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明細書 :ナノ粒子を水溶化させる高分子化合物とこれを用い水溶化されたナノ粒子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4820981号 (P4820981)
公開番号 特開2006-239552 (P2006-239552A)
登録日 平成23年9月16日(2011.9.16)
発行日 平成23年11月24日(2011.11.24)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 ナノ粒子を水溶化させる高分子化合物とこれを用い水溶化されたナノ粒子
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
B01J   2/00        (2006.01)
G01N  33/58        (2006.01)
FI B01J 19/00 N
B01J 2/00 B
G01N 33/58 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2005-058282 (P2005-058282)
出願日 平成17年3月3日(2005.3.3)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】堤 宏守
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特表2004-517712(JP,A)
特表平07-505917(JP,A)
調査した分野 B01J19/00
B01J13/00
B01J2/00
B82B1/00,3/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
特許請求の範囲 【請求項1】
不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体との共重合体からなる親水化処理剤で水溶化された半導体ナノ粒子。
【請求項2】
請求項1記載の親水化処理剤で水溶化された半導体ナノ粒子からなる生体標識材料。
【請求項3】
不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体との共重合体からなる請求項1記載の半導体ナノ粒子の水溶化用親水化処理剤。
【請求項4】
0.01~50モル%の不飽和高級脂肪酸と99.99~50モル%の1種又は2種以上の水溶性単量体との、分子量1000以上の共重合体からなる請求項3記載の半導体ナノ粒子の水溶化用親水化処理剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶化されたナノ粒子に関する。本発明は、水溶化ナノ粒子からなる生体標識材料に関する。本発明は、ナノ粒子の水溶化に好適な親水化処理剤に関する。そして、本発明は、この親水化処理剤を構成する高分子化合物を製造する方法に関する。本発明は、この親水化処理剤に使用するのが好適な高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書においては、半導体ナノ粒子を単にナノ粒子とも指称する。
【0003】
粒径が10nm付近より小さいナノ粒子は、バルク半導体結晶と分子との中間領域に位置することから、いずれとも異なった物理化学特性を示す。このような領域では、量子サイズ効果の発現により、粒径の減少に伴って半導体ナノ粒子のエネルギーギャップが増大する。さらにこれに付随して、バルク半導体で見られたエネルギーバンドの縮退が解け軌道が離散化し、伝導帯下端が負側に、価電子帯上端が正側にシフトする。
【0004】
粒径が10nm付近より小さいナノ粒子が注目されている所以は、半値全幅の狭い強い蛍光を発することを特徴とするため、さまざまな蛍光色の創製が可能であり、従来の蛍光色素などが使用されている分野をはじめ,光利用技術や医療分野への応用など、将来の応用用途がほぼ無限に考えられるためである。
【0005】
そして、粒径が10nm付近より小さいナノ粒子の性質は、現在用いられている有機色素等の試薬よりも耐久性が高く、ほとんど褪色しない。さらに、その粒径を変化させることでさまざまな半値全幅の狭いスペクトルを示す試薬を同一の材料で創製することができ、光デバイス等における応用のみならず、生体高分子検出及びバイオイメージングなどにおいても利用することが可能である。
【0006】
CdS半導体ナノ粒子の製造方法は、Cd及びSの前駆体を等モル量溶解することで簡単に調製することができる。これらは、CdSe、ZnS、ZnSe、HgS、HgSe、PbS、PbSe等における製造についても同様である。
【0007】
粒径が10nm付近より小さいナノ粒子を生体標識材料に使用するアイディアは、クォンタムドット(Quantum Dot)社で既に商品化されている。
【0008】
しかしながら、このようなナノ粒子は、調製上の制約から疎水性安定剤(トリオクチルホスフィンオキシドなど)に覆われており、生体標識材料として用いるためには、ナノ粒子のこの疎水性表面を親水化して、ナノ粒子を水中に可溶化する必要があり、いろいろな方法が提案されている。
【0009】
ナノ粒子を水中に可溶化する従来例
(1)チオ-ル基を有するカルボン酸やアミノ酸を用いる例
(a)チオグリコ-ル酸を用いる例(非特許文献1)
(b)チオコハク酸,チオスルホン酸,シスタミン,システインを用いる例(非特許文献2)
(c)ジヒドロリポ酸を用いる例(非特許文献3)
(2)リン脂質などを用いる例(ナノ粒子表面に存在する疎水性の安定化剤の疎水性部分との相互作用を利用したもの)(非特許文献4)
(3)ポリマ-を利用した例
(a)ポリエチレングリコ-ル系ポリマーを利用した例(非特許文献5)
(b)スチレン-アクリル酸ブロック共重合体を用いた例(非特許文献6)
(c)オリゴペプチドを用いた例(非特許文献7)
(d)不飽和高級脂肪酸を表面修飾した後,不飽和高級脂肪酸内の二重結合を足場としてポリマ-を修飾した例(ただし,この場合は金ナノ粒子を使用)(非特許文献8)
(4)ピリジンを用いる例(非特許文献9)
(5)クォンタムドット(Quantum Dot)社の例
クォンタムドット(Quantum Dot)社は、そのホームページで、ナノ粒子を次のように紹介している。
【0010】
QDナノ粒子(Qdot Nanocrystal商標)は、半導体材料(CdSe)のナノメートルスケールの結晶である。この粒子は、材料の光学的性質を改良するためにその外側を半導体シェル(ZnS)で覆われている。これらの材料は、放出極大が655付近の、狭い対称的放出スペクトルを有している。このコア-シェル材料はさらにポリマーシェルで覆われ、この材料を生物学的分子に結合可能にし、そして、光学的性質が改良されるようにしている。このポリマーシェルは直接抗体に結合できる。
【0011】
従来の可溶化手法の問題点
チオ-ル基を有する化合物を用いた可溶化の手法については、可溶化後の安定性、特にナノ粒子の凝集を防ぐ効果があまり高くなく、数日で凝集してしまう。
【0012】
また、先行文献で用いられているポリペプチドはその合成が容易ではない。ポリペプチドなどによる表面修飾は、CdSeナノ粒子に抗体などを結合させて利用する際には、抗体による抗原分子認識を妨害する可能性もある。
【0013】
枝分かれの多い高分子材料による修飾では、修飾後のナノ粒子の大きさが大きくなり、組織染色などに用いる場合には、組織内の拡散速度が低下し、染色効率が低下する可能性がある。

【非特許文献1】Warren C.W.Chan and Shuming Nie,Science,281,2016-2018(1998).
【非特許文献2】Alyona Sukhanova,Jerome Devy,a Lydie Venteo,Herv e Kaplan,Mikhail Artemyev,Vladimir Oleinikov,a,c Dmitry Klinov,Michel Pluot,Jacques H. M. Cohen,Igor Nabieva,Analytical Biochemistry 324,60-67(2004).
【非特許文献3】H.Mattoussi,J.M.Mauro,E.R.Goldman,J.Am.Chem.Soc.122,12142-12150(2000).
【非特許文献4】Benoit Dubertret,Paris Skourides,David J.Norris,Vincent Noireaux,Ali H.Brivanlou,Albert Libchaber,Science,298,1759-1762(2002).
【非特許文献5】Byron Ballou,B.Christoffer Lagerholm,Lauren A.Ernst,Marcel P.Bruchez,Alan S.Waggoner,Bioconjugate Chem.15,79-86(2004).
【非特許文献6】C.-W.Wang and M.G.Moffitt,Langmuir,20,11784-11796(2004).
【非特許文献7】Fabien Pinaud,David King,Hsiao-Ping Moore,Shimon Weiss,Journal of American Chemical Society,(2004).(Web公開版:)冊子体:126,6115-6123(2004)
【非特許文献8】Jun-Hyun Kim,T.Randall Lee,Chemical Materials,(2004).(Web公開版:)冊子体:16,3647-3651(2004)
【非特許文献9】Chunxin Zhang,Stephen O‘Brien,and Lajos Balogh,J.Phys.Chem.B 106,10316-10321(2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、水中で安定な、水溶化ナノ粒子を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、水溶化ナノ粒子からなる生体標識材料を提供することを目的とする。
【0016】
本発明は、抗体による抗原分子認識を妨害することのない、ナノ粒子の水溶化に好適な、親水化処理剤を提供することを目的とする。
【0017】
本発明は、組織染色などに用いる場合に、組織内の拡散速度が低下せず、そして、染色効率が低下しない水可溶化ナノ粒子を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、ナノ粒子の水溶化に好適な、合成が容易な、親水化処理剤を提供することを提供することを目的とする。
【0019】
本発明は、この親水化処理剤に使用するのが好適な、高分子化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
本発明は、この親水化処理剤に使用するのが好適な、高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、不飽和高級脂肪酸と水溶性単量体との共重合体を新たに製造した。そして、この共重合体をナノ粒子に被覆することにより、ナノ粒子を親水化すれば、ナノ粒子を水中に可溶化することができ、生成する可溶化液は安定で、凝集を起こさないことを見出した。
【0022】
そこで、本発明のうち、請求項1に記載の発明は、不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体との共重合体からなる親水化処理剤で水溶化された半導体ナノ粒子である。
【0023】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1のナノ粒子からなる生体標識材料である。
【0024】
更に、請求項3に記載の発明は、不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体との共重合体からなる請求項1記載の半導体ナノ粒子の水溶化用親水化処理剤である。請求項4に記載の発明は、請求項3に係る半導体ナノ粒子の水溶化用親水化処理剤の具体的な重合体の構造に関する発明で、0.01~50モル%の不飽和高級脂肪酸と、99.99~50モル%の1種又は2種以上の水溶性単量体との、分子量1000以上の共重合体からなる半導体ナノ粒子の水溶化用親水化処理剤である。
【発明の効果】
【0025】
従来の水溶化剤によるナノ粒子水溶化剤が、数日間程度の安定性であったのに対し、本発明のナノ粒子は、不飽和高級脂肪酸と水溶性単量体との共重合体により親水化されると、生成する水分散液が安定で、少なくとも3週間は凝集を起こさなかった。そして、本発明においてナノ粒子の親水化剤として使用するのに好適な、不飽和高級脂肪酸と水溶性単量体との共重合体は、合成が容易である。そして、この共重合体から成る親水化処理剤は、抗体による抗原分子認識を妨害することがない。また、本発明の水溶化ナノ粒子を組織染色などに用いる場合に、組織内の拡散速度が低下せず、そして、染色効率が低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書における用語
本明細書において、「ナノ粒子」とは、粒径が200nm以下の半導体粒子をいう。このうち粒径が10nm程度より小さいものは、強い蛍光を発するので、好ましいナノ粒子である。
【0027】
本明細書において「親水化処理剤」とは、疎水性の表面を親水性にする材料を意味する。本発明の親水化処理剤は、10nm以下のナノ粒子表面に限らず、10nmよりも径の大な粒子表面の疎水性表面をも親水化することができる。また、粒子表面に限らずどのような疎水性表面をも親水化することができる。
【0028】
ナノ粒子表面を親水化した場合、これを水中に分散することにより透明な水中分散液が生成するとき、本明細書ではナノ粒子を「水溶化」した、という。或いは、ナノ粒子を水中に「可溶化」したという。そして、この透明な水中分散液を「ナノ粒子の水溶液」又は「ナノ粒子の水可溶化液」という。
【0029】
なお、本明細書において「ナノ粒子の水溶液」又は「ナノ粒子の水可溶化液」という用語を使用しても、ナノ粒子は、水中において、物理化学的な意味での真溶液を形成することを意味するものではない。これは澱粉の水溶液という用語を使用しても、これが真溶液を意味するものでないのと同じ事情である。
【0030】
本発明の親水化処理剤は、不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体との共重合体からなるものである。
【0031】
本発明の親水化処理剤として使用するのに好適な共重合体は、不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体とを共重合させることにより製造できる。
【0032】
不飽和高級脂肪酸成分
本発明の不飽和高級脂肪酸と水溶性単量体との共重合体において、不飽和高級脂肪酸成分は、共重合体をナノ粒子の疎水性表面に親和性にする役割を持つ。ナノ粒子表面に親和性を持たせるために、共重合体中の不飽和高級脂肪酸の割合は、0.01モル%以上であることが必要である。ナノ粒子表面に親和性を持たせるために、共重合体中の不飽和高級脂肪酸の割合は、多いほうが好ましいが、50モル%を超えると親水化することができなくなる。親水化のためには、30モル%以下のほうが好ましい。
【0033】
本発明で使用する不飽和高級脂肪酸としては特に限定されないが、一般に炭素数8以上、特に炭素数10以上で分子中に不飽和基を1個以上有するものである。かかる不飽和高級脂肪酸を例示すると、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸等が挙げられ、この他にもオクタデセン酸、エライジン酸、分岐オクタデセン酸、イソオレイン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、ウンデシレン酸、エルカ酸等が挙げられる。中でも、安価なオレイン酸を使用するのが、製造上好ましい。
【0034】
水溶性単量体
本明細書で「水溶性単量体」とは、水溶性官能基を持つ重合性エチレン性不飽和化合物のことをいう。「水溶性官能基」とは、共重合体に水溶性を付与する官能基である。「水溶性官能基」には、(1)アミノ基、アミド基などの窒素含有基、これらの窒素含有基の第4級アンモニウム塩基、(2)カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などの酸基、これらの酸基の塩、(3)水酸基、等がある。
【0035】
本発明の親水化処理剤に使用する共重合体は、水溶性単量体成分として、1種又は2種以上使用することができる。
【0036】
水溶性単量体の共重合割合は、50モル%より少ないと共重合体を十分に水溶性にすることができない。水溶性にするには、70モル%以上のほうがより好ましい。
【0037】
水溶性単量体として、次のものが例示される。
(1) 窒素含有単量体には、アミド基を有する単量体やアミノ基を持つ単量体がある。
【0038】
アミド基を有する単量体の例としては、N-イソプロピルアクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-n-イソプロピルメタクリルアミド、N-シクロプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアクリルアミド、及びN-メチル-N-n-プロピルアクリルアミドなどが例示され、好ましくは、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)である。
【0039】
アミノ基を持つ水溶性単量体の例としては、ジアリルアミンや、N-ビニルピロリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール等がある。
(2) 酸性基を有する単量体
酸性基としては、カルボキシル基やリン酸基やスルホン酸基などがある。
【0040】
カルボキシル基を有する水溶性単量体としては、例えば不飽和モノカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、桂皮酸等;不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等;不飽和ジカルボン酸(上記)のモノアルキル(炭素数1~8)エステル、例えばマレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体、それらの無水物[無水マレイン酸等]等、及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
【0041】
燐酸基を有する水溶性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)の燐酸モノエステル[例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルのモノホスフェート等]、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)の燐酸ジエステル[例えばフェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート等]、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数2~6)ホスホン酸類[例えば、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0042】
これらの塩としては例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩[アンモニウム、テトラアルキル(炭素数1~8)アンモニウム例えばテトラオクチルアンモニウム等]、有機アミン塩[炭素数2~8のアルカノールアミン、ポリアルキレン(炭素数1~8)ポリアミン(アミノ基数2~10)若しくはその誘導体[炭素数1~8のアルキル化物、炭素数2~12のアルキレンオキサイド付加物(1~30モル)等]、炭素数1~4の低級アルキルアミン等]等が挙げられる。
(3) 水酸基を有する単量体
水酸基を有する単量体としては、例えば、モノエチレン性不飽和アルコール[例えば、(メタ)アリルアルコール等];2価~6価又はそれ以上のポリオール(例えば、炭素数2~20のアルキレングリコール、グリセリン)のモノエチレン性不飽和エステルまたはエーテル[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等]等がある。
【0043】
水酸基を持つ水溶性単量体の例としては、ビニルアルコールも含まれる。なお、ビニルアルコールという化合物は存在しないが、酢酸ビニルを共重合したのち、共重合体を加水分解すれば、ビニルアルコールの共重合体が生成する。
【0044】
共重合体の製造
本発明の共重合体は、不飽和高級脂肪酸と水溶性単量体とを共重合させることにより製造できる。
【0045】
ラジカル重合により、この共重合体は、容易に製造できる。
【0046】
不飽和高級脂肪酸と、1種又は2種以上の水溶性単量体とを、ラジカル重合すると、不飽和高級脂肪酸と1種又は2種以上の水溶性単量体とがランダムに配列した共重合体が生成する。
【0047】
分子量は1000以上であれば親水化処理剤として使用できる。
【0048】
分子量をGPCでつぎのように測定した。
【0049】
Shodexカラム(KW803)、(内径8.0mm×長さ300mm,1本使用)を用い、リン酸緩衝液を溶離液として、流速1ml/minで溶出時間を測定することにより、プルランを標準試料として分子量を見積った。
【0050】
ナノ粒子の処理方法
本発明の親水化処理剤をナノ粒子に被覆すれば、ナノ粒子を水に可溶化することができる。
【0051】
ナノ粒子の有機溶媒溶液と親水化処理剤の有機溶媒溶液とを混合攪拌することにより、有機溶媒中でナノ粒子を親水化処理剤で被覆することができる。有機溶媒を留去することにより、親水化処理剤被覆ナノ粒子が生成する。これに水を加えればナノ粒子水溶液(水可溶化液)が生成する。また、有機溶媒を留去する前の、水溶化ナノ粒子/有機溶媒に対して、有機溶媒を水に徐々に置換することで、ナノ粒子水溶液(水可溶化液)が生成する。
【0052】
ナノ粒子の水可溶化液の製造
処理(a)
有機溶媒を留去することにより生成した、親水化処理剤被覆ナノ粒子に水を加えるというナノ粒子水溶液を製造することを処理(a)という。
【0053】
このようなハードな条件でも、本発明の親水化処理剤によって、ナノ粒子の水溶液(ナノ粒子の水可溶化液)を製造することができた。
【0054】
処理(b)
有機溶媒を留去する前の、水溶化ナノ粒子/有機溶媒に対して、有機溶媒を水に徐々に置換することで、ナノ粒子水溶液を製造することを処理(b)という。
このような条件でも、本発明の親水化処理剤によって、ナノ粒子の水溶液(ナノ粒子の水可溶化液)を製造することができる。
【0055】
水可溶化ナノ粒子(水溶化ナノ粒子)の蛍光スペクトル
水可溶化ナノ粒子(水溶化ナノ粒子)は、使用する親水化処理剤によって蛍光スペクトルが異なる。
【0056】
生体標識材料
本発明の親水化処理剤で水可溶化されたナノ粒子は、生体標識材料として好適に使用できる。
【実施例1】
【0057】
アクリル酸(5モル%)-N-イソプロピルアクリルアミド(90モル%)-オレイン酸(5モル%)の共重合体の製造
重合管にN-イソプロピルアクリルアミド(以下NIPAMと省略)1.13g(1×10-2mol)、アクリル酸38μl(5.5×10-4mol)、オレイン酸0.18ml(5.5×10-4mol)を入れ、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチニトリル)(以下AIBNと省略)7mg(4.2×10-5mol)、溶媒としてテトラヒドロフラン(以下THFと省略)2mlを加え、脱気した後、オイルバス中70℃で20時間重合させた。重合終了後、重合溶液を室温まで冷却し、重合管の内容物をヘキサン30mlに加え、再沈殿させた。上澄みをデカンテーションにより取り除き、再度ヘキサン30mlを加え、洗浄後、乾燥させ共重合体を得た。
【0058】
実施例1の共重合体をP[Ac(5)NIPAM(90)Ole(5)]とする。
【0059】
分子量をGPCでつぎのように測定した。
【0060】
Shodexカラム(KW803)、(内径8.0mm×長さ300mm,1本使用)を用い、リン酸緩衝液を溶離液として、流速1ml/minで溶出時間を測定することにより、プルランを標準試料として分子量を見積った。
【0061】
プルランを標準試料として分子量を見積もると,分子量81600であった。
【0062】
図1は、実施例1の共重合体のIRスペクトルである。図4は、実施例1の共重合体のNMRスペクトルである。
【実施例2】
【0063】
アクリル酸(10モル%)-N-イソプロピルアクリルアミド(85モル%)-オレイン酸(5モル%)の共重合体の製造
重合管にNIPAM0.9g(7.95×10-3mol)、アクリル酸64μl(9.35×10-4mol)、オレイン酸0.15ml(4.68×10-4mol)を入れ、開始剤としてAIBN0.03g(1.87×10-4mol)、溶媒としてTHF2mlを加え、脱気した後油浴中70℃で24時間重合し、後の操作は、前項と同様に行った。
【0064】
実施例2の共重合体をP[Ac(10)NIPAM(85)Ole(5)]とする。
【0065】
分子量を実施例1と同じ方法で測定した。
【0066】
プルランを標準試料として分子量を見積もると,分子量99200であった。
【0067】
図2は、実施例2の共重合体のIRスペクトルである。図5は、実施例2の共重合体のNMRスペクトルである。
【実施例3】
【0068】
アクリル酸(5モル%)-N-イソプロピルアクリルアミド(85モル%)-オレイン酸(10モル%)の共重合体の製造
重合管にNIPAM0.9g(7.95×10-3mol)、アクリル酸32μl(4.68×10-4mol)、オレイン酸0.3ml(9.35×10-4mol)を入れ、開始剤としてAIBN0.03g(1.87×10-4mol)、溶媒としてTHF2mlを加え、後の操作は前項と同様に行った。
【0069】
実施例3の共重合体をP[Ac(5)NIPAM(85)Ole(10)]とする。
【0070】
分子量を実施例1と同じ方法で測定した。
【0071】
プルランを標準試料として分子量を見積もると,分子量37200であった。
【0072】
図3は、実施例3の共重合体のIRスペクトルである。図6は、実施例3の共重合体のNMRスペクトルである。
【実施例4】
【0073】
実施例1で合成した共重合体によるナノ粒子の水溶化
使用したCdSeナノ粒子は、CdSeナノ結晶の表面をZnSによってコートしたものであり、有機溶媒中における分散安定性を付与するために、トリオクチルホスフィンとオレイン酸でコートされたものであり、クロロホルムに溶解させた状態で使用した。なお、このナノ粒子は独立行政法人産業技術総合研究所九州センタ-から提供されたものをそのまま使用した。
【0074】
提供を受けたCdSeナノ粒子のクロロホルム溶液30μlをサンプル管に量り取った後、クロロホルムを留去した。ここにテトラヒドロフラン(THF)2mlを加え、溶解後サンプル管2つに1mlずつ取り分けた。このサンプル管に入ったCdSeナノ粒子のTHF溶液を(a)と(b)とし、以下の水中分散化処理を実施例1で合成した三元共重合体に対して行った。
【0075】
水中分散化処理(a)
三元共重合体1mgをTHF1mlに溶解させ、CdSe/THF溶液に加え、超音波処理で溶液をよく撹拌した。その後、溶媒を留去し、ここへイオン交換水5mlを加えた。
【0076】
水中分散化処理(b)
三元共重合体1mgをTHF1mlに溶解させ、CdSe/THF溶液に加え、超音波処理で溶液をよく撹拌した。その後、イオン交換水とTHFを徐々に置換し、最終的にイオン交換水を5ml加えた。
【実施例5】
【0077】
実施例2で合成した共重合体によるナノ粒子の水溶化
実施例4において、実施例1の三元重合体のかわりに実施例2の三元共重合体を使用して、実施例4を繰り返した。
【実施例6】
【0078】
実施例3で合成した共重合体によるナノ粒子の水溶化
実施例4において、実施例1の三元重合体のかわりに実施例3の三元共重合体を使用して、実施例4を繰り返した。
【0079】
それぞれの処理を行ったナノ粒子の水溶化を以下の表1にまとめた。
【0080】
修飾処理を行ったCdSe粒子を以下では、ポリマ-の名称の前にCdSe-を付して区別する。
【0081】
それぞれの処理を行ったナノ粒子の水溶性を以下の表にまとめた。
【0082】
【表1】
JP0004820981B2_000002t.gif
表1から、本発明の親水化処理剤は、一旦溶媒を留去して、固体状態のナノ粒子を水中に分散しても、ナノ粒子の水溶液を形成できるという、優れたものであることがわかる。
意外にも、溶媒を水に徐々に交換するというマイルドな方法による実施例6(b)のものが白濁する結果となった。その原因は不明であるが、共重合体の使用量等の条件を変えることナノ粒子の水溶化が可能になるものと思われる。
【0083】
図7は、実施例4の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【0084】
図8は、実施例5の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【0085】
図9は、実施例6の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【0086】
ナノ粒子の蛍光強度は、使用する共重合体によっても異なり、また、水中分散の処理法によっても異なる。実施例3の共重合体は、蛍光強度が高い。
【実施例7】
【0087】
水溶化ナノ粒子の相対蛍光強度の時間変化を測定した。そして、実施例4~実施例6の水溶化ナノ粒子、及び、従来の水溶化手法による水溶化ナノ粒子、チオグリコール酸で修飾したCdSe粒子(CdSe-COOH)、メルカプトエタノールで修飾したCdSe粒子(CdSe-OH)と比較した。これを図10に示す。相対蛍光強度とは、調製時の蛍光強度を1として算出した相対強度である。
【0088】
本発明の水溶化ナノ粒子は従来のものに比較して、長期間安定であることが図示されている。
【0089】
実際のところ,CdSe-COOHやCdSe-OHでは,あまり濃度を高くすると凝集し易くなり蛍光強度が著しく低下する。
【0090】
なお,CdSe-COOHで,初期にやや増えているのは,測定時の撹拌により凝集していた粒子が再分散されたためと考えられる。しかしながら時間の経過と共に,その現象もあまり起こらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1の共重合体のIRスペクトルである。
【図2】実施例2の共重合体のIRスペクトルである。
【図3】実施例3の共重合体のIRスペクトルである。
【図4】実施例1の共重合体のNMRスペクトルである。
【図5】実施例2の共重合体のNMRスペクトルである。
【図6】実施例3の共重合体のNMRスペクトルである。
【図7】実施例4の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【図8】実施例5の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【図9】実施例6の水溶化ナノ粒子の蛍光スペクトルである。
【図10】水溶化ナノ粒子の相対蛍光強度の時間変化(実施例7)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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