TOP > 国内特許検索 > 増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含むインプラント > 明細書

明細書 :増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含むインプラント

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4428693号 (P4428693)
登録日 平成21年12月25日(2009.12.25)
発行日 平成22年3月10日(2010.3.10)
発明の名称または考案の名称 増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含むインプラント
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61L 27/00 G
A61L 27/00 J
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2003-569244 (P2003-569244)
出願日 平成14年10月21日(2002.10.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年10月22日第23回大会長発行の「第23回日本バイオマテリアル学会大会予稿集」に発表
国際出願番号 PCT/JP2002/010866
国際公開番号 WO2003/070291
国際公開日 平成15年8月28日(2003.8.28)
優先権出願番号 2002041604
優先日 平成14年2月19日(2002.2.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年5月17日(2005.5.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】植村 壽公
【氏名】立石 哲也
【氏名】松本 和也
【氏名】小島 弘子
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】松波 由美子
参考文献・文献 特開2002-017846(JP,A)
再生医学~ティッシュエンジニアリングの基礎から最先端技術まで~,株式会社 エヌ・ティー・エス,2002年 1月31日,p.680-686
J. Bone Miner. Res.,1997年,Vol.12, No.10,p.1606-1614
調査した分野 A61L 27/00
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の遺伝子を導入した、骨髄由来の間葉系幹細胞から分化誘導した骨芽細胞を含む多孔性生体適合性材料からなる骨代替用インプラントであって、該遺伝子の導入がアデノウイルスベクターを用いて行われたものである、インプラント
【請求項2】
前記細胞が患者から採取された細胞である、請求項に記載のインプラント。
【請求項3】
前記生体適合性材料がハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらの2種以上で構成される複合体からなる群より選ばれる、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項4】
以下の工程を含む、骨代替用インプラントの製造方法。
1) 骨髄由来の間葉系幹細胞をin vitroで骨芽細胞へ分化誘導する工程
2) 上記細胞に、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の遺伝子をアデノウイルスベクターを用いてトランスフェクトする工程
3) 上記細胞を、多孔性生体適合性材料に播種して増殖させる工程
【請求項5】
前記生体適合性材料がハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらの2種以上で構成される複合体からなる群より選ばれる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
分化誘導がデキサメタゾン、免疫抑制剤、骨形成タンパク質、および骨形成液性因子からなる群より選ばれる1種または2種以上を用いて行われる、請求項4又は5に記載の方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含むインプラントおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、血管内皮細胞増殖因子の過剰発現により、迅速な骨再生を可能とする骨代替用インプラントに関する。
背景技術
従来、骨のように再生能力の限られた組織の修復には、自己組織の再移植や人工インプラントによる置換・補充が行われている。しかし、自己組織の使用は患者の負担が大きく、その採取量にも限界があり、人工インプラントには自己組織に匹敵するだけの機械的・構造的特性や生体適合性が期待できないという問題がある。
一方、生体から取り出した自己の細胞をin vitroで培養・組織化して限りなく生体に近い組織を再構築し、これを再び生体内に戻すという「再生医療」の研究が進められている。この再生医療が実現すれば、それは欠損した組織修復の最も理想的な治療方法となる。通常、再生医療におけるin vitroでの組織再生は、細胞を適当な足場材料に播種、培養して行う。この細胞培養時に、細胞をより早く目的の組織に増殖・分化させること、また生体適用後に、移植組織を速やかに増殖させ、欠損部に融合・組織化させることが、再生医療においては重要な問題となる。
これを解決する方法として、細胞の分化誘導をつかさどるサイトカイン(液性因子)を直接細胞に導入するいくつかの技術が知られている。たとえば、特開2001-316285号には、TGF-β1を含浸させたコラーゲンスポンジ上で骨髄細胞等を培養する技術が開示されている。また、特開平8-3199号には、bFGFを含有するコラーゲン-軟骨細胞複合体による、軟骨組織再生治療材が開示されている。しかしながら、これらの技術は増殖因子そのものを細胞に添加するため、増殖因子活性の十分な持続が望めない。特に、生体内では添加した増殖因子が速やかに拡散してしまうため、その効果は数時間から1日程度で急激に低下するという。
一方、肝臓等の組織再生においては、血管新生が重要な過程であることが知られているが(Ajioka,I.et.al.,Hepatology 29 396-402,(1999))、骨再生における血管新生の影響については、未だ十分な検討はなされていない。
発明の開示
本発明は、生体適合性が高く、迅速な骨再生を可能とする骨代替用インプラントを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、細胞に増殖因子の遺伝子を導入して過剰発現させれば、増殖因子の効果が持続的に得られ、より迅速な組織再生が可能になると考えた。そして、血管新生を促す血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を導入することにより、骨再生が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)~(12)に関するものである。
(1)増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含む生体適合性材料からなる骨代替用インプラント。
(2)前記増殖因子が、血管新生および/または骨形成を促す増殖因子である、上記(1)記載のインプラント。
(3)前記増殖因子が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である、上記(2)記載のインプラント。
(4)前記細胞が胚性幹細胞または骨髄由来の間葉系幹細胞である、上記(1)~(3)のいずれか1に記載のインプラント。
(5)前記細胞が骨芽細胞である、上記(4)記載のインプラント。
(6)前記細胞が患者から採取された細胞である、上記(1)~(5)のいずれか1に記載のインプラント。
(7)前記生体適合性材料がハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらの2種以上で構成される複合体からなる群より選ばれる、上記(1)~(6)のいずれか1に記載のインプラント。
(8)以下の工程を含む、骨代替用インプラントの製造方法。
1)骨髄由来細胞をin vitroで骨芽細胞へ分化誘導する工程
2)上記細胞に、増殖因子の遺伝子をトランスフェクトする工程
3)上記細胞を、生体適合性材料に播種して増殖させる工程
(9)前記増殖因子が、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である、上記(8)記載の方法。
(10)前記生体適合性材料がハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらの2種以上で構成される複合体からなる群より選ばれる、上記(8)または(9)に記載の方法。
(11)増殖因子の遺伝子がアデノウィルスベクターまたはレトロウィルスベクターを用いてトランスフェクトされることを特徴とする、上記(8)~(10)のいずれか1に記載の方法。
(12)分化誘導がデキサメタゾン、免疫抑制剤、骨形成タンパク質、および骨形成液性因子からなる群より選ばれる、上記(8)~(11)のいずれか1に記載の方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.インプラントの構成
本発明のインプラントは、増殖因子の遺伝子を導入した細胞を含む、生体適合性材料からなる骨代替用インプラントである。
1.1 増殖因子
本発明のインプラントに用いられる増殖因子は特に限定されず、たとえば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板分化増殖因子(PDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、ホルモン、サイトカイン、骨形成因子(BMP)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が挙げられる。
特に、血管新生および/または骨形成を促す増殖因子が好ましい。そのような増殖因子としては、たとえば骨形成因子(BMP)、骨増殖因子(BGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)およびトランスフォーミング増殖因子(TGF)を挙げることができる。なかでも、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、in vitroでの血管誘導を飛躍的に向上させ、迅速な骨再生を可能にする点で最も好ましい。
前記増殖因子の遺伝子は、通常の方法に従い、公知の配列を基に調整することができる。たとえば、骨芽細胞からRNAを抽出し、公知の配列を元にプライマーを作製し、PCR法でクローニングすることにより目的とする増殖因子遺伝子のcDNAが調整できる。また、市販のものを購入、あるいは供与してもらって用いても良い。
1.2 細胞
本発明に用いられる細胞は、分化・増殖能力を有する未分化の細胞であり、たとえば、間葉系幹細胞、造血幹細胞、骨格筋幹細胞、神経幹細胞および肝臓幹細胞等を挙げることができる。特に、骨髄由来の胚幹細胞(ES細胞)および骨髄由来の間葉系幹細胞が好ましい。
前記細胞は、樹立された培養細胞株のほか、患者の生体から単離された細胞を好適に用いることができる。該細胞は患者から採取された後、常法に従って結合組織等を除去して調製することが好ましい。また、常法により一次培養を行い、予め増殖させてから用いてもよい。
1.3 生体適合性材料
本発明に用いられる生体適合性材料は、細胞培養の足場になると同時に、細胞ごと生体内に適用され、骨代替用インプラントとして機能する。ここで、「生体適合性材料」とは、生体に対して親和性が高く、安全性の確認されている材料を意味する。そのような材料としては、SUS316L、バイタリウムおよびTi-6Al-4V等の金属材料、超高分子量ポリエチレン、MMA骨セメント、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレン等の高分子材料、ハイドロキシアパタイト、β-TCP、α-TCPおよびバイオガラス等のセラミックス材料等を挙げることができる。ただし、細胞培養の足場として用いられるという点で、特にハイドロキシアパタイト、β-TCP、α-TCP等の多孔性セラミックス材料、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸、ならびにこれらの複合体、あるいは吸収性合成ポリマーを用いることが好ましい。
前記生体適合性材料は、細胞の均一な播種が可能となるよう、多孔性であることが好ましい。なお、本明細書中において「多孔(性)」とは、気孔率が40%以上を意味するものとする。また、孔の大きさは特に限定されないが、骨再生が起きやすいという点では直径200μm~500μmが好ましい。
前記生体適合性材料は、インプラントの目的や適用部位により、適宜最適なものを選ぶことが好ましい。たとえば、強度を必要とする移植箇所(あるいは手術法)については、ハイドロキシアパタイトが好ましく、強度を必要としない移植箇所(あるいは手術法)については、生体吸収性のβ-TCP等が好ましい。
前記生体適合性材料の形態および形状は、特に限定されず、スポンジ、メッシュ、不繊布状成形物、ディスク状、フィルム状、棒状、粒子状、およびペースト状等、任意の形態および形状を用いることができる。こうした形態や形状は、インプラントの目的に応じて適宜選択すればよい。
2.インプラントの作製方法
本発明のインプラントは、次の工程によって製造される。
▲1▼ヒト骨髄由来細胞をin vitroで骨細胞へ分化誘導する工程
▲2▼上記細胞に、増殖因子の遺伝子をトランスフェクトする工程
▲3▼上記細胞を、生体適合性材料に播種して増殖させる工程
以下、各工程の詳細について説明する。
2.1 細胞の分化誘導
細胞は適当な薬剤を用いて処理することにより、目的とする組織を構築する細胞に分化誘導をしておくことが必要である。たとえば、デキサメタゾン、FK-506およびシクロスポリン等の免疫抑制剤、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7およびBMP-9等の骨形成タンパク質(BMP:Bone Morphogenic Proteins)、TGFβ等の骨形成液性因子から選ばれる1種または2種以上を添加することにより細胞を骨系細胞に分化誘導する。
2.2 増殖因子の遺伝子の導入
増殖因子の遺伝子は、常法に従い、公知の配列を基に調整することができる。たとえば、骨芽細胞からRNAを抽出し、公知の配列を元にプライマーを作製し、PCR法でクローニングすることにより目的とする増殖因子遺伝子のcDNAが調整できる。
本発明において、増殖因子の遺伝子の細胞への導入は、動物細胞のトランスフェクションに通常用いられる方法、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、レトロウィルスやバキュロウィルスをベクターとして用いる方法等を用いることができるが、アデノウィルスまたはレトロウィルスをベクターとして用いる方法が安全性、導入効率の点から好ましく、特にアデノウィルスを用いた方法が最も好ましい。
前記アデノウィルスベクターの調整は、例えばMiyakeらの方法(Miyake,S.et al,Proc.Natl.Acad.Sci.93:1320-1324,(1993))に基づいて行えばよいが、市販のAdenovirus Cre/loxP Kit(宝酒造社製)を用いることもできる。このキットはP1ファージのCreリコンビナーゼとその認識配列であるloxPを用いた新たな発現制御系(Kanegae Y.et.al.,1995 Nucl.Acids Res.23,3816)による組換えアデノウィルスベクター作製キットで、転写因子遺伝子を組み込んだ組換えアデノウィルスベクターを簡便に作製することができる。
なお、アデノウィルス感染のmoi(multiplicity of infection)は、10以上、好ましくは50~200、より好ましくは100前後(80~120程度)がよい。
2.3 細胞培養
前記増殖因子遺伝子を導入した細胞の培養は、前記した生体適合性材料からなる足場に、該細胞を播種して、通常の方法により行えばよい。
細胞の播種は、足場である生体適合性材料に単に播種するだけでもよく、あるいは、緩衝液、生理食塩水、注射用溶媒、あるいはコラーゲン溶液等の液体とともに混合して播種してもよい。また、材料によって、細胞が孔の中にスムーズに入らない場合は、引圧条件下で播種してもよい。
播種する細胞の数(播種密度)は細胞の形態を維持して組織再生をより効率よく行わせるため、用いる細胞や足場材料に応じて適宜調整することが望ましい。たとえば、骨芽細胞であれば、播種密度は100万個/ml以上であることが望ましい。
細胞培養は、足場である生体適合性材料のもとで行う。培地としては、MEM培地、α-MEM培地、DMEM培地等、公知の培地を培養する細胞に合わせて適宜選んで用いることができる。また、該培地には、FBS(Sigma社製)、Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL社製)等の抗生物質等を添加しても良い。培養は、3~10%CO、30~40℃、特に5%CO、37℃の条件下で行うことが望ましい。培養期間は、特に限定されないが、少なくとも4日、好ましくは7日、より好ましくは2週間以上であるとよい。
3.インプラントの利用
前記方法によって再生された組織は、足場材料である生体適合性材料とともに、埋入あるいは注入することで、骨代替用インプラントとして利用することができる。
本発明のインプラントの形態及び形状は、特に限定されず、スポンジ、メッシュ、不繊布状成形物、ディスク状、フィルム状、棒状、粒子状、及びペースト状等、任意の形態及び形状を用いることができる。こうした形態や形状は、インプラントの目的に応じて適宜選択すればよい。
本発明のインプラントは、その目的と効果を損なわない範囲において、適宜他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板分化増殖因子(PDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、ホルモン、サイトカイン、骨形成因子(BMP)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子、骨形成タンパク質、St、Mg、Ca及びCO等の無機塩、クエン酸及びリン脂質等の有機物、薬剤等を挙げることができる。
本発明のインプラントにおいて、骨細胞・組織は増殖因子の遺伝子を導入した細胞から構築される。骨細胞・組織の構築は移植前(in vitro)のみならず、移植後の骨欠損部(in vivo)においても引き続き行われてよい。本発明のインプラントは、骨親和性及び骨形成能が高く、生体適用後すみやかに生体骨と一体化し、骨欠損部の再生を可能にする。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2002-41604号の明細書に記載された内容を包含する。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕 VEGF遺伝子導入ラット骨芽細胞による血管新生促進
1.実験方法
1)アデノウィルスベクターの作製
▲1▼マウスVEGFのcDNA
マウスVEGFのcDNA(配列番号1)は、東京工業大学 渡辺氏より供与を受けた。
▲2▼組換えアデノウィルスの作製
上記VEGFのcDNAを市販のAdenovirus Cre/loxP Kit(宝酒造社製)を用いてコスミドベクターpAxCAwtのSwaIサイトに挿入し、キットの説明書に従い組換えアデノウィルスベクターを作製した。VEGFの挿入は制限酵素パターンとシークエンスにより確認した。このウイルスはE1領域欠失のため、標的細胞内では増殖することはできず、一過性の性質をもつ。また、目的遺伝子の上流にスタッファーをもつため、Creリコンビナーゼ発現ウィルスと共感染のときのみ遺伝子を発現する。なお、作製したウィルスの力価は、約2.4×10PFU/mlで、感染効率は非常に高かった。
2)骨髄細胞の採取および培養
ラット骨芽細胞(Rat Bone Marrow Osteobrast:RBMO)は、6週齢のFisherラット(オス)の大腿骨よりManiatopoulosらの方法(Maniatopoulos,C.,Sodek,J.,and Melcher,A.H.(1988)Cell Tissue Res.254,317-330)に従って採取した。採取した細胞を、15%FBS(Sigma社製)、Antibiotic-Antimycotic(GIBCO BRL社製)添加MEM培地(nacalai tesque社製)でコンフルエントになるまで培養した。つぎに、直径3.5cmのディッシュに、5nMデキサメタゾン(Sigma社製)、
10mM β-グリセロフォスフェート(Sigma社製)、50μg/mlアスコルビン酸フォスフェート(Wako社製)を添加した上述の培地を入れ、1ディッシュあたり細胞が約40万個となるように培養液を加えて継代培養した。翌日、継代培養したラット骨芽細胞(90%コンフルエント)にLacZ遺伝子発現ウィルス(AD-LacZ)とCreリコンビナーゼ発現ウィルス(AD-CRE)をmultiplicity of infection(moi)=100で感染させた。
3)Xgal染色法によるLacZ遺伝子発現細胞の観察
アデノウィルス感染~4週間後のラット骨芽細胞におけるLacZの発現をScholerらの方法(Scholer,H.R.et al.,(1989)EMBO J.,8,2551-2557)に従ってXgal染色法により観察した(図1)。なお、非感染細胞をコントロールとして用いた。染色した細胞をNIH imageを用いて画像解析を行い、発現細胞数を数値化することにより遺伝子導入効率を求めた(図2)。結果:発現効率は4日目が最大であり、90%以上の発現効率が見られた。わずかであるが、4週目までは発現がある。
4)ノザンハイブリダイゼーション▲1▼<転写確認>
アデノウィルス感染1週間目のラット骨芽細胞より、市販のTRIzol試薬(GIBCO BRL社製,#15596-10551)を用い、説明書に従いTotal RNAを抽出した。10μgのTotal RNAを1%アガロース/5.5%ホルムアルデヒドゲルで分離し、20×SSCでHybondTM-X1メンブレン(Amersham Pharmacia Biotech社製)に転写した。その後、80℃で2時間加熱し、UV照射を2分間行った。VEGFのcDNAプローブはrediprimeTM(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、α-32PdCTP(3000Ci/mmol,Amersham Pharmacia Biotech社製)でラベルし、取り込まれなかったα-32PdCTPをMicroSpinTMG-25 Column(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて除いた。このメンブレンを68℃で30分間PerfectHyb7NPlus HYBRIDIZATION BUFFER(SIGMA社製)中でインキュベートした後、ラベルしたcDNAプローブ(2x10cpm/ml)を加えてさらに68℃で1時間インキュベートした。メンブレンは室温で2SSC/0.1%SDSで5分間洗った後、さらに68℃で0.5SSC/0.1% SDSで2回各20分間洗った。その後メンブレンを-80℃でKodak XAR filmに一昼夜感光した(図3)。さらに、VEGF発現量をmoi=0の値を1として18s rRNAの発現量との相対比で示した(図4)。
結果:moiの上昇に従いVEGFの転写量が増加することが確認された。
5)ノザンハイブリダイゼーション▲2▼<VEGF発現量の経時変化>
アデノウィルス感染後4、7、10、14日後のTotalRNAを抽出し、前項と同様の方法でノザンハイブリダイゼーションによってVEGFmRNAの発現量変化をみた。なお、VEGF発現量はVEGFとGAPDHとの相対比で示した(図5、図6)。
6)ELISAによる培地中のVEGFの確認▲1▼<moiの効果>
種々のmoiでAD-VEGFをラット骨芽細胞に感染させ、培地中のVEGF量をELISAにより測定した。測定は4日目(図7-A)と7日目(図7-B)の上清を用いて行った。結果:発現量はmoiの上昇に伴い増えるはずであったが、moiにかかわらず約10ng/mlと一定であった。ウィルス感染により細胞数が減少したためと考えられる。
7)ELISAによる倍地中のVEGFの確認▲2▼<VEGF量の経時変化>
AD-VEGFをmoi=100で感染させ、VEGF濃度をELISAにより測定し、その経時変化をみた(図8)。なお、培地交換は3日ごとに行い、その際に上清を回収した。
結果:10日ごろまではVEGF発現量は多く、14日目には大きく減少することから、ウィルスによるVEGF発現効果は2週間程度であることがわかった。
8)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を利用した分泌VEGF活性の確認
VEGF活性を調べるために、96ウェルにヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を播き、種々のmoiでウィルスを感染させたラット骨芽細胞培地上清を20μl/wellの割合で加えた。その後Cell Counting Kit(WAKO)で細胞の増加率を評価した(図9)。
その結果、ウィルスのVEGFにより細胞の成育に2倍の差が出ていることが確認された。
2.結論
VEGF導入細胞は、moiにかかわらず、非感染細胞の約8~10倍のVEGF発現を示した。特にmoiは、50~200程度が望ましく、100程度が最適であると考えられた。また、VEGF感受性のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を使った生育実験より、AD-VEGF感染ラット骨髄細胞培地を加えた細胞は、非感染細胞よりも明らかに血管細胞の成育を促進することが確かめられた。
また、増殖因子の効果も2週間程度持続しており、これは増殖因子そのものの直接導入(増殖因子の拡散が数時間から1日でがおこってしまう)に比較して、非常に高いものであった。
〔実施例2〕 VEGF遺伝子導入ラット骨芽細胞による骨組織再生
1)試験方法
フィッシャーラット大腿骨より骨髄液を採取したのちT75フラスコでαMEM+15%FBS中37℃5%炭酸ガス下で6日間培養した。その後、dexamethasone,beta-glycerophosphate,ascorbic acid等、骨芽細胞への分化誘導因子を加えて4日間培養した。T75フラスコでほぼコンフルエントになったところで(1-3×10(7)細胞/フラスコ)で実施例1と同様にしてAD-VEGFに感染させ(moi=100)、1日経過後トリプシンを用いて細胞をはがし、多孔性セラミックス(オスフェリオン:オリンパス光学工業株式会社、平均ポアサイズ200μm、気孔率75%)に200万個/ml以上の播種密度で播種し、上記と同様の条件で培養した。
1日経過後、フィッシャーラットの大腿骨に骨欠損部位をつくり、その部分に上記セラミックス(2×2×2mm)を移植した。移植後2週間後のラットより大腿骨を取り出し、固定後、切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン染色により骨形成を見た。
2)結果
結果を図10に示す。cont1,cont2はウイルス非感染群(コントロール)で、cont1は低倍率、cont2は高倍率像である。VEGF1,VEGF2はウイルス感染群で、VEGF1は低倍率、VEGF2は高倍率像である。図10から明らかなように、非感染群では骨形成があまり起こっていないのに対し、感染群では明らかに骨形成が顕著に起こっていることが確認された。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、細胞をより早く目的の組織に分化・増殖させ、効果的な骨再生が可能となる。これにより、再生医療における優れた骨代替用インプラントを提供することができる。
【配列表】
JP0004428693B2_000002t.gifJP0004428693B2_000003t.gifJP0004428693B2_000004t.gifJP0004428693B2_000005t.gifJP0004428693B2_000006t.gif
【図面の簡単な説明】
図1は、非感染細胞(control)とアデノウィルス感染細胞(AD-lacZ)のXgal染色結果を示す画像である。
図2は、アデノウィルス感染細胞におけるLacZ遺伝子の導入効率(染色量で評価)を示すグラフである。
図3は、moiによるVEGF発現量の変化を示すノザンハイブリダイゼーションの結果である。
図4は、moiによるVEGFの発現量(18s rRNA発現量との相対値)の変化を示すグラフである。
図5は、VEGF発現量の経時変化を示すノザンハイブリダイゼーションの結果である。
図6は、VEGFの発現量(18s rRNA発現量との相対値)の経時変化を示すグラフである。
図7は、moiによる培地中のVEGF量変化を示すグラフ(A:4日目、B:7日目)である。
図8は、moi=100で感染させたときのVEGF発現量の経時変化を示すグラフである。
図9は、VEGFによるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増加率を示すグラフである。
図10は、ヘマトキシリン-エオジン染色により骨組織再生をみた写真である(A:control(10日)、B:control(20日)、C:VEGF(10日)、D:VEGF(20日))。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9