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明細書 :新規有機顔料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4604196号 (P4604196)
公開番号 特開2006-257277 (P2006-257277A)
登録日 平成22年10月15日(2010.10.15)
発行日 平成22年12月22日(2010.12.22)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 新規有機顔料
国際特許分類 C08G  73/00        (2006.01)
C09B  69/10        (2006.01)
FI C08G 73/00
C09B 69/10 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2005-077057 (P2005-077057)
出願日 平成17年3月17日(2005.3.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2004年11月1日 第34回複素環化学討論会準備委員会発行の「第34回 複素環化学討論会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】上村 明男
審査官 【審査官】井津 健太郎
参考文献・文献 特表平07-507091(JP,A)
特開平09-067421(JP,A)
特開2005-326199(JP,A)
調査した分野 C08G 73/00-73/26
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物。
【化1】
JP0004604196B2_000008t.gif
但し、Arは2価の芳香族基を表す。
【請求項2】
請求項1記載の高分子化合物よりなる有機顔料。
【請求項3】
請求項1記載の芳香族基が、オルソ位又はパラ位に結合手を有する2価の芳香族基である有機顔料。
【請求項4】
1,3,3-トリアルコキシ-2-シアノプロペン(アルコキシ基の炭素数は1~10)に芳香族ジアミンを反応させることからなる高分子化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規有機顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料とは、有機色素から成る顔料の総称である。無機顔料に比べ、耐熱性、耐光性、耐溶剤性は劣るが、一般に着色力が大きく、色相が豊富で鮮明で、透明性が大きいので需要は増加している。有機顔料の最大の用途は印刷インキであるが、ペイント、ラッカー、ゴム、プラスチック、化粧品、紙などの着色、合成繊維の原液着色、顔料なせんなど広い用途がある。有機顔料としては、アゾ顔料、アントラキノン系など、種々の化学構造の有機色素が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、在来の有機色素とは化学構造の異なる新規有機顔料を提供することを目的とする。そして、本発明は、新規な重合体化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、重合体化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する新規高分子化合物である。
【0005】
【化2】
JP0004604196B2_000002t.gif
但し、Arは2価の芳香族基を表す。
【0006】
また、本発明は上記一般式(1)で示される、繰り返し単位を有する高分子化合物よりなる有機顔料である。
【0007】
更に、本発明の好適な態様は、上記一般式(1)において、Arで表される2価の芳香族基が、オルソ位又はパラ位に結合手を有する2価の芳香族基であることを特徴とする高分子化合物よりなる有機顔料である。
【0008】
本発明の別の態様は、1,1,3-トリアルコキシ-2-シアノプロペン(アルコキシ基の炭素数は1~10)に芳香族ジアミン中でも、オルト又はパラジアミンを反応させることからなる高分子化合物の製造方法及び顔料の製造方法である。
【0009】
かかる製造方法にあっては、特に1,1,3-トリブトキシ-2-シアノプロペン(以下VB3と略称されることがある)を酸性条件下に芳香族ジアミンを反応させることにより、不溶、不融の高分子化合物を得るものでもある。この不溶、不融の高分子化合物は反応させるジアミンの種類や、重合度によって、橙色から赤色のあざやかな色調を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高分子化合物は、従来の色素には見られない化学構造、すなわち新規なビナミジン構造を有する色素である。本発明の高分子化合物は、7時間程度の加熱還流により容易に製造できる。本発明の有機顔料は、耐溶剤性が極めて優れているので、印刷インキ、インキジェット用インキ、ペイント、ラッカー、ゴム、プラスチック、化粧品、紙などの着色剤、合成繊維の原液着色料、顔料なせんなど広い用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、まず1,1,3-トリブトキシ-2-シアノプロペンを酸性条件で、2当量の芳香族アミンを作用させると、ビナミジン(1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエン)が収率よく得られることを見出した。
【0012】
この反応は次式(2)で示される。
【0013】
【化3】
JP0004604196B2_000003t.gif
更に、VB3は、酸性条件下にメタ位に電子供与基を持つ芳香族アミンを反応させた場合には、キノリン化合物を生成することも確認されている。
【0014】
しかるに、本発明の如く、VB3に芳香族ジアミンを反応させた場合、VB3と該ジアミンとの縮重合が起こり、不溶、不融の高分子物質を生成することは全く知られていない。
【0015】
本発明者は、VB3と芳香族ジアミンとを酸性条件下に反応させたところ、驚くべきことに、不溶、不融の高分子化合物が得られたのである。しかもこの高分子化合物は、実に美しい橙色乃至赤色を示し、有機顔料として、優れた特色を有するものであった。
【0016】
この高分子化合物は、2価の芳香族化合物と、1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエンとからなる繰り返し単位で構成されていることが分かった。
【0017】
すなわち、この不溶、不融の化合物は、ビナミジ化の反応が進行したものであり、その結果、2価の芳香族化合物単位と1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエン単位とからなる繰り返し単位で構成される、重合体化合物を生成したものである。
【0018】
すなわち、本発明の重合体化合物は、2価の芳香族化合物単位と1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエン単位とからなる繰り返し単位で構成されるものであり、不溶、不融であることから、高分子化合物であることも明らかである。しかしながら、本高分子化合物を実質的に溶解させる溶媒が存在しないことから、その分子量の測定は全く不可能である。
【0019】
また、前記一般式(1)に示される繰り返し単位が1~5程度までは、わずかではあるが溶媒に溶解するため、TOF測定が可能であり、前記一般式(1)で示す構造を想定することができる。
【0020】
そこで、本発明の好ましい態様は、前記一般式(1)の繰り返し単位が実質的に6以上、更には12以上存在する高分子化合物である。
【0021】
かかる本発明の高分子化合物は、溶剤にほとんど溶解しないため、耐溶剤性が極めて優れており、塗料、インキ、合成樹脂等に配合する着色剤として極めて有用である。
【0022】
本発明の高分子化合物は、1,3,3-トリアルコキシ-2-シアノプロペンに芳香族ジアミンを反応させることにより、容易に製造することができる。
【0023】
本発明で使用する、1,1,3-トリアルコキシ-2-シアノプロペンとしては、アルコキシ基の炭素数が1~10のものが好適に使用可能である。中でも1,1,3-トリブトキシ-2-シアノプロペンが好ましい。
【0024】
芳香族ジアミンの「芳香族」とは、いわゆる芳香族性をもつ化合物を意味し、ベンゼン環、以外に、ベンゼン環を持つ縮合環でもよく、芳香族性をもつ複素環化合物でもよい。
【0025】
メタ位に置換した、芳香族ジアミンも、有機顔料の製造に使用できるが、キノリン化合物を副生し、有機顔料の収率が落ちる。
【0026】
オルト配置とパラ配置の芳香族ジアミンは、キノリン化合物を副生しないという点で、有機顔料の製造効率上好ましい。好ましい芳香族ジアミンとしては、オルトジアミノベンゼン、パラジアミノベンゼン、2,3-ジアミノ-ピリジン、2,4-ジアミノ-ピリジン、2,5-ジアミノ-ピリジン、3,4-ジアミノ-ピリジン、3,5-ジアミノ-ピリジン等のピリジン類や、1,4-ジアミノ-ナフタレン、2,3-ジアミノ-ナフタレン等のナフタレン類とがある。
【実施例1】
【0027】
1,1,3-トリブトキシ-2-シアノプロペン(2.83g、10mmol)をアセトニトリル-酢酸-水の混合溶媒(15mL:4.16mL:0.2mL)に溶解し、室温で30分攪拌した。これにオルトジアミノベンゼン(1.088g、10mmol)を加え、90℃で7時間加熱還流した。冷却後、橙色沈殿をガラスフィルターで吸引ろ過
し、美しい橙色の顔料を1.686g得た。
【0028】
この顔料は、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、アセトン、DMF、DMSO、アセトン、メタノールなどいずれの溶媒にも溶解しなかった。この顔料を溶解する溶媒を見出すことができなかった。
【0029】
この反応は次式(3)で示される。
【0030】
【化4】
JP0004604196B2_000004t.gif
この化合物は、図1に示す13C-NMRチャートにおいて、80.7,115.7,123.0,139.2,140.4,150.4,151.1にピークを有し、下記の構造式、すなわちフェニレン単位と1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエン(ビナミジン)単意とからなる繰り返し単位で構成されると推定される。
【0031】
【化5】
JP0004604196B2_000005t.gif

【実施例2】
【0032】
1,1,3-トリブトキシ-2-シアノプロペン(2.83g、10mmol)をアセトニトリル-酢酸-水の混合溶媒(15mL:4.16mL:0.2mL)に溶解し、室温で30分攪拌した。これにパラジアミノベンゼン(1.092g,10mmol)を加え、90℃で7時間加熱還流した。冷却後、赤色沈殿をガラスフィルターで吸引ろ過し、美しい赤色の顔料を1.988g得た。
【0033】
この反応は、次式(4)で示される。
【0034】
【化6】
JP0004604196B2_000006t.gif
この化合物は、図2に示す13C-NMRチャートにおいて、80.5,115.0,123.0,140.6,150.6にピークを有し、下記の構造式(5)、すなわちフェニレン単位と1,5-ジアザ-1,3-ペンタジエン(ビナミジン)単位とからなる繰り返し単位から構成されると推定される。
【0035】
【化7】
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【実施例3】
【0036】
(1)実施例1の重合体についてのTOF測定
実施例1の重合体は、溶媒に全く溶解しないので、TOFに何等のピークも出てこない。分子量レンジで25000までみたが、ピークらしいものはない。
(2)実施例2の重合体についてのTOF測定
実施例2の重合体は、テトラヒドロフランに極微量ではあるが溶解する。TOFをみると、25000までにそれらしきピークは出てこない。逆に分子量2500までのレンジでは、図3に示すように、(3)605.92、(4)775.09、(5)944.25、(6)1114.41、(7)1282.59、(8)1451.84、(9)1622.50、(10)1790.88、(12)2130.55と、約170間隔でピークが生じている。
【0037】
これは単量体(ジアリールビナミジン)277.13から、1繰り返し単位(アリールビナミジン)ずつ伸びていったときの増分(=169.07)とみると、オリゴマーの分子量は、トリマーが615.26、テトラマーが784.32、ペンタマーが953.39、ヘキサマーが1122.45、ヘプタマーが1291.55、オクタマーが1460.62、ノナマーが1629.62、デカマーが1798.76、ドデカマーが2136.9と計算される。
【0038】
これらの測定値と計算値との一致は、実施例1、実施例2の重合体化合物の構造が、上記化学式4、化学式6で正しいことを示すものである。そして、この2500までのピークは、生成固体にわずかに含まれる反応途中の3量体(MW=605)から12量体(MW=2136)の示すピークということができる。
(3)本発明の重合体の重合度
これらの結果から、本発明の重合体の重合度は、相当高重合度のものと推定されるが、どの程度の高重合度なのか確定することはできなかった。しかしながら、本発明の重合体の重合度は、一般に12を超えるものということはできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】は、実施例1の橙色有機顔料の13C-NMRチャートである。
【図2】は、実施例2の赤色有機顔料の13C-NMRチャートである。
【図3】は、オリゴマーの構造式、オリゴマーの分子量計算値、及び、TOF測定値を示す。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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