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明細書 :金属コーティング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4565181号 (P4565181)
公開番号 特開2006-077312 (P2006-077312A)
登録日 平成22年8月13日(2010.8.13)
発行日 平成22年10月20日(2010.10.20)
公開日 平成18年3月23日(2006.3.23)
発明の名称または考案の名称 金属コーティング方法
国際特許分類 C23C  18/18        (2006.01)
FI C23C 18/18
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2004-265321 (P2004-265321)
出願日 平成16年9月13日(2004.9.13)
審査請求日 平成19年4月11日(2007.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】河本 邦仁
【氏名】増田 佳丈
【氏名】諸 培新
【氏名】沢田 享
個別代理人の代理人 【識別番号】100118706、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 陽
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開2001-131758(JP,A)
特開平05-301984(JP,A)
特開平06-207068(JP,A)
特開2001-303254(JP,A)
特開2004-169058(JP,A)
調査した分野 C23C 18/00-20/08
特許請求の範囲 【請求項1】
物質の表面にチオール基を修飾させることが可能なチオール基修飾化合物によって基材の表面にチオール基を修飾させる修飾工程と、
該チオール基修飾化合物によって修飾された該基材を金属イオンと該金属イオンを還元可能な還元剤とを含んだ無電解めっき液に接触させて該基材の表面のチオール基修飾化合物によって修飾された部分に金属を析出させる金属析出工程とを備えることを特徴とする金属コーティング方法。
【請求項2】
チオール基修飾化合物は、加水分解によって縮重合可能な含チオール有機シリコン化合物であることを特徴とする請求項1記載の金属コーティング方法。
【請求項3】
無電解めっき液中に含有する金属イオンは銅イオンであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属コーティング方法。
【請求項4】
修飾工程後、金属析出工程前に、基材の表面の一部にエネルギー照射を行うパターン形成工程を備えることにより、領域選択的に金属を析出させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属コーティング方法。
【請求項5】
エネルギー照射は紫外線照射によることを特徴とする請求項4記載の金属コーティング方法。
【請求項6】
修飾工程前に、基材の表面を親水処理する親水化工程を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の金属コーティング方法。
【請求項7】
親水化工程は、
アミノ基を有し、加水分解によって縮重合可能な含アミノ有機シリコン化合物と、該アミノ基と反応してイミン化合物を生成するカルボニル化合物とを混合してシリコン処理液とする混合工程と、
該シリコン処理液によって基材の表面を処理するシリコン処理工程と、
該シリコン処理工程によって処理された基材の表面にエネルギー照射をする照射工程とからなることを特徴とする請求項6記載の金属コーティング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやセラミック等、各種の基材表面に金属を被覆するための金属コーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックやセラミックス等、様々な基材の表面に金属を被覆することが行われている。例えば、プリント基板の製造においては、ガラス繊維強化エポキシ板の表面に銅をコーティングすることが行われている。また、電子機器から放射される電磁波をシールドするために、電子機器のハウジングの内側に銅やニッケル等をコーティングすることも行われている。このように、各種の基材表面に金属をコーティングすることは、様々な産業分野における重要な基本技術となっている。
【0003】
基材表面に金属をコーティングするための方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等のように、真空系内において金属をコーティングする乾式めっき法や、溶液中において基材の表面に金属を析出させる無電解めっき法等が行われている。この中でも、無電解めっき法による金属コーティングは、真空系を保持するための大掛かりな装置が必要とされる乾式法と比べて装置が単純であり、連続処理も可能で、操作も比較的簡単である等の理由から広く実用化されている。
【0004】
しかし、無電解めっき法による金属コーティングでは、金属析出を促進させるために高価なパラジウム触媒を被めっき物に付与する必要があり、このため前処理工程に要する費用負担が大きくなるという問題があった。また、パラジウム触媒を被めっき物に付与する方法としては、被めっき物を塩化スズ(II)の塩酸溶液に浸漬した後、塩化パラジウムの塩酸溶液に浸漬する方法や、スズ-パラジウム混合コロイド溶液に浸漬して触媒を付与した後、硫酸などの酸性溶液からなるアクセレーター溶液に浸漬して、過剰のスズイオンを溶解させて触媒活性を向上させる方法等があるが、いずれの方法においても工程数が多く、管理が複雑となり、このことも前処理工程のコストの高騰化の一因となっていた。
【0005】
これに対し、発明者らは、従来の無電解めっき液と異なる手法により、パラジウムなどの触媒を用いる必要のない金属コーティング方法を開発している(非特許文献1、2)。

【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry, 2004,14,976-981
【非特許文献2】Journal of Colloid and Interface Science 263(2003)190-195
【0006】
非特許文献1に記載の金属コーティング方法は、シリコンウエハー表面を3-アミノプロピルトリエトキシシランで処理して表面にアミノ基を修飾した後、無電解銅めっき液によって銅コーティングを行う方法である。この方法では、無電解銅めっき液中に生じた銅粒子がアミノ基に静電的に吸着し、貴金属触媒を用いることなく銅コーティングを行うことができる。しかも、銅コーティングを行う前に、フォトマスクを使用して紫外線照射を行えば、領域選択的に銅パターンを形成することもできる。
【0007】
また、非特許文献2に記載の金属コーティング方法は、チタン酸バリウム表面を3-アミノプロピルトリエトキシシランで処理して表面にアミノ基を修飾した後、無電解ニッケルめっき液によってニッケルコーティングを行う方法である。この方法によっても上記非特許文献1の方法と同様の原理によってニッケルコーティングを行うことができ、さらには、同様の方法によって領域選択的にニッケルのパターン形成を行うことも可能である。
【0008】
さらに、発明者らは、アミノ基を有し、加水分解によって縮重合可能な含アミノ有機シリコン化合物と、アミノ基と反応してイミン化合物を生成するカルボニル化合物とを混合したシリコン処理液によって基材表面を処理し、その後に無電解めっき液によって金属をコーティングする方法について、特許出願を行っている(特願2003-324238)。この方法によれば、貴金属触媒を用いる必要がないだけでなく、どのような基材に対しても金属をコーティングすることができる。また、シリコン処理液で基材表面を処理した後、さらにポリシロキサン膜を形成させ、エネルギー照射によって表面に存在する分子鎖を脱離させた後、無電解めっき液によって金属をコーティングすれば、領域選択的な金属コーティングを行うこともできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記非特許文献1、2や上記特許出願の方法で得られる金属コーティング皮膜は、金属微粒子と修飾された基材表面との静電相互作用によって形成されることを原理としているため、金属微粒子どうしの結合力が弱く、導電性が若干低くなるという問題があった。また、自己分解する無電解めっき浴中で金属の微粒子を析出させながら金属コーティングを行っているため、無電解めっき浴の浴寿命が短いという問題もあった。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、貴金属触媒を用いる必要がなくて前処理工程数が少なく、コーティング皮膜の導電性に優れており、パターン形成も可能で、金属コーティングするための処理液の寿命の長い金属コーティング方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記課題解決のため、銅等の金属と親和性の高いチオール基に注目した。そして、鋭意研究を行った結果、基材表面にチオール基を修飾させた後に、金属をコーティングすれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の金属コーティング方法は、物質の表面にチオール基を修飾させることが可能なチオール基修飾化合物によって基材の表面にチオール基を修飾させる修飾工程と、該チオール基修飾化合物によって修飾された該基材を金属イオンと該金属イオンを還元可能な還元剤とを含んだ無電解めっき液に接触させて該基材の表面のチオール基修飾化合物によって修飾された部分に金属を析出させる金属析出工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の金属コーティング方法では、まず修飾工程において、チオール基修飾化合物によって基材の表面にチオール基を修飾する。次に、金属析出工程として、チオール基で修飾された基材を金属析出液に接触させることによって、基材の表面のチオール基修飾化合物によって修飾された部分に金属を析出させる。発明者らの試験結果によれば、こうして析出した金属は導電性に優れており、密着性も良好であった。また、この金属コーティング方法は、貴金属触媒を基材表面に付与する必要はなく、処理工程数も少ない。このため、処理コストが低廉なものとなる。さらに、無電解めっき液の中で自己分解的に金属微粒子を析出させなくても、金属コーティングを行うことができるため、浴寿命が長いという利点もある。
【0014】
本発明における修飾工程において使用可能なチオール基修飾化合物としては、物質の表面にチオール基を修飾させることが可能な化合物ならば用いることができる。このような化合物としては、加水分解によって縮重合可能な含チオール有機シリコン化合物(例えば、チオール基を有するシリコントリアルコキシド、チオール基を有するシリコンジアルコキシド、チオール基を有するシリコンモノアルコキシド、チオール基を有するシリコントリハライド、チオール基を有するシリコンジハライド、チオール基を有するシリコンモノハライド等)や、チオール基を有するチタンアルコキシド、チオール基を有するジルコニウムアルコキシド、チオール基を有するタンタルアルコキシド、チオール基を有するゲルマニウムアルコキシド、チオール基を有するカルボン酸、チオール基を有するアミン等を用いることができる。発明者らは、チオール基修飾化合物として、加水分解によって縮重合可能な含チオール有機シリコン化合物を用いることにより、導電性に優れ、密着性が良好な金属を基材表面に確実にコーティングできることを確認している。
【0015】
チオール基修飾化合物による基材表面へのチオール基の修飾は、化学的結合による修飾であろうと、物理的な吸着による修飾であろうと、どちらでもかまわない。また、チオール基修飾化合物中のチオール基の数は複数であってもよい。さらには、チオール基修飾化合物を2種以上を併用することもできる。
【0016】
また、金属析出工程で用いられる無電解めっき液に含まれる金属イオンとしては、銅イオンやニッケルイオン等が挙げられる。この中でも、銅イオンは特に好ましい。発明者らの試験結果によれば、金属イオンが銅イオンである場合、基材表面に導電性及び密着性に優れた銅を析出させることができる。この理由は、銅とチオール基との親和性が特に高いことに起因するものと推測される。
【0017】
また、無電解めっき液に添加される還元剤としては、ジメチルアミンボランや次亜リン酸塩等が挙げられる。これらの成分の他、酸化還元電位を調整するためにEDTA等の錯化剤を添加したり、ホウ酸等のpH調整剤を添加することももちろん可能である。
【0018】
本発明の金属コーティング方法において、修飾工程後、金属析出工程前に、基材の表面の一部にエネルギー照射を行うパターン形成工程を備えれば、領域選択的に金属を析出させることが可能となる。この原理は、次のように説明される。すなわち、修飾工程において基材表面に修飾されたチオール基は、エネルギー照射によって分子鎖の脱離反応が生じてチオール基とともに脱離する。このため、次の金属析出工程において、エネルギー照射を受けた場所では、金属の析出が起こらず、パターンが形成されるのである。こうして、フルアディティブによる金属めっきパターン形成が可能となる。
【0019】
エネルギー照射の方法としては、例えば紫外線照射、電子線照射、X線照射、光照射、イオンビーム照射などの方法が挙げられる。この中でも、紫外線照射は装置が簡易であり、分子鎖の脱離も迅速に行われるため好適である。
【0020】
また、本発明の金属コーティング方法における修飾工程前に、基材の表面を親水処理する親水化工程を備えることもできる。こうであれば、修飾工程においてチオール基修飾化合物によって基材の表面にチオール基を確実に修飾させることができることとなり、プラスチック等、様々な種類の基材に対して、本発明による金属コーティングを行うことが可能となる。
【0021】
親水処理の方法としては、例えば、基材の表面をシランカップリング剤で処理した後、紫外線等によるエネルギー照射を行って親水化する方法や、テトラアルコキシシランを加水分解した液中に基材を浸漬した後乾燥して表面にシリカ膜を形成させるゾル-ゲル法や、PET等のプラスチックの表面をプラズマ処理して親水化するプラズマ処理法等が挙げられる。発明者らは、シランカップリング剤を用いる親水化処理として、アミノ基を有し加水分解によって縮重合可能な含アミノ有機シリコン化合物と、該アミノ基と反応してイミン化合物を生成するカルボニル化合物とを混合してシリコン処理液とする混合工程と、該シリコン処理液によって基材の表面を処理するシリコン処理工程と、該シリコン処理工程によって処理された基材の表面にエネルギー照射をする照射工程とからなる親水化工程によって、導電性及び密着性に優れた銅コーティングを確実に行うことができることを確認している。この親水化工程では、シリコン処理工程において基材表面がシリコン処理液の縮重合反応によってコーティングされ、さらに照射工程におけるエネルギー照射によって、コーティング中の分子鎖がSiとの間で切断されてシラノール基となり、その結果表面が親水性を有することとなる。エネルギ照射の方法としては、例えば紫外線照射、電子線照射、X線照射、光照射、イオンビーム照射などの方法が挙げられる。この中でも、紫外線照射は装置が簡易であり、分子鎖の脱離も迅速に行われるため好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施例について詳述する。
【0023】
(実施例1)
実施例1では基材としてポリエチレンフタレート(以下「PET」と略す)フィルム(Yunitika エンブッレト 厚さ50μm)を用い、図1に示す工程(S1~S6)を行った。以下それらの工程を詳述する。
【0024】
<混合工程S1>
含アミノ有機シリコン化合物として3-アミノプロピルトリメトキシシラン(以下「APTMS」と略す)を用意し、これをアセトン中に1容量%となるように加えて混合し、室温下で2週間静置したものをシリコン処理液とする。
【0025】
<シリコン処理工程S2>
次に、アセトン、エタノールの順で5分づつ超音波洗浄したPETフィルムを50°Cの乾燥機において乾燥させた後、混合工程S1で得られたシリコン処理液中に液面と垂直方向から静かに浸漬した後、そのまま静かに引き上げる操作を3回繰り返した後、自然乾燥を行う。
【0026】
<照射工程S3>
シリコン処理工程S2が終了したPETフィルムに対して5分間の紫外線照射(200Wの低圧水銀ランプ)を行う。ここまでの混合工程S1、シリコン処理工程S2及び照射工程S3が親水化工程である。
【0027】
<修飾工程S4>
チオール基修飾化合物としてのメルカプトプロピルトリメトキシシラン(以下「MPTS」と略す)を用意し、これをグローブボックス内でトルエン中に1容量%となるように加えてMPTS溶液とする。そして、照射工程S3を終えたPETフィルムをMPTS溶液の液面と垂直方向から静かに浸漬した後、そのまま静かに引き上げた後、乾燥機にて50°Cで乾燥させる。
【0028】
<パターン形成工程S5>
上記修飾工程S4を終えたPETフィルム上に所定パターンのフォトマスクを載せ、5分間の紫外線照射(200Wの低圧水銀ランプ)を行う。
【0029】
<金属析出工程S6>
以下に示す無電解銅めっき液を用意する。
CuCl2 ・・・・・・・0.05mol/L
EDTA・2Na・・・・0.05mol/L
ホウ酸・・・・・・・・・0.1mol/L
ジメチルアミンボラン・・0.1mol/L
pH・・・・・・・・・・7.0
この無電解銅めっき液を50°Cに加温し、その中へ上記パターン形成工程S5を終えたPETフィルムを3時間浸漬した後引き上げ、水洗及び乾燥を行い、実施例1の銅パターン形成PETフィルムを得た。
【0030】
(比較例1)
比較例1では、上記実施例1におけるMPTSによるチオール基修飾の効果を確かめるため、照射工程S3及び修飾工程S4を省略した。すなわち、比較例1では混合工程S1及びシリコン処理工程S2を行った後、パターン形成工程S5及び金属析出工程S6を行った。
【0031】
<評価>
上記工程によって得られた実施例1及び比較例1の表面処理PETフィルムについて、以下の試験を行った。
【0032】
(1)光学顕微鏡観察
光学顕微鏡を用いて観察した結果、実施例1の表面処理PETフィルムでは、図2に示すように、パターン形成工程S5において紫外線が照射された部分には銅が析出し、紫外線が照射されなかった部分には銅が析出しなかった。また、その解像度も高いものであった。これに対し、チオール基による表面修飾を行わなかった比較例1では、図3に示すように、紫外線照射の有無にかかわらず、銅の析出は起こらなかった。
【0033】
(2)X線回折測定
実施例1の表面処理PETフィルム、比較例1の表面処理PETフィルム、及び未処理PETフィルムの表面のX線回折測定を行った結果を図4に示す。この図からわかるように、実施例1の表面処理PETフィルムでは、パターン形成工程S5における紫外線未照射部分にのみCuメタルに基づくピークが観測され、紫外線照射部分からは検出されなかった。これに対して、比較例1の表面処理PETフィルムでは、紫外線照射の有無にかかわらず、Cuメタルに基づくピークは観測されなかった。これらの結果は、上記光学顕微鏡観察の結果を支持している。
【0034】
(3)XPS測定
実施例1におけるパターン形成工程S5を行った直後の表面のXPS測定を行った結果を図5に示す。この図からわかるように、パターン形成工程S5において紫外線照射されなかった部分のみからS2p3/2に基づくピークが検出された。このことから、表面に修飾されたチオール基は、紫外線の照射によって脱離することが分かった。
【0035】
(4)接触角の測定
実施例1における未処理PET及び各工程後の水に対する接触角を測定した結果を図6に示す。この図から、照射工程S3を行うことによって接触角が大幅に小さくなり、親水性が増大することが分かる。これは、シリコン処理工程S2においてAPTMSによって修飾された表面のアルコキシ基が脱離してシラノール基に変化したことによるものと説明される。また、修飾工程S4によって再び大きな接触角となるのは、チオールの修飾によるものと説明される。さらにパターン形成工程S5で紫外線照射された部分の接触角が小さくなるのは、アルコキシチオール鎖が脱離してシラノール基となったことによるものと説明される。
【0036】
(5)導電率の測定
実施例1の表面処理PETフィルムについて、銅コーティングされた部分の導電率を四単針法によって測定した結果、7.8×104(S/cm)という高い値が得られた。
【0037】
(6)原子間力顕微鏡(AFM)による膜厚測定
実施例1の表面処理PETフィルムについて、銅コーティングされた部分の厚みをAFMによって測定した結果、60~100nmであった。
【0038】
上記試験(1)~(6)の結果から、実施例1による銅パターン形成の原理を次のように説明することができる。すなわち、図7に示すようにPETフィルム1にシリコン処理工程S2を行うことによって、含イミン有機シリコン化合物縮合皮膜2が生ずる。そして、照射工程S3において含イミン有機シリコン化合物縮合皮膜2の表面を紫外線照射することにより、分子鎖が脱離してシラノール基となる。さらに、修飾工程S4において、MPTSによってシラノール基の水素がメルカプトプロピル基に修飾される。そして、パターン形成工程S5として、フォトマスクを用いて部分的に紫外線を照射することにより、紫外線照射部分のメルカプトプロピル基が脱離してシラノール基に戻る。最後に金属析出工程S6として、無電解銅めっき液によって処理することにより、銅と親和性の高いSH基が残留している紫外線未照射部分に銅が析出する。こうして、PETの表面に銅のパターンを形成することができるのである。
【0039】
以上のように、実施例1の銅パターン形成では、前処理工程としてシリコン処理液に浸漬して乾燥した後、紫外線線を照射するだけであるので、貴金属触媒を用いる必要がなく、工程数も少ない。また、析出した銅の導電性も優れており、解像度の高いパターン形成が可能である。また、金属析出工程S6における無電解銅めっき液も中性領域であり、浴の自己分解はほとんど起こらず、浴寿命が非常に長いという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明はプラスチックやセラミック等、各種の基材表面に金属を被覆することが可能であり、プリント配線基板、電子機器のハウジングの電磁波シールド等、様々な産業分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の工程図である。
【図2】実施例1の銅パターン形成PETフィルム表面の光学顕微鏡写真である。
【図3】比較例1の表面処理PETフィルム表面の光学顕微鏡写真である。
【図4】実施例1、比較例1及び未処理PETフィルムの表面のX線回折スペクトルである。
【図5】実施例1におけるパターン形成工程S5後のXPSのナロースキャンの測定結果である。
【図6】実施例1における未処理PET及び各工程後の接触角の測定結果である。
【図7】実施例1における各工程を表わした模式図である。
【符号の説明】
【0042】
S4…修飾工程
S5…パターン形成工程
S6…金属析出工程
S1、S2、S3…親水化工程(S1…混合工程、S2…シリコン処理工程、S3…照射工程)
1…基材(PETフィルム)
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図2】
5
【図3】
6