TOP > 国内特許検索 > ポリアミド多孔質体の使用方法及びその製造方法 > 明細書

明細書 :ポリアミド多孔質体の使用方法及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257430号 (P4257430)
公開番号 特開2006-104409 (P2006-104409A)
登録日 平成21年2月13日(2009.2.13)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成18年4月20日(2006.4.20)
発明の名称または考案の名称 ポリアミド多孔質体の使用方法及びその製造方法
国際特許分類 A01C   1/04        (2006.01)
A01G   7/00        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
C08J   9/28        (2006.01)
FI A01C 1/04 A
A01G 7/00 602C
C12M 1/00 C
C08J 9/28 CFG
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2004-296420 (P2004-296420)
出願日 平成16年10月8日(2004.10.8)
審査請求日 平成18年2月7日(2006.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】田中 信行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085372、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 正義
審査官 【審査官】内田 靖恵
参考文献・文献 特開平01-245035(JP,A)
調査した分野 C08J 9/28
A01C 1/04
C12M 1/00

特許請求の範囲 【請求項1】
ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体(11)と前記ポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体(12)とが一体的に形成されたポリアミド多孔質体であって、前記第1多孔質体(11)が、孔径1μm以上1mm以下の独立孔が80個/cm2以上1億個/cm2以下であるメッシュ数と、1μm以上0.2mm以下の厚さを有し、前記第2多孔質体(12)が、50%以上95%以下の気孔率と0.5mm以上5mm以下の厚さを有するポリアミド多孔質体の前記第1多孔質体(11)を下部に、また前記第2多孔質体(12)を上部に配置した後、前記第1多孔質体(11)を支持体として前記第2多孔質体(12)上に種子、卵、微生物、酵素又は細菌(13)を載せ、この状態で前記種子の栽培、前記卵のふ化、前記微生物の培養、前記酵素の培養又は前記細菌の培養を行うポリアミド多孔質体の使用方法。
【請求項2】
ポリアミドがポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド又はポリヘキサメチレンセバカミドである請求項1記載のポリアミド多孔質体の使用方法。
【請求項3】
ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体(11)と前記ポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体(12)とが一体的に形成されたポリアミド多孔質体であって、前記第1多孔質体(11)が、孔径1μm以上1mm以下の独立孔が80個/cm2以上1億個/cm2以下であるメッシュ数と、1μm以上0.2mm以下の厚さを有し、前記第2多孔質体(12)が、50%以上95%以下の気孔率と0.5mm以上5mm以下の厚さを有するポリアミド多孔質体を2つ用意し、一方のポリアミド多孔質体(10a)の第2多孔質体(12a)と他方のポリアミド多孔質体(10b)の第2多孔質体(12b)とを互いに対向するようにした後、前記2つの第2多孔質体(12a, 12b)の対向面間に種子、卵、微生物、酵素又は細菌(13)を配置して2つのポリアミド多孔質体(10a, 10b)により保持し、この保持状態で前記種子の栽培、前記卵のふ化、前記微生物の培養、前記酵素の培養又は前記細菌の培養を行うポリアミド多孔質体の使用方法。
【請求項4】
ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体(11)と前記ポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体(12)とを一体的に形成してポリアミド多孔質体を製造する方法であって、
塩化カルシウムのアルコール溶液にポリアミドを溶解して原液を調製する工程と、
前記原液と塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを容器中で攪拌してなる混合液を、容器ごと0~40℃の温度、60~100%の相対湿度下、静置することにより、前記塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを沈殿させ、前記第1多孔質体の網状組織に影響を及ぼす液表面の状態を制御する工程と、
0~40℃の温度、60~100%の相対湿度下にある液表面の上から水を添加して前記第1多孔質体を形成させ、更にこの水を前記第1多孔質体を透過させることにより、前記第1多孔質体下方において、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムの溶解を伴いながらの相分離を生起させて、前記第1多孔質体に続いて前記第2多孔質体を形成する工程と
を含むポリアミド多孔質体の製造方法。
【請求項5】
原液の調製が、塩化カルシウムのアルコール溶液にポリアミドを溶解した後、24時間以上100日以下の期間熟成することにより行われる請求項記載のポリアミド多孔質体の製造方法。
【請求項6】
液表面の上から添加する水が純水、アルコール系水溶液又は金属塩化物系水溶液である請求項記載のポリアミド多孔質体の製造方法。
【請求項7】
ポリアミドがポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジポアミド又はポリヘキサメチレンセバカミドである請求項記載のポリアミド多孔質体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スピノーダル分解型相分離模様の連続多孔を有するポリアミド多孔質体及びその製造方法並びにポリアミド多孔質体の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスピノーダル分解による二相分離構造モデルは、図7に示されるように既に知られている(例えば、非特許文献1参照。)。図7において、二相のうち、1はA相、2はB相を表す。
本発明者は、ポリアミドのメタルハライド・アルコール溶液と水溶性粒子の混合物から、吸湿をともなう溶液凝固をとおして調製されたスピノーダル分解型相分離模様の連続多孔構造を有するポリアミド多孔質膜を特許出願した(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このポリアミド多孔質膜は、表面及び裏面ともスピノーダル分解相分離模様の一層構造をしている。相対湿度100%、25℃の条件での調製過程では、吸湿に伴って孤立孔が主体の膜が上部に、そして下部では、沈殿している塩化ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムの溶解を伴いながら連続多孔質膜が形成されていく。この雰囲気を長時間保持し続けると上部と下部がほとんど自然に互いに分離し、下部の連続多孔質膜を容易に取り出せる。上部と下部をほとんど無理なく分離させるには、上部の孤立孔が主体の膜を厚めにする必要があり、その分、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムに対する原液の混合割合を多くする必要がある。

【非特許文献1】J. Chem. Phys., Vol.42, p93-p99 (1965)
【特許文献1】特開平1-245035(特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたポリアミド多孔質膜の製造方法では、比較的厚い連続多孔質膜を製造しようとする場合に、多量の原液を必要とし、また副産物としてできる分離された孤立孔が主体の上部の膜は、下部の膜と連続しないため、廃棄されている。
【0005】
本発明の目的は、連続多孔質体の上部に独立多孔で網状の膜を有する二層構造からなる、粉末化し易く再利用が可能であって環境にやさしいポリアミド多孔質体を提供することにある。
本発明の別の目的は、ポリアミドを無駄にすることなく、比較的短時間に製造することができるポリアミド多孔質体の製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養に利用可能なポリアミド多孔質体の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、図1及び図3に示すように、ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体11と前記ポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体12とが一体的に形成されたポリアミド多孔質体であって、第1多孔質体11が、孔径1μm以上1mm以下の独立孔が80個/cm2以上1億個/cm2以下であるメッシュ数と、1μm以上0.2mm以下の厚さを有し、前記第2多孔質体(12)が、50%以上95%以下の気孔率と0.5mm以上5mm以下の厚さを有するポリアミド多孔質体の第1多孔質体11を下部に、また第2多孔質体12を上部に配置した後、第1多孔質体11を支持体として第2多孔質体12上に種子、卵、微生物、酵素又は細菌13を載せ、この状態で前記種子の栽培、上記卵のふ化、上記微生物の培養、上記酵素の培養又は上記細菌の培養を行うポリアミド多孔質体の使用方法である。
【0008】
請求項に係る発明は、図3に示すように、上記ポリアミド多孔質体を2つ用意し、一方のポリアミド多孔質体10aの第2多孔質体12aと他方のポリアミド多孔質体10bの第2多孔質体12bとを互いに対向するようにした後、これら2つの第2多孔質体12a,12bの対向面間に種子、卵、微生物、酵素又は細菌13を配置して2つのポリアミド多孔質体10a,10bにより保持し、この保持状態で種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養を行うポリアミド多孔質体の使用方法である。
【0009】
請求項に係る発明は、ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体11とポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体12とを一体的に形成してポリアミド多孔質体を製造する方法である。この製造方法は、塩化カルシウムのアルコール溶液にポリアミドを溶解して原液を調製する工程と、この原液と塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを容器中で攪拌してなる混合液を、容器ごと0~40℃の温度、60~100%の相対湿度下、静置することにより、上記塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを沈殿させ、上記第1多孔質体の網状組織に影響を及ぼす液表面の状態を制御する工程と、0~40℃の温度、60~100%の相対湿度下にある液表面の上から水を添加して上記第1多孔質体を形成させ、更にこの水を前記第1多孔質体を透過させることにより、上記第1多孔質体下方において、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムの溶解を伴いながらの相分離を生起させて、前記第1多孔質体に続いて上記第2多孔質体を形成する工程とを含む。
上記多孔形成には、ポリアミドの濃度、調製温度、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムの混合割合に加えて、濃縮過程での湿度や時間、水添加のタイミングも密接にかかわっている。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1に係るポリアミド多孔質体の使用方法では、上部が独立多孔の網状組織からなる薄膜状の第1多孔質体と、下部が第1多孔質体より厚い連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第1多孔質体とにより、二層構造をなすポリアミド多孔質体を用いるに際し、下に配置した第1多孔質体を支持体として第2多孔質体上に、種子、卵、微生物、酵素又は細菌などの水好生物を配置し、水に浸漬すると、ポリアミド多孔質体全体が弾力性に富み、かつ水の保持力を増す。これにより、種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養のための良好な環境が作り出され、種子等の成長、繁殖を効率良く行うことができる。
【0012】
本願請求項に係る使用方法では、2つのポリアミド多孔質体を用いて第2多孔質体同士を重ね合わせたものである。重ね合わせることにより、内部に連続多孔質体を有し、両表面に網状組織を有する積層体となる。この重ね合わせ箇所に予め種子、卵、微生物、酵素又は細菌を配置し、これらをポリアミド多孔質体で被包かつ保持した後、水に浸漬すると、ポリアミド多孔質体全体が弾力性に富み、かつ水の保持力を増す。これにより、種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養のためのより良好な環境が作り出され、種子等の成長、繁殖をより効率良く行うことができる。
【0013】
本願請求項に係る製造方法では、混合液を凝固させる過程で、0~40℃の温度、60~100%の相対湿度下にある液表面の上から水(水溶液を含む)を添加して第1多孔質体を形成させ、更にこの水を第1多孔質体を透過させることにより、第1多孔質体下において、水溶性粒子の溶解を伴いながらの相分離が起きて、第1多孔質体に続いて、ポリアミド部分の表面形態(図4、図5、図6)に特徴をもつ連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体を形成することができる。特開平1-245035号公報に記載された方法と比較して、本発明の方法では、所定の大きさの連続多孔質膜を製造するのに、原液の量が上記公報記載の方法の半分以下で済む。また上記公報記載の方法では、孤立孔が主体の上部の膜は連続多孔質膜と分離して副産物として廃棄されるが、本発明の方法では、ポリアミドのほとんど全部が多孔質体を形成し、上部が独立多孔で網状の膜、下部が連続多孔質体からなる二層構造になる。上部の網状の膜も、製造条件によっては、連続多孔模様にかなり近いものができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施の形態について説明する。
本発明のポリアミドは、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(ナイロン66)又はポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)のいずれかである。ポリアミドとしては粒子状もしくは綿状のものが用いられる。このポリアミドを塩化カルシウムのアルコール溶液に溶解して原液を調製する。アルコール溶液は、メチルアルコール又はエチルアルコール100重量%に対して塩化カルシウム15~30重量%、好ましくは19~25重量%を添加混合して調製される。19~25重量%の濃度にすると、ポリカプロラクタムがよく溶けて排除体積のない理想的な形態をとることができる。ポリアミドはアルコール100重量%に対して6~9重量%添加する。ポリアミドの添加量が下限値未満では膜にならずに豆腐状になってしまう不具合があり、上限値(25重量%)を超えるほど膜が脆くなる不具合がある。原液は、塩化カルシウムのアルコール溶液にポリアミドを溶解した後、直ちに次に述べる塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムと混合してもよいが、24時間以上100日以下の期間熟成すると、アルコール、カルシウムイオン、そしてポリアミドのアミド基との間の相互作用が安定し、好ましい。
【0015】
次いで上記原液と塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムを混合し、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムが容器下部に分散した混合液を調製する。容器に予め平均粒径0.1~0.5mmの塩化ナトリウム粒子又は硫酸ナトリウム粒子を入れておき、そこに原液を加えて攪拌して混合液を作り、そこでポリアミド多孔質体を製造する。この容器としては、シャーレ(petridish)、トレー、平皿等の原液のアルコール分が蒸発し易く、成膜に適するものが好ましい。
【0016】
混合液の入った容器を、温度が約0~40℃、相対湿度が60~100%の恒温恒湿のデシケータ中に収容し、静置する。温度が下限値未満ではデシケータ中の調湿水が凍結してしまう不具合があり、上限値を超えると網状の独立多孔膜はできても、その下にできるはずの連続多孔質体ができなくなってくる不具合がある。また相対湿度が下限値未満では吸湿に時間がかかる不具合がある。好ましい温度は10~30℃、より好ましい温度は25℃である。また好ましい相対湿度は80~100%、より好ましい相対湿度は100%である。混合液を容器内で静置することにより、液表面からアルコールの蒸発とともに、吸湿が始まる。液が濃縮している過程で、液表面に水を添加することにより、ポリアミドの薄膜(以下、第1多孔質体という。)が形成される。添加する水は、純水に限らず、アルコール系水溶液又は金属塩化物系水溶液でもよい。これらの水溶液を用いると第1多孔質体の独立孔のサイズやメッシュ数に影響を及ぼす効果がある。
【0017】
この第1多孔質体は独立多孔の網状組織からなる。このメッシュ数は原液に対する塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムの混合割合に依存し、塩化ナトリウム量又は硫酸ナトリウム量が少ない程、第1多孔質体のメッシュ数は減少する。添加した水は第1多孔質体を透過していく。この水を添加するタイミングが早いか遅いかによって、次に述べる連続多孔部分の模様は変化する。この模様は水添加が早いと、スピノーダル分解模様とは異なった模様を示し、遅いとスピノーダル分解模様を示す。添加水の温度は混合液の温度と同一であることが好ましい。混合液の温度は恒温恒湿のデシケータに置かれた雰囲気温度にほぼ一致する。
【0018】
第1多孔質体を透過した水が第1多孔質体下方の塩化カルシウム・アルコールのポリアミド溶液中に浸透すると、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムの溶解を伴いながらの相分離が起こり、第1多孔質体に続いて連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなるポリアミドの第2多孔質体が形成される。このスピノーダル分解模様の表面状態は、とくに水溶性粒子の種類や調製温度に依存し、塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムとを比較した場合、硫酸ナトリウムの方が、より繊細でソフトな第2多孔質体ができる。また調製温度が低い程、ち密な第2多孔質体ができる。第2多孔質体のポリアミド部分の表面には、特徴のある3~5μmの変形粒子の凝集状構造が得られる。
【0019】
図1に上記方法で製造されたポリアミド多孔質体10の模式図を示す。ポリアミド多孔質体10は、ポリアミドの独立多孔の網状組織からなる第1多孔質体11とポリアミドの連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体12とが一体的に形成される。ここで「一体的に形成される」状態とは、第1多孔質体を構成しかつ第2多孔質体に面するポリアミドが第2多孔質体を構成するポリアミドと部分的に連結している状態をいう。
【0020】
本発明のポリアミド多孔質体における第1多孔質体の厚さは、1μm以上0.2mm以下、好ましくは50μm以上0.1mm以下の範囲にあり、メッシュ数は孔径1μm以上1mm以下の独立孔が80個/cm2以上1億個/cm2以下の範囲、好ましくは孔径300μm以上0.5mm以下の独立孔が100個/cm2以上500個/cm2以下の範囲にある。厚さもメッシュ数も、原液の量に対する塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムの混合割合に依存する。また第2多孔質体の厚さは0.5mm以上5mm以下、好ましくは1mm以上3mm以下の範囲にあり、気孔率は50%以上95%以下、好ましくは60%以上90%以下の範囲にある。上記数値が好ましい範囲にある場合、本発明のポリアミド多孔質体をより容易に製造することができる。上記製造時において、第2多孔質体の厚さは、主として原液の量に対する塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムの混合割合に依存し、気孔率は調製温度、水溶性粒子の種類やサイズに依存する。上記構造上の特徴から、第1多孔質体11は第2多孔質体12と比較して強度が高い。
【0021】
図2及び図3に本発明の生物の成長、繁殖を助ける材料としてのポリアミド多孔質体の使用形態を示す。図2に示す使用形態は、図1に示した第1多孔質体11を下部にまた図1に示した第2多孔質体12を上部に配置した後、第1多孔質体11を支持体として第2多孔質体12上に種子、卵、微生物、酵素又は細菌13を載せ、この状態で種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養を行うものである。
【0022】
連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体12は、図7に示すポリアミドの構造が幾重にも重なるため、図7の孔を示すB相2の直下には、必ずしも同一のB相2が位置せず、ポリアミドからなるA相1が位置する。同様に図7のポリアミドを示すA相1の直下には、必ずしも同一のA相1が位置せず、孔のB相2が位置する。この構造が図2の上下方向にランダムに繰返される。ポリアミド多孔質体10は水に浸漬すると、弾力性に富み、水の保持力を増す性質があるため、例えば水を保持した第2多孔質体12上に種子13を配置すれば、種子に十分な水分を補給できるとともに、種子から生えてきた根は第2多孔質体12の孔に延び、その成長が促進される。支持体である第1多孔質体11は独立多孔の網状組織であるため、第2多孔質体を支持する機能の他に、通気性、水浸透性を有し、第2多孔質体12への空気又は水分の導入に優れる。使用済みのポリアミド多孔質体は手で揉むと、簡単に破砕し、粉体状になるため、この粉体を本発明のポリアミド多孔質体を製造するための原料に容易に再利用することができる。
【0023】
図3に示す使用形態は、ポリアミド多孔質体を2つ用意し、一方のポリアミド多孔質体10aの第2多孔質体12aと他方のポリアミド多孔質体10bの第2多孔質体12bとを互いに対向するようにした後(図3では上下に対向させている。)、2つの第2多孔質体12a,12bの対向面間に種子、卵、微生物、酵素又は細菌13を配置して2つのポリアミド多孔質体10a及び10bにより保持し、この保持状態で種子の栽培、卵のふ化、微生物の培養、酵素の培養又は細菌の培養を行うものである。2つのポリアミド多孔質体10a及び10bによるサンドイッチ構造であるため、互いに同一のものを使用すれば、第2多孔質体の体積が図2に示す使用形態の2倍になり、孔が占める体積、水浸漬時の保水能力が2倍になる。また種子等13が直接外気に触れず、2つの第2多孔質体12a及び12bで被包されかつ保持されるため、成長開始時の種子等の保護に適する。更に両側に第2多孔質体よりも強度の高い第1多孔質体11a及び11bが位置するため、形態安定性、可搬性、取扱い性に優れる。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
メチルアルコール100ccに塩化カルシウム20gを溶解して塩化カルシウムのメタノール溶液を得た。この溶液に綿状のポリヘキサメチレンアジポアミド6.7gを加えて溶解して原液を調製した。直径50mmのシャーレの中に平均粒径0.2mmの硫酸ナトリウム粒子5gを入れておき、そこに上記原液を5cc注入し、攪拌して硫酸ナトリウム粒子をシャーレ下部に均一分散させた。
【0025】
この混合液の入ったシャーレを温度30℃、相対湿度100%のデシケータに入れ、約1日静置した。その後、液表面に30℃の純水を約10cc添加することにより、ポリヘキサメチレンアジポアミドからなる独立多孔の網状組織の第1多孔質体が、まず形成された。この水が第1多孔質体を透過し、第1多孔質体の下方のポリヘキサメチレンアジポアミドのゲル溶液に浸透すると、硫酸ナトリウムの溶解を伴いながらの相分離が起こり、第1多孔質体に続いて連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなるポリヘキサメチレンアジポアミドの第2多孔質体が形成された。
【0026】
得られたポリヘキサメチレンアジポアミド多孔質体のメッシュ数と厚さを測定したところ、第1多孔質体のメッシュ数は約80個/cm2(孔直径1mm以下)厚さは約0.1mmであった。また第2多孔質体の気孔率は約81%で、厚さは約1mmであった。第2多孔質体の走査電子顕微鏡写真を図4及び図5に示す。図5は図4の部分拡大図である。図4及び図5から明らかなように、珊瑚状に延びたポリヘキサメチレンアジポアミドは連続多孔を形成するとともに、ポリヘキサメチレンアジポアミドの組織構造自体にも無数の細孔が形成される。図5に示す球状部は直径が約80μmであり、約3~5μmの変形粒子からなる凝集体のようであった。
【0027】
<実施例2>
メチルアルコール100ccに塩化カルシウム20gを溶解して塩化カルシウムのメタノール溶液を得た。この溶液にポリカプロラクタム6.7gを加えて溶解し原液を調製した。直径50mmのシャーレ中に平均粒径0.3mmの塩化ナトリウム粒子5gを入れておき、そこに上記原液を注入し、攪拌して塩化ナトリウム粒子をシャーレ下部に均一分散させた。
【0028】
この混合液の入ったシャーレを温度30℃、相対湿度100%のデシケータに入れ、約1日静置した。その後、液表面に30℃の純水を約10cc添加することにより、ポリカプロラクタムからなる独立多孔の網状組織の第1多孔質体が形成された。この水が第1多孔質体を透過し、第1多孔質体下方のポリカプロラクタムのゲル溶液に浸透すると、塩化ナトリウムの溶解を伴いながらの相分離が起こり、第1多孔質体に続いて連続多孔のスピノーダル分解模様型相分離組織からなる第2多孔質体が形成された。
【0029】
得られたポリカプロラクタム多孔質体のメッシュ数と厚さを測定したところ、第1多孔質体のメッシュ数は約170個/cm2(孔直径0.5mm以下)で厚さは約0.1mmであった。また第2多孔質体の気孔率は約91%で厚さは約1mmであった。第2多孔質体部分の走査電子顕微鏡写真を図6に示す。実施例1の図5と比べて表面部分の約3~5μmの変形粒子はより密着している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のポリアミド多孔質体の模式図である。
【図2】本発明のポリアミド多孔質体の使用形態を示す図である。
【図3】本発明のポリアミド多孔質体の別の使用形態を示す図である。
【図4】実施例1における第2多孔質体の走査電子顕微鏡写真図である。
【図5】図4の部分拡大写真図である。
【図6】実施例2における第2多孔質体部分の走査電子顕微鏡写真図である。
【図7】スピノーダル分解による二相分離構造モデルを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10,10a,10b ポリアミド多孔質体
11,11a,11b 第1多孔質体
12,12a,12b 第2多孔質体
13 種子、卵、微生物、酵素又は細菌
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図7】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6