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明細書 :オキシム化合物のベックマン転位反応用触媒、及びそれを用いたアミド化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4029159号 (P4029159)
公開番号 特開2006-219470 (P2006-219470A)
登録日 平成19年10月26日(2007.10.26)
発行日 平成20年1月9日(2008.1.9)
公開日 平成18年8月24日(2006.8.24)
発明の名称または考案の名称 オキシム化合物のベックマン転位反応用触媒、及びそれを用いたアミド化合物の製造方法
国際特許分類 C07C 231/10        (2006.01)
C07C 233/17        (2006.01)
C07C 233/24        (2006.01)
C07D 201/04        (2006.01)
C07D 213/64        (2006.01)
C07D 213/61        (2006.01)
C07D 223/10        (2006.01)
C07D 225/02        (2006.01)
B01J  31/02        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 231/10
C07C 233/17
C07C 233/24
C07D 201/04
C07D 213/64
C07D 213/61
C07D 223/10
C07D 225/02
B01J 31/02 102X
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 31
全頁数 15
出願番号 特願2005-087274 (P2005-087274)
出願日 平成17年3月24日(2005.3.24)
優先権出願番号 2005008461
優先日 平成17年1月14日(2005.1.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年6月6日(2007.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】石原 一彰
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
審査官 【審査官】井上 千弥子
参考文献・文献 特公昭47-018114(JP,B1)
特公昭46-023740(JP,B1)
特開昭49-117483(JP,A)
特開2000-302739(JP,A)
国際公開第2005/028446(WO,A1)
J.Org.Chem., 2002, Vol.67, No.17, pp6272-6274
Chemical Abstructs, Vol.141, 要約番号260096(2004)
調査した分野 C07C 231/00-237/52
C07D 201/04
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
芳香環含有化合物の存在下、極性溶媒中で、オキシム化合物のベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を製造する方法であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、次の条件(1)~(3)すべてを満足するベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなく反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちのつが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
【請求項2】
芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする請求項1記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項3】
ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子の両端に隣接してることを特徴とする請求項2記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項4】
ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする請求項2又は3記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項5】
ベンゼン環含有化合物が、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする請求項2~4のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項6】
4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルを、オキシム化合物に対して5mol%~20mol%用いることを特徴とする請求項5記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項7】
芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする請求項1に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項8】
ピリジンの窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置してることを特徴とする請求項7に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項9】
ピリジン環含有化合物が、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする請求項8に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項10】
トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする請求項7記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項11】
脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする請求項1~10のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項12】
ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする請求項11記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項13】
オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ-フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする請求項1~12記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項14】
極性溶媒が、ニトリル系溶媒であることを特徴とする請求項1~13のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項15】
ニトリル系溶媒が、アセトニトリル又はベンゾニトリルであることを特徴とする請求項14記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項16】
共触媒を用いて、ベックマン転位反応を行うことを特徴とする請求項1~15のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項17】
共触媒が、ルイス酸性を有する金属塩であることを特徴とする請求項2~6のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項18】
共触媒が、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸から選ばれるブレンステッド酸であることを特徴とする請求項7~10のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項19】
ベックマン転位反応を加熱還流下に行うことを特徴とする請求項1~18のいずれか記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項20】
次の条件(1)~(3)すべてを満足する芳香環含有化合物であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなくベックマン転位反応を行う際に使用されること特徴とするオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちのつが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
【請求項21】
芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする請求項20記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項22】
ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置してることを特徴とする請求項21記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項23】
ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする請求項21又は22記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項24】
ベンゼン環含有化合物が、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする請求項22~23のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項25】
芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする請求項20に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項26】
ピリジンの窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置してることを特徴とする請求項25に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項27】
ピリジン環含有化合物が、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする請求項26に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項28】
トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする請求項2記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項29】
脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする請求項20~28のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒
【請求項30】
ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする請求項29記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
【請求項31】
オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ-フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする請求項20~30のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシム化合物のベックマン転位反応用触媒、及びそれを用いたアミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベックマン転位反応は、アミド又はラクタム化合物の合成法の一つとして知られている。例えばシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位反応はナイロン6の鍵中間体であるε-カプロラクタムの合成に用いられている。ε-カプロラクタムの工業的製造方法においては発煙硫酸が用いられており、反応終了後に硫酸をアンモニアで中和する必要があるため、多量の硫酸アンモニアが副生することや、強酸による装置の腐食等の問題がある。このことから、これらの問題のない触媒反応系の開発が求められている。最近では奈良坂らによって過酸化レニウムのアンモニウム塩とトリフルオロメタンスルホン酸の混合系(例えば、非特許文献1参照)をはじめ、インジウムトリフラート(例えば、非特許文献2参照)、イッテルビウムトリフラート(例えば、非特許文献3参照)等の触媒が報告されているがいずれも強酸を含んでいる。
【0003】
また、酸を含むものとしては、オキシム化合物を液相中でベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を製造する方法において、五酸化リン又は縮合リン酸化合物、N,N-二置換アミド化合物、及び、非含フッ素スルホン酸無水物又はスルホカルボン酸無水物の存在下で反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。さらに、予め酸を含む水溶液で処理したゼオライトを触媒として使用することを特徴とするアミド化合物の製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
ところで、近年、有機合成において有機触媒を用いた反応系の開発が盛んに行われている。有機触媒は反応に対する触媒の構造の最適化が容易であり、さらに金属を用いないため環境に対する負荷が低減できる利点がある。
【0005】
その他、ベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を製造する方法として、レニウム化合物と、ピリジン誘導体、ピロール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、インドール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、キノリン誘導体、ビピリジル誘導体又はフェナントロリン誘導体等の含窒素複素環化合物の共存下、オキシム化合物を転位させることを特徴とするアミド化合物の製造方法や(例えば、特許文献4、特許文献5参照)、亜鉛酸化物を含有するベータ型ゼオライトを触媒として用いて転位反応を行うことを特徴とする有機化合物の製造方法(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
【0006】

【特許文献1】特開2001-302602号公報
【特許文献2】特開2001-302603号公報
【特許文献3】特開2001-072658号公報
【特許文献4】特開平09-301951号公報
【特許文献5】特開平09-301952号公報
【特許文献6】特開2001-019670号公報
【非特許文献1】K. Narasaka, et. al., Chemistry Letter, pp. 489-492(1993)
【非特許文献2】J. S. Sandhu, et. al., Indian Journal of Chemistry, pp. 154-156(2002)
【非特許文献3】J. S. Yadav, et. al., Journal of Chemical Research(S), pp. 236-238(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、触媒の存在下にオキシム化合物のベックマン転位反応を行うにあたり、強酸を使用せず、オキシム化合物を転位せしめて高効率にアミド化合物を製造する方法や、かかるアミド化合物を製造する際に用いるオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、オキシム化合物からアミド化合物を製造する方法について鋭意検討した結果、オキシム化合物のベックマン転位反応を触媒する化合物のスクリーニング結果から、オキシム化合物のベックマン転位反応を行うオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒として、(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含み、(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちつが前記脱離基のオルト及びパラ位に位置する、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環及びトリアジン環からなる芳香環含有化合物、より具体的には、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジンを用いると、強酸を使用することなくオキシム化合物から温和な反応条件下、高収率でアミド化合物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。

【0009】
すなわち本発明は、[1]芳香環含有化合物の存在下、極性溶媒中で、オキシム化合物のベックマン転位反応を行うことによりアミド化合物を製造する方法であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、次の条件(1)~(3)すべてを満足するベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなく反応を行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちつが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
や、[2]芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする前記[1]記載のアミド化合物の製造方法や、[3]ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子の両端に隣接してることを特徴とする前記[2]記載のアミド化合物の製造方法や、[4]ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする前記[2]又は[3]記載のアミド化合物の製造方法や、[5]ベンゼン環含有化合物が、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする前記[2]~[4]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[6]4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルを、オキシム化合物に対して5mol%~20mol%用いることを特徴とする前記[5]記載のアミド化合物の製造方法や、[7]芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする前記[1]に記載のアミド化合物の製造方法や、[8]ピリジンの窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置してることを特徴とする前記[7]に記載のアミド化合物の製造方法や、[9]ピリジン環含有化合物が、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする前記[8]に記載のアミド化合物の製造方法や、[10]トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする前記[7]記載のアミド化合物の製造方法に関する。

【0010】
また本発明は、[11]脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする前記[1]~[10]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[12]ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする前記[11]記載のアミド化合物の製造方法や、[13]オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ-フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする前記[1]~[12]記載のアミド化合物の製造方法や、[14]極性溶媒が、ニトリル系溶媒であることを特徴とする前記[1]~[13]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[15]ニトリル系溶媒が、アセトニトリル又はベンゾニトリルであることを特徴とする前記[14]記載のアミド化合物の製造方法や、[16]共触媒を用いて、ベックマン転位反応を行うことを特徴とする前記[1]~[15]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[17]共触媒が、ルイス酸性を有する金属塩であることを特徴とする前記[2]~[6]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[18]共触媒が、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸から選ばれるブレンステッド酸であることを特徴とする前記[7]~[10]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法や、[19]ベックマン転位反応を加熱還流下に行うことを特徴とする前記[1]~[18]のいずれか記載のアミド化合物の製造方法に関する。

【0011】
さらに本発明は、[20]次の条件(1)~(3)すべてを満足する芳香環含有化合物であって、該芳香環含有化合物の芳香環が、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であり、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなくベックマン転位反応を行う際に使用されること特徴とするオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒
(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含む
(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含む
(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちのつが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する
や、[21]芳香環が、ベンゼン環であることを特徴とする前記[20]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[22]ベンゼン環が、ニトロ基を有する炭素原子2つを有し、該炭素原子が脱離基を有する炭素原子のオルトあるいはパラ位に位置してることを特徴とする前記[21]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[23]ベンゼン環の脱離基を有する炭素原子のパラ位に位置する電子吸引基が、シアノ基又はニトロ基であることを特徴とする前記[21]又は[22]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[24]ベンゼン環含有化合物が、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル又はピクリルクロリドであることを特徴とする前記[22]~[23]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[25]芳香環が、ピリジン環、ピリミジン環又はトリアジン環であることを特徴とする前記[20]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[26]ピリジンの窒素原子が、脱離基を有する炭素原子のオルト位に位置してることを特徴とする前記[25]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[27]ピリジン環含有化合物が、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンであることを特徴とする前記[26]に記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[28]トリアジン環含有化合物が、トリクロロトリアジンであることを特徴とする前記[2]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[29]脱離基が、ハロゲン原子であること特徴とする前記[20]~[28]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[30]ハロゲン原子が、塩素であることを特徴とする前記[29]記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒や、[31]オキシム化合物が、シクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ-フルオロアセトフェノンオキシムであることを特徴とする前記[20]~[30]のいずれか記載のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒に関する。

【発明の効果】
【0012】
本発明のオキシム化合物からアミド化合物を製造する方法は、強酸を使用することなくオキシム化合物から温和な反応条件下、高収率でアミド化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアミド化合物の製造方法としては、(1)芳香環を構成する原子として、脱離基を有する炭素原子を少なくとも1つ含み、(2)芳香環を構成する原子として、電子吸引基を有する炭素原子を少なくともつ含み、(3)芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちつが、前記脱離基を有する炭素原子のオルト及びパラ位に位置する、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環及びトリアジン環からなる芳香環含有化合物の存在下、極性溶媒中で、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなくオキシム化合物のベックマン転位反応を行う方法であれば特に制限されず、また、本発明のオキシム化合物のベックマン転位反応用触媒としては、前記(1)~(3)の条件をすべて満足するベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環及びトリアジン環からなる芳香環含有化合物を主成分とし、塩化水素、カルボン酸又はジメチルホルムアミドを添加することなくベックマン転位反応を行う際に使用されものであれば特に制限されない。

【0014】
本発明において、「芳香環を構成する窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子のうちの3つ」とは、芳香環を構成する原子として、窒素原子又は電子吸引基を有する炭素原子を、それぞれ単独又は混在して、3個有するものであればよいことを意味する。

【0015】
本発明の芳香環含有化合物の芳香環は、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が例示され、これらのうちベンゼン環、ピリジン環、トリアジン環を好適に例示することができる

【0016】
上記(1)~(3)の条件における脱離基としては、公知の脱離基であれば特に制限されないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、スルホニルオキシ基(ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基(トシル基)OTs等のアリールスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基OMs、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(トリフラート基)OTf、トリクロロメタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基等のアルカンスルホニルオキシ基など)、スルホニルハライド基(スルホニルクロリド、スルホニルブロミド基等)、ジアゾニウム基、カルボニルハライド基(カルボニルクロリド基など)などを例示することができ、ハロゲン原子が好ましく、中でも塩素原子が好ましい。
【0017】
上記(1)~(3)の条件における電子吸引基としては、公知の電子吸引基であれば特に制限されないが、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ニトロ基、ハライド基、カルボニル基、スルホニル基等などを例示することができ、中でもシアノ基、ニトロ基が好ましい。
【0019】
上記(1)~(3)の条件をすべて満足するベックマン転位反応用触媒として、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、4-フルオロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、4-ブロモ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、4-クロロ-1,3,5-トリニトロベンゼン、4-トリフルオロメチル-3,5-ジニトロベンゾニトリル、4-p-トルエンスルホニルオキシ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロリド、ピクリルブロミド、ピクリルフルオリド等のベンゼン環式化合物を挙げることができるが、中でも4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライドを好適に例示することができる。さらに、複素環式化合物としては、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、2-ブロモ-3,5-ジニトロピリジン、2-フルオロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン、トリブロモトリアジン、トリフルオロトリアジン等を挙げることができ、中でも、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジンを好適に例示することができる。また、これらベックマン転位反応用触媒の使用量は特に制限されないが、例えば、ベックマン転位反応用触媒として4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロリド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジンを用いる場合、オキシム化合物に対して5mol%~20mol%用いることが好ましい。
【0020】
上記オキシム化合物としては、公知のオキシム化合物であれば特に制限されないが、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、シクロヘプタノンオキシム、シクロオクタノンオキシム、シクロノナノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、シクロウンデカノンオキシム、シクロドデカノンオキシムアセトンオキシム、2-ブタノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、パラ-フルオロアセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、4′-ヒドロキシアセトフェノンオキシム等を挙げることができ、中でもシクロドデカノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、パラ-メトキシアセトフェノンオキシム、オルト-メトキシアセトフェノンオキシム、又はパラ-フルオロアセトフェノンオキシムが好ましく適用される。
【0021】
上記の極性溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、スルフォラン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メチルカーバメート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン等を挙げることができるが、中でもアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒が好ましい。
【0022】
ベックマン転位反応は、これら非エーテル系の極性溶媒中、加熱還流下に行うことが好ましい。加熱還流下における反応温度は、用いる溶媒によっても若干異なるが、60~200℃、特に80~140℃で1分~24時間、好ましくは、3分から10時間、更に好ましくは3分から3時間の範囲で反応を行うことが好ましい。加熱方法は、マイクロ波照射を用いることもでき、また、反応圧力も特に制限されるものではなく、密封条件下で反応させることもできる。
【0023】
ベックマン転位反応用触媒として、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル、ピクリルクロリド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン等の上記(1)~(3)の条件をすべて満足する化合物の他に、共触媒を用いることもできる。共触媒としては、ルイス酸やブレンステッド酸であれば特に制限されないが、通常は、セリウムトリフラート、プラセオジムトリフラート、又はネオジムトリフラート等のルイス酸が好ましく、ピクリルクロリド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン等の芳香族複素環においては、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸がより好ましい。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
(反応機構の考察;置換基の効果)
2mmolのシクロドデカノンオキシム(394.6mg)と0.1mmolの4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル(5mol%,22.8mg)をモレキュラーシーブス3Aで乾燥させたアセトニトリル(2mL)溶媒中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。その後、大部分の溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、目的のラクタム化合物が100%収率で得られた。このように、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルはベックマン転位反応に高い触媒活性を示したが、クロロ基、及びクロロ基の両オルト位のニトロ基が触媒能の発現に重要であるかどうかについて調べた。例えば、ニトロ基がオルト位に一つしかない4-クロロ-3-ニトロベンゾニトリルではシクロドデカノンオキシムのベックマン転位反応において活性が全くみられなかった。また、クロロ基のパラ位をシアノ基から他の電子吸引基であるトリフルオロメチル基に代えたところ活性が減少したことから、パラ位の電子吸引基も触媒活性に関係していることが分かる。これらの実験結果はクロロ基の置換反応が促進されるほど、ベックマン転位反応の触媒活性も加速されることを示しており、置換基の組み合わせ次第でさらに反応性の高い触媒を作ることが期待できることがわかった。
【0026】
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【実施例2】
【0027】
(溶媒の検討)
本発明のベックマン転位反応用触媒を用いた反応系における触媒の適否について検討した。非プロトン性極性溶媒であるアセトニトリル、非極性溶媒であるトルエン、エーテル系溶媒である1,4-ジオキサンを、それぞれモレキュラーシーブス3Aで乾燥させて用いた。2mmolのアセトフェノンオキシムと0.1mmolの4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル(5mol%)の各溶媒2mL中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。その後、大部分の溶媒を留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、本触媒系では極性溶媒を用いることが重要で、ニトリル系溶媒が最も良く、トルエン等の非極性溶媒や、テトラヒドロフランや1,4-ジオキサン等の比較的低極性なエーテル系溶媒では触媒活性をほとんど示さなかった。
【0028】
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【実施例3】
【0029】
(基質の一般性の検討)
アセトニトリル中、加熱還流条件下、様々なケトオキシムを基質に用い、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルの基質一般性を検討した。パラ及びオルトーメトキシアセトフェノンは速やかに反応が進行し高い収率で目的とするアミド化合物を得られた。またシクロドデカノンオキシムは僅か5mol%の触媒量で転位生成物であるラウロラクタムを定量的に得ることができた。反応性の低いアセトフェノンオキシムやパラ-フルオロアセトフェノンオキシムは触媒を20mol%用いることで生成物を良好な収率で得ることができた。
【0030】
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【0031】
次に4mLのアセトニトリル溶媒中、共沸脱水条件下、様々なケトオキシムを基質に用い、トリクロロトリアジンの基質一般性を検討した。その結果、様々な置換基を有する芳香族オキシム及び脂肪族オキシムは良好な収率で目的とするアミドを得る事ができた。また、シクロドデカノンオキシムのような転位し易い大環状オキシムでは高い収率でラクタムが得られたのに対し、ε-カプロラクタムの原料であるシクロヘキサンオキシムにおいては高収率でラクタムは得られなかった。
【0032】
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【実施例4】
【0033】
(ε-カプロラクタムの合成)
不活性ガス雰囲気下で調製した2mmolのシクロヘキサノンオキシム(226.32mg)と0.1mmolの4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル(5mol%,22.8mg)のベンゾニトリル(1mL、モレキュラーシーブス4Aで乾燥させたもの)溶液1mLをマイクロ波照射下、200℃、5分間加熱した。室温まで冷却した後、得られた混合物をプロトンNMRで解析した結果、ε-カプロラクタムが73%の変換率であった。
【0034】
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【実施例5】
【0035】
(共触媒の検討)
触媒活性を補う方法として触媒に加え、共触媒を用いる方法を検討した。様々な金属化合物及び有機酸化合物を触媒量用い、アセトフェノンオキシムのベックマン転位反応について検討した。例えば、セリウムトリフラートを共触媒に用いる場合、2mmolのアセトフェノンオキシム(270.32mg)と0.2mmolの4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル(10mol%,45.6 mg)及び0.2mmolのセリウムトリフラート(10mol%,117.4 mg)をモレキュラーシーブス3Aで乾燥させたアセトニトリル(2mL)溶媒中、共沸脱水条件下、2時間反応させた。室温まで冷却した後、反応溶液に炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。大部分の溶媒を留去した後、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、目的のアセトアニリドが93%の収率で得られた。他の共触媒についても同様に行った。その結果、ランタノイド金属トリフラートが触媒活性を飛躍的に向上させることがわかった。ランタノイド金属系は何でも良く、上記セリウムトリフラートの他、例えば、共触媒としてランタントリフラートを用いた場合82%の変換率で、プラセオジムトリフラートを用いた場合90%の変換率で、ネオジムトリフラートを用いた場合95%の変換率で、アミド化合物を得ることができた。また、1mol%のセリウムトリフラートと5mol%の4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルを合わせて用いた場合の4時間後の変換率は82%であったのに対し、1mol%のセリウムトリフラートあるいは5mol%の4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルを単独で用いた場合の4時間後の変換率は10~20%であり、共存させることで触媒の活性を向上させることができることがわかった。
【0036】
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【実施例6】
【0037】
(オキシム化合物のベックマン転位反応を触媒する化合物のスクリーニング)
芳香環や、該芳香環を構成する原子の違いによる触媒能を検討するため、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゼンニトリル、ピクリルクロリド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジン、4-クロロ-3,5-ジニトロトリフルオロメチルベンゼン、4-クロロ-3-ニトロベンゼンニトリル、3,5-ジニトロベンゼンニトリル、3,5-ジメトキシクロロトリアジン、トリヒドロキシトリアジンをアセトフェノンオキシムのベックマン転位反応用触媒として試した。4mLのアセトニトリル溶媒中で、5mol%の触媒を添加し、共沸脱水条件下で2時間反応させたところ、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゼンニトリル、ピクリルクロリド、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジン、トリクロロトリアジンを用いたとき、それぞれ15%、43%、44%、80%の変換率で、目的のアセトアニリドを得ることができた。これらの結果より、クロロ基が置換されやすいπ電子欠損型芳香族化合物に高い触媒活性があることがわかった。
【0038】
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【実施例7】
【0039】
(触媒中間体の確認)
1951年にランパートとボードウェルはケトオキシムのピクリルエーテルがベックマン転位の基質となることを明らかにしている。そこで、本発明の反応系においてオキシムのアリールエーテルが触媒中間体となっていることを確かめるために、アセトニトリル溶媒中で、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリル及び2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンをトリエチルアミン共存下、アセトフェノンオキシムと室温で1時間反応させ、オキシムアリールエーテルを合成し、このオキシムアリールエーテルを5mol%用い、アセトフェノンオキシムを基質にアセトニトリル溶媒中、共沸脱水条件下でベックマン転位反応を行った。
【0040】
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【0041】
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【0042】
4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルから誘導したオキシムエーテルは、そのクロロ体を触媒に用いた時と同程度の触媒活性が観察され、オキシムアリールエーテルがベックマン転位反応の触媒中間体となっていることが示唆されたが、2-クロロ-3,5-ジニトロピリジンから合成したものは触媒活性が見られなかった。また、クロロ体を触媒に用いた場合の反応系中では置換反応の際にHClが発生するので、この置換の際に発生するHClが助触媒となって転位反応が進行することが考えられ、このことを確かめるために、HClのジオキサン溶液を触媒量加えたところ反応が進行した。さらに、上記共触媒の検討において、ランタノイド金属トリフラートが触媒活性を飛躍的に向上させることがわかった。例えば、テルビニウムトリフラートを添加したところ、4-クロロ-3,5-ジニトロベンゾニトリルから誘導されたものの方が強く活性化された。この事はテルビニウムトリフラートが触媒のシアノ基に強く配位するためと考えられる。以上の結果から、オキシムアリールエーテルがベックマン転位反応の触媒中間体となっていることが示唆され、HClやテルビニウムトリフラートが助触媒として働くことが確認された。