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明細書 :銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4872073号 (P4872073)
公開番号 特開2006-272296 (P2006-272296A)
登録日 平成23年12月2日(2011.12.2)
発行日 平成24年2月8日(2012.2.8)
公開日 平成18年10月12日(2006.10.12)
発明の名称または考案の名称 銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤
国際特許分類 B01J  20/06        (2006.01)
FI B01J 20/06 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2005-100044 (P2005-100044)
出願日 平成17年3月30日(2005.3.30)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】中山 雅晴
【氏名】田頭 寛基
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開2005-022938(JP,A)
特開2003-326637(JP,A)
調査した分野 B01J20/00-20/34
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
2価のマンガン化合物とポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンを含む電解液を用い、電気化学的酸化により、陽極上にポリジアリルジメチルアンモニウムをインターカレートして得られた層状マンガン酸化物からなることを特徴とする銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤。
【請求項2】
前記ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは、分子量が400,000~500,000である請求項1記載の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択吸着性を示す吸着剤。
【請求項3】
電解液に存在する2価のマンガン化合物の濃度は0.1mモル乃至1モル濃度であり、ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは窒素原子濃度として0.1mモル乃至1モル濃度である請求項1または2記載の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤。
【請求項4】
前記電気化学的酸化は、銀/塩化銀参照電極に対して0.8乃至1.2ボルトの電圧で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、有機第4アンモニウムイオンが層状マンガン酸化物にインターカレートされた構造を有する銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業活動の結果排出される金属類を回収することは、環境保全および資源の有効利用の観点から重要である。
【0003】
例えば、写真工業、メッキ工業をはじめとする工業分野から排出される廃水中に含まれる銀は、その規制が近年ますます厳しくなってきており、廃水からの銀を効率よく回収する技術が希求されている。
【0004】
鉛は、脳や神経を始め人体に各種の障害を引き起こす重金属であって、工業廃水や環境水に加え、上水道の鉛配管から溶出される鉛による飲料水汚染が問題になっている。
【0005】
銀の回収に関しては、従来より種々の技術が開発されている。例えば、特許文献1には、ケイ素を含有する化合物を銀イオンまたはナトリウムイオンの吸着剤とすることが、特許文献2には、銀に配位可能なイオウ原子を有するポリマーを使用することが、特許文献3には、写真現像液を電解処理することが記載されている。
【0006】
鉛の回収に関しても、従来より種々の技術が開発されている。例えば、特許文献4および特許文献5には、油水相分離現象を利用して鉛を水相側に沈殿分離することが、特許文献6には、鉛イオンを含む溶液をリン酸基、ホスフィン基および/またはホスホン基を有するキレート性イオン交換樹脂と接触させ、鉛イオンを樹脂に吸着させることが記載されている。

【特許文献1】特開2001-205080号公報
【特許文献2】特開平7-60243号公報
【特許文献3】特開平7-97696号公報
【特許文献4】特開平10-175915号公報
【特許文献5】特開平10-347302号公報
【特許文献6】特開平8-10763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の吸着剤では、水道水等の通常の水に含まれているナトリウムイオンを同時に吸着してしまうことになり、銀イオンの吸着効率を高めることに難点がある。特許文献2に記載の吸着剤も同様であり、イオウ原子と親和性のある金属が同時に吸着されることになる。特許文献3に記載の電解処理は、装置が大がかりとなる上、電位等によって回収条件を制御しなければならない。
【0008】
特許文献4および特許文献5に記載の方法では、油相と水相を分離し、さらに遠心分離等によって鉛を固形分として取り出す必要がある。特許文献6に記載の方法では、高価なキレート性イオン交換樹脂が必要とされる。
【0009】
この発明の発明者等は、有機第4アンモニウムイオンの存在下で2価のマンガン化合物を電気化学的に酸化することにより、前記有機第4アンモニウムイオンをインターカレートした層状マンガン酸化物薄膜の製造方法の発明をなし、特願2004-265681号として特許出願をしているところである。この特願2004-265681号の発明によれば、有機第4アンモニウムイオンをインターカレートした層状マンガン酸化物薄膜を、複雑なプロセスを要することなく、簡便に製造することができることになる。
【0010】
この発明の発明者等は、更に研究を続けたところ、有機第4アンモニウムイオンをインターカレートした層状マンガン酸化物は、特定の金属イオンに対する選択的吸着性のあるとの知見を得るとともに、銀や鉛の回収に関する上記した実情を踏まえ、鋭意研究の結果、この発明を創案したものであって、貴金属であり有用物である銀を含む廃水、人体に有害な鉛を含む廃水や水道水等から、銀、鉛を含む廃水等中に通常混在しているナトリウムやカルシウム等は吸着しないで、銀および鉛を選択的に吸着することのできる吸着剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤は、以下の(1)~()の構成よりなる
【0012】
(1)2価のマンガン化合物とポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンを含む電解液を用い、電気化学的酸化により、陽極上にポリジアリルジメチルアンモニウムをインターカレートして得られた層状マンガン酸化物からなることを特徴とする銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤である。
【0013】
(2)上記(1)において、ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは、分子量が400,000~500,000である銀イオンおよび鉛イオンに対し選択吸着性を示す吸着剤である。
【0014】
(3)前記電解液に存在する2価のマンガン化合物の濃度は0.1mモル乃至1モル濃度であり、ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは窒素原子濃度として0.1mモル乃至1モル濃度である上記(1)または(2)記載の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤である。
【0015】
(4)前記電気化学的酸化は、銀/塩化銀参照電極に対して0.8乃至1.2ボルトの電圧で行うことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤である。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0017】
すなわち、この発明の吸着剤は、銀イオンおよび鉛イオンに対し高い選択的吸着性を示すことから、貴金属であり有用物である銀を含む廃水、人体に有害な鉛を含む廃水や水道水等から、銀イオン、鉛イオンを含む廃水等の中に通常混在しているナトリウムイオンやカルシウムイオン等は吸着しないで、銀イオンおよび鉛イオンを吸着することができる。
【0018】
マンガンは、自然界に多量に存在し、毒性が低く安全であり、また、原料となる2価のマンガン化合物も豊富で毒性が低く安価であり、この発明の吸着剤の製造に関与する人、その周囲の環境を害する恐れが少ない。また、この発明の吸着剤は、有機第4アンモニウムイオンの存在下で2価のマンガン化合物を電気化学的に酸化することで製造できるものであって、電気化学的酸化は、常温で簡単に行うことができ、製造コストが低く、吸着剤の単価をおさえることができる。
【0019】
この発明の吸着剤は、薄膜の形態であることから、嵩張らずコンパクトであって、電極上に薄膜として形成でき、電極のサイズを選択することにより、所望するサイズの薄膜状の吸着剤を得ることができる。
【0020】
また、電極上に薄膜として形成されたこの発明の吸着剤により回収された銀イオン、鉛イオンは、電極に通電することで電気化学的に銀粒子、鉛粒子として還元でき、回収後の処理が容易でもある。そして、銀イオンや鉛イオンが回収された廃水はそのまま、または、適宜の処理を施すことにより放流できることになる。
【0021】
以上のように、この発明の吸着剤によれば、産業活動の結果排出される廃水等の中から銀イオン、鉛イオンの回収を容易に効率よく安価に行うことができ、銀イオンや鉛イオンが回収された廃水は放流できることなり、環境保全および資源の再利用にとって有用である。
【0022】
また、この発明の吸着剤によれば、環境水の中に含まれる銀イオン、鉛イオンの選択的な回収についても同様なことがいえる。
【0023】
そして、この発明の吸着剤を水道水に接触させることで、毎日人が飲料する水道水から、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のミネラル分は吸着しないで、鉛イオンを容易に効率よくしかも安価に回収することができ、鉛の人体への蓄積による有害作用を除去することができることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、発明を実施するための最良の形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
【0025】
先ず、この発明において使用される有機第4アンモニウムイオン特にポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンおよび2価のマンガン化合物を含む電解液を用いて、電気化学的に酸化され、前記有機第4アンモニウムイオンがインターカレートされた層状マンガン酸化物の形成原理について説明する。
【0026】
電気化学的手段により、有機第4アンモニウムの存在下でMn2+イオンの陽極酸化により、サブミクロン乃至ミクロンオーダーのマンガン酸化物を電極基板上に析出させると、析出したマンガンはマンガン酸の形態となり負に帯電するので、共存する有機第4アンモニウムイオンが薄層状に付着する。次いで、有機第4アンモニウムイオンで表面を覆われたマンガン酸化物上に再度マンガン酸化物の析出が生じ、マンガン酸化物で覆われ、有機第4アンモニウムイオンがインターカレートされた層状マンガン酸化物が形成される。なお、層状マンガン酸化物の厚さは、通過電気量によってコントロールすることができる。
【0027】
均一なマンガン酸化物の析出を得るためには、銀/塩化銀参照電極に対して、0.8~1.2ボルト、好ましくは、0.95~1.05ボルトの電圧を保つように定電圧制御を行うことが必要である。これにより、陽極では主として次に示す反応により2価のマンガンが酸化され3価及び4価のマンガンとして析出すると予想される。
【0028】
【化1】
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(但し、Aは有機第4アンモニウムイオン)
マンガン酸化物薄層と有機第4アンモニウムイオンの薄層の交互の形成が繰り返されることにより、マンガン酸化物薄層と有機第4アンモニウムイオン薄層との繰り返し構造物、すなわち、積層物を得ることができる。
【0029】
得られた有機第4アンモニウムイオンがインターカレートされた層状マンガン酸化物の各層は、一般に形成される有機第4アンモニウムイオンの薄層は実質的に単分子層となるため、サブミクロン乃至ミクロンオーダーの厚さを有し、有機第4アンモニウムイオンのサイズにより層間距離をコントロールすることができる。層状マンガン酸化物の間に有機第4アンモニウムイオンはサブナノメーター乃至ナノメーターオーダーでインターカレートされており、有機第4アンモニウムの陽イオンは、マンガン酸化物との間でイオン結合により固定された状態である。以上一般論として有機第4アモンニウムイオンとして、説明したが、勿論ポリジアリルジメチルアンモニウムについても同様である。
【0030】
電解酸化に用いる電解槽の形態は、特に限定されるものではなく、従来から種々の電解酸化に用いられる型の電解槽が使用される。
【0031】
電解酸化して得られたマンガン酸化物を電解槽の陽極から剥がして用いる場合、陽極は導電性物質であれば特に問題はないが、一般には白金またはニッケルが好ましい。
【0032】
また、対極(陰極)も導電性物質であれば特に問題はないが、一般には鉄、銅、ニッケル、白金等が用いられる。
【0033】
陽極等のサイズは、必要に応じて決定される。
【0034】
電解は、一般に室温乃至40℃程度で行うことが好ましい。電解温度を60~80℃とすることで析出速度を上げることができるが、余り高くするとマンガン酸化物の析出面が粗面化することから好ましくはない。また、電解温度を維持するのに熱エネルギーを要することにもなる。
【0035】
また、電解時間を長くすることで積層数を増やすことができるが、余り長時間では、マンガン酸化物の肉厚が大きくなり、しかも積層状態が乱れる傾向を示す。
【0036】
この発明において使用される2価のマンガン化合物としては、電解液に可溶で電解酸化される2価のマンガン化合物であれば特に限定されるものではないが、一般的には、無機酸の塩、例えば、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン等である。蓚酸マンガンアンモニウム、蓚酸マンガンカリウム等の有機マンガン化合物も用いることができる。硫酸マンガンが入手の容易性等から好ましい。
【0037】
電解液中の2価のマンガンの濃度は、特に限定されないが、一般に0.1mモル乃至1モル濃度、好ましくは、1mモル乃至100mモル濃度が好ましい。0.1mモル未満では、希薄なことから、電解液の電気抵抗の増大を来たし、他の成分、例えば水の電解を生ずるなど好ましくない現象が増大する。また、1モルを超えると、陽極上へのマンガン酸化物の析出が均一性を欠くことになる。
【0038】
この発明におけるポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは、化2に示す構造である。
【0039】
【化2】
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ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンの対イオンは、水酸化物であってもよいが、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の可溶性化合物として用いられる。
【0040】
ポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンの分子量としては、400,000~500,000が好ましいが、これに限られるものではない。
【0041】
この発明で用いられるポリジアリルジメチルアンモニウムカチオンは電解液中に窒素原子濃度として、一般に0.1m乃至1モル、好ましくは1mモル乃至100mモル濃度の範囲で用いられるが、これに限られるものではない。
(実施例)
次に、この発明の実施例を比較例とともに示しさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0042】
モノマー基準で5.6mMのポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDACl:(C8H16NCl)n;分子量約400,000~500,000)と硫酸マンガン(MnSO4)2mMを含む水溶液50mLをビーカー型セルに入れて電解液とした。電解液は窒素ガスをバブリングすることによって窒素雰囲気とした。また、液温度は25℃であった。白金板(1cm×1cm×0.5mm厚さ)を動作電極とし、白金板に+1.0V(銀/塩化銀電極に対する電位で表される)の電位を印加した。電解時間は60分であった。なお、対極には白金板を用いた。
【0043】
この操作により、白金板上に茶色の薄膜が形成された。茶色の薄膜によって被覆された白金板を電解液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥した。図1は、白金板上に形成された薄膜のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。650、530、400、280eV付近にそれぞれMn2p、O1s、N1s、C1sの電子遷移によるピークが観察された。ここで、C1sピークはXPS装置内の炭化水素コンタミネーションの寄与があるため、通常、考慮しない。Mn2pとO1sピークは酸化マンガンに由来する。N1sピークはPDDA(ポリジアリルジメチルアンモニウム)のアンモニウム基によるものであり、得られた薄膜が酸化マンガンとPDDAの複合体であることが分かった。なお、XPSより薄膜中のマンガンは3価と4価の混合原子価状態であった。また、XPSスペクトルにおいて塩素は検出されず、PDDAが塩化物ではなく、カチオンとして存在することが判明した。つまり、3価マンガンの存在により負に帯電したマンガン酸化物層と正電荷をもつPDDAイオンが静電的な相互作用によりイオン対を形成している。
【0044】
図2は、白金板上に形成されたPDDA/マンガン酸化物薄膜のX線回折(XRD)パターンである。基板である白金による回折ピークに加えて、2θ=9.1、18.2、27.3゜に層構造に特有な回折ピークが現れ、001面からの回折ピーク2θ=9.1より、Braggの式(nλ=2dsinθ)を用い、層間隔は0.97nmと計算された。
【0045】
観察された層間隔は、PDDAのポリマー鎖がマンガン酸化物シート面に対して平行になるようにインターカレートした構造に相当する。
【実施例2】
【0046】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を0.1M硝酸銀水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図3に示す。図3において、銀に由来するピークが現れ、一方、PDDAのアンモニウム基に由来するN1sピークは完全に消失している。これは、水溶液中の銀イオンが層内のPDDAイオンと置換し、薄膜内に捕集されたことを示している。
【実施例3】
【0047】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を0.1M硝酸鉛水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図4に示す。図4において、鉛に由来するピークが現れ、一方、PDDAのアンモニウム基に由来するN1sピークは完全に消失している。これは、水溶液中の鉛イオンが層内のPDDAイオンと置換し、薄膜内に捕集されたことを示している。
〔比較例1〕
【0048】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を、0.1M硝酸水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図5に示す。
〔比較例2〕
【0049】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を、0.1M塩化カリウム水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図5に示す。
〔比較例3〕
【0050】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を、0.1M硝酸コバルト水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図5に示す。
〔比較例4〕
【0051】
実施例1で白金板電極上に形成された茶色の薄膜を、0.1M硝酸マグネシウム水溶液に12時間浸漬した。その後、白金板を液から取り出し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥し、XPSスペクトルを測定した。結果を図5に示す。
【0052】
図5におけるN1sピークの強度は、比較例1~4の水溶液に浸漬する前と実質的に同じであった。また、対応するカチオン(H、K、Co2+、Mg2+)に由来するピークは観察されなかった。このことは、比較例1~4では、水溶液中の各カチオンが層内のPDDAイオンと置換せず、薄膜内に吸着されないことを示している。
【0053】
実施例2、3と比較例1~4から、実施例1で作製されたPDDA/マンガン酸化物薄膜が水溶液中のH、K、Co2+、Mg2+等は吸着せず、銀イオンまたは鉛イオンを高い選択性で回収できることを示しており、銀イオンおよび鉛イオンに対し選択的吸着性を示す吸着剤として有効であると判断される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1で白金板上に形成された薄膜のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
【図2】実施例1で白金板上に形成された薄膜のX線回折(XRD)パターンである。
【図3】実施例1で白金板上に形成された薄膜を0.1M硝酸銀水溶液に浸漬処理した後のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
【図4】実施例1で白金板上に形成された薄膜を0.1M硝酸鉛水溶液に浸漬処理した後のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
【図5】実施例1で白金板上に形成された薄膜を(a)0.1M硝酸水溶液、(b)0.1M塩化カリウム水溶液、(c)0.1M硝酸コバルト水溶液、(d)0.1M硝酸マグネシウム水溶液に浸漬処理した後の各薄膜のX線光電子分光(XPS)スペクトルである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4