によると、フォトニック結晶上での素子として、結合器、分岐器、方向性結合器、多重化器、多重分離器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを構成する際に、近接配置された二つの線状欠陥の端部において片方の線状欠陥の曲がり又は途切れがもう片方の線状欠陥の曲がりから数格子定数以上離れてから為されている構造により、結合度、方向性、反射特性等の改善のための欠陥構成の配置様式の選択肢を広げ、それら特性のより柔軟な調整を可能とすることができる。本発明によると、特に、近接配置された二つの欠陥領域(欠陥範囲)の間の距離が小さいときに有用なデバイスを提供することができる。
【0057】
本発明によると、バンドギャップによる電磁界の閉じ込めを用いたフォトニック結晶欠陥導波路の効果により、より小さな分岐器、結合器、方向性結合器、多重化器、多重分離器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを実現することができる。また、本発明によると、フォトニック結晶では、複数の欠陥構造を一つの構造中に作成することにより、結合器等のフォトニック結晶欠陥デバイスを、それらを必要とするデバイス構造中にモノリシックに実現可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】点欠陥及び線欠陥の説明図を示す。
【図2】点欠陥と線欠陥のほかの説明図を示す。
【図3】二次元フォトニック結晶階段状線欠陥導波路の模式図を示す。
【図4】三次元フォトニック結晶階段状線欠陥導波路の模式図を示す。
【図5】二次元六方格子フォトニック結晶において一段をなす線欠陥が最小限の数の点欠陥からなっている階段状線欠陥を示す模式図である。
【図6】2次元フォトニック結晶上に構成された方向性結合器を示す模式図である。
【図7】階段状線欠陥を用いた構造の方向性結合器の二次元フォトニック結晶における例の模式図を示す。
【図8】近接配置された二つの欠陥範囲(例として線状欠陥としている)の端部において片方の線状欠陥の曲がり乃至途切れがもう片方の線状欠陥の曲がりから線状欠陥の方向に数格子定数以上離れている構造の二次元フォトニック結晶における例を模式図に示す。
【図9】電磁界の入射方向の説明図を示す。
【図10】方向性結合器の周波数特性の説明図を示す(二つの導波路に階段状線欠陥を介するもの)。
【図11】方向性結合器の周波数特性の説明図を示す(一方の導波路に階段状線欠陥を介するもの)。
【図12】線欠陥導波路の周波数帯域についての説明図を示す。
【図13】階段状線欠陥導波路の結合について説明図を示す。
【図14】不連続な欠陥列についての説明図を示す。
【図15】空気クラッド2次元フォトニック結晶スラブ構造中に形成した、フォトニック結晶階段状線欠陥導波路を用い、結合に主に寄与する二つの欠陥範囲の端部曲がりの位置をずらした方向性結合器の構造例の図を示す。
【符号の説明】
1 階段状線欠陥
2 結合部
3 欠陥範囲(欠陥領域)
10 フォトニック結晶
11,12 導波路
15~18 ポート(入力端又は出力端)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14