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明細書 :電磁鋼板の熱改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4478796号 (P4478796)
公開番号 特開2006-083416 (P2006-083416A)
登録日 平成22年3月26日(2010.3.26)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成18年3月30日(2006.3.30)
発明の名称または考案の名称 電磁鋼板の熱改質方法
国際特許分類 C21D   9/46        (2006.01)
C21D   1/34        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C22C  38/02        (2006.01)
H01F   1/16        (2006.01)
FI C21D 9/46 501A
C21D 1/34 H
C21D 1/34 S
C22C 38/00 303U
C22C 38/02
H01F 1/16 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2004-267640 (P2004-267640)
出願日 平成16年9月15日(2004.9.15)
審査請求日 平成19年4月13日(2007.4.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】西尾 一政
【氏名】池田 満昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】佐藤 陽一
参考文献・文献 特開2001-234303(JP,A)
特開2001-200347(JP,A)
特開2004-143558(JP,A)
特開2002-256336(JP,A)
特公平02-035022(JP,B2)
調査した分野 C21D 8/12, 9/46,501
C21D 1/02- 1/84
C22C 38/00-38/60
特許請求の範囲 【請求項1】
最終圧延後の電磁鋼板をオーステナイト領域の温度に急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度に急速冷却する加熱・冷却工程を3回~6回繰り返す熱処理を施して、平均結晶粒径を3~15μmに調製することを特徴とする電磁鋼板の熱改質方法。
【請求項2】
前記熱処理の繰り返しを加熱源として高周波電源もしくはレーザまたは双方を組み合わせて用いて行うことを特徴とする請求項1記載の電磁鋼板の熱改質方法。
【請求項3】
得られる電磁鋼板のSi含有量が2~4%であることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁鋼板の熱改質方法。
【請求項4】
得られる電磁鋼板の降伏強度が440MPa以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁鋼板の熱改質方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機などの高速回転用電気機器等に用いられる電磁鋼板の熱改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板はモータや発電機などの電気機器の鉄心材料として広く使用されている。
近年、地球温暖化防止に関する要請が一段と高まっており電気機器の高効率化も避けて通れない状況となっている。したがって、高周波鉄損の低い電磁鋼板が必要とされるようになってきている。一方で、工作機械、HDD用モータ、マイクロガスタービン等では高速回転化が進められている。これに対しては高速回転時の遠心力に耐える高強度な、言い換えると高い降伏強度を有する電磁鋼板が要求されている。
このため、高周波鉄損(以下、これを単に鉄損ということがある。)が低く、かつ高い降伏強度を有する電磁鋼板の開発が必要となっている。
ところが、冷延鋼板の分野では、一般に、両特性は二律背反の関係にあるとされている。
【0003】
降伏強度を高める観点からは、固溶強化の大きい元素を添加する方法が種々検討されている。しかしながら、これらの方法では、高周波鉄損を必ずしも十分に低減することができない。
この点に鑑み、Nb、Ni、Mnを所定量含有する高周波鉄損の優れた高張力無方向性電磁鋼板が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。この場合、Nb、Ni、Mnの添加により鋼の張力を高めるとともに、Niによってさらに高周波鉄損を構成する渦電流損およびヒステリシス損のうち、前者の渦電流損を低減することができるとされている。

【特許文献1】特開2003-342698号公報
【非特許文献1】久保田ら,まてりあ,42巻3号2003年,pp.242-244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電磁鋼板では、降伏強度は従来製品である珪素鋼板に対して2倍になるが鉄損が2倍となり、要求特性を十分満たすものではなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、高周波鉄損が低く、かつ高い降伏強度を有する電磁鋼板の熱改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電磁鋼板の熱改質方法は、最終圧延後の電磁鋼板をオーステナイト領域の温度に急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度に急速冷却する加熱・冷却工程を3回~6回繰り返す熱処理を施して、平均結晶粒径を3~15μmに調製することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電磁鋼板の熱改質方法は、前記熱処理の繰り返しを加熱源として高周波電源もしくはレーザまたは双方を組み合わせて用いて行うことを特徴とする
【0008】
また、本発明に係る電磁鋼板の熱改質方法は、得られる電磁鋼板のSi含有量が2~4%であることを特徴とする
【0009】
また、本発明に係る電磁鋼板の熱改質方法は、得られる電磁鋼板の降伏強度が440MPa以上であることを特徴とする
【発明の効果】
【0010】
本発明の電磁鋼板の熱改質方法は、オーステナイト領域の温度に急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度に急速冷却する加熱・冷却工程を少なくとも3回以上繰り返す熱処理を施すため、高周波鉄損が低く、かつ高い降伏強度を有する電磁鋼板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0012】
金属材料の結晶粒の粒径と降伏強度の関係は、ホールペッチの法則で知られているように、降伏強度は粒径の平方根に反比例する。したがって、降伏強度を向上させるためには、粒径は小さい方がよい。ところが、粒径は、鉄損とも相関があり、粒径が小さいほど、電気抵抗が高くなって鉄損を構成する渦電流損が低下する反面、鉄損を構成するヒステリシス損が増加する。本発明者等は、上記降伏強度、渦電流損およびヒステリシス損の3つの要素のバランスを検討するなかで、本発明を見出した。
【0013】
本発明の電磁鋼板の熱改質方法は、焼鈍後、表面処理をする前の素材に、図1の急速加熱・急速冷却のパターン例に示すように、オーステナイト領域の温度に急速加熱した後、オーステナイト領域以下の温度に急速冷却する加熱・冷却工程を少なくとも3回以上繰り返す熱処理を施す。図1中、Tsはオーステナイト領域の下限温度、Tfはオーステナイト領域の上限温度である。
加熱・冷却は、電磁鋼板全体に対して繰り返し行ってもよく、また、特定の同一部位に対して繰り返し行ってもよい。
これにより、従来の電磁鋼板よりも鉄損(高周波鉄損)が低く、かつ高い降伏強度を有する電磁鋼板を得ることができる。また、通常、数十μm以上程度ある電磁鋼板の結晶の粒径を小さくすることがでる。この電磁鋼板を使用した電気機器は高効率且つ小型で高速回転にも対応できる。なお、加熱・冷却工程の繰り返し回数が3回未満の場合、鉄損および降伏強度のいずれも顕著な改善効果を得ることができない。
【0014】
加熱・冷却工程の繰り返し回数は、好ましくは、6回以下とする。
繰り返し回数が6回を超えると、降伏強度はさらに高まるものの鉄損が増加する傾向がある。
【0015】
また、平均結晶粒径は、鋼種条件等に応じて熱処理条件を最適化して、好ましくは、3~15μmに調製する。
平均結晶粒径が3μm未満になると、降伏強度はさらに高まるものの鉄損が増加する傾向があり、一方、平均結晶粒径が15μmを超えると、鉄損および降伏強度のいずれも顕著な改善効果を得ることができない。
【0016】
熱処理は、好ましくは、加熱源として高周波電源またはレーザを用いて行う。レーザは、炭酸ガスやYAGレーザを好適に用いることができる。
この場合、いずれか1つの加熱源のみを用いて必要回数繰り返し熱処理を行ってもよく、あるいはまた、例えば、繰り返し回数4回のうち最初の3回は加熱源として高周波電源を用い最後の1回は加熱源としてレーザを用いる等、2つの加熱源を適宜組み合わせて必要回数繰り返し熱処理を行ってもよい。
【0017】
また、本発明の電磁鋼板の熱改質方法において、得られる電磁鋼板は、好適には、Siを2~4%含有する鉄合金である。
Siの含有量が2%未満になると、Siの存在による鉄損低減効果および降伏強度向上効果が損なわれ、一方、本発明の結晶粒径調製の効果により、コスト増要因となるSiの含有量を4%を超える値とする必要はなく、また、Siの含有量が4%を超えるとオーステナイト領域が消失するので本発明の熱処理効果を得ることができない。
【0018】
また、本発明に係る電磁鋼板の熱改質方法において、得られる電磁鋼板の降伏強度は、好適には440MPa以上である。
【実施例】
【0019】
図2に示す処理工程図において、圧延最終工程から出てきた3%Si-Fe電磁鋼板10にレーザビーム12を用いて本発明を適用した例を示す。
電磁鋼板10は、厚さ0.20mm、幅1000mmである。電磁鋼板10をローラ14で巻取りながらレーザビーム12による加熱と水冷機構16による水冷を交互に繰り返した。加熱は、電磁鋼板の組織がオーステナイト領域内に達する温度まで行い、冷却は、電磁鋼板の組織がオーステナイト領域以下、すなわち、オーステナイトとフェライトが共析する領域内に達する温度まで行った。
幅方向のレーザスキャン方法はガルバノスキャン方式を適用した。レーザは、炭酸ガスレーザ(出力2kW)を使用して、幅1.5mmの部分に対して300mm/秒の速度で照射した。
【0020】
熱処理後の電磁鋼板の鉄損は周波数10kHzにて測定し、降伏強度測定には引張り試験機を使用した。組織観察は腐食後に顕微鏡で行った。
結果を表1に示す。レーザビームを3回以上照射する実施例では、レーザビームを照射しない、または照射回数が2回以下の比較例より鉄損が小さく降伏強度が大きくなることが分る。実施例のフェライトの平均粒径は2~15μmの範囲であった。試料番号7は鉄損が比較例よりやや大きいものの降伏強度が著しく大きい。このため、用途によっては試料番号7の平均粒径が2μm以下でも適用することができる。
【0021】
【表1】
JP0004478796B2_000002t.gif

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電磁鋼板の熱改質方法における、急速加熱急速冷却の温度パターン例を示す図である。
【図2】本発明の電磁鋼板の熱改質方法の処理工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
10 電磁鋼板
12 レーザビーム
14 ローラ
16 水冷機構
図面
【図1】
0
【図2】
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