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明細書 :立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4596932号 (P4596932)
公開番号 特開2006-206552 (P2006-206552A)
登録日 平成22年10月1日(2010.10.1)
発行日 平成22年12月15日(2010.12.15)
公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
発明の名称または考案の名称 立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法
国際特許分類 C07F   7/08        (2006.01)
C07F   7/20        (2006.01)
C07C 231/00        (2006.01)
C07C 233/47        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07F 7/08 X
C07F 7/20
C07C 231/00
C07C 233/47
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2005-024585 (P2005-024585)
出願日 平成17年1月31日(2005.1.31)
審査請求日 平成18年6月26日(2006.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】秋山 良
【氏名】磯田 武寿
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】野口 勝彦
参考文献・文献 特開平06-263682(JP,A)
特開2004-285059(JP,A)
特開2003-128680(JP,A)
日本化学会 編,実験化学講座24 有機合成IV-ヘテロ元素・典型金属元素化合物-,2000年 4月10日,第4版,150頁
調査した分野 C07C 231/00
C07C 233/47
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000020t.gif(式中、TMSはトリメチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000021t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000022t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TMS-O-TMSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000023t.gif(式中、TMS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TMS-O-TMSを得ると同時に、溶媒の沸点とTMS-O-TMSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTMS-O-TMSをケイ素成分として回収するステップ。
【請求項2】
アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000024t.gif(式中、TESはトリエチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000025t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000026t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TES-O-TESと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000027t.gif(式中、TES、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TES-O-TESを得ると同時に、溶媒の沸点とTES-O-TESの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTES-O-TESをケイ素成分として回収するステップ。
【請求項3】
アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000028t.gif(式中、TiPSはトリイソプロピルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000029t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000030t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TiPS-O-TiPSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000031t.gif(式中、TiPS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TiPS-O-TiPSを得ると同時に、溶媒の沸点とTiPS-O-TiPSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTiPS-O-TiPSをケイ素成分として回収するステップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法に関するものである。より詳しくは、ケイ素エノラートを用いて立体選択的合成反応を行った後に、副生したケイ素成分を回収して、ケイ素エノラートとして再利用するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体選択的合成プロセスにおいて、トリアルキルシリル基、中でもトリメチルシリル(TMS)基は保護基や材料の表面処理等の用途として重要で、通常はTMS-Y(Yは脱離基)の構造を有するシリル化剤として大量に使用されている。また、シリル基は有機合成において保護基としてばかりではく、立体選択性の改善にも有用である。特にケテンシリルアセタールやシリルエノールエーテルなどのケイ素エノラートは、アルドール反応やマンニッヒ型反応、ディールス・アルダー反応などで優れた立体選択性を発現することから、現代有機合成化学で最も重要なテーマである不斉合成反応の分野で広く用いられている。
特にアルデヒドとケイ素エノラートとのアルドール反応(化1)は、原料の種類あるいは組み合わせによって様々なアルドール生成体を得ることができる。また、得られたアルドール生成体は、水酸基・カルボニル基といった変換可能な置換基を有することから、有機合成における有用な中間体である。さらに原料の種類および光学活性な触媒を選択することで、光学活性なアルドール成績体を立体選択的に得ることもできる。近年開発された医薬品において、光学活性医薬品の占める割合は増加傾向にあり、光学活性なアルドール生成体は有望な中間原料である。
【0003】
【化1】
JP0004596932B2_000002t.gif

【0004】
(R1はアルキル基、アリール基、またはこれらの誘導体を示し、R2、R3、および、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、窒素原子、硫黄原子またはこれらの誘導体を示す。)
このアルドール反応において使用されるケイ素エノラートは各種のカルボニル化合物とTMS-Y(Yは脱離基として任意の置換基を示す)とから合成され、ここで導入されたTMS基はアルドール反応後に除去・廃棄される(化2)。すなわち、アルドール生成体のTMS基は、加水分解後に生成する水溶性のTMS-OH等の副生成物として廃棄されていた。このTMS-OHは反応性に富む低分子化合物であるためこれを定量的に回収することは困難であった。これは、シリル基を含む副生成物は単一の化合物ではない上、水溶性化合物である場合が多いことから、定量的な回収が困難なことに起因している。
【0005】
【化2】
JP0004596932B2_000003t.gif

【0006】
(R1はアルキル基、アリール基、またはこれらの誘導体を示し、R2、R3、および、R4は、 水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、窒素原子、硫黄原子またはこれらの誘導体を示し、Yは任意の脱離基を示す)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この出願の発明は、以上の通りの背景から、従来の問題点を解消し、アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応により生成するケイ素成分を定量的に回収し、これをケイ素エノラートとして再利用する手法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、この出願の発明は、第1には、アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法を提供する。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000004t.gif(式中、TMSはトリメチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000005t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000006t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TMS-O-TMSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000007t.gif(式中、TMS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TMS-O-TMSを得ると同時に、溶媒の沸点とTMS-O-TMSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTMS-O-TMSをケイ素成分として回収するステップ。
【0009】
この出願の発明は、第2には、アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法を提供する。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000008t.gif(式中、TESはトリエチルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000009t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000010t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TES-O-TESと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000011t.gif(式中、TES、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TES-O-TESを得ると同時に、溶媒の沸点とTES-O-TESの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTES-O-TESをケイ素成分として回収するステップ。
【0010】
この出願の発明は、第3には、アルデヒドとケイ素エノラートのアルドール反応による立体選択的合成プロセスにおけるケイ素成分の回収方法であって、以下のステップ含むことを特徴とするケイ素成分の回収方法を提供する。
ステップ1:ジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトールとの活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒の存在下、R1-CHO(R1はアルキル基またはアリール基を示す)で表される原料アルデヒドと、次式
JP0004596932B2_000012t.gif(式中、TiPSはトリイソプロピルシリル基、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を示すか、あるいは、R2が次式
JP0004596932B2_000013t.gifで表される1価の基、R3が水素原子、およびR4がメトキシ基を示し、全体として次式の化合物を構成する。
JP0004596932B2_000014t.gif)で表される原料ケイ素エノラート化合物とを、TiPS-O-TiPSと精密蒸留により分溜可能な沸点を有する成分からなる溶媒中でアルドール反応させ、次式
JP0004596932B2_000015t.gif(式中、TiPS、R1、R2、R3、およびR4は前記と同義である)で表される目的化合物の立体選択的合成を行うステップ、
ステップ2:ステップ1の反応液を蒸留し、蒸留液として溶媒とともに反応液中に存在する目的化合物以外のケイ素成分を分離するステップ、および、
ステップ3:ステップ2の蒸留液を濃硫酸で処理し、TiPS-O-TiPSを得ると同時に、溶媒の沸点とTiPS-O-TiPSの沸点の違いを利用して、精密蒸留によりTiPS-O-TiPSをケイ素成分として回収するステップ。
【発明の効果】
【0013】
ケイ素エノラートは医薬品や生理活性物質の合成プロセスにおいて不斉合成や立体選択的合成に有用であるが、以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、副生成物として廃棄されていたケイ素エノラート由来のケイ素成分を、単純な操作により低コストで高収率で回収可能となる。これにより、回収されたケイ素成分をケイ素源としてケイ素エノラートへの再生が可能となり、不斉合成を含む立体選択的合成プロセスにおけるコストの低減効果、および、廃棄物を削減による環境負荷の削減効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にこの出願の発明の実施の形態について説明する。
【0015】
この出願の発明の対象とする立体選択的合成プロセスは、ケイ素エノラートを使用するアルドール反応を用いた立体選択的な最終生成物を得るプロセスであって、不斉合成プロセスを含む。
【0016】
アルデヒドとケイ素エノラートによるアルドール反応は、具体的には次のような定法で行うことができる。アルゴン雰囲気下で、前もって調製しておいたジルコニウムとキラルリガンドであるハロゲン置換ビナフトール(BINOL)との活性錯体のモレキュラーシーブ(MS)固定化触媒(5~10 mol %程度)を高沸点溶媒に溶解し、添加剤の水(30 mol %程度)とアルコール(300 mol %程度)を室温下で加え、さらに原料アルデヒド、次いでもう一方の原料ケイ素エノラート化合物を5℃下で加え、そのまま一日撹拌する。原料アルデヒドおよび原料ケイ素エノラート化合物は、前記のものを用いることができる。
また、原料ケイ素エノラート化合物は各種のカルボニル化合物にシリル化剤TMS-Y、TES-Y、TiPS-Y(Yは任意の脱離基を示す)を作用させて作成することができる。なお、アルドール反応は室温以下の温度で行うことができるが、好ましくは5℃で行う。溶媒は、目的とする生成ケイ素エーテル化合物と精密蒸留により分溜可能な沸点を有する溶媒、好ましくは有機溶媒である。例えば、原料ケイ素エノラート化合物が次式
JP0004596932B2_000016t.gif(式中、R2、R3、およびR4は前記と同義である)の場合は、後述の通り生成ケイ素エーテル化合物がTMS-O-TMS(沸点101℃)となることから溶媒としては高沸点のo-キシレン(沸点144℃)が好ましい。一方、生成ケイ素エーテル化合物がTES-O-TES(沸点232℃)やTiPS-O-TiPS(沸点46~48℃/0.2mmHg)の場合は、低沸点のトルエン(沸点111℃)が好ましい。
【0017】
この出願の発明の方法によれば、立体選択的合成反応が完了後、合成反応液の一次分離操作を行う。ケイ素エノラートを利用する立体選択的合成プロセスにおいては、ケイ素成分として一般的にRa3Si-O-R(Raは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、または、TMS基、TES基、TiPS基などを示す)の混合物が生じる。この出願の発明によれば、適切な溶媒を用いることによって、合成反応後、溶媒およびこのケイ素成分の混合物を、合成の目的化合物およびキラルリガンドの混合物から分離することができる。この分離操作は好ましくは蒸留、より好ましくは減圧蒸留である。蒸留操作により、合成反応液が溶媒およびケイ素成分を含む蒸留液と、目的化合物およびキラルリガンドなどからなる蒸留残渣が分離される。
【0018】
さらに、この蒸留液に対して二次分離操作を行う。この出願の発明では前記分離操作で分離された溶媒およびケイ素成分を含む蒸留液に、濃硫酸を作用させてRa3Si-OHやRa3Si-OR(Raは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基を示し、Rはアルキル基、アリール基、Ra3Si基を示す)等のケイ素成分を、生成ケイ素エーテル化合物のTMS-O-TMS、TES-O-TES、またはTiPS-O-TiPSへ変換する。この操作によって原料ケイ素エノラート化合物が次式
JP0004596932B2_000017t.gif(式中、R2、R3、およびR4は前記と同義である)の場合、生成ケイ素エーテル化合物はTMS-O-TMSに変換される。生成ケイ素エーテル化合物は精密蒸留により溶媒と分離させ、定量的に回収することが可能である。具体的には、前記分離操作の回収液に濃硫酸(ケイ素成分に対して4当量)を5℃下で添加し、その後室温で30分強撹拌し、反応液を水洗、飽和重曹水洗、飽和食塩水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥後、吸引ろ過して生成ケイ素エーテル化合物を含む有機層を得る。これを常圧下で精密蒸留して、有機溶媒から生成ケイ素エーテル組成物を単離する。
【0019】
また一方で、立体選択的合成プロセスの目的化合物およびキラルリガンドについては、前記一次分離操作での蒸留残渣をカラム精製することにより、それぞれを分離・回収することができる。このキラルリガンドは定法により、キラルリガンドとして再利用できる。
最後に、生成ケイ素エーテル化合物は再生操作を行って原料ケイ素エノラート化合物として再利用することができる。生成ケイ素エーテル化合物のTMS-O-TMS、TES-O-TES、またはTiPS-O-TiPSは、定法によりシリル化剤TMS-Y、TES-Y、TiPS-Y(Yは任意の脱離基を示す)に変換し、さらに原料ケイ素エノラート化合物として再利用が可能である。たとえば、TMS-O-TMSは容易にシリル化剤TMS-Y(Yは脱離基)に容易に変換できる。すなわち、TMS-O-TMSに濃硫酸を溶媒としてNH4Clを反応することでTMS-Clを得ることができるし(Pray, P. O.; Sommer, L. H.; Goldberg, G. M.; Kerr, G. T.; Giorgio, P. A. D.; Whitmore, F. C. J.Am.Chem.Soc. 1948, 70, 433.)、TMS-O-TMSに無溶媒下でTfOTfと加温することでTMS-O-Tfを得ることができる(Aizpurua, J. M.; Palomo, C. Synthesis 1985, 206.)。この出願の本発明の方法により提供される生成ケイ素エーテル化合物は、このような公知の方法により、各種のシリル化剤への変換や、原料ケイ素エノラート化合物へ再生することが可能である(化3)。
【0020】
【化3】
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【0021】
R1、R2、R3およびR4は前記のものを示し、Yは任意の脱離基を示す)
そこで、以下に実施例を示し、この出願の発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例により、発明が限定されることはない。
【実施例】
【0022】
この出願の発明の不斉合成プロセスにおける実施例を示す。(R)-I4-ZrMS 26.35g(2.38 g/1 mmol)を3000ml ナスフラスコに測り取り、密栓後アルゴン置換した。室温下、脱水o-xylene 362mlを加えて10分間撹拌溶解し、次に蒸留水1.20g(66.45mmol)をisoPrOH 33.7ml(443mmol)に溶解して添加した。さらに10分後に、アルデヒド 55.14g(化合物1;220mmol)を固体で添加し、同時に脱水tBuOMe 22.1 mlを注射筒で加えて室温下10分間撹拌した。この懸濁溶液を氷浴で5℃に冷却し、2本の滴下ロートからそれぞれケテンシリルアセタール124.79g(化合物2;379mmol, 1.7eq)の脱水tBuOMe 510ml溶液、およびisoPrOH 33.7ml(443mmol)の脱水オルトキシレン 151ml溶液を同時に滴下した。滴下に要した時間は9時間であり、さらに5℃にて13時間撹拌した。
【0023】
撹拌後、真空ポンプ減圧下で溶媒を全て留去し、コールドトラップに回収した。1H-NMR測定から、溶液中には3種類のケイ素化合物(TMS-O-TMS, TMS-O-H, isoPr-O-TMS)が含有することが確認された。回収液に濃硫酸(156.7ml, 2.94mol)を5℃下で添加し、その後室温で30分間強撹拌した。反応液をそれぞれ150mlの水、飽和重曹水、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、吸引ろ過してTMS-O-TMS(化合物4)を含む有機層を得た。これを常圧下で精密蒸留して、有機溶媒から化合物4を63g(388mmol)単離した。
【0024】
一方、得られた残渣については、AcOEt 250ml, 0.5M KHSO4 aq 250 mlを加えて撹拌後、セライトろ過し、セライトをAcOEt 100mlで2回洗浄後分層し、水層をAcOEt 100mlで抽出した。あわせた有機層を、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄、のちNa2SO4で乾燥し、ろ過、濃縮してオレンジオイル157gを得た。カラム精製(SiO2 480g)によりAcOEt/Hexane=1/10溶出区分から(R)-3,3',6,6'-I4-BINOL(化合物3)を定量的に回収し、AcOEt/Hexane=1/1溶出区分から化合物5を89.0g(93.7% y. from 化合物1)得た。
【0025】
これより以下の反応経路で不斉合成プロセスが行われ、ケイ素成分およびキラルリガンド等の再利用が可能となったことが示される。
【0026】
【化4】
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