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明細書 :空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4899036号 (P4899036)
公開番号 特開2006-138615 (P2006-138615A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成18年6月1日(2006.6.1)
発明の名称または考案の名称 空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システム
国際特許分類 F24F   5/00        (2006.01)
F24F   6/04        (2006.01)
F25B  19/00        (2006.01)
E04B   1/74        (2006.01)
FI F24F 5/00 Z
F24F 6/04
F25B 19/00 Z
E04B 1/74 T
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2004-353098 (P2004-353098)
出願日 平成16年12月6日(2004.12.6)
優先権出願番号 2004300982
優先日 平成16年10月15日(2004.10.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年8月23日(2007.8.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】羽田野 袈裟義
審査官 【審査官】田中 一正
参考文献・文献 特開平04-143526(JP,A)
特開平11-083230(JP,A)
特開平08-226685(JP,A)
特開2004-150782(JP,A)
特表2002-539404(JP,A)
特開平08-219504(JP,A)
特開平06-129783(JP,A)
調査した分野 F24F 5/00
E04B 1/74
F24F 6/04
F25B 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、該室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置の排熱を抑制する装置であって、該室外機から排出される熱風を受け表面から水を蒸発させる水蒸発部と、該水蒸発部に水を供給する水供給部とを有し、該水蒸発部は、水の通路部とその周囲を水蒸発部の蒸発面の全面を利用するように全面にわたり被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体(以下、この「管状の蒸発体」を「蒸発管」と称する)を主要部材として構成され、該水供給部は該通路部に流通可能に接続され、該通路部から該保水部に水が供給されその保水部の表面で水の蒸発が生じるように構成されるとともに、前記保水部は、水の蒸発面を増大させるため、前記蒸発管の長手方向に対して垂直方向となるような平板状のフィン状の突起面を有することを特徴とする空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項2】
前記蒸発管の水の通路部は、導管で構成され、該導管は、その周囲を被覆する前記保水部に水を供給するための供給穴を管壁に複数有することを特徴とする請求項1記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項3】
前記蒸発管は、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質の保水部からなる概ね管状の蒸発体であることを特徴とする請求項1記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項4】
前記保水部は、フェルト、金網、焼結金属、セラミックスの少なくともいずれかを材料として形成されていることを特徴とする請求項1記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項5】
前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行に、前記蒸発管を所定の間隔で複数本配置して構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項6】
前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面して、前記蒸発管を螺旋状又は渦巻状に配置して構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項7】
前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面して配置され、該排気面側からみたその外形が、該排気面の外形に合わせ、概ね円形又は方形であることを特徴とする請求項1乃至請求項記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項8】
前記水供給部は貯水槽を有し、該貯水槽は、該貯水槽内の水が前記蒸発管の通路部に自然流下可能に、該通路部に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置。
【請求項9】
室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、該室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置を含む空冷式冷房システムであって、水蒸発部と水供給部とを有する請求項1乃至請求項記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置を、該水蒸発部が該室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面する如く配置して、該室外機から排出される熱風を受け該水蒸発部から水が蒸発するように構成し、該空冷式冷房装置の排熱を抑制したことを特徴とする空冷式冷房システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空気を冷却する室内機と熱風を排出する室外機とを備えた空冷式冷房装置の排熱を、水の気化潜熱を利用して抑制する技術に係り、空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の都市域は、表面がコンクリートやアスファルトなどで覆われている等のため、夏季には厳しい熱環境にさらされ、快適さを確保する目的で冷房装置が使用されるが、その排熱などにより所謂ヒートアイランド問題が生じている。
【0003】
即ち、一般家庭や事務所等に設置されるパッケージエアコン又はルームエアコンと呼ばれている空冷式冷房装置は、通常、室内に設置され、冷媒液を蒸発させその気化潜熱により周囲すなわち室内の空気を冷却する室内機と、室外に設置され、冷媒ガスを圧縮する圧縮機及び圧縮された冷媒ガスを外気で冷却して凝縮させる凝縮器を有する室外機を備え、その凝縮器を冷却した外気は、熱風として排出され、大気温度を上昇させる主要な要因の1つになっている。なお、冷媒ガスを冷却する外気は、通常、室外機に含まれる室外ファンによって凝縮器に向けて送風される。
【0004】
かかる空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を軽減するためのアプローチは、一般的に、2つの方向から行うことができ、その1つは空冷式冷房装置の効率向上であり、他の1つは排出された熱風からの熱除去であって、本発明の意図するところの、水の気化潜熱を利用して大気への熱負荷を軽減する技術に係っても、その2つの方向からの技術開発がなされている。
【0005】
即ち、先ず、水の気化潜熱を利用して行う空冷式冷房装置の効率向上策としては、凝縮器(通常、フィン付伝熱管を用い構成されている)の伝熱管表面に水を散布・噴霧してその表面で水を蒸発させ、凝縮器(文献によって「熱交換器」などと表記)での冷却能力を改善し空冷式冷房装置の効率向上を図り、結果として、その運転に伴う大気への熱負荷を軽減する技術が、例えば、特許文献1(空冷式冷房機等の冷却機能向上装置)、特許文献2(空気熱源式冷房装置およびこれを用いた冷房方法)、特許文献3(省エネドレン散布機)、特許文献4(空冷式冷房装置)などに開示されている。
【0006】
なお、特許文献1、特許文献3、特許文献4には、伝熱管表面に散布・噴霧する水として、室内機から排出される排水(文献によって「ドレン水」、「除湿水」)を用いる技術が開示されている。又、特許文献2には、伝熱管表面に水を噴霧する手段(ホロコーンタイプの噴霧ノズルなど水噴霧器)と、外気温度及び外気湿度の実測値と予め入力された各温度、湿度における水噴霧量の最適値のデータに基づいて、或いは、伝熱管下部に設置した水滴センサの水が垂れているかどうかの検知データに基づいて、水の蒸発量を推定する手段と、給水バルブの開度調整などにより噴霧水量を制御する手段(制御器)と、を設け、その推定した蒸発量に合わせ噴霧水量を制御する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、室外機の流入風で風車のように回るファンにドレン水を滴下し、細かい水滴にして拡散・散布する技術が開示されている。又、特許文献4には、室内機からの排水を散布に利用するに際し、貯水槽(文献中、「貯留槽」)を設けることにより、これをバッファーとして、日中の一番気温が高く冷房負荷が最も大きくなる時間帯に集中的に散布し、それ以外の時間帯には貯水槽の貯水量を増やすような稼動形態を採用することができ、これにより、室内機からの排水を常時散布する場合と比較し、省エネルギー効果を向上できることが示されている。
【0008】
これら、凝縮器の伝熱管表面に水を散布・噴霧してその表面で水を蒸発させることにより、凝縮器の冷却能力を改善し、空冷式冷房装置の運転に伴う熱負荷を軽減しようとする技術は、一般的に、伝熱管表面にスケールが析出し熱交換能力が低下する可能性があり、それを防止するためには散布水中の不純物を取り除く不純物除去器を必要とするという問題がある。又、通常、フィンを有する伝熱管表面に概ね均等に水を散布するのは難しく、期待した冷却能力の改善効果が得られ難いという問題がある。
【0009】
更に又、多くの場合、室外機を設置する場所の下部は水に対する対策がなされておらず、水を垂れ流すことができない状況にあるが、水が垂れ落ちないように散布水量を制御することは極めて困難であるという問題がある。特許文献2には、上述の如く、蒸発量を推定しそれに合わせ噴霧水量を制御する技術が開示されているが、通常、伝熱管は金属製であり、フィンを有するその伝熱管表面での水の挙動は極めて複雑であって、蒸発量を推定するのは難しく、散布水量を制御するのは困難である。
【0010】
更に又、散水パイプや貯水槽、不純物除去器などを既設の室外機にオプションとして付設するためには、大幅な改良が必要となり、コスト面からみても、実用性に乏しいと言わざるを得ない。即ち、かかる従来技術は、上述の如く種々の問題を有し、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる技術とは言い難い。
【0011】
次に、水の気化潜熱を利用して空冷式冷房装置の効率向上を図ろうとするもう1つの技術として、特許文献5(クーラー室外機冷却装置)には、室内機からの排水を利用して室外機の放熱効果を上げ冷房効果を助ける装置の提供を目的として、枠と枠で布を挟み固定し、枠と枠の上部にひっかける形の取り付け部を設けた室外機冷却装置が開示されている。具体的には、室内機からの排水ホースをその取り付け部に差し込み、それを室外機の背部に設置して構成し、排水が布に伝わり、室外機の吸風がその濡れた布を通る際に気化潜熱により冷却され、その冷却された外気で凝縮器が冷却されるように構成することにより、室外機の放熱効果を上げようとする技術が開示されている。
【0012】
この従来技術は、濡れた布と外気を接触させて、その布の表面で水の蒸発が生じるように構成し、その気化潜熱によって外気を冷却するところに大きな特徴がある。即ち、この従来技術は、凝縮器に水を直接的に散布・噴霧するのではなく、吸水性・保水性を有し均一な濡れ面を作り易い布と外気を接触させて、その布の表面で生じた水の蒸発による気化潜熱によって外気を冷却し、その冷却された外気を用いることによって、室外機の放熱効果を上げようとするところに大きな特徴がある。
【0013】
かかる構成により、上述した如く、伝熱管表面へのスケール析出の問題や、伝熱管表面への散布不均一性に基づく効率向上の阻害の問題、水の垂れ落ち防止対策の問題、更には、既設の室外機にオプションとして付設する際のコスト面の問題などを、回避、若しくは軽減することができる。
【0014】
然しながら、この従来技術は、その布を吸風側に設置しておりこの場合、その布は吸風の流動抵抗となり、既設の室外ファンでは所定の外気量を凝縮器に送風できなくなるという問題がある。周知の如く、かかる凝縮器の冷却においては、外気温度と共に流量が重要であって、外気の温度を下げても、その結果、取り込まれる外気の流量が減少したのでは、目的とする放熱効果の向上が得られず、場合によれば、逆に効率が低下することもある。更に、吸風の気流は乱れが弱いため水分蒸発量が大きくならず、このことも効率を上げることができないことの重要な要因となる。
【0015】
もとより、室外ファン等を大型化すれば、所定の外気量の確保は可能ではあるが、その改造には多大なコストを要し、又、室外ファンの消費動力が増大し、実用性に乏しいと言わざるを得ない。即ち、この従来技術は、安価に且つ容易に実用し得る、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる技術とは言い難い。
【0016】
次に、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を軽減するためのもう一方のアプローチ、即ち、水の気化潜熱を利用して、排出された熱風から熱を直接的に除去する技術に関しては、これは古来行われてきた打ち水や植物の蒸散作用による冷却を利用する方法と原理的には同じ技術であるが、直接的に空冷式冷房装置の効率向上を図るものではなく、個々には電気代の低減などとして実感し難いためか、その開示技術は極めて少なく、例えば、特許文献6(排出風の処理装置)などに開示されているのみである。
【0017】
特許文献6は、室外機の温度を上昇させることなく、排出される熱風を水の気化潜熱で冷却する装置の提供を目的とし、略円盤形の通風抵抗のない繊維体と、その繊維体を濡らすための水供給部を有する排出風の処理装置を開示している。又、その背面に更に繊維体を有する処理装置を開示し、通風抵抗のない繊維体として、中央部に通風孔を設けた繊維体や、更に孔を多数有するなど加工した繊維体を用いる処理装置を開示している。なお、この装置は、その繊維体がエアコンの吹き出し口に対面するようにして設置され、エアコンから排出される熱風を受け、その繊維体の表面で生じる水の蒸発による気化潜熱により排出空気を冷却しようとするものである。
【0018】
この従来技術は、特許文献5でいう「布」を、吸い込み側ではなく、吹き出し側に設置した技術であり、この場合、繊維体で生じる流動抵抗が凝縮器の放熱効果に及ぼす影響は大幅に低減される。即ち、吹き出し側に設置した場合には、吹き出し口と繊維体との間を密封しない限り、その間で外側への流路が開放されているため、繊維体で生じた流動抵抗が凝縮器にまで遡って影響することは殆どない。従って、この従来技術によれば、空冷式冷房装置の性能に実質上の影響を与えることなく、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を軽減することが容易になる。
【0019】
又、この従来技術は、特許文献5と比較し、凝縮器を冷却した後のより高温の空気を水と接触させるため、より効果的に水を蒸発させることができる。更に又、この装置は、極めて簡単な構成を有し、その製作や設置、運転も比較的簡単であり、既設の空冷式冷房装置にこの排出風の処理装置を付設するに際しても既設の変更は殆ど必要なく、安価に且つ容易に実用し得るものである。
【0020】
然しながら、この特許文献6で開示された従来技術は、水を保持しそれを蒸発させるための繊維体の構成において満足し得るものではなく、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる技術として満足し得るものではない。即ち、この特許文献6では、繊維体の概形がパラボラアンテナ状の装置が図示され、問題を解決するための手段において、「濡れた繊維体は水の膜で抵抗が生じるので繊維体に適宜に孔を多数設け…排出風の熱風空気の一部は繊維体の孔を抜け背面に出…、残りの熱風は繊維体曲面に沿って中央の通風孔から抜ける」と説明しているが、かかる構成において、抵抗が生じないように孔のサイズや全面積を大きくした場合には、熱風が繊維体と有効に接触することなく通過して水の蒸発が生じ難くなり、一方、孔のサイズや全面積を小さくした場合には、吹き出し口と繊維体との間で外側に流出する熱風、即ち繊維体を迂回する熱風が増大し、この場合も又、繊維体と接触する熱風が減少し水の蒸発が生じ難くなる。
【0021】
上記、孔のサイズの影響について言及したが、その効果を少し説明する。一般に、かかる繊維体に開口部を設けるに際し、大きな孔を少数設けるケースと小さな孔を多数設けるケースを比較した場合、開口部の全面積が同一であっても、大きな孔を少数設けるケースの方が、空気などの流体を通し易いが、気体と繊維体との接触は少なくなるという事情がある。
【0022】
なお、吹き出し口と繊維体との間を、熱風が外側に流出しないように密封し、殆どの熱風が繊維体曲面に沿って流れ、その中央の通風孔から抜けるように構成することもできるが、この場合、繊維体で生じる流動抵抗が著しく大きくなり、凝縮器の放熱効果に大きな影響を及ぼすことになる。又、流路の密閉には既設の改造を含め多大なコストを要することもあり、実用性に乏しいと言わざるを得ない。
【0023】
この従来技術は又、水供給部について具体的な説明をしていないが、例示された図によれば、水道管からの接合部とそれに接続された散水パイプとからなり、そのパイプは、概形パラボラアンテナ状の繊維体の外縁に取り付けられているのみである。かかる構成では、吸水性・保水性の繊維体を用いるとしても、繊維体内の水の移動は毛管現象によるため、その水分移動の能力あるいは量は繊維体内の水の移動距離が長くなると低下し、特に大型の冷房システムを対象とした場合には、繊維体全面にわたり適度な湿り気を維持するように水を供給するのは困難であり、結果、繊維体の全面を効果的に利用することができず、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる技術として満足し得るものではない。
【0024】
なお、空冷式冷房装置の排熱を抑制しようとするものではないが、多孔性物質を利用して蒸発面積を増大させ、冷熱を効率よく発生させようとする技術が特許文献7(吸着式冷蔵庫及び吸着式冷凍装置と、その霜取方法)に開示されている。即ち、この文献には、蒸発器の内周面に多孔性物質(フェルト、金網、焼結金属など)を材料とするウィックを設けることにより、冷媒液をウィックの毛管現象によって蒸発器上部に上昇させ、蒸発面積を増加させると共に冷蔵室上部においても冷熱を発生させることができることが示されている。この従来技術は、一般的に、蒸発面を構成するに毛細管的特性を有する多孔性物質が好適であることを示す実例である。
【0025】
又、本発明者らは、直接的に空冷式冷房装置の排熱を抑制しようとするものではないが、所謂ヒートアイランド問題への対策に係り、多孔質の保水性建材の気化冷却を利用する技術を永らく研究してきた(例えば、非特許文献1)。この多孔質の保水性建材は、本発明の空冷式冷房装置の排熱抑制装置においても、利用し得るものである。
【0026】
本発明者らが研究に用いた保水性建材は、具体的には、庭石に用いる大谷石の廃材を主原料とするセラミックタイルであり、その内部に10ミクロン程度の空隙を多数有し、透水性と毛細管的特性を兼備している。このため、一旦水を含むと長時間にわたって保水し続け、保水状態で加熱されると水分を蒸発し、気化潜熱により建材の温度上昇を抑えると共に、周囲の空気から熱を奪い冷気を発生させる。水分蒸発によって水分が抜けた表面近くの部分には、毛管現象により建材内部の水が再配分される。
【0027】

【特許文献1】実開平06-002013号公報
【特許文献2】特開2001-317821号公報
【特許文献3】特開2003-042476号公報
【特許文献4】特開2004-190877号公報
【特許文献5】実開平05-054926号公報
【特許文献6】特開2004-150782号公報
【特許文献7】特開平07-004776号公報
【非特許文献1】羽田野、他3名(尾崎、鈴木、吉越):水分蒸発を利用した夏季の熱環境改善と電力節減に関する研究、土木学会論文集、No.692/7-21,pp.13-20,2001.11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、室内の空気を冷却する室内機と熱風を排出する室外機とを備えた空冷式冷房装置の排熱に係る上述した状況に鑑みなされたもので、安価に且つ容易に実用し得る、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる、空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、上記の目的を達成するための手段として、次のような構成の、空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システムを採用する。即ち、請求項1の発明は、室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、該室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置の排熱を抑制する装置であって、該室外機から排出される熱風を受け表面から水を蒸発させる水蒸発部と、該水蒸発部に水を供給する水供給部とを有し、該水蒸発部は、水の通路部とその周囲を水蒸発部の蒸発面の全面を利用するように全面にわたり、すなわち室外機の排気を受ける該通路部の全長に及びうるように該通路部と概ね同軸状に、被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体(以下、この「管状の蒸発体」を「蒸発管」と称する)を主要部材として構成され、該水供給部は該通路部に流通可能に接続され、該通路部から該保水部に水が供給されその保水部の表面で水の蒸発が生じるように構成されるとともに、前記保水部は、水の蒸発面を増大させるため、前記蒸発管の長手方向に対して垂直方向となるような平板状のフィン状の突起面を有することを特徴とする。

【0030】
請求項2と請求項3の発明は、その蒸発管の好ましい構成の形態に係り、請求項2の発明は、前記蒸発管の水の通路部は、導管で構成され、該導管は、その周囲を被覆する前記保水部に水を供給するための供給穴を管壁に複数有することを特徴とし、請求項3の発明は、前記蒸発管は、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質の保水部からなる概ね管状の蒸発体であることを特徴とする空冷式冷房装置の排熱抑制装置である。
【0031】
請求項4の発明は、その保水部の好ましい材料の形態に係り、前記保水部は、フェルト、金網、焼結金属、セラミックスの少なくともいずれかを材料として形成されていることを特徴とする。
【0033】
請求項と請求項の発明は、その水蒸発部における蒸発管の好ましい構成の形態に係り、請求項の発明は、前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行に、前記蒸発管を所定の間隔で複数本配置して構成していることを特徴とし、請求項の発明は、前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面して、前記蒸発管を螺旋状又は渦巻状に配置して構成していることを特徴とする。

【0034】
請求項の発明は、その水蒸発部の好ましい外形の形態に係り、前記水蒸発部は、前記室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面して配置され、該排気面側からみたその外形が、該排気面の外形に合わせ、概ね円形又は方形であることを特徴とする。

【0035】
請求項の発明は、その水供給部の構成の形態に係り、前記水供給部は貯水槽を有し、該貯水槽は、該貯水槽内の水が前記蒸発管の通路部に自然流下可能に、該通路部に接続されていることを特徴とする空冷式冷房装置の排熱抑制装置である。

【0036】
請求項の発明は、本発明の空冷式冷房システムであり、室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、該室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置を含む空冷式冷房システムであって、水蒸発部と水供給部とを有する前記請求項1乃至8記載の空冷式冷房装置の排熱抑制装置を、該水蒸発部が該室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面する如く配置して、該室外機から排出される熱風を受け該水蒸発部から水が蒸発するように構成し、該空冷式冷房装置の排熱を抑制したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、以下詳細に説明するように、安価に且つ容易に実用し得る、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる、空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システムを提供することができる効果がある。従って、本発明は、都市域で生じているヒートアイランド問題の解決に貢献できるものであって、その産業上の利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下では、空冷式冷房装置として、代表的に、冷媒の凝縮とその蒸発を利用した装置、即ち、冷房の対象とする室内に設置され、冷媒液を蒸発させその気化潜熱により周囲すなわち室内の空気を冷却する室内機と、室外に設置され、冷媒ガスを圧縮する圧縮機とその圧縮された冷媒ガスを外気で冷却して凝縮させる凝縮器とその凝縮器に外気を送風する室外ファンを有する室外機を備えた空冷式冷房装置について説明するが、本発明の排熱抑制装置は、これに限らず、熱風を排出する空冷式冷房装置であれば何ら制限なく適用することができる。
【0039】
例えば、本発明は、冷媒の凝縮・蒸発を介さない装置、即ち、高圧・常温の冷媒ガスを断熱膨張させその低圧・低温の冷媒ガスにより周囲すなわち室内の空気を冷却する室内機と、冷媒ガスを圧縮する圧縮機とその圧縮された高圧・高温の冷媒ガスを外気で冷却し高圧・常温の冷媒ガスとする熱交換器とその熱交換器に外気を送風する室外ファンを有する室外機を備えた空冷式冷房装置に適用することもできる。
【0040】
或いは又、本発明は、吸着式熱サイクルを利用した空冷式冷房装置に適用することもできる。吸着式熱サイクルは、周知の如く、固体と気体との熱の移動を伴う吸着・脱着現象を熱サイクルに利用したものであり、吸着材(例えば、シリカゲル、ゼオライトなど)を外部熱源で加熱し冷媒(例えば、アルコール、水など)を脱着させる脱着工程と、その吸着材を低温(通常、常温近辺)の状態まで冷却する冷却工程と、その低温状態で冷媒蒸気を吸着剤に吸着させる吸着工程から熱サイクルが構成され、この吸着式熱サイクルを利用した空冷式冷房装置では、冷却工程において熱風が排出される。かかる熱風を排出する空冷式冷房装置であれば、本発明を何ら制限なく適用することができる。
【0041】
以下、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明する。本発明は先ず、安価に且つ容易に実用し得る、空冷式冷房装置の排熱抑制装置を実現するために、上述した特許文献6と同様に、凝縮器の伝熱管表面を水の蒸発が生ずる蒸発面とするのではなく、その凝縮器を冷却した結果、高温となって室外機から排出される熱風を受け、表面から水を蒸発させる蒸発面を別に構成したものであって、且つ、その蒸発面を「繊維体」など多孔質の保水性材料で構成する。
【0042】
なお、本発明でいう「多孔質の保水性材料」とは、多数の空隙を有し、その空隙の毛細管的特性により、水を外から吸引し、それを内部に保持し内部で再配分することができる材料の総称であって、特許文献5でいう「布」や特許文献6でいう「繊維体」などを含み意味する。又、水を蒸発させる「表面」とは、水の蒸発が生じる面であって、多孔質の保水性材料の物理的な表面を限定し意味するものではない。即ち、水が好適に供給されている際には、その保水性材料の物理的な表面で蒸発が生じ、これは本発明の実施において好ましい形態であるが、水の供給が少ない場合には、保水性材料の物理的な表面と共にその内側近傍でも蒸発が生じるものであって、本発明は、かかる形態を排除するものではない。
【0043】
かかる構成により、上述した如く、伝熱管表面へのスケール析出などの問題を回避することができ、又、既設の空冷式冷房装置に本発明の排熱抑制装置を付設するに際しても既設の変更は殆ど必要なく、更に又、この排熱抑制装置は、極めて簡単な構成を有し、その製作や設置、運転も比較的簡単であり、安価に且つ容易に実用し得るものである。
【0044】
本発明は更に、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる排熱抑制装置を実現するために、その水の蒸発面を含む水蒸発部を、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体を主要部材として構成する。
【0045】
水蒸発部をかかる構成とすることにより、熱風に対する流動抵抗を極めて小さくするという制約条件の中で、水の蒸発面を大きくすることができ、又、蒸発面と熱風との熱伝達性能を改善することができる。即ち、流れの圧力損失を小さくするという制約条件の中で、比較的に高い熱伝達性能を得ようとする場合、平行に置かれた円管群の軸に対して直角にその流れを当てる多管式熱交換器が有効であることは周知の事実である。又、その円管群の配置としては、千鳥配列や碁盤目配列が有効であることが知られている。
【0046】
これは主に、外形を柱状とすることにより流れの遮蔽を抑えることができ、しかも非流線形の円筒形状のため、その表面の伝熱面では境界層の剥離が生じる等によって熱伝達性能が大きくなること、上流側の円管で流れが剥離してできた乱れた状態の流れが、その下流の円管に当たることにより下流の円管での熱交換が促進されること、及び伝熱面積をある程度大きくし得ることの効果である。即ち、本発明では、円管状の熱交換器の形状および配置に関する従来の知見を、本発明の蒸発体の形状および配置に応用している。
【0047】
なお、本発明で蒸発体の形状としていう「概ね管状」とは、その外形が円形のものに限定されるものではなく、楕円形や、四角形のコーナー部を曲線としたものなど、その外形が非流線形状のため熱風をその軸に直角に当てた時にその伝熱面で境界層が剥離し易く、且つ流れをあまり遮蔽しないため流動抵抗を抑えられるような形状を総称し意味する。
【0048】
又、主要部材として水蒸発部を構成するかかる蒸発管は、従来技術でいう「散水パイプ」の周囲を多孔質の保水部で被覆し概ね管状の部材としたようなものであって、その散水パイプ(本発明でいう「通路部」)と水の蒸発面(蒸発管の外表面)との距離を適度に、具体的には、保水部の毛管現象により適度の水が散水パイプから水の蒸発面に供給されるようにして決定し、それを主要部材として水蒸発部を構成することにより、特に大型の冷房システムを対象とした場合においても、蒸発面の全面にわたり適度な湿り気を維持するように水を供給することができ、蒸発面の全面を効果的に利用することができる。
【0049】
以上説明したように、本発明の排熱抑制装置は、水の蒸発面を含む水蒸発部をかかる構成とすることにより、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減することができる。
【0050】
即ち、本発明の排熱抑制装置は、室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置の排熱を抑制する装置であって、室外機から排出される熱風を受け表面から水を蒸発させる水蒸発部と、水蒸発部に水を供給する水供給部とを有し、水蒸発部は、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体を主要部材として構成され、水供給部は通路部に流通可能に接続され、通路部から保水部に水が供給されその保水部の表面で水の蒸発が生じるように構成されているのが基本的な実施の形態である。
【0051】
次に、水蒸発部を構成する主要部材である蒸発管について説明する。その蒸発管の具体的な構成としては、特に本発明を限定するものではないが、例えば、蒸発管の水の通路部を、周囲を被覆する保水部に水を供給するための供給穴を管壁に複数有する導管として構成することができる。これは、上述した如く、従来技術でいう「散水パイプ」の周囲を多孔質の保水部で被覆し概ね管状の部材とした形態と概ね同様な実施の形態であり、保水部の材料として「繊維体」などを用いる際に好適な形態である。
【0052】
なお、その導管としては、例えば、構造は、導管を掃除出来るように終端をネジ栓等で、取り外し可能に塞いだものとし、材質は、銅合金、硬質ビニル管など水の腐食作用に耐え、曲げ易いものとし、供給穴を含めてその寸法や形状は、空冷式冷房装置の能力や水蒸発部の具体的な構成などに合わせて適宜に選定して実施する。
【0053】
蒸発管の別の構成としては又、別部材である導管を用いず、保水部材のみを用いて水の通路部も形成する形態として実施することもできる。即ち、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質の保水部からなる概ね管状の蒸発体として実施することもできる。これは、その管壁に水供給用の穴をもつ導管を省略して水供給量の制限を緩めること、及び製造工程の簡略化により、大型冷房システム用の蒸発管を大量生産する際などに好適な形態である。
【0054】
次に、その蒸発管を構成する保水部について説明する。本発明でいう「多孔質の保水性材料」とは、上述の如く、多数の空隙を有し、その空隙の毛細管的特性により、水を外から吸引し、それを内部に保持し内部で再配分することができる材料の総称であって、本発明の保水部はその多孔質の保水性材料を用いたものであり、その好ましい材料としては、例えば、フェルト、金網、焼結金属、セラミックスなどが挙げられる。なお、この「フェルト」とは、所謂「繊維」状のものを用いた材料の総称であって、特許文献5でいう「布」や特許文献6でいう「繊維体」などを含み意味する。
【0055】
保水部は、単独の保水性材料を用いて形成することもできるが、複数の保水性材料を組み合わせ用いて形成することもできる。例えば、先ず、セラミックスで水の通路部を有する内側保水部を形成し、次いで、それにフェルトを被覆することにより外側保水部を形成して、二重構造を有する保水部とする形態などとして実施することもできる。
【0056】
保水部の形状としては、概ね管状のみとする形態の他、周知のフィン付伝熱管と類似の考えにより、水の蒸発面を増大させるため、その概ね管状の保水部に所定の間隔でフィン状の突起面を有する形態として実施することもできる。フィン状突起面は、例えば、円周方向、軸方向、或いは、螺旋方向などに設けることができるが、流動抵抗や可撓性により、特には円周方向に設けるのが好ましい。なお、その管状部とフィン部は、通常、同じ材料とし、特には1体に製作するのが好ましいが、異なる材料とすることもできる。
【0057】
次に、水蒸発部の主要部材である蒸発管の配置構成の具体的な形態について説明する。この蒸発管の配置構成は、例えば、室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行に、蒸発管を所定の間隔で複数本配置して構成することができる。即ち、例えば、室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行に、底部に配置した軸管から適度な間隔で鉛直に、柱状の蒸発管を複数本立てて配置して構成することができ、その複数本の蒸発管の配列は、本発明を限定するものではないが、直線状の配列や、上述した多管式熱交換器の如く、千鳥配列、碁盤目配列などの形態として実施することができる。
【0058】
その際、複数蒸発管の設置長さ、設置幅、設置高さは、対象とする室外機の排気面の形状や、その排気面と排熱抑制装置の設置距離などに合わせ、その排気面から排出される熱風を効率よく受けられるように、適宜、設定するのが好ましい。なお、蒸発管は、鉛直に立てる形態の他、水平、或いは、傾斜させて配置して構成することもできる。
【0059】
水蒸発部における蒸発管の配置構成は又、室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面して、蒸発管を螺旋状又は渦巻状に配置して構成することもできる。又、かかる螺旋状又は渦巻状の蒸発管を、熱風の流れ方向に所定の間隔で複数重ねて配置することもできる。この蒸発管を螺旋状又は渦巻状に配置した構成は、特には、対象とする室外機の排気面の形状が円形の場合に好適な実施の形態である。なお、蒸発管は、適宜、設置した支持体により支持する。
【0060】
次に、水蒸発部の好ましい外形の形態について説明する。この水蒸発部の外形は、本発明を何ら限定するものではないが、室外機の排気面から排出される熱風を効率よく受けられるようにするため、特には、その排気面側からみたその外形を、排気面の外形に合わせ、概ね円形又は方形として実施するのが好ましい。なお、螺旋状又は渦巻状の蒸発管を用いるに際し、室外機の排気面の外形が方形の場合には、直線部と曲線部とで構成される変形された螺旋状又は渦巻状の蒸発管の形態として実施するのが効果的である。
【0061】
次に、水供給部の構成について説明する。この水供給部は、排熱抑制装置に含まれ、蒸発管の通路部に流通可能に接続され、それに蒸発させるための水を供給するものであって、その具体的な構成は、本発明を何ら限定するものではない。即ち、その水としては、水道水、室内機から排出される排水、雨水などを単独に、或いは、組み合わせて用いることができ、水供給部は、具体的には、その用いる水の形態に合わせて適宜に構成される。
【0062】
なお、特には、コスト上、その水は、室内機から排出される排水や雨水を用いるのが好ましく、更には、水ポンプ等を要さずに水を供給できる構成が好ましく、かかる好ましい水供給部として、例えば、その排水や雨水を受けそれを貯水する貯水槽を設け、貯水槽内の水が蒸発管の通路部に自然流下可能に、貯水槽を配置し、通路部に接続した構成として実施することができる。
【0063】
又、本発明の排熱抑制装置は、水供給部を大気圧以上の圧力を有する水系統と接続し、水供給部に給水量を制御するための給水バルブを設け、特許文献2などと類似にして、外気温度と外気湿度を含む気象データと予め入力されたその温度等と水の蒸発量との関係を示す関係データに基づいて、或いは、水蒸発部の所定位置に設置した水滴センサ等の検知データに基づいて、給水バルブの開度調整などにより給水量を制御する制御器を設け、その実測データに基づき給水量を適正に制御する形態として実施することもできる。
【0064】
次に、本発明の空冷式冷房システムの実施の形態について説明する。即ち、本発明の空冷式冷房システムは、室内の空気を冷却する室内機と、熱風を排出する室外機と、室内機と室外機の間に冷媒を循環する冷媒系統とを備えた空冷式冷房装置を含むシステムであって、上記詳細に説明した如く、水蒸発部と水供給部とを有する本発明の空冷式冷房装置の排熱抑制装置を、水蒸発部が室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面する如く配置して、室外機から排出される熱風を受け水蒸発部から水が蒸発するように構成するのが、その実施の形態であり、これにより空冷式冷房装置の排熱を抑制することができる。
【0065】
かかる空冷式冷房装置としては、上述の如く、代表的には、冷媒液を蒸発させその気化潜熱により周囲すなわち室内の空気を冷却する室内機と、冷媒ガスを圧縮する圧縮機及び圧縮された冷媒ガスを外気で冷却して凝縮させる凝縮器を有する室外機を備えた空冷式冷房装置が挙げられるが、これに限らず、高圧・常温の冷媒ガスを断熱膨張させその低圧・低温の冷媒ガスにより周囲すなわち室内の空気を冷却する室内機と、冷媒ガスを圧縮する圧縮機及び圧縮された冷媒ガスを外気で冷却し高圧・常温の冷媒ガスとする熱交換器を有する室外機を備えた空冷式冷房装置や、吸着式熱サイクルを利用した空冷式冷房装置など、熱風を排出する空冷式冷房装置であれば、本発明を何ら制限なく適用することができる。
【0066】
なお、本発明の空冷式冷房システムの実施に際し、室外機から排出され排熱抑制装置で冷却された空気の温度が周辺の空気の温度より低い場合、或いは、蒸発により生じた水蒸気で周辺の空気が冷却された場合には、その冷却された空気は比重の違いにより周囲の低所に漂うため、これを積極的に室外機の凝縮器の冷却のために利用することにより、空冷式冷房装置の消費電力を低減することができる。
【0067】
具体的には、例えば、室外機と排熱抑制装置の周囲を衝立などで囲むことにより、冷却された低温の空気がその中の低所で漂い、それが室外ファンによって凝縮器に向けて送風されるようにして、空冷式冷房装置の消費電力を低減することができる。
【0068】
以上、詳細に説明した実施の形態の如く、本発明は、空冷式冷房装置の室外機から排出される熱風を受け表面から水を蒸発させる蒸発面を別に構成し、且つ、その蒸発面を多孔質の保水性材料で構成し、更に、その蒸発面を含む水蒸発部を、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体を主要部材として構成することによって、安価に且つ容易に実用し得る、空冷式冷房装置の運転に基づく大気への熱負荷を効果的に軽減できる、空冷式冷房装置の排熱抑制装置とそれを用いた空冷式冷房システムを提供することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。本発明の実施例として、先ず、本発明の空冷式冷房装置の水蒸発部を構成する主要部材である蒸発管について、その具体的な構成例を説明する。
【0070】
図1は、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第一の実施例であって、その水の通路部を、多孔質の保水部に水を供給するための供給穴を管壁に複数有する導管とした蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。なお、断面図(a)は、側面図(b)のAA矢視図である。図1において、10は水の通路部を形成する導管であり、20は導管10の周囲を被覆する多孔質部材からなる多孔質保水部、101は導管10の管壁を貫通し複数設けられた水供給穴、102は導管10の外表面をいう導管外面、103は導管10の内表面をいう導管内面である。
【0071】
このような構成により、排気の熱風の流れに対する抵抗を抑え、熱伝達性能の向上を図り、しかも蒸発する水の補給を容易にして、効率的な排熱の抑制を実現することができる。これは、前述のように、柱状の外形により、流れの遮蔽による抵抗を抑えることができ、非流線形状の外形により、境界層が剥離し易く蒸発管表面近くで乱流が発生し易く熱伝達性能を大きくすることができ、しかも多孔質の保水材内での毛細管作用による水分移動の距離を短くすることにより、水分補給を容易にすることができる等の効果によるものである。
【0072】
この実施例による蒸発管の構成は、上述した如く、導管10を銅合金などとし、多孔質保水部20をフェルトなどとした形態に好適ものである。なお、水供給穴101を含めてその寸法や形状は、空冷式冷房装置の能力や水蒸発部の具体的な構成などに合わせて適宜に選定して実施する。
【0073】
図2は、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第二の実施例であって、別部材である導管を用いず、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質の保水部からなる蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。なお、断面図(a)は、側面図(b)のBB矢視図である。図2において、21は、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質部材からなる多孔質保水部である。
【0074】
この実施例による蒸発管の構成は、上述した如く、大型冷房システム用の蒸発管を大量生産する際などに好適な形態である。
【0075】
図3は、水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第三の実施例であって、フィン付伝熱管と類似の考えにより、水の蒸発面を増大させるため、その概ね管状の保水部に所定の間隔でフィン状の突起面を有する蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。なお、断面図(a)は、側面図(b)のCC矢視図である。図3において、図1と同様のものは同一の符号とし、10は水の通路部を形成する導管、22は導管10の周囲を被覆する多孔質部材からなる多孔質保水部、101は導管10の管壁を貫通し複数設けられた水供給穴、102は導管10の外表面をいう導管外面、103は導管10の内表面をいう導管内面、201は、多孔質保水部22に所定の間隔で設けられたフィン状の突起面であって、多孔質保水部22と同じ材料で1体に製作されたフィンである。
【0076】
この実施例のフィン状突起面は、円周方向に設けられているが、これに限らず、排気の熱風の流れに抵抗とならないように、軸方向、或いは、螺旋方向などに設けて実施することもできる。又、この実施例の管状部とフィン部は、同じ材料で1体に製作されているが、異なる材料とすることもでき、例えば、フィン部をフェルトとし、それが風を受けて翻り、水の蒸発を促進させる形態として実施することもできる。
【0077】
次に、本発明の空冷式冷房装置の水蒸発部を構成する蒸発管について、その具体的な配置の構成例を説明する。
【0078】
図4は、水蒸発部を構成する蒸発管の配置構成を示す、本発明の第四の実施例であって、室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行、碁盤目配列に外形が柱状の蒸発管を複数本立てて配置して構成した、蒸発管の配置構成を示す概念図であり、(a)は立面を(b)は平面を示す2面図である。図4において、30は外形が柱状の蒸発管である多孔質蒸発体、40は空冷式冷房装置の室外機であって、その熱風を排出する排気面を右側に有している。
【0079】
このような構成により、前方の多孔質蒸発体30で排気の流れが乱れを起こし、この乱れた流れが後方の多孔質蒸発体30に当たると、後方の多孔質蒸発体30の表面での乱れの作用により水分蒸発を促進するという副次的な効果をもたらす。
【0080】
この外形が柱状の蒸発管を用いる蒸発管の配置構成は、上述した如く、実施例4による碁盤目配列の他、千鳥配列や直線状の配列などが可能であり、又、蒸発管は、この実施例による鉛直に立てる形態の他、水平、或いは、傾斜させて配置して構成することもできる。
【0081】
図5は、水蒸発部を構成する蒸発管の配置構成を示す、本発明の第五の実施例であって、室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面し、蒸発管を渦巻状に配置して構成した、蒸発管の配置構成を示す概念図であり、(a)は正面を(b)は側面を示す2面図である。図5において、図4と同様のものは同一の符号とし、31は外形が渦巻状の蒸発管である多孔質蒸発体、40は空冷式冷房装置の室外機、401は室外機40の円形排気面の排気部外縁である。
【0082】
これは、排気面がたとえば円形である場合などに好適に対応するものである。排気面の形状に応じて配置すればよく、現場の状況に応じて一本の蒸発管で構成することが望ましい場合に好適に用いることができる。
【0083】
この曲線状蒸発管を用いる蒸発管の配置構成は、上述した如く、実施例5による渦巻状配置の他、螺旋状配置などが可能であり、又、螺旋状又は渦巻状の蒸発管を、熱風の流れ方向に所定の間隔で複数重ねて配置構成することもできる。
【0084】
次に、排熱抑制装置に含まれ、蒸発管の通路部に流通可能に接続され、それに蒸発させるための水を供給する本発明の空冷式冷房装置の水供給部の構成について、その具体的な構成例を説明する。
【0085】
図6は、水供給部の構成を示す、本発明の第六の実施例であって、実施例5の水蒸発部への給水を例とし、給水すべき多孔質蒸発体より高い位置に自由水面を持つように貯水槽を配置し、これから給水パイプで水蒸発部に水を導くように構成した、水供給部の構成を示す正面から見た概念図である。
【0086】
図6において、図5と同様のものは同一の符号とし、31は外形が渦巻状の蒸発管である多孔質蒸発体、40は空冷式冷房装置の室外機、50は給水すべき多孔質蒸発体31より高い位置に自由水面を持つように配置し構成した貯水槽、60は貯水槽50内の水が自然流下し多孔質蒸発体31に供給されるように配置し構成した給水パイプ、70はその自然流下による給水量を調整するための給水バルブ、401は室外機40の円形排気面の排気部外縁である。なお、貯水槽50の水は、図示を省略しているが、コスト上、室内機から排出される排水と雨水を組み合わせて用いるように構成している。
【0087】
この実施例6の構成によれば、水ポンプ等を要さず、即ち電力消費等を要さずに給水できる効率的なシステムを構成することができる。
【0088】
水供給部の構成としては、実施例6の他、水供給部を大気圧以上の圧力を有する水系統、例えば水道水と接続し、水供給部に給水量を制御するための給水バルブを設け、外気温度と外気湿度を含む気象データと予め入力されたその温度等と水の蒸発量との関係を示す関係データに基づいて、或いは、水蒸発部の所定位置に設置した水滴センサ等の検知データに基づいて、給水バルブの開度調整などにより給水量を制御する制御器を設け、その実測データに基づき給水量を適正に制御する形態として実施することもできる。
【0089】
以上、本発明の実施例を説明したが、特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更がなされても良いことは明らかである。
【0090】
例えば、実施例では、蒸発管への給水を下から行うようにしているが、横から給水するようにしても、或いは、蒸発管の上部にヘッダーを設けてそれからそれぞれの蒸発管に自然流下するように構成してもよく、蒸発管への給水方法は何ら本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第一の実施例であって、その水の通路部を、多孔質の保水部に水を供給するための供給穴を管壁に複数有する導管とした蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。
【図2】水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第二の実施例であって、別部材である導管を用いず、概ね中心部を空洞として水の通路部を形成した多孔質の保水部からなる蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。
【図3】水の通路部とその周囲を被覆する多孔質の保水部とからなる概ね管状の蒸発体の構成を示す第三の実施例であって、フィン付伝熱管と類似の考えにより、水の蒸発面を増大させるため、その概ね管状の保水部に所定の間隔でフィン状の突起面を有する蒸発管の構成を示す概念図であり、(a)は断面を(b)は側面を示す2面図である。
【図4】水蒸発部を構成する蒸発管の配置構成を示す、本発明の第四の実施例であって、室外機の熱風を排出する排気面と概ね平行、碁盤目配列に外形が柱状の蒸発管を複数本立てて配置して構成した、蒸発管の配置構成を示す概念図であり、(a)は立面を(b)は平面を示す2面図である。
【図5】水蒸発部を構成する蒸発管の配置構成を示す、本発明の第五の実施例であって、室外機の熱風を排出する排気面と概ね対面し、蒸発管を渦巻状に配置して構成した、蒸発管の配置構成を示す概念図であり、(a)は立面を(b)は平面を示す2面図である。
【図6】水供給部の構成を示す、本発明の第六の実施例であって、実施例5の水蒸発部への給水を例とし、給水すべき多孔質蒸発体より高い位置に自由水面を持つように貯水槽を配置し、これから給水パイプで水蒸発部に水を導くように構成した、水供給部の構成を示す正面から見た概念図である。
【符号の説明】
【0092】
10 導管
20、21、22 多孔質保水部
30、31 多孔質蒸発体
40 室外機
50 貯水槽
60 給水パイプ
70 給水バルブ
101 水供給穴
102 導管外面
103 導管内面
201 フィン
401 排気部外縁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5