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明細書 :ヘテロアセン化合物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4139902号 (P4139902)
公開番号 特開2006-248982 (P2006-248982A)
登録日 平成20年6月20日(2008.6.20)
発行日 平成20年8月27日(2008.8.27)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 ヘテロアセン化合物及びその製造方法
国際特許分類 C07F   7/08        (2006.01)
C07D 495/22        (2006.01)
C07D 517/22        (2006.01)
FI C07F 7/08 CSPW
C07F 7/08 R
C07D 495/22
C07D 517/22
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2005-067755 (P2005-067755)
出願日 平成17年3月10日(2005.3.10)
審査請求日 平成19年8月20日(2007.8.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】山口 茂弘
【氏名】岡本 敏宏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000017、【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
審査官 【審査官】本堂 裕司
参考文献・文献 特開2006-248983(JP,A)
国際公開第2005/087780(WO,A1)
Macromolecules,2004年,37(4),1257-1270
Bulletin of the Chemical Society of Japan,1995年,68(4),1193-1199
調査した分野 C07F 7/08
C07D 495/22
C07D 517/22
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1a)又は(1b)で表されるヘテロアセン化合物。
【化1】
JP0004139902B2_000016t.gif
(式(1a)及び式(1b)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
1はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基,炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
Ar1Ar2及びAr3はそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【請求項2】
下記式(2a),(2b),(3a)又は式(3b)で表されるヘテロアセン化合物。
【化2】
JP0004139902B2_000017t.gif
【化3】
JP0004139902B2_000018t.gif
(式(2a),(2b),(3a)及び(3b)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
m,nはm=1のときn=2でm=2のときn=1であり、
1はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基,炭素数1~18のアルキル基であって
全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
Ar1Ar2及びAr3はそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【請求項3】
下記式(5)又は式(6)で表されるヘテロアセン化合物。
【化4】
JP0004139902B2_000019t.gif
【化5】
JP0004139902B2_000020t.gif
(式(5)及び式(6)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
1はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基,炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ
基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-
アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
Ar1及びAr2はそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【請求項4】
下記式(7)で表されるビスアセチレン類(式(7)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar1,Ar2,Ar3及びR1は請求項2に記載のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体と反応させることにより請求項2に記載のヘテロアセン化合物とする、ヘテロアセン化合物の製造方法。
【化6】
JP0004139902B2_000021t.gif

【請求項5】
下記式(7)で表されるビスアセチレン類(式(7)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar1,Ar2,Ar3及びR1は請求項2に記載のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体とを反応させることにより請求項2に記載のヘテロアセン化合物とし、次に該ヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-に変換することにより請求項1に記載のヘテロアセン化合物とする、ヘテロアセン化合物の製造方法。
【化7】
JP0004139902B2_000022t.gif

【請求項6】
請求項2に記載のヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-へ変換する際には銅を使用する、請求項に記載のヘテロアセン化合物の製造方法。
【請求項7】
下記式(8)で表されるモノアセチレン類(式(8)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar1,Ar2及びR1は請求項に記載のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体と反応させることにより請求項に記載のヘテロアセン化合物とする、ヘテロアセン化合物の製造方法。
【化8】
JP0004139902B2_000023t.gif

【請求項8】
下記式(8)で表されるモノアセチレン類(式(8)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar1,Ar2及びR1は請求項に記載のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体とを反応させることにより請求項に記載のヘテロアセン化合物とし、次に該ヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-に変換することにより下記式(4)で表されるヘテロアセン化合物とする、ヘテロアセン化合物の製造方法。
【化9】
JP0004139902B2_000024t.gif
【化10】
JP0004139902B2_000025t.gif
(式(4)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
1はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基,炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-
アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
Ar1及びAr2はそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【請求項9】
請求項に記載のヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-へ変換する際には銅を使用する、請求項に記載のヘテロアセン化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロアセン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタ(FET)や有機電界発光素子(EL素子)などの有機エレクトロニクスの分野において、優れた電荷輸送特性を示す材料の開発は重要課題の一つである。このような材料の分子設計としては、有効な分子間相互作用を考慮した高平面性π共役骨格の構築が有望である。実際、そのような構造を備えたアセン系化合物であるペンタセンは、高い電荷輸送特性を示し、広範な研究対象になっている。これに対し、高平面性π共役骨格にヘテロ原子を導入したヘテロアセン類やその類似のジカルコゲニド結合を持つ縮合多環式芳香族化合物も有望な電荷輸送特性を示す材料として期待されている。
【0003】
ヘテロアセン類の合成例として、縮環数が5個までのオリゴチオフェンラダー化合物やスルホニル基で架橋されたポリチオフェンラダー化合物が報告されている(例えば特許文献1,非特許文献1参照)。また、ベンゾチオフェンが二つ縮環した化合物であるベンゾチオ[3,2-b][1]ベンゾチオフェンの合成法として、o-ブロモヨードベンゼンとアセチレンとをパラジウム触媒存在下で反応させて1,2-二置換アセチレン類を合成し、これをtert-BuLiを用いてリチオ化したあと硫黄で処理するというルートが報告されている(非特許文献2)。

【特許文献1】特開2001-261794
【非特許文献1】Tetrahedron Letters, Vol.30, No.25, pp3315-3318, 1989
【非特許文献2】J. Heterocyclic Chem., Vol25, p725, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでに合成されたヘテロアセン類は有機溶媒への溶解度が低かったため、カラムクロマトグラフィーなどによる精製操作が困難であり純度を十分高くすることが難しかった。このため、化合物の純度が性能に大きく影響するといわれているFETやEL素子へ適用することが容易ではなかった。また、FETやEL素子などへ適用する際にはヘテロアセン類を有機溶媒に溶かして成膜化することも考えられるが、溶解度が低い場合にはそのような成膜化も困難となる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、有機溶媒への溶解度が従来のものに比べて高いヘテロアセン化合物を提供することを目的の一つとする。また、そのようなヘテロアセン化合物を効率よく製造する方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1のヘテロアセン化合物は、式(1a)又は(1b)で表されるものである。
【化1】
JP0004139902B2_000002t.gif
(式(1a)及び式(1b)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
ArAr及びArはそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【0008】
本発明の第2のヘテロアセン化合物は、式(2a),(2b),(3a)又は式(3b)で表される、ジカルコゲニド結合を持つ縮合多環式芳香族化合物である。
【化2】
JP0004139902B2_000003t.gif
【化3】
JP0004139902B2_000004t.gif
(式(2a),(2b),(3a)及び(3b)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
m,nはm=1のときn=2でm=2のときn=1であり、
はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
ArAr及びArはそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【0009】
本発明の第3のヘテロアセン化合物は、式(4)で表されるものである。
【化4】
JP0004139902B2_000005t.gif
(式(4)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基,またはハロゲン原子であり、
Ar及びArはそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【0010】
本発明の第4のヘテロアセン化合物は、式(5)又は式(6)で表される、ジカルコゲニド結合を持つ縮合多環式芳香族化合物である。
【化5】
JP0004139902B2_000006t.gif
【化6】
JP0004139902B2_000007t.gif
(式(5)及び式(6)において、
Eは硫黄、セレン又はテルルであり、
はアリール基、オリゴアリール基、1価の複素環基、1価のオリゴ複素環基、トリアルキルシリル基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルキル基であって全部又は一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリル基、アミノ基、N-アルキルアミド基、アルカンカルボキサミド基、アゾ基、カルボキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、ボリル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、またはハロゲン原子であり、
Ar及びArはそれぞれ独立してベンゼン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン又は複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンの縮環した含カルコゲン縮環体である)
【0011】
本発明の第1~第4のヘテロアセン化合物は、高い平面性を有するπ電子系化合物であるため、FETやEL素子などの有機エレクトロニクス材料として利用され得るものである。また、いずれも化合物の両末端にトリアルキルシリル基かアルキル基、フルオロアルキル基を有しているため、このような末端基を有さない従来のヘテロアセン化合物と比べて、有機溶媒に対する溶解度が高い。このため、カラムクロマトグラフィーなどによる精製操作が可能となり、純度を十分高くすることが可能となった。また、化合物の純度が性能に大きく影響するといわれているFETやEL素子へ適用することが容易になった。また、FETやEL素子などへ適用する際にはヘテロアセン類を有機溶媒に溶かして成膜化することも考えられるが、そのような成膜化にも適している。なお、本明細書中、含カルコゲン縮環体は、複数のチオフェンかセレノフェンかテルロフェンをカルコゲンの向きが互い違いになるように縮環したもののほか、カルコゲンの向きが同じになるように縮環したものやカルコゲンの向きがランダムに並んだものなども含む。
【0012】
本発明の第1~第4のヘテロアセン化合物において、Ar,Ar,Arは、例えば以下の群から選ばれたものとしてもよい。すなわち、式(1a),(2a),(3a),(4),(5),(6)に含まれるAr,Ar,Arは化7の群から選ばれたものとしてもよく、式(1b),(2b),(3b)に含まれるAr,Ar,Arは化8の群から選ばれたものとしてもよい。なお、化7及び化8におけるEは硫黄、セレン又はテルルを表す。
【化7】
JP0004139902B2_000008t.gif
【化8】
JP0004139902B2_000009t.gif

【0013】
本発明の第1~第4のヘテロアセン化合物において、Rはトリアルキルシリル基、炭素数が1~18のアルキル基、炭素数が1~18のアルキル基で全部又は一部の水素がフッ素で置換されたものとしてもよい。このうち、トリアルキルシリル基としては、3つのアルキル基がすべて同じであってもよいしすべて異なっていてもよいし1つだけ異なっていてもよく、例えばトリメチルシリル(TMS)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、トリ-tert-ブチルシリル(TTBS)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基などが挙げられる。また、炭素数1~18のアルキル基としては、直鎖でもよいし分岐を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。また、このような炭素数1~18のアルキル基で全部又は一部の水素がフッ素で置換されたものとしては、全部の水素をフッ素に置換したペルフルオロアルキル基や、末端の水素のみをフッ素で置換したアルキル基などが挙げられる。なお、トリアルキルシリル基のアルキルとして、前出の炭素数1~18のアルキル基を使用してもよい。
【0014】
本発明の第2及び第4のヘテロアセン化合物は、ジカルコゲニド結合を持つ縮合多環式芳香族化合物であり、有機エレクトロニクス材料として用いることができるほか、それぞれ本発明の第1及び第3のヘテロアセン化合物の合成中間体として用いることもできる。
【0015】
本発明の第2のヘテロアセン化合物は、下記式(7)で表されるビスアセチレン類(式(7)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar,Ar,Ar及びRは前出のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体と反応させることにより製造することができる。ここで、Xを金属に置換するには、有機金属試薬を用いることが好ましい。このような有機金属試薬としては、例えば有機リチウム(n-BuLi,sec-BuLi,tert-BuLiなど)や有機マグネシウムハライドなどを用いることができる。また、上述したように本発明の第2のヘテロアセン化合物を製造したあと、該ヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-に変換することにより、本発明の第1のヘテロアセン化合物を製造することができる。この変換反応は、例えば銅存在下で進行する。なお、反応溶媒、反応温度、反応時間、使用する基質や試薬のモル数などの反応条件は、使用する試薬等に応じて適宜設定すればよい。
【化9】
JP0004139902B2_000010t.gif

【0016】
本発明の第4のヘテロアセン化合物は、下記式(8)で表されるモノアセチレン類(式(8)中、Xは塩素、臭素又はヨウ素であり、Ar,Ar及びRは前出のとおり)のXを金属に置換したあと硫黄、セレン又はテルルの単体と反応させることにより製造することができる。ここで、Xを金属に置換するには、有機金属試薬を用いることが好ましい。このような有機金属試薬としては、例えば有機リチウム(n-BuLi,sec-BuLi,tert-BuLiなど)や有機マグネシウムハライドなどを用いることができる。また、上述したように本発明の第4のヘテロアセン化合物を製造したあと、該ヘテロアセン化合物の環内の-E-E-部位を-E-に変換することにより、本発明の第3のヘテロアセン化合物を製造することができる。この変換反応は、例えば銅存在下で進行する。なお、反応溶媒、反応温度、反応時間、使用する基質や試薬のモル数などの反応条件は、使用する試薬等に応じて適宜設定すればよい。
【化10】
JP0004139902B2_000011t.gif

【0017】
次に、本発明のペンタアセン化合物を用いて有機薄膜トランジスタを作製する方法の一例を説明する。まず、シリコン酸化膜を絶縁層とするn型シリコン基板を、純水にて希釈した中性洗剤にて超音波洗浄を行い、その後、純水中、超音波洗浄にて洗剤除去を行う。その後、紫外線-オゾン洗浄器にて紫外線照射洗浄を行う。このようにして洗浄した基板上に本発明のヘテロアセン化合物の薄膜を真空蒸着法で作成する。ヘテロアセン化合物は、精製操作を数回繰り返した高純度のものを使用することが好ましい。真空蒸着条件は、基板を蒸着用ボートの上方に固定し、基板温度を-100~-150℃に調整し、真空度を10-6Torrオーダーにまで減圧する。その後毎分数nm~数10nmの速度で所望の厚さ(例えば50nm)となるように真空蒸着を行う。続いて、ソース電極およびドレイン電極として金電極を真空蒸着する。さらに、N-メチル-3,4,9,10-テトラカルボン酸ジイミドを、毎分数nmの速度で所望の厚さ(例えば50nm)となるように真空蒸着を行う。このようにして有機薄膜トランジスタを作製することができるが、これ以外の方法により作製しても構わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、実施例を用いて以下に説明する。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
まず、下記化11の化合物1で表されるモノアセチレンは、3-ブロモ-2-ヨードチオフェンと3-ブロモ-2-エチニルチオフェンとの薗頭カップリング反応、つづいて、トリメリルシリルクロライド存在下、リチウムジイソプロピルアミドと反応させることで合成した。次に、アルゴン雰囲気下で無水THF(100mL)に溶かした化合物1(5.0g,10.2mmol)をドライアイス-アセトンバスで-78℃に冷却し、tert-BuLi(1.53M ヘプタン溶液,26.5mL,40.6mmol,4.0mol amt.)を10分間で滴下した。-78℃で60分間攪拌したのち、硫黄(結晶)(976mg,30.5mmol,3.0mol.amt.)を加え、5分間後、バスを取り除いて昇温した。2時間後、反応溶液にフェリシン化カリウム-水酸化ナトリウム水溶液を加え、ジエチルエーテルで抽出、蒸留水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、そして溶媒を留去した。赤色の残留物をシリカゲルカラム(ヘキサン)で分離精製することで,赤色固体として化合物2(2.83g,65%)(下記化11参照)を得た。化合物2のスペクトルデータは以下のとおり。C16H20S5Si2;red powders; 1H NMR(270MHz, CDCl) δ 7.33(s, 1H), 7.08(s, 1H), 0.37(s, 9H), 0.34(s, 9H); MS(EI) / 428.
【化11】
JP0004139902B2_000012t.gif

【0020】
[実施例2]
アルゴン雰囲気下で化合物2(300mg,0.699mmol)を銅(ナノサイズ粉末)(178mg,2.80mmol,4.0mol amt.)存在下、300℃で20分間加熱した。放冷後、ジクロロメタンを加え、不溶分を濾過し、濾液を濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラム(ヘキサン)を用いて分離精製することで、無色結晶として化合物3(155mg,56%)(下記化12参照)を得た。この化合物3について、末端がTMSではなく水素のもの(化合物3’という)を合成し、それぞれのヘキサンに対する溶解度を調べたところ、化合物3’の溶解度は0.16mg/mLであったのに対し化合物3の溶解度は4.0mg/mLであった。つまり、化合物3は化合物3’に比べてヘキサンに25倍溶けることがわかった。なお、化合物3のスペクトルデータは以下のとおり。C16H20S4Si2;colorless powders; 1H NMR(270MHz, CDCl) δ 7.38(s, 2H), 0.38(s, 18H).
【化12】
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【0021】
[実施例3]
まず、下記化13の化合物4で表されるビスアセチレンを、2,3,5,6-テトラブロモチエニル[3,2-b]チオフェンと3-ブロモ-2-エチニル-5-トリイソプロピルシリルチオフェンとの薗頭カップリング反応で合成した。次に、アルゴン雰囲気下で無水THF(4mL)に溶かした化合物4(200mg,0.204mmol)をドライアイス-アセトンバスで-78℃に冷却し、tert-BuLi (1.49Mヘプタン溶液,1.10mL,1.63mmol,8.0mol amt.)を5分間で滴下した。-78℃で30分間攪拌したのち、0℃に昇温した。この反応溶液を硫黄のトルエン溶液(0.306M,4.0mL,1.22mmol,6.0mol amt.)に加え、0℃で15分間攪拌したのち、アイスバスを取り除いて昇温した。4時間後、反応溶液にフェリシン化カリウム-水酸化ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出、蒸留水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、そして溶媒を留去した。赤紫色の残留物をシリカゲルでショートカラム(ジクロロメタン)をした後、さらにGPC(クロロホルム)を用いて分離精製することで、位置異性体混合物として化合物5(42mg,24%)(下記化13参照)を得た。化合物5のスペクトルデータは以下のとおり。C364410Si2;purple powders; 1H NMR(270MHz, CDCl) δ 7.41(s), 7.37(s), 7.35(s), 7.10(s), 1.47-1.34(m), 1.16-1.13(m); MS(MALDI) / 852.
【化13】
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【0022】
[実施例4]
アルゴン雰囲気下で化合物5(50mg,0.0586mmol)を銅(ナノサイズ粉末)(150mg,2.36mmol,40mol.amt.)存在下、320℃で2時間30分加熱した。放冷後、ジクロロメタンを加え、不溶分を濾過した。この不溶分を熱オルトジクロロベンゼンで洗浄、熱時濾過し、濾液を濃縮することで、目的とする化合物6(23.7mg,51%)(下記化14参照)を黄色固体として得た。この化合物6のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を図1に示す。図1に示すように、化合物6では可逆な2段階の酸化ピーク(E1/2=+0.43V,+0.82V vs Fc/Fc+)が観測された。この結果は、化合物6がp型電荷輸送材料として期待できることを示している。また、化合物6のスペクトルデータは以下のとおり。C36H44S8Si2;yellow needles; 1H NMR(400MHz, C6D4Cl2) δ 7.28(s, 2H), 1.28-1.19(m, 6H), 1.08(d, 36H, J=7.2Hz); MS(MALDI) / 788.
【化14】
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【0023】
なお、本発明は以上の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施することができる。
【0024】
例えば、上述した実施例1~4では、ポリチオフェンの製造例について説明したが、ポリセレノフェンやポリテルロフェンについても同様にして製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】化合物6のサイクリックボルタンメトリー測定結果の説明図である。
図面
【図1】
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