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明細書 :DNAを用いた透明電極の作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4617460号 (P4617460)
公開番号 特開2006-207010 (P2006-207010A)
登録日 平成22年11月5日(2010.11.5)
発行日 平成23年1月26日(2011.1.26)
公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
発明の名称または考案の名称 DNAを用いた透明電極の作製方法
国際特許分類 C23C  18/31        (2006.01)
C23C  18/30        (2006.01)
C23C  18/44        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01L  21/288       (2006.01)
G02F   1/1343      (2006.01)
FI C23C 18/31 A
C23C 18/30
C23C 18/44
H01B 13/00 503B
H01L 21/288 E
G02F 1/1343
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2005-024545 (P2005-024545)
出願日 平成17年1月31日(2005.1.31)
審査請求日 平成20年1月22日(2008.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】居城 邦治
【氏名】佐藤 壮人
【氏名】松尾 保孝
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開2002-184752(JP,A)
特開2002-371094(JP,A)
特開2001-168574(JP,A)
特開平10-312715(JP,A)
特開2002-068782(JP,A)
調査した分野 C23C 18/00 -20/08
G02F 1/1343
H01L 21/288
H01B 13/00
H01B 5/00 - 5/16
特許請求の範囲 【請求項1】
透明電極の作製方法であって、
基板上にDNAの網目状構造体を作製する工程、
DNAの網目状構造体をポリマーに転写する工程、および
転写されたDNAを無電解メッキする工程を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
上記ポリマーが、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記基板上にDNAの網目状構造体を作製する工程では、無電解メッキ触媒核を構成する化合物を含むDNA水溶液を基板上に滴下した後、当該無電解メッキ触媒核を構成する化合物を還元することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記DNA水溶液に、マグネシウムイオンまたはカルシウムイオンが添加されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記無電解メッキ触媒核を構成する化合物が白金化合物であることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
上記白金化合物が、シス-ジアミンジクロロ白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)カリウムおよびエチレンジアミンジクロロ白金(II)からなる群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記DNAを無電解メッキする工程で用いられる無電解メッキ液が、銀-アンモニア錯体とヒドラジン、銀-アンモニア錯体とグルコース、銀-アンモニア錯体とホルマリンおよび塩化銅とホルマリンからなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法により作製されることを特徴とする透明電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAを用いた透明電極の作製方法および当該方法を用いて作製される透明電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明電極は、エレクトロニクス製品、特に液晶パネルなど光透過性が求められる部分において必要不可欠な部品となっている。現在、電子デバイス用透明電極として用いられる素材としては、ITO(インジウムチタンオキサイド)が大部分を占める。ところが、ITOに用いられるインジウムは、近年、資源の枯渇に伴い高騰しており、今後の使用は益々困難になると考えられている。そのため、透明電極の研究・開発の対象は酸化亜鉛系といったインジウムフリーの材料へと移りつつある。
【0003】
また、透明電極の作製方法についても材料と密接な関係があり、様々な方法が提案、実用化されている。主な方法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法などが挙げられる。具体的には、例えば、特許文献1には、スパッタ法を用いた透明電極の作製方法が開示されている。また、特許文献2には、メッキを用いて透明電極を作製する方法が開示されている。しかしながら、近年求められている有機基板への製膜技術が困難であるという問題や、製膜のコスト面からは、化学的な手法を用いた場合よりも圧倒的に高くなるという問題が生じている。
【0004】
通常、電極の材料としては、金、銀、銅などの貴金属が、導電性、加工性の面から最も一般的に用いられている。しかしながら、これらの貴金属をスパッタ法やメッキなどを用いて基板上に積層させた場合は、光透過性を大きく損ない、透明という大原則が崩れることになる。

【特許文献1】特開2004-332030号公報(公開日:平成16年11月25日)
【特許文献2】特開2003-109435号公報(公開日:平成15年4月11日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電体として最も優れている貴金属は、微小な構造体を作製することで電極として利用することが可能である。しかし、数百ナノメートル以上のサイズである場合は、散乱効率の良い物体となり、光透過性は著しく低下する。また、通常行われているように、金属蒸着により、膜厚数十ナノメートルの非常に薄い膜を作製したとしても、透過率の減衰が生じる。そこで、完全に表面を被覆するのではなく、数ナノメートルレベルの金属構造体を作製することにより、光透過性を維持しつつ、電気伝導性を持つ電極を作製することが必要とされる。
【0006】
また、透明電極が利用される液晶ディスプレイは急速に普及しており大型化が期待されている。しかし、蒸着などの手法を用いて大面積の透明電極を作製するためには大型の蒸着装置が必要であり、コストが高くなるという問題がある。そこで、現在行われている蒸着などの手法に比べ、極めて簡易で効率良く電極を作製する技術が必要とされている。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光透過性を維持しつつ、電気伝導性を持つ電極を、簡易かつ効率良く作製する方法、および当該方法により作製された透明電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、基板上にDNAの網目状構造体を作製し、これを柔軟かつ透明なポリマーに転写し、転写されたDNAを無電解メッキすることで、従来にない透明電極を作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る透明電極の作製方法は、基板上にDNAの網目状構造体を作製する工程、DNAの網目状構造体をポリマーに転写する工程、および転写されたDNAを無電解メッキする工程を包含することを特徴としている。上記構成により、光透過性の高い透明電極を簡易かつ効率良く作製することができる。
【0010】
上記、ポリマーはポリジメチルシロキサンであることが好ましい。
【0011】
また、上記基板上にDNAの網目状構造体を作製する工程には、無電解メッキ触媒核を構成する化合物を含むDNA水溶液を基板上に滴下するステップと、当該無電解メッキ触媒核を構成する化合物を還元するステップが含まれる。
【0012】
上記DNA水溶液にはマグネシウムイオンまたはカルシウムイオンが添加されることが好ましい。
【0013】
また、上記無電解メッキ触媒核を構成する化合物は白金化合物であることが好ましく、シス-ジアミンジクロロ白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)カリウムおよびエチレンジアミンジクロロ白金(II)からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0014】
上記DNAを無電解メッキする工程で用いられる無電解メッキ液は、銀-アンモニア錯体とヒドラジン、銀-アンモニア錯体とグルコース、銀-アンモニア錯体とホルマリンおよび塩化銅とホルマリンからなる群から選択される組成を有することが好ましい。
【0015】
本発明に係る透明電極は、上記本発明の方法により作製される透明電極である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、光透過性が高く、電極としての使用に十分な電気伝導性を持つ透明電極を、簡便に効率良く低コストで作製できるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の透明電極は、透明度の高いポリマーを用いるため、光透過性の非常に高い電極を実現できるという効果を奏する。また、柔軟性の高いポリマーでもあることからフレキシブルな電極を実現でき、各種センサーの作製が可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明の方法は、透明電極の作製方法であって、基板上にDNAの網目状構造体を作製する工程(以下、「網目状構造体作製工程」と称する)、DNAの網目状構造体をポリマーに転写する工程(以下、「転写工程」と称する)、および転写されたDNAを無電解メッキする工程(以下、「メッキ工程」と称する)を包含するものであればよい。以下、各工程について順に説明する。なお、上記各工程以外の工程が設けられていてもよく、上記以外の工程の内容は限定されない。
【0020】
〔網目状構造体作製工程〕
網目状構造体作製工程では、基板上にDNAの網目状構造体を作製する。
【0021】
基板は、その表面にDNA網目状構造(DNAネットワーク構造とも称される)を形成できるものであれば特に限定されない。このような基板としては、マイカ(Mica)、シリコン(Si)、石英などが挙げられる。
【0022】
用いられるDNAとしては、特に限定されず、細胞から抽出されるゲノムDNA、クローニングで得られるcDNA、化学合成により得られるDNAなどが好適に用いられる。また、DNAは二本鎖でも一本鎖でもよい。DNAのサイズ(塩基対)は特に限定されないが、1kbp~1Mbpが好ましく、2kbp~100kbpがより好ましい。この範囲内であれば、基板上にDNAの網目構造体を好適に作製することができる。
【0023】
DNAはDNA水溶液として基板に滴下する。用いられる水としては、不純物の混入が少ない純水が好ましい。不純物の混入により微細な構造体の作製が妨げられるのを防止するためである。好ましくは、Milli-Qシステム(日本ミリポア社製)等を用いて、比抵抗値18.3Ωcm以上に精製された超純水が用いられる。
【0024】
DNA水溶液のDNA濃度は、例えば、1×10-6mg/ml~30×10-6mg/ml、好ましくは5×10-6mg/ml~20×10-6mg/ml、より好ましくは6×10-6mg/ml~10×10-6mg/mlで調製される。
【0025】
DNA水溶液には、無電解メッキ触媒核を構成する化合物が含まれる。無電解メッキ触媒核を構成する化合物は、金属化合物であれば特に限定されない。例えば、白金化合物、ニッケル化合物、金化合物などが挙げられる。中でも、DNAに特異的に結合するという理由から、白金化合物が好ましい。また、白金化合物としては、シス-ジアミンジクロロ白金(II)(以下「シスプラチン」と称する)、テトラクロロ白金酸(II)カリウム(以下「クロロ白金酸」と称する)またはエチレンジアミンジクロロ白金(II)が好ましい。
【0026】
また、DNA水溶液には、二価の金属イオンが添加されることが好ましい。二価金属イオンの添加により、DNA網目状構造体を安定させることができる。二価金属イオンは特に限定されないが、マグネシウムイオンまたはカルシウムイオンを好適に用いることができる。二価金属イオンは上記無電解メッキ触媒核を構成する化合物が含まれるDNA水溶液に予め添加してもよく、DNA水溶液とは別に二価金属イオンを含む水溶液(例えば、塩化カルシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液など)を調製し、基板上に別々に滴下してもよい。
【0027】
基板上にDNAの網目構造体を作製する方法は特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、基板上にDNA水溶液を滴下する方法を挙げることができる。
【0028】
基板上にDNA水溶液を滴下する方法は、滴下する液量に応じた適当な器具(例えば、シリンジ、スポイト、ピペット、マイクロピペットなど)を用いて行うことができる。滴下したDNA水溶液を基板表面全体に広げることがこのましい。これにより、基板表面全体にDNA網目状構造体を作製することができる。滴下したDNA水溶液を基板表面全体に広げる方法としては、例えば、スピンコーターを用いる方法などが挙げられるが限定されない。
【0029】
引き続き、基板表面を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、真空デシケータによる乾燥、空気またはガスを吹き付けての乾燥など、公知の乾燥方法から選択できる。
【0030】
また、乾燥の前に洗浄を行ってもよい。例えば、DNA水溶液にマグネシウムイオンを添加した場合には、基板表面にマグネシウムの析出が観察される場合があるが、洗浄を行うことにより析出したマグネシウムを除去することができる。洗浄には純水、好ましくは超純水が用いられる。なお、洗浄は任意であり、必須の操作ではない。
【0031】
基板表面にDNAの網目状構造体が作製されたことは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)で観察することにより確認できる。
【0032】
次に、無電解メッキ触媒核を構成する化合物を還元する。これにより、無電解メッキ触媒核を構成する化合物として用いた金属化合物が還元されDNA表面に金属が露出する。例えば、無電解メッキ触媒核を構成する化合物としてシスプラチンを用いた場合、シスプラチンは、DNA一方の鎖上にある隣接する2つのプリン塩基(アデニン(A)またはグアニン(G))、特にGとGとが隣接する部位、またはGとAとが隣接する部位を選択的に認識し、シスプラチンの塩素原子がプリン塩基の7位の窒素原子と置き換わることにより、シスプラチンとDNAのアダクトが形成される。これに還元剤を反応させると、白金イオンが還元され、DNA表面に白金が露出する。
【0033】
還元に用いられる還元剤としては、例えば、ヒドラジン、グルコース、ホルマリン、ジメチルアミンボラン、テトラヒドロホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0034】
具体的な手順としては、表面にDNAの網目状構造が作製された基板を、還元剤を含む溶液に浸漬すればよい。あるいは、還元剤を含む溶液を基板表面全体が覆われるように滴下してもよい。還元剤の溶媒には、DNAが基板表面から剥がれ落ちることを防止できる溶媒を用いることが好ましく、例えばエタノールが好適に用いられる。還元剤の濃度、還元処理時間は、用いる還元剤に応じて適宜最適条件を設定することが好ましい。還元処理後、基板を洗浄し、乾燥すればよい。洗浄には、還元剤の溶媒を用いることが好ましい。乾燥は、例えば窒素ガスを吹き付けることで行うことができる。
【0035】
DNA表面に金属核が露出していることは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)で観察することにより確認できる。
【0036】
〔転写工程〕
転写工程では、基板上に作製されたDNAの網目状構造体をポリマーに転写する。
【0037】
ポリマーとしては、柔軟性があり、かつ透明度の高いポリマーであれば、特に限定されないが、ポリジメチルシロキサン(以下「PDMS」と略記する)が好ましい。PDMSを用いる場合、ポリマー前駆体と重合開始剤とを10:1で混合したものを用いることができる。ポリマー前駆体および重合開始剤はDow Corning社よりSILPOT(登録商標)184という商品名で市販されている。この混合物は、初期状態では液体状のため、約1時間脱気を行い、その後電気炉等を用いて約200℃、約3時間の加熱を行うことにより硬化する。
【0038】
具体的な転写方法としては、例えば、未硬化のPDMS溶液を、上記網目状構造体作製工程で作製した基板上に滴下し、その後加熱して硬化させ、基板をゆっくり剥がし取る方法を挙げることができる。また、予め平坦な基板(シリコンまたはマイカ)上でPDMSを硬化させ、当該PDMSを上記網目状構造体作製工程で作製した基板上のDNA網目構造体に押し当てる方法を用いてもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0039】
PDMSは柔軟性があり、かつ透明度が高いので、転写されたDNA網目構造体をメッキすることで、透明度の高い電極を作製することができる。また、DNAがポリマーに埋め込まれるため、表面が平坦な電極を作製することができる。
【0040】
ポリマーにDNAが転写されたことは、例えば蛍光顕微鏡で観察することにより確認できる。
【0041】
〔メッキ工程〕
メッキ工程では、ポリマーに転写されたDNAを無電解メッキする。
【0042】
無電解メッキとは、電気エネルギーを用いないで、置換反応、あるいは酸化還元反応により、金属水溶液中の金属イオンを析出させる方法を意味する。この方法では、合成樹脂、陶器、ガラス、木材、ゴムなどの非金属物質表面をメッキすることができる。したがって、DNAにも好適に用いることができる。
【0043】
用いられる無電解メッキ液は、(1)還元剤を含む、(2)金属イオンを錯体として含む、(3)メッキ金属が触媒能を有する、などの特性を有する溶液であれば、その組成は限定されない。例えば、銀-アンモニア錯体とヒドラジン、銀-アンモニア錯体とグルコース、銀-アンモニア錯体とホルマリン、塩化銅とホルマリンなどの組成を有するものが挙げられる。具体的には、後述の実施例で用いられている組成(0.03M硝酸銀、1.22Mアンモニア、0.5M酢酸、0.1Mヒドラジン)が好適である。
【0044】
具体的なメッキ処理の手順としては、DNAを転写したポリマー基板を無電解メッキ液に浸漬し、洗浄した後、乾燥すればよい。浸漬時間は、用いる無電解メッキ液の組成に応じて適宜最適時間を設定することが好ましい。洗浄には、純水または超純水を用いることが好ましい。乾燥は、例えば窒素ガスを吹き付けることで行うことができる。
【0045】
メッキ処理後の基板表面の状態は、例えば電解放射型透過電子顕微鏡(FE-SEM)で観察することにより確認できる。
【0046】
上記の方法により、光透過性が高く、電極としての使用に十分な電気伝導性を持つ透明電極を、簡便に効率良く低コストで作製できる。また、本発明には、上記本発明の方法により作製される透明電極が含まれる。本発明の透明電極は、様々な電子デバイスや光学デバイスに利用可能である。
【0047】
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1:白金化合物を含むDNA水溶液を用いたネットワーク構造の作製〕
(1)溶液の調製
DNA水溶液は鮭白子由来のDNA(和光純薬)を超純水(Milli-Q、日本ミリポア)を用いて75μg/mlに調製し、さらにDNAのモル数に対し1.1等量の白金化合物を加えた。白金化合物としてはシス-ジアミンジクロロ白金(II)(和光純薬)またはテトラクロロ白金酸(II)カリウム(和光純薬)を用いた。また、塩化カルシウム二水和物(和光純薬)、塩化マグネシウム六水和物(国産化学株式会社)の1mM水溶液を調製した。
【0050】
(2)構造の作製
基板には劈開したMica(日新EM株式会社)を使用し、1mM CaCl2溶液または1mM MgCl2 溶液を5μl、重ねてDNA水溶液5μlを滴下して10分後にスピンコーター(MIKASA、1H-D7)を使用し1200rpm、10.0s回転させMica全体に溶液を広げた。その後、洗浄はせずに真空デシケータで乾燥させた。この基板を原子間力顕微鏡(SPA400/S-3800(SII))を用いて観察した。
【0051】
(3)結果
原子間力顕微鏡(以下「AFM」と略記する)の観察画像を図1(a)および(b)に示した。(a)はDNA水溶液にシスプラチンを添加した結果を示し、(b)DNA水溶液にクロロ白金酸を添加した結果を示す。
【0052】
図1(a)および(b)から明らかなように、いずれの白金化合物を添加した場合にもネットワーク構造は形成するが、シスプラチンを用いるとより小さい網目ができることが分かった。シスプラチンとCa2+とを用いた場合はDNA同士が密に詰まってしまい、シスプラチンとMg2+とを用いた場合にはきれいな網目ができずに表面にマグネシウムが析出した。一方、クロロ白金酸を用いた場合、二価カチオンがネットワーク形成の重要な役割を果たしていると考えられた。すなわち、DNA水溶液だけでは均一な網目はできていないが、Ca2+を添加することでネットワーク構造を観察することができた。Mg2+を添加した場合はマグネシウムの析出が見られたが、図2に示したように、構造作製後に超純水で基板の洗浄を行うことで表面に付着していたマグネシウムが洗い流され、カルシウム溶液を用いた場合よりもより網目の細かい構造を作製することが可能であった。
【0053】
以上の結果より、以後の実験では白金化合物としてテトラクロロ白金酸(II)カリウム(クロロ白金酸)を用い、カルシウム溶液とマグネシウム溶液を用いて実験を進めた。なお、マグネシウム溶液を用いた場合には、構造作製後に超純水で基板を洗浄したものを使用した。
【0054】
〔実施例2:還元過程(無電解メッキを行うための触媒核付加の前処理)〕
(1)方法
上記実施例1で得られた構造に対し、DNA上に特異的に吸着していると考えられる白金化合物を還元することで金属核を析出させた。還元剤としては0.5Mヒドラジン溶液(和光純薬)を調製し使用した。希釈する溶媒には、DNAがMicaから剥がれ落ちないように99.5%エタノール(和光純薬)を使用した。還元時間を5分、10分、15分と変化させ還元の様子を調べた。還元後にはエタノールを使用して洗浄し、窒素ガスを吹きかけて乾燥させた。観察にはAFM(SPA400/S-3800,SII)を使用し、カンチレバーはSI-DF40(SII)を用いた。
【0055】
予備実験として、5分還元後のサンプルを1mMクロロ白金酸水溶液に5分間浸してエタノールで洗浄した後、0.5Mヒドラジン溶液で上記と同様に還元したサンプルを作製し、AFMで観察した。
【0056】
(2)結果
AFMの観察画像を図3(a)~(d)に示した。(a)は塩化カルシウムを添加した場合の結果を示し、(b)は塩化マグネシウムを添加し、かつ洗浄を行わなかった場合の結果を示し、(c)は塩化マグネシウムを添加し、かつ洗浄を行った場合の結果を示し、(d)は予備実験の結果を示す。
【0057】
(a)に示した塩化カルシウム添加の結果から、還元時間は5分が最適だということが分かった。10分では高さ約8nmの金属核と考えられるものの析出が見られるが、やや構造が壊れ始めていた。15分では完全に構造が壊れていた。一方(b)に示した塩化マグネシウム添加の場合には、図1(b)に示したと同様にDNAが付着していないMica表面にマグネシウムの析出が観察された。したがって、マグネシウムとともに付着した白金化合物が還元され、全体的に金属が析出してしまうことが予想される。しかしながら、(c)に示したように、還元前に超純水で基板を洗浄することでネットワーク構造を保ったまま、白金金属を析出させることができた。また、予備実験では、還元後にもう一度白金化合物を付着させ白金金属析出を試みた。その結果、(d)に示したように、1回目に白金金属が析出した部分にさらに白金が析出したが、白金が未析出部分のDNAネットワークが壊れてしまった。
【0058】
以上の結果から、以後の実験では還元は5分間で1回のみ金属核を析出させることにした。
【0059】
〔実施例3:無電解銀メッキ〕
(1)方法
還元を行ったMica基板を銀無電解メッキ液(0.03M硝酸銀、1.22Mアンモニア、0.5M酢酸、0.1Mヒドラジン(以上、和光純薬))に浸して金属銀を析出させた。メッキ時間は1分、2分、3分と変化させ、金属銀の析出の仕方を調べた。メッキ処理した基板は超純水で洗浄し、窒素ガスを吹きかけて乾燥させた。観察にはFE-SEM(S-5200,HITACHI)を使用した。
【0060】
(2)結果
FE-SEMの観察画像を図4に示した。図4に示した画像は、塩化カルシウムを添加し、ヒドラジンで5分間還元し、上記方法で3分間メッキしたものであり、オスミウム染色は施していない。なお、上の画像と下の画像は同一サンプルの画像であり、倍率のみが異なるものである。
【0061】
図4から明らかなように、DNAのみに選択的にメッキされた様子が観察された。ただし、一部に大きく成長した球状の金属が観察された。これはメッキ時間を最適化することにより解消できるものと考えられる。また、メッキ後、ある程度の時間経過後に洗浄することで、DNAの剥がれを防止できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、太陽電池、液晶ディスプレイなどの様々な電子デバイス用透明電極に応用できる。また、様々な光学デバイスに利用可能な電極にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】基板上に作製したDNAネットワーク構造をAFMで観察した画像であり、(a)はDNA水溶液にシスプラチンを添加した結果を示し、(b)DNA水溶液にクロロ白金酸を添加した結果を示す。
【図2】クロロ白金酸とマグネシウムとを用いた場合の洗浄による効果を示すAFM観察画像である。
【図3】還元過程後の基板表面をAFMで観察した画像であり、(a)は塩化カルシウムを添加した場合の結果を示し、(b)は塩化マグネシウムを添加し、かつ洗浄を行わなかった場合の結果を示し、(c)は塩化マグネシウムを添加し、かつ洗浄を行った場合の結果を示し、(d)は予備実験の結果を示す。
【図4】メッキ処理後の基板表面をFE-SEMで観察した画像である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3