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明細書 :有機非線形光学材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4765060号 (P4765060)
公開番号 特開2006-231100 (P2006-231100A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成18年9月7日(2006.9.7)
発明の名称または考案の名称 有機非線形光学材料の製造方法
国際特許分類 G02F   1/361       (2006.01)
FI G02F 1/361
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2005-044984 (P2005-044984)
出願日 平成17年2月22日(2005.2.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2004年8月25日 社団法人日本化学会、コロイドおよび界面化学部会発行の「第57回 コロイドおよび界面化学討論会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成19年10月24日(2007.10.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】川俣 純
【氏名】平川 祥一朗
【氏名】稲田 洋三
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特許第2885587(JP,B2)
特開平06-082858(JP,A)
特開2002-308996(JP,A)
特開平02-307571(JP,A)
特開平07-181532(JP,A)
特開昭61-228025(JP,A)
特開平06-079168(JP,A)
調査した分野 B01J10/00-12/02,14/00-19/32
G02F1/29-7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)、
【化1】
JP0004765060B2_000009t.gif
(但し、X、Xは、置換もしくは無置換のアリール基、又はヘテロ環基、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、R、R、R及びRのうち、いずれかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよく、n及びmは1~4の整数をそれぞれ表す。)
下記一般式(2)、
【化2】
JP0004765060B2_000010t.gif
(但し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素又は置換基であり、R、R、R、R、R及びRのうち、いくつかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよい。n及びmは1~4の整数を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Z、Zは、それぞれ独立に5又は6員環を形成する原子群を表す。)
及び下記化合物(A)
【化3】
JP0004765060B2_000011t.gif
から選ばれる水に不溶性の非線形光学挙動を有する有機化合物を、ベンゼン、ペンタン及びヘキサンから選ばれる炭化水素、テトラヒドロフラン、アセトン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、プロパノール及びエタノールから選ばれる含酸素有機溶媒、及びジクロロエタン、トリクロルエチレン、トリクロルエタン、四塩化塩素及びクロロホルムから選ばれるハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1気圧の蒸気圧が100℃以下の溶媒に溶解した溶液を水面に展開し、該溶媒を除去することによりナノ粒子を生成させ、水面の面積を縮めることにより該ナノ粒子を集合させて生成させたナノ粒子集合体薄膜からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項2】
前記非線形光学挙動を有する有機化合物が、2,5-ビス(p-ジメチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノン(DMACCPという)及び2,5-ビス[5-(p-ジメチルアミノフェニル)ペンタ-2,4-ジエニリデン]シクロペンタノン(DMAPCPという)から選ばれる有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒が、ジクロロエタン、トリクロルエチレン、トリクロルエタン、四塩化塩素及びクロロホルムから選ばれるハロゲン化炭化水素である請求項1又は2記載の有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が、クロロホルムである請求項1~3のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項5】
水に不溶性の非線形光学挙動を有する有機化合物を溶媒に溶解した溶液を水面に展開するに際し、水中にあらかじめ基板を挿入しておき、該溶媒を除去することによりナノ粒子を生成させ、水面の面積を縮めることにより該ナノ粒子を集合させてナノ粒子集合体薄膜を得た後、前記基板を垂直方向に引き上げることにより基板に形成されたナノ粒子集合体薄膜からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項6】
基板として、前記請求項5記載の方法により得られたナノ粒子集合体薄膜が形成された基板を用いて、請求項5記載の方法を繰り返すことによりナノ粒子集合体薄膜の積層体からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする請求項5記載の有機非線形光学材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物が、光第二高調波発生活性物質又は2光子吸収化合物である請求項1~6のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス製品などに応用される超微粒子(ナノ粒子という)の集合体よりなる薄膜に関する。また、該薄膜よりなる有機非線形光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ナノ粒子は、種々の目的、例えばオプトエレクトロニクスデバイスや、医薬品、化粧品などの分野に用いられている。
【0003】
物質が微小になると、単位重量あたりの表面エネルギーは増大し、各種の物質がバルクの状態と異なってくる。微粒子化に起因する物性の変化には、表面エネルギー・化学的活性の増加、新たな結晶構造、特異な光・電子特性、触媒・薬理効果などが期待される。
【0004】
特に、10ナノメートル(nmと記す)以下の粒径を持つ半導体微粒子は、微粒子サイズに依存した線形・非線形光学特性の変化を含む量子サイズ効果を示す。金属系半導体とは異なり、有機化合物の多くは熱的に不安定なため、金属・半導体微粒子の作製法である真空蒸着法や融解析出法が適用できない。そのため、有機微結晶の作製法は限られており、半導体や金属の微粒子に比べて研究例は少ない。有機微結晶の作製法としては、再沈法と不活性ガス中での蒸発法があげられる。不活性ガス中での蒸発法には、適用できる化合物が限られてしまうという難点がある。そこで、これらの有機化合物ナノ粒子、すなわち粒子径が数百nm以下の超微粒子の製造方法は、再沈法といわれる方法、例えば溶媒に有機化合物を溶解した溶液を、該溶媒と相溶性を有し、該有機化合物を実質的に溶解しない他の溶媒に、強力な攪拌下で混合し、有機化合物を析出させる方法(特許文献1)などが知られている。
【0005】
この方法は、微結晶の作製には有効であるが、本発明の如く、微結晶体の集合による薄膜を形成させることは不可能であり、薄膜形成には別の工程を必要とする。
【0006】
また、有機非線形光学材料として、ルテニウムトリスビピリジン誘導体をポリ塩化ビニルなどの高分子物質と共に、溶媒中に溶解した後、これを水面に展開し、溶媒を蒸発除去する薄膜形成手段も知られている。(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、この方法にあっては、有機金属が単に高分子体マトリックス中に分散して存在する形態であり、ナノ粒子の形成はない。しかもこの方法により得られる薄膜は、マトリックス高分子中に非線形光学物質であるルテニウムトリスビピリジン誘導体を分散存在させるものであるため、非線形光学効果においても更なる改良の余地を残している。

【特許文献1】特開平6-79168号公報
【特許文献2】特開平6-82858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ナノ粒子の集合体よりなる薄膜を得ることを目的とする。
【0009】
更に、本発明によれば該薄膜の積層体を得るものであり、これらナノ粒子として、特に光第二高調波発生(SHGと記す)活性物質や2光子吸収化合物などの非線形光学材料を用いることにより、得られる薄膜はSHG活性や2光子吸収効果を有し、高効率で光第二高調波を発生させたり2光子吸収効果を得ることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、[1]下記一般式(1)、
【化1】
JP0004765060B2_000002t.gif
(但し、X、Xは、置換もしくは無置換のアリール基、又はヘテロ環基、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、R、R、R及びRのうち、いずれかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよく、n及びmは1~4の整数をそれぞれ表す。)

下記一般式(2)、
【化2】
JP0004765060B2_000003t.gif
(但し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素又は置換基であり、R、R、R、R、R及びRのうち、いくつかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよい。n及びmは1~4の整数を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Z、Zは、それぞれ独立に5又は6員環を形成する原子群を表す。)

及び下記化合物(A)
【化3】
JP0004765060B2_000004t.gif
から選ばれる水に不溶性の非線形光学挙動を有する有機化合物を、ベンゼン、ペンタン及びヘキサンから選ばれる炭化水素、テトラヒドロフラン、アセトン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、プロパノール及びエタノールから選ばれる含酸素有機溶媒、及びジクロロエタン、トリクロルエチレン、トリクロルエタン、四塩化塩素及びクロロホルムから選ばれるハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1気圧の蒸気圧が100℃以下の溶媒に溶解した溶液を水面に展開し、該溶媒を除去することによりナノ粒子を生成させ、水面の面積を縮めることにより該ナノ粒子を集合させて生成させたナノ粒子集合体薄膜からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする有機非線形光学材料の製造方法に関する。
また本発明は、[2]前記非線形光学挙動を有する有機化合物が、2,5-ビス(p-ジメチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノン(DMACCPという)及び2,5-ビス[5-(p-ジメチルアミノフェニル)ペンタ-2,4-ジエニリデン]シクロペンタノン(DMAPCPという)から選ばれる有機化合物であることを特徴とする前記[1]記載の有機非線形光学材料の製造方法に関する。
また本発明は、[3]前記溶媒が、ジクロロエタン、トリクロルエチレン、トリクロルエタン、四塩化塩素及びクロロホルムから選ばれるハロゲン化炭化水素である前記[1]又は[2]記載の有機非線形光学材料の製造方法に関する。
また本発明は、[4]前記溶媒が、クロロホルムである前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法に関する。

【0011】
更に本発明は、[5]水に不溶性の非線形光学挙動を有する有機化合物を溶媒に溶解した溶液を水面に展開するに際し、水中にあらかじめ基板を挿入しておき、該溶媒を除去することによりナノ粒子を生成させ、水面の面積を縮めることにより該ナノ粒子を集合させてナノ粒子集合体薄膜を得た後、前記基板を垂直方向に引き上げることにより基板に形成されたナノ粒子集合体薄膜からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法に関する。
更にまた、[6]基板として、前記[5]記載の方法により得られたナノ粒子集合体薄膜が形成された基板を用いて、前記[5]記載の方法を繰り返すことによりナノ粒子集合体薄膜の積層体からなる有機非線形光学材料を得ることを特徴とする前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の有機非線形光学材料の製造方法に関する。

【0012】
特に溶媒に溶解する有機化合物としてSHG材料や2光子吸収化合物のような非線形光学材料を用いることにより、有機非線形光学材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粒子径数nm~数百nmの範囲のうち、任意の粒子径のナノ粒子の集合体よりなる薄膜を得ることができる。このような薄膜は、SHG材料を用い高調波の発生装置とすることや、2光子吸収化合物を用いることにより、三次元高密度光記憶媒体や光スイッチとして用いることが可能で、非線形光学材料として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における薄膜を構成する粒子集合体の単粒子の形状は、粒子径が数nm~数百nm、一般に10nm~100nmであり、特に厚さ方向に数nm~十数nm、幅方向に数十nm~数百nmの偏平な形状よりなる。
【0015】
本発明のナノ粒子集合体よりなる薄膜の製造方法は、水に不溶性の有機化合物(通常これらは結晶構造をとり得るものである。)を、溶媒中に溶解した溶液を水面に展開する。ここで用い得る溶媒は、使用する有機化合物を溶解する能力を有するものであればよく、水との相溶性の有無は特に問題とならない。
【0016】
また、展開すべき水は、特に制限されないが、イオン交換水等、可及的に不純物の少ないものが好ましい。
【0017】
水の温度は、得られるナノ粒子の粒径に影響を及ぼす。すなわち、水の温度は溶媒の蒸発速度に関係する。溶媒の蒸気圧を大きくする方向、従って、水温は高温になる程、溶媒の蒸発速度が速くなり、結果として、得られるナノ粒子の粒径は大きくなる。しかしながら、水の蒸気圧があまり高くなり、水表面から、湯気の立ち登る状態では、好ましくない。よって一般に70℃程度までとすべきであり、好ましくは50℃以下である。粒子径を小さくするためには、低温が好ましく、一般には0℃~30℃の温度が採用される。
【0018】
また、溶媒に溶解される有機化合物の濃度も得られるナノ粒子の粒径に影響を及ぼす。一般に高濃度、すなわち飽和濃度に近い程大粒径となる傾向がある。従って小粒径、例えば厚さ10nm以下、幅径100nm以下の粒子を得るには、10-4モル/l以下の濃度とするのが好ましい。また溶媒は特に限定されないが、常圧下であまりに蒸気圧の小さいものは好ましくない。一般に1気圧の蒸気圧が100℃以下のもの、例えばベンゼン、ペンタン、セキサン等の炭化水素、テトラヒドロフラン、アセトン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、プロパノール、エタノールなどの含酸素有機溶媒、ジクロロエタン、トリクロルエチレン、トリクロルエタン、四塩化塩素、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素等が好適に使用される。勿論、使用する有機化合物の種類とそれを溶解し得る溶媒とは、多くの場合相互関係がある。従って、場合によっては沸点が100℃を超える溶媒、例えばジメチルホルムアミドなどを使用する場合もあり得る。しかしながら、一般には有機化合物を溶解し得る限り、アセトンやクロロホルムを用い、水温10℃~30℃程度を用いるのが好ましい。
【0019】
有機化合物の溶液を水面に展開する方法は特に限定されないが、一般に該溶液を少量ずつ注ぐべきである。実験的には水面にマイクロシリング等を用いて、静かに滴下する方法等が好適に用いられる。
【0020】
水面に滴下又は注がれた溶液は、速やかに水面上に広がり、設定された水温とその温度での溶媒の蒸気圧との関係に基づいて、蒸発除去されるか又は、水との相溶性の高い溶媒の場合、拡散により溶媒は水中に混入し除去される。かくして、溶質である有機化合物は析出し、水の表面張力により、水表面上にナノ粒子となって浮遊する。このとき、水面の面積に比べナノ粒子の数が少な過ぎると、粒子間に間隙を生じ、均質な薄膜とならないが、適宜水面の面積を縮めることにより、容易に粒子間の空間をなくすことができる。寄せ集められたナノ粒子は互いにファンディアワールス力により結合し、薄膜を形成する。かかる薄膜は明らかに単分子膜(例えばL-B膜)ではないし、また均質なフィルム状でもない。あくまでもナノ粒子が2次元的に連なった一層の集合体で形成された薄膜である。
【0021】
かかる薄膜は、L-B膜を形成させる場合と同様の手段で基板上に付着させることができる。
【0022】
すなわち、水面に形成されたナノ粒子集合体よりなる薄膜中に基板を挿入するか又はあらかじめ水中に基板、例えばガラス板等を挿入しておき、その周辺水面に薄膜を形成させ前記基板を引き上げるなど公知の方法が採用される。またこれらの方法を繰り返すことにより基板上に薄膜を積層することができる。本明細書においては、このように積層された層状物をも薄膜と称する。
【0023】
本発明において、使用する有機化合物は、水に実質的に不溶性であり、水以外の溶媒(一般に有機溶媒)に可溶な有機化合物であれば使用可能である。しかしながら、特に2光子吸収化合物やSHG活性物質のような非線形光学材料を用いることにより、2光子吸収効果や高調波を発生させることができる。かかる目的を達成するためには、2光子吸収断面積やSHG定数の大きい化合物を選ぶのが有利である。一般に2光子吸収化合物としては、2光子吸収断面積が100GM以上の化合物が、またSHG活性物質としては、SHG定数が1ピコメーター/ボルト以上の物質が非線形光学挙動を有する化合物として好ましい。
【0024】
これらの化合物としては、分子中に優れた電子受容基と供与基とを持つものが、好適となる。このため、カルボニル基又はチオカルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ジアゾニウム基等を有する化合物、特に共役の二重結合又は三重結合を介して、電子供与基であるアミノ基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、ニトリル基、芳香族基等を有する化合物があげられる。
【0025】
本発明において、2光子吸収化合物やSHG活性物質等の非線形光学挙動を有する化合物として好適に使用される化合物は、特に限定されるものではないが、本発明者の一人等が、先に提案した下記一般式(1)で表される化合物、すなわち、
【0026】
【化4】
JP0004765060B2_000005t.gif

(但し、X、Xは、置換もしくは無置換のアリール基、又はヘテロ環基、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基であり、R、R、R及びRのうち、いずれかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよく、n及びmは1~4の整数をそれぞれ表す)
の化合物(特開2003-183213号)および下記一般式(2)で表される化合物、すなわち、

【0027】
【化5】
JP0004765060B2_000006t.gif

(但し、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素又は置換基であり、R、R、R、R、R及びRのうち、いくつかが互いに直接又は置換基を介して結合して環を形成していてもよい。n及びmは1~4の整数を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Z、Zは、それぞれ独立に5又は6員環を形成する原子群を表す。)
の化合物(特開2004-123668号)などが挙げられる。これら一般式に示される化合物としては、例えば2,5-ビス(p-ジメチルアミノシンナミリデン)シクロペンタノン(DMACCPという)、2,5-ビス[5-(p-ジメチルアミノフェニル)ペンタ-2,4-ジエニリデン]シクロペンタノン(DMAPCPという)、及び下記化合物(A)

【0028】
【化6】
JP0004765060B2_000007t.gif

などである。
【0029】
これらの化合物以外にも、例えば、カルコン誘導体、4,4’-ビス[4-(ジ-n-ブチルアミノ)スチリル]-2,5-ジメチルベンゼン誘導体、フルオレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体等が挙げられる。いずれにしても、本発明においては、特定の化合物に限定されるものではない。
【0030】
本発明において、2光子吸収化合物を用いてナノ粒子集合体よりなる薄膜とすることにより、2光子吸収イメージングや、三次元光記録などへの応用が可能となる。
【0031】
2光子吸収の効果は、単位体積あたりの分子数に比例する。そのため、溶液よりも固体の方が2光子吸収の効果は大きい。光学材料としては、散乱光が少なく、必要とされる大きさに容易に成形できることが要求される。光は、光の波長よりも小さい、特にその1/2以下の微粒子に対しては、散乱も少なく、透過率も大きい。
【0032】
本発明によるナノ粒子の集合体よりなる薄膜を構成する単粒子は、まさに固体であり、光の波長よりも小さい均質の微粒子の集合体で、且つその集合体薄膜の厚さや面積は、任意に調製し得るのである。
【0033】
更に、本発明にあっては、単に基板上に一重の薄膜を得るだけでなく、公知のL-B膜における積層膜の製法と同様の製法で、薄膜を多層積層することができるのである。これら積層された各単位薄膜は、極めて均質(各単粒子の形状や、粒子の集合密度、単位薄膜厚さ等が均一)であるため、光学材料として極めて有用な材料となる。この事実を示す例として、有機化合物としてDMACCPを用い、クロロホルム中に1.6×10-4モル/lの濃度で20℃の水面に滴下し、形成させた薄膜を、L-B法と同様ガラス基板を引き上げる方法を繰り返し、20層積層したときの積層薄膜に対する紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図1に示す。
【0034】
図1において、例えば533nmの吸光度の変化は右上の挿入図にあるとおり、ほぼ直線的に増加しており、全く均質な薄膜の積層体となっていることが理解される。
【0035】
更にこの積層薄膜の2光子吸収励起蛍光挙動について図2に示す。図2は、Nd:YAGレーザーからの波長1064nmの光を照射したときに観察された、照射光の半分の波長である532nmに光第二高調波(SHGという)の鋭いピークを持ち、630nm付近にブロードな蛍光のピークを持つスペクトルを示している。ここで、点線で示したスペクトルは膜に垂直にレーザーを入射させたときのスペクトルである。一方、実線で示したスペクトルは、膜に対して外部角度45°でレーザーを入射させた時のスペクトルである。
【0036】
SHGの強度は典型的な角度依存性を示し、垂直入射よりも45°入射のほうが大きい。蛍光スペクトルの強度は45°入射のときよりも垂直入射のときのほうが大きい。このことは、垂直入射ではレーザー光の透過率が高くなり、45°入射ではレーザー光の透過率が低くなることを反映している。図2に示した蛍光強度の変化は、フレネルの式から予想される変化とほぼ一致している。これらのことから、この蛍光は、SHGの再吸収による蛍光ではなく、2光子吸収を起源とする蛍光であることが分かる。したがって、本発明において、有機化合物として、2光子吸収性化合物を用いることにより、2光子吸収デバイスとして利用可能であることは明らかである。
【0037】
以下に実施例を示す。
【実施例1】
【0038】
(1)DMACCP溶液の調製
DMACCPを電子天秤で試薬ビンに5.0mg量りとった。ここに、ナカライテスク製蛍光分析用特級クロロホルム14.83gを加え、6.3×10-4モル/lの溶液とした。調製した溶液を新しい試薬ビンに1.0gとり、クロロホルムを9.0g加えることで20倍希釈し、6.3×10-5モル/lにした。秤量の誤差は、紫外可視吸収スペクトル中の吸収極大波長の吸光度を、調製した試料ごとに比較することで確認し、必要に応じて補正を行った。紫外可視吸収スペクトル測定には、HITACHI U-3300形分光光度計を使用した。
(2)基板の調製(親水化処理)
石英基板又はガラス基板を30%過酸化水素水70mlと濃硫酸30mlを混合した溶液にいれ、1時間30分間過熱した後、30分間放置した。30分後、石英板を混合溶液から取り出し、基板表面を超純水で洗浄した。超純水で基板をはじく場所がなくなるまで繰り返した。処理後の基板は超純水中に保存した。
(3)薄膜の作製
膜の累積には、日本レーザー電子(株)製NL-LB240NS-MWC型L-B膜製膜装置を用いた。本装置は、本来ムービングウォール式であるが、一般のL-B装置と同様のクーン式に改造した。水面を形成させるためのトラフは、水面を縮小又は拡張するための可動式バリアを有する長さ35cm、幅16cmの容器を用いた。
【0039】
センサーに取り付けたWilhelmy Plateを下層水中に浸した。微量のほこりなどが下層水表面に存在すると、良質な薄膜が作製できないので、バリアを開閉したときの表面圧力の変化が0.3mN/m以内になるまで下層水表面の塵や埃を取り除いた。親水性処理を施した石英基板を垂直方向に下層水中に2.5cm沈めた後、マイクロシリンジ(500μl)を用いて調製したDMACCPのクロロホルム溶液を下層水表面上に偏りのないように散布した。即座に可動式バリアを8mm/minで動かし、下相水表面にできた膜を圧縮した。溶液を散布した量は、バリアを動かして膜を圧縮した時に、表面圧が10mN/m以上になるように調節した。
【0040】
このようにして、下相水の温度、有機化合物の濃度及び散布量を種々変化させて行った。これらのデータを表1に表す。
【0041】
【表1】
JP0004765060B2_000008t.gif
薄膜の積層は操作が簡単で、多層膜が容易に作製できる垂直浸漬法を用いた。表面圧が10mN/mになったところで、基板を垂直に2mm/minで引き上げてL-B膜を作製した。DMACCPの多層膜は、第一層目のL-B膜作製と同様の手順を繰り返すことで同じ基板上に堆積させた。
【0042】
得られた薄膜について、2光子吸収励起蛍光を測定した。光源にはSpectron Laser Systems社製SL900GT型Nd:YAGレーザー装置を用い、プリンストンインスツルメント社製LN/CCD-1100PB型CCDで検出した。
【0043】
また、単粒子の大きさはセイコーインスツルメント社製SP1380UN、原子間力顕微鏡により測定した。
【0044】
下相水が2℃の場合の展開液の濃度による紫外可視吸収スペクトルの変化を図3に示す。この図から理解されるように、水面に展開する溶液の濃度が低くなるにつれて吸光度が減少している。このことは、基板に累積された膜中の単位面積あたりの分子数が減少したことを示している。
【実施例2】
【0045】
(1)DMAPCP溶液の調製
実施例1とほぼ同様にして、DMAPCPの8.0×10-5モル/lクロロホルム溶液を作った。
(2)基板の調製(親水化処理)
基板として、ガラス板を用い、実施例1と同様に過酸化水素及び硫酸溶液による処理を行った。
(3)薄膜の作製
可動式バリアを有する13cm×10cmのトラフに超純水を満たし、20℃に調節した後、実施例1と同様にガラス基板を水中に垂直に2.5cm挿入し、マイクロシリンジを用いて、500μlの有機化合物クロロホルム溶液を滴下し、薄膜を得た。
【0046】
実施例1と同様に物性を測定した結果、単粒子は平均高さ5~6nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のナノ粒子集合体よりなる薄膜は光磁気デバイス等の光記録媒体の記録情報の検出用光源などオプトエレクトロニクス各種機器類として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】は、本発明によるナノ粒子集合体薄膜を積層した場合の積層数に対する紫外可視吸収スペクトルの変化を示す。また挿入図は積層数に対する533nmでの吸光度の変化を示す図である。
【図2】は、図1と同一の試料における波長1064nmのレーザー光で励起した時の蛍光スペクトル(垂直入射と45°入射の場合)の図である。
【図3】は、実施例1における2℃水面で作製した薄膜の濃度の違いによる吸光度を示した図である。インセット中の数字は濃度(単位はモル/l)である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2