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明細書 :新規なルテニウム錯体を用いたアリル系保護基の除去方法及びアリルエーテル類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4910186号 (P4910186)
公開番号 特開2005-289977 (P2005-289977A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 新規なルテニウム錯体を用いたアリル系保護基の除去方法及びアリルエーテル類の製造方法
国際特許分類 C07F  17/00        (2006.01)
C07C  29/10        (2006.01)
C07C  33/025       (2006.01)
C07C  33/042       (2006.01)
C07C  33/22        (2006.01)
C07C  35/32        (2006.01)
C07C  37/055       (2006.01)
C07C  39/04        (2006.01)
C07C  41/09        (2006.01)
C07C  41/26        (2006.01)
C07C  43/166       (2006.01)
C07C  43/196       (2006.01)
C07C  67/29        (2006.01)
C07C  69/76        (2006.01)
C07D 213/79        (2006.01)
C07D 215/48        (2006.01)
C07D 217/26        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
C07B  51/00        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F  15/00        (2006.01)
FI C07F 17/00 CSP
C07C 29/10
C07C 33/025
C07C 33/042
C07C 33/22
C07C 35/32
C07C 37/055
C07C 39/04
C07C 41/09
C07C 41/26
C07C 43/166
C07C 43/196
C07C 67/29
C07C 69/76 Z
C07D 213/79
C07D 215/48
C07D 217/26
C07F 7/08 A
C07F 7/08 F
C07B 51/00 F
C07B 53/00 G
C07B 61/00 300
C07F 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2005-027096 (P2005-027096)
出願日 平成17年2月2日(2005.2.2)
優先権出願番号 2004068217
優先日 平成16年3月10日(2004.3.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月1日(2008.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】北村 雅人
【氏名】田中 慎二
【氏名】佐分 元
個別代理人の代理人 【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100095441、【弁理士】、【氏名又は名称】白根 俊郎
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100103034、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信久
【識別番号】100119976、【弁理士】、【氏名又は名称】幸長 保次郎
審査官 【審査官】藤原 浩子
参考文献・文献 Koelle, Ulrich; Buecken, Karin; Englert, Ulli,Enantioselective π-Complexation. Synthesis of Enantiomerically Pure Planar Chiral Ruthenocenes,Organometallics,1996年,15(5),1376-83
Buecken, Karin; Koelle, Ulrich; Pasch, Roland; Ganter, Beate,Cp*Ru Alkoxides with σ-Bridging Phenoxo Groups. X-ray Structure of [Cp*Ru(μ-OMe)(μ-OC6H3-2,4-(t-Bu)2)],Organometallics,1996年,15(13),3095-3098
Sheldrick, W. S.; Gleichmann, A.,η5-Pentamethylcyclopentadienylruthenium(II) complexes containing η6-coordinated α-amino acids,Journal of Organometallic Chemistry,1994年,470(1-2),183-187
調査した分野 C07F 17/00
C07C 29/10
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
キナルジン酸配位子又はピコリン酸配位子を有するシクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体。
【請求項2】
アリルエーテル類、アリル炭酸エステル類及びアリルエステル類からアリル基を除去する方法であって、キナルジン酸配位子又はピコリン酸配位子を有するシクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体存在下においてアルコールを含む溶媒中でアリル基を除去することを特徴とするアリル基の除去方法。
【請求項3】
アリルエーテル類が下記一般式(I)又は(II)で表される、請求項に記載のアリル基の除去方法。
【化1】
JP0004910186B2_000013t.gif
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、RはCCHCH、2-インダニル、CCH(CHC、C、CH=CHCHCHCH、又は
【化2】
JP0004910186B2_000014t.gif
を表す。
【化3】
JP0004910186B2_000015t.gif
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、RはCCO、CCH、CHOCH、又は(tert-C)(CSiを表す。
【請求項4】
キナルジン酸配位子又はピコリン酸配位子を有するシクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体存在下において、溶媒を使用することなくアリルアルコールとアルコールの混合物から脱水型アリル化反応によりアリルエーテル類を製造することを特徴とするアリルエーテル類の製造方法。
【請求項5】
キナルジン酸配位子又はピコリン酸配位子を有するシクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体存在下において、非プロトン性溶媒中でアリルアルコールとアルコールの混合物から脱水型アリル化反応によりアリルエーテル類を製造することを特徴とするアリルエーテル類の製造方法。
【請求項6】
非プロトン性溶媒がジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、アニソール及び酢酸メチルから選択される少なくとも一種を含有する、請求項に記載のアリルエーテル類の製造方法。
【請求項7】
アルコールが2-フェニルエタノール、シクロヘキサノール、2-インダノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエタノール、3-ブテノール、5-ヘキセノール、4-ペンチノール、フェノール及びラニオールから選択される、請求項乃至のいずれかに記載のアリルエーテル類の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル基等の保護基として有用なアリル基を、新規なルテニウム錯体を用いて除去する技術に関するものである。本発明はまた、該ルテニウム錯体を用いてアルコール類の触媒的脱水型反応によりアリルエーテル類を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保護基は、種々の官能基を有する有機分子の多段階合成において、極めて重要な働きを有する。その中でアリル基は、その構造の単純性、酸・塩基に対する安定性等からヒドロキシル基の保護基として有用であり、アリルエーテルが保護体として注目されている。
【0003】
最近の有機合成技術において行われる保護基の除去に関しては、高反応率及び官能基選択性に加え、工程の簡素化、経済性や環境調和性の要請も高まってきている。アリル基の除去に関しても様々な触媒的除去方法や、非触媒的除去方法が報告されている(例えば、非特許文献1乃至4参照。)。
【0004】
しかしながら、いずれの方法によってもアリル結合の切断には多段階を必要としたり、酸、塩基、還元剤の添加を要するなど、上記要請に充分対応できる技術は未だ存在しないのが実情である。
【0005】
一方、ヒドロキシル基の保護体として有用なアリルエーテルの合成に関しては、その多くがWilliamson型エーテル合成法に依存している(例えば、非特許文献5参照。)。かかる合成法は、高い化学収率で目的とするアリルエーテルを合成できるという利点はあるが、アルコールを金属アルコキシドないしハロゲン化アルキルに、アリルアルコールを対応するハロゲン化物かアルコキシドに変換しなければならず、基質を活性化して当量の金属塩が副生し二重の損失にとなるなど原子効率は低く、またEファクター((化学物質の製造において使用されるすべての物質量)-(製品として販売された物質量)/(製品として販売された物質量))も高い。更に、反応系が強塩基性となるために、化学選択性も低下する。
【0006】
理想的アリルエーテルの合成法の開発に向けて、これまでに酸触媒を用いる脱水縮合法(例えば、非特許文献6及び7参照。)、Hg(II)、Pd(II)又はCu(II)触媒を用いるオキシ金属化・脱ヒドロキシ金属化法(例えば、非特許文献8及び9、特許文献1参照。)、πアリル機構に基づく様々な触媒的手法(例えば、特許文献2参照。)、が報告されてきた。しかしながら、いずれも化学収率が低い、触媒効率が低い、アリルアルコールを過剰に用いなければならない、ジアルキルエーテルが副生する、オレフィンの異性化が併発する等の問題点を有していた。
【0007】
アルコールと1モル量のアリルアルコールから、余計な添加剤や溶媒を用いることなく、触媒的にアリルエーテルを合成することができれば理想的であるが、ヒドロキシル基の低脱離性、アルコールの低求核性により効率的合成法の実現は困難であるのが実情である。

【特許文献1】Oguchi, W.; Uchida, H. WO Patent 03/106024, 2003.
【特許文献2】特開平05-306246号公報
【非特許文献1】J. Cunningham, R. Gigg, C. D. Warren, Tetrahedron Lett. 1964, 1191-1196.
【非特許文献2】K. C. Nicolaou, C. W. Hummel, N. J. Bockovich, C. H. Wong, J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1991, 870-872.
【非特許文献3】T. Taniguchi, K. Ogasawara, Angew. Chem, Int. Ed. 1998, 37, 1136-1137.
【非特許文献4】A. Dahlen, A. Sundgren, M. Lahmann, S. Oscarson, G. Hilmersson, Org. Lett. 2003, 5, 4085-4088.
【非特許文献5】Williamson, A. W, J, Chem. Soc. 1852, 4,229.
【非特許文献6】Moffett, E. J. Am. Chem. Soc. 1934, 56, 2009.
【非特許文献7】Senderens, M. J.-B. Compt. Rend. 1925, 181, 698-701.
【非特許文献8】Watanabe, W. H.; Conlon, L. E.; Hwa, J. C. H. J. Org. Chem. 1958, 23, 1666-1668.
【非特許文献9】Dumlao, C. M.; Francis, J. W.; Henry, P. M. Organometallics 1991, 10, 1400-1405.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み開発されたものであり、その主たる目的は、いかなる添加剤も使用することなく、高反応率及び官能基選択性において単一工程によるアリル基の除去を可能とするアリル基の触媒的除去方法を提供することにある。さらに、本発明は、いかなる添加剤も使用することなく、アリルアルコールとアルコールとから触媒的脱水アリル化反応によりアリルエーテル類を高効率で製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、アリル基の触媒的除去において、触媒としてα位に窒素原子を有する有機酸を配位子に有するシクロペンタジエニルルテニウム(以下において、「CpRu」とも表記する。)錯体を用いた場合、後述するように、水素結合によってアリル基が著しく活性化され、求核性の極めて低いアルコールとでも反応することが可能となることにより、単一工程においてアリル基を効率的に除去することができることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明者等はまた、不活性なアリルアルコールを用いてもπアリル錯体を容易に形成することができれば、触媒的脱水型アリル化反応によりアリルエーテルの合成が可能になるとの知見の基、鋭意研究した結果、極微量の前記触媒CpRuを反応系に添加するのみで、目的とするアリルエーテルが収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明により、α-イミノ酸型配位子又はα-アミノ酸型配位子を有するシクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体が提供される。
【0011】
本発明の一態様において、α-イミノ酸型配位子はキナルジン酸又はピコリン酸であり、また、α-アミノ酸型配位子はプロリンであることが好ましい。
【0012】
また、本発明により、アリルエーテル類、アリル炭酸エステル類又はアリルエステル類からアリル基を除去する方法であって、前記シクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体存在下においてアルコールを含む溶媒中でアリル基を除去することを特徴とする、アリル基の除去方法が提供される。
【0013】
本発明の一態様において、アリルエーテル類は下記一般式(I)又は(II)で表される。
【化1】
JP0004910186B2_000002t.gif

【0014】
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、RはCCHCH、2-インダニル、CCH(CHC、C、CH=CHCHCHCH、又は
【化2】
JP0004910186B2_000003t.gif

【0015】
を表す。
【化3】
JP0004910186B2_000004t.gif

【0016】
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、RはCCO、CCH、CHOCH、又は(tert-C)(CSiを表す。
【0017】
また、本発明により、アリルエーテル類の製造方法であって、前記シクロペンタジエニルルテニウム(II)錯体又は(IV)錯体存在下において、溶媒を使用することなく、あるいは非プロトン性溶媒中において、アリルアルコール類とアルコール類の混合物から脱水型アリル化反応によりアリルエーテル類を製造することを特徴とするアリルエーテル類の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の一態様において、前記非プロトン性溶媒はジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、アニソール及び酢酸メチルから選択される少なくとも一種を含有する。
【0019】
また、他の態様において、前記アルコールは2-フェニルエタノール、シクロヘキサノール、2-インダノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエタノール、3-ブテノール、5-ヘキセノール、4-ペンチノール、フェノール及びラニオールから選択される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、アリル系保護基の除去並びにアリルエーテル類の製造において、温和な条件で高い反応性を示す新規なルテニウム錯体が提供された。また、触媒を添加する以外に余分な添加剤を要しない、アリル基の効率的な除去技術、並びにアリルエーテル類の効率的な製造技術が提供された。本発明により提供されたこれら技術は、高反応率及び官能基選択性、工程の簡素化、経済性や環境調和性等の要請を充分満たすものであり、工業的にも極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明により提供される新規なルテニウム錯体は、ヒドロキシル基等の保護基であるアリル基の除去において極めて優れた触媒作用を示すものであり、α-イミノ酸型配位子又はα-アミノ酸型配位子を有するCpRu(II)錯体又は(IV)錯体(以下において、「本発明のCpRu錯体」ともいう。)である。
【0022】
本発明者等は、アルコール系溶媒中におけるCpRu触媒を用いたアリル基の除去において、CpRu(II)錯体又は(IV)錯体の配位子として、α位に窒素原子を有する有機酸を用いた新規な錯体を使用することにより、大気圧下においてアルコール系溶媒中で基質を反応させるのみでアリル基を効率的に除去できることを見出した。すなわち、かかる新規な触媒存在下においては、例えば基質がアリルエーテル類である場合には、アルコール系溶媒中で形成される基質触媒複合体において、基質のアリルエーテル部の酸素原子と配位子の酸部の水素原子とが水素結合を形成し、この結合によってアリル基の求電子性が向上する一方、Ruイオンの求核性は電子供与性のCpとsp窒素原子が配位することにより高められる結果、触媒のRuイオンが求核反応することができるようになり、アリル基の除去に優れた触媒作用を及ぼす。なお、本発明において「アルコール系溶媒」とは、アルコール溶媒又はアルコールを含む混合溶媒をいう。
【0023】
本発明においてα位に窒素原子を有する有機酸としては、α-イミノ酸型配位子又はα-アミノ酸型配位子が用いられ、特にα-イミノ酸型配位子はより高い活性を示すため、本発明において好適に用いられる。具体的にはキナルジン酸、ピコリン酸等が挙げられ、中でもキナルジン酸が高い反応率を示し特に好ましい。また、α-アミノ酸型配位子としてはプロリン等を挙げることができる。本発明のCpRu(II)錯体及び(IV)錯体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば[CpRu(CHCN)]PFとα-イミノ酸又はα-アミノ酸とをアルコール系溶媒中で混合し製造することができる。用いる溶媒としては、[CpRu(CHCN)]PFとα-イミノ酸又はα-アミノ酸を溶解できるものであれば特に限定されない。
【0024】
本発明のCpRu(II)錯体又は(IV)錯体を用いれば、いかなる添加剤も要することなく、大気圧下、アルコール系溶媒中で反応させるのみで高反応率でアリル基を除去することができる。アリル化合物の中でも、特にアリルエーテル類はアリル基の除去が困難であったところ、本発明のCpRu(II)錯体又は(IV)錯体はアリルエーテル類に対しても極めて優れた触媒作用を示す。
【0025】
本発明によるアリル基の除去方法の一態様は、本発明のCpRu(II)錯体又は(IV)錯体の存在下において、アルコール系溶媒中でアリルエーテル類、アリル炭酸エステル類、アリルエステル等のアリル化合物からアリル基を除去するものであり、大気圧下、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気において行うことができる。
【0026】
アルコール系溶媒としては、基質及び本発明のCpRu錯体を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒を単独または2種以上混合して用いることができる。また、基質及び本発明のCpRu錯体を溶解できる範囲において、アルコール溶媒と共にジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒を用いることもできる。
【0027】
反応温度及び反応時間は、各々0℃付近から100℃、数分から数時間を目安として適宜設定することができる。また、基質/触媒比(モル比)は、反応温度、反応時間等に応じて適宜設定することができる。
【0028】
基質となるアリルエーテル類の具体例としては、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物を挙げることができる。本発明の
【化4】
JP0004910186B2_000005t.gif

【0029】
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、Rは以下の通りである。
【0030】
(1a)R:CCHCH
(1b)R:2-インダニル、
(1c)R:CCH(CHC、
(1d)R:C
(1e)R:CH=CHCHCHCH、又は
(1f)R
【化5】
JP0004910186B2_000006t.gif

【0031】
を表す。
【化6】
JP0004910186B2_000007t.gif

【0032】
式中、Rは置換されていてもよいアリル基を表し、Rは以下の通りである。
【0033】
(2a)R:CCO、
(2b)R:CCH
(2c)R:CHOCH、又は
(2d)R:(tert-C)(CSi、を表す。
【0034】
本発明の除去技術においては、高反応率でアリル基を除去できるのみならず、上記一般式(II)で表されるような多官能性化合物においては、アリル基のみを高い選択性をもって除去することができる。
【0035】
本発明者等はまた、本発明のCpRu(II)錯体又は(IV)錯体による上記触媒作用が、アルコール類の脱水型アリル化反応によるアリルエーテル類の生成においても優れた作用効果を示すことを見出した。
【0036】
すなわち、本発明によるアリルエーテル類の製造方法の一態様は、本発明のCpRu錯体の存在下において、溶媒を使用することなくアリルアルコール類とアルコール類の混合物から脱水型アリル化反応によりアリルエーテル類を製造するものであり、他の態様は、前記触媒の存在下、溶媒として非プロトン性溶媒を用い、該溶媒中においてアリルアルコール類とアルコール類の混合物から脱水型アリル化反応によりアリルエーテル類を製造するものである。
【0037】
上述したアリル基の除去方法ではアルコール系溶媒(プロトン性溶媒)を使用するのに対し、アリルエーテルの製造方法では、同一の触媒を用いた触媒型反応において溶媒を使用しないか、あるいは非プロトン性溶媒を使用することを特徴とする。非プロトン性溶媒は特に限定されるものではなく、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、アニソール又は酢酸メチル等を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0038】
基質であるアルコールは所望とするアリルエーテルの種類に応じて選択することができ、例えば、2-フェニルエタノール、シクロヘキサノール、2-インダノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエタノール、3-ブテノール、5-ヘキセノール、4-ペンチノール、フェノール及びラニオール等を挙げることができる。また、アリルアルコールとアルコールとの混合比率は特に限定されるものではなく、基質の種類等に応じて適宜設定することができるが、1:1~1:2が好ましい。

【0039】
反応温度及び反応時間は、各々0℃付近から100℃、数分から数時間を目安として適宜設定することができる。また、基質/触媒比(モル比)は、反応温度、反応時間等に応じて適宜設定することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0041】
1.脱アリル化反応
(実施例1)
本発明のCpRu(II)錯体として、[CpRu(CHCN)]PF-キナルジン酸複合系を使用した場合における、一般式(I)で示されるアリルエーテル類に対する脱アリル化反応の結果を表1に示す。反応は、特段の記載が無い限り、メタノール中30℃において、[[CpRu(CHCN)]PF]=[キナルジン酸]=1mMにおいて行った。
【表1】
JP0004910186B2_000008t.gif

【0042】
表1に示すように、触媒として[CpRu(CHCN)]PF-キナルジン酸複合系を用いた場合には、基質がアリルエーテル類であっても反応率は極めて高く、No.1においては、30分以内に反応が完了している(表1中、No.1)。アリル基の除去は、基質/触媒比が1000でも達成され(No.3)(反応温度30℃)、該比は、反応温度70℃においては10000においてもアリル基の除去は達成され得る(No.4)。メタノール以外に、エタノール及びイソプロピルアルコールもまた溶媒として使用することができるが(No.5、6)、tert-ブチルアルコールは、触媒系の溶解度がメタノール等に比較して低いため、収率が少し低くなっている(No.7)。水、DMF、THF、ジクロロメタンは、メタノールとの混合溶媒として使用できることがわかる(No.8~11)。
【0043】
1a、1b及び1cの第1級、第2級及び第3級アルキルアリルエーテル(No.2,12及び13)や、アリルフェニルエーテル(1d)もまた高反応率において脱アリル化されている(No.14)。アリル4-ペンテニルエーテル(1e)はいかなるオレフィン異性化もなしに4-ペンテノールに変換される(No.15)。アセチレン含有アルキルアリルエーテル(1f)を用いた反応における収率はわずかに減少するが、94%と依然として高い(No.16)。
【0044】
(実施例2)
本発明によるアリル基除去における官能基選択性について、一般式(II)に示す(±)-トランス-1,2-シクロペンタンジオール類を用いて検討した。ここで、一つのヒドロキシル基はアリルエーテルとして保護され、他方のヒドロキシル基は安息香酸(2a)、ベンジルエーテル(2b)、メトキシメチルエーテル(2c)、又はtert-ブチルジフェニルシリルエーテル(2d)として保護されている。すべてのケースにおいて、アリル基だけが99%超の収率をもって除去された。([2a~d]==100mM、[触媒]=1mM、30℃、0.5~4時間)。
【0045】
(実施例3)
20mLのシュレンク型反応管に、アルゴン気流下、[CpRu(CHCN)]PF(27mg、62μmol)とメタノール(5.5mL)を加えた。ここに100mMのキナルジン酸のメタノール溶液(0.62mL、62μmol)を加え、24℃において30分間放置した。次いで、得られた赤茶色の溶液を、2-フェニルアリルエーテル(5.0g、31mmol)とメタノール(51mL)が入っている150mLヤングバルブ付きシュレンク型反応管に移動し、30℃において3時間撹拌した。GC分析の結果、2-フェニルエタノールを99%の収率で得た。(キャピラリーカラム、J&W Scientific DB-WAX (0.25mm x 15m); カラム温度, 50-150℃; 昇温速度, 10℃/分; 検出温度, 250℃; キャリアガス, ヘリウム; カラム圧, 118kPa; スプリット比, 100:1)。反応溶液を減圧下において濃縮し、得られた粗生成物を蒸留(55℃/0.01mmHg)することにより、純粋な2-フェニルエタノール(3.7g)を98%の収率で得た。
【0046】
2.触媒的脱水型アリルエーテル合成方法
(実施例4)無溶媒反応系
標準基質として2-フェニルエタノールをとりあげ、1モル量のアリルアルコールと、2000分の1量の[CpRu(CHCN)]PFと2-キノリンカルボン酸(キナルジン酸)、又は2-ピリジンカルボン酸(ピコリン酸)からなる本発明の触媒2種を用いて、70°C下30分後のアリル2-フェニルエチルエーテルの生成量をGC分析により測定した(キャピラリーカラム、J&W Scientific DB-WAX (0.25 mm x 15 m); カラム温度、50-250 °C; 昇温速度、10 °C/分; tR (2-フェニルエタノール) 6.0分; tR (アリル2-フェニルエチルエーテル) 4.0分; 検出温度、250 °C; キャリアガス、ヘリウム; カラム圧、50 kPa; 流速、3.5 mL/秒)。その結果を表2に示す。いずれの触媒を用いた場合もかなり高い活性を示し、本条件下では特に配位子として2-キノリンカルボン酸を用いてなる触媒を使用した場合の活性が高く、反応条件下収率は66%となり、6時間後には90%に達した(番号1)。
【表2】
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【0047】
次いで、高活性を示した2-キノリンカルボン酸を配位子に用い、反応条件を最適化した。結果を表3に示す。
【表3】
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【0048】
(実施例5)非プロトン性溶媒を用いる反応系
表4に非プロトン性溶媒としてジクロロメタンを用いた場合の[CpRu(CHCN)]PFに対する配位子の反応促進効果の結果を示す。基質濃度100 nM、基質触媒比100、還流下、アリルアルコールを1モル量用い、30分後の生成物の収率を比較した。本条件においては、無溶媒条件の場合と同様に、2-キノリンカルボン酸の活性が1-イソキノリンカルボン酸、3-イソキノリンカルボン酸、2-ピリジンカルボン酸に比較して5-50倍高い(番号1-4)。2-ピリジンカルボン酸のカルボキシル基をヒドロキシメチル基、カルボメトキシル基に置き換えると活性は消失した(番号5、6)。同様に、2-(アミノメチル)ピリジン、2-ピリジンカルボン酸ナトリウム塩においてもジクロロメタン中では全く活性を示さなかった(番号7、8)。ピペリジンカルボン酸の活性もない(番号9)。ジフェニルホスフィノ酢酸は1,3-水素移動生成物から誘導されたと考えられる、1,1-ジ(2-フェニルエトキシ)プロパンを与える(番号10)。
【表4】
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【0049】
次いで、高活性を示した2-キノリンカルボン酸を配位子に用い、反応条件を最適化した。結果を表5に示す。
【表5】
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