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明細書 :循環器病マーカーとしてのインターロイキン13

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4465469号 (P4465469)
公開番号 特開2006-226971 (P2006-226971A)
登録日 平成22年3月5日(2010.3.5)
発行日 平成22年5月19日(2010.5.19)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 循環器病マーカーとしてのインターロイキン13
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
FI G01N 33/53 P
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2005-044644 (P2005-044644)
出願日 平成17年2月21日(2005.2.21)
審査請求日 平成19年9月13日(2007.9.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】野出 孝一
【氏名】出原 賢治
【氏名】平瀬 徹明
【氏名】西村 ゆき
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100093676、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 純子
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 国際公開第2004/059293(WO,A1)
特表平07-508179(JP,A)
国際公開第2005/007699(WO,A1)
調査した分野 G01N 33/48-98
特許請求の範囲 【請求項1】
インターロイキン13を含むことを特徴とする心不全又は心筋梗塞マーカー。
【請求項2】
インターロイキン13に対する抗体を含むことを特徴とする、心不全又は心筋梗塞の診断用組成物。
【請求項3】
インターロイキン13に対する抗体を含むことを特徴とする、心不全又は心筋梗塞の診断用キット。
【請求項4】
インターロイキン13に対する抗体と生体試料とを反応させてインターロイキン13を検出し、得られる検出結果を指標として心不全又は心筋梗塞の状態を検出する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、循環器病の治療用組成物又は診断用組成物及び診断用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の西洋化や高齢化社会の到来などに伴い、狭心症及び心筋梗塞といった虚血性心疾患並びに心不全を中心とした循環器疾患の患者数が急速に増加している。また、薬物療法に抵抗する難治性症例も増加傾向にある。このため、定量性及び再現性が高くかつ簡便な循環器疾患診断マーカーの発見、及び新規診断方法や治療方法の開発が強く求められている。
【0003】
一方、インターロイキン6(IL-6)を中心とした炎症性サイトカインが、循環器病の発症や進行に重要な役割を果たしていることが、多くの基礎研究及び臨床研究により明らかにされている(非特許文献1~2参照)。しかしながら、IL-6の血中サイトカイン値は、循環器病の発症や進行を診断するマーカーとして十分とは言えないため、実地診療においては、未だ循環器疾患診断マーカーとしては確立されていないのが現状である。

【非特許文献1】Kanda T et al., Jpn Heart J., vol.45, p.183-193 (2004)
【非特許文献2】Blum A et al., Anu. Rev. Med., vol.52, p.15-27 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、循環器病に関する有用な循環器疾患診断マーカーを見出し、その知見を用いて、循環器病の治療用組成物又は診断用組成物、及び診断用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。
【0006】
その過程において、IL-6等の炎症性サイトカインではなく、従来、循環器病及びその治療との関連については全く報告がなかった、アレルギー性のサイトカインである「インターロイキン13(IL-13)」に着目し、循環器病の発症及び進行における役割を検討した。
【0007】
その結果、慢性心不全等の循環器病の患者において、血中IL-13値が上昇していること、及び血中IL-13値と循環器病の重症度とが相関することを見出した。さらに、IL-13が血管内皮細胞において細胞障害シグナルを活性化すること、及びIL-13受容体阻害がIL-13による血管内皮細胞障害を抑制することを示した。
【0008】
以上の知見より、本発明者は、IL-13が循環器疾患診断及び予後・治療効果判定のためのマーカーとして有用であることを明らかにするとともに、IL-13を含むアレルギー性サイトカインの作用を阻害することが心不全等の循環器疾患の新規治療法に繋がることを示した。具体的には、当該アレルギー性サイトカインの受容体に対する抗体、及び/又は当該アレルギー性サイトカインに対する抗体を用いれば、上記課題を一挙に解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
(1) インターロイキン13を含むことを特徴とする循環器病マーカー。
【0011】
(2) インターロイキン13に対する抗体を含むことを特徴とする、循環器病の診断用組成物。
【0012】
(3) インターロイキン13受容体に対する抗体及び/又はインターロイキン13に対する抗体を含むことを特徴とする、循環器病の治療用組成物。
【0013】
(4) インターロイキン13に対する抗体を含むことを特徴とする、循環器病の診断用キット。
【0014】
(5) インターロイキン13に対する抗体と生体試料とを反応させてインターロイキン13を検出し、得られる検出結果を指標として循環器病の状態を評価する方法。
【0015】
本発明において、循環器病としては例えば心不全又は心筋梗塞が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インターロイキン13(IL-13)は循環器病のマーカーとして利用することができ、IL-13は循環器病の治療又は診断に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
1.概要
本発明者の検討結果から、血中IL-13濃度の値が慢性心不全等の診断、治療効果の判定、及び予後判定に有用であると考えられる。また、急性心筋梗塞症例及び急性心不全症例においても血中IL-13値の上昇を確認している。血中IL-13値は外来診療においても簡便に繰り返し測定することが容易であり、血中IL-13値が有用な循環器疾患診断マーカーとなり得る。
【0018】
さらに本発明者は、IL-13が血管内皮細胞において細胞内シグナルを活性化し、内皮細胞生存と運動を阻害することを見出した。これらIL-13の血管内皮細胞障害作用が、抗IL-13受容体αサブユニット中和抗体、あるいは抗IL-13抗体を用いたIL-13シグナル遮断により阻害されることも見出した。従って、IL-13を含むアレルギー性サイトカインの作用を阻害することは、心不全を含む循環器病の新規治療法に繋がるものと考えられる。

2.循環器病
本発明のマーカー、診断用組成物、治療用組成物及び診断用キットは、いずれも、循環器病に関連して用いるものである。当該循環器病としては、限定はされず、例えば、慢性又は急性心不全、心筋梗塞及び狭心症を含む虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈、動脈硬化症等が挙げられるが、なかでも心不全及び心筋梗塞が好ましく、より好ましくは心不全、さらに好ましくは慢性心不全である。

3.治療用組成物
本発明の治療用組成物は、前述のとおり、インターロイキン13受容体に対する抗体(抗IL-13受容体抗体)、及び/又は、インターロイキン13に対する抗体(抗IL-13抗体)を含むことを特徴とする組成物である。
【0019】
なお、本発明は、抗IL-13受容体抗体及び/又は抗IL-13抗体を用いることを特徴とする循環器病の治療方法や、循環器病の治療用組成物を製造するための抗IL-13受容体抗体及び/又は抗IL-13抗体の使用を含むものである。
(1) 抗IL-13受容体抗体
本発明の治療用組成物に含まれ得る抗体のうち、抗IL-13受容体抗体は、以下のようにして作製することができる。
【0020】
(A) ポリクローナル抗体の作製
(i) 抗原及びその溶液の調製
抗IL-13受容体抗体を作製するに当たり、まず、免疫源(抗原)として用いるタンパク質を調製・入手することが必要である。
【0021】
抗原タンパク質としては、精製IL-13受容体を用いることができるが、これに限定はされず、例えば、IL-13受容体のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつIL-13受容体活性を有するタンパク質を用いることもできる。なお、ヒトIL-13受容体のアミノ酸配列情報は、GenBankのアクセッション番号(Accession No.) NM001560、NM000640から取得することができる。
【0022】
精製IL-13受容体の調製方法としては、限定はされないが、例えば、大腸菌由来リコンビナント蛋白質あるいはバキュロウイルス由来リコンビナント蛋白質として精製して調製する方法等が挙げられる。
【0023】
なお、精製IL-13受容体としては、市販のものを用いることもでき、例えば、human IL-13 Rα1/Fc chimera
(R&D Systems社製)、human IL-13 Rα2/Fc chimera(R&D Systems社製)等を挙げることができる。
【0024】
次に、上記のようにして得られた精製IL-13受容体を、緩衝液に溶解させて抗原溶液を調製する。その際、必要に応じて、免疫を効果的に行うためのアジュバントを添加してもよい。アジュバントとしては、例えば、市販のフロイント完全アジュバントやフロイント不完全アジュバント等を用いることができる。これらアジュバントは、1種のみで用いても2種以上を併用してもよく、限定はされない。
【0025】
(ii) 免疫、及び抗血清の採取
免疫は、上記精製IL-13受容体を含む溶液を、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に投与することにより行う。投与は、主として静脈内、皮下、腹腔内に注入して行う。
【0026】
抗原溶液の1回当たりの投与量は、限定はされず、例えば、動物1匹に対して精製IL-13受容体が2~500μgとなる量とすることが好ましく、より好ましくは10~100μgである。
【0027】
投与間隔は、限定はされず、例えば、数日~数週間間隔であることが好ましく、より好ましくは2~3週間間隔である。また投与回数は、例えば、2~10回である。
【0028】
上記免疫により得られる血清(抗血清)の採取は、限定はされないが、例えば、最終投与の日から1~28日後に行うことが好ましく、より好ましくは2~14日後である。抗血清の採取方法は、常法に従い、免疫した動物の血液から採取することができる。
【0029】
(iii) 目的の抗血清の選別
免疫した動物のそれぞれから採取した抗血清の中から、目的の抗血清、すなわち抗IL-13受容体抗体を含む抗血清をスクリーニングする。
【0030】
スクリーニング方法は、限定はされないが、例えば、採取した抗血清と、抗原としての精製IL-13受容体や組換えIL-13受容体(ヒト由来の培養繊維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、酵母等で産生されたもの)又はそれらの変異型酵素とを用い、公知の免疫検定法(immunoassay)を、その常法に従い、利用して行うことができる。免疫検定法としては、標識化免疫測定法や免疫比濁法(TIA)があるが、なかでも前者が好ましく、例えば、ELISA等の酵素免疫検定法(EIA)のほか、放射線免疫検定法(RIA)や蛍光免疫検定法(FIA)等が好ましく挙げられる。また、標識化免疫測定法としては、他の分離方法との組合せを利用したものとして、ウエスタンブロット法(電気泳動法との組合せ)等も好ましく挙げられる。なお、ウエスタンブロット法の場合は、検出対象となるタンパク質サンプルを熱及び界面活性剤により変性させて用いるため、スクリーニング法における抗原は変異型酵素となる。
【0031】
上記スクリーニングによる目的の抗血清に含まれる、抗IL-13受容体抗体は、通常、ポリクローナル抗体である。当該抗体の精製を必要とする場合は、例えば、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー等の公知の精製方法を、1種のみ又は2種以上組み合わせて、適宜採用し実施すればよい。
【0032】
当該抗IL-13受容体抗体が特異的に結合し得る(認識し得る)IL-13受容体中の反応部位は、特に限定はされないが、例えば、IL-13受容体のαサブユニットが好ましい。つまり、当該抗IL-13受容体抗体としては、抗IL-13受容体αサブユニット中和抗体が好ましい。
【0033】
(B) モノクローナル抗体の作製
(i) 抗原及びその溶液の調製
抗原及びその溶液の調製は、上記ポリクローナル抗体の作製の場合と同様に行うことができる。
【0034】
(ii) 免疫、及び抗体産生細胞の採取
免疫方法や、上記抗原溶液を用いた投与量、投与間隔及び投与回数は、上記ポリクローナル抗体の作製の場合と同様の方法・条件が採用できる。
【0035】
上記免疫により得られる抗IL-13受容体抗体を産生する細胞(抗体産生細胞)の採取は、限定はされないが、例えば、最終投与の日から1~14日後に行うことが好ましく、より好ましくは2~4日後である。
【0036】
抗体産生細胞としては、例えば、脾臓細胞、リンパ節細胞(特に、局所リンパ節細胞)、末梢血細胞等が好ましく挙げられるが、なかでも脾臓細胞や局所リンパ節細胞(例えば、膝下リンパ節細胞等)がより好ましい。
【0037】
(iii) 細胞融合
採取した抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行うことにより、融合細胞(ハイブリドーマ)を得ることができる。
【0038】
ミエローマ細胞としては、例えば、マウス等の哺乳動物において一般に入手可能な株化細胞を用いることができる。詳しくは、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミン含有培地)で生育できないが、抗体産生細胞と融合した状態では生育できる性質の株化細胞が好ましい。具体的には、マウスミエローマ細胞としては、例えば、PAI、P3X63-Ag.8.U1(P3U1)、NS-Iなどを用いることができる。
【0039】
上記細胞融合は、例えば、血清を含まないRPMI-1640培地等の動物細胞培養用培地中で、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合して融合反応させることにより行う。抗体産生細胞とミエローマ細胞との混合比は、例えば5:1である。
【0040】
融合反応は、一般には、細胞融合促進剤の存在下で行うことが好ましく、当該促進剤としては、平均分子量1000~6000ダルトンのポリエチレングリコール等を使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
【0041】
融合反応後の細胞は、例えばHAT選択培地による培養を行う。上記培養後、HAT選択培地での増殖が認められる細胞が融合細胞(ハイブリドーマ)となる。
【0042】
(iv) 目的のハイブリドーマの選別、及びそのクローニング
上記培養により得られたハイブリドーマから、目的のハイブリドーマ、すなわち抗IL-13受容体抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングする。具体的には、培養上清中に、目的とする抗IL-13受容体抗体が存在するものをスクリーニングする。
【0043】
スクリーニング方法は、限定はされないが、例えば、培養上清の一部を採取し、抗原として精製IL-13受容体や組換えIL-13受容体(ヒト由来の培養繊維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、酵母等で産生されたもの)又はそれらの変異型酵素を用いて、公知の免疫検定法(immunoassay)を、その常法に従い、利用して行うことができる。免疫検定法としては、例えばELISA等の酵素免疫検定法(EIA)のほか、放射線免疫検定法(RIA)や蛍光免疫検定法(FIA)等が好ましく挙げられる。また、ウエスタンブロット法(電気泳動法との組合せ)等も好ましく挙げられる。なお、ウエスタンブロット法の場合は、検出対象となるタンパク質サンプルを熱及び界面活性剤により変性させて用いるため、スクリーニング法における抗原は変異型酵素となる。
【0044】
上記スクリーニング後の目的のハイブリドーマの培養上清に含まれる抗IL-13受容体抗体は、ハイブリドーマのクローニング前に得られている抗体であるが、単一の分子からなる抗体(モノクローナル抗体)であってもよく、限定はされない。
【0045】
当該抗IL-13受容体抗体が特異的に結合し得る(認識し得る)IL-13受容体中の反応部位は、特に限定はされない。
【0046】
上記スクリーニングによる目的のハイブリドーマのクローニング、すなわちモノクローナル抗体産生細胞株の樹立は、一般には、限界希釈法を用いた培養等により、1細胞由来のコロニーを選択することによって行うことができる。
【0047】
(v) モノクローナル抗体の採取
上記クローニングにより得られたハイブリドーマから、モノクローナル抗体を採取する方法としては、限定はされないが、一般には、細胞培養法もしくは腹水形成法等を採用することができる。
【0048】
細胞培養法では、クローニングにより得られたハイブリドーマを、例えば、動物細胞培養用培地中で、37℃、5%CO2の条件下で、7~14日間培養し、その後の培養上清から目的のモノクローナル抗体を採取することができる。
【0049】
腹水形成法では、例えば、細胞融合の際に用いたミエローマ細胞の由来元である哺乳動物と同種系列の動物の腹腔内に、クローニングにより得られたハイブリドーマを、動物1匹当たり106個程度投与して、当該ハイブリドーマを大量増殖させ、投与してから7~14日間後に採取した腹水又は血清から、目的のモノクローナル抗体を採取することができる。
【0050】
細胞培養法及び腹水形成法のいずれにおいても、モノクローナル抗体の採取時又は採取後に当該抗体の精製を必要とする場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー等の公知の精製方法を、1種のみ又は2種以上組み合わせて、適宜採用し実施することができる。
(2) 抗IL-13抗体
本発明の治療用組成物に含まれ得る抗体のうち、抗IL-13抗体は、上述した抗IL-13受容体抗体の作製方法において、「抗原及びその溶液の調製」を以下に説明するもの及び手順とする以外は、通常の技術常識に従い、同様に製造することができる。
【0051】
(i) 抗原及びその溶液の調製
抗IL-13抗体を作製するに当たり、まず、免疫源(抗原)として用いるタンパク質を調製・入手することが必要である。
【0052】
抗原タンパク質としては、精製IL-13を用いることができるが、これに限定はされず、例えば、IL-13のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつIL-13活性を有するタンパク質を用いることもできる。なお、ヒトIL-13のアミノ酸配列情報は、GenBankのアクセッション番号(Accession No.) NM002188から取得することができる。
【0053】
精製IL-13の調製方法としては、限定はされないが、例えば、大腸菌由来リコンビナント蛋白質あるいはバキュロウイルス由来リコンビナント蛋白質として精製して調製する方法等が挙げられる。
【0054】
なお、精製IL-13としては、市販のものを用いることもでき、例えば、human IL-13(R&D Systems社製)等を挙げることができる。
【0055】
次に、上記のようにして得られた精製IL-13を、緩衝液に溶解させて抗原溶液を調製する。抗原調製後の免疫手法は前記と同様である。
(3) 抗体の配合割合
本発明の治療用組成物においては、抗IL-13受容体抗体及び抗IL-13抗体のいずれについても、その配合割合は特に限定はされない。例えば、循環器病治療薬である場合、抗IL-13受容体抗体であれば、0.1~20重量%が好ましく、より好ましくは1~5重量%であり、抗IL-13抗体であれば、0.1~20重量%が好ましく、より好ましくは1~5重量%である。
(4) その他の成分
本発明の治療用組成物は、抗IL-13受容体抗体及び/又は抗IL-13抗体以外にも、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、他の構成成分を含んでいてもよく、限定はされない。循環器病治療薬である場合、例えば、後述するような薬剤製造上一般に用いられるもの等を含むことができる。
(5) 用法、用量
本発明の治療用組成物(好ましくは循環器病治療薬)の体内への投与は、例えば、非経口または経口等の公知の用法で行うことができ、限定はされないが、好ましくは非経口である。
【0056】
これら各種用法に用いる製剤(非経口剤や経口剤等)は、薬剤製造上一般に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。
【0057】
本発明の治療用組成物の投与量は、一般には、製剤中の有効成分(抗IL-13受容体抗体及び/又は抗IL-13抗体)の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類・進行状況や、投与経路、投与回数(/1日)、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
【0058】
本発明の治療用組成物を非経口剤又は経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
【0059】
非経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定はされず、例えば、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤等のいずれであってもよい。各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
【0060】
非経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、前述した有効成分を、適用対象(患者)の体重1kgあたり1~20mg服用できる量であることが好ましく、より好ましくは1~10mgである。
【0061】
経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定はされず、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。当該経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填材(乳糖、糖、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(各種でんぷん等)、および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0062】
経口剤の投与量(1日あたり)は、一般には、前述した有効成分を、適用対象(患者)の体重1kgあたり1~100mg服用できる量であることが好ましく、より好ましくは1~10mgである。
【0063】
経口剤中の有効成分の配合割合は、限定はされず、1日あたりの投与回数等を考慮して、適宜設定することができる。

4.診断用組成物
本発明の診断用組成物は、前述のとおり、インターロイキン13(抗IL-13抗体)に対する抗体を含むことを特徴とする組成物である。
【0064】
また、本発明の診断用組成物は、循環器病診断薬であることが好ましい。
【0065】
なお、本発明は、抗IL-13抗体を用いることを特徴とする循環器病の診断方法や、循環器病の診断用組成物を製造するための抗IL-13抗体の使用、を含むものである。
(1) 抗IL-13抗体
本発明の診断用組成物に含まれる抗IL-13抗体についての説明は、前述した本発明の治療用組成物における説明が同様に適用できる。
(2) 抗体の配合割合
本発明の診断用組成物においては、抗IL-13抗体の配合割合は特に限定はされない。例えば、循環器病診断薬である場合、抗IL-13抗体の配合割合は、1~100重量%が好ましく、より好ましくは10~100重量%である。
(3) その他の成分
本発明の診断用組成物は、抗IL-13抗体以外にも、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、他の構成成分を含んでいてもよく、限定はされない。循環器病診断薬である場合、例えば、1次抗体検出用試薬、発色基質等を含むことができる。
(4) IL-13の検出及び定量
本発明の診断用組成物(好ましくは循環器病診断薬)は、採取した血液中のIL-13を検出し定量するために用いられ、健常者における検出量との比較により循環器病の可能性及び病状の程度を判断(診断)することができる。また、同一患者のIL13量を定期的にモニターすることで、循環器病の状態を判断することもできる。
【0066】
(i) IL-13の検出
被験試料として採取した血液は、例えば、血清分離等の処理を施しておいた後、一般には、サンプルバッファー等により、1~100倍に希釈しておく。サンプルバッファーとしては、例えば、phosphate buffered saline等を用いることができる。
【0067】
上記処理後の被験試料は、本発明の診断用組成物と接触させ、抗IL-13抗体(一般にはモノクローナル抗体が好ましい)との反応に使用する。
【0068】
被験試料と抗IL-13抗体との反応は、10~30℃(好ましくは15~25℃)で、60~180分間(好ましくは90~120分間)行う。
【0069】
IL-13の検出は、公知の免疫検定法(immunoassay)を、その常法に従い、利用して行うことができる。免疫検定法としては、標識化免疫測定法や免疫比濁法(TIA)があるが、なかでも前者が好ましく、例えば、ELISA等の酵素免疫検定法(EIA)のほか、放射線免疫検定法(RIA)や蛍光免疫検定法(FIA)等が好ましく挙げられる。また、標識化免疫測定法としては、他の分離方法との組合せを利用したものとして、ウエスタンブロット法(電気泳動法との組合せ)等も好ましく挙げられる。これらの中でも、ELISA及び/又はウエスタンブロット法が好ましい。また、1種又は2種以上の抗IL-13モノクローナル抗体を用い、2種以上の免疫検定法を組み合わせて検出を行ってもよく、より一層感度及び信頼性等の高い優れた検出を行うことができる。
【0070】
(ii) IL-13の定量
定量は、限定はされないが、抗原量(抗原濃度:IL-13濃度)とその検出値との関係に基づく検量線から、被験試料に含まれるIL-13を定量することが好ましい。上記検量線は、精製IL-13を抗原とし、前述した抗IL-13抗体を用いて得られる検出値(検出データ)を基に、予め作成しておく。詳しくは、検出の方法として説明した免疫検定法(ELISAやウエスタンブロット法等)と同様の方法により、抗原濃度に対する検出値の情報を取得し、これを基に作成しておくようにする。当該検量線と、実際の検出値(実測値)とを対比させることで、被験試料中のIL-13量を求めることができる。
【0071】
IL-13の定量又は検出は、市販のキットを用いることもできる。
【0072】
(iii) 循環器病の状態の評価
本発明においては、上記のようにして定量又は検出したIL-13値を指標として、循環器病の状態を評価することができる。「循環器病の状態を評価する」とは、循環器病の発病の有無、進行度、重症度、治療反応性、予後等を判断することを意味する。評価は、IL-13値のほか、自覚症状や各種画像診断法などを組み合わせて行ってもよい。定期健診のように、年に1~2回の頻度でIL-13を測定することにより評価することもできるが、IL-13の推移を定期的にモニターすることで総合的に循環器病の状態を評価することが好ましい。このような評価法として、例えば、IL-13値が一定値を超えれば治療が必要な心不全と診断する、既に治療中の循環器病症例においてIL-13値が低下すれば治療が奏功していると診断する、IL-13値が一定値を超え高値で推移する症例は生命予後が不良であると診断する、といったことが可能になる。

5.診断用キット
上述のように循環器病の診断を行うに当たっては、循環器病の診断用キットを用いることができ、例えば、構成要素として、前述した抗IL-13抗体を含むキット挙げることができる。
【0073】
上記キットにおいては、抗IL-13抗体は、安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して、溶解した状態で備えられていることが好ましい。
【0074】
上記キットは、抗IL-13抗体以外に他の構成要素を含むことができる。他の構成要素としては、例えば1次抗体検出用試薬、発色基質等を挙げることができる。特に、ELISAを利用して検出方法を実施するためのキットである場合は、他の構成要素としては、さらに1次抗体検出用試薬、発色基質等を挙げることができ、また、ウエスタンブロット法を利用して検出方法を実施するためのキットである場合は、他の構成要素としては、さらに1次抗体検出用試薬、発色基質等を挙げることができる。
【0075】
上記キットは、構成要素として少なくとも前述した抗IL-13抗体を備えているものであればよい。従って、循環器病の診断(IL-13の検出)に必須となる構成要素の全てを、当該抗IL-13抗体と共に備えているものであってもよいし、そうでなくてもよく、限定はされない。
【0076】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
慢性心不全患者におけるIL-13の検出
(1) 方法
対象患者は、佐賀大学病院及び関連施設における慢性心不全患者66例とした。その内訳は以下の通りである。
【0078】
心筋梗塞を基礎心疾患に持つ虚血性慢性心不全患者27例
拡張型心筋症を含む非虚血性心疾患を基礎心疾患に持つ非虚血性慢性心不全患者39例
健常対照群14例
血中IL-13値は、末梢静脈血を採取し血清を得た後、血清中IL-13値をBioSource社製ELISA kitにより測定した。
(2) 結果
慢性心不全患者の血中IL-13値を検討した結果、心筋梗塞を基礎心疾患に持つ虚血性慢性心不全患者群、拡張型心筋症を含む非虚血性心疾患を基礎心疾患に持つ非虚血性慢性心不全患者群は、いずれも血中IL-13値が健常対照群と比較して有意に高値を示した(図1)。
(虚血性慢性心不全患者群 17.7±16.7; 非虚血性慢性心不全患者群 13.7±14.1; 健常対照群 4.9±2.4 pg/ml, P<0.005)(NYHA class I(軽症)vs. NYHA class IV(重症): 6.5±4.3 vs. 24.6±16.9 pg/ml, P<0.005)【0079】
培養血管内皮細胞においては、IL-13はJAK2及びSTAT6を活性化し、抗IL-13受容体αサブユニット中和抗体はこれを阻害した。
【0080】
培養血管内皮細胞においてIL-13は内皮細胞の生存と運動を阻害した。
【0081】
以上のことから、IL-13は、心不全等の循環器病に対し、有用なマーカーとなることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】健常者及び慢性心不全患者におけるIL-13の血中濃度を示すグラフである。
【図2】慢性心不全患者におけるIL-13の血中濃度を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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