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明細書 :二ホウ化マグネシウムの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4752049号 (P4752049)
公開番号 特開2006-265049 (P2006-265049A)
登録日 平成23年6月3日(2011.6.3)
発行日 平成23年8月17日(2011.8.17)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 二ホウ化マグネシウムの製造方法
国際特許分類 C01B  35/04        (2006.01)
C01G   1/00        (2006.01)
H01B  12/06        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
FI C01B 35/04 ZAAC
C01G 1/00 S
H01B 12/06
H01B 13/00 565Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2005-087027 (P2005-087027)
出願日 平成17年3月24日(2005.3.24)
審査請求日 平成17年12月22日(2005.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】櫻井 浩
【氏名】尾池 弘美
【氏名】高野 勝昌
【氏名】細谷 拓己
【氏名】工藤 広史
【氏名】佐々木 淳之
個別代理人の代理人 【識別番号】100122884、【弁理士】、【氏名又は名称】角田 芳末
【識別番号】100113516、【弁理士】、【氏名又は名称】磯山 弘信
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開2003-063817(JP,A)
特開2003-158308(JP,A)
細谷拓己他,MgB2超伝導薄膜の低温合成,第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2004年,No. 1,p. 186
原田善之他,As-grownMgB2膜薄膜の超伝導特性,第65回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2004年,No. 1,p. 186
調査した分野 C01B 33/20-39/54
特許請求の範囲 【請求項1】
マグネシウムの蒸着源と、ホウ素の蒸着源と、基板とを反応室内に配置し、
前記反応室内で、マグネシウムとホウ素とを同時に蒸着することにより、前記基板上に二ホウ化マグネシウムを形成する方法であって、
前記二ホウ化マグネシウムを形成する際の前記基板の温度を100℃以下とし、
マグネシウムの蒸着量を0.126~0.9Å/sの範囲内とし、ホウ素の蒸着量を0.0563~0.275Å/sの範囲内とし、マグネシウムの蒸着量とホウ素の蒸着量との比を、1.0~9.0の範囲内とする
ことを特徴とする二ホウ化マグネシウムの製造方法。
【請求項2】
前記二ホウ化マグネシウムを形成する際の前記基板の温度を100℃とし、マグネシウムの蒸着量を0.126~0.9Å/sの範囲内とし、ホウ素の蒸着量を0.1064~0.275Å/sの範囲内とし、マグネシウムの蒸着量とホウ素の蒸着量との比を、1.0~4.10の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載の二ホウ化マグネシウムの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、二ホウ化マグネシウム(MgB)の製造方法に係わり、特に薄膜状態の二ホウ化マグネシウムを製造する際に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
二ホウ化マグネシウム(MgB)は、2000年にAkimitsuらによって初めて超伝導となることが報告された物質であり(非特許文献1参照)、金属系の超伝導材料としては、最高の超伝導転移温度Tc=39Kを有する。
【0003】
二ホウ化マグネシウムの合成方法としては、従来から、600℃以上の高温熱処理を行って結晶化させる方法が行われていた。
【0004】
しかし、このような高温で合成を行うと、マグネシウムが酸素等と反応し易いため、マグネシウムが酸化してしまうことがある。また、酸化させることによって、二ホウ化マグネシウムの構造が変化してしまうという問題を生じる。
【0005】
そこで、二ホウ化マグネシウムの薄膜を比較的低い温度で合成する方法として、高真空中でMgとBとを同時に蒸発させ、温度300℃以下の基板上で合成する方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0006】

【非特許文献1】J.Nagamatsu et al.,Neture vol.410,2001,p.63
【非特許文献2】固体物理Vol.40,No.1,2005,p.51~67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、基板温度を250℃とすると、この温度は、多くの有機材料の耐熱温度よりも高い温度である。
このため、例えば有機材料の上に二ホウ化マグネシウムの薄膜を形成すると、有機材料が融解してしまうため、有機レジストを用いたリフトオフ法による微細加工ができない。
従って、MgBを利用した超伝導デバイスを、現在の集積回路に組込むことが困難になってしまう。
【0008】
また、上記非特許文献2において、基板温度158℃~268℃を成膜条件とする例が記載されているが、この温度範囲でも、有機レジストを用いたリフトオフ法による微細加工を安定して行うために、まだ充分に低温であるとは言えない。
【0009】
上述した問題の解決のために、本発明においては、低温で二ホウ化マグネシウムを形成することにより、微細加工を安定して行うことを可能にする二ホウ化マグネシウムの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の二ホウ化マグネシウムの製造方法は、マグネシウムの蒸着源と、ホウ素の蒸着源と、基板とを反応室内に配置し、この反応室内でマグネシウムとホウ素とを同時に蒸着することにより、基板上に二ホウ化マグネシウムを形成する方法であって、二ホウ化マグネシウムを形成する際の基板の温度を100℃以下とし、マグネシウムの蒸着量を0.126~0.9Å/sの範囲内とし、ホウ素の蒸着量を0.0563~0.275Å/sの範囲内とし、マグネシウムの蒸着量とホウ素の蒸着量との比を、1.0~9.0の範囲内とするものである。
【0011】
本発明において、マグネシウムとホウ素とを同時に蒸着して二ホウ化マグネシウムを製造する具体的な方法としては、例えば、MBE(分子線エピタキシー)法を採用することができる。
このMBE法とは、超高真空中に保ったチャンバーの中で基板に分子線を入射させ、基板上にエピタキシャル成長層を形成する方法の総称であって、半導体、金属、超伝導体、絶縁体等の広範囲の材料がMBE法で作成可能である。
【0012】
このMBE法の一般的な特徴としては、以下のことが挙げられる。
(1)成長速度が遅く、成長温度も低温であるので、極めて薄い原子レベルの薄膜の制御が可能である。
(2)成長途中の薄膜の状態をモニターすることができると共に、連続して他の真空プロセスを行うことができる。
(3)高純度の成長層が得られる。
【0013】
MBE法による二ホウ化マグネシウムの製造には、一般的なMBE(分子線エピタキシー)装置を使用することが可能である。
【0014】
より好ましくは、装置の反応室内の圧力を1×10-8Pa以下としてから、マグネシウム及びホウ素の蒸着を行う。
また、成膜時の圧力は1×10-5Pa以下とすることが望ましい。
それぞれの蒸着量は、マグネシウムの蒸着量を0.126~0.9Å/sの範囲内(0.0126~0.09nm/s)とし、ボロンの蒸着量を0.0563~0.275Å/sの範囲内(0.00563~0.0275nm/s)とする。さらに好ましくは、二ホウ化マグネシウムを形成する際の基板の温度を100℃とし、マグネシウムの蒸着量を0.126~0.9Å/sの範囲内とし、ボロンの蒸着量を0.1064~0.275Å/sの範囲内とし、マグネシウムの蒸着量とホウ素の蒸着量との比を、1.0~4.10の範囲内とする。
【0015】
二ホウ化マグネシウムを形成するための基板としては、従来はサファイヤ(Al)が用いられているが、シリコン基板やガラス基板を使用することも可能である。
基板の表面状態は特に限定されず、洗浄や表面処理がなされた基板でも、全く処理が行われていない基板でもよい。
【0016】
また、本発明では、基板の温度を100℃以下とするため、基板上に形成した有機材料の上に、二ホウ化マグネシウムを形成することが可能である。
【0017】
上述の本発明によれば、マグネシウムの蒸着量とホウ素の蒸着量との比を、1.0~9.0の範囲内とすることにより、二ホウ化マグネシウムを形成する際の基板の温度を100℃以下としても、基板上に二ホウ化マグネシウムを形成することが可能になる。
なお、蒸着量の比を上記範囲を超えて大きくすると、基板温度を100℃よりも高くしないと二ホウ化マグネシウムを形成することができなくなる。
即ち、本発明により、100℃以下という比較的低温で、二ホウ化マグネシウムを形成することが可能になる。
また、本発明により製造される二ホウ化マグネシウムは、ジョセフソン素子、超伝導量子干渉計(SQUID)への応用が考えられる。
【発明の効果】
【0018】
上述の本発明によれば、100℃以下という比較的低温で、二ホウ化マグネシウム薄膜を形成することが可能になるため、有機材料の上に二ホウ化マグネシウム薄膜を形成しても、有機材料が融解することがなく、リフトオフ法による微細加工を行うことが可能になる。
従って、本発明により、半導体装置等の集積回路に、二ホウ化マグネシウム薄膜から成るデバイスを組み込むことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の二ホウ化マグネシウムの製造方法を実施するための製造装置の一形態として、MBE(分子線エピタキシー)装置の概略構成図を図1に示す。
【0020】
このMBE(分子線エピタキシー)装置1は、反応室2内に、Kセル3と、EBガン(電子銃)4と、薄膜を形成する基板11を保持する基板ホルダー8とを配置して成る。
Kセル3は、真空計による計測で厳密な蒸発量を保つことができるものである。EBガン4は、電子線を当てることにより、融点が非常に高い物質であっても蒸発させることができるものである。
基板ホルダー8は、基板11とは反対側にヒーター9が設けられている。
そして、EBガン4と、基板ホルダー8に保持された基板11との間に、膜厚計7が設けられている。
さらに、反応室2には、図示しないが、反応室2内を真空にするために、真空ポンプ等が設けられる。
【0021】
次に、図1のMBE装置1を用いて、二ホウ化マグネシウム薄膜を形成する方法について説明する。
【0022】
Kセル3内のアルミナ製ルツボ5に、マグネシウム原料を収容すると共に、EBガン4内のカーボン製ルツボ6に、ボロン原料を収容する。
そして、真空ポンプ等により反応室2内を真空にした後、ヒーター9により基板11の温度が100℃以下、より好ましくは0℃~100℃の範囲内にあるように制御する。このとき、反応室2内の圧力は、1×10-8Pa以下の高真空とする。
【0023】
続いて、Kセル3のアルミナ製ルツボ5内のマグネシウムを、加熱して蒸発させると共に、EBガン4においてボロン原料に電子ビームを照射して、カーボン製ルツボ6内のボロンを蒸発させる。
これにより、基板11に、マグネシウム及びボロンが蒸着されて、二ホウ化マグネシウム薄膜が形成される。
なお、マグネシウム及びボロンを蒸発させて、基板11上に薄膜を形成しているとき(成膜時)には、反応室2内の圧力を1×10-5Pa以下に制御することが望ましい。
【0024】
そして、二ホウ化マグネシウム薄膜を形成する際に、膜厚計7として水晶振動子膜厚計を用いて、成膜された二ホウ化マグネシウム薄膜の膜厚の測定を行う。
また、Kセル3からのマグネシウムの蒸発量を、真空計(図示せず)により計測し、EBガン4からのボロンの蒸発量を、膜厚計7により計測する。
これにより、二ホウ化マグネシウム薄膜の膜厚をモニターすることができ、所望の膜厚の二ホウ化マグネシウム薄膜が形成されたときに蒸着を停止すれば、形成する二ホウ化マグネシウム薄膜の膜厚を制御することができる。
【0025】
Kセル3からのマグネシウムの蒸発量は、アルミナ製ルツボ5内の温度により、制御することができる。温度が高いほど蒸発量が多くなり、温度(℃)と蒸発レート(Å/s)の対数とをグラフにプロットすると、ほぼ直線的に変化する。
EBガン4からのボロンの蒸発量は、EBガンの電流値により、制御することができる。なお、カーボン製ルツボ6内のボロンの状態によって、電流値と蒸発量との関係が変化するが、例えば、時間の経過とともに電流値を増加させることにより、蒸発量を一定に保つことも可能である。
【0026】
なお、本発明の製造方法は、図1に示したMBE装置やMBE(分子線エピタキシー)法に限定されるものではなく、基板温度、反応室内の圧力、蒸着量の比率を制御することが可能であれば、その他の製造装置や形成方法を採用することも可能である。
【0027】
<実施例>
上述した本発明方法により、実際に二ホウ化マグネシウム薄膜を形成して、特性を調べた。
【0028】
(蒸着量の比と超伝導転移温度)
図1に示した構成のMBE装置1を使用して、基板温度を25℃・50℃・100℃と変えて、また、マグネシウムの蒸着量(Mgレート)とホウ素の蒸着量(Bレート)を様々に変えて、基板11上に二ホウ化マグネシウム薄膜を形成した薄膜の試料を作製した。なお、基板11としては、シリコン基板を使用した。
【0029】
各試料の薄膜について、マグネシウムの蒸着量(Mgレート)とホウ素の蒸着量(Bレート)から蒸着量の比(レート比)を算出した。
また、この蒸着量の比(レート比)から、形成される薄膜の組成として、Mg/B比(原子比)を算出した。原子比は、マグネシウムの原子量24、ボロンの原子量11、マグネシウムの密度(1.738g/cm)、ボロンの密度(2.37g/cm)を用いて、次式(1)により算出することができる。
原子比=レート比×{(ボロンの原子量/ボロンの原子量)/(マグネシウムの原子量/マグネシウムの密度)}×2=レート比×0.66 (1)
【0030】
次に、各試料の薄膜に対して、超伝導量子干渉装置(SQUID)を使用して、磁場を印加しない状態で冷却し、その後磁場を印加して温度を上昇させながら磁化を測定する方法(ゼロ磁場冷却)により、マイスナー効果の確認と超伝導転移温度Tcの測定とを行った。なお、印加する磁場の大きさは10[Oe]とした。
そして、マイスナー効果が確認された試料について、磁場が変化し始めた温度を、超伝導転移温度Tcと定義した。
【0031】
作製した薄膜の試料(No.1~No.15)について、マグネシウム及びホウ素の蒸着量(蒸着レート)とその比(レート比)、Mg/B比(原子比)と、超伝導転移温度Tcの測定値を表1に示す。
【0032】
【表1】
JP0004752049B2_000002t.gif

【0033】
表1より、マグネシウムの蒸着量(Mgレート)とホウ素の蒸着量(Bレート)との比(レート比)が1.05~8.92の範囲(およそ1.0~9.0の範囲)としたときに、超伝導特性を示す二ホウ化マグネシウム薄膜が形成されていることがわかる。
なお、No.4の試料は、従来の高い基板温度で採用されているレート比に近い値(26.9)としたものであるが、この場合、形成した薄膜が超伝導特性(マイスナー効果)を示さなかった。
即ち、レート比を従来よりも充分に小さくしないと、基板温度100℃で超伝導特性を示す二ホウ化マグネシウム薄膜を形成することができないことがわかる。
【0034】
また、横軸にMgとBの各蒸着量から求めた原子比(Mg/B比)をとり、縦軸に超伝導転移温度Tcをとって、表1に示した各試料の結果をプロットして、図2に示す。
【0035】
図2より、MgとBの比率を小さくして、化学量論比(Mg/B=1)に近づけるほど、超伝導転移温度Tcが高くなることがわかる。
【0036】
(リフトオフ特性)
次に、有機レジスト上に、基板温度50℃で二ホウ化マグネシウム薄膜を成膜し、リフトオフ法により、微細加工を行った。
この微細加工によりパターニングされたMgB薄膜を、顕微鏡により観察したところ、幅20μmの微細加工パターンが崩れることなく、加工ができていることがわかった。
【0037】
従って、基板温度を100℃以下とすることにより、超伝導特性を示すMgB薄膜をリフトオフ法で微細加工することが可能であることがわかる。
【0038】
本発明は、上述の実施の形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の製造方法を実施するMBE装置の一形態の概略構成図である。
【図2】形成した二ホウ化マグネシウム薄膜の組成比(Mg/B)と超伝導転移温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 MBE装置、2 反応室、3 Kセル、4 EBガン(電子銃)、7 膜厚計、8 基板ホルダー、9 ヒーター、11 基板
図面
【図1】
0
【図2】
1