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明細書 :クラミジア属細菌の抑制に効果のあるトリプトファン代謝中間産物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4834829号 (P4834829)
公開番号 特開2006-282581 (P2006-282581A)
登録日 平成23年10月7日(2011.10.7)
発行日 平成23年12月14日(2011.12.14)
公開日 平成18年10月19日(2006.10.19)
発明の名称または考案の名称 クラミジア属細菌の抑制に効果のあるトリプトファン代謝中間産物
国際特許分類 A61K  31/405       (2006.01)
A61K  31/4045      (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
C07D 209/20        (2006.01)
C07D 209/14        (2006.01)
A23L   1/305       (2006.01)
FI A61K 31/405
A61K 31/4045
A61P 31/04
C07D 209/20
C07D 209/14
A23L 1/305
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2005-104669 (P2005-104669)
出願日 平成17年3月31日(2005.3.31)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】白井 睦訓
【氏名】東 慶直
審査官 【審査官】冨永 保
参考文献・文献 国際公開第00/074649(WO,A1)
特開2003-081829(JP,A)
特開2002-186456(JP,A)
特開2000-354470(JP,A)
国際公開第2004/020403(WO,A1)
調査した分野 C07D
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
5‐ヒドロキシトリプトファン、メラトニン及びセロトニンから選ばれる少なくとも1種の薬剤を有効成分とすることを特徴とするクラミジア感染又は増殖を抑制するための経口又は注射用医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤の有効濃度が5μMから500μMの範囲内であることを特徴とする請求項記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記薬剤の有効成分のうち、5‐ヒドロキシトリプトファンにおいては、50μMから500μMの範囲内、セロトニンにおいては50μMから100μMの範囲内、メラトニンにおいては、5μMから500μMの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記クラミジアが、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・ニューモニアエ、クラミジア・シタシ、クラミジア・フェリスのうち少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記クラミジア感染又は増殖抑制が生殖器、肺、動脈及び気管のうち、少なくとも1つにおけるクラミジアの寄生に対する感染又は、増殖抑制であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クラミジア属細菌の感染または増殖を抑制するための経口又は注射用医薬組成物に関する。詳しくは5‐ヒドロキシトリプトファン、メラトニン、セロトニン及びこれらの薬理学上許容可能な塩又はエステル或いは誘導体を成分とする医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クラミジア属細菌(Chlamydiaceae)は、人など真核生物の細胞内でのみ増殖が可能な偏性細胞内寄生性細菌であり、その一種であるクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis、性病クラミジア)は主に生殖器に感染し、日本において性感染症の第一原因菌となるなど、広く一般に知られるようになってきた。またクラミジア・ニューモニアエ(Chlamydophila pneumoniae、肺炎クラミジア)は、主に肺や動脈における炎症部位に感染し、風邪の原因菌であると同時に動脈硬化や虚血性心疾患への関連性が指摘されており、クラミジア・シタシ(Chlamydia psittaci)は主に気管から肺にかけての気道に感染し、オウム病の原因菌として肺炎などを起こす事が知られ、更にはクラミジア・フェリス(Chlamidophila felis、猫クラミジア)は猫に感染する一方、人の目の粘膜などに感染し結膜炎を引き起こすなど、人畜感染症の例も報告されており、感染症原因菌としてのクラミジアへの対策が急務となっている。
【0003】
クラミジア感染症への対策には、大きな問題点が2つ存在する。その第一は、表面に現れる症状の軽さである。性病クラミジアによる感染(不顕性感染の性感染症)や肺炎クラミジアによる感染では、よくあるただの風邪に似た症状で治まるという特徴があり、また、治療が必要と考えられる重篤な症状になりにくく、感染と症状が密かに進行してしまうという問題点がある。
【0004】
第二点目の問題点としては、治療が必要な症状が現れた際、治療において用いられる抗生物質が表面的にはよく効果を示し、疾患が感知したかの様に理解されてしまうことである。クラミジアの感染症は表面的な症状の軽さに隠れて進行し、長期間の潜伏・持続感染の結果、性病クラミジアは骨盤内感染症や不妊を引き起こし、肺炎クラミジアは肺がんや動脈硬化に発展する危険性を秘める。クラミジア感染症に対する戦略としては、悪化した時のみの表面的治療、例えば抗生物質や抗体等による治療では不十分であり、予防や持続感染の阻止を講じる必要がある。
【0005】
現在、世界的に性病クラミジア、肺炎クラミジアに対するワクチンの開発も進められている。動物のクラミジアに対するワクチンは開発され、既に販売も始まっている。しかし残念ながら、クラミジア感染症に十分な効果の得られるワクチンの開発には至っていない。また菌体全体を用いたワクチンでは、その菌体内に含まれる熱ショックタンパク質などがクラミジア感染での炎症反応や動脈硬化などを悪化させる可能性が報告されている。すなわち、クラミジア感染症に対する戦略には、より安全で有効なワクチンの開発とともに、クラミジア感染の特徴を踏まえた「潜在的に存在するクラミジア」の排除を可能とする治療方法や体質改善方法の確立が必須である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3402304号 猫クラミジアワクチンの製造方法
【特許文献2】特開2002‐020293 クラミジア感染症処置剤
【特許文献3】特開2001‐288114 自己免疫性疾患治療剤
【特許文献4】特許第3402304号 猫クラミジアワクチンの製造方法
【0007】

【非特許文献1】Rottenberg ME G‐RA et al.(2002)Curr.Opin.Immunol.14:444‐451
【非特許文献2】Belland RJ et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:15971‐15976
【非特許文献3】Carlson LL.et al.(1989)Endocrinology 25:Jun.70
【非特許文献4】Chan AS et al.(2002)Cell Signal.14:249‐257
【非特許文献5】Shirai M HH et al.(2000)Nucleic Acids Res.28:Apr.11
【非特許文献6】Matsushima H et al.(2002)J.Vet.Med.Sci.64:215‐219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の現状に鑑み、クラミジア属細菌の感染または増殖を効果的に抑制する物質及びこれらの物質の利用法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ゲノム解析と情報科学的な比較解析によって、クラミジア属細菌の病原性解明を進めている。その解析から、クラミジア属細菌においては、トリプトファン合成酵素遺伝子群に存在の有無も含め大きな「揺らぎ」があることが明らかとなってきた(図5)。この点に着目し、トリプトファンの代謝阻害剤等をクラミジアの感染実験等に用いる中で、トリプトファン代謝中間産物、特にメラトニンとセロトニンがクラミジアの感染や増殖を阻害する効果を持つことを見出した。メラトニンやセロトニンは神経伝達物質として知られているが、一般に知られる医学・生物学関連の文献には、クラミジア感染や増殖を阻害する効果に関する類似の報告は無く、これらの化合物が持つ新規の薬理作用であると考えられた。
【0010】
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
【0011】
本発明の第1の態様は、5‐ヒドロキシトリプトファン、メラトニン及びセロトニンから選ばれる少なくとも1種の薬剤を有効成分とすることを特徴とするクラミジア感染又は増殖を抑制するための経口又は注射用医薬組成物である。
【0012】
本発明の第の態様は、前記第1の態様における薬剤の有効濃度が5μMから500μMの範囲内であることを特徴とする医薬組成物である。
【0013】
本発明の第の態様は、前記第1の態様又は第2の態様における薬剤の有効成分のうち、5‐ヒドロキシトリプトファンにおいては、50μMから500μMの範囲内、セロトニンにおいては50μMから100μMの範囲内、メラトニンにおいては、5μMから500μMの範囲内であることを特徴とする医薬組成物である。
【0014】
本発明の第の態様は、前記第1の態様乃至第3の態様において、対象となるクラミジアが、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・ニューモニアエ、クラミジア・シタシ、クラミジア・フェリスのうち少なくとも1種類であることを特徴とする医薬組成物である。
【0015】
本発明の第の態様は、前記第1の態様乃至第4の態様において、前記クラミジア感染又は増殖抑制が生殖器、肺、動脈及び気管のうち、少なくとも1つにおけるクラミジアの寄生に対する感染又は、増殖抑制であることを特徴とする医薬組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医薬組成物を利用することにより、慢性的な感染症の原因菌であるクラミジア属細菌に対して有効で、しかも人体に対して安全な薬剤を製造することが可能となる。
【0017】
また、本発明の医薬組成物は、クラミジア属細菌の感染を比較的容易に、かつ安全・安価に予防可能な機能性食品を製造することが可能とな
【発明を実施するための形態】
【0018】
下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の第1の態様は、クラミジア属細菌の感染または増殖を抑制することを特徴とする、トリプトファン代謝中間産物である5‐ヒドロキシトリプトファン、メラトニン、或いはセロトニン(以下本明細書においては、これらの薬理学上許容可能な塩またはエステル或いは誘導体については同効であるので、かかる記載は省略する。)を有効成分とする経口又は注射用医薬組成物を提供する。前述の通り、これらの物質は公知であるが、これらを有効成分とする経口又は注射用医薬として「クラミジア属菌に対してその感染又は増殖抑制効果」を有することは知られていない。

【0019】
特に好適に前記抑制の効果を得るために5‐ヒドロキシトリプトファン、セロトニン、メラトニンの濃度が体内濃度の2倍濃度から10倍濃度の範囲内となるような薬剤組成物、または5‐ヒドロキシトリプトファン、セロトニン、メラトニンの濃度が5μMから500μMの範囲内、詳しくは5‐ヒドロキシトリプトファンにおいては50μMから500μMの範囲内、セロトニンにおいては50μMから100μMの範囲内、メラトニンにおいては5μMから500μMの範囲内となるような薬剤組成物が開示される。後段の実施例で述べるとおり、5‐ヒドロキシトリプトファン、セロトニン、メラトニンの3物質はクラミジア感染に対し抑制効果を持つことが本発明者らによって明らかにされたため、この性質を利用した薬剤組成物が提示される。

【0020】
図1にヒト細胞内におけるトリプトファン代謝経路を示すが、クラミジア属細菌に対する効果を示し、ヒト体内で合成されるメラトニン、セロトニンに加え、これらを化学的に修飾した物質であってヒト細胞に悪影響を及ぼさない物質もまた、薬剤組成物として利用可能である。メラトニン、セロトニンはいずれも、トリプトファンからヒト体内で合成されるものであるが、体内濃度ではクラミジア属細菌に対する前記効果が期待できないため、例えばクラミジア属細菌に感染したヒト細胞に対して効果を示すためには体内の2倍から10倍濃度の範囲内が望ましい。この濃度はクラミジア属細菌に十分な効果を持ち、かつヒト細胞に悪影響を与えない濃度である。

【0021】
また対象となるクラミジアの例としては、クラミジア・トラコマティス、クラミジア・ニューモニアエ、クラミジア・シタシ、クラミジア・フェリスのうちの少なくとも1種類があげられる。これらのクラミジアは、ヒト細胞に寄生し疾患の原因となる点では共通しているが、主な寄生部や表す病態はそれぞれの種によって異なっており、例えばクラミジア・トラコマティスは生殖器に、クラミジア・ニューモニアエは肺や動脈における炎症部位に、クラミジア・シタシは気管から肺にかけての気道に、クラミジア・フェリスは目の粘膜にそれぞれ寄生することが知られている。これらの個々の感染に対して、適切な形態で薬剤を投与することが必要であり、対象菌を限定することでより高い効果の期待できる薬剤の開発が可能となる。

【0022】
たとえば、本発明の医薬用組成物は、クラミジア属細菌の感染または増殖を抑制する薬剤組成物であって、前記薬剤が経口薬、または注射薬のいずれか1つから選ばれることを特徴とする、薬剤組成物を提供する。先に述べた通り、クラミジア属細菌は種毎に主な感染部位や症状が異なっており、それに対する薬剤の態様も症状に合わせたものであることが望ましい。例えば、クラミジア・トラコマティス感染に対しては経口薬、クラミジア・ニューモニアエ感染やクラミジア・シタシ感染に対しては経口薬または注射薬、個々の感染に応じた薬剤の投与形態が好ましい。個々の菌に対する薬剤の個々の形態においては、前記有効成分の濃度を変えたり、またその組み合わせを変えることで、より効果の高い薬剤を作成することも、本発明の開示する範囲内にあるものである。
【実施例1】
【0023】
実施例において用いられる略称の意味は、次の通りである。IFN‐γ;interferon‐γ,IFU;inclusion formation unit,FCS;fetal calf serum,MOI;magnification of infection,EB;elementary body,RB;reticulate body,IDO;indoleamine 2,3‐dioxygenase,cAMP;adenosine 3‘:5’‐cyclic monophosphate.
【実施例1】
【0024】
HEp‐2細胞(ATCC Ccl‐23)をクラミジア感染実験の宿主細胞として、HEp‐2培養液(Dulbecco‘s modified Eagle medium,10% heat‐inactivated FCS,50μg/ml gentamicin)中において37℃、二酸化炭素濃度5%の条件下で培養した。クラミジア菌株としては、C.pneumoniae J138株(肺炎クラミジア)、C.felis Fe/C‐56株(ネコクラミジア)、C.trachomatis serover D株(性病クラミジア)を用いた。実験では他の細菌として、Escherichia coli,Staphylococcus aureus,Bacillus subtilis E192,Streptococcus pneumoniae,Pseudomonas aeruginosa PAO1,Helicobacter pylori CPY3401を用いた。クラミジア感染実験の手順は以下の通りである。2×104(in 0.1ml)HEp‐2細胞を96穴プレートに分注し24時間培養する。ここに0.2MOIとなるようにクラミジアEBを加え、22℃,700×g,60分遠心して30分おく。これらの細胞をpost‐infection medium(Dulbecco’s modified Eagle medium,5% heat‐inactivated FCS,50μg/ml gentamicin,1μg/ml cycloheximide)に移し、48時間培養する(36℃,5% CO)。実験における薬剤処理のスケジュールを図1に示す。クラミジア感染率の測定は以下の方法で行った。感染宿主細胞をメタノールで30分固定し、FITC標識したクラミジア属細菌特異的な抗体を1時間反応させ(37℃)、続いて宿主細胞核をDAPI(0.1μg/ml)で10分染色した。蛍光顕微鏡を用い宿主細胞とクラミジア封入体(直径1.0μm以上)をカウントした。感染率は3回の独立した実験の平均値から算出した。上記クラミジア以外の細菌に対するメラトニンの影響は、各々の培地にメラトニンまたはゲンタマイシンを加え、37℃で8時間(H.pyloriについては24時間)培養した後600nm ODを計測することで調べた。
【実施例2】
【0025】
ヒト由来HEp‐2細胞を用いた試験管内における肺炎クラミジアJ138株の感染実験における、5‐ヒドロキシトリプトファン、セロトニン、メラトニンが対照と比べて有意にクラミジア増殖阻害効果を示した(図1)。これまでに知られているIFN‐γによるクラミジア増殖阻害効果(トリプトファン欠乏を引き起こすため、トリプトファン添加によりその効果が打ち消される)と比較するため、トリプトファンの添加実験を行ったところ、IFN‐γとは異なり、トリプトファンの添加によってもクラミジア増殖阻害効果は打ち消されず(図2)、クラミジア感染を持続感染に導くことも観察されなかった。更に、トリプトファン合成遺伝子のほぼ完全なセットを持つネコクラミジア、一部を保有する性病クラミジア、全く欠失する肺炎クラミジアのいずれに対しても、メラトニンやセロトニンは阻害効果があることが明らかになった(図3)。反対に、10種類のヒト常在菌に対しては、本発明の医薬用組成物は高濃度の投与によっても全く阻害効果が観察されなかった。
【実施例3】
【0026】
メラトニンとセロトニンのクラミジア感染阻害効果について、この効果がクラミジアに対するものか、それとも宿主細胞に対するものかを明らかにするために、感染実験に用いる各々の細胞をこれらの物質によって前処理し、その後の感染への影響を調べた。その結果、宿主細胞をメラトニンやセロトニンで前処理した場合、感染阻害効果が見られたが、クラミジア細胞への前処理は感染にほとんど影響を与えなかった(図4)。この結果は、メラトニンやセロトニンの効果が宿主細胞に対するものであることを示している。メラトニンやセロトニンについては、ヒトの様々な組織細胞において、その細胞内への取り込みとシグナル伝達に関与する受容体の存在が知られており、その受容体の多くはGタンパク質を結合した受容体である。そこで、Gタンパク質の阻害剤である百日咳毒素を用い、メラトニンやセロトニンによるクラミジア感染阻害効果への影響を調べた。その結果、セロトニンについては百日咳毒素処理により感染阻害効果が打ち消され、反対にメラトニンでは葉百日咳毒素は感染阻害に影響を与えなかった(図4)。このことはすなわち、セロトニンによるクラミジア阻害効果には宿主のGタンパク質が関与しているが、メラトニンによる効果には関与していないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】in vitro条件における、クラミジア感染に対するトリプトファンとその代謝中間産物の効果を示す。A:キヌレニン経路、セロトニン経路からなるトリプトファン代謝経路の模式図を示す。B:本研究における、in vitro条件下でのクラミジア感染と薬剤処理の時間設定を表す。ほとんどの実験で、薬剤処理は感染前(pre‐infection)24時間、及び感染後(post‐infection)48時間行われた。C:トリプトファンとその代謝中間産物の、クラミジア感染に対する効果を示す。横軸AからGの記号はそれぞれ、図1Aにおける代謝産物の右肩に付された記号に対応し(A=L‐tryptophan,B=5‐hydroxytryptophan,C=kynurenine,D=serotonin,E=melatonin,F=5‐hydroxyltryptophanol,G=5‐methoxyindole acetic acid)、数字はヒトHEp‐2細胞に対するC.pneumoniae J138株の感染実験時における、各物質の濃度(50,200μM)を表す。AからGのいずれも、本実験の条件下では宿主細胞に対して毒性を示さなかった。グラフ縦軸は対照(処理なし)に対する感染率の相対値(対照=100)を示し、グラフは3回繰り返し実験における平均値、付されたバーは±1SDを示す。対照との間に有意差があったものは*を付した(t test,p<0.01)。これらは、いずれも本発明の薬剤である。
【図2】クラミジア感染に対するメラトニンとインターフェロン‐γ(IFN‐γ)の影響を比較した。A:クラミジア感染に対する各物質の影響を示す。+,-はそれぞれ、メラトニン(100μM)、IFN‐γ(1.0ng/ml)、トリプトファン(200μg/ml)の有無を表す。縦軸は感染率の対照(左端、100)との相対値であり、各グラフは3回の繰り返し実験の平均値を、付されたバーは±1SDを示す。B:クラミジア感染における封入体を、FITC標識したクラミジア特異的な抗体で可視化した(Inclusion body行の白四角)。写真右下のバーはそれぞれ10μm。C:メラトニン処理、IFN‐γ処理、対照のそれぞれにおける封入体のサイズ(半径、横軸)分布を示す。
【図3】クラミジア種によるメラトニン感受性の比較を示す。C.pneumoniae,C.felis,C.trachomatisそれぞれに対し、25μM,50μM,100μMのメラトニン処理を行い、IFN‐γ処理との比較を行った。グラフ縦軸は相対感染率(対照=100)を、横軸の+、-は処理の有無を示す。
【図4】HE‐p2細胞へのC.pneumoniae感染における、メラトニンとセロトニンのターゲットを探索した。A:HE‐p2細胞、C.pneumoniae J138株のそれぞれを単独でメラトニン/セロトニン処理し、その後の感染への影響を調べた。クラミジア細胞への処理は感染前90分において、HEp‐2細胞培養液と同じ液で、200μMの濃度で行った。*は対照と処理ありとの間に有意差のあったものを示す(Student t test,p<0.05)。B:Gタンパク質阻害剤である百日咳毒素(pertussis toxin,20 ng/ml)を、メラトニン処理、セラトニン処理それぞれに対して48時間加え、その影響を調べた。
【図5】クラミジア属細菌及び宿主細胞における、トリプトファン合成経路の模式図を示す。クラミジア属細菌におけるトリプトファン生合成に関与する遺伝子としては、kynU,kprS,trpD,trpF,trpC,trpF,trpC,trpA,trpBが合成経路の各段階で働いている。ネコに感染するC.felisはこれらの遺伝子セットを全て持っているが、ヒトに感染するC.trachomatisは不完全な遺伝子セットしか持たず、C.pneumoniaeは全く持たない。クラミジア属細菌に対するインターフェロン‐γ投与は、キヌレニン経路におけるトリプトファン不足を引き起こし、クラミジア阻害を起こすことが知られている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4