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明細書 :テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4522874号 (P4522874)
公開番号 特開2006-206514 (P2006-206514A)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
発明の名称または考案の名称 テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法
国際特許分類 C07D 217/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07D 217/02
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2005-021619 (P2005-021619)
出願日 平成17年1月28日(2005.1.28)
審査請求日 平成18年5月26日(2006.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】眞鍋 敬
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】岡部 佐知子
参考文献・文献 特公昭47-007381(JP,B1)
Organic Letters,2003年,5(12),2087-2090
Synthesis,1989年,(1) ,59-61
Chemical Communications, (Cambridge, United Kingdom),2003年,(7),916-917
Chemistry Letters ,2002年,(4),428-429
調査した分野 C07D 217/02
C07B 61/00
WPI
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
化学書資料館
特許請求の範囲 【請求項1】
m-チラミンと式R-CHO(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基または水素)で表されるアルデヒド化合物とを、触媒量のイッテルビウムトリフラートまたはインジウムトリフラート;及び合成ゼオライト、無水硫酸マグネシウムまたは無水硫酸カルシウムからなる脱水剤;の存在下で反応させることを特徴とする、1-R-6-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(Rは前記と同じ)の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イソキノリンアルカロイドやインドール誘導体の合成法として重要なピクテ-スペングラー反応の改良法に関するものである。より詳細には、触媒量のルイス酸としてイッテルビウムトリフラートまたはインジウムトリフラートを用いた、β-アリールエチルアミン化合物とアルデヒド化合物とのピクテ-スペングラー反応に関する。
【背景技術】
【0002】
ピクテ-スペングラー反応は、テトラヒドロイソキノリン類の重要な合成法の1つで、通常、β-アリールエチルアミン化合物とアルデヒド化合物とを酸触媒下に加熱することにより実施される。この反応では、まずシッフ塩基が形成され、これが酸触媒の存在下、芳香環のπ電子の求核攻撃により環化される。生成物は、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン類や、テトラヒドロ-β-カルボリン類であり、これらはイソキノリンアルカロイドやインドール化合物の合成中間体として、医薬品や染料などの分野で特に有用である(例えば非特許文献1~3)。
【0003】
このピクテ-スペングラー反応は古くから知られている重要な反応であるが、通常用いられている反応条件は、過剰量のブレンステッド酸を触媒として加熱還流するという過酷なものである。近年の天然物や医薬品の合成においては温和な条件下での反応が必須である場合が多く、強酸の使用や還流など過酷な条件は好まれない。さらには、環境保護やコスト削減などの観点から産業廃棄物の削減が急務であり、過剰量の酸触媒を使用する反応は時代遅れになってきた。
【0004】
そのため、現在でも、有効な触媒の検討、反応の位置選択性やエナンチオ選択性などの改良などが行われている(例えば非特許文献4、5,6、7)。
【0005】
この改良型ピクテ-スピングラー方法について、特表2001-510449号公報は、適切なルイス酸およびホルムアルデヒドを系中で生成することができる化合物の存在下で、アリールN-スルホニルエチルアミンの反応によって、テトラヒドロイソキノリン及び関連複素環式化合物を製造するための商業的な規模の方法を提案している。
【0006】
しかし、特許文献1で提案されている方法では、使用されるルイス酸はボロントリフルオロエーテレート(BF・OEt)、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化第二鉄(FeCl)等の、いわゆる古典的ルイス酸である。これらは反応性に富むためその取り扱いが難しいばかりでなく、特に水分の他に基質中の窒素によっても不活性化されてしまうことから、同文献に記載の反応では、基質の3倍モルという多量のルイス酸の使用が必要である。
【0007】
また、同文献の方法では、アルデヒドの使用はホルムアルデヒドのみであり、またβ-アリールエチルアミン中の窒素原子に隣接する原子は4級炭素でなければならず、かつアミノ基はトシル基で保護されていなければならないなど、利用可能な基質の範囲に制限が課せられている。
【0008】

【非特許文献1】Whaley, W. M., Govindachari, T. R.、 Organic Reactions;John Wiley & Sons出版(ニューヨーク)、6巻、151頁、1951年
【非特許文献2】Chrzanowska, M.; Rozwadowska, M. D.、 Chem. Rev. 104巻、3341頁、2004年
【非特許文献3】Cox, E. D., Cook, J. M.、Chem. Rev. 95巻、1797頁、1995年
【非特許文献4】Srinivasan, N., Ganesan, A.、Chem. Commun. 916頁、2003年
【非特許文献5】Bates, H. A.、J. Org. Chem. 46巻、4931頁、1981年
【非特許文献6】Germmen, C., Wanner, M. J., Koomen, G. J.、Tetrahedron Lett. 42巻、8885頁、2001年
【非特許文献7】Taylor, M. S., Jacobsen, E. N.、J. Am. Chem. Soc. 126巻、10558頁、2004年
【特許文献1】特表2001-510449号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、含窒素化合物群の効率的な合成法に繋がる、触媒量のルイス酸を用いた、より温和かつ反応管理の簡便な、改良された触媒的ピクテ-スペングラー反応を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イッテルビウムトリフラートまたはインジウムトリフラートを触媒量で使用することで、上記の課題を解決し得ること、さらに脱水剤を存在させることで反応収率や立体選択性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、β-アリールエチルアミン化合物とアルデヒド化合物とを、触媒量のイッテルビウムトリフラートまたはインジウムトリフラートの存在下で反応させることを特徴とする、テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法に関する。また本発明は、β-アリールエチルアミン化合物とアルデヒド化合物とを、触媒量のイッテルビウムトリフラートまたはインジウムトリフラート、ならびに脱水剤の存在下で反応させることを特徴とする、テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、医薬品等の原料または合成中間体として有用な1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン誘導体を、触媒量のイッテルビウムトリフラート(Yb(OTf))またはインジウムトリフラート(In(OTf))を用いることで、常温常圧という温和な条件下で高い収率ならびに位置選択性を伴って合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法で使用される触媒は、イッテルビウムトリフラート(Yb(OTf))またはインジウムトリフラート(In(OTf))である。これらは必要十分な触媒活性を有する一方、いわゆる古典的ルイス酸に比較してマイルドな触媒であり、水分にも窒素原子にも不活性化され難いなどの特徴を備えていることが明らかとなった。そのため、テトラヒドロイソキノリン類の製造反応においては、触媒量、例えば、基質1モル等量に対して0.05~10モル%、好ましくは0.2~5モル%存在させれば十分であり、このことは、操作の容易性のみならず、使用原料と廃棄物の削減などの利点も提供するものである。
【0014】
また、本発明の方法で使用される触媒は、種々のβ-アリールエチルアミン化合物とアルデヒド化合物とのピクテ-スペングラー反応を効果的に促進し、高収率でテトラヒドロイソキノリン化合物を与えるだけでなく、通常のルイス酸とは反応してしまうために使用することの出来ない水酸基やアミノ基を含む基質の反応にも有効である。さらに、生成物に芳香環上の位置異性体が生じる場合の位置選択性も高い。例えば、ベンゼン環のメタ位に水酸基を有するm-チラミンとベンズアルデヒドとの反応では、1モル%のYb(OTf)を触媒として用いた場合、収率59%で対応するテトラヒドロイソキノリン化合物が得られ、その位置異性対比は85:15となる(表1)。同じ反応を塩化第二鉄(FeCl)を使用して行った場合には、目的物の収率は11%にも満たない。
【0015】
本発明で使用可能なβ-アリールエチルアミン化合物は、ピクテ-スペングラー反応において基質となり得る化合物であればいずれも使用することができるが、アリール基上にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基または水酸基などの電子供与性基を有しているものが好ましい。その様な化合物の例としては、フェネチルアミン、m-チラミン、3-メトキシフェネチルアミン、3,4-もしくは3,5-ジヒドロキシフェネチルアミンなどを挙げることができる。
【0016】
また、本発明で使用可能なアルデヒド化合物は、式R-CHO(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基または水素)で表される化合物であれば、いずれも使用することができ、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ピリジルアルデヒド、t-ブチルベンズアルデヒドなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の方法では、脱水剤の存在下で所望の反応を進行させることにより、反応収率ならびに立体選択性を共に向上させることができる(表2)。本発明で利用可能な脱水剤は、モレキュラーシーブ(MS)MS3A、MS4A、またはMS5Aなどの合成ゼオライト、無水硫酸マグネシウムまたは無水硫酸カルシウムなどを挙げることができるが、MS3A、MS4Aまたは無水硫酸カルシウムの利用が好ましく、特に好ましい脱水剤はMS3Aである。脱水剤の添加量は、反応時の攪拌を妨げない範囲であればよく、基質1ミリモル当たり20~200mg、好ましくは50~100mgとすればよい。
【0018】
本発明の方法に使用される反応溶媒は特に制限はないが、キシレンやn-ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、クロロホルムや塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などの非プロトン系溶媒であればよく、好ましくはハロゲン化炭化水素系溶媒であり、特に好ましくは塩化メチレンである。また、本発明の反応は、常温常圧で行うことができ、高温高圧や還流操作を必ずしも必要とはしない。
【0019】
以下、実施例を示しさらに詳しく説明するが、これによって発明が限定されることはない。
【0020】
<実施例1~3>
【化1】
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【0021】
m-チラミン(0.2ミリモル)、ベンズアルデヒド(0.2ミリモル)、および10モル%のIn(OTf)(実施例1)またはYb(OTf)(実施例2ならびに3)を塩化メチレン(0.5ml)に溶解し、上記式の反応を25℃で24時間(実施例3では72時間)攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と塩化メチレンを加え、有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥剤を濾別したのち減圧濃縮した。残渣を調整用薄層クロマトグラフィーで精製することによりテトラヒドロイソキノリン誘導体(1および2)を得た。生成物の位置異性体比はH-NMRを用いて決定した。また、比較例として、RuCl、FeCl、FeCl、Zu(OTf)、Hf(OTf)、Sm(OTf)、Eu(OTf)、Tb(OTf)、Dy(OTf)、Er(OTf)を触媒として用いて、上記と同様の反応を行った。この結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
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【0023】
<実施例4~7>
【化2】
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【0024】
m-チラミン(0.2ミリモル)、ベンズアルデヒド(0.2ミリモル)、種々の希土類金属のトリフラート(0.02ミリモル)を塩化メチレン(0.5ml)に溶解し、脱水剤(20mg)を加え25℃で24時間(実施例4では8時間)攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と塩化メチレンを加え、有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥剤を濾別したのち減圧濃縮した。残渣を調整用薄層クロマトグラフィーで精製することによりテトラヒドロイソキノリン誘導体(1および2)を得た。生成物の位置異性体比はH-NMRを用いて決定した。この結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
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【0026】
<実施例8~10>
【化3】
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【0027】
脱水剤としてMS3A(40mg)を使用し、ルイス酸触媒としてのYb(OTf)の量を変え、他の条件は実施例5と同様の方法で、上記式の反応を行った。この結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
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【0029】
<実施例12~15>
【化4】
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【0030】
アルデヒド化合物(R-CHO)の種類を代え、他の条件は実施例8と同様の方法で、上記式の反応を行った。この結果を表4に示す。
【0031】
【表4】
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