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明細書 :酸化膜の形成方法、半導体装置、半導体装置の製造方法、SiC基板の酸化方法とそれを用いたSiC-MOS型半導体装置およびそれを用いたSiC-MOS型集積回路

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4567503号 (P4567503)
公開番号 特開2005-311352 (P2005-311352A)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発行日 平成22年10月20日(2010.10.20)
公開日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発明の名称または考案の名称 酸化膜の形成方法、半導体装置、半導体装置の製造方法、SiC基板の酸化方法とそれを用いたSiC-MOS型半導体装置およびそれを用いたSiC-MOS型集積回路
国際特許分類 H01L  21/316       (2006.01)
H01L  29/78        (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  29/12        (2006.01)
FI H01L 21/316 T
H01L 29/78 301B
H01L 29/78 301G
H01L 29/78 617V
H01L 29/78 652K
H01L 29/78 652T
H01L 29/78 618B
請求項の数または発明の数 19
全頁数 29
出願番号 特願2005-093279 (P2005-093279)
出願日 平成17年3月28日(2005.3.28)
優先権出願番号 2004093689
優先日 平成16年3月26日(2004.3.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月20日(2008.2.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 光
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】大塚 徹
参考文献・文献 特表2003-501830(JP,A)
特開2003-133308(JP,A)
特開2003-086591(JP,A)
特開2004-047935(JP,A)
特開2003-133309(JP,A)
特開2000-012537(JP,A)
特開2002-289612(JP,A)
特開2002-134009(JP,A)
調査した分野 H01L 21/316
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体に電圧を印加した状態で、その半導体表面に化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を有する酸化膜の形成方法において、
上記酸化膜形成工程は、上記半導体に100V未満の電圧を印加した状態で、酸化性溶液またはその気体を上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成し、
上記酸化性溶液またはその気体が、硝酸溶液、その気体、またはそれらの混合物からなることを特徴とする酸化膜の形成方法。
【請求項2】
上記酸化膜形成工程は、上記電圧を印加する半導体を、酸化性溶液に浸漬して行うことを特徴とする請求項1に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項3】
上記半導体がシリコンを含んでおり、
上記化学酸化膜が、シリコンの酸化膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項4】
上記半導体が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1つであって、
上記化学酸化膜が、シリコンの酸化膜であることを特徴とする請求項3に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項5】
上記酸化膜形成工程は、上記半導体に5~20Vの電圧を印加することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項6】
上記酸化性溶液またはその気体が、共沸混合物であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項7】
上記酸化性溶液またはその気体が、水との共沸混合物である共沸硝酸またはその気体からなることを特徴とする請求項6に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項8】
共沸温度以上に加熱した上記酸化性溶液またはその気体を、半導体に作用させることを特徴とする請求項6または7に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項9】
半導体に、共沸濃度未満の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、上記半導体表面に、第1の化学酸化膜を形成する第1工程と、
上記第1の化学酸化膜に、共沸濃度以上の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、上記第1の化学酸化膜よりも厚い第2の化学酸化膜を形成する第2工程とを有する酸化膜の形成方法であって、
上記第1工程および上記第2工程の少なくとも一方の工程を、半導体に100V未満の電圧を印加した状態で、上記酸化性溶液またはその気体を、上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成し、
上記酸化性溶液またはその気体が、硝酸溶液、その気体、またはそれらの混合物からなることを特徴とする酸化膜の形成方法。
【請求項10】
上記酸化膜形成工程後に、上記化学酸化膜を窒化処理する窒化工程を行うことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の酸化膜の形成方法によって化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
さらに、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成した後、または、上記化学酸化膜を窒化処理した後、上記化学酸化膜上に、酸化膜、窒化シリコン膜、高誘電体膜および強誘電体膜のうち少なくとも一つの膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の半導体装置の製造方法によって得られた半導体装置であって、
上記酸化性溶液によって半導体が酸化された化学酸化膜を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
SiC基板を硝酸溶液中で100V未満の電圧を印加して正電位に保ち、前記SiC基板の表面に二酸化シリコン膜を形成することを特徴とするSiC基板の酸化方法。
【請求項15】
5~20Vの電圧を印加することを特徴とする請求項14に記載のSiC基板の酸化方法。
【請求項16】
SiC基板に硝酸溶液中で100V未満の電圧を印加して、前記SiC基板の表面に二酸化シリコン膜を形成する工程を含むことを特徴とするSiC-MOS型半導体装置の製造方法。
【請求項17】
5~20Vの電圧を印加することを特徴とする請求項16に記載のSiC-MOS型半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項14または15に記載の酸化方法、または、請求項16または17に記載のSiC-MOS型半導体装置の製造方法によってSiC基板上に形成された二酸化シリコン膜を備えたSiC-MOS型半導体装置。
【請求項19】
請求項18に記載のSiC-MOS型半導体装置を備えたSiC-MOS型集積回路。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関するものであり、例えば、半導体集積回路などに用いられる金属-酸化物-半導体装置、すなわち、MOS(Metal Oxide-Semiconductor)における半導体の表面、とりわけシリコン基板等の表面に、所望の厚さの高品質の二酸化シリコン膜(絶縁膜)を、低温・低電圧で形成する半導体酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関するものである。また、本発明は、シリコンカーバイド(SiC)基板に、低温かつ短時間で界面準位の良好な二酸化シリコン膜を形成するSiC基板の酸化方法とそれを用いたSiCMOS型半導体装置およびそれを備えたSiC-MOS型集積回路、並びにSiC-MOS型半導体装置およびSiC-MOS型集積回路の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、とりわけMOSトランジスタを用いる半導体集積回路などでは、高集積化、高密度化に伴う回路要素の微細化で、それに用いられる絶縁膜の性能向上が重要である。
【0003】
この種の半導体集積回路では、MOSトランジスタのゲート絶縁膜は、通常、乾燥酸素や水蒸気などの酸化性気体中800℃以上の高温で加熱処理する,いわゆる高温熱酸化法により形成している。
【0004】
高温熱酸化法以外には、有機シラン,例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等を数百℃で熱分解させて、基板上に酸化膜を堆積させる化学気相成長(CVD)法、酸化物をスパッタ蒸着で形成するスパッタ蒸着法、プラズマ中で基板表面を酸化させるプラズマ酸化法などの酸化膜形成方法が周知である。
【0005】
また、陽極酸化により基板表面を酸化させて酸化膜を形成する陽極酸化法として、例えば、電解質のフッ化水素酸水溶液中でシリコン基板に電圧を印加して、シリコンの多孔質陽極反応膜を形成した後、その多孔質陽極反応膜をシリコンの陽極酸化が可能な電解質,例えば濃燐酸中で陽極酸化を行う方法が知られている(例えば、特許文献1~3,非特許文献1~2参照)。
【0006】
陽極酸化では、電圧印加によってシリコン基板のシリコンイオンを、二酸化シリコン膜の表面に移動させ、シリコン基板表面に二酸化シリコン膜を形成する。そして、二酸化シリコン膜と電解液との界面(二酸化シリコン膜の表面)で酸化反応を進行させることが目的で、シリコン基板からシリコンイオンを生成させる。さらに、そのシリコンイオンが二酸化シリコン膜中透過して二酸化シリコン膜と電解液との界面(二酸化シリコン膜の表面)に導くために、通常100V以上の大きな電圧の印加を必要とする(非特許文献2)。
【0007】
一方、本発明者は、電圧印加による電気化学的酸化膜形成方法ではなく、化学的に酸化膜を形成する化学的酸化膜形成方法を提案している(特許文献4~7,非特許文献3~4)。例えば、シリコンなどの半導体基板の表面に、濃硝酸等の酸化性の強い薬液を用いて、1nm程度の薄い酸化膜を形成することを提案している(特許文献4)。
【0008】
ところで、近年、シリコンカーバイド(SiC)は、ワイドギャップや、絶縁破壊電界,飽和電子速度,および熱伝導度などの優れた物性が注目され、パワーデバイスおよび高周波デバイスなどの半導体装置への応用が始まっている。
【0009】
SiCは、Siと同様に、熱酸化によって酸化膜(二酸化シリコン膜)を形成できる。このため、SiCをパワーMOSFET(パワーデバイス)に適用すれば,システムの大幅な小型化とともに、オン抵抗(熱損失)の大幅な低減が可能である(非特許文献5)。
【0010】
この場合でも、熱酸化によって設計時のゲート酸化膜の膜厚を、例えば、10nm以上とするには、1100℃以上で数時間の高温処理が必要となる。しかも、高温の熱酸化によって形成された酸化膜の界面準位は極めて大きく、SiC-MOSFET本来の特性を発揮できていない。
【0011】
従って、デバイス応用の基本技術の確立には、酸化膜形成の低温化、短時間化、および酸化膜の界面準位の低減などのプロセスの改善が強く望まれている。

【特許文献1】特開平3-6826号公報(平成3年(1991年)1月14日公開)
【特許文献2】特開昭52-78374号公報(昭和52年(1977年)7月1日公開)
【特許文献3】特開2003-133309号公報(平成15年(2003年)5月9日公開)
【特許文献4】特開2004-47935号公報(平成16年(2004年)2月12日公開)
【特許文献5】特開平9-45679号公報(平成9年(1997年)2月14日公開)
【特許文献6】特開2002-57154号公報(平成14年(2002年)2月22日公開)
【特許文献7】特開2002-64093号(平成14年(2002年)2月28日公開)
【非特許文献1】応用物理 第44巻 第5号 497~506頁 1975年
【非特許文献2】エレクトロニクス技術全書 MOSデバイス(1973年初版)徳山巍著,124~125頁
【非特許文献3】J. Applied Physics Letters, 81, 18, pp3410-3412(2002)
【非特許文献4】J. Applied Physics Letters, 94, 11, pp7328-7335(2003)
【非特許文献5】応用物理 2005.3.(Vol.74 No.3 pp371~375)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の陽極酸化法では、半導体表面から酸化される半導体成分のイオンを離脱し、酸化膜表面に、その半導体成分のイオンを導くために、高い電圧(通常100V以上)が必要となる。具体的には、陽極酸化法では、電解質中でのシリコン基板の表面の二酸化シリコン膜(酸化膜)の成長は、シリコン基板のシリコンイオン(Si)を、シリコン基板-二酸化シリコン膜の界面から、二酸化シリコン膜中を通って、二酸化シリコン膜表面(二酸化シリコン膜-電解質界面)に移動させ、二酸化シリコン膜表面で酸化反応が進行して起こる。このため、二酸化シリコン膜が形成され、膜厚が増加するにつれ、シリコン基板に印加する電圧を大きくする必要がある。ところが、電圧を大きくしすぎると、リーク電流の原因となるため、良質の二酸化シリコン膜を制御性よく形成するのは困難である。
【0013】
また、陽極酸化法では、電解液中のイオンが酸化膜中に混入するため、高品質の酸化膜を得ることはなかなか困難である。しかも、陽極酸化法では、酸化反応が二酸化シリコン膜表面で進行するため、最初に形成された二酸化シリコン膜の表面が、二酸化シリコン/シリコン基板の界面となる。そして、最初の界面を維持したまま(界面が変化しないまま)、二酸化シリコンが形成されていくため、優れた界面特性を得ることが困難である。また、陽極酸化では、シリコン基板からシリコンイオンを離脱させるため、シリコン基板表面にポーラスが形成されることも、優れた界面活性を得られない原因となる。このため、例えば、電気的特性の安定性も不充分となる。従って、陽極酸化法で形成した酸化膜によって、目的とする品質を維持するためには、酸化膜を厚くする必要がある。
【0014】
一方、本発明者等によって提案された特許文献4の方法では、良質の酸化膜が形成されるものの、実際に酸化性の強い薬液によって形成した二酸化シリコン膜の膜厚は1.5nm程度であり、それ以上の膜厚は得られていない。
【0015】
また、その他の従来の酸化膜形成法でも、例えば、シリコン基板表面に、自然酸化膜を除去した後で、厚さがナノメートル(nm)あるいはそれ以下の極薄の酸化膜(化学酸化膜)を形成することはできても、その酸化膜は、半導体装置の絶縁膜として利用できるような品質が制御されたものではない。特に、リーク電流密度の小さい酸化膜を得ることはなかなか困難である。例えば、特に、薄膜トランジスタ(TFT)のゲート絶縁膜などでは、耐圧維持のために、数ナノメートル(nm)あるいはそれ以上の比較的厚い酸化膜を、シリコン基板表面に形成することが求められる。
【0016】
また、液晶ディスプレイなどで使用されるフレキシブルな基板、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)などの基板上に、薄膜トランジスタ(TFT)を形成する際には、その基板の温度を200℃以下に保つことが必要である。
【0017】
従って、このような低温の製造工程でも、TFTのゲート絶縁膜など、半導体装置にも実用可能な高品質の絶縁膜形成が求められる。
【0018】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の陽極酸化で適用される,100Vを超えるような高電圧でなく、低電圧で高品質の化学酸化膜(特に、二酸化シリコン膜)を実現することができる、酸化膜の形成方法、その酸化膜を用いる半導体装置の製造方法およびその半導体装置の製造装置を提供することにある。
【0019】
さらに、本発明の他の目的は、上記PETなどの基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合や、MOSトランジスタあるいはそれを用いる大規模集積回路(LSI)などを形成するに際して、そのゲート絶縁膜にも利用できる,低リーク電流密度特性などの性能を持つ高品質の酸化膜を,PETなどの基板にも形成できる程度の低温で、厚さも制御しながら,半導体の表面に形成することが可能な酸化膜の形成方法、その酸化膜の形成方法を用いる半導体装置の製造方法およびその半導体装置の製造装置を提供することにある。
【0020】
また、本発明の別の目的は、SiC基板の表面に、低温かつ短時間で界面準位の良好な二酸化シリコン膜を形成することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の酸化膜の形成方法(本形成方法)は、上記の課題を解決するために、半導体に電圧を印加した状態で、その半導体表面に化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を有する酸化膜の形成方法において、上記酸化膜形成工程は、酸化性溶液またはその気体を上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成することを特徴ととしている。
【0022】
上記の構成によれば、半導体に電圧を印加した状態で、半導体に、酸化性溶液またはその気体(以下、「酸化剤」とする)を作用させることによって、その酸化剤から、酸化種(イオンまたはラジカル)が生成する。また、半導体には電圧を印加しているため、半導体表面には、酸化種が導かれる。そして、酸化種が半導体表面に達すると、半導体成分が、酸化種によって酸化され、化学酸化膜が形成される。つまり、化学酸化膜は、半導体成分の酸化物である。このように、酸化膜形成工程は、酸化性溶液またはその気体から発生する酸化種(イオンまたはラジカル)を、半導体表面に導き、半導体表面で化学酸化膜を成長する工程である。すなわち、酸化膜形成工程では、半導体への電圧印加は、半導体表面に酸化種を導くために行うのであり、半導体成分をイオン化するために行うのではない。従って、本形成方法では、半導体成分がイオン化するために必要な大きな電圧を必要としないため、低電圧条件下での化学酸化膜形成が可能である。
【0023】
また、上記の構成によれば、半導体を酸化して化学酸化膜を形成するため、酸化反応の進行とともに、半導体は薄くなり、半導体表面の化学酸化膜は厚くなる。すなわち、上記の構成では、半導体表面に新たに酸化膜を堆積するのではなく、半導体自身を酸化している。このため、たとえ、半導体表面が凹凸形状であっても、均一な厚さの化学酸化膜を、確実に形成することが可能となる。
【0024】
そして、特に、本形成方法では、半導体表面で化学酸化膜を形成することを特徴としている。すなわち、半導体表面に化学酸化膜を形成した後も、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)で、化学酸化膜を形成(成長)することを特徴としている。このため、本形成方法では、化学酸化膜中を透過して半導体表面に移動可能な酸化剤を用いている。従って、本形成方法では、半導体成分のイオンを、化学酸化膜表面に導く必要がない。このため、本形成方法では、陽極酸化法のような100V以上の高電圧を必要とせず、100V未満のより低電圧(例えば、5~20V程度)で、酸化膜の形成が可能である。なお、本形成方法では、特許文献1のように、半導体表面に多孔質の膜を形成する必要もない。
【0025】
一方、従来の陽極酸化法では、半導体成分のイオンを、化学酸化膜表面に導き、化学酸化膜表面で化学酸化膜を成長させるため、半導体に高電圧を印加する必要がある。特に、半導体成分のイオン化には高電圧が必要となる。
【0026】
また、本形成方法は、基本的には、半導体への電圧印加による化学膜形成反応であるため、陽極酸化と同様、低温での化学酸化膜の形成が可能である。従って、本形成方法では、高電圧および高温が必要ではないため、化学酸化膜の膜質を向上させることができ、リーク電流密度の低い高品質の化学酸化膜を形成することができる。
【0027】
さらに、電圧を印加することによって、印加しない場合よりも、化学酸化膜の形成速度を向上できる。従って、短時間での化学膜形成が可能となる。
【0028】
このように、本形成方法によれば、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、半導体表面に均一に形成することが可能である。すなわち、化学酸化膜の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の化学酸化膜を形成できる。従って、例えば、化学酸化膜を絶縁膜として使用したとしても、その化学酸化膜は高品質の絶縁膜として機能するため、現状の絶縁膜よりも薄膜化(例えば数nm以下)が可能である。
【0029】
なお、本形成方法では、酸化性溶液またはその気体から生成する酸化種が、化学酸化膜中を透過して半導体表面に移動可能な酸化剤を用いている。すなわち、酸化力の強い酸化種を生成する、酸化力の強い酸化性溶液またはその気体(酸化剤)を用いている。これにより、酸化種が、形成された化学酸化膜中を浸透して、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)に移動し、半導体表面で化学酸化膜が成長する。
【0030】
このように、「酸化性溶液またはその気体」とは、半導体に作用(接触)することにより、化学酸化膜を形成するものであって、半導体成分を酸化しうる酸化種を生成(発生)するものである。また、上記「酸化性溶液またはその気体を作用させる」とは、半導体表面の少なくとも一部に、酸化溶液またはその気体(より詳細には、酸化種)が接触する状態にあれば、特に限定されるものではない。
【0031】
本形成方法では、上記酸化膜形成工程は、上記電圧を印加する半導体を、酸化性溶液に浸漬して行うことが好ましい。これにより、酸化膜形成工程を酸化性溶液に浸漬するという簡単な構成で行うことができる。従って、特に、大型(大面積)の半導体に化学酸化膜を形成する場合にも適応可能である。このため、CVD装置などの大掛りな装置が不要であるため、製造コストも削減できる。
【0032】
本形成方法では、上記半導体がシリコンを含んでおり、上記化学酸化膜が、シリコンの酸化膜であることが好ましい。
【0033】
また、本形成方法では、上記半導体が、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1つであって、上記化学酸化膜が、シリコンの酸化膜であることが好ましい。
【0034】
シリコン酸化膜(二酸化シリコン膜)は、最も使用範囲の広い酸化膜である。しかしながら、膜質が低いため、酸化膜としての機能を果たすには、ある程度の膜厚が必要となる。上記の構成によれば、高品質のシリコン酸化膜を半導体表面に均一に形成できる。従って、従来のシリコン酸化膜を、上記のシリコン酸化膜に置換することにより、シリコン酸化膜の薄型化が可能である。
【0035】
また、本形成方法では、上記酸化性溶液またはその気体が、硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液、その気体、またはそれらの混合物からなることが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、酸化性溶液またはその気体が、酸化力の強い酸化種(例えば、酸素イオン、水酸化物イオン、過酸化物イオンなどの酸素のイオンやラジカル)を発生する。このため、化学酸化膜を形成すべき半導体を陽極とすることによって、化学酸化膜形成後も、これらの酸化種を、半導体表面に導くことが可能となる。
【0037】
また、本形成方法では、上記酸化性溶液またはその気体が、共沸濃度以上の共沸混合物であることが好ましく、水との共沸混合物であることがより好ましく、水との共沸混合物である共沸硝酸、水との共沸混合物である共沸硫酸、および水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることがさらに好ましい。さらに、これらの共沸混合物は、共沸温度以上に加熱した上記酸化性溶液またはその気体を、半導体に作用させることが特に好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、酸化性溶液またはその気体として、共沸混合物を用いるため、その溶液および蒸気(すなわち気体)は半導体の化学酸化膜の形成中(酸化膜形成工程中)それぞれ濃度が一定になる。すなわち、共沸混合物は、共沸沸点以上に加熱することにより、一定の溶液組成・蒸気組成となる。これにより、化学酸化膜の成長の制御を、時間管理で行うことができる。従って、化学酸化膜の形成(厚さや品質)を、より高精度に制御することが可能となる。
【0039】
本形成方法は、半導体に、共沸濃度未満の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、上記半導体表面に、第1の化学酸化膜を形成する第1工程と、上記第1の化学酸化膜に、共沸濃度以上の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、上記第1の化学酸化膜よりも厚い第2の化学酸化膜を形成する第2工程とを有する酸化膜の形成方法であって、上記第1工程および上記第2工程の少なくとも一方の工程を、半導体に電圧を印加した状態で、上記酸化性溶液またはその気体を、上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成することを特徴とする構成であってもよい。
【0040】
すなわち、この形成方法は、第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程を、前記酸化膜形成工程によって行うことを特徴としている。
【0041】
上記の構成によれば、第1工程また第2工程の少なくとも一方を、前述の酸化膜形成工程と同様に行っているため、前述と同様に、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、半導体表面に均一に形成することが可能である。すなわち、化学酸化膜の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の化学酸化膜を形成できる。従って、例えば、化学酸化膜を絶縁膜として使用したとしても、その化学酸化膜は高品質の絶縁膜として機能するため、現状の絶縁膜よりも薄膜化(例えば数nm以下)が可能である。
【0042】
さらに、上記の構成によれば、第1工程によって、第2の化学酸化膜よりも薄い第1の化学酸化膜を形成し、第2工程によって、第1の化学酸化膜よりも厚い第2の化学酸化膜を形成する。また、特に、第1の工程を共沸濃度未満、第2の工程を共沸濃度以上の酸化性溶液またはその気体を作用させているため、第1の化学酸化膜は、第2の化学酸化膜に比べて、原子密度の低い化学酸化膜となる。すなわち、第1工程は、有孔(ポアー)が存在する第1の化学酸化膜を形成する工程ともいえる。そして、第2工程では、第1工程で形成された第1の化学酸化膜に存在するポアーに、酸化性溶液またはその気体が作用することによって、第2の化学酸化膜が形成される。つまり、ポアーを含む低い原子密度の第1の化学酸化膜が触媒となって、第2の化学酸化膜形成の酸化反応が、順次進行する。これにより、より一層高品質の化学酸化膜を形成できる。
【0043】
なお、第1工程および第2工程は、低濃度(好ましくは共沸濃度未満)と、高濃度(好ましくは共沸濃度以上)との2種類の酸化性溶液またはその気体を準備して、第1および第2の化学酸化膜を形成してもよいし、上記低濃度から高濃度へ多段階(2種類以上の濃度の酸化性溶液またはその気体を準備する)で、順次高濃度に切り替えてもよい。また、低濃度から高濃度へ連続的に濃度を上昇させることもできる。つまり、低濃度溶液を濃縮することにより、連続的に高濃度溶液とすることもできる。たとえば、共沸濃度未満の酸化性溶液を、共沸濃度になるまで加熱すれば、その加熱状態を維持することにより、共沸濃度となった酸化性溶液は、一定の溶液組成・蒸気組成となる。これにより、化学酸化膜の成長の制御を、時間管理で行うことができる。従って、化学酸化膜の形成(厚さや品質)を、より高精度に制御することが可能となる。
【0044】
本形成方法では、上記酸化膜形成工程後に、上記化学酸化膜を窒化処理する窒化工程を行うことが好ましい。これにより、化学酸化膜は窒化され、化学酸化膜と窒化膜とからなる窒化化学酸化膜が形成される。
【0045】
窒化化学酸化膜は、基本的には、その組成に応じて、酸化膜と窒化膜との中間的な性質を有する。例えば、酸化膜中に比べて窒化膜中では、不純物の拡散係数が小さいため(熱窒化)、窒化化学酸化膜は、ゲート電極中にドーピングした不純物、特にホウ素のSi基板中への外方拡散を阻止する能力に優れている。このため、窒化化学酸化膜は、極薄ゲート絶縁膜(例えば4nm以下)を必要とする半導体装置に適用可能である。
【0046】
このように、窒化処理は、トランジスタを高性能化するための1つの手段であり、この窒化処理によって、より一層化学酸化膜の膜質を向上できる。従って、化学酸化膜の薄膜化が可能となる。
【0047】
なお、「化学酸化膜を窒化処理する」とは、形成した化学酸化膜の少なくとも一部を窒化することである。つまり、窒化処理とは、半導体表面の酸化により化学酸化膜を形成した後、窒化種を含んだ雰囲気中で加熱することにより、化学酸化膜の一部、または、半導体表面に形成された化学酸化膜とその半導体との界面を窒化する処理である。
【0048】
窒化処理としては、アンモニア(NH)窒化、亜硝酸(NO)窒化、一酸化窒素(NO)窒化、などが挙げられる。これらの方法では、窒化種が、アンモニア、亜硝酸、一酸化窒素となる。なお、NO窒化により得られた窒化化学酸化膜は、特性を劣化させず、ゲート絶縁膜の経時絶縁破壊耐性、ホットキャリア耐性に優れている。
【0049】
本発明の半導体装置の製造方法(本製造方法)は、前記したいずれかの酸化膜の形成方法によって化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を有することを特徴とするものである。
【0050】
また、本製造方法では、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成した後または上記化学酸化膜を窒化処理した後、酸化膜、窒化シリコン膜、誘電体膜(例えば、高誘電体膜・強誘電体膜)の少なくとも一つの被膜を形成する工程を有することが好ましい。
【0051】
また、本発明の半導体装置は、前記いずれかの半導体装置の製造方法によって得られた半導体装置であって、上記酸化性溶液によって半導体が酸化された化学酸化膜を備えていることを特徴としている。
【0052】
また、本発明の半導体装置の製造装置は、半導体に電圧を印加した状態で、その半導体表面に化学酸化膜を形成する酸化膜形成部を有する半導体装置の製造装置において、上記酸化膜形成部が、前記したいずれかの酸化膜の形成方法または前記したいずれかの半導体装置の製造方法によって、半導体表面で化学酸化膜を形成する機能(半導体表面で化学酸化膜を成長する機能)を有することを特徴とするものである。
【0053】
上記各構成・方法によれば、本形成方法と同様に、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、半導体表面に均一に形成することが可能である。すなわち、化学酸化膜の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の化学酸化膜を形成できる。従って、例えば、化学酸化膜を絶縁膜として使用したとしても、その化学酸化膜は高品質の絶縁膜として機能するため、現状の絶縁膜よりも薄膜化(例えば数nm以下)が可能である。それゆえ、高品質の化学酸化膜を有する高性能な半導体装置を提供できる。
【0054】
また、本発明のSiC基板の表面酸化方法は、上記の課題を解決するために、SiC基板を硝酸溶液中で電圧印加して正電位に保ち、前記SiC基板の表面に二酸化シリコン膜を形成することを特徴としている。
【0055】
また、本発明のSiCMOS型半導体装置の製造方法は、上記の課題を解決するために、SiC基板に硝酸溶液中で電圧印加して、前記SiC基板の表面に二酸化シリコン膜を形成する工程を含むことを特徴としている。
【0056】
また、本発明のSiCMOS型半導体装置は、前記SiC基板の酸化方法、または、前記SiC-MOS型半導体装置の製造方法によってSiC基板上に形成された二酸化シリコン膜を備えていることを特徴としている。
【0057】
また、本発明のSiC-MOS型集積回路は、前記SiC-MOS型半導体装置を用いたことを特徴としている。
【0058】
また、本発明のSiC-MOS型半導体装置およびSiC-MOS型集積回路の製造装置は、前記SiC基板の酸化方法、または、前記SiC-MOS型半導体装置の製造方法によって、SiC基板に二酸化シリコン膜を形成する酸化膜形成部を備えていることを特徴としている。
【0059】
上記各構成・方法によれば、SiC基板の表面に、低温かつ短時間で界面準位の良好な二酸化シリコン膜を形成する技術およびその利用法を提供することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明に係る酸化膜の形成方法は、以上のように、酸化性溶液またはその気体を上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を備えているので、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、半導体表面に均一に形成することが可能である。すなわち、化学酸化膜の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の化学酸化膜を形成できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。以下では、シリコン基板上に二酸化シリコン膜および電極が形成されてなるMOSキャパシタの製造方法を例に挙げて説明する。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0062】
本実施形態におけるMOSキャパシタ(半導体装置)の製造方法は、半導体に電圧を印加した状態で、酸化性溶液またはその気体を上記半導体に作用させることにより、上記半導体表面で上記化学酸化膜を形成する酸化膜形成工程を有することを特徴としている。以下、本発明に特徴的な酸化膜形成工程を重点的に説明する。
【0063】
図1は、本発明の第1の実施形態として、シリコン基板上に二酸化シリコン膜(化学酸化膜)を形成する方法に使用する製造装置(半導体装置の製造装置)の主要部の概略断面図であり、被処理用のシリコン基板1を処理槽2内の酸化性溶液(酸化性溶液またはその気体)3に浸した状態で、シリコン基板1に、電源4を接続して、シリコン基板1と処理槽2内に設置した対向電極5との間で所定の電圧を印加できるように構成したものである。すなわち、この製造装置は、以下に示す、本発明の酸化膜の形成方法を実施する酸化膜形成部を有している。
【0064】
図1の製造装置では、シリコン基板1および対向電極5に電圧を印加すると、処理槽2内の酸化性溶液3が、電解することにより、酸化性溶液3から、シリコン基板1を酸化する酸化種が形成される。そして、この酸化種がシリコン基板1を酸化することによって、シリコン基板1表面に二酸化シリコン膜が形成される。
【0065】
図2(a)~(f)は、上記図1に示した製造装置により、シリコン基板11上に二酸化シリコン膜(化学酸化膜)および電極を形成して、MOSキャパシタを製造する方法を開示する工程フロ-断面図であり、以下に本発明の一実施形態の方法を説明する。
【0066】
まず、図2(a)のように、シリコン基板11上に、予め、分離領域12を形成する。ここで、シリコン基板11には、比抵抗が10~15Ωcm,面方位(100)のP形基板を用い、このシリコン基板11にチャンネルストッパーのボロン(B)を注入後、シリコン基板11の一方の面に、分離領域12としてLOCOS(local oxidation of silicon)技術で作られる二酸化シリコン膜を約500nmの膜厚で形成した。この分離領域12は、LOCOSに限らず、例えばシリコン基板に埋め込みの二酸化シリコン膜を形成したものでも良い。この過程でシリコン基板11の表面に自然酸化膜13が形成されているときは、よく知られているRCA洗浄方法,すなわちアンモニア-過酸化水素系水溶液で洗浄した後、濃度0.5%(vol.%)の希フッ酸溶液に約5分間浸漬することで、図2(b)のように、自然酸化膜13を完全に除去できる。
【0067】
次に、超純水で5分間リンス処理(洗浄)した後、シリコン基板11を,図1に示す処理槽2内に満たした,低濃度でも酸化力の強い溶液(酸化性溶液)に浸漬し、かつ、そのシリコン基板11に,電源4を通じて,処理槽2内に設置した対向電極5との間で10Vの正の電圧を印加して室温で約10分間維持する。ここでは、酸化性溶液として、硝酸濃度1モル(mol./l)の硝酸水溶液を用いて、図2(c)のように、シリコン基板11表面の活性領域14上に厚さ約10nmの二酸化シリコン膜15を均一に形成した。
【0068】
このときの上記シリコン基板11への電圧印加の条件は、加熱温度が200℃以下に設定されているときの温度を加味して選定する。一例を挙げると、上記シリコン基板11の全面に均等電界が与えられるような電極配置、例えば上記シリコン基板とこれに平行配置の対向電極との間で、上記シリコン基板11の側に正電位の数10ボルトの範囲(直流で100V未満)で選定し、上記硝酸濃度1モル(mol./l)の硝酸水溶液の場合では直流5~20Vの範囲で適宜設定するのがよい。この電圧印加により、酸化種のOやOHなどの陰イオンまたはラジカルが、上記シリコン基板11表面に引き込まれてかつ二酸化シリコン膜15が形成されてもそれを通過して、上記シリコン基板11表面での酸化反応が一様に加速される。これによって、上記シリコン基板11表面で二酸化シリコン膜15が生成される。
【0069】
なお、上記シリコン基板11への電圧印加の条件は、これに負電位を印加することにより、酸化種の上記シリコン基板11面に引き込まれることを抑止することができる。上記シリコン基板11への電圧印加がない(つまり、印加電圧値が零)のときにも、拡散によって、シリコン基板11表面に到来した酸化種により上記シリコン基板11表面では二酸化シリコン膜15の成長があるから、上記シリコン基板11表面での化学酸化膜の成長を止めるには、適当な負電圧を印加するのがよい。これは、上記シリコン基板11表面での二酸化シリコン膜15の成長を終えて、シリコン基板11を処理槽2中の酸化性溶液3から取り出す(切り離す)際に実施すると有効に機能させることができる。
【0070】
つづいて、図2(d)のように、二酸化シリコン膜15および分離領域12上に金属膜(金属を含む膜)16を形成した。この金属膜16は、1wt%のシリコンを含むアルミニウム合金を、周知の抵抗加熱蒸着法により膜厚約200nmに堆積することで形成した(以下、この種の金属膜電極を単にアルミニウム電極と称する)。この金属膜16に代えて、ポリシリコン電極(材)を付着させて用いることもできる。
【0071】
その後、金属膜16を所望の形状にパターニングして、図2(f)のように、電極17を形成することで、MOSキャパシタを製造することができる。
【0072】
次に、このようにして製造したMOSキャパシタの特性について説明する。
【0073】
図3は、本実施形態で得たMOSキャパシタの静電容量(C)と印加電圧(V)との関係、いわゆるC-V特性図である。この特性図で見られるように、電極17に正電圧を印加することにより、酸化膜との界面(半導体表面)に反転層が誘起され、安定なキャパシタ容量(静電容量)が得られている。
【0074】
また、上述のMOSキャパシタは、図3のC-V特性図からもわかるように、リーク電流密度も、通常の高温熱酸化法で形成した二酸化シリコン膜を絶縁膜に用いて形成したMOSキャパシタのリーク電流密度特性と同程度ないしはそれ以上であり、確実に高性能が認められる。
【0075】
なお、上記の説明では、酸化性溶液または酸化性気体として、硝酸濃度1モルの硝酸水溶液を用いた例で述べたが、これに代えて、任意濃度の硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液,王水、およびさらに酸化力のある沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液、その気体、またはそれらの混合物用いることもできる。すなわち、これらの酸化性溶液または酸化性気体は、単独で用いても、混合物で用いてもよい。これらの酸化性溶液または酸化性気体は、酸化力が強い酸化種、例えば、酸素イオン、水酸化物イオン、過酸化物イオンなどの酸素のイオンやラジカルを発生する。このため、二酸化シリコン膜15を形成すべきシリコン基板11を陽極とすることによって、二酸化シリコン膜15形成後も、これらの酸化種を、シリコン基板11表面(シリコン基板11と二酸化シリコン膜15の界面)に導くことが可能となる。
【0076】
酸化性溶液として硝酸水溶液を用いる場合は、硝酸濃度が1~65%(重量比、以下、wtと記す)の範囲の低濃度であっても、シリコンに対する酸化力が強く、シリコン基板11への印加電圧なしでも、上述の二酸化シリコン膜15の形成に好適である。
【0077】
また、高濃度の酸化性溶液、とりわけ、硝酸濃度が65%(wt)を超える高濃度、たとえば、硝酸濃度68%(wt)以上(共沸濃度以上)の硝酸水溶液では、シリコンに対する酸化力が極めて強く、シリコン基板11への印加電圧なしでも、均一な二酸化シリコン膜15が形成される。そして、この硝酸水溶液では、加熱温度を120.7℃(いわゆる共沸温度以上)に保つと、硝酸と水とが共沸状態になり、その溶液および蒸気(すなわち気体)はそれぞれ濃度が一定になり、二酸化シリコン膜15の成長の制御を時間管理で行うことができる。
【0078】
そして、それらは蒸気、すなわち酸化性気体でも強い酸化力があるため、この蒸気をシリコン基板11に電圧印加なしで作用させたとしても、シリコン基板11の表面に二酸化シリコン膜(化学酸化膜)15を形成することができる。この場合、シリコン基板11の温度は適宜選定することができる。しかし、シリコン基板11に電圧を印加して、二酸化シリコン膜15を形成することによって、二酸化シリコン膜15の生成速度を高めることができる。
【0079】
また、上記の酸化性溶液またはその気体の中でも、高濃度の酸化性溶液または酸化性気体が、本実施形態で用いた硝酸と水との共沸混合物である共沸硝酸、硫酸と水との共沸混合物である共沸硫酸、および過塩素酸と水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つである場合は、特に酸化力が強く、本発明による酸化物の形成方法に特に好適である。これらの共沸混合物は、シリコン基板11への印加電圧が低くても(印加電圧がゼロであっても)、酸化膜形成工程ならびに得られる二酸化シリコン膜15の性能がいずれも安定である。
【0080】
このように、本実施形態では、上記酸化性溶液またはその気体が、共沸濃度以上の共沸混合物であることが好ましく、水との共沸混合物であることがより好ましく、水との共沸混合物である共沸硝酸、水との共沸混合物である共沸硫酸、および水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることがさらに好ましい。さらに、これらの共沸混合物は、共沸温度以上に加熱した上記酸化性溶液またはその気体を、半導体に作用させることが特に好ましい。
【0081】
上記の説明では、酸化膜形成工程を、1種類の濃度の硝酸水溶液を用いて二酸化シリコン膜15を形成しているが、異なる複数の濃度の硝酸などの酸化性溶液またはその気体を適用することも可能である。ただし、この場合、酸化性溶液またはその気体は、共沸混合物である。
【0082】
すなわち、シリコン基板(半導体)に、共沸濃度未満の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、シリコン基板11表面に、第1の二酸化シリコン膜(第1の化学酸化膜)を形成する第1工程と、第1の二酸化シリコン膜に、共沸濃度以上の酸化性溶液またはその気体を作用させることにより、第1の二酸化シリコン膜よりも厚い第2の二酸化シリコン膜(第2の化学酸化膜)を形成する第2工程とを有し、上記第1工程および上記第2工程の少なくとも一方の工程を、上記の酸化膜形成工程(すなわち、シリコン基板に電圧を印加した状態で、上記酸化性溶液またはその気体を、上記シリコン基板に作用させることにより、上記シリコン基板表面で第1または第2の化学酸化膜を形成する)を行ってもよい。すなわち、第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程を、前記酸化膜形成工程によって行うこともできる。
【0083】
これにより、前述の酸化膜形成工程と同様に、所望の厚さの高品質の化学酸化膜を、低温・低電圧で、シリコン基板表面に均一に形成することが可能である。すなわち、二酸化シリコン膜の膜質を向上でき、リーク電流密度の低い高品質の二酸化シリコン膜を形成できる。従って、例えば、二酸化シリコン膜を絶縁膜として使用したとしても、その二酸化シリコン膜は高品質の絶縁膜として機能するため、現状の絶縁膜よりも薄膜化(例えば数nm以下)が可能である。
【0084】
さらに、特に、第1工程を共沸濃度未満、第2工程を共沸濃度以上の酸化性溶液またはその気体を作用させているため、第1の二酸化シリコン膜は、第2の二酸化シリコン膜に比べて、原子密度の低い化学酸化膜となる。すなわち、第1工程では、有孔(ポアー)が存在する第1の二酸化シリコン膜を形成できる。そして、第2工程では、第1工程で形成された第1の二酸化シリコン膜に存在するポアーに、酸化性溶液またはその気体が作用することによって、第2の二酸化シリコン膜が形成される。つまり、ポアーを含む低い原子密度の第1の二酸化シリコン膜が触媒となって、第2の二酸化シリコン膜の酸化反応が、順次進行する。これにより、より一層高品質の二酸化シリコン膜を形成できる。
【0085】
なお、第1工程および第2工程は、低濃度(好ましくは共沸濃度未満)と、高濃度(好ましくは共沸濃度以上)との2種類の酸化性溶液またはその気体を準備して、第1および第2の二酸化シリコン膜を形成してもよいし、上記低濃度から高濃度へ多段階(2種類以上の濃度の酸化性溶液またはその気体を準備する)で、順次高濃度に切り替えてもよい。また、低濃度から高濃度へ連続的に濃度を上昇させることもできる。たとえば、共沸濃度未満の酸化性溶液を、共沸濃度になるまで加熱すれば、その加熱状態を維持することにより、酸化性溶液は一定の溶液組成・蒸気組成となる。これにより、化学酸化膜の成長の制御を、時間管理で行うことができる。従って、二酸化シリコン膜の形成(厚さや品質)を、より高精度に制御することが可能となる。
【0086】
本実施形態では、シリコン基板11への電圧印加は、それによって、シリコン基板11上での二酸化シリコン膜15の生成速度を高めるとともに、その膜厚を増大させることに寄与する。シリコン基板11に電圧を印加することにより、溶液中の酸化種であるOやOHなどの陰イオンまたはラジカルが引き寄せられて、かつ二酸化シリコン膜15の形成後も、二酸化シリコン膜15中を通過して、シリコン基板11表面に到着しやすくなり、酸化反応速度を高め、厚い二酸化シリコン膜15を得ることができる。
【0087】
本実施形態では、上述の二酸化シリコン膜15に対して、窒化処理を行う窒化工程を行うことが好ましい。例えば、窒化工程としては、窒素を含む気体中,とりわけプラズマ窒化処理で、二酸化シリコン膜15表面の一部を、窒化シリコンに転化した窒化シリコン含有二酸化シリコン膜(窒化化学酸化膜)を形成することや、上述の窒化処理後の窒化シリコン含有膜上に重ねて、CVD法などで厚いSiO等の絶縁膜(酸化膜)を形成することも可能である。これにより、二酸化シリコン膜15は、窒化シリコンと二酸化シリコンとの膜(窒化化学酸化膜)となる。このような窒化処理を行えば、化学酸化膜の絶縁破壊特性や電荷トラップ特性を向上できる。
【0088】
本実施形態では、上述の二酸化シリコン(SiO)膜15上に、高誘電体膜、例えば、ハフニウムオキサイド、酸化アルミニウム等を積層した複合膜とすることによって、MOSトランジスタのゲート絶縁膜に用いることができる。その場合は、高誘電体膜のみを用いる場合に比べて、トランジスタ特性の性能向上(リーク電流の低減、界面準位の低減等による移動度の向上など)が得られる。上記高誘電体膜の下(シリコン基板11側)に形成する二酸化シリコン膜15は、例えば1nmまたはそれ以下の極薄膜でよく、電圧印加なしで、形成しても良い。なお、通常の熱酸化法で形成する二酸化シリコン膜15は、1nm程度のものでは、膜質が低いため、リーク電流や界面準位が大きく実用に耐えない。
【0089】
これに対し、本実施形態の二酸化シリコン(SiO)膜15は、高品質であるため、二酸化シリコン膜15上に、厚い絶縁膜を形成した積層構造の複合膜に好適である。すなわち、MOSトランジスタのゲート絶縁膜に好適である。さらに、上記高誘電体膜のみでなく、本実施形態の二酸化シリコン膜15は、強誘電体膜を積層して形成したものにも同様に適用できる。
【0090】
また、本実施形態では、二酸化シリコン膜15を形成するための被処理用基板として単結晶シリコン基板11を用いてMOSキャパシタを製造する例で説明したが、上記の各工程は、ガラス基板上やPETなどの基板上に多結晶(微結晶を含む)シリコンあるいは非晶質シリコンを形成して、薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも適用できる。
【0091】
さらに、本実施形態では、均一な二酸化シリコン膜15が得られるため、上記単結晶シリコン基板11は、平面形状に限られることなく、3次元形状や球状の凹凸や曲面を持つ基板で、その凹凸や曲面の領域をトランジスタのチャンネルに利用することも可能である。すなわち、上記の方法によれば、形成した二酸化シリコン膜15などの高品質の絶縁膜を、シリコン基板11の凹凸や曲面にあわせて、低温で均一に形成することができる。
【0092】
さらに、上述の各工程は、半導体装置として、MOSキャパシタを製造する場合に限定されるものではない。すなわち、本実施形態ではMOSキャパシタを例に述べたが、薄膜トランジスタ(TFT)のゲート絶縁膜を形成する場合、この積層二酸化シリコン膜あるいは積層二酸化シリコン膜の中間に窒化シリコン含有膜を介在させたものは、界面準位の少ない高性能な絶縁膜が得られ、高性能なTFTを得ることができる。また、大規模集積回路(LSI)や電荷結合デバイス(CCD)などで、多結晶シリコン電極材料などを配線に用いて形成する多層配線構造の層間絶縁膜あるいはフラッシュメモリ等のメモリの容量絶縁膜として用いることができ、この分野での利用が十分に期待できる。
【0093】
また、本実施形態では、被処理用基板として、単結晶シリコンのシリコン基板11を用いてMOSキャパシタを製造する例で説明したが、ここで述べた各工程は、単結晶シリコン基板を用いる場合に限らず、ガラス基板上やPETなどの基板上の多結晶(微結晶を含む)シリコンあるいは非晶質シリコン、炭化シリコン、シリコン・ゲルマニウムなどで薄膜トランジスタ(TFT)を形成する場合にも、十分に適用できる。
【0094】
また、本実施形態では、シリコン基板11に直流電圧を印加しているが、交流電圧を印加してもよい。交流電圧を印加する場合、パルスを制御により、直流電圧の場合と同様にして、二酸化シリコン膜を形成できる。また、パルスの制御により、形成する二酸化シリコン膜の膜厚の制御も可能となる。
【0095】
なお、上記の説明では、金属膜16(金属を含む膜)としてアルミニウムを用いたが、金属原子を含む膜としては、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、タングステン、チタン、及びタンタルの群から選ばれる金属原子を含む膜が挙げられる。なお、金属原子を含む膜としては活性な金属原子を含む膜が望ましく、例えばアルミニウム、マグネシウム、ニッケルなどの金属膜や、シリコンを含んだアルミニウムなどの合金膜が望ましい。また、金属原子を含む膜としては窒化チタンや五酸化タンタルなどの化合物を用いることもできる。
【0096】
なお、本発明の酸化膜の形成方法と、従来の陽極酸化法とでは、以下のような違いがある。
【0097】
従来、半導体に電圧を印加した状態で、その半導体表面に酸化膜を形成する方法として、陽極酸化法が行われていた。陽極酸化法は、酸化膜を溶かさない電解質中での半導体成分のイオンの移動を、電界が加速することによって、半導体表面に酸化膜を形成する方法である。
【0098】
例えば、陽極酸化法によりSi基板にSiO膜を形成する場合、Si基板への電圧印加により、Si基板表面からSiO膜にSiイオンを導く。そして、Si基板から離脱したSiイオンが、形成したSiO膜中を透過して移動することにより、離脱したSiイオンをSiO膜表面に導く。そして、SiO膜表面のSiイオンの酸化によって、SiO膜表面にSiO膜を形成する。つまり、陽極酸化法では、SiO膜の成長は、SiO膜表面で起こる。すなわち、陽極酸化では、SiO膜表面にSiイオンを導くことによって、SiO膜表面で、酸化反応が起こる。
【0099】
これに対し、本発明の酸化物の形成方法(本形成方法)では、酸化力の強い酸化性溶液またはその気体(高酸化性溶液またはその気体)を用いることで、例えば、Si基板にSiO膜を形成する場合、Si基板への電圧印加により、酸化性溶液から解離酸素イオン(O)や酸素原子などの活性種(酸化種)が、Si基板表面に生成する。この活性種は、SiO/Si基板の界面に移動し、この界面で、Si基板と反応してSiO膜を形成する。前述のように、本形成方法では、Si基板への電圧印加により、Si基板表面(Si基板とSiO膜との界面)に、Oイオンや酸素原子などの酸化種を導いている。従って、SiO膜の形成後、上記酸化種のイオンまたはラジカルが、Si基板表面(Si基板とSiO膜との界面)のSiを酸化することにより、SiO膜を形成する。つまり、SiO膜の成長は、SiO膜表面ではなく、Si基板表面(Si基板とSiO膜との界面)で起こる。すなわち、本形成方法では、Si基板表面(Si基板とSiO膜との界面)に酸化種のイオンまたはラジカルを導くことによって、Si基板表面(Si基板とSiO膜との界面)で、酸化反応が起こる。
【0100】
このように、本形成方法では、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)で酸化反応が起こるのに対し、陽極酸化法では、酸化膜表面で酸化反応が起こる。従って、本形成方法と陽極酸化法とでは、化学酸化膜の成長部位が異なる。すなわち、陽極酸化では、界面から、基板とは反対側に酸化膜が形成されていくのに対して、本形成方法では、界面から基板側に化学酸化膜が形成されていく。つまり、Si基板と二酸化シリコン膜との界面は、酸化反応に伴って、シリコンバルク側に移動して、常に清浄になる。従って、本形成方法では、良好な界面特性を得ることができる。
【0101】
さらに、陽極酸化法では、半導体表面から酸化される半導体成分のイオンを離脱し、酸化膜表面に、その半導体成分のイオンを導く必要があるため、高い電圧が必要である。これに対し、本形成方法では、半導体表面(半導体と化学酸化膜との界面)で、化学酸化膜が成長するため、半導体表面から酸化される半導体成分のイオンを離脱する必要がない。従って、本形成方法では、陽極酸化法よりも低電圧での化学酸化膜の形成が可能である。
【0102】
また、特許文献1では、シリコン基板表面に、低電圧で酸化膜を形成するために、多孔質の酸化膜を形成した後、酸化膜を形成している。すなわち、特許文献1では、多孔質の酸化膜を形成することが必須である。また、形成した酸化膜の膜質も不充分である。
これに対し、本形成方法では、そのような多孔質の酸化膜を形成することなく、半導体表面に化学酸化膜を形成することができる。
【0103】
また、従来の陽極酸化では、低電圧での酸化反応を行うために、多孔質シリコン基板を使用している。
【0104】
これに対し、本形成方法では、酸化力の強い酸化性溶液またはその蒸気を使用しているため、必ずしも多孔質の処理基板(例えば多孔質シリコン基板など)を使用する必要はない。
【0105】
また、本発明を以下の〔1〕~〔19〕のように表現することも可能である。すなわち、〔1〕本発明の酸化膜の形成方法は、半導体に対して100V未満の所定の電圧を印加したまま、酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成することを特徴とする。
【0106】
〔2〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔1〕記載の酸化膜の形成方法において、上記半導体が単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1つであって、上記化学酸化膜の主体がシリコンの酸化膜からなることを特徴とする。
【0107】
〔3〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔1〕または〔2〕記載の酸化膜の形成方法において、上記酸化性溶液またはその気体が、硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることを特徴とする。
【0108】
〔4〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔1〕または〔2〕記載の酸化膜の形成方法において、上記酸化性溶液またはその気体が、水との共沸混合物である共沸硝酸、水との共沸混合物である共沸硫酸、および水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることを特徴とする。
【0109】
〔5〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の酸化膜の形成方法において、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成した後、上記化学酸化膜を窒化処理する工程を含むことを特徴とする。
【0110】
〔6〕本発明の酸化膜の形成方法は、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する工程および高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことを特徴とする。
【0111】
〔7〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔6〕に記載の酸化膜の形成方法において、上記第1の化学酸化膜を形成する工程及び上記第2の化学酸化膜を形成する工程の少なくとも1つの工程で、上記半導体に電圧を印加することを特徴とする。
【0112】
〔8〕本発明の酸化膜の形成方法は、上記〔6〕または〔7〕に記載の酸化膜の形成方法において、上記低濃度の酸化性溶液またはその気体が、硝酸水溶液,硫酸水溶液および過塩素酸水溶液の群の少なくとも1つで共沸濃度未満の濃度の溶液またはその気体から選ばれ、上記高濃度の酸化性溶液またはその気体が、上記水溶液群中の少なくとも1つで共沸濃度の溶液またはその気体から選ばれたことを特徴とする。
【0113】
〔9〕本発明の半導体装置の製造方法は、半導体を含む基板に、上記半導体に対して所定の電圧を印加したまま、酸化性溶液またはその気体を作用させて、酸化種のイオンまたはラジカルを上記半導体の表面で反応させて所望の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことを特徴とする。
【0114】
〔10〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔9〕に記載の半導体装置の製造方法において、上記酸化性溶液またはその気体が、硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることを特徴とする。
【0115】
〔11〕本発明の半導体装置の製造方法は、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する工程及び高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことを特徴とする。
【0116】
〔12〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔11〕に記載の半導体装置の製造方法において、上記第1の化学酸化膜を形成する工程及び上記第2の化学酸化膜を形成する工程の少なくとも1つの工程で、上記半導体に電圧を印加することを特徴とする。
【0117】
〔13〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔11〕または〔12〕に記載の半導体装置の製造方法において、上記低濃度の酸化性溶液またはその気体が、硝酸、過塩素酸、硫酸から選ばれた少なくとも1つと水との混合物の群から選ばれて共沸濃度より低い濃度範囲に選定され、上記高濃度の酸化性溶液またはその気体が、上記群中から選ばれて上記低濃度の濃度範囲の設定値を超えた高濃度に選定されることを特徴とする。
【0118】
〔14〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔11〕~〔13〕のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、上記高濃度の酸化性溶液または酸化性気体が、水との共沸混合物である共沸硝酸、水との共沸混合物である共沸硫酸、および水との共沸混合物である共沸過塩素酸の群から選ばれた少なくとも1つの溶液またはその気体からなることを特徴とする。
【0119】
〔15〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔9〕~〔14〕のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体が単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化シリコンおよびシリコン・ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1つからなることを特徴とする。
【0120】
〔16〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔9〕~〔15〕のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成した後、上記化学酸化膜を窒化処理する工程を含むことを特徴とする。
【0121】
〔17〕本発明の半導体装置の製造方法は、上記〔9〕~〔16〕のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成した後または上記化学酸化膜を窒化処理した後、化学気相成長(CVD)による酸化膜、窒化シリコン膜、高誘電体膜および強誘電体膜の少なくとも一つの被膜を形成する工程をそなえたことを特徴とする。
【0122】
〔18〕本発明の半導体装置の製造装置は、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する機能および高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する機能をそなえたことを特徴とする。
【0123】
〔19〕本発明の半導体装置の製造装置は、半導体を含む基板に、電圧印加のまま酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成する機能をそなえたことを特徴とする。
【0124】
上記本発明の酸化膜の形成方法によると、半導体に対して、陽極酸化の場合より低い,100V未満の所定の電圧を印加したまま、酸化性溶液またはその気体を作用させて、酸化種のイオンまたはラジカルを前記半導体の表面で反応させて所望の化学酸化膜を形成する際に、その印加電圧を適宜選定することで、低温で高品質の上記化学酸化膜を所定の厚い被膜で均一に制御することができる。
【0125】
また、上記本発明の酸化膜の形成方法によると、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する工程および高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことで、低温で高品質の上記化学酸化膜を所望の厚い被膜に形成することができる。
【0126】
上記本発明の半導体装置の製造方法によると、半導体を含む基板に、上記半導体に対して陽極酸化の場合より低い,100V未満の所定の電圧を印加したまま、酸化性溶液またはその気体を作用させて、酸化種のイオンまたはラジカルを前記半導体の表面で反応させて所望の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことにより、上記化学酸化膜を所定の厚い被膜に選定して半導体装置を製造することができる。
【0127】
上記本発明の半導体装置の製造方法によると、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する工程及び高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する工程をそなえたことにより、上記第1の化学酸化膜を含む所定の厚い被膜を持った半導体装置を製造することができる。
【0128】
上記本発明の半導体装置の製造装置によると、半導体の表面に低濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体表面に第1の化学酸化膜を形成する機能および高濃度の酸化性溶液またはその気体を作用させて上記第1の化学酸化膜の厚みを越える第2の化学酸化膜を形成する機能をそなえたことにより、上記半導体を含む基体上に上記第1の化学酸化膜を含めた所定の厚い被膜の絶縁膜を形成して、高性能かつ安定な特性の半導体装置を製造することができる。
【0129】
上記本発明の半導体装置の製造装置によると、半導体を含む基板に、電圧印加のまま酸化性溶液またはその気体を作用させて、上記半導体の表面に化学酸化膜を形成する機能をそなえたことにより、上記化学酸化膜を所定の厚い被膜に形成して、高性能かつ安定な特性の半導体装置を製造することができる。
【0130】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0131】
以下、本実施の形態を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
〔実施例1〕
次に、酸化性溶液として硝酸を用いて、シリコン基板11上に二酸化シリコン膜15を形成した例(実施例)を示す。
【0133】
比抵抗が約10Ωcmで,面方位(100)のn型シリコンウェーハ(シリコン基板11上に形成された酸化膜(分離領域(LOCOS酸化膜))等を含めた全体)を、周知のRCA洗浄法で洗浄した後、ウェーハ表面の一部にオーミック接触の電極を設けて、このウェーハを室温(25℃)で、濃度1モル(mol./l)の硝酸(HNO)水溶液に浸漬して、対向電極5の白金参照電極との間に、5~20Vの範囲で可変の電源4から電圧を印加して、ウェーハ表面に二酸化シリコン(SiO)膜15を形成した。
【0134】
図4は、印加電圧をパラメータとして、処理時間(分)とSiO膜15の膜厚(nm)との関係を示す,SiO膜15の成長膜厚-時間特性図である。印加電圧が5Vの場合には、処理時間に対して、SiO膜の膜厚が放物線状に増加しており、このことから、SiO膜15の成長は、酸化種であるOやOHなどの陰イオンまたはラジカルによる,拡散律速になっていると認められる。そして、印加電圧が10Vの場合には、処理時間に対してSiO膜15厚が直線状に増加しており、反応律速になっていると認められる。すなわち、印加電圧が高い場合、酸化種であるOやOHなどの陰イオンまたはラジカルのSiO/Si界面(二酸化シリコン膜15とシリコン基板11との界面)への移動が促進される結果、その界面での酸化反応が律速過程になっているとみられる。ただし、そのいずれの場合も、SiO膜15の成長は、SiO/Si界面での酸化反応による化学酸化膜である。
【0135】
この実施例によると、シリコン基板11への印加電圧を10Vに設定した場合、SiO膜15厚と時間との関係がほぼ直線関係になるため、その時間を増加して、膜厚20~30nmのSiO膜15を形成することも十分に可能である。
【0136】
図5は、上記SiO膜15上に直径0.3mmのアルミニウム電極(金属膜16)を形成して、Al/SiO/Si(100)構造のMOSダイオード(キャパシタ)として、上記印加電圧5V,60分(処理時間)で得たSiO膜の場合のMOSダイオードによる電流-電圧(I-V)特性図である。このときのSiO膜15の厚さは、SiO膜15の比誘電率を3.9と仮定して,電気容量-電圧(C-V)法により測定したところ、約6.1nmであった。また、上記SiO膜15上のアルミニウム電極に4Vおよび-4Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、8×10-8A/cm,9×10-9A/cmであり、室温で形成したSiO膜15であるにも拘らず、比較的低い値であった。
【0137】
図6は、印加電圧5V,10V,15Vおよび20Vのそれぞれで形成したSiO膜について、そのSiO膜中の電界強度を5MV/cmに設定した際のMOSダイオードでのリーク電流密度とSiO膜厚との関係をランダムにプロットした相関図である。観測したすべての膜厚の範囲で、そのリーク電流密度は1×10-7A/cm以下であった。
【0138】
図7は、0.01モルの過塩素酸(HClO)水溶液中でシリコン基板11に10Vの電圧を10分間印加することによって形成したSiO膜15を持つMOSダイオードのI-V特性図およびC-V特性図である。上記SiO膜15上のアルミニウム電極に3Vおよび-3Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、7×10-8A/cm,8×10-9~8×10-8A/cmであり、C-V特性ではほぼ0.9Vのヒステレシスが存在する。X線光電子スペクトル(XPS:X-ray photoelectron spectrum)測定およびC-V特性から求めたSiO膜厚は、8.5nm(XPS)および6.7nm(C-V)であった。
【0139】
以上はHNO水溶液又はHClO水溶液中で形成したSiO膜15にアニール等の後処理を施さない場合の結果である。SiO膜15形成後、これを窒素中で熱処理(post-oxidation annealing-以下、POA処理という)を施すことによって、以下に示すように、電気特性が向上した。
【0140】
図8および図9は、上述の0.01モルの過塩素酸(HClO)水溶液中でシリコン基板11に10Vの電圧を10分間印加することによって形成したSiO膜15(図7に示すもの)を、窒素中200℃で30分間の加熱によるPOA処理した後、アルミニウム電極を形成してMOS構造として得たI-V特性図およびC-V特性図である。これによると、上記SiO膜15上のアルミニウム電極に4Vおよび-4Vの各電圧を印加した際のリーク電流密度は、それぞれ、1~8×10-8A/cm,1~8×10-9A/cmであり、この熱処理(POA処理)により処理前の値の1/5~1/10程度に減少した。また、C-V特性でも、ヒステレシスが0.4V程度と、この熱処理(POA処理)で約半分になった。
【0141】
更に、フーリエ赤外の吸収(FT-IR)スペクトルから、200℃での熱処理によってSiO膜15中の水分子の脱離が認められ、このことから、上述の電気特性の向上はトラップ準位として働く水分子の脱離によるものと見られる。
【0142】
XPS測定から求めたSiO膜の厚みは8.5nmで、熱処理前と変化はないが、C-V特性から求められるSiO膜の厚みは、7.6nmで、熱処理前より少し増加した値になる。これは、上記熱処理による水分子の離脱で誘電率が低減したことに因るとみられる。すなわち、C-V特性およびXPS測定から求めたSiO膜15の比誘電率を熱処理前後で比較すると、4.9(処理前)および4.4(処理後)と見積もられ、これは、処理前には膜中に極性の大きなHO(水分子)やOHイオンの存在で比誘電率が高く、処理後にはHOが脱離して比誘電率が低減したことによると考えられる。
【0143】
図10および図11は、1モルの硝酸(HNO)水溶液中、印加電圧20Vで形成したSiO膜15に対して、窒素中600℃で加熱処理したのち、これにMOSダイオードを形成して得たC-V特性図およびI-V特性図である。これによると、C-V特性中のヒステレシスはかなり小さくなり、また、I-V特性で、電極への印加電圧10Vおよび-10Vでのリーク電流密度は、約1×10-5A/cmおよび1×10-6A/cm程度であった。窒素中200℃での熱処理によってSiO膜15中のHOは除かれるが、OHイオンは500℃でないと除かれない。したがって、600℃での加熱処理による電気特性の向上は、OH基が除去されたことによるものである。
【0144】
一方、OHイオンは、水素雰囲気中200℃でのPOA処理、あるいは金属膜16形成後の熱処理(post-metallization annealing-以下、PMA処理という)で除去されることを確認したので、上記熱処理を水素雰囲気中200℃で実施することが水分子およびOH基の除去に有効であることがわかった。
【0145】
〔実施の形態2〕
図12は、実施の形態2で使用した半導体装置の製造装置の概略構成図である。すなわち、SiC基板上に二酸化シリコン膜を形成する方法を実施する酸化膜形成部の主要部の概略構成図である。
【0146】
被処理基板用のSiC基板111には、3C-SiC(100)エピタキシャル基板を用いた。このSiC基板は、抵抗率が0.016Ω-cm(ドープ濃度:4.50E+18cm-3)の結晶板上に、厚さ6μmのエピタキシャル層(ドープ濃度:1.25E+17cm-3)が形成されたものである。なお、ここでは、3C-SiC基板を用いたが、4H-SiC基板および6H-SiC基板等も適用できる。
【0147】
図12の装置では、まず、SiC基板111を、処理槽2内の1mol/Lの硝酸水溶液3に浸した状態で、SiC基板に電源4を接続する。そして、SiC基板111と処理槽2内に設置した白金の対極5との間に、所定の電圧を印加して、SiC基板111の表面に、二酸化シリコン膜6を形成する。このときの印加電圧は、処理槽2内に設置した三電極系の参照電極7で設定した定電圧となるようになっている。
【0148】
なお、SiC基板111の表面は、前処理として、RCA洗浄法による洗浄処理を行うことが好ましい。
【0149】
硝酸水溶液3中で、電源4からSiC基板111を正、対極5を負とし、かつ、参照電極7で設定した30Vの電圧(+30V)をSiC基板111に印加して、10分間処理した。その結果、SiC基板111表面に、均一な膜厚の二酸化シリコン膜6が形成された。なお、電圧印加は、参照電極7の電位を監視しながら定電圧を維持する定電位法により実施した。
【0150】
成膜時の印加電圧は、実用的には、参照電極7で設定する電圧を2~50V、好ましくは5~30Vの範囲とする。この範囲内とすれば、特に、反応速度の制御が容易となるため、膜質の制御も可能となる。
【0151】
硝酸水溶液3としては、0.01mol/L以上のものを用いることができる。
【0152】
図14は、SiC基板111の表面に形成された二酸化シリコン膜6の断面を示すSEM画像を示す図である。この図によれば、1μm前後の厚い二酸化シリコン膜6が得られていることが確認できた。
【0153】
印加電圧、硝酸水溶液3の濃度、および処理時間は、特に限定されるものではなく、目的とする膜厚に応じて、適宜設定を変更することができる。これらの条件の設定は、例えば、実施の形態1と同様とすることができる。
【0154】
図13は、この二酸化シリコン膜の形成方法を用いて製造したSiC-MOS型集積回路の断面図である。このSiC-MOS型集積回路は、SiC基板111に分離層12を形成し、ゲート酸化膜15およびゲート電極17、ソース電極18、ドレイン電極19を形成したものである。ここで、分離層12およびゲート酸化膜15のいずれも二酸化シリコン膜であり、上記の方法で形成することができる。なお、ソース電極18およびドレイン電極19の不純物層は、耐圧を向上するために、低濃度の不純物を用いて構成してもよい。また、分離層12の下に、p型不純物層を形成してもよい。さらに、SiC基板にトレンチを形成して、そのトレンチ内に、酸化膜を形成して、分離層12としてもよい。
【0155】
すなわち、被処理用のSiC基板111を、処理槽2内の1mol/Lの硝酸水溶液3に浸漬した状態で、SiC基板に、電源4を接続する。SiC基板111と処理槽2内に設置した白金の対極5との間に、三電極系の参照電極7で設定する定電圧を印加することによって、SiC基板111の表面に、例えば、膜厚10nmのゲート酸化膜15用二酸化シリコン膜、および、膜厚1μmの素子分離用の分離層12を形成した。これにより、低温プロセスで、SiC基板111の表面に、二酸化シリコン膜6を形成できる。従って、SiC基板の表面に、低温かつ短時間で界面準位の良好な二酸化シリコン膜を形成して、SiC-MOS型半導体装置およびそれを用いたSiC-MOS型集積回路を実現することができる。なお、形成した二酸化シリコン膜に所定のアニ-ル処理(窒化処理)を行ってもよい。これにより、二酸化シリコン膜の界面準位をさらに高めることができる。
【0156】
なお、図13のSiC-MOS型集積回路は、横型MOSFET(metal-oxide semiconductor field-effect transistor)を構成しているが、図15のようにパワーデバイス用の縦型パワーSiC-MOSFETを構成することもできる。
【0157】
図15は、上記の二酸化シリコン膜の形成方法を用いて製造した縦型SiC-MOSFETの断面図である。図15の縦型SiC-MOSFETは、SiC基板111の一方の面にドレイン電極19が形成されており、他方の面に、ゲート酸化膜15およびソース電極18が間隔を空けて形成されている。ゲート酸化膜15上には、ゲート電極17が形成されている。図15の縦型SiC-MOSFETも、図13のSiC-MOS型集積回路と同様にして製造することができる。ここでも、図13と同様に、ゲート酸化膜15は、SiC基板111への電圧印加により形成した二酸化シリコン膜である。
【0158】
以上のように、本発明によれば、SiC基板を硝酸溶液中で電圧印加して正電位に保ち、基板の表面に二酸化シリコン膜を形成するSiC基板の表面酸化方法を提供することができる。この方法は、半導体デバイスの製造に利用することもできる。すなわち、SiC基板に硝酸溶液中で電圧印加して、SiC基板の表面に、二酸化シリコン膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法として適用可能である。
【0159】
この方法を適用できる半導体装置としては、例えば、SiCによるパワーMOSFET,MOSIC,IC,LSIなどがあり、これらのゲート酸化膜、ゲート絶縁膜、素子分離層、および基板表面保護層などに利用することができる。
【0160】
このように、本実施の形態は、SiC基板を硝酸液中で電圧印加して正電位に保ち、基板表面に二酸化シリコン膜を形成することを特徴とする。また、本実施の形態は、SiC基板に硝酸溶液中で電圧印加して、前記基板の表面に、二酸化シリコン膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0161】
また、図示しないが、TEM解析を用いてSiC基板表面に、界面が極めて良好な二酸化シリコン膜が形成されていることを確認できた。つまり、本実施形態によれば、SiC基板表面に界面準位が良好な二酸化シリコン膜を容易に形成することが可能となる。
【0162】
このように、本発明によると、SiC基板を硝酸溶液中で、定電圧、例えば、3電極系の電気化学セルの参照電極で測定して2~50Vの電圧を印加して正電位に保ち、低温(例えば室温)、短時間で、SiC基板の表面に、薄い膜から厚い膜まで、任意の厚さの二酸化シリコン膜を容易に形成できる。例えば、数nm~1μm程度の二酸化シリコン膜を形成することができる。
【0163】
従って、印加電圧と時間とを制御することにより、SiC-MOS型トランジスタ(SiCMOS型半導体装置)の、ゲート酸化膜(例えば10~20nm)および分離層(例えば500nm~1μm)の形成が可能となる。さらに、そのSiC-MOS型トランジスタを備えたSiC-MOS型集積回路を構成することが可能となる。この場合、ゲート酸化膜および分離層の界面準位を大幅に低減できるため、横型SiC-MOS型トランジスタの性能を大幅に改善でき、高周波特性の良好なSiC-MOS集積回路を実現できる。なお、従来の方法では、SiC基板表面に、充分な膜厚の二酸化シリコン膜を形成できないため、SiC集積回路を実現することはできない。
【0164】
さらに、縦型パワーSiC-MOSのゲート酸化膜に用いても、当然、ゲート酸化膜の界面準位を大幅に低減できるため、そのスイッチング特性等を大きく向上できる。
【0165】
本発明によると、SiC基板に硝酸液中で電圧印加して、基板の表面に二酸化シリコン膜を形成する工程を含み、室温で、かつ短時間で、所定の厚さの二酸化シリコン膜を形成できる。
【0166】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明によれば、低電圧・低温で高品質の化学酸化膜を所望の厚さに形成すること、およびそのような化学酸化膜を備えた半導体装置を製造できるため、広範囲な電気電子機械産業において利用することができる。また、本発明は、例えば、パワーデバイス用の縦型SiC-MOSFETのゲート酸化膜,高周波デバイス用の横型SiC-MOSFETの分離層(分離酸化膜),およびSiC-MOS型集積回路のゲート酸化膜と素子分離用の分離酸化膜に用いるなどの半導体デバイスに利用することができる。さらにSiCの表面に二酸化シリコン膜を形成して利用する各種機能デバイス、例えば、SiCのメモリ用の容量酸化膜にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の実施の一形態に係るシリコン基板上への二酸化シリコン膜の形成に使用した製造装置の主要部構成を示す概略断面図である。
【図2】図2(a)~(f)は、本発明の実施の一形態に係るシリコン基板上に二酸化シリコン膜を形成する方法の工程を示す断面図である。
【図3】図2の方法によって得られたMOSキャパシタにおける容量(C)と電圧(V)との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1の二酸化シリコン膜における成長膜厚と時間との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1のMOSダイオードにおける電流と電圧との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1のMOSダイオードにおけるリーク電流密度とSiO2膜厚との相関を示すグラフである。
【図7】実施例1のMOSダイオードにおける電流と電圧との関係、および、容量と電圧との関係を示すグラフである。
【図8】図7のMOS構造を200℃で加熱処理後電極を形成した場合の電流と電圧との関係を示すグラフである。
【図9】図8のMOS構造における容量と電圧との関係を示すグラフである。
【図10】図7のMOS構造を600℃で加熱処理後電極を形成した場合の容量と電圧との関係を示すグラフである。
【図11】図10のMOS構造における電流と電圧との関係を示すグラフである。
【図12】実施の形態2で使用した半導体装置の製造装置の概略構成図である。
【図13】本発明の実施の形態2における横型MOSFETの断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2におけるSiC基板の表面に形成された二酸化シリコン膜の断面のSEM画像を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態2における縦型MOSFETの断面図である。
【符号の説明】
【0169】
1、11、 シリコン基板(半導体)
3 溶液(酸化性溶液)
15 二酸化シリコン膜(化学酸化膜)
111 SiC基板(半導体)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図14】
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