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明細書 :唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4147307号 (P4147307)
公開番号 特開2005-245384 (P2005-245384A)
登録日 平成20年7月4日(2008.7.4)
発行日 平成20年9月10日(2008.9.10)
公開日 平成17年9月15日(2005.9.15)
発明の名称または考案の名称 唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞
国際特許分類 C12N   5/06        (2006.01)
FI C12N 5/00 E
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2004-063714 (P2004-063714)
出願日 平成16年3月8日(2004.3.8)
審査請求日 平成18年10月13日(2006.10.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】遠藤 文夫
【氏名】松本 志郎
【氏名】久富 雄一朗
【氏名】奥村 健治
【氏名】中村 公俊
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 特開2003-144140(JP,A)
細胞工学,日本,2003年,Vol.22, No.5,534-538
Hepatology,2003年,Vol.38, No.1,104-113
第26回日本分子生物学会年会プログラム講演要旨集,日本,2003年,765,演題番号2PC-026
調査した分野 C12N 5/06
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳動物の唾液腺から得られる細胞懸濁液を用いて初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる前記プレートに付着した細胞の、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存及び増殖を維持させるための使用。
【請求項2】
哺乳動物がブタまたはヒトである、請求項1に記載の使用
【請求項3】
哺乳動物の唾液腺から得られる細胞懸濁液を用いて初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる前記プレートに付着した細胞を培地中で培養することにより得られる培養液の、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存及び増殖を維持させるための使用。
【請求項4】
哺乳動物の唾液腺から得られる細胞懸濁液を用いて初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる前記プレートに付着した細胞の非存在下において、該細胞を培地中で培養することにより得られる培養液を用いることを特徴とする、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞を浮遊状態で培養する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞、およびその細胞を用いた唾液腺由来の浮遊系細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に有用なポテンシャルを有する幹細胞についての研究が盛んになされている。今日までに報告された代表的な幹細胞として、間葉系幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、並びに膵幹細胞が挙げられる。
【0003】
間葉系幹細胞はヒト成体骨髄液より分離された(Pittenger, M.F. et al., Science 284, 143 (1999))。この細胞は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞へのin vitroにおける分化誘導が可能である。神経幹細胞(Gage, P.H., Science 287, 1433-1438 (2000))については1992年に成体の中枢神経系からの最初の分離の報告がなされており、2001年には成体の皮膚真皮から神経細胞に分化可能な幹細胞の分離(Toma, J.G. et al., Nature Cell Biology, 3, 778-784 (2001))が報告されている。
【0004】
造血幹細胞は既に多くの研究がなされているが、その分化機能について報告されたのは比較的新しい。1999年に骨髄細胞が肝臓細胞に分化することがPatersenらによって明らかにされ(Petersen B.E. et al., Science 284, 1168 (1999))、翌年にはマウス造血幹細胞をc-kittil、Thr-1low、Linneg、Sca-1+にてsortingした細胞分画が、幹細胞に分化転換することが示されている(Lagasse, E. et al., Nature Medicine 6, 1229-1234 (2000))。この他にも造血幹細胞には分化転換能があると考えられており、心筋(Orlic, D. et al., Nature 410, 701-705 (2001))や、さらには肺胞上皮、腸管上皮、皮膚(Orlic, D. et al.,上掲)への分化も報告されている。
【0005】
以上のように、間葉系もしくは外胚葉系の細胞についての幹細胞研究は進んでいるが、内胚葉系幹細胞の報告は未だ少ない。ヒト肝幹細胞についてはその存在が確実視されているが、未だ確定的な幹細胞の報告はない。膵臓についてはCorneliusらのグループが成体マウス膵臓より膵島産生幹細胞(islet producing stem cells (IPSCs))の分離を行っており、さらにIPSCsよりin vitroにて作製した膵島の移植実験を報告している(Ramiya, V.K. et al., Nature Medicine 6, 278-282 (2000))。この細胞についても、a、b、d細胞への分化は確認されているが、その他の細胞への分化能は確認されていない。膵島よりネスチン(nestin)陽性にて分離した幹細胞が膵臓の内、外分泌および肝臓の表現型へと分化したとの報告はあるが(Zulewski, H. et al., Diabetes 50, 521-533 (2001))、分化マーカーの免疫組織学的検索は示されていない。また、内胚葉系細胞および外胚葉系細胞の双方に分化可能なより未分化な多分化能を有する細胞についての報告はこれまでの所なされていない。
【0006】

【非特許文献1】Pittenger, M.F. et al., Science 284, 143 (1999)
【非特許文献2】Gage, P.H., Science 287, 1433-1438 (2000)
【非特許文献3】Toma, J.G. et al., Nature Cell Biology, 3, 778-784 (2001)
【非特許文献4】Petersen B.E. et al., Science 284, 1168 (1999)
【非特許文献5】Lagasse, E. et al., Nature Medicine 6, 1229-1234 (2000)
【非特許文献6】Orlic, D. et al., Nature 410, 701-705 (2001)
【非特許文献7】Ramiya, V.K. et al., Nature Medicine 6, 278-282 (2000)
【非特許文献8】Zulewski, H. et al., Diabetes 50, 521-533 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らのこれまでの研究により、細胞移植治療に使用できる、種々の組織に分化可能なより未熟で多分化能を有する体性幹細胞の調製が可能になった(特願2004-26549号明細書)。この有突起浮遊細胞は、ブタ唾液腺由来の初代培養細胞をI型コラーゲンコート培養皿で高密度培養して得られた細胞である。この細胞は、浮遊状態のまま新しい培地に移すと増殖能を失い死滅するが、I型コラーゲンコート培養皿に移すと付着して増殖し、継代培養可能となる。細胞移植治療を行うために必要なこの有突起浮遊細胞を大量かつ効率的に調製するためには、この細胞を浮遊状態で生存させ、増殖させることが必要である。即ち、本発明は、唾液腺由来の浮遊系細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞、及びそれを用いた唾液腺由来の浮遊系細胞の培養方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、唾液腺細胞の新しい培養を開発し、上清中で増殖する浮遊系細胞を見出した。この細胞を観察したところ、外胚葉系細胞および内胚葉系細胞の双方向への分化能をもち、これまでに報告されていた幹細胞よりも更に未分化な新規の細胞であることがわかった。更に、この多分化能を有する新規の細胞の生存と増殖を支持する因子(増殖因子)が存在することを見出した。また、この因子を分泌する細胞を分離し、増殖因子を含む培養液の採取方法と活性評価法を確立した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、哺乳動物の唾液腺の初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞が提供される。
【0010】
好ましくは、哺乳動物がブタまたはヒトである。
【0011】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明の支持細胞を培地中で培養することを含む、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を含有する培養液の製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の支持細胞を培地中で培養することにより得られる、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を含有する培養液が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の培養液を用いることを特徴とする、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞を浮遊状態で培養する方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、唾液腺由来の未分化な多分化能を有する有突起浮遊細胞を浮遊状態のままで生存・増殖させることが可能となった。本発明を利用することで、体性幹細胞を用いた細胞移植治療を行うために必要な細胞を大量かつ効率的に調製することが可能になる。
【0015】
再生医療は、人体の細胞(たとえば胚性幹細胞や体性(組織)幹細胞など)を最大限に利用することによって、新たな組織や器官を細胞から作製したり、損傷したもしくは機能の落ちた組織や器官を修復しようとする医学的な試みである。再生医療によって、これまで治療が難しかった疾患に対しての治療が可能になるのではないかと大きな期待が寄せられており、現在、心筋梗塞、脳梗塞、肝硬変、腎不全、血管性病変、白血病、関節炎、熱傷など多岐にわたり研究が進められている。本発明の細胞を利用することにより体性幹細胞を用いた種々の組織再生が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、唾液腺由来の浮遊細胞の生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞を分離した。支持細胞は、インスリンやアルブミンなどに分化する能力を持つ未分化細胞であるが神経細胞などの外胚葉への分可能は認められなかった。この点で、神経細胞にも分化可能な浮遊細胞とは異なる細胞であった。別々に分離した支持細胞と浮遊細胞を共培養することにより、安定して浮遊細胞を培養可能であった。これにより、不安定な唾液腺由来の浮遊細胞の培養を安定して供給可能である。
本発明の細胞は、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞であって、哺乳動物の唾液腺の初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる細胞である。
【0017】
本発明の細胞は、哺乳動物の唾液腺から単離される。哺乳動物としては、マウス、ラット、イヌ、ブタ、サル等の実験動物、又はヒトが挙げられ、特に好ましくはブタ又はヒトであり、最も好ましくはヒトである。哺乳動物としては成体を使用することができる。移植医療を行う場合は、他人の組織ではなく、自分自身の組織を用いることが拒絶反応を回避する上で好ましい。自分自身の組織の損傷や機能不全を自らの組織で修復する目的で、成体由来の唾液腺を用いて、本発明の内胚葉系細胞および外胚葉系細胞の双方に分化可能な多分化能を有する細胞を製造することが好ましい。
【0018】
本発明の細胞は、哺乳動物の唾液腺の初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群(細胞凝集体)をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより取得することができる細胞である。さらに好ましくは、本発明の細胞は、哺乳動物の唾液腺から細胞浮遊液を調製し、該細胞浮遊液をI型コラーゲンコートプレートに1x104 ~1x105cells/ 100mm dish の細胞密度(特に好ましくは、5x104 cells/ 100mm dish の細胞密度)で播種して培養を行うことにより採取することができる。好ましくは、I型コラーゲンコートプレートでの培養は無血清培地で行うことができる。また、本発明の支持細胞の維持培地にTetradecanoylphorbol 13-acetate (以下TPAと略)を加えて不死化することにより、安定した支持因子の供給が可能である。
【0019】
本発明者らは先に、細胞浮遊液をI型コラーゲンコートプレート に5x104 cells/ 100mm dish の細胞密度で播種し初代培養を開始するという従来の方法に改良を加え、更に高密度で培養することで浮遊系細胞が出現することを見出している(特願2004-26549号明細書)。すなわち、分散唾液腺細胞をI型コラーゲンコートプレート に1x106 ~3x106cells/ 100mm dishの細胞密度で播種し、初代培養を開始すると、主に2種類の浮遊細胞が出現することを見いだした。一つ目は、初代培養開始後、3~7日目に出現する大型顆粒細胞であり、二つ目は10~14日目以降に出現する突起を有するToge細胞である。大型顆粒細胞は、7日目以降は出現せず、増殖もしないことがわかった。Toge 細胞は、14日目以降から約20日間上清中に存在し、この浮遊細胞をI型コラーゲンコートプレートに播種すると、付着細胞として増殖し、かつ継代できることが判明した。本発明においては、3~7日目に出現する大型顆粒細胞が、10~14日目以降に出現する突起を有するToge細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を分泌する支持細胞となることが見出されたものである。
【0020】
上記した哺乳動物の唾液腺の初代培養開始後3~7日目に培養上清中に現れる大型顆粒細胞を含む細胞群をI型コラーゲンコートプレートに付着させて培養することにより得られる本発明の支持細胞を培地中で培養することにより、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞の浮遊状態での生存と増殖を支持する因子を含有する培養液を製造することができる。このようにして得られる培養液を用いることにより、哺乳動物の唾液腺に由来する多分化能を有する細胞(具体的には、初代培養開始後10~14日目以降に出現する突起を有するToge細胞)を浮遊状態で培養することができる。
【0021】
Toge細胞は、内胚葉系細胞および外胚葉系細胞の双方に分化可能な多分化能を有する細胞である。内胚葉系細胞としては、例えば、膵臓内分泌細胞、肝臓細胞、口腔、食道、気管、胃、腸などが挙げられ、好ましくは、膵臓内分泌細胞及び肝臓細胞である。外胚葉系細胞としては、神経系細胞、感覚器細胞(水晶体、網膜、内耳など)、皮膚表皮細胞、毛包などが挙げられ、好ましくは神経系細胞である。Toge細胞は、内胚葉系細胞に分化させる条件下で培養することによって、内胚葉系細胞又は該細胞に由来する組織を製造することができ、また外胚葉系細胞に分化させる条件下で培養することによって、外胚葉系細胞又は該細胞に由来する組織を製造することができる。
【0022】
本発明の方法により、多分化能を有する細胞を浮遊状態で生存させ、増殖させることが初めて可能になり、これにより、多分化能を有する細胞を大量かつ効率的に調製することが可能になった。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1:ブタ唾液腺細胞の分散方法
(1)材料
LWD(ランドレス・デュロック種)ブタ 生後4~5 週 雄 7~10 kg
(2)方法
離乳後約2週間目のブタを、硫酸アトロピン、ストレスニル、ケタラール麻酔下に大腿動脈を切断して脱血し、仰臥位に固定した。下顎から頚部を正中切開し、顎下腺を摘出した。採取した顎下腺は氷冷したWilliams' E培養液(FCS無添加)へ保存し、培養フードにて直径約1.5 cm、約2~4gの大きさに細切した。
滅菌はさみで唾液腺を1-2 mm大に細切した。50 ml遠心管に入れたEGTA buffer 20mlに懸濁して、37℃で20分間、10回/分の速度で回転震盪した。組織細片液は遠心 (100 xg、5分、室温)し、上清は捨てた。ペレットをcollagenase/hyaluronidase bufferに懸濁し、37℃で40分間、回転震盪した。100 xg、5分、室温にて遠心分離し、ペレットをdispase solutionに懸濁し、37℃、60分間、回転震盪した。懸濁液を細胞濾過器にかけ、遠心分離(100 xg、5分、室温)した。細胞ペレットをWilliams' E medium (serum free) に懸濁し、同培養液で3回洗浄したのち、以下に記した各々の培養法にて初代培養を開始した。
【0024】
実施例2:浮遊細胞の培養および採取方法
実施例1の方法で分散した細胞分散液を血清入り維持培地に懸濁しI型コラーゲンコートdish (IWAKI)に5x105 ~3x106cells/ 100mm dishの細胞密度で播種し初代培養を開始する。初代培養開始後、36時間に初回培地交換を行い、以降3日毎に70%培地交換を行った。14日目以降の上清を回収し、100xg、15分、4℃遠心し、上清を回収し、-80℃で冷凍保存し、血清入りコンディションドメディウムとし、以下の実験に使用した。細胞ペレットは細胞数を算定した後、以下の実験に使用した。
【0025】
実施例3:増殖因子を含んだ無血清上清の採取方法
培養液に添加する血清中の増殖因子の関与を除去する目的で無血清培養条件下で培養を行う方法を開発した。すなわち、上記の方法で分散した唾液腺細胞をType Iコラーゲンコートdish (IWAKI)に3~6x106 cells/ 100mm dish の細胞密度で播種し初代培養を開始する。初代培養開始後、48時間後に初回培地交換を行い、以降3~5日おきに半培地交換を行った。2回目以降の培地交換時の上清を回収し、150xg、20分、4℃で遠心した。上清にBSAが最終濃度0.1%となるように加えた後、無血清コンディションドメディウムとして-80℃冷凍保存した。
【0026】
実施例4:浮遊細胞の上清中での細胞数の経時的変化
初代培養開始36時間後の培地交換後から上記の血清入りコンディションドメディウムを30%含んだ維持培地を用いで培養する場合、通常の維持培地で上記の半培地交換を続ける場合、全培地交換を行う場合のそれぞれにおいて回収された浮遊細胞の経時的変化を算定した。結果を図1に示す。
【0027】
図1の結果から分かるように、通常の維持培地で上記の半培地交換を続ける場合、7日目から上清に少数の浮遊細胞が出現し、増殖が始まる。上清中での増殖は約3週間~4週間維持される。全培地交換を行う場合には浮遊細胞はほとんど確認されない。上記の血清入りコンディションドメディウムを30%含んだ維持培地を用いで培養する場合、3日目から上清に浮遊細胞が出現し、上清中の細胞数の積算数も2倍以上多い。
【0028】
実施例5:浮遊細胞の増殖試験の方法
初代培養開始後14日目以降の浮遊細胞を含んだ培地上清を50ml遠心管に集め100xg、15分、4℃で遠心し、cell pelletとする。Cell pelletを調整培地に懸濁し、96well u-plate(IWAKI)の各wellに3~5x103cell/wellとなるように分注する。ここでいう調整培地とは、増殖因子を含んだ上清の希釈系列培地や熱処理を行った培地のことをいう。各試験での培地活性が異なっていることから、判定は目視で確認後に24時間~48時間後に行った。判定方法は、MTT法(CHEMICON)を用いておこなった。
【0029】
(1)標準細胞—吸光度曲線の作成
ブタ唾液腺由来浮遊細胞を含んだ培地上清を50ml遠心管に集め100xg、15分、4℃で遠心し、cell pelletとする。96well ELISA plateの各wellに500cell/well、1000cell/well、5000cell/well、10000cell/well、20000cell/wellになるように無血清維持培地に懸濁し、分注した。分注後、MTT法に従い、マイクロプレートリーダーを用いて各wellの吸光度を測定した。結果を図2に示す。MTT assay法による吸光度と細胞数の関係には細胞数500個から10000個までの間に正の相関が認められた。以下の実験ではこの標準化直線を用いて細胞数を算定した。
【0030】
(2)希釈conditioned mediumの細胞増殖、生存支持作用の測定
ブタ唾液腺由来浮遊細胞を含んだ培地上清を50ml遠心管に集め100xg、15分、4℃で遠心し、cell pelletとする。96well ELISA plateの各wellに3~5x103cell/wellとなるように分注する。Conditioned mediumの希釈は、原液を1として、0.5、0.25、0.125、0.062、0.031、0.016、0.007、0とした。各々の濃度のサンプル数はn=12とした。効果判定はMTT法により、24時間後に行った。結果を図3に示す。
【0031】
(3)熱処理conditioned mediumの細胞増殖、生存支持作用の測定
conditined mediumを37℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃で10分間熱処理を行った。熱処理したconditioned mediumを用いてconditioned mediumと無血清維持培地を1:1で混ぜた培地にブタ唾液腺由来浮遊細胞を懸濁し、96well ELISA plateの各wellに3~5x103cell/wellとなるように分注した。各系列のn=12とした。効果判定はMTT法により、24時間後に行った。結果を図4に示す。
【0032】
(4)既存の増殖因子のブタ唾液腺由来浮遊細胞の増殖、生存維持活性の測定
無血清維持培地に、既存の増殖因子(human recombinant FGF-2、human recombinant EGF、human recombinant HGF、human recombinant PDGF-AA)を下記の濃度で添加したものを調整培地とした。この調整培地に上記の方法にて回収された浮遊細胞を懸濁し、1000~3000 cell/wellとなるように96well U-plate (住友ベークライト)に分注した。効果判定はMTT法により24時間後に行い、conditioned mediumを100%としてその活性を示した。結果を図5に示す。
【0033】
上記の結果、唾液腺細胞初代培養プレートの上清には浮遊細胞の生存と増殖を可能にする因子が存在することが判明した。
【0034】
実施例:増殖因子を産生する細胞の分離方法
初代培養開始、3~7日目に上清中に現れる大型顆粒細胞を含んだ細胞群をType Iコラーゲンコートプレートに播種すると、高率に浮遊細胞を産生する浮遊細胞産生系が得られることを見出した。培地は、維持培地と10%FBS含有conditioned mediumを1:1でmixedしたものを使用する。この培養プレート上ではToge細胞が高率に増殖、生存していることがわかった。すなわち、このdish中の細胞にtoge細胞を産生、増殖、維持の全て、あるいはいずれかを行う作用を持つ物質を産生する、あるいは支持する細胞がいることが推察されたため、次の方法で支持細胞を分離した。
【0035】
まず、無血清維持培地にTetradecanoylphorbol 13-acetate (以下TPAと略)(1nM,5nM,10nM,15nM,20nM,50nM)を加えた培地に初代培養開始後5日目に得られた浮遊細胞を懸濁後、各々60mm collagen coated dish に3x104 cell/wellの割合で播種した。TPAが15nM以上の濃度で含んだ培地で培養した細胞は、播種後24時間以内に全て死滅した。1nM、5nM、10nM TPA含有無血清維持培地で培養した場合、濃度依存性に生存する細胞が出現した。すなわち、10nMの濃度では1~5個の上皮様のコロニーのみが出現した。TPA入り維持培地の交換は3日おきにhalf medium change で行った。1nMと5nMではTPA無添加の維持培地の場合に出現する細胞と同様の細胞(上皮様細胞、傍突起細胞、紡錘形細胞)がコロニーを形成して出現した。以上の細胞をコロニーピックアップリングを用いて、0.05%trypsin-EDTAを用いてピックアップし、96well collagen coated dishに播種し、分離した。
【0036】
また、ブタ唾液腺主排泄管を3週間結紮したのち、同様の方法で分散し、1x104 cell/10cm collagen coated dishの細胞密度で血清加維持培地にて培養を開始した場合に出現する細胞の中に浮遊細胞の生存増殖を支持する細胞を見出した。この細胞をコロニーピックアップリングを用いて、0.05%trypsin-EDTAを用いてピックアップし、96well collagen coated dishに播種し、分離した。
【0037】
実施例:増殖因子の性質
この血清加conditioned mediumを用いてブタの肝細胞、骨髄細胞を培養した場合にのみ得られる細胞が存在することがわかった。すなわち、培地中の因子に依存して生存する細胞の存在が示唆された。
【0038】
ブタ肝細胞分離方法
離乳後約2週間目のブタを、硫酸アトロピン、ストレスニル、ケタラール麻酔下に大腿動脈を切断して脱血し、仰臥位に固定した。腹部を正中切開し、肝臓を露出した。
ブタ肝臓を辺縁から5g切離した。切離された肝臓は、無血清Williams' E medium中で4℃へ保存した。遊離肝は、フード内にてcollagenase A(20mg/ml)液を経胆管的に注入し、分散した。分散された細胞を50mlコーニングチューブに移し、無血清Williams'E mediumにて50xg、1min、4℃遠心した。この場合、細胞ペレットに肝細胞、上清にnon-parenchymal cellが残ることとなる。この、上清を回収し、50xg、1 minの遠心を3回施行した。得られた上清を150gx15min、4℃にて遠心分離した。得られた細胞ペレットを回収し、血清加維持培地および50%conditioned medium含有血清加維持培地を用いて1x104cell/10cm collagen coated dishにplatingし、初代培養を開始した。
【0039】
ブタ膵細胞分離法
離乳後約2週間目のブタを、硫酸アトロピン、ストレスニル、ケタラール麻酔下に大腿動脈を切断して脱血し、仰臥位に固定した。腹部を正中切開し、大網を反転し、腸管を脾臓を含んだまま右側に展開し、膵臓を露出した。露出した膵臓を皮膜を剥離した後、膵頭部を5g遊離し、EGTA bufferに保存した。EGTA bufferに保存した後、直ちに激しく攪拌し、5回洗浄した。フードに移し、滅菌はさみで膵臓を1~2 mm大に細切した。50 ml遠心管に入れたEGTA buffer 20mlに懸濁して、37℃で20分間、10回/分の速度で回転震盪した。組織細片液は遠心 (100 xg、5分、室温)し、上清は捨てた。ペレットをcollagenase/hyaluronidase bufferに懸濁し、37℃で20分間、回転震盪した。100 xg、5分、室温にて遠心分離し、ペレットをdispase solutionに懸濁し、37℃、10分間、回転震盪した。懸濁液を細胞濾過器にかけ、遠心分離(100 xg、5分、室温)した。細胞ペレットをWilliams' E medium (serum free) に懸濁し、細胞数をカウントした。血清加維持培地および50%conditioned medium含有血清加維持培地に懸濁後、1x103cell/10cm collagen coated dishに播種し、初代培養を開始した。
【0040】
この未分化状態の浮遊細胞は、浮遊状態のまま新しい培地に移すと増殖能を失い、次第に死滅し、2-3日で半減する。この細胞を浮遊状態で生存させ増殖させるには唾液腺由来初代培養細胞の培養上清液が必要であることが推定された。そこで唾液腺細胞初代培養プレートを作成し、この上清に含まれる浮遊細胞維持増殖因子について検討を行った。
浮遊細胞を上述の方法で分離した。またこれとは別に唾液腺細胞を調整し初代培養プレートを作成し経時的に上清を採取した。新鮮に分離した浮遊細胞を経時的に採取した上清液と混合し、培養を開始した。その後経時的に生存細胞数をMTT法でカウントした。その結果、唾液腺細胞初代培養プレートの上清には浮遊細胞の生存と増殖を可能にする因子が存在することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、浮遊細胞の上清中での細胞数の経時的変化を示す。
【図2】図2は、標準細胞を用いて吸光度曲線を作成した結果を示す。
【図3】図3は、希釈conditioned mediumの細胞増殖、生存支持作用を測定した結果を示す。
【図4】図4は、熱処理conditioned mediumの細胞増殖、生存支持作用を測定した結果を示す。
【図5】図5は、既存の増殖因子のブタ唾液腺由来浮遊細胞の増殖、生存維持活性を測定した結果を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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