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明細書 :肝臓疾患治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4748639号 (P4748639)
公開番号 特開2006-124353 (P2006-124353A)
登録日 平成23年5月27日(2011.5.27)
発行日 平成23年8月17日(2011.8.17)
公開日 平成18年5月18日(2006.5.18)
発明の名称または考案の名称 肝臓疾患治療剤
国際特許分類 A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/711       (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 48/00 ZNA
A61K 31/711
A61K 37/02
A61P 1/16
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2004-318285 (P2004-318285)
出願日 平成16年11月1日(2004.11.1)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年8月25日発行の「第63回 日本癌学会学術総会記事 第133頁」において文書を以て発表
特許法第30条第1項適用 平成16年9月20日発行の「第8回 日本肝臓学会大会講演要旨 第A486頁」において文書を以て発表
特許法第30条第1項適用 平成16年9月29日に「第63回 日本癌学会学術総会」において発表
特許法第30条第1項適用 平成16年10月22日に「第8回 日本肝臓学会大会」において発表
審査請求日 平成19年10月26日(2007.10.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391011700
【氏名又は名称】宮崎県
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】坪内 博仁
【氏名】蓮池 悟
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】伊藤 基章
参考文献・文献 ONAGA,M. et al,Osteoactivin expressed during cirrhosis development in rats fed a choline-deficient, L-amino acid-defined diet, accelerates motility of hepatoma cells,J Hepatol,2003年,Vol.39, No.5,p.779-85
翁長正明 他,osteoactivin遺伝子の肝細胞癌における発現および転移能に関する検討 ,肝臓,2001年,Vol.42, Suppl.(2),p.A352
翁長正明 他,コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食飼育ラット肝から単離したosteoactivin遺伝子の発現とその機能解析 ,肝臓,2001年,Vol.42, Suppl.(1),p.A156
翁長正明 他,コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食によるラット肝発癌モデルにおける肝細胞の分化・増殖とその制御 ,肝臓,2001年,Vol.42, No.2,p.103
翁長正明 他,ヒト肝細胞癌におけるosteoactivin遺伝子の発現 ,日本内科学会雑誌,2001年,Vol.90,p.180
翁長正明 他,コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食によるラット肝発癌モデルより単離したosteoactivinの発現解析 ,肝臓,2000年,Vol.41, Suppl.(2),p.A415
調査した分野 A61K 48/00
A61K 31/711
A61K 38/00
A61K 39/00
A61P 1/16
A61P 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
オステオアクチビンタンパク質の全長、DC-HILタンパク質の全長及びGPNMBタンパク質の全長からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子を有効成分として含有する脂肪肝、肝線維化又は前癌病変の発症を抑制する肝臓疾患予防剤
【請求項2】
DNAが配列番号1、3、5、7若しくは9の塩基配列からなるDNAである請求項1に記載の肝臓疾患予防剤
【請求項3】
タンパク質が配列番号2、4、6、8若しくは10のアミノ酸配列からなるタンパク質の全長である請求項1に記載の肝臓疾患予防剤。
【請求項4】
オステオアクチビンタンパク質の全長、DC-HILタンパク質の全長及びGPNMBタンパク質の全長からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質を有効成分として含有する脂肪肝、肝線維化又は前癌病変の発症を抑制する肝臓疾患予防剤
【請求項5】
タンパク質が以下の(a)又は(b)である請求項に記載の肝臓疾患予防剤
(a)配列番号2、4、6、8若しくは10のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2、4、6、8若しくは10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ脂肪肝、肝線維化又は前癌病変を抑制する活性を有するタンパク質。
【請求項6】
脂肪肝、肝線維化及び前癌病変からなる群から選択される少なくとも1種の肝臓疾患の発症を抑制することにより肝硬変及び/又は肝癌を予防する請求項1~5の何れか1項に記載の肝臓疾患予防剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オステオアクチビン様タンパク質又はそれをコードする遺伝子を有効成分とする肝臓疾患、特に脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変又は肝癌の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪肝の治療方法としては、食事療法、運動療法による肥満の改善が有効であるとされているが、実際に効果を上げることは難しいことが多い。内服薬としては漢方薬、肝機能改善薬などがあるが、その効果は十分でないことが多い。
【0003】
肝硬変又は肝線維化による疾患の治療方法としては、原因がB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによるものであれば、抗ウイルス剤が有効であるが、病態によっては副作用の面から抗ウイルス剤を使用できないことがある。また、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス以外の慢性肝疾患の肝硬変又は肝線維化による疾患の有効な治療法は今のところない。
【0004】
肝癌の治療方法としては、抗癌剤により肝癌の増殖や発癌を抑制する方法が挙げられるが、その効果は高くなく、副作用の面から使用はかなり制限される。また肝癌の治療法は進歩しており、手術やラジオ波焼灼術などによる肝癌の治療法があるが、それらの治療法は発癌を抑制できない。治療対象となる患者も限られる。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる発癌の抑制には抗ウイルス剤が有効であるが、副作用の面から薬剤を投与できない患者も多く、また、B型肝炎ウイルス及びC型肝炎ウイルス以外の原因による肝癌の場合には有効な発癌抑制剤は今のところない。
【0005】
一方、オステオアクチビン(osteoactivin)は骨大理石病ラット骨芽細胞から同定されたタンパク質であり、骨芽細胞の分化や骨基質化に影響を与えることがSafadiらにより報告された(特許文献1、非特許文献1)。また本発明者らはこれまでに肝臓の機能とオステオアクチビンとの関連性につき検討を行ってきた(非特許文献2及び3)。非特許文献2では、コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食摂取ラットの肝細胞においてオステオアクチビンが発現されていることが報告されている。
【0006】
これまでにオステオアクチビンが肝臓疾患を治療する作用を有することは知られていない。なお、特許文献1には、オステオアクチビンの核酸配列や、オステオアクチビンを含む治療用組成物が開示されているが、肝臓疾患を治療する作用については言及がない。
【0007】

【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0151486号明細書
【非特許文献1】Safadi, Fayez et al "Cloning and characterization of osteoactivin, a novel cDNA expressed in osteoblasts." J of Cellular Biochemistry, 84 [1] 12-26, (2001)
【非特許文献2】Onaga, Masaaki et al "Osteoactivin expressed during cirrhosis development in rats fed a choline-deficient, L-amino acid-defined diet, accelerates motility of hepatoma cells." J of Hepatology, 39 [5] 7779-785 (2003)
【非特許文献3】Onaga, Masaaki et al "Osteoactivin, a gene isolated from the liver of rat fed with a choline-deficient, L-amino acid defined diet, accelerated invasion and metastasis of hepatoma cells." Hepatology, 34 [4] Pt.2, 384A (2001) Print Meeting Info.: 52nd Annual Meeting and Postgraduate Courses of the American Association for the Study of Liver Diseases. Dallas, Texas, USA. Nov. 09-13, 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、肝臓疾患、特に脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変又は肝癌の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、コリン欠乏アミノ酸置換食飼育ラット肝から単離されたオステオアクチビン様タンパク質又はその遺伝子が驚くべきことに脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変又は肝癌の予防又は治療に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくもので、オステオアクチビン様タンパク質又はその遺伝子の新用途として、肝臓疾患、特に脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変又は肝癌の予防又は治療剤を提供する。
【0011】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)オステオアクチビン様タンパク質又はその肝臓疾患を抑制する活性を有する断片をコードするDNAからなる遺伝子を有効成分として含有する肝臓疾患の予防又は治療剤。
(2)DNAが以下の(a)又は(b)である(1)に記載の肝臓疾患の予防又は治療剤。
(a) 配列番号1、3、5、7若しくは9の塩基配列若しくはその部分配列からなるDNA
(b) (a)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ肝臓疾患を抑制する活性を有するタンパク質若しくはその断片をコードするDNA
なお、これらのDNAは、単独で又は1種以上組合わされて使用される。
【0012】
(3)オステオアクチビン様タンパク質又はその肝臓疾患を抑制する活性を有する断片を有効成分として含有する肝臓疾患の予防又は治療剤。
(4)オステオアクチビン様タンパク質が以下の(a)又は(b)である(3)に記載の肝臓疾患の予防又は治療剤。
(a) 配列番号2、4、6、8若しくは10のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2、4、6、8若しくは10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ肝臓疾患を抑制する活性を有するタンパク質
なお、これらのタンパク質又はその断片は、単独で又は1種以上組合わされて使用される。
(5)肝臓疾患が、脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変及び肝癌からなる群から選択される少なくとも1種である(1)~(4)の何れかに記載の肝臓疾患の予防又は治療剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、肝臓疾患、特に脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変又は肝癌の予防又は治療剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、「オステオアクチビン様タンパク質」とは、オステオアクチビン又はオステオアクチビンと同質の活性を有するタンパク質を指す。オステオアクチビン様タンパク質としては具体的には、オステオアクチビンの他に、GPNMB、DC-HIL等のタンパク質が挙げられる。更にまたこれらのタンパク質のアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチド断片であってオステオアクチビンと同質の活性を有する断片もまた本発明に使用することができる。以下本明細書では、オステオアクチビン様タンパク質又はその断片を指して、単に「オステオアクチビン様タンパク質」と称することがある。ここで「オステオアクチビンと同質の活性」とは、肝臓疾患を抑制する活性を意味する。「肝臓疾患を抑制する活性」としては、例えば、脂肪肝を抑制する活性、肝線維化を抑制する活性、肝の前癌病変を抑制する活性が挙げられる。脂肪肝を抑制する活性は、肝組織において脂肪滴を縮小させる活性により評価できる。肝線維化を抑制する活性は、肝組織のスライス標本における線維化面積を減少させる活性により評価できる。肝の前癌病変を抑制する活性は、肝組織のスライスにおけるGST-P陽性結節面積を減少させる活性により評価できる。なお、「同質」とは、肝臓疾患を抑制する活性が性質的に同質であることを示す。したがって、肝臓疾患を抑制する活性の強弱、ペプチドの分子量等の量的要素は異なっていてもよい。
【0015】
本発明に使用し得るオステオアクチビン様タンパク質は、起源生物は特に限定されないが、典型的にはラット、マウス、ヒト等の哺乳動物に由来するものである。
【0016】
オステオアクチビン様タンパク質としては、典型的には、配列番号2(ラットオステオアクチビン)、4(マウスDC-HIL)、6(マウスGPNMB)、8(ヒトGPNMB)又は10(ラットGPNMB)のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。また本発明に使用できるタンパク質断片としては、例えば、配列番号2の第23~572番目のアミノ酸配列からなるタンパク質断片や、配列番号8の第23~560番目のアミノ酸配列からなるタンパク質断片が挙げられる。
【0017】
本発明は第一に、上記のオステオアクチビン様タンパク質をコードするDNAを有効成分として含有する肝臓疾患の予防又は治療剤に関する。
【0018】
配列番号2(ラットオステオアクチビン)のアミノ酸配列からなるタンパク質は例えば配列番号1の第115~1833番の塩基配列からなるDNAによりコードされ、配列番号4(マウスDC-HIL)のアミノ酸配列からなるタンパク質は例えば配列番号3の第44~1768番の塩基配列からなるDNAによりコードされ、配列番号6(マウスGPNMB)のアミノ酸配列からなるタンパク質は例えば配列番号5の第80~1804番の塩基配列からなるDNAによりコードされ、配列番号8(ヒトGPNMB)のアミノ酸配列からなるタンパク質は例えば配列番号7の第92~1774番の塩基配列からなるDNAによりコードされ、配列番号10(ラットGPNMB)のアミノ酸配列からなるタンパク質は例えば配列番号9の第58~1776番の塩基配列からなるDNAによりコードされる。これらのタンパク質は、遺伝コードの縮重により、具体的に配列表に示す塩基配列以外の配列によってもコードされ得ることは当業者に周知である。
【0019】
上記のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ肝臓疾患を抑制する活性を有するタンパク質をコードするDNAもまた、本発明に好適に使用することができる。ここで、「ストリンジェントな条件」は、例えば42℃、50%ホルムアミド、4×SSPE(1×SSPE=150mM NaCl, 10mM NaHPO・HO, 1mM EDTA pH7.4)、5×デンハート溶液、0.1%SDSでの条件、或いは、温度が60~68℃、好ましくは55~68℃であり、ナトリウム濃度が250~350mM、好ましくは300~400mMでの条件である。
【0020】
上記のDNAはゲノムDNA、cDNA、合成DNAのいずれでもよい。オステオアクチビン様タンパク質を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、例えば、オステオアクチビン様タンパク質の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いて公知のPCR法によって上記起源生物に由来するDNAライブラリー等から所望のDNAを増幅することにより行われる。DNAはまた、例えば組織・細胞よりRNA画分を調製したものを用いてRT-PCR法によって増幅することができる。増幅されたDNA断片は大腸菌などの宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
【0021】
本発明は第二に、上述のオステオアクチビン様タンパク質を有効成分として含有する肝臓疾患の予防又は治療剤に関する。本発明には、オステオアクチビン様タンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個、例えば1~10個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~5個、最も好ましくは1~3個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ肝臓疾患を抑制する活性を有するタンパク質もまた好適に使用することができる。
【0022】
上記のタンパク質は、天然由来のタンパク質でも、化学合成したタンパク質でも、遺伝子組み換え技術により作製した組み換えタンパク質の何れでもよい。
【0023】
天然由来のタンパク質は、該タンパク質を発現している細胞又は組織からタンパク質の単離精製技術を適宜組み合わせて単離することができる。化学合成タンパク質は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。組み換えタンパク質は、該タンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを好適な発現系に導入することにより生産することができる。
【0024】
本発明の予防又は治療剤による、予防又は治療の対象となる肝臓疾患としては、例えば脂肪肝、肝線維化による疾患、肝硬変、肝癌である。本発明の予防又は治療剤は、哺乳動物(例えばヒト、ラット、マウス)、特にヒトにおける肝臓疾患の予防又は治療に有用である。なお本発明において「治療」という用語には、疾患を治癒して健常状態に回復させることだけでなく、疾患の進行を抑えること(「抑制」と呼ばれることもある)も包含される。
【0025】
本発明の予防又は治療剤のうち、有効成分としてオステオアクチビン様タンパク質をコードするDNAからなる遺伝子を含むもの(以下「遺伝子治療剤」という)は、(ア)該遺伝子を被験体に投与し発現させることによって、或いは(イ)細胞に該遺伝子を挿入し発現させた後に、該細胞を該被験体に移植することなどによって、被験体の組織におけるオステオアクチビン様タンパク質の量を増加させ、その作用を充分に発揮させることができる。
【0026】
本発明の遺伝子治療剤は、常法により、すなわち、オステオアクチビン様タンパク質遺伝子を単独で又はプラスミドベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、遺伝子治療剤に通常用いられる基剤と共に配合することにより製造することができる。
【0027】
上記基剤としては、通常注射剤に用いる基剤を使用することができ、例えば、蒸留水、塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムと無機塩との混合物などの塩溶液、マンニトール、ラクトース、デキストラン、グルコースなどの溶液、グリシン、アルギニンなどのアミノ酸溶液、有機酸溶液又は塩溶液とグルコース溶液との混合溶液などが挙げられる。あるいはまた、当業者に既知の常法に従って、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、植物油、界面活性剤などの助剤を用いて、溶液、懸濁液、分散液として注射剤を調製することもできる。これらの注射剤は、粉末化、凍結乾燥などの操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。
【0028】
また、本発明の遺伝子治療剤は、リポソームの懸濁液に所定の遺伝子を添加し凍結した後融解することにより製造することもできる。リポソームは常法により調製することができる。遺伝子を封入したリポソームはそのまま、又は水、生理食塩水などに懸濁して静脈投与することができる。
【0029】
本発明の遺伝子治療剤の投与形態としては、通常の静脈内投与、動脈内投与などの全身投与でもよいし、あるいは肝臓に対する局所投与であってもよい。例えば、カテーテル技術、遺伝子導入技術、又は外科的手術などと組み合わせた投与形態をとることができる。なお上記の投与形態のうち、静脈内投与が特に好ましいと考えられる。
【0030】
上記遺伝子治療剤の、肝臓疾患の予防又は治療を必要とする患者への投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、成人では一日当たり遺伝子の重量として1μg/kg体重から1000mg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0031】
本発明の予防又は治療剤のうち、有効成分としてオステオアクチビン様タンパク質を含むものは、常法に従って製剤化し、使用することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。また局所への直接投与などあらゆる投与法が使用できる。好ましい製剤形態はオステオアクチビン様タンパク質を含有する錠剤又は水溶液であり、好ましい投与法は経口投与又は静脈内注射による投与である。なお上記の投与形態のうち、静脈内注射による投与が特に好ましいと考えられる。また、オステオアクチビン様タンパク質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた単位用量形態で混和することによって本発明の予防又は治療剤を製造することができる。また医薬として有用な他の成分と併用することも可能である。併用し得る他の成分としては、肝臓疾患の治療剤、例えばインターフェロンなどの抗ウイルス剤、強力ネオミノファーゲンCおよびその類似品、漢方薬やビタミン製剤などが挙げられる。
【0032】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施にしたがって処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノール)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80(商標)、HCO-50)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
【0033】
オステオアクチビン様タンパク質の、肝臓疾患の予防又は治療を必要とする患者への投与量は、患者の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、一般に、一般に、成人では一日あたりタンパク質として0.001μg/kg体重から1000mg/kg体重程度の範囲である。投与回数は特に限定されない。
【0034】
以下、実施例により本願発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
正常なラット(対照群)及びラットオステオアクチビン遺伝子が肝臓のみで強発現されるように遺伝子改変されたトランスジェニックラット(試験群)に対して、コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食を12週間摂取させた後、肝線維化、前癌病変、脂肪肝について評価した。
正常なラット(対照群)としてはSDラット(日本SLC)を用いた。
【0036】
ヒトSAP遺伝子プロモーター制御下のラットオステオアクチビン遺伝子(配列番号1)を、SDラットの受精卵へマイクロインジェクションすることによりトランスジェニックラットを作製した。こうして得られたトランスジェニックラットの肝組織におけるアステオアクチビン発現量をRT-PCR法を用いて確認したところ、正常なラットと比較して少なくとも2倍のアステオアクチビンが発現されていることが認められた。なお、SAP遺伝子プロモーター制御下の遺伝子をラットの受精卵へマイクロインジェクションして得られるトランスジェニックラットにおいて、所定の遺伝子が肝組織において強発現されることは例えば次の文献に記載されている。Miyazaki T, Ohura T, Kobayashi M, Shigematsu Y, Yamaguchi S, Suzuki Y, Hata I, Aoki Y, Yang X, Minjares C, Haruta I, Uto H, Ito Y, Muller U. Fatal propionic acidemia in mice lacking propionyl-CoA carboxylase and its rescue by postnatal, liver-specific supplementation via a transgene. J Biol Chem. 2001. 21;276(38):35995-9.
【0037】
本実験に使用したCDAA食は、Dyets Inc.社より購入したものである(518752 Choline Deficient Diet;具体的な組成は同社ホームページhttp://www.dyets.com/518753.htmを参照されたい)。これを対照群、試験群各6匹に対して12週間、自由飲食により摂取させた。
【0038】
各ラットの肝臓の右葉から3スライスのsirius red染色標本及びGST-P染色標本を常法により作成した。
【0039】
肝線維化については、線維化面積(Fibrosis Area)に基づいて評価した。上記ラット肝sirius red染色標本の各スライスより、100倍視野にてランダムに10視野の画像を取り込み、pixs2000Pro(株式会社イノテック)にて線維化面積を測定し、線維化面積/背景組織を算出し、10視野の平均を算出した。その結果、対照群では4.99±1.99であり、試験群では1.29±0.09であり、p値は0.009(Mann-Whitney U-test)であった。すなわちオステオアクチビンは肝線維化を抑制した。
【0040】
前癌病変については、GST-P陽性結節の面積(Area Occupied by Foci)に基づいて評価した。上記ラット肝GST-P染色標本の各スライスについてpixs2000Pro(株式会社イノテック)にてGST-P陽性結節面積を測定し、GST-P陽性結節面積の合計/肝組織面積を算出し、3スライスの平均を算出した。その結果、対照群では0.26±0.35であり、試験群では0.02±0.02であり、p値は0.016(Mann-Whitney U-test)であった。すなわちオステオアクチビンは前癌病変を抑制した。
【0041】
脂肪肝については、HE染色で脂肪滴の占める割合を検鏡することにより評価した。対照群では肝組織の80%程度が脂肪滴で占められていたのに対して、試験群では肝組織の40%以下が脂肪滴で占められていた。すなわち遺伝子改変により肝組織における脂肪滴が50%以上減少したことになり、オステオアクチビンが脂肪肝を抑制することがわかる。