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明細書 :ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4439197号 (P4439197)
公開番号 特開2004-319649 (P2004-319649A)
登録日 平成22年1月15日(2010.1.15)
発行日 平成22年3月24日(2010.3.24)
公開日 平成16年11月11日(2004.11.11)
発明の名称または考案の名称 ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法
国際特許分類 H01L  21/324       (2006.01)
C30B  29/04        (2006.01)
FI H01L 21/324 X
C30B 29/04 V
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2003-109574 (P2003-109574)
出願日 平成15年4月14日(2003.4.14)
審査請求日 平成18年1月16日(2006.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】長谷川 雅考
【氏名】李 成奇
【氏名】大串 秀世
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】和瀬田 芳正
参考文献・文献 特開平4-348514(JP,A)
特開平7-106267(JP,A)
特開昭63-302516(JP,A)
特開平10-81587(JP,A)
調査した分野 C30B 29/04
H01L 21/324
特許請求の範囲 【請求項1】
p型ダイヤモンド半導体を不活性ガスに曝すことでn型ダイヤモンド半導体に変換することを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法。
【請求項2】
p型ダイヤモンド半導体が、炭素源からのCVD法により形成されていることを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法。
【請求項3】
不活性ガスとして、ヘリウムを用いることを特徴とする請求項1または2記載のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれかに記載のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法により得られたn型ダイヤモンド半導体を空気に曝してp型ダイヤモンド半導体に変換することを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、低抵抗のn型ダイヤモンド半導体および容易にp型またはn型のいずれかの必要な電気伝導性を有するダイヤモンド半導体を得ることのできる、ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ダイヤモンドはその優れた物性および希有な特性から、電子放出源やセンサーあるいは発光素子や電子デバイス用材料などとして大変注目されている。
【0003】
このような展開を実現するためには、ダイヤモンドのp型およびn型電気伝導性の制御技術の確立が必要であって、この電気伝導性制御技術には通常意図的な不純物元素の添加が用いられ、これまでダイヤモンドに対しても不純物元素添加によるp型およびn型電気伝導性を発現させるための技術開発が行われている。
【0004】
しかしながら、これまでのところとくにダイヤモンドへのn型の電気伝導性付与が非常に困難であり、たとえば現在ダイヤモンド薄膜に対する燐(P)のドーピングによりn型の電気伝導性が実現されてはいるが(非特許文献1)、室温での抵抗率がおよそ4×10Ωcmであり、ドーピング層の膜厚が1μmの場合でも室温でシート抵抗がおよそ4×10Ω/□となり、抵抗が低いとは言えなかった。
【0005】
またCVD法で作製したAs-Grownのダイヤモンド表面は、およそ10~10Ωの低い抵抗を持つことが知られているが、この電気伝導性はp型であり、1012~1014/cmのホール面密度を持ち、移動度は数~数十cm/Vsであるという特性がこれまで報告されていた。
【0006】
このためダイヤモンドによる電子デバイス作成の自由度が現状では非常に限定されており、ダイヤモンドの電子デバイス材料への応用実現の妨げとなっている。このような状況から、現在、とくに低抵抗のn型電気伝導性を有するダイヤモンド半導体の作製技術の開発が強く要望されている。
【0007】
【非特許文献1】
S. Koizumi, M. Kamo, Y. Sato, H. OzakiおよびT. Inuzuka, ”Growth and characterization of phosphorous doped [111] homoepitaxial diamond thin films”, Applied Physics Letters Vol. 71 (8), 1997年8月25日
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、低抵抗のn型電気伝導性を有するn型ダイヤモンド半導体および容易に必要な電気伝導性を有するダイヤモンド半導体を得ることのできる、ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、p型ダイヤモンド半導体を不活性ガスに曝してn型ダイヤモンド半導体に変換することを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法を提供する。
【0010】
第2には、第1の発明において、p型ダイヤモンド半導体が、炭素源からのCVD法により形成されていることを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法を提供する。
【0011】
第3には、第1または2の発明において、不活性ガスとして、ヘリウムを用いることを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法を提供する。
【0012】
また第4には、第1ないし3いずれかの発明のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法により得られたn型ダイヤモンド半導体を空気に曝してp型ダイヤモンド半導体に変換することを特徴とするダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法を提供する。
【発明の実施の形態】
【0013】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0014】
この出願の発明のn型ダイヤモンド半導体は、p型ダイヤモンド薄膜などのp型ダイヤモンド半導体が酸化還元作用のない乾いたガスである不活性ガスに曝されたことでn型電気伝導性が付与されていることを大きな特徴としており、この出願の発明のn型ダイヤモンド半導体は低抵抗であって容易に作製することができる。
【0015】
このときp型ダイヤモンド半導体としては、好適には炭素源からのCVD法により形成されたものが用いられる。ダイヤモンドの合成方法としてはCVD法以外に高温高圧合成法や燃焼法などの方法が挙げられるが、それらの方法を用いて作製したダイヤモンドは、一旦CVD法での手続きを用いて水素プラズマに数秒間曝すことによりp型ダイヤモンド半導体を形成でき、そのような手続きを経た後のp型ダイヤモンド半導体はn型ダイヤモンド半導体に変換させることが可能となるが、それらのCVD方法以外の方法を用いた場合にはCVD法を用いた場合に比べて時間や手間を要してしまうのである。
【0016】
なおこのとき不活性ガスとして、窒素、アルゴン、ヘリウムあるいはそれらの混合ガスなどを用いることができるが、とくにヘリウムが好適に用いられる。
【0017】
この出願の発明のn型ダイヤモンド半導体は優れた物性および希有な特性を有していることから、ダイヤモンド半導体電子放出源として好適に用いることができる。
【0018】
また、この出願の発明のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法は、p型ダイヤモンド薄膜などのp型ダイヤモンド半導体を、酸化還元作用のない乾いたガスである不活性ガスに曝すことでn型ダイヤモンド半導体に変換することを特徴としている。なおこのとき、p型ダイヤモンド半導体としては、好適には炭素源からのCVD法により形成されたものを用いることができ、このような方法を用いることによって、燐などのドーピングを行う必要がなく、容易に、CVD法により形成されたAs-Grownのp型ダイヤモンド薄膜などのp型ダイヤモンド半導体を低抵抗のn型ダイヤモンド半導体に変換することができるのである。
【0021】
不活性ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムあるいはそれらの混合ガスなどを用いることができるが、とくにヘリウムを好適に用いることができる。
【0022】
そして上記のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法により得られたn型ダイヤモンド半導体を空気に曝してp型ダイヤモンド半導体に変換することも可能であり、さらに、この出願の発明のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法により、p型ダイヤモンド薄膜の一部をp型からn型あるいはn型からp型に変換することもでき、p型とn型のダイヤモンド半導体を相互に変換できることから、必要に応じてp型およびn型のダイヤモンド半導体のいずれかを容易に得ることができる。
【0019】
そして上記のダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法により得られたp型およびn型のダイヤモンド半導体を用いて電子デバイスを形成することができ、ダイヤモンドの優れた物性および希有な特性を利用した電子デバイスを得ることができる。
【0020】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0021】
【実施例】
<実施例1>
マイクロ波プラズマCVD法によりp型ダイヤモンド薄膜を製造し、そのp型ダイヤモンド薄膜をHe雰囲気中に曝し、その特性の評価を行った。
【0022】
具体的には、Mo(モリブデン)製の試料ホルダー上に高温高圧合成Ib(100)ダイヤモンド基板(住友電気工業株式会社製、商品名「スミクリスタル(登録商標)」)を置き、濃度0.05%のメタン(製造元:東京ガス株式会社、純度7N)、基板温度約900℃、圧力80Torrで通常のマイクロ波プラズマCVD法により、アンドープのダイヤモンド合成と同じ方法で、48時間ダイヤモンド薄膜の合成を行った。
【0023】
次に上記の方法により得られたAs-Grownのp型ダイヤモンド薄膜である試料にvan der Pauwの形状でAu/Pt/Tiの電極を作製し、電気抵抗およびホール効果測定を行った。
【0024】
図1に、p型ダイヤモンド薄膜の試料の温度を80℃に保ち、およそ1TorrのHe(製造元:岩谷産業株式会社、純度4N)雰囲気中において測定した試料のシート抵抗の時間的変化を示す。同図より明らかなように測定の開始時は従来通り試料はp型電気伝導性であったが、時間が経つに連れて抵抗が徐々に増加し、約35時間を経過した時点でn型電気伝導性に変化した。また図1には示されていないが、さらにn型電気伝導性の状態から室温で室内の空気に曝すことで試料は再びp型電気伝導性を示した。
【0025】
<実施例2>
次に実施例1と同様にマイクロ波プラズマCVDにより形成されたAs-Grownのp型ダイヤモンド薄膜の試料にvan der Pauwの形状でAu/Pt/Tiの電極を作製し、電気抵抗測定を行った。この例では、p型ダイヤモンド薄膜の試料の温度を変化させた状態で、He雰囲気中(1.1mbar)と空気雰囲気中で試料のシート抵抗を測定し、その試料のシート抵抗の時間的変化を図2に示す。
【0026】
同図より明らかなように、p型ダイヤモンド薄膜の温度を25℃から80℃に上昇させてHeに曝した状態ではシート抵抗は緩やかに増加したが、20時間を経過した時点で試料の温度を120℃に上昇させたことで80℃のときと比べて急速にシート抵抗が増加し、p型電気伝導性からn型電気伝導性に変化した。そして40時間が経過した時点で再び25℃の室温とし、さらに約50時間を経過した時点で空気に曝したことで徐々にシート抵抗が減少し約90時間を経過した時点で再びp型電気伝導性に変化した。
【0027】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、低抵抗のn型ダイヤモンド半導体、および容易にp型またはn型のいずれかの必要な電気伝導性を有するダイヤモンド半導体を得ることのできる、ダイヤモンド半導体の電気伝導性変換方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 He雰囲気中において測定したダイヤモンド薄膜の試料のシート抵抗の時間的変化を例示した図である。
【図2】 雰囲気中と空気雰囲気中において温度を変化させた状態で測定したダイヤモンド薄膜の試料のシート抵抗の時間的変化を例示した図である。
図面
【図1】
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【図2】
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