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明細書 :高分子固定化白金触媒及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4568802号 (P4568802)
公開番号 特開2006-198491 (P2006-198491A)
登録日 平成22年8月20日(2010.8.20)
発行日 平成22年10月27日(2010.10.27)
公開日 平成18年8月3日(2006.8.3)
発明の名称または考案の名称 高分子固定化白金触媒及びその使用
国際特許分類 B01J  31/28        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
C07F   5/02        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
C07F   7/10        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/28 Z
B01J 37/00 Z
C07F 5/02 C
C07F 7/08 X
C07F 7/10 F
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2005-011152 (P2005-011152)
出願日 平成17年1月19日(2005.1.19)
審査請求日 平成18年6月13日(2006.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】杉浦 正晴
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
【識別番号】100113022、【弁理士】、【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開2002-066330(JP,A)
国際公開第2004/024323(WO,A1)
特開2003-062468(JP,A)
特開昭63-178851(JP,A)
特開平04-357105(JP,A)
萩尾浩之 他,高分子Carcerand型白金触媒,日本化学会第84春季年会 講演予稿集 II,2004年 3月11日,page.1282
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C07F 5/02
C07F 7/08
C07F 7/10
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
白金を架橋高分子に担持させてなる高分子固定化白金触媒であって、架橋性高分子と白金を含む溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離により白金が担持された該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成され、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有することを特徴とするヒドロシリル化反応及びホウ素化反応のための高分子固定化白金触媒。
【請求項2】
前記架橋性高分子が更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有する請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記架橋性高分子がエポキシ基と水酸基をともに持ち、該高分子を加熱による架橋反応に付すことによって形成された請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記架橋性高分子が、スチレンを含む重合性モノマーの共重合体である請求項1~3に記載の触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、白金触媒を両親媒性の架橋性高分子中に固定することにより調整された高分子固定化白金触媒及びこの触媒を用いた有機合成反応方法に関し、より詳細には、この高分子固定化白金触媒を用いたヒドロシリル化反応、水素化反応、及びホウ素化反応に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を種々の担体に固定し触媒として使用する試みは古くから行われているが、その多くは窒素やリン原子の配位結合を利用しており一般に触媒活性が十分でなく、回収再使用するうちに金属が流出し活性が徐々に低下するなどの問題を有している。
近年、マイクロカプセル化を利用して金属触媒をポリマーに担持させた高分子固定化触媒が開発されている(非特許文献1~4)。しかしながら、これらの高分子固定化触媒においても、耐溶剤性が不十分であったり、反応の種類によっては担持された金属が漏れ出すという問題があった(特許文献1)。
また、微少白金クラスターをポリマーミセルに担持させて触媒として用いる報告がなされているが、このような金属-ポリマーミセル複合体はコロイド溶液として存在しているため安定性に問題があり、回収再使用が困難である(非特許文献5)。
このような中、本発明者らはパラジウム触媒を、マイクロカプセル化法により架橋基を有するポリスチレン系のコポリマーにナノサイズクラスターとして担持し、その後熱架橋させることで、安定に固定化する技術を開発した。この架橋高分子中のパラジウムは0価で、リン原子などのリガンドも配位していない状態でいながら極めて安定に存在している(特許文献2,3、非特許文献6,7)。
【0003】
一方、白金はパラジウムと同様に多くの化学反応を加速する重要な触媒であり、これまでに様々な無機物や有機化合物への固定化が試みられている(非特許文献8~10)。
しかしながら、これらの白金触媒には、反応性の低下や選択性の低下、回収再使用後の活性低下などの問題点が認められる。また通常、高分子担体への白金の固定化は、リン原子や窒素原子など白金に対して配位性の強い官能基を介して行われることから、他の配位子を導入して反応性や選択性を調整する目的には適さない。
ヒドロシリル化反応は、工業的にも実験室的にも重要な反応であり(非特許文献11)、工業用金属触媒としてはロジウムやマンガンが用いられている(非特許文献12,13)。この反応には均一系の白金も触媒活性を示すことが知られているが(非特許文献14)、回収が容易で、金属の漏出が無く、再使用時にも活性が低下しない固定化白金触媒が望まれている。
【0004】

【特許文献1】特開2002-66330
【特許文献2】特開2002-253972
【特許文献3】WO2004/024323
【非特許文献1】S.Kobayashi et al. J.Am.Chem.Soc. 120, 2985(1998).
【非特許文献2】S.Kobayashi et al. Org.Lett. 3, 2649(2001).
【非特許文献3】T.Ishida et al. Adv.Synth.Catal. 345, 576(2003).
【非特許文献4】S.Kobayashi et al. Chem.Commun. 2003, 449.
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc. 119, 10116(1997).
【非特許文献6】K.Okamoto et al. J.Org.Chem. 69, 2871(2004).
【非特許文献7】K.Okamoto et al. Org.Lett. 6, 1987(2004).
【非特許文献8】Hartley, F. R. "Supported Metal Compleses-A New Generation of Catalysts" D. Reidel Publishing Co., Dordrecht, Germany, 204頁、1985年
【非特許文献9】Miao, Q. J.; Fang, Z-P.; Cai, G. P. Catal. Commun. 4, 637(2003).
【非特許文献10】Drake, R.; Sherrington, D. C.; Thomson, S. J. Reactive and Functional Poymers, 60, 65(2004).
【非特許文献11】Ojima, I. "The Chemistry of Organic Silycon Compounds" Patai, S; Rapoport, Z., eds.; Wiley: New York, 1479頁、1989年
【非特許文献12】Michalska, Z. M.; Ostaszewski, B.; Strzelee, K. J. Organomet. Chem. 496, 19(1995).
【非特許文献13】Hilal, H. S.; Suleiman, M. A.; Jondi, W. M.; Khalaf, S.; Masoud, M. M. J. Mol. Catal. A. 144, 47(1999).
【非特許文献14】Speier, J. L.; Webster, J. A.; Barrnes, G. H. J. Am. Chem. Soc. 79, 974(1957).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒドロシリル化反応等の触媒として有用、且つ使用後の回収・再使用が容易で金属の漏出が無く、繰り返し使用しても活性の低下しない高分子固定化白金触媒及びこの触媒を用いた反応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を有するポリマー、即ち、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有するポリマーに白金を担持し、その後、該ポリマーを架橋して得られる高分子固定化白金触媒が、上記の様な課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、良溶媒に溶解した前記架橋性ポリマー及び白金の溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることにより相分離状態を起こす。その結果、白金は芳香環との相互作用により高度に分散した超微粒子状態で架橋性ポリマーの集合体に担持される。その後、この白金含有架橋性ポリマー集合体を架橋させることにより、白金は高い触媒活性を維持したまま安定に固定され、各種の反応に有効な高分子固定化白金触媒を得ることができた。本発明の高分子固定化白金触媒は、従来の固定化白金触媒に比べて、金属の漏出が少なく、回収再使用が容易で、回収後の活性低下も起こらない。さらに、架橋基を利用して樹脂、ガラス、ビーズ、等の担体への固定も容易である。
【0007】
即ち、本発明は、白金を架橋高分子に担持させてなる高分子固定化白金触媒であって、架橋性高分子と白金を含む溶液に、極性の異なる貧溶媒を加えることで相分離を生じさせ、相分離により白金が担持された該架橋性高分子を架橋反応に付すことによって形成され、該架橋高分子が、芳香族側鎖、親水性側鎖及び架橋基を有することを特徴とするヒドロシリル化反応及びホウ素化反応のための高分子固定化白金触媒である。

【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子固定化白金触媒は、アルケンやアルキンの水素化反応、ヒドロシリル化反応、又はビスホウ素化反応(T. Ishiyama, N. Matsuda, N. Miyaura, A. Suzuki J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 1101参照)において触媒活性を示し、白金錯体を用いる種々の触媒反応(Review: M. L. Clarke Polyhedron 2001, 20, 151; M. Studer, H.-U. Blaser, C. Exner Adv. Synth. Catal. 2003, 345, 45参照)に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の高分子固定化白金触媒は、白金がポリマー中の芳香環との相互作用により超微粒子として担持された形態を有する。
また、白金は0価であることが好ましい。
【0010】
白金を高分子に担持させる方法としては、このように担持出来る方法であれば特に限定されないが、例えば上記したごとき構造を有する高分子と白金前駆体とを、a)適当な極性の良溶媒に溶解させた後適当な極性の貧溶媒で凝集させる、b)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えて白金担持ミセル様集合体を形成させ、更に極性の貧溶媒で凝集させる、c)適当な非極性の良溶媒に溶解させた後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、d)極性の良溶媒に溶解した後適当な非極性溶媒を加えて白金担持ミセル様凝集体を形成させ、更に非極性の貧溶媒で凝集させる、ことにより行われる。この場合、a)及びb)の方法では、形成されたミセル様凝集体の内方向に疎水性側鎖が、外方向に親水性側鎖が位置することになり、c)及びd)の方法では、形成されたミセル様凝集体の外方向に疎水性側鎖が、内方向に親水性側鎖が位置することになる。
白金超微粒子は夫々のミセル様凝集体に於いて芳香族側鎖との相互作用により担持されている。
【0011】
尚、極性の良溶媒としてはTHF、ジオキサン、アセトン、DMF、NMPなどがあり、非極性の良溶媒としてはトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。良溶媒に溶解した架橋性高分子の濃度は用いる溶媒によっても異なるが、極性溶媒中で約0.1~100 mg/mLが好ましい。
【0012】
また、ここで、白金前駆体とは、白金を含む適当な化合物(例えば、酸化物、ハロゲン化物、配位子との錯体等)のことであるが、白金を適当な配位子と錯体を形成させたものが好ましい。このような配位子との錯体を使用する場合、前駆体中の白金は上記したごとき構造を有する高分子が有する芳香環との配位子交換により高分子に担持される。尚、白金前駆体中の白金が0価以外のものである場合にはミセル形成時に還元処理を行うことにより担持された白金を0価とすることが出来る。担持させる白金としては0価のものが好ましい。
【0013】
このような配位子として、例えば、1,5-シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhNC)、イソシアニド(RNC)、トリエチルアルシン(As(Et)3)、例えば、ジメチルフェニルホスフィン(P(CH3)2Ph)、ジフェニルホスフィノフェロセン(dPPf)、トリメチルホスフィン(P(CH3)3)、トリエチルホスフィン(P(Et)3)、トリtert-ブチルホスフィン(P(tBu)3)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy3)、トリメトキシホスフィン(P(OCH3)3)、トリエトキシホスフィン(P(OEt)3、トリtert-ブトキシホスフィン(P(OtBu)3)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、トリフェノキシホスフィン(P(OPh)3)等の有機ホスフィン配位子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、アセチルアセトナト、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、エチレン、カルボニル、アセテート、トリフルオロアセテート、ビフェニルホスフィン、エチレンジアミン、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、アセトニトリル、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、スルホネート、カーボネート、ハイドロオキサイド、ナイトレート、パークロレート、サルフェート等が挙げられ、中でも有機ホスフィン配位子が好ましく、特にトリフェニルホスフィン、トリt-ブチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリメチルホスフィン等が好ましい。中でも更にトリフェニルホスフィンが好ましい。
配位子の数は、調製の際に使用する高分子の種類や架橋反応条件等にもよるが、通常1~4個である。
【0014】
本発明の高分子は芳香族側鎖と親水性側鎖を有することを要し(両親媒性高分子)、更に架橋基を有することを要する。この高分子は更に芳香族側鎖以外の疎水性側鎖を有してもよい。これらの側鎖は高分子の主鎖に直接結合する。これら側鎖を複数種有していてもよい。また架橋基はこれらの側鎖のいずれに結合していてもよく、また高分子主鎖に直接結合してもよいが、好ましくは芳香族側鎖を含む疎水性側鎖若しくは親水性側鎖又は両者に、より好ましくは芳香族側鎖に結合する。
【0015】
芳香族側鎖として、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6~10、好ましくは6のものが挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、本明細書に於いて定義されている炭素数はその基が有する置換基の炭素数を含まないものとする。
アラルキル基としては、通常炭素数7~12、好ましくは7~9のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環はアルキル基、アリール基、アラルキル基などの疎水性置換基を有していてもよい。
【0016】
芳香環が有していてもよいアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、環状の場合には単環でも多環でもよく、通常炭素数1~20、好ましくは1~12のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
芳香環が有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、上記した如き芳香族基としてのアリール基及びアラルキル基と同様なものが挙げられる。
これら芳香環が有していてもよい置換基は、アリール基及びアラルキル基に於ける芳香環に通常1~5個、好ましくは1~2個置換していてもよい。
疎水性側鎖としてのアルキル基としては、上記した如き芳香環が有していてもよいアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0018】
芳香族側鎖以外の疎水性側鎖としては、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0019】
親水性側鎖としては、比較的短いアルキル基、例えば、炭素数が1~6程度のアルキレン基に-R(Rは-OH又はアルコキシ基、好ましくは-OHを表す。)が結合したものであってもよいが、-R(OR10、-R(COOR10又は-R(COOR10(OR10(式中、Rは上記と同様であり、Rは共有結合又は炭素数1~6、好ましくは共有結合又は1~2のアルキレン基を表し、R10はそれぞれ独立して炭素数2~4、好ましくは2のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)で表されるものが好ましい。より好ましい親水性側鎖として、-CH(OCOHや-CO(OCOH等が挙げられる。
【0020】
架橋基としては、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、及びチオール基、好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びチオイソシアネート基が挙げられ、これらの架橋基は必要に応じて単独又は組み合わせて用いてもよい。
【0021】
高分子に含まれる架橋基の好ましい組み合わせとしては、エポキシ基のみ、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基のみ、イソシアネート基と水酸基、イソシアネート基とアミノ基、イソシアネート基とカルボキシル基等が挙げられる。このなかで、エポキシ基のみ、及びエポキシ基と水酸基の組み合わせが好ましい。
高分子が架橋基を複数種有する場合、架橋基の結合位置に制限はないが、異なる位置の側鎖に含まれていることが好ましい。
【0022】
一方、架橋性高分子はこれら側鎖を有するものであればいかなるものであってもよいが、これら側鎖を有するモノマーを重合させたものが好ましい。またこのようなモノマーとして、付加重合のための二重結合や三重結合,例えば、ビニル基、アセチレン基など、好ましくはビニル基を持つものが好ましい。
【0023】
本発明の架橋性高分子の例として、下記の架橋性高分子が挙げられる。
(A)1)芳香族側鎖、親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子、
(B)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有する少なくとも1種のモノマーを重合又は共重合することにより得られる架橋性高分子、又は
(C)1)疎水性側鎖、架橋基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、2)疎水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマー、及び3)架橋基を有する親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーから成る群から選択される少なくとも2種のモノマーを共重合することにより得られる架橋性高分子であり、好ましくは(A)の架橋性高分子である。
ここで、同種のモノマーは2以上の異なるモノマーを含むものであってもよい。
【0024】
この1)芳香族側鎖、親水性側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは、下記一般式(化1)
【化1】
JP0004568802B2_000002t.gif
で表されるものが好ましい。
は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは水素原子を表す。
は炭素数6~14、好ましくは6のアリール基を表し、例えば、フェニル基、ナフチル基等、好ましくはフェニル基が挙げられる。
は上記の主鎖と同じであり、共有結合、炭素数1~6のアルキレン基、-R(OR10-、-R(COOR10-又は-R(COOR10(OR10-(式中、Rは共有結合又は炭素数1~6のアルキレン基を表し、R10はそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基を表し、m、n及びpは1~10の整数、oは1又は2を表す。)を表す。
は水酸基又はアルコキシ基、好ましくは水酸基を表す。
【0025】
2)芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは、下式(化2)
【化2】
JP0004568802B2_000003t.gif
で表されるものが好ましい。
及びRは独立して上記と同様に定義される。
11は水素原子又は炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキル基を表す。
このようなモノマーとしてスチレン系モノマーが好ましい。スチレン系モノマーとして、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、α-エチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられ、中でもスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0026】
3)架橋基を有する芳香族側鎖及び重合性二重結合を有するモノマーは上式(化1)で表され、そのアリール基(R)が以下に示す置換基を有するものであることが好ましい。
このような置換基として、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、水酸基、1級若しくは2級のアミノ基、アシルオキシ基、チオール基又は下式(化3又は化4)で表されるエポキシ基、好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、より好ましくはエポキシ基、カルボキシル基、最も好ましくはエポキシ基が挙げられる。これらは適当な基で保護されていてもよい。
【0027】
【化3】
JP0004568802B2_000004t.gif
【化4】
JP0004568802B2_000005t.gif
式中、Rは炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキレン基を表す。このアルキレン基は、直鎖状、分枝状又は環状でもよく、例えば、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,プロピレン基,メチルメチレン基,メチルエチレン基,エチルメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,シクロプロピレン基,シクロペンチレン基,シクロヘキシレン基等が挙げられる。

【0028】
及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6、好ましくは1~4、更に好ましくは1~2のアルキル基、好ましくは水素原子を表す。
はR又はRの結合する炭素原子3~6員の環を形成していてもよい。3~6員環として、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0029】
このようなポリマーと上記の白金前駆体を良溶媒に溶解した後、適当な貧溶媒を加えて相分離を起こすことにより、白金をポリマー凝集物又はミセル様集合体に取り込むことができる。この際、白金前駆体の配位子の一部もしくは全てが脱離する現象が認められる。また、白金は通常0価で固定されるが、白金前駆体がイオンの場合は相分離の際に還元処理することにより0価の白金として固定できる。ここで、良溶媒中のポリマーの濃度は約0.1~100 mg/ml、白金前駆体の量はポリマーに対して0.01~0.5(w/w)、貧溶媒の量は良溶媒に対して0.2~10(v/v)用いられ、貧溶媒の添加時間は通常10分~2時間かけて行われる。相分離の際の温度は特に制限はないが、通常室温で行われる。

【0030】
架橋反応は、架橋性官能基の種類により、加熱や紫外線照射により反応させることができる。架橋反応は、これらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、縮合剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。
架橋基を加熱により架橋させる際の温度は、通常50~300℃、好ましくは70~200℃、より好ましくは100~180℃である。
加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1~100時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは2~10時間である。
【0031】
このようにして得られた高分子固定化白金触媒中の白金は、超微小粒子として芳香環との弱い相互作用で結合していると考えられ、各種の反応、例えば、ヒドロシリル化反応やホウ素化反応に対して高い触媒活性を示す。

【0032】
ヒドロシリル化反応においては、基質としてアルケン又はアルキンを用いて、本発明の触媒の存在下でこれにSiRH(式中、Rは、同じであっても異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基、又はシリルオキシ基を表す。)で表されるヒドロシランを反応させる。触媒量は反応基質に対して白金として0.1%~10%(mol/mol)、溶媒は基質を溶解するものであれば制限は無いが、例えばヘキサン-水などの2相系溶媒が好ましい。反応温度は0℃~80℃で適宜選択すればよいが、好ましくは室温~50℃である。通常反応は早く、5分間から1時間程度で終了する。アルキンのヒドロシリル化反応では立体特異的にシス体が得られ、立体障害の大きなアルケンでも反応は良好に進行する。反応後は濾過により容易に触媒の回収が可能であり、回収された溶媒は洗浄乾燥するだけで再利用可能である。反応中及び回収時に触媒からの金属の漏出は認められず、繰り返し使用しても活性の低下は認められない。
【0034】
ホウ素化反応について、ビスホウ素化反応においては、基質としてアルケン又はアルキンを用いて、本発明の触媒の存在下でB(OR)-B(OR)(式中、Rは、アルキル基等を表す。)で表されるホウ素化合物を反応させる。また、アリル化合物のホウ素化反応においては、基質としてハロゲン化アリルを用いて、本発明の触媒の存在下でHB(OR)(式中、Rは、アルキル基等を表す。)で表されるホウ素化合物を反応させる。触媒量は反応基質に対し白金として1%~10%(mol/mol)、溶媒としては通常有機溶媒が用いられる。反応温度は室温~100℃で適宜選択できる。通常反応は、1時間から48時間程度で終了する。ビスホウ素化反応で得られるジホウ素化体は、ホウ素の変換反応により多置換アルケンの合成中間体などとして有用である。また、アリル化合物のホウ素化反応で得られるアリルホウ素化化合物は単離可能であり、また単離せずにカルボニル化合物のアリル化反応等に利用できる。これらのホウ素化反応に於いても、反応後は濾過により容易に触媒の回収が可能であり、回収された溶媒は洗浄乾燥するだけで再利用可能である。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0035】
製造例1
スチレン(13.42 g, 128.9 mmol)、4-vinylbenzyl glycidyl ether(3.06 g, 16.1 mmol)、tetraethyleneglycol mono-2-phenyl-2-propenyl ether(5.0 g, 16.1 mmol)、AIBN(189.6 mg, 1.15 mmol)をクロロホルム(20 mL)に溶解しアルゴン雰囲気下で48時間、還流条件下で加熱攪拌した。冷却後反応混合物をメタノール(600 mL)中に注いでポリマーを固化させた。デカントして上澄みを取り除いた後、少量のテトラヒドロフランに溶解し再びメタノールに注いだ。沈殿したポリマーを濾過し室温減圧下で乾燥した。16.2 gのポリマーを得た(収率76%)。
【0036】
1H-NMRの測定により、得られたポリマーの比は(スチレン/4-ビニルベンジルグリシジルエーテル/テトラエチレングリコール モノ-2-フェニル-2-プロペニルエーテル)の各モノマー単位の比(x/y/z)=83/11/6であった。また、重量平均分子量(Mw) は 38000であった。得られたポリマーの構造は下式で表される。
【化5】
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【実施例1】
【0037】
白金触媒の固定化方法を下式(化6)に示す。
【化6】
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テトラキストリフェニルホスフィン白金と製造例1で得たコポリマーとのTHF溶液にヘキサンを加えることによってコアセルベート化した。精製したマイクロカプセルの沈殿物を濾過により集めて洗浄し、乾燥後熱架橋することで高分子固定化白金触媒(以下「PI Pt」という。)を得た。
得られたPI Ptは元素分析の結果、白金原子1つに対して0.88個のリン原子を残しており、リン原子が残らなかったパラジウムの場合と異なる。この原因は白金原子のリン原子との親和性の強さによるものと考えられる。また、各種NMR(SR-MAS、31P-NMR)分析の結果、高分子中のリンは原料が酸化されたトリフェニルホスフィンオキシドの状態で残っていると推定される。
【実施例2】
【0038】
実施例1で得たPI Ptを4-フェニル-1-ブテンとペンタメチルジシロキサンとのヒドロシリル化反応に適用した。その結果を表1に示す。
【表1】
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水/ヘキサン(2/1)の混合溶媒中でおいて、反応は定量的に進行し、4回の回収再使用においても全く活性の低下が見られなかった。さらに、XRF及びICPを用いた分析によっても白金の漏出は全く認められなかった。
【実施例3】
【0039】
次に、実施例2と同じ方法により、PI Ptと他の白金触媒との活性の比較を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
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PI Ptでは30分間でほぼ定量的に目的物が得られたのに対し、ヒドロシリル化反応用触媒としてしばしば使用されている、Pt/Cではほぼ同程度の活性が、PtO2ではやや収率の低下が認められた。さらに、PI Ptの原料であるPt(PPh3)4では目的物の収率はわずか7%に低下した。同程度の収率が得られた活性炭固定化白金触媒からは、通常白金の漏出が起こることが知られていることから、漏出が無く、回収・再使用が容易なPI Ptは、本反応においてこれら通常の白金触媒に比べて有用であると言える。
【実施例4】
【0040】
次に、実施例2と同じ方法により、PI Ptを用いたヒドロシリル化反応の基質一般性を検討した。その結果を表3に示す。
【表3】
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エーテル結合やエステル結合、さらにはアミノ基を有するオレフィンに対しても、それらの官能基に影響を与えることなく反応は進行し、高収率で目的物を与えた(Entry 6,7,10)。アミノ基を有するオレフィンのヒドロシリル化反応は通常困難であることが知られており、この結果はPI Ptの有用性を増すものである。また、立体障害の大きいアルケンの場合にも反応は進行し、良好な収率でヒドロシリル化体が獲られた。さらに、2置換アルキンを基質とした場合には、対称、非対称いずれのオレフィンからもシス体のみが得られた(Entry 7,8)、末端アルキンからはα-付加体と、β-付加体の混合物が得られた(Entry 11)。これらの全ての反応において、白金の漏出は全く観察されなかった。
【実施例6】
【0042】
次に、実施例1で得たPI Pt触媒のジホウ素化反応への適用をジフェニルアセチレンとビス(ピナコレート)ジボロンをモデル基質として検討した。
アルゴン下、PI Pt(0.768 mmol/g, 5 mol%)に、ジフェニルアセチレン(0.27 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(0.25 mmol)、トルエン(1.5 mL)、ヘプタン(1.5 mL)をこの順で加え、80 ℃で24時間加熱した。室温に冷却後、反応混合物をヘキサンで希釈し、固体成分をろ別した。ろ液を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、内部標準物質として1,2,4,5-テトラメチルベンゼンを加え、1H NMR分析により生成物を定量した。その結果、下式に示すようにビスホウ素化生成物が収率98%で得られた。
【化8】
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本反応は0価のパラジウムがジボロン化合物に酸化的付加することから開始することが判っているので、本PI Pt触媒中の白金も0価状態で存在していることが推定される。
【実施例7】
【0043】
アルゴン下、PI Pt(1.093 mmol/g, 2.2 mol%)に、トルエン(2.5 mL)、トリエチルアミン(3.0 mmol)、ピナコールボラン(1.5 mmol)及び塩化シンナミル(1.5 mmol)をこの順で加え、50 ℃で15時間反応させた。0 ℃に冷却後、ベンズアルデヒド(1.1 mmol)を加え、0 ℃で5時間撹拌した。水を加え反応を停止し、エーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧濃縮した。内部標準物質として1,2,4,5-テトラメチルベンゼンを加え1H NMR分析により生成物を定量した。その結果、下式に示すようにanti-1,2-ジフェニルブタ-3-エン-1-オールが収率79%、>99%anti選択性で得られた。
【化9】
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