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明細書 :魚類の飼育用水槽及び飼育用水槽等の汚泥除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4686706号 (P4686706)
公開番号 特開2006-223271 (P2006-223271A)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
発行日 平成23年5月25日(2011.5.25)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 魚類の飼育用水槽及び飼育用水槽等の汚泥除去方法
国際特許分類 A01K  63/04        (2006.01)
FI A01K 63/04 F
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2005-044746 (P2005-044746)
出願日 平成17年2月21日(2005.2.21)
審査請求日 平成20年2月19日(2008.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】菊地 正憲
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】高橋 三成
参考文献・文献 実公昭39-013476(JP,Y1)
特開昭60-058215(JP,A)
特開平06-022663(JP,A)
実開平02-034164(JP,U)
特開2000-069879(JP,A)
特開2002-017200(JP,A)
調査した分野 A01K 63/00-06
特許請求の範囲 【請求項1】
筒状水槽の下部の直径が上部の直径よりも小となるように区画して形成し、収容された流体に付与される旋回流によって生じるトルネード効果により水槽底部の汚泥を旋回流の回転軸に向って集約すると共に、旋回流の回転軸上で且つ水槽底部から上方に突出する汚泥排出筒を設け、回転軸に倣って上昇させて集約することを特徴とする魚類の飼育水槽。
【請求項2】
水槽の上部及び/又は下部の断面が楕円形、矩形及び/又は多角形若しくは円形であり、水槽の下部の水平断面積が上部より小となるように区画して形成したことを特徴とする請求項1記載の魚類の飼育用水槽。
【請求項3】
水槽を上部と下部に区画して形成し、下部の直径又は水平断面積が上部より小となるように成し、収容された流体に付与される旋回流によって生じるトルネード効果により水槽底部の汚泥を旋回流の回転軸に向って集約すると共に、旋回流の回転軸上で且つ水槽底部から上方に突出する汚泥排出筒を設け、回転軸に倣って上昇させて集約して排出することを特徴とする魚類の飼育水槽等の汚泥除去方法。
【請求項4】
水槽底部に設けた排水口の弁の開閉を反復することにより、汚泥排出筒と底部排水口の両者から汚泥を排出することを特徴とする請求項3記載の魚類の飼育水槽等の汚泥除去方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類の飼育用水槽などの水槽内の水を浄化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類の飼育用水槽における沈殿物除去の方法は様々ある。水を抜いての清掃や、通常は平らな水槽の底に円錐状の傾斜をつけ沈殿物を中央に集めるもの、サイフォン効果を用いるもの、自動の清掃ロボット等である。しかし、飼育には海水を使用するためポンプは錆び易く、できるだけ機械設備の簡易なものが望ましい。また、水槽の底に傾斜をつけたものでは水槽内での清掃作業等の際の危険性を増すばがりでなく労力やコストが嵩む。
【0003】
そこで、水槽内の水表面の浮遊物を除去する装置として、水を吸引する取水口と、吸引された水を浄化する浄化手段と、浄化された水を水槽内へ吐出する吐出口とを有し、この取水口を水槽内の底部に設けると共に、かつ複数の吐出口を水槽内の相対向する側壁に相対向しないように設け、取水口を渦の中心とする渦巻き流を水槽内に発生せしめるもの(例えば、特許文献1参照。)、魚類介類の飼育水槽の底に排水管を立設して設け、この排水管の上端で水面近傍の浮遊物を、排水管の下端で底部の堆積物を排出するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】

【特許文献1】特開2000-15017号公報
【特許文献2】特開2001-224277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものは、単なる旋回流を発生させて浮遊物を巻き込み排出するものであり、常に大量の水を循環させる必要がある。また、特許文献2に記載されたものは、浮遊物や堆積物が一気に集約されて排出されるものではなく、浄化効率が良いとは言い難い。本発明は、前記のような問題点に鑑み、水槽底部に沈殿する魚糞等の汚泥を排水時の流体の働きにより集約させ効果的に排出できる魚類の飼育用水槽等の汚泥除去方法を提供すること、及びその方法を用いた水槽を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明の魚類の飼育水槽は、筒状水槽の下部の直径が上部の直径よりも小となるように区画して形成し、収容された流体に付与される旋回流によって生じるトルネード効果により水槽底部の汚泥を旋回流の回転軸に向って集約すると共に、旋回流の回転軸上で且つ水槽底部から上方に突出する汚泥排出筒を設け、回転軸に倣って上昇させて集約することを第1の特徴とし、水槽の上部及び/又は下部の断面が楕円形、矩形及び/又は多角形若しくは円形であり、水槽の下部の水平断面積が上部より小となるように区画して形成したことを第2の特徴とする。また、本発明の魚類の飼育用水槽等の汚泥除去方法は、水槽を上部と下部に区画して形成し、下部の直径又は水平断面積が上部より小となるように成し、収容された流体に付与される旋回流によって生じるトルネード効果により水槽底部の汚泥を旋回流の回転軸に向って集約すると共に、旋回流の回転軸上で且つ水槽底部から上方に突出する汚泥排出筒を設け、回転軸に倣って上昇させて集約して排出することを第3の特徴とし、水槽底部に設けた排水口の弁の開閉を反復することにより、汚泥排出筒と底部排水口の両者から汚泥を排出することを第4の特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本発明の汚泥除去方法によれば、下記の利点がある。
(1)水槽の底に傾斜等をつける必要がなく水槽内での作業が安全に行える。
(2)清掃ロボット等の特別な機械類を必要としないため、海水を使用する陸上飼育水槽に適している。
(3)小規模な生け簀や、鑑賞用水槽においても、水の交換や清掃の頻度を減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に図面に示す実施例を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。図1は本発明に係る水槽の斜視図、図2は水槽中のトルネード効果を模式的に示す水槽の断面図、図3は本発明に係る実験装置の概略図、図4は計測点を示す模式図、図5乃至図12はバルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【実施例】
【0009】
図1及び図2に示すように、本発明に係る水槽1は筒状の下部の直径D2が上部の直径D1よりも小となるように大径部1aと小径部1bとに網体又は格子体11を介して区画して形成されており、その底部に排水口2及び排水口2と同程度の直径の汚泥排出筒(以下、単に排出パイプ3という)が水槽底部から若干の隙間S(好ましくは数センチメートル)を空けて取り付けられている。水はこの排水口2から定期的に排出される。大径部1aの水には魚類を飼育するための旋回流が与えられている。すなわち、水は角運動量を持っている。水は底部の排水口2から排出されるとき、水槽1の下部に移動する。このとき水槽の小径部1bの直径D2は水槽の大径部1aの直径D1よりも小さいので、角運動量保存側により旋回速度が増す。一方、水槽1の底部では水の粘性のために旋回速度は極めて遅くなっている。このため、旋回による遠心力は大径部1aの水の遠心力よりも小さく、このアンバランスのために、図2中矢示するごとく、底部では水槽の中心に向う強い流れが生ずる。この流れは旋回の中心で上向きに曲げられる。このような流れができることをトルネード効果という。さらに、排出パイプ3の上部開口からも水が吸い込まれるので、この効果は一層強められる。
【0010】
すなわち、流体を満たし、蓋をした円筒状の固定された水槽において、蓋を円筒の中心軸周りに等角速度回転させた場合、中の流体は蓋に牽引される形で回転する。しかし、水槽自体は固定されているので、水槽側壁及び底部では速度がゼロである。この速度差(遠心力の差)により、二種類の境界層(蓋と流体の間で放射状に、底と流体の間で側壁から円筒の中心に向って流れるエクマン層と、側壁と流体の間を蓋から底に向って流れるスチュワトソン層)を含む循環流が発生する。この時、底部と流体の間を流れるエクマン層の流れを用いると、流体より比重の高い物質を回転軸底部に集めることが可能となる。当然、この循環流は蓋の回転が速いほど強いが、実際の飼育用水槽において過度な旋回流を発生させることは不可能である。そこで、本発明者らは、図3に示す実験装置により、次の条件に基づいて水槽の水を排出する時のみ強い旋回流及び循環流を発生させる実験を行った。
(1)水槽の上部と下部の直径を変える。
(2)水を排出する際にバルブの開閉を行う。
(3)排水口に排出筒を取付ける。
(4)水槽上部に取付けた回転盤を回転させる。
【0011】
水槽底部に沈殿した汚泥を除去する際、排水口2の弁(図示せず)の開閉を数回繰り返す。この操作により、汚泥は排出パイプ3の周囲に集められ、弁が開放されたときに、一気に効率良く排出される。すなわち、弁が開放しているとき、トルネード効果により底部の中心に集約された汚泥は、汚泥排水口2から順次排出されるが、一旦弁を閉じると、トルネード効果による上昇流が発生し、汚泥は、排水口2上方に立設した排出パイプ3に沿って上昇し始める。数秒後、排水口2の弁を開けると、排出パイプ3内部の水は下方に一気に排出され、それに伴って、排出パイプ3に沿って上昇してきた汚泥も排出パイプ3上端開口から排出される。また、水槽底部の汚泥は、底部中心に設けられ排水口2から排出される。暫く放置した後、排水口の弁を閉じて上昇流を発生させ、再度、弁を開放する動作を反復して行うことにより、効率良く汚泥を排出することができる。以上のように、排水口2の弁の開閉を反復して行うことにより、効率良く汚泥を排出することができる。勿論、弁の開閉動作を行わず、一定の開度を保持して開放し続けることでも汚泥の排出は可能である。
【0012】
(実験例)
実験装置は、水槽1にバルブ4とバルブ開閉装置4aと回転盤5モータ5a及びモータ制御装置5bが取付けられている。水槽1内の水はバルブ開閉装置の操作により排出される。実験装置はバルブの全開・全閉時間をそれぞれ0秒~30秒に設定でき、また、バルブが全開から全閉、全閉から全開になるまでに10秒間を要する。また、流速を測定する際には、LDV(レーザードップラー流速計)6のプローブ7を支持台8に固定する。プローブ支持台8のハンドル9を調節することで、レーザーの交点を計測点に合わせることができる。ここで、水槽1の大径部1aの直径D1は600mm、小径部1bの直径D2は300mm、大径部1aの高さH1は150mm、小径部1bの高さH2は350mmとした、尚、図中10はパソコンである。
【0013】
流速測定:
図4に示す水槽1の測定点4点A,B,C,Dにおいて、バルブを開放し続けた場合、周期的にバルブを開放した場合、また、排出筒を付けた状態(以下、筒有りという)、排出筒を付けていない状態(以下、筒無しという)のそれぞれの状態での流速をLDVにより計測した。また、回転盤を回転させた場合(回転数15.18rpm)は軸方向成分、周方向成分ともに計測し、回転させない場合は軸方向成分のみを計測した。ここで、
測定点A:r=135、z=240 測定点B:r=15、z=240
測定点C:r=135、z=80 測定点D:r=15、z=80
(r:中心からの距離 z:底からの高さ 単位:mm)とする。
【0014】
測定結果:
中心軸付近(B点、D点)に比べ側壁付近(A点、C点)は、軸方向速度、周方向速度共にバルブ開放(流しっぱなし、以下開放という)時の最大速度及びバルブ開閉(周期的な開閉、以下開閉という)時の速度変化が小さい。また、軸方向速度では下部測定点(C点、D点)に比べて上部測定点(A点、B点)も、同様に最大速度と速度変化が小さい、これらの差は、側壁の摩擦抵抗及び排水口の吸い込みによるものと考えられる。以上のことより、以下D点における考察を行った。
【0015】
バルブ開放時:
図5及び図6に示すように、D点において、軸方向速度は80秒程度で最小速度となりその後上昇する。図7及び図8に示すように、周方向速度は時間経過による速度上昇が見られ、計測開始から120秒程で最大速度となった。
バルブ開閉時:
D点において、軸方向速度はバルブ開放時と比べて速度変化が大きい。周方向速度はバルブを開け閉めした時に多少の速度変化が見られた。また、軸方向速度と周方向速度のグラフは逆位相となるが、これは、バルブ開閉により縦方向の循環がより加速されていることの証明である。
【0016】
排出筒有り・筒無しによる差:
排出筒を設置した場合は、設置しない場合に比べて、開閉時の軸方向速度の振幅が大きくなる。これは排出筒による整流効果によるものと思われる。
【0017】
回転盤の回転は、水槽内流体に旋回流及び循環流を発生させた。これは流速測定により証明された。バルブ開放時は120秒程度で水面が水槽1a下部に達する。また、図7及び図8のグラフに示すように、周方向速度が計測開始から120秒程度で最大速度となる。この結果より水槽に段差を設けたことで、より強い旋回流が発生したものと考えられる。また、図9、図10、図11及び図12のグラフから判るように、周期的にバルブを開閉することで、縦方向の循環が加速され、回転盤による旋回だけでは除去できなかった茶葉(汚泥の代わりとなる沈殿物)を排出することができた。さらに、排出筒を付けることで、開放時は最大速度が大きくなり開閉時は速度の振幅が大きくなることが判った、これは排出筒によりトルネード効果が強められた結果であり、排出筒設置の妥当性を示している。
【0018】
可視実験:
水槽内に水を入れた後、水槽上部に茶葉を入れた。次いで、回転盤を回転させた場合(回転数15.18rpm)、また周期的にバルブを開閉した場合の茶葉の動きを観察した。同様に、回転盤を回転させずにバルブを開放した場合の茶葉の動きを観察した。いずれの場合も排水筒を設置しない状態で行った。
(回転無しの場合)
水槽内の流体が静止した状態では、水槽上部に浮かんだ茶葉はバルブを開放してもほとんど落下しない。水面が水槽下部に到達しても茶葉は落下せず、全ての水を排出してもほとんどの茶葉が水槽内に残留した。
(回転有りの場合)
回転盤を回転させると、回転が流体に伝わり水槽上部に浮かんだ茶葉が落下し始め、その後全ての茶葉が水槽の底まで落下した。バルブを開けると、茶葉は排水口から流出し、バルブを閉じると中心付近に集約した。そこで、再度バルブを開けると集約した茶葉は一気に流出した。この操作を反復することで、水槽内のほとんどの茶葉を除去することができた。
【0019】
尚、本発明の対象となる水槽は、円筒形状の水槽のみならず、水平断面が矩形の水槽や多角形の水槽も含まれる。断面が楕円形、矩形又は多角形の水槽においても、上部に対し下部が小となるように形成すれば、収容された流体に付与される旋回流によってトルネード効果が生じる。また、上部が筒状で下部が矩形又は多角形のものやその逆の形状、若しくは水平断面が円形、楕円形、矩形、多角形の水槽を上下任意に組み合わせるものでも良い。また、実験では円盤を用いて旋回流を発生させたが、実水槽においては流体の噴出により旋回流を発生させる方法や、回転プロペラを用いて旋回流を発生させる方法等を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、魚類の飼育や生簀など魚類を飼育する水槽の浄化技術において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る水槽の斜視図である。
【図2】水槽中のトルネード効果を模式的に示す水槽の断面図である。
【図3】本発明に係る実験装置の概略図である。
【図4】流速の計測点を示す模式図である。
【図5】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図6】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図7】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図8】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図9】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図10】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図11】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【図12】バルブの開閉と流速との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 水槽
1a大径部
1b小径部
2 排水口
3 汚泥排出筒(排出パイプ)
4 バルブ
4aバルブ開閉装置
5 回転盤
5aモーター
5bモーター制御装置
6 LDV
7 プローブ
8 支持台
9 ハンドル
10パソコン
11網体又は格子体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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