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明細書 :神経障害の予防又は治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4929446号 (P4929446)
公開番号 特開2006-290842 (P2006-290842A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 神経障害の予防又は治療剤
国際特許分類 A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI A61K 31/7088 ZNA
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61P 9/10
A61P 25/00
A61P 25/14
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 43/00 105
C12Q 1/68 A
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
G01N 33/53 D
請求項の数または発明の数 6
全頁数 24
出願番号 特願2005-117302 (P2005-117302)
出願日 平成17年4月14日(2005.4.14)
審査請求日 平成20年4月10日(2008.4.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】門松 健治
【氏名】張 皓▲倩▼
【氏名】内村 健治
【氏名】村松 喬
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
【識別番号】100105728、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 敦子
【識別番号】100139480、【弁理士】、【氏名又は名称】日野 京子
審査官 【審査官】伊藤 基章
参考文献・文献 特表平06-502840(JP,A)
KADOMATSU,K.,N-Acetylglucosamine-6-O-Sulfotransferase-1 deficiency causes loss of Keratan Sulfate in the developing brain and injured brain,Glycobiol,2004年,Vol.14,p.1065
調査した分野 A61K 31/00
A61K 38/00
A61K 39/00
A61K 45/00
C12Q 1/00
G01N 33/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又は部分ペプチドに対する抗体又は配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有するアンチセンスヌクレオチドである、脳における神経障害の予防・治療剤。
【請求項2】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドに対する抗体を用いる、脳における神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
【請求項3】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドに対する抗体を含有する、脳における神経障害の予防・治療剤のスクリーニングキット。
【請求項4】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有するアンチセンスヌクレオチドを用いる、脳における神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有するアンチセンスヌクレオチドを含有する、脳における神経障害の予防・治療剤のスクリーニングキット
【請求項6】
N-アセチルグルコサミン-6-O-スルホントランスフェラーゼ-1をコードするDNAが不活性化され、該遺伝子のプロモーターの制御下にレポーター遺伝子を発現する遺伝子組換え非ヒト哺乳動物に対して、被験化合物を投与して、前記レポーター遺伝子の発現を検出する、脳における神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞死など神経細胞の損傷部位において引き起こされる神経障害を予防又は治療する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の中枢神経系などにおいて損傷が生じた際、その修復のために様々な分子及び細胞レベルでの反応が起きる。これらの反応のなかには、損傷治癒後の神経機能回復にむしろ不利になるものも含まれており、結果として、損傷を受けて再生する神経軸索の伸長を阻害してしまうことになることがわかってきている。このため、哺乳類の中枢神経系ではいったん損傷を受けた神経軸索が再生して元の神経回路を復元することはきわめて困難となっており、この結果、後遺症により四肢の麻痺で苦しむ多くの患者を生むことになってしまっている。
【0003】
このような軸索伸長を阻害する反応の一つとして、過剰なグリア性瘢痕(glial scar)の形成がある。グリアルスカーは、グリア細胞の近くの神経細胞を保護する反応性アストロサイトが凝集することによって形成されるものである。反応性アストロサイトが凝集して形成されるマトリックスは損傷を充填するのに有効ではあるが、神経軸索の伸長を阻害し、結果として損傷部位における神経の導通を阻害してしまう。最近、コンドロイチン硫酸を分解する酵素を投与することで神経軸索伸長を促す試みもなされている(非特許文献1)。
【0004】
N-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素(GlcNAc6ST)はN-アセチルグルコサミン残基の6位への硫酸基の転移を触媒する酵素であるが、現在までに5種類の酵素が知られ、クローニングされている(非特許文献2~6)。N-アセチルグルコサミンの6-O-硫酸化の代表例としては、L-セレクチンのリガンドである硫酸化シアリルルイスの他に、ケラタン硫酸がある。ケラタン硫酸は、皮膚、脳、角膜、関節などに広く分布するグリコサミノグリカンであり、その二糖単位中のGlcNAcは常に6-硫酸化されている。しかしながら、上記各種のGlcNAc6STと組織におけるケラタン硫酸との関係は必ずしも明らかになってはいない。
【0005】
最近このGlcNAc6ST-5が角膜のケラタン硫酸の生合成に必須であることが報告された(非特許文献7)。また、本発明者らを含む研究グループは、GlcNAc6ST-1は脳におけるケラタン硫酸の生合成に必要であることを既に報告している(非特許文献8)。しかしながら、グリア性瘢痕の形成とケラタン硫酸との関係については、全く明らかになっていない。

【非特許文献1】Nature Neurosci. 4, 465-466, 2001
【非特許文献2】J. Biol. Chem. 273, 22577-22583, 1998
【非特許文献3】J. Cell Biol. 145, 899-910, 1999
【非特許文献4】Biochem. Biophys. Res. Commun. 263, 543-549, 1999
【非特許文献5】Biochem. Biophys. Res. Commun. 274, 291-296, 2000
【非特許文献6】Nature Genet. 26, 237-241, 2000
【非特許文献7】Clin. Genet. 65, 120-125, 2004
【非特許文献8】Glycobiol. 14, 1065, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グリア性瘢痕そのものが軸索伸長を阻害するのでコンドロイチン硫酸以外の軸索伸長阻害因子が作用していることも考えられ、コンドロイチン硫酸を標的とするだけでは十分な効果が得られない可能性もある。そこで、本発明は、グリア性瘢痕の形成を阻害することにより、疾患治癒後などにおける神経障害を予防又は治療できる新たな薬剤等を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行っていたところ、グリア性瘢痕の形成においてケラタン硫酸が重要な働きがあることを見出した。この知見に基づき以下の発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0008】
(1)ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物又はその塩を含有する、神経障害の予防・治療剤
(2)前記化合物は、N-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素の酵素活性阻害作用を有する化合物である、(1)に記載の予防・治療剤。
(3)前記化合物は、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又は部分ペプチドの活性を阻害する化合物である、(2)に記載の予防・治療剤。
(4)前記化合物は、N-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素をコードする遺伝子の発現抑制作用を有する化合物又はその塩を含有する、(1)に記載の予防・治療剤。
(5)前記化合物は、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物である、(4)に記載の予防・治療剤。
(6)前記化合物は、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有するアンチセンスヌクレオチドである、(4)に記載の予防・治療剤。
(7)ケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物又はその塩を含有する、神経障害の予防・治療剤。
(8)前記化合物は、ケラタン硫酸分解酵素活性を有するタンパク質である、(7)に記載の予防・治療剤。
(9)前記化合物は、ケラタン硫酸に対する抗体である、(7)に記載の予防・治療剤。
(10)前記神経障害は、脊髄損傷、脳損傷、脳卒中、頭部損傷、脳梗塞、脳出血、脳虚血、クモ膜下出血、動脈瘤出血、心筋梗塞、低酸素症、無酸素症、及び神経変性疾患から選択される疾患又は事象によって引き起こされる神経障害である、(1)~(9)のいずれかに記載の神経障害の予防・治療剤。
(11)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくはは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドに対する抗体を含有する、神経障害の診断用剤。
(12)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、神経障害の診断用剤。
(13)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的若しくは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有するアンチセンスヌクレオチドを含有する、神経障害の診断用剤。
(14)ケラタン硫酸を用いる、神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(15)ケラタン硫酸を含む、神経障害の予防・治療剤のスクリーニングキット。
(16)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドを用いる、神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(17)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチドを含有する、神経障害の予防・治療剤のスクリーニングキット。
(18)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドコードするポリヌクレオチドを用いる、神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法。
(19)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、神経障害の予防・治療剤のスクリーニングキット。
(20)ケラタン硫酸の合成阻害作用若しくはケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物又はその塩を投与する工程を備える、神経障害の予防・治療方法。
(21)配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質若しくはその部分ペプチド又はその塩の活性を阻害する化合物又はその塩、あるいは、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩を投与する工程を備える、神経障害の予防・治療方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ケラタン硫酸と神経障害を引き起こすグリア性瘢痕との関係に基づき、神経障害の予防や治療において、ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物又はその塩、ケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物又はその塩を用いることを特徴とするものである。本発明は、GlcNAc6STが神経系で発現しないGlcNAc6ST遺伝子欠損マウスに脳損傷を付与したとき、損傷部位においてケラタン硫酸が誘導されないが、同様に脳損傷を付与した野生型マウスに比べて神経軸索の伸長を妨げるグリア性瘢痕の形成が抑制されるという本発明者らの知見に基づいている。本発明者らは、グリア性瘢痕の形成にはケラタン硫酸が重要な役割を有していることを見出し、神経細胞死などが生じた神経細胞損傷部位においてケラタン硫酸の合成を阻害又はケラタン硫酸の生理活性を阻害してグリア性瘢痕の形成を阻害又は崩壊させることで神経細胞の軸索伸長及びネットワーク形成を促進して、神経軸索の伸長阻害等による神経障害を予防し治療できることを見出したのである。
【0010】
以下、本発明に含まれるケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物やケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物等を含有する神経障害の予防・治療剤、同様にこれらの化合物等を投与する神経障害の予防・治療方法、ケラタン硫酸の合成阻害作用やケラタン硫酸の生理活性阻害作用の有無を検出して神経障害の予防・治療剤をスクリーニングする方法、及びケラタン硫酸合成活性の有無に基づいて神経障害の有無や程度を診断する神経障害の診断剤等の各種態様について説明する。
【0011】
(神経障害の予防・治療剤)
(1)ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物又はその塩
本発明の神経障害の予防・治療剤は、ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物又はその塩を含有することを特徴としている。
【0012】
本発明において、神経障害とは、神経細胞死などの神経細胞の損傷が生じた部位の修復に際して、神経軸索の伸長が抑制又は阻害されることによって生じる、神経軸索の少なくとも一部の断絶を含む神経軸索の不完全な導通状態による障害を意味している。こうした神経障害としては、脊髄損傷、脳損傷、脳卒中、頭部損傷、脳梗塞、脳出血、脳虚血、クモ膜下出血、動脈瘤出血、心筋梗塞、低酸素症、無酸素症、血液量減少性ショック、外傷性ショック、再灌流障害、多発性硬化症、エイズ、連合痴呆、ニューロン毒性、成人型呼吸疾患、ダウン症、クロイツフェルト・ヤコブ病、糖尿病性ニューロパシー、脳動脈硬化に伴う脳循環不全等の脳血管障害、脳炎後遺症、脳性麻痺、外科手術、多発性硬化症及びHIV関連神経変性若しくは小脳変性及び神経変性疾患などの疾患又は事象によって引き起こされるものが挙げられる。好ましくは、脊髄損傷、脳損傷、脳卒中、頭部損傷、脳梗塞、脳出血、脳虚血、クモ膜下出血、動脈瘤出血、心筋梗塞、低酸素症、無酸素症による外傷性又は虚血性神経細胞障害である。なお、神経変性疾患としては、特に限定しないがアルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性脊髄側索硬化症等が挙げられる。
【0013】
また、神経障害としては、この他、脳や脊髄以外における、身体各部の疾患、外傷及び外科手術などの疾患又は事象によって引き起こされるものも挙げられる。
【0014】
(a)GlcNAc6STの酵素活性の阻害作用を有する化合物又はその塩
ケラタン硫酸の生合成は、N-アセチルグルコサミン残基の6位への硫酸基の転移を触媒する酵素であるGlcNAc6STによって行われる。このような硫酸転移酵素としては、GlcNAc6ST-1、GlcNAc6ST-2、GlcNAc6ST-3、GlcNAc6ST-4及びGlcNAc6ST-5が挙げられる。これらはそれぞれJ. Biol. Chem. 273, 22577-22583, 1998、J. Cell Biol. 145, 899-910, 1999、Biochem. Biophys. Res. Commun. 263, 543-549, 1999、Biochem. Biophys. Res. Commun. 274, 291-296, 2000、Nature Genet. 26, 237-241, 2000において開示されている。なかでも、神経系においては、GlcNAc6ST-1によってケラタン硫酸が生合成される。したがって、ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物としては、GlcNAc6ST-1の酵素活性の阻害作用を有する化合物又はその塩が挙げられる。本発明のタンパク質は、脳など神経が損傷を受けたことなどで形成される損傷部位においてグリア性瘢痕が形成されるとき、すなわち、反応性アストロサイト細胞の集積が観察されるようなときにおいて発現される。
【0015】
ここに、GlcNAc6ST-1としては、例えば、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するタンパク質のほか、このアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる(これらを総称して本発明のタンパク質ともいう。)。
【0016】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質とは、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。また、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
【0017】
また、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一の配列とは、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列中、1又は複数個のアミノ酸残基が、置換、欠失、付加及び/置換されたアミノ酸配列が挙げられる。具体的には、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が置換したアミノ酸配列、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸を挿入したアミノ酸配列、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において、1又は2個以上(好ましくは、1~30個程度、好ましくは1~10個程度、さらに好ましくは数(1~5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列が挙げられる。また、アミノ酸残基の改変においては、これら置換、欠失、挿入及び付加が2種類以上組み合わされていてもよい。
【0018】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質は、配列番号2又は4に記載のタンパク質と実質的に同質な活性を有するものが好ましい。ここで、同質な活性とは、N-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素活性である。また、実質的に同質とは、その活性の程度は問わないで、酵素の活性として同質であることを意味している。
【0019】
この硫酸転移活性は、公知の方法に準じて実施できる。例えば、35Sでラベルした活性硫酸(具体的には、3'-phosphoadenosine 5'-phosphosulfate:PAPS)をドナーに、GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcをアクセプターにして産物をカラムクロマトグラフィーで分離することで、この硫酸転移活性を測定できる(Uchimura et al., JouRNAl of Biological Chemistry 273, 22577-22583, 1998)。
【0020】
配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl,Acad.Sci.USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82、488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2又は4に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。欠失、置換、挿入及び/又は付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換若しくは付加できる程度の数であり、上記したとおりの1個から数十個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個である。また、これらのアミノ酸の欠失、置換若しくは付加の程度は、もとのアミノ酸配列との相同性が少なくとも60%以上、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明のタンパク質は、これを産生する動物の細胞又は組織から従来公知のタンパク質の精製法によって製造することができる。本発明のタンパク質は、例えば、ヒトのほか温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、胚細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞若しくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよい。また、本発明のタンパク質は、後述する本発明のポリヌクレオチド(DNA)を用いた形質転換体を培養することによっても得ることができる。さらに、従来公知の化学的合成方法によっても得ることができる。また、本発明のタンパク質は、非天然のアミノ酸残基を含んでいてもよいし、カルボキシル基のアミド化やエステル化のほか、各種官能基が適宜修飾されたアミノ酸残基を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の部分ペプチドは、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の一部分である。この態様のポリペプチドは、そのアミノ酸残基数は特に限定しないが、もとのタンパク質におけるアミノ酸配列と同一であるか又は実質的に同一のアミノ酸配列を有し、実質的に同質の活性を有することが好ましい。実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列である。また、この部分的ペプチドは、配列番号2又は4に記載のアミノ酸配列有するタンパク質と実質的に同質活性を備えていることが好ましい。実質的に同質の活性とは上記と同様の意味を有している。この部分ペプチドにおいても、本発明のタンパク質と同様に非天然アミノ酸残基や修飾されたアミノ酸残基を含んでいてもよい。本発明の部分ペプチドは、本発明のタンパク質を適当な酵素によって分解して得ることもできるが、これをコードするDNAを保持する形質転換体を利用し、あるいは化学合成法によっても製造することができる。
【0023】
こうした本発明のタンパク質及び部分ペプチドの酵素活性の阻害作用を有する化合物は、本発明のタンパク質又は部分ペプチドを用い、あるいは本発明のタンパク質又は部分ペプチドを産生する細胞を用いて、試験化合物を本発明のタンパク質又は部分ペプチドを含む系に添加して、本発明のタンパク質等の酵素活性を測定するスクリーニングにより取得することができる。
【0024】
本発明の化合物又はその塩における塩の形態は、特に限定しないが、生理学的に許容される酸による塩が好ましい。例えば、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸との塩又は酢酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸などの有機酸との塩等が挙げられる。
【0025】
本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを認識可能な抗体(以下、本発明の抗体ともいう。)も本発明の予防・治療剤の有効成分とすることができる。本発明の抗体は、本発明のタンパク質を認識し結合することで、本発明のタンパク質の酵素活性を低下又は不活性化することができる。本発明の抗体は、それ自体又は適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体又はその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤若しくは賦形剤とを含むものである。なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0026】
本発明の抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を包含する。本発明の抗体は、本発明のタンパク質及びその部分ポリペプチドを抗体作成のための抗原として利用することにより、常法により調製することができる。なお、本発明の抗体によれば、本タンパク質を精製できるほか、ウェスタンブロッティング法、ELISA法及び蛍光抗体法等により本発明のタンパク質を検出及び定量したり、細胞及び生体内の局在を検出したりできる。また、本発明の抗体を用いれば、本発明のタンパク質と類似のタンパク質を探索することができる。
【0027】
(b)GlcNAc6STをコードする遺伝子の発現抑制作用(GlcNAc6STの合成阻害作用)を有する化合物又はその塩
ケラタン硫酸の合成阻害作用を有する化合物としては、GlcNAc6ST-1をはじめとする各種のGlcNAc6ST(GlcNAc6ST-1、GlcNAc6ST-2、GlcNAc6ST-3、GlcNAc6ST-4及びGlcNAc6ST-5)及び本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制作用を有する化合物が挙げられる。ここで、本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドともいう。)としては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。本発明で用いるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1又は3に記載の塩基配列を有するDNA、又は配列番号1又は3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、前記した配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
【0028】
配列番号1又は3に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1又は3に記載の塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J.Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19~40mM、好ましくは約19~20mMで、温度が約50~70℃、好ましくは約60~65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
【0029】
また、本発明のポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質を産生している細胞・組織よりtotalRNA又はmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAであることが好ましい。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
【0031】
したがって、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する化合物としては、本発明のDNAの塩基配列に相補的な、又は実質的に相補的な塩基配列を含有するアンチセンスヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンスヌクレオチドともいう。)が挙げられる。本発明のアンチセンスヌクレオチドとしては、本発明のDNAの塩基配列に相補的な、又は実質的に相補的な塩基配列を含有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスヌクレオチドであってもよい。
【0032】
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。例えば、翻訳阻害を意図する場合には、本発明のタンパク質のN末端側の相補鎖を対象とすることができ、RNA分解を意図する場合には、イントロンを含む本発明のDNAの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスヌクレオチドがそれぞれ好適である。具体的には、配列番号1又は3に記載の塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な、若しくは実質的に相補的な塩基配列、又はその一部分を含有するアンチセンスヌクレオチド、好ましくは、配列番号1又は3に記載の塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補な塩基配列、又はその一部分を含有するアンチセンスヌクレオチドが挙げられる。アンチセンスヌクレオチドは通常、10~40個程度、好ましくは15~30個程度の塩基から構成される。なお、アンチセンスヌクレオチドには、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドに対して公知の化学修飾を施すことができるし、また、細胞膜の通過性を確保するための改変がされていてもよい。これらのアンチセンスヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0033】
本発明のアンチセンスヌクレオチドを上記のとおりの予防・治療剤として使用する場合、従来公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。また、例えば、前記のアンチセンスヌクレオチドを単独あるいはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、ヒト又は哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して神経損傷又は障害部位に到達させることが可能である。
【0034】
なお、上記アンチセンスヌクレオチドと同様に、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有するリボザイムなども、本発明の遺伝子の発現を抑制することができ、生体内における本発明で用いられるタンパク質又は本発明で用いられるDNAの機能を抑制することができるので、これらも神経障害の予防・治療剤などとして使用することができる。二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature,411巻,494頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。また、リボザイムも、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine,7巻,221頁,2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明のタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。上記の二重鎖RNA又はリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
【0035】
さらに、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現の抑制は、本発明のタンパク質をコードするDNAと同一又は類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNAinterferance(RNAi)によっても行うことができる。具体的には配列番号1又は3に記載の塩基配列又はこれと相同性の高い(少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは95%以上)塩基配列に対応する二本鎖RNAを用いることができる。
【0036】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現抑制作用を有する化合物は、本発明のDNA等を用い、あるいは本発明のタンパク質をコードする遺伝子が発現する細胞を用いて、試験化合物を本発明のタンパク質をコードする遺伝子が発現可能な系に添加して、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現状態を例えば、mRNA量あるいはその有無を測定するスクリーニングにより取得することができる。
【0037】
(2)ケラタン硫酸の生理活性阻害阻害作用を有する化合物又はその塩
本発明の神経障害の予防・治療剤は、ケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物又はその塩を含有することを特徴としている。
【0038】
こうした化合物として典型的には、ケラタン硫酸分解酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。ケラタン硫酸分解酵素活性を有するタンパク質としては、ケラタナーゼI(Keratan sulfate 1,4-β-D-galactanohydrolase)(Nakazawa, K., Suzuki, N. and Suzuki, S.: J. Biol. Chem., 250,905 (1975), Nakazawa, K., and Suzuki, S.: J. Biol. Chem., 250, 912 (1975)[Nakazawa, K.: Protein, Nucleic Acid and Enzyme, 30,40 (1985)])(生化学工業株式会社製)が挙げられる。 また、ケラタナーゼII(Keratan sulfate endo-β-N-acetylglycosaminidase)(Hashimoto, N., Morikawa, K., Kikuchi, H., Yoshida, K. and Tokuyasu, K.: Seikagaku, 60, 935 (1988) )(生化学工業株式会社製)が挙げられる。ケラタナーゼIは、Pseudomonas sp. IFO-13309の培養液から精製された酵素であり、ケラタン硫酸の硫酸化されていないガラクトースのβ-ガラクトシド結合を加水分解し、6位の硫酸化されたガラクトースには作用しない。また、ケラタナーゼIIは、Bacillus sp. Ks36に由来する酵素であり、ケラタン硫酸中のガラクトースに対する1,3-β-グルコサミニド結合を加水分解する。加水分解に際して、ケラタナーゼIIは、グルコサミンの6-O-の位置の硫酸基を必要とするが、グルコサミンに結合するガラクトースの6-O-の位置の硫酸基とは独立して作用する。本発明においては、好ましくはケラタナーゼIIである。
【0039】
また、こうした化合物の他の典型例としては、ケラタン硫酸を認識する抗体が挙げられる。ケラタン硫酸は細胞外マトリックス及び細胞表面の硫酸プロテオグリカンの構成成分であるので、ケラタン硫酸を認識する抗体を付与すること細胞外マトリックスの生成を有効に抑制することができる。ケラタン硫酸を認識する抗体は、上記した本発明のタンパク質又はその部分ペプチドを認識する抗体と同様、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を包含し、常法により調製することができる。また、こうした抗体は、例えば、ケラタン硫酸モノクローナル抗体(クローン:5D4、生化学工業株式会社製)として入手可能である。
【0040】
以上説明した本発明の神経障害の予防・治療剤は、いずれも常套手段に従って薬学上許容できる担体とともに製剤化することができる。
【0041】
(神経障害の予防・治療方法)
本発明によれば、本発明の神経障害の予防・治療剤を神経細胞損傷部位に投与する工程を含む、神経障害の予防又は治療方法が提供される。ケラタン硫酸の合成阻害作用若しくはケラタン硫酸の生理活性阻害作用を有する化合物又はその塩を細胞死などが生じた神経細胞損傷部位に投与することで、投与部位においてケラタン硫酸の合成が阻害され又は生理活性が阻害され、結果としてグリア性瘢痕の形成が抑制されて、神経軸索の伸長性が確保又は回復され、神経細胞死等によって生じる神経障害が予防、改善され、又は治癒する。
【0042】
(神経障害の診断剤)
本発明の抗体、本発明のポリヌクレオチド若しくはその一部、又は本発明のポリヌクレオチド若しくはその一部に実質的に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いることにより、ヒト又は動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)において神経細胞損傷後に神経障害が生じるか否か又は神経障害が生じやすいか否かの診断が可能となる。本発明のタンパク質(GlcNAc6ST-1活性を有するタンパク質)、本発明のポリヌクレオチドは、脳など神経が損傷を受けた部位においてグリア性瘢痕が形成されるとき、すなわち、ケラタン硫酸の生合成が引き起こされて反応性アストロサイト細胞の凝集が観察されるようなときにおいて発現される。したがって、これらは、グリア性瘢痕の形成マーカーとして用いることができ、神経の損傷部位において神経細胞再生後に神経障害が後遺症として残るかどうかの診断や神経障害の重症度の判定等を予測するためのマーカーとして用いることができる。
【0043】
以上のことから、本発明の抗体、ポリヌクレオチド若しくはその一部、又は本発明のポリヌクレオチド若しくはその一部に実質的に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを用いて、本発明のタンパク質等の検出の有無又はその検出量により神経障害の発生可能性が診断できる。本発明の診断剤を用いる診断方法においては、公知の免疫沈降法や公知のノーザンハイブリダイゼーションなどを用いることができる。また、診断剤に用いる本発明の抗体、ポリヌクレオチド及び相補的なポリヌクレオチド等は、蛍光等の適切なシグナルを発現可能に構成することができる。
【0044】
(神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法及びキット)
ケラタン硫酸は、神経障害の予防又は治療のための薬剤のスクリーニングに用いることができる。したがって、ケラタン硫酸を用いるスクリーニング方法及びケラタン硫酸を含むスクリーニングキットが提供される。例えば、ケラタン硫酸に対して種々の試験化合物を添加して、細胞外マトリックスの形成の程度を測定することで、ケラタン硫酸の生理活性を阻害する化合物やケラタン硫酸を分解するタンパク質を取得することができる。
【0045】
また、本発明のタンパク質及び部分ペプチドも、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物又はその塩のスクリーニングのための試薬として使用できる。したがって、本発明のタンパク質又は部分ペプチドを用いるスクリーニング方法及び本発明のタンパク質又は部分ペプチドを含むスクリーニングキットが提供される。例えば、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞のN-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素活性と、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞と試験化合物との混合物のN-アセチルグルコサミン6-O-硫酸転移酵素活性と、を比較する工程を有する、本発明のタンパク質の活性を調節(好ましくは阻害)する化合物又はその塩のスクリーニング方法が挙げられる。こうしたスクリーニング方法においては、いずれの場合においても、細胞を培養後、細胞を回収し、細胞破砕物を調製する。該細胞破砕物及び所定の基質を混合し、これらの酵素活性の阻害程度を公知の方法に準じて測定することができる。例えば、35SラベルPAPSをドナーに、GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcをアクセプターにして産物をカラムクロマトグラフィーで分離することで、この硫酸転移活性を測定できる(Uchimura et al., JouRNAl of Biological Chemistry 273, 22577-22583, 1998)。
【0046】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質若しくは部分ペプチドを産生する能力を有する細胞を含むことができる。スクリーニングで用いる本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、例えば、前述した本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)を用いることができる。宿主としては、特に限定しないで、マウス、ラット、アカゲザル、ヒトなどの動物細胞が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養することによって、本発明のタンパク質を細胞膜上に提示させるように発現させた形質転換体が好ましく用いられる。スクリーニングに用いる試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。
【0047】
また、本発明のタンパク質又は部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩のスクリーニングのための試薬として使用できる。したがって、本発明のタンパク質又は部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いるスクリーニング方法及び本発明のタンパク質又は部分ペプチドを含むスクリーニングキットが提供される。例えば、こうしたポリヌクレオチドであるDNAを発現可能に保持する形質転換細胞において本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現量、具体的には、mRNA量又は当該タンパク質量を測定することにより、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物又はその塩をスクリーニングすることができる。なお、タンパク質量、酵素活性の測定や、mRNA量の測定は、いずれも公知の方法に準じて実施することができる。
【0048】
本発明のスクリーニング方法又はスクリーニング用キットを用いて得られる化合物又はその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物である。該化合物の塩としては、前記した本発明のペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0049】
(ノックアウト動物及びそれを用いた神経障害の予防・治療剤のスクリーニング方法)
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞及び本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物であって、該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる非ヒト哺乳動物を包含している。このノックアウト動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物又はその塩のスクリーニング方法を実施することができる。
【0050】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、若しくは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。また、非ヒト哺乳動物としては、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーを利用できる。
【0051】
ノックアウトDNAとしては、本発明のタンパク質をコードする内在性遺伝子のプロモーターの制御下にレポーター遺伝子を組み込むようなDNAコンストラクトを構築することができる。このようなDNAコンストラクトは、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することにより本遺伝子のエキソンの機能を破壊するように相同組換え用DNAコンストラクトを構築するか、あるいは前記プロモーターを単離した上、その下流にレポーター遺伝子を連結した相同組換え用DNAコンストラクトを構築してもよい。
【0052】
こうした相同組換え用DNAコンストラクトをES細胞や適当な時期の受精卵に導入し、これらの受容細胞を適切な仮親の子宮で妊娠を継続させて第1世代のノックアウト動物を得ることができる。これらの第1世代同士を交配して、ホモのノックアウト動物を得ることができる。なお、ES細胞や受精卵へのDNAコンストラクトの導入には、マイクロインジェクション、リポソーム、リン酸カルシウム法など従来公知の各種の方法から適切な方法を選択すればよい。
【0053】
上記ノックアウト動物に対して試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を阻害する化合物又はその塩のスクリーニングすることができる。このようなスクリーニング方法によれば、本発明のタンパク質をコードする内在性遺伝子の発現を抑制するようにプロモーター活性を阻害する化合物又はその塩を得ることができる。こうした化合物又はその塩は、神経障害の予防・治療剤として用いることができる。
【0054】
このように、本発明のノックアウト非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進又は阻害する化合物又はその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNAの発現不全又は過剰発現に起因する各種疾患の原因究明又は予防・治療剤の開発に大きく貢献することができる。
【実施例】
【0055】
本実施例は、GlcNAc6ST-1遺伝子(-/-)のノックアウトマウス(6週令、C57BL/6J)の脳に損傷を形成し、この損傷の治癒経過とケラタン硫酸などのグリコサミノグリカン、アストロサイト、コラーゲンの発現とを観察したものである。なお、ノックアウトマウスは、J. Biol. Chem. 279, 35001-35008に記載の方法により作製した。図1に示すように、アクセッション番号AB125058によりGenBank(商標)/ENBL/DDBJにおいて取得できるGlcNAC6ST-1遺伝子の塩基配列情報に基づいてターゲッティングベクターを構築した。ターゲティングベクターは、GlcNAC6ST-1の3'-PAPS結合領域をネオマイシン耐性カセットで置換し、さらに、ジフテリトキシンフラグメントA遺伝子をネガティブマーカーとして保持するように構築した。このターゲティングベクターのScaI断片17μgを1×10のD3ES細胞(Doetschman, T. C., Eistetter, H., Katz, M., Schmidt, W., and Kelmers, R.(1985) J. Embryol. Exp. Morphol. 87-, 27-45)にエレクトロポレーションにより導入し、意図した相同組換がなされたES細胞を選択した。ES細胞の選択は、J. Biol. Chem. 277, 1443-1450に準じて行った。すなわち、ベクターの導入細胞をマイトマイシンC処理G418耐性SL-10細胞のフィーダーレイヤーに播種し、その24時間後にG418(250μg/ml、SIGMA)を添加し、7~8日後、G418耐性コロニーをピックアップし、増殖させて、サザーンブロットにより相同組換え確認した。プローブは、図1に示すAccI断片(0.5kb)を用いた。選択したES細胞を用いて常法に従いC57BL/6Jの成熟メスマウス由来のブラストシストを用いて、キメラマウスを作製した。作製したキメラマウスをC57BL/6Jマウスと交配して得られたF1世代同士を交配してGlcNAC6ST-1について-/-のマウスを得た。このヌルマウスをC57BL/6Jマウスと6世代以上戻し逆交配して、それぞれ遺伝的に純化させた。
【0056】
上記マウスを麻酔して定位フレームに固定し、スタブ傷(針による刺し傷)を内腔壁左側の大脳皮質に形成した。皮質の損傷は、ブレグマに対し1.2mm前方で1.0mm後方の位置とし、脳膜から1mmの深さとした。損傷は、針を、頭蓋骨にドリルを用いて形成した小さな孔部を介して脳に侵入させて形成した。なお、上記マウスの野生型マウスについても同様のスタブ傷を形成し、観察した。結果を図2~9に示す。なお、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、アストロサイト細胞、コラーゲンの発現は次の方法で確認した。
【0057】
(免疫組織化学的アッセイ:コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸、グリア繊維性産生タンパク質(アストロサイト細胞)、コラーゲンI)
ケラタン硫酸には、ケラタン硫酸を特異的に認識するモノクローナル抗体(ビオチン結合抗ケラタン硫酸抗体5D4,生化学工業株式会社製)を用い、コンドロイチン硫酸には、マウス抗コンドロイチン硫酸モノクローナル抗体(CS-56、SIGMA)を用い、アストロサイト細胞には(Cy3結合抗グリア繊維性酸性タンパク質、SIGMA)を用い、コラーゲンIには、ウサギ抗コラーゲンIポリクローナル抗体、CHEMICON)を用いた。
【0058】
ノックアウトマウス及び野生型マウスの脳は、クリオスタット上で5μm厚さにスライスし、スライドグラスにマウントした。切片は冷アセトンで5分間固定し、乾燥し、ケラタン硫酸用には、3%BSA及び5%マウス血清(10%)を含む0.1M PBS中でブロックし、その他の検出用については、1%BSA及び10%ヤギ血清(10%)を含む0.1M PBS中でブロックした。それぞれのブロッキング溶液中において、一次抗体(ビオチン結合抗ケラタン硫酸抗体5D4、1/100、生化学工業株式会社製;マウス抗コンドロイチン硫酸モノクローナルクローンCS-56、1/100、SIGMA;Cy3結合抗グリア繊維性酸性タンパク質、1/100、SIGMA、ウサギ抗コラーゲンIポリクローナル抗体、1/50、CHEMICON)と、4℃で一晩又は室温で1時間インキュベートした。洗浄後、二次抗体(Cy3又はCy2結合ストレプトアビジン、1/500、Jackson ImmnoResearch;FITCヤギ抗ウサギIgG抗体、1/100、XYMED;Cy3結合ヤギ抗マウスIgG抗体、1/200、Jackson ImmnoResearch;FITCヤギ抗ウサギIgG抗体、1/200、CAPPEL)と室温で30分インキュベートし、洗浄し、Flurosabe(Calbiochem)にマウントした。ラベルされた切片は、蛍光顕微鏡下で観察した。
【0059】
(BrdU注射及びBrdU染色:反応性アストロサイト細胞)
BrdU(SIGMA)を水に溶解して10mg/mlの水溶液を調製した。上記ノックアウトマウス及び野生型マウスに対して損傷付与後直ちに、そして、その後は、六日間以上にわたって毎日合計7回、50μg/g体重でBrdUを腹腔内に注射した。マウスは、損傷付与後から2日、4日、7日、10日及び14日後にと殺した。切片は上記と同様に調製し、スライドガラスにマウントした。BrdU染色にあたり、切片をPBSで洗浄し、その後2NHCl浴で45分間変性させた。さらに切片を、0.1Mホウ酸ナトリウムで中和し、PBSで洗浄した。その後、スライドグラスを1%BSA及び10%ヤギ血清(10%)を含む0.1M PBSで30分間ブロックし、マウス抗BrdU抗体(1/100、LAB VISION)と一晩インキュベートした。次の日、スライドを洗浄し、二次抗体(FITCヤギ抗マウスIgG抗体、1/100、SIGMA)とインキュベートした。インキュベート後は、上記と同様にして洗浄し、観察した。
【0060】
(グリコサミノグリカンの発現)
図2及び3には、ケラタン硫酸及びコンドロイチン硫酸の発現を抗体で検出した損傷部位の切片の画像を示す。図2に示すように、野生型マウスでは損傷付与から4日後、7日後及び10日後のいずれの段階においてもケラタン硫酸が発現していたのに対し、ノックアウトマウスでは、全く発現していなかった。また、図3に示すように、コンドロイチン硫酸は、損傷付与後7日後、野生型マウスでは損傷部位に集中して発現していのに対し、ノックアウトマウスでは野生型に比べてやや分散して損傷部位近傍に発現していた。
【0061】
(アストロサイト細胞の発現)
図4~図6には、それぞれ損傷付与から2日後、7日後及び10日後にアストロサイト細胞の発現をGFAP抗体により検出した損傷部位の切片画像を示す。また、図7には、損傷付与から10日後に、アストロサイト細胞の発現をGFAP抗体とBrdUとにより検出するとともに両者を合成した損傷部位の切片画像を示す。図4に示すように、損傷付与後から2日後、いずれのマウスにおいても、アストロサイト細胞が損傷部位の周囲に同等程度に発現していた。さらに、図5に示すように、7日後では、野生型マウスでは、アストロサイト細胞が損傷部位の中心に集合する傾向が観察されたが、ノックアウトマウスでは、そのような傾向は認められなかった。さらに、図6に示すように、10日後では、野生型マウスでは、アストロサイト細胞の損傷部位への集中傾向がより強く発現していたのに対し、ノックアウトマウスではそのような傾向は全く認められなかった。
【0062】
BrdUはDNAの構成成分であるデオキシヌクレオチドの類似体であり、細胞増殖でDNAの生合成が生じると、DNA中に取り込まれるので、細胞増殖のよい指標となる。図7によれば、GFAP陽性のアストロサイト細胞のサブポピュレーションがBrdU陽性であるので、これからの細胞がglial scar形成能を持ついわゆる反応性アストロサイト細胞であることがわかる。
【0063】
(コラーゲンの発現)
図8及び図9には、それぞれ、損傷付与から10日後及び14日後のコラーゲンの発現を抗コラーゲン抗体により検出した損傷部位の切片画像を示す。コラーゲンは、瘢痕形成のマーカーであり、細胞外マトリックスの構成要素であるコラーゲンIの検出により瘢痕の形成状況を確認した。図8及び図9に示すように、いずれの時期においても、野生型マウスでは、損傷部位に集中的にコラーゲンIを強く発現するのに対して、ノックアウトマウスでは、損傷部位特異的なコラーゲンIの発現は認められなかった。
【0064】
以上のことから、野生型マウスでは、ケラタン硫酸が損傷付与後ほぼ継続して損傷部位に集中しておいて発現するとともに、コンドロイチン硫酸及びアストロサイト細胞が損傷部位に集中して発現し、この結果、損傷部位に沿ってコラーゲンを含む細胞外マトリックスを含むグリア性瘢痕が形成されたことが示された。これに対し、ノックアウトマウスでは、損傷部位においてケラタン硫酸が発現されないこと、この結果、反応性アストロサイト細胞の集積及びコラーゲンIの集積が抑制され、グリア性瘢痕形成が抑制されることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】GlcNAc6ST-1ノックアウトマウス作製のためのターゲティングベクターの構築図である。
【図2】ケラタン硫酸の発現経緯を示す図である。
【図3】コンドロイチン硫酸の発現経緯を示す図である。
【図4】損傷付与から2日後のアストロサイトの発現を示す図である。
【図5】損傷付与から7日後のアストロサイトの発現を示す図である。
【図6】損傷付与から10日後のアストロサイトの発現を示す図である。
【図7】損傷付与から10日後のアストロサイトをGFAP抗体とBrdUとにより検出した図である。
【図8】損傷付与から10日後のコラーゲンの発現を示す図である。
【図9】損傷付与から14日後のコラーゲンの発現を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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