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明細書 :クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4061410号 (P4061410)
公開番号 特開2006-151849 (P2006-151849A)
登録日 平成20年1月11日(2008.1.11)
発行日 平成20年3月19日(2008.3.19)
公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
発明の名称または考案の名称 クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬
国際特許分類 A61K  31/7076      (2006.01)
A61P  33/02        (2006.01)
C07H  19/167       (2006.01)
FI A61K 31/7076
A61P 33/02 173
C07H 19/167
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2004-342754 (P2004-342754)
出願日 平成16年11月26日(2004.11.26)
審査請求日 平成19年10月4日(2007.10.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
【識別番号】591222245
【氏名又は名称】国立感染症研究所長
発明者または考案者 【氏名】所 正治
【氏名】北出 幸夫
【氏名】野崎 智義
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査官 【審査官】大宅 郁治
参考文献・文献 特表平5-502435(JP,A)
Tetrahedron,2002年,Vol.58,1271-1277
調査した分野 A61K 31/7076-708
C07H 19/16-213
REGISTRY/CA(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(I):
【化1】
JP0004061410B2_000009t.gif
(式中、Xはフッ素原子又は塩素原子を表す。)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【請求項2】
前記式(I)においてXがフッ素原子である請求項1記載の治療又は予防薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
腸管内寄生原虫クリプトスポリジウムは、下痢起因原虫の1種である。旅行者下痢症としては、発展途上国での汚染水による経口感染が知られており、また、通常の塩素殺菌に対して、感染源であるオーシストが耐性を持っているため、時に、水道水汚染による大量発生が引き起こされている。日本国内では1997年に越生で9000人が感染、また、アメリカではミルウォーキーでの40万人の感染が代表的なアウトブレイクである。クリプトスポリジウム症は、免疫不全患者においては、慢性化、劇症化することが知られており、しばしば死の転帰をとる危険な疾患でもある。実際、前記のミルウォーキーの例では、約400人のAIDS患者がその後の2年間で死亡している。本原虫に対する薬剤治療については、ヒト症例第1例が報告された1976年以来、様々なトライアルが行われてきた。パロモマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン等の薬剤は、健常人の症例において若干下痢の改善をもたらしうると報告され、使用されているが、これまでのところ、免疫不全患者での重症クリプトスポリジウム症を完治しうる薬剤は見出されていない。
【0003】
一方、次式(Ia):
【0004】
【化1】
JP0004061410B2_000002t.gif
で示される2-フルオロアデノシンは、次式(IIa):
【0005】
【化2】
JP0004061410B2_000003t.gif
で示されるネプラノシンA(neplanocin A)、次式(IIb):
【0006】
【化3】
JP0004061410B2_000004t.gif
で示されるノルアリステロマイシン(noraristeromycin)等のアデノシン類縁体とともに、抗マラリア作用を有することが知られている(非特許文献1)。
【0007】

【非特許文献1】Kitade, Y., Kozaki, A., Miwa, T. and Nakanishi, M., Synthesis of Base-modified Noraristeromycin Derivatives and their Inhibitory Activity against Human and Plasmodium falciparum Recombinant S-Adenosyl-L-homocysteine Hydrolase, Tetrahedron, 58, 1271-1277 (2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた抗クリプトスポリジウム作用を有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべくアデノシン類縁体の中から優れた抗クリプトスポリジウム作用を有する物質を探索した結果、次式(I):
【0010】
【化4】
JP0004061410B2_000005t.gif
(式中、Xはフッ素原子又は塩素原子を表す。)
で示される化合物が他のアデノシン類縁体に比し顕著な抗クリプトスポリジウム作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)次式(I):
【0012】
【化5】
JP0004061410B2_000006t.gif
(式中、Xはフッ素原子又は塩素原子を表す。)
で示される化合物又はその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【0013】
(2)前記式(I)においてXがフッ素原子である前記(1)に記載の治療又は予防薬。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、優れた抗クリプトスポリジウム作用を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明に用いる前記式(I)で示される化合物は、例えばJ. Org. Chem., 33(1), 432-434 (1968)等に記載の公知化合物であり、これらの文献に記載の方法により製造することができる。
【0017】
前記式(I)で示される化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。
【0018】
前記式(I)で示される化合物のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(I)に変換する化合物、即ち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、化合物(I)のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物等)、及び化合物(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、化合物(I)の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。また、化合物(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計第163~198頁に記載されているような生理的条件で化合物(I)に変化するものであってもよい。
【0019】
前記式(I)で示される化合物並びにその薬学的に許容される塩及びプロドラッグ(以下「2-ハロアデノシン類(I)」という。)は、優れた抗クリプトスポリジウム作用を有し、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬として有用である。
【0020】
以下、2-ハロアデノシン類(I)の投与量及び製剤化について説明する。
【0021】
2-ハロアデノシン類(I)はそのまま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物及びヒトに投与することができる。投与形態としては、特に限定がなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。
【0022】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常2-ハロアデノシン類(I)の重量として1~200mg/m(体表面積)を、1日数回に分けての服用が適当である。
【0023】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。
【0024】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0025】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0026】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0029】
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0030】
また、2-ハロアデノシン類(I)は、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0031】
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常2-ハロアデノシン類(I)の重量として1日1~50mg/m(体表面積)の静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。
【0032】
この非経口剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。更に、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0033】
その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【実施例】
【0034】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
1.原虫株
免疫学的に正常な下痢患者から分離され、重症複合免疫不全マウスで継代されているC. paruvum(HNJ-1株)を用いた。
【0036】
2.培地
・洗浄用medium:RPML1640(sigma)
・細胞維持medium:RPML1640培地に10%ウシ胎児血清(FBS)、 4mM L-グルタミン、20mM HEPES、ペニシリン及びストレプトマイシンをそれぞれ 100u/mL、100μg/mL添加した。
・感染medium:細胞維持mediumに0.1%ウシ胆汁沫を添加した。
【0037】
3.培養細胞及び培養条件
ヒトの回盲腺癌由来であるHCT-8(Human ileorectal adenocarcinoma cell)をC. parvumの宿主細胞として用いた。細胞はプラスチックボトル培養容器で細胞維持mediumを用いて37℃ 5%CO2培養器内で維持し、トリプシン・EDTA液で培養面より剥離させて用いた。感染実験にはAPSコート付きスライドガラス(マツナミ)とCover wellTM (Schleicher & Schuell)で形成されたチャンバーを用いた。このチャンバーは一つのウェルが底面積100mm2、220μLの容積であり、ウェル当たり 4×102個の細胞を撒き、2日間培養後の細胞を用いた。
【0038】
4.感染(オーシストの投与)
オーシストを、0.05N塩酸にて37℃ウォーターバスで30分間酸処理した。処理後、10000rpmで1分間遠心分離し、上澄み除去後に洗浄用mediumを加え、更に10000rpmで1分間遠心分離した。上澄みをすて感染mediumを加え、1×102/220μLに希釈して、オーシストをチャンバー内の宿主細胞に接種した。接種後30分間氷上に置き、オーシストを細胞近くまで沈降させ、その後37℃ 5%CO2培養器で培養した。
【0039】
5.薬剤の投与方法
培養mediumで、50% DMSOで溶解して5mMの濃度とした各薬剤を所定の濃度に希釈した。対照として50% DMSOを同様に希釈して用いた。培養原虫への薬剤の投与は、オーシストを培養細胞に接種した容器を37℃ 5%CO2培養器に移して2時間培養した後に、薬剤を添加した維持mediumと交換し、更に20時間培養した。
【0040】
6.薬剤効果の評価
6-1.酵素抗体法による原虫の染色
培養液を除き、100%メタノールにより3分固定を行った。0.05% Tween20添加PBS(PBS-T)に1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加し、この液で室温下に30分間 blockingを行い、一次抗体として抗C. paruvum recombinant-P23ウサギ抗体(Takashima Y., et al. (2004) J. Parasitol. 89: 276-282)を1%BSA PBS-Tで500倍に希釈して、一夜、冷蔵庫内で反応させた。反応させた検体をPBS-Tで5分ずつ5回洗浄し、二次抗体としてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgGヤギ抗体(CPL)を同様に1%BSA PBS-Tで500倍に希釈して用い、7時間冷蔵庫内で反応させた。反応後、検体をPBS-Tを用いて5分ずつ5回洗浄し、ダコENVISIONキット/HRP(DAB) (DAKO)を用いて5分間発色させた。反応後、蒸留水で洗浄し、乾燥させ、マリノールにより封入した。
【0041】
6-2.原虫の発育程度の観察
この標本を光学顕微鏡により1000倍で培養面6 mm 幅(約1.3 mm2)を1往復観察し、更に4区画について観察した。観察は感染虫体の大きさを計測し、同時に数を数えた。
【0042】
6-3.発育抑制の評価
約1.3 mm2中に見られる虫体を3 μm以上4 μm未満、4 μm以上5 μm未満、及び5 μm以上のクラスに分けて度数を求めた。この度数より5 μm以上の虫体の割合を求め、発育率とし、平均値を計算した。更に、溶媒対照の平均値を1としてそれぞれの薬剤・濃度での比発育率を求めた。
試験区比発育率=試験区発育率平均/対照区発育率平均
【0043】
結果は、平均値±標準偏差として示した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
JP0004061410B2_000007t.gif

【0045】
[実施例2]
用量-発育率の評価のため、使用薬剤濃度0.2~10μMを用い、実施例1と同条件での解析を行った。結果は、平均値±標準偏差として示した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
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