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明細書 :高スループット機能性評価方法、プログラム、及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4150761号 (P4150761)
公開番号 特開2006-223302 (P2006-223302A)
登録日 平成20年7月11日(2008.7.11)
発行日 平成20年9月17日(2008.9.17)
公開日 平成18年8月31日(2006.8.31)
発明の名称または考案の名称 高スループット機能性評価方法、プログラム、及び装置
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12N 15/00 C
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 29
出願番号 特願2006-013177 (P2006-013177)
出願日 平成18年1月20日(2006.1.20)
優先権出願番号 2005013508
優先日 平成17年1月21日(2005.1.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年7月2日(2007.7.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】水光 正仁
【氏名】福田 亘博
【氏名】窄野 昌信
【氏名】西山 和夫
【氏名】江藤 望
【氏名】榊原 陽一
【氏名】河原 聡
【氏名】山崎 正夫
【氏名】吉原 郁夫
【氏名】山森 一人
【氏名】永▲濱▼ 清子
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 特表2004-503256(JP,A)
特表2003-521226(JP,A)
特表2002-512367(JP,A)
特開2003-111597(JP,A)
国際公開第2004/027422(WO,A1)
特開2003-256407(JP,A)
国際公開第02/001477(WO,A1)
特開2002-355079(JP,A)
特開2003-310621(JP,A)
ILSI,2004年,No.80,pp.14-19
農林水産研究文献解題,2004年,Vol.30,pp.29-32
日本醸造協会誌,2000年,Vol.95, No.3,pp.157-163
日本食品科学工学会誌,2000年,Vol.47,pp.399-406
Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1999年,Vol.96,pp.2907-2912
日本食品科学工学会大会講演集,2004年,Vol.51,pp.18
J. Nutr.,2003年,Vol.133,pp.2073S-2077S
食品工業,2004年,Vol.47, No.7,pp.36-41
調査した分野 C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
G01N 33/00-33/98
BIOSIS(DIALOG)
WPI(DIALOG)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
計算機を用いて、生物資源由来の多成分系機能性未知材料の複合的な機能性を評価する方法であって、
(1)哺乳動物評価培養細胞に機能性既知材料を付与し、機能性既知試料を調製するステップと、
(2)機能性評価機能が異なる複数のバイオマーカーを備えた評価系に、機能性既知試料を付与し、機能性既知試料のバイオマーカー発現量を測定し、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との関係を対応付けたデータベースを作製するステップと、
(3)ステップ(2)で作製したデータベースにおける、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性知材料の機能性との関係をニューラルネットワークにより学習するステップと、
(4)哺乳動物評価培養細胞に機能性未知材料を付与し、機能性未知試料を調製するステップと、
(5)ステップ(2)の評価系と実質的に同一の評価系に、機能性未知試料を付与し、機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定するステップと、
(6)機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との関係の学習結果を汎化して、機能性未知試料のバイオマーカー発現量測定値に基づいて機能性未知材料の機能性値をニューラルネットワークにより推定するステップと、
(7)推定された機能性値に基づき機能性未知材料の少なくとも二つの機能性を併せて総合評価するステップと、
(8)総合評価結果を表示するステップと、
を含むことを特徴とする高スループット機能性評価方法。
【請求項2】
哺乳動物評価培養細胞がヒト由来培養細胞であることを特徴とする請求項1記載の高スループット機能性評価方法。
【請求項3】
データベースを作製するステップにおいて用いる機能性既知材料の機能性値が、個別評価系により測定された機能性値であることを特徴とする請求項記載の高スループット機能性評価方法。
【請求項4】
データベースを作製するステップにおいて、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との対応付けをした後、ブートストラップ法で増やすことを特徴とする請求項1記載の高スループット機能性評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高スループット機能性評価方法、特に食材のごとき多成分系材料の複合的生理活性を含む機能を一度に評価するのに好適な健康に係わる高スループット機能性評価方法、プログラム、及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、高スループット機能性評価方法あるいは装置として、種々の提案がなされている。例えば、特開2002-328124号公報は、生物系における改善された特性を有する化合物の組み合わせを系統的に選択する高スループットスクリーニング方法を開示している。特表2003-504011号公報は、生物学的または化学的アッセイの同時実施に有用な高スループットアッセイシステムを開示している。特表2003-509657号公報は、例えば共通成分である医薬の性質と、追加成分である賦形剤の性質との観点から評価し、最適組み合わせを選択する高ハイスループット試験を開示している。
【0003】
一方、吉川敏一ILSI[80]14(2004)は、食材の機能性に科学的根拠を与えることの手段として、Clydesdaleの提唱する(1)食材の疾病予防に関する疫学的研究、(2)適正なバイオマーカーの開発、(3)ヒト集団を利用した臨床的介入試験を挙げ、今後期待されるバイオマーカー探索手法を開示している。
【0004】
種々の材料、特に食材のような多成分系物質に関し、高スループットで総合的に評価する試験法及び装置は、前記各文献を含めて、現在までのところ本発明者らが知る限り知られていないし、実用化にもいたっていない。例えば、これまで実際に行われている食材の機能性の評価試験では、個々の食材含有成分から予想される薬理効果あるいは生理活性、健康維持、疾病予防及び治療機能について、個別的に試験するにとどまり、総合的な試験はなされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような被検材料の成分別、機能別個別試験方法では、多成分を含む食材の有する多岐にわたる機能性を総合的に評価することは困難である。殊に、同一条件で同時に測定された個別データでないかぎり、個々の異なる測定データをいくら集めても、信頼性の高い複合的機能、それらの相互作用の予測は不可能に近い。食材の評価として、モデル動物を用いたin vivo試験は広く行われているが、ヒトとモデル動物とでは蛋白質や酵素の働きが微妙に異なるので、モデル動物試験の結果をヒトにそのまま適用できるとは限らない。最終的にヒトによる臨床試験が必要であるにしても、食材の機能性スクリーニングの段階から、すべてにわたりヒト臨床試験を実施するのは、安全性、効率、費用の点から実際的ではない。
【0006】
本発明は、前記問題点を解消したもので、各種材料の特に健康機能性を多項目にわたり、高効率かつ高信頼性をもって評価する高スループット機能性評価方法を提供することを目的としている。
【0007】
また本発明は、前記問題点を解消したもので、中央演算装置を用いて、各種材料の健康機能性を多項目にわたり、高効率かつ高信頼性をもって評価する高スループット機能性評価方法を提供することを目的としている。
【0008】
さらに本発明は、コンピュータ上で動作し、各種材料の健康機能性を多項目にわたり、高効率かつ高信頼性をもって評価する高スループット機能性評価プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成した本発明に係る機能性評価方法は、機能性未知材料の機能性を評価する方法であって、下記の発明を含む。
[第1発明]
計算機を用いて、生物資源由来の多成分系機能性未知材料の複合的な機能性を評価する方法であって、
(1)哺乳動物評価培養細胞に機能性既知材料を付与し、機能性既知試料を調製するステップと、
(2)機能性評価機能が異なる複数のバイオマーカーを備えた評価系に、機能性既知試料を付与し、機能性既知試料のバイオマーカー発現量を測定し、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との関係を対応付けたデータベースを作製するステップと、
(3)ステップ(2)で作製したデータベースにおける、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性知材料の機能性との関係をニューラルネットワークにより学習するステップと、
(4)哺乳動物評価培養細胞に機能性未知材料を付与し、機能性未知試料を調製するステップと、
(5)ステップ(2)の評価系と実質的に同一の評価系に、機能性未知試料を付与し、機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定するステップと、
(6)機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との関係の学習結果を汎化して、機能性未知試料のバイオマーカー発現量測定値に基づいて機能性未知材料の機能性値をニューラルネットワークにより推定するステップと、
(7)推定された機能性値に基づき機能性未知材料の少なくとも二つの機能性を併せて総合評価するステップと、
(8)総合評価結果を表示するステップと、
を含むことを特徴とする高スループット機能性評価方法。
[第2発明]
哺乳動物評価培養細胞がヒト由来培養細胞であることを特徴とする[第1発明]記載の高スループット機能性評価方法。
[第3発明]
データベースを作製するステップにおいて用いる機能性既知材料の機能性値が、個別評価系により測定された機能性値であることを特徴とする[第発明]記載の高スループット機能性評価方法。
[第4発明]
データベースを作製するステップにおいて、機能性既知試料のバイオマーカー発現量測定値と機能性既知材料の機能性値との対応付けをした後、ブートストラップ法で増やすことを特徴とする[第1発明]記載の高スループット機能性評価方法。

【0010】
本明細書において、次の用語は下記の意味で用いる。
(1)機能性既知材料とは、何らかの方法で機能性が明らかになっている機能性材料であって、本発明の高スループット機能性評価方法又は装置に供し、対応付けモデルを作成するために使用する材料をいう。
(2)機能性既知試料とは、機能性既知材料を評価培養細胞に与えて発現したバイオマーカーの測定に供する試料をいう。
(3)機能性未知材料とは、本発明の高スループット機能性評価方法又は装置に供する機能性未知の材料をいう。
(4)機能性未知試料とは、機能性未知材料を評価培養細胞に与えて発現したバイオマーカーの測定に供する試料をいう。
(5)食材の機能性とは、食材の三次機能、すなわち体調調節機能を含む生理活性機能をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る機能性評価方法、プログラム、及び装置によれば、下記の利点がある。
(1)複数のバイオマーカーを用いて一度に試験することにより、被検材料が食材のごとき多成分系物質であっても、個々のバイオマーカーに対する応答性に加えて、被検材料の多機能を迅速かつ総合的に評価できる。例えば、抗酸化作用、抗変異原作用、アポトーシス誘導作用、ウイルス増殖抑制作用、がん細胞増殖抑制作用、免疫調節作用など、多項目の評価結果を組み合わせて、被検材料の機能性を総合評価できる。
(2)試験結果の総合評価に当たり、機能性既知材料と照合することにより、信頼性の高い判断を下すことができる。
(3)評価培養細胞としてヒト培養細胞を用いる場合は、動物実験によるin vivo試験とは異なり、ヒトを対象にした臨床試験にもっとも近いかたちでの安全で効率的な機能性の評価が可能になる。
(4)装置的にオートメーション化が容易であり、評価試験時間も大幅に短縮できる。
(5)機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性との対応付け、機能性未知試料のバイオマーカー発現量からその機能性の推定に、学習法、確率法、クラスタリング法の単独又は組み合わせを最適化して適用したプログラムにより、機能性未知材料の機能性の推定を信頼性高く、かつ効率的に実施できる。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005-013508号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述する。本発明を適用した機能性評価方法は、機能性未知材料を評価培養細胞に付与することで調製された機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定し、得られた測定値を処理して機能性未知材料の機能性を総合評価し、総合評価結果を表示或いは出力する方法である。本発明に係る機能性評価方法は、例えば、図1に示すフローシートに準じて実施することができる。本発明の機能性評価方法では、先ず評価培養細胞の培養し、その後、食材、医薬品、医薬品候補物質などからなる機能性未知材料を当該細胞へ付与する。次に、本発明の機能性評価方法では、細胞抽出物、細胞分泌物などからなる、機能性未知試料を調製し、例えば統合型イムノアッセイ等の方法により機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定する。そして、本発明の機能性評価方法では、測定したバイオマーカー発現量測定値を処理して(詳細は後述する)、機能性未知材料の機能性評価を行う。本発明に係る機能性評価方法においては、測定したバイオマーカー発現量測定値に基づいてデータベース中の機能性評価データと比較照合して、機能性未知材料の機能性を総合評価する。
【0013】
図1に示す評価培養細胞の培養段階において、好ましく使用することのできる評価培養細胞としては、Jurkat細胞、HL-60細胞、MOLT-4細胞、Huh-7細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、Caco-2細胞、HeLa細胞、MCF-7細胞、A431細胞、S1T細胞、Su9T01細胞、HUT101細胞、PLC/PRF-5細胞、Li90細胞、HUVEC細胞、HMEC細胞、HT17細胞、NIH-3T3細胞、3T3-L1細胞、MH134細胞、dRLh-84細胞、RLN-10細胞、PC12細胞、3Y1細胞などヒト、マウス、ラットなど哺乳動物由来細胞株、またはこれらの細胞株から派生する細胞株を挙げることができる。その中で、ヒト白血病由来細胞、ヒト肝がん由来細胞が特に望ましい。ヒト白血病由来細胞には、S1T細胞、Su9T01細胞、HUT101細胞、Jurkat細胞、HL-60細胞などを挙げることができる。ヒト肝がん由来細胞には、PLC/PRF-5細胞、Li90細胞、Huh-7細胞、HepG2細胞などを挙げることができる。
【0014】
培養条件としては、温度は37℃または通常の哺乳動物細胞が生育する温度とし、炭酸ガス濃度は5%または通常の哺乳動物細胞が生育する濃度が好ましい。酸化されやすい成分の場合は培養における酸素濃度を低くすることが望まれる。
【0015】
培地としては、D-MEM培地、MEM培地、RPMI1640培地、D-MEM/F-12培地、F-10培地、F-12培地、ERDF培地など、確立された哺乳動物細胞用培地、またはそれらを基本とした培地が好ましい。Jurkat細胞やHL-60細胞などヒト白血病由来細胞にはRPMI1640培地を、Huh-7細胞、HepG2細胞などヒト肝がん由来細胞にはD-MEM培地の使用が好適である。細胞の成長を促すためには、牛胎児血清を10%または通常の哺乳動物細胞が生育する濃度で添加してもよい。必要に応じて、非必須アミノ酸、サイトカイン(FGF,HGF,VEGF,インターロイキン-2など)を添加することもできる。ただし、血清で増殖が抑制される細胞株では無血清培養を使用する。
【0016】
培養には、使用する細胞に適した培他の選定に加えて、細胞数、細胞密度、細胞周期などの培養条件を選択するために、必要に応じて予備的な培養実験を実施することが推奨される。
【0017】
図1において、細胞への供与段階に使用する被検材料としては、食材、医薬品、医薬品候補物質など特に限定されないが、本発明は、農産物、林産物、畜産物、水産物等の生物資源およびそれらから調製された多成分系材料への適用で、優れた効果が期待できる。
【0018】
被検材料として使用する好ましい食材としては、ニガウリ、お茶、大豆、甘藷、エンドウ、小松菜、ほうれん草、白菜、キャベツ、レタス、たまねぎ、ピーマン、唐辛子、ミニトマト、なす、ズッキーニ、キュウリ、トウモロコシ、カボチャ、ニンジン、ゴボウ、大根、ブルーベリー、キンカン、日向夏、ヘベズ、マンゴー、ソヨミズ、ウメ、スペアミント、スウィートバジル、イタリアンパセリ、ローズマリー、ステビア、カモミール、シソ、クローバー、ニンニク、シイタケ、ヒラタケ、ナメコ、マイタケ、ハタケシメジ、エリンギ、エノキダケ、米、サトイモ、イチゴ、ミズナ、ニラ、メロン、ペパーミント、レモンバームなど、及びこれらの食材の可食部に加え、葉、種子も含む。また、牛肉、牛乳、豚肉、鶏肉、卵などの動物資源、及びケフィア、ヨーグルト、納豆などの発酵食材、海産物、健康への効果が期待できる茶のような嗜好品を挙げることができる。
【0019】
食材中の好ましい被検材料としては、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート(EGCG)などを含むカテキン類、ダイゼイン、ダイジン、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、フォルモノネチンなどを含むイソフラボン類、シアニジン、ペラルゴニジン、デルフィニジンなどを含むアントシアニン類、ケルセチン、ミリセチン、ルチン、レスベラトロール、ケンフェロール、セサミン、クルクミン、リモニン、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)、アスタキサンチン、ガランギン、シトラール、トリゴネリン塩酸塩、エラグ酸、キナ酸、サポニン、カプサイシン、ハイドロコルチゾン、オレイン酸、ベンジルイソチオシアネート、マンギフェリン、アピゲニン、ルテオリン、クロロゲン酸、リモネン、スクアレン、レチノール、ロズマリン酸、カフェ酸、リポ酸などの化学物資、カロテノイド類、アラキドン酸、リノレン酸などを含む多価不飽和脂肪酸、9c11tCLA、10t12cCLAなどを含む共役リノール酸類、その他リバビリン、インターフェロン類など多様な化合物を挙げることができる。エピガロカテキンガレート、ゲニステイン、リポ酸など健康への効果が期待できるものは、特に好ましい。
【0020】
被検材料の調製に際しては、生物資源、例えば食材、その凍結乾燥物などから抽出物を評価培養細胞に供与する。抽出溶媒には、水、エタノール、メタノール、酢酸エチル、ヘキサン、アセトン、あるいはこれらの二つ以上を混合した溶媒等を好適に用いる。抽出物は、必要に応じて、さらに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、 オープンカラム等により分画、精製してもよい。
【0021】
抽出物と細胞を作用させる混合時間は、作用開始時を0時間とし、1時間、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、72時間などから検討する。24時間以内で機能性を判定できる場合には、それ以上作用させるには及ばない。
【0022】
細胞へ供与する抽出物の濃度は、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、3μM、4μM、5μM、7μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、40μM、45μM、50μM、70μM、100μM、200μM、300μM、500μM、1000μMおよびこれらの濃度の1000倍および1/1000倍の濃度の中から、被検材料および評価培養細胞に適した濃度を選定する。通常、0.5μMから1000μMの範囲が望ましい。さらに抽出物が、食材抽出物などのようにその濃度が不明な場合には、段階希釈法にて最適な実験結果が得られる濃度を決定してもよい。酸性または塩基性抽出物の場合は、中和してから添加するのが望ましい。
【0023】
図1における被検試料の調製段階では、食材などからの抽出物を供した評価培養細胞が応答した後、浮遊細胞の場合は、遠心分離により細胞と細胞分泌物を分離する。接着細胞の場合は、ピペット操作で細胞と細胞分泌物を分離し、細胞分泌物はそのまま被検試料とする。必要に応じて、細胞破砕物は密度勾配遠心、連続遠心などにより、核、ミトコンドリア、小胞体などの特定の細胞小器官を採取し、さらなる細胞小器官抽出物としたものも被検試料とすることもある。細胞の破砕は、細胞破砕装置、例えばテフロン(登録商標)ホモジナイザー、ダウンスホモジナイザー、ポリトロンタイプホモジナイザー、超音波破砕装置、ビーズ破砕装置などによる破砕、または界面活性剤、例えばTriton X-100、Triton X-114、NP-40、CHAPS、SB3-10、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸、CA-630、Tween20などによる破砕、または細胞破砕装置と界面活性剤の併用による破砕から、任意に選択すればよい。必要に応じて、EDTA等のキレート剤を加えても良い。破砕の後は、遠心分離装置により細胞抽出物および残さに分離し、細胞抽出物を被検試料とする。
【0024】
図1における統合型イムノアッセイ段階では、イムノアッセイを基盤としたバイオマーカーに特異的な抗体を使用する。好適には、バイオマーカーとの抗原抗体反応を利用する。イムノアッセイには、ELISA、ウエスタンブロッティング、抗体チップ(抗体アレイ)、ビーズアレイ、イムノクロマトなどを利用する。代表的なイムノアッセイであるELISAとしては石川栄治ほか、編「酵素免疫測定法 第3版」医学書院、東京、1987に記載された方法が挙げられる。ウエスタンブロッティングとしては高津聖志ほか、編「タンパク質研究のための抗体実験マニュアル」羊土社、東京、2004に記載された方法が挙げられる。イムノクロマトとしてはZuk RF,Ginsberg VK,Houts T,Rabbie J,Merrick H,Ullman EF,Fischer MM,SiztoCC,Stiso SN,Litman DJ.Enzyme imunochromatography:a quantitative immunoassay requiring noinstrumentation.Clin Chem.1985 Jul;31(7):1144-50に記載された方法が挙げられる。バイオマーカーとして、ELISAの場合は、マイクロプレート上での特異的抗体による検出を行う。マイクロプレートには、6,12,24,48,96,384、及び1536ウエルのプレートなどがあるが、96ウエルが一般的である。ウエスタンブロッティングの場合は、膜上で特異的抗体による検出を行う。膜には、PVDF膜、ニトロセルロース膜などを使用できる。

【0025】
同様に、イムノアッセイに抗体チップ(抗体アレイ)を用いる場合は、PVDF膜、ニトロセルロース膜などの膜、スライドグラスあるいは類似の基盤上で、特異的抗体による検出を行う。ビーズアレイの場合はビーズ上で、イムノクロマトの場合はスティック上で、特異的抗体による検出を行う。検出は、抗体(一次抗体、二次抗体)に標識した酵素の反応による発色法、化学発光法、化学蛍光法や抗体に直接蛍光色素を標識した蛍光法があり、簡便な発色法や感度が高く定量性の良い化学発光法が望ましい。酵素には、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼの使用が好適である。
【0026】
イムノアッセイとしては、多数の試料の同時解析、定量解析、分析装置の価格などを考慮した場合、ELISA法を用いることが特に好ましい。
【0027】
図1に示す機能性評価段階における評価の主たる機能性は、健康に関する機能性である。健康に関する機能性は、評価目的により異なるので必ずしも特定はできないが、食材の場合、抗酸化作用、抗変異原作用、アポトーシス誘導作用、がん細胞転移抑制作用、がん細胞増殖抑制作用、抗ストレス作用、免疫調節作用、抗ウイルス作用、ウイルス増殖抑制作用、動脈硬化抑制作用、血清脂質改善作用、高血圧予防作用、抗炎症作用、抗肥満など多様な機能を挙げることができる。特に、抗酸化作用、アポトーシス誘導作用、がん細胞増殖抑制作用など、がんの予防に関連する機能性の評価が期待されている。
【0028】
機能性評価に適用するバイオマーカーとしては、抗酸化作用、抗変異原作用、アポトーシス誘導作用、がん細胞増殖抑制作用、抗ストレス作用、免疫調節作用、抗ウイルス作用、ウイルス増殖抑制作用などの各機能性に関係がある蛋白質を挙げることが出来る。さらに、機能性に関わりその発現量が変化するバイオマーカーとともに、発現量がほとんど変化しないハウスキーピングタンパク質(G6PDH、GAPDH、actinなど)をコントロールマーカーとして取扱い、これらを含めてバイオマーカーとするのが望ましい。例えば、表1に示すタンパク質がこれらのバイオマーカー候補となり得る。
【0029】
【表1】
JP0004150761B2_000002t.gif

【0030】
バイオマーカーは、文献および公開データベース上の公知情報、プロテオーム解析、DNAマイクロアレイ(DNAチップ)解析などの解析結果から選定することができる。公開データベースには、米国生物工学情報センター(NCBI)にあるPubMedを使用して検索できるデータベースおよびインターネットを通じて検索できるデータベースを挙げることができる。
【0031】
プロテオーム解析は、IPGストリップを使用した1次元目等電点電気泳動、2次元目SDS-PAGEによる2次元電気泳動、電気泳動パターンの色素染色によるイメージ解析、タンパク質スポットの質量分析装置による解析及び同定により行うことができる。特に、定量性にすぐれた蛍光色素によるプレラベル標識による蛍光ディファレンシャル解析が望ましい。
【0032】
DNAマイクロアレイ(DNAチップ)解析は、市販のDNAマイクロアレイ(DNAチップ)例えば、GeneChipプローブアレイ(Affymetrix社)、CodeLink Bioarraay(アマシャム・バイオサイエンス社)およびこれらに類するものを使用することが出来るが、GeneChipプローブアレイ(Affymetrix社)を使用することが好ましい。
【0033】
本発明に適用する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、リコンビナント抗体のいずれもバイオマーカーに対する特異性があれば使用可能であるが、モノクローナル抗体の使用が好ましい。モノクローナル抗体は、実験動物としてマウスを使用してバイオマーカーに対する抗原を免役した後、Galfre,G.,Milstein,C.Preparation of monoclonal antibodies:stratebies and procsdures,Methods Enzymol.1981;73(Pt B):3-46.に記載された方法により調製する。抗原には、精製タンパク質、リコンビナントタンパク質、合成ペプチドなどを使用できる。
【0034】
また抗体としては、市販されているものであっても、バイオマーカーに対する特異性があれば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、リコンビナント抗体のいずれの抗体も使用可能である。
【0035】
図1における最終段階としての機能性総合評価の一つは、機能性既知試料を評価して得られたバイオマーカー発現量を格納したデータベースと、機能性未知試料のバイオマーカー発現量との直接的な比較により行う方法である。具体的には、機能性未知試料のバイオマーカー発現量のパターンと一致或いは類似する、データベースに格納された機能性既知試料のバイオマーカー発現量のパターンを検索する。バイオマーカー発現量のパターンが一致或いは類似する場合には、機能性未知材料と機能性既知材料とが機能的に類似していると評価することができる。この評価によって、機能性未知材料について、抗酸化作用、抗変異原作用、アポトーシス誘導作用、がん細胞増殖抑制作用、抗ストレス作用、免疫調節作用、抗ウイルス作用、ウイルス増殖抑制作用などの機能性およびこれらの機能性の組み合わせを推定できる。
なお、ここで、バイオマーカー発現量としては、上述した手法により測定された測定値をそのまま使用してもよいが、測定値を補正した補正値を使用しても良い。例えば、測定値を規格化した後の値をバイオマーカー発現量として使用しても良いし、複数の測定値の平均値をバイオマーカー発現量として使用しても良い。
【0036】
この場合、図1のデータベースには、in vivoおよび評価培養細胞系で機能性が確認されている機能性既知材料のデータを蓄積する。データ取得には、in vivoおよび培養細胞系で機能性が確認されている機能性既知材料を評価培養細胞に供与して、機能性既知材料に応答した細胞抽出物及び/または分泌物を得、得られた細胞抽出物及び/または分泌物を被検試料として、イムノアッセイによるバイオマーカー発現量を測定する。
【0037】
図1における機能性総合評価の他の方法には、機能性既知試料のバイオマーカー発現量とその機能性を対応付けしたデータベースを用い、機能性未知試料のバイオマーカー発現量から、機能性未知材料の機能性を推定する方法がある。例えば、前述のように機能性既知試料のバイオマーカー発現量を測定するとともに、この機能性既知材料の機能性を個別評価系により測定し、両測定値を対応付けたデータベースを作成する。次に、機能性未知の食材または食材成分を評価培養細胞に供与して、機能性未知材料に応答した細胞抽出物及び/または分泌物を得、得られた細胞抽出物及び/または分泌物を被検試料とし、イムノアッセイによりバイオマーカーの発現量に関するデータを得る。前記対応付けされたデータベースを用い、得られた機能性未知試料のバイオマーカー発現量から、機能性未知材料の機能性を推定する。この推定には、多変量解析によるデータベースの分類、統計処理を行う。具体的には、学習法、確率法、クラスタリング法などを挙げることができる。
【0038】
本発明においては、健康に関するポジティブな機能性に加えて、副作用や毒性のごときネガティブ機能性に関しても、バイオマーカーの変化の方向、組合せなどから、総合的に判定できるようにするのが望ましい。それにより、食材、医薬品、医薬品候補物質のポジティブな機能性だけでなく、ネガティブな機能性も併せて評価することができる。
【0039】
本発明における機能性既知材料の機能性データには、公知の個別評価系による機能性測定結果を利用することもできる。機能性測定法としては、レプリコンアッセイ、TCID50法などの抗ウイルス作用、MTTアッセイ、WST8アッセイなどのがん細胞増殖抑制作用、DPPHラジカル消去活性測定、レポータージーンアッセイなどの抗酸化作用、硫酸転移酵素を用いたAmes変法、Ames法、小核試験法、Recアッセイなどの抗変異原性、コルチコステロン、GOT試験などの抗ストレス作用、TUNEL法、ANNEXIN V法、DNAラダー法、カスパーゼ活性測定法などのアポトーシスアッセイ等を利用することができる。
【0040】
図2は、本発明の機能性評価方法を実行するためのコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。図2において、計算機21は入出力インターフェース21a、中央演算装置21b、主記憶装置21cを備えている。入出力インターフェース21aには計算機21が他のコンピュータシステム(図示せず)と通信回線を介してデータ、プログラムを交換するためのネットワーク装置22が接続されている。また、入出力インターフェース21aには、入力装置であるキーボード23およびマウス24と、出力装置であるモニタ25およびプリンタ26が接続されている。さらに、入出力インターフェース11aには、ハードディスク、フラッシュメモリ、磁気テープ装置、光磁気ディスク装置等の補助記憶装置17が接続されていてもよい。
なお以下に図2に示す計算機を用いる例を具体的に説明するが、本発明の方法の実施形態は以下の具体例には限定されず、例えば計算機に代えて集積回路搭載装置またはチップを用いて実施することも可能である。
【0041】
中央演算装置21bは、コンピュータシステムを制御・統括すると同時に、機能性既知試料のバイオマーカー発現量とその機能性値間の学習と汎化、各機能性既知材料と機能性未知材料間の類似度合い(バイオマーカー発現確率)に基づく機能性未知材料の機能性値の導出、機能性既知試料のバイオマーカー発現量のクラスタリング及び各クラスと機能性値間の対応付けを行う。中央演算装置21bによる一時的、または最終的な演算結果は、たとえばDRAMからなる主記憶装置21cまたは補助記憶装置27に記録される。主記憶装置21cにはコンピュータシステムを制御するプログラムも格納する。
【0042】
演算に用いられるデータ、およびコンピュータシステムを制御するコマンドは、キーボード23またはマウス24を通じてコンピュータシステムに入力することができる。これらのデータおよびコマンドはネットワーク装置22を通じて接続されている他のコンピュータシステム(図示せず)を介して入力することもできる。
【0043】
機能性未知材料が持つ機能性の推定結果は、モニタ25またはプリンタ26に表示することができる。これらの結果は、ネットワーク装置22を通じて接続している他のコンピュータシステム(図示せず)を通じて出力することもできる。
【0044】
図2のコンピュータシステム21において、学習法により機能性未知材料の機能性を推定する手順は、およそ以下の通りである。すなわち、入力手段を介して入力された機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値は不揮発性記憶である補助記憶装置27に格納されており、これらを一旦主記憶装置21cに格納する。次に中央演算装置21bにより機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値間の関係を学習する。学習により獲得されたバイオマーカー発現量と機能性値間の関係は、主記憶装置21cまたは補助記憶装置27に格納される。機能性未知試料のバイオマーカー発現量が入力手段を介して入力されたとき、中央演算装置21bは主記憶装置11cまたは補助記憶装置27に格納された機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値の関係から機能性未知材料の機能性値を推定し出力装置を介して出力する。
【0045】
図3は、学習法を用いるときの本発明の好適な機能性推定法を示すフローシートである。学習法による本発明実施は、機能性既知試料の調製を行うステップ1、機能性既知試料からバイオマーカー発現量を測定するステップ2、該機能性既知材料の機能性値を測定するステップ3、バイオマーカー発現量と機能性値の関係を学習するステップ4、機能性未知試料の調製を行うステップ5、機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定するステップ6、機能性既知材料の学習結果を汎化して機能性未知材料の機能性値を推定するステップ7、推定された機能性値を総合評価し判定しやすい形態に加工するステップ8、総合評価結果を表示するステップ9からなる。
【0046】
図4は、学習をニューラルネットワークで行う方法を示す。図4においては、補助記憶装置27に格納されている機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値を主記憶装置21cに読み込んだのち、バイオマーカー発現量を入力信号、機能性値を教師信号とした学習サンプルとし、階層型ニューラルネットワーク上で誤差逆伝播学習法により、ニューラルネットワークの出力と機能性値間の誤差が極小となるように重み42を調節する。ニューラルネットワークおよび誤差逆伝播学習法には、P.H.Winston、Artificial Intelligence Third Edition、Addison Wesley、1992に記載された方法を挙げることができる。
【0047】
バイオマーカー発現量と機能性値の組み合わせからなる学習サンプル数は、使用するニューラルネットワークの規模に比べて、学習サンプル数が相対的に少ない場合には、ブートストラップ法(石井健一郎、上田修功、前田英作、村瀬洋、パターン認識、オーム社、1998)を用いることにより、その数を適宜増やすことができる。
【0048】
機能性未知材料の機能性値の推定値は、機能性未知試料のバイオマーカー発現量がニューラルネットワークに入力されたとき、ニューラルネットワーク上に記憶された機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値の関係を汎化して求める。
【0049】
機能性の推定値は、図2のモニタ装置25、プリンタ26、またはネットワークを介して接続した他のコンピュータ(図示せず)上に表示する。
【0050】
図2のコンピュータシステム21において、確率法により機能性未知材料の機能性を推定する手順は、おおよそ以下の通りである。入力手段を介して入力された機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値は、不揮発性記憶である補助記憶装置27に格納されており、これらを一旦主記憶装置21cに格納する。次に中央演算装置21bにより、機能性既知試料におけるバイオマーカー発現確率を表す確率密度関数を求める。求められた確率密度関数は、主記憶装置21cまたは補助記憶装置27に格納される。機能性未知試料のバイオマーカー発現量が入力手段を介して入力されたとき、中央演算装置21bは主記憶装置11cまたは補助記憶装置27に格納された確率密度関数から、機能性既知材料と機能性未知材料との類似度合い(確率)を求め、類似度合い(確率)から関数fにより機能性未知材料の機能性値を推定し、出力装置を介して出力する。
【0051】
次に、バイオマーカー発現量と機能性値との関係を確率的事象として捉え、バイオマーカー発現量から特定の機能性値が生じる確率を求める場合について説明する。
【0052】
図5は、確率法を用いるときの本発明の好適な機能性推定法を示すフローシートである。本発明による確率法での実施は、機能性既知試料の調製を行うステップ1、調製した機能性既知試料からバイオマーカー発現量を測定するステップ2、該機能性既知材料の機能性値を測定するステップ3、各機能性既知試料のバイオマーカー発現確率を表す確率密度関数を求めるステップ4、機能性未知試料の調製を行うステップ5、調製された機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定するステップ6、ステップ4で求めた確率密度関数に基づき各機能性既知材料と機能性未知材料間の類似度合い(確率)を求めるステップ7、ステップ7で求めた類似度合い(確率)に基づき機能性値を総合評価するステップ8、評価結果を表示するステップ9のステップからなる。
【0053】
図5のステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ5、ステップ6は、ニューラルネットワークを用いるときと同様に実施することができる。
【0054】
図5のステップ4において、各機能性既知試料のバイオマーカー発現確率を表す確率密度関数を求める方法としてParzen識別器(鳥脇純一郎、認識工学、コロナ社、1993)が利用できる。
【0055】
各機能性既知材料と機能性未知材料との類似度合い(確率)を求める方法としてベイズ推定法(石井健一郎、上田修功、前田英作、村瀬洋、パターン認識、オーム社、1998)を用いることができる。機能性未知材料の機能性値を推定する関数fには、各機能性既知材料の機能性値を上記類似度合い(確率)で補完する関数を用いることができる。
【0056】
機能性値を評価した結果は、図2のモニタ装置25、プリンタ26、またはネットワークを介して接続した他のコンピュータ(図示せず)上に表示する。
【0057】
コンピュータシステム21においてクラスタリング法により機能性未知材料の機能性を推定する手順は、およそ以下の通りである。すなわち、入力手段を介して入力された機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性値は不揮発性記憶である補助記憶装置27に格納されており、これらを一旦主記憶装置21cに格納する。次に中央演算装置21bにより機能性既知試料のバイオマーカー発現量を複数のクラスに分割し、各クラスに機能性値を対応付けたデータセットを主記憶装置21cまたは補助記憶装置27に格納する。機能性未知試料のバイオマーカー発現量が入力手段を介して入力されたとき、バイオマーカー発現量が属するクラスを決定し、決定されたクラスに対応付けられた機能性値を出力装置に出力する。
【0058】
バイオマーカー発現量をクラスタリングし、そのクラスから機能性を推定する場合について説明する。
【0059】
図6は、クラスタリング法を用いるときの本発明の好適な機能性推定法を示すフローシートである。本発明は、機能性既知試料の調製を行うステップ1、調製した機能性既知試料からバイオマーカー発現量を測定するステップ2、調製した被検試料から機能性値を測定するステップ3、機能性既知試料のバイオマーカー発現量をクラスタリングして各クラスに機能性値を対応付けるステップ4、機能性未知試料の調製を行うステップ5、機能性未知試料のバイオマーカー発現量を測定するステップ6、測定したバイオマーカー発現量が属するクラスを決定するステップ7、決定されたクラスから機能性値を汎化・推定するステップ8、推定された機能性値から機能性を総合評価するステップ9、評価結果を表示するステップ10からなる。
【0060】
図6のステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ5、ステップ6は、ニューラルネットワークを用いるときと同様に実施することができる。
【0061】
図6のステップ4におけるバイオマーカー発現量のクラスタリングを行う方法として、マークM.ヴァン.フッレ、自己組織化マップ-理論・設計・応用、海文堂、2001に記載された自己組織化マップ法を用いることができる。
【0062】
機能性未知試料のバイオマーカー発現量から期待できる機能性を推定する方法としては、自己組織化マップの競合ノードが持つ重みと機能性未知試料のバイオマーカー発現量との間のユークリッド距離を用いることができる。
【0063】
機能性未知試料のバイオマーカー発現量から期待できる機能性を推定する方法としては、機能性未知試料のバイオマーカー発現量に対応する自己組織化マップの競合ノードの座標と、機能性既知試料に対応する自己組織化マップの競合ノード座標との間のマンハッタン距離を用いることができる。
【0064】
機能性未知試料のバイオマーカー発現量から期待できる機能性値を推定するとき、そのバイオマーカー発現量が機能性既知試料から作成した学習サンプルと一致していない場合には、機能性未知試料のバイオマーカー発現量に対応する自己組織化マップ上の競合ノードと、その近傍に位置する競合ノードとの距離に基づいて、機能性未知材料の機能性値を関数fにより推定する。関数fとして、近傍ノードが持つ重みを含む重み空間上の超平面の傾きから機能性値を補間推定する関数を用いることができる。
【0065】
機能性値の推定値は、図2のモニタ装置25、プリンタ26、またはネットワークを介して接続した他のコンピュータ(図示せず)上に表示する。
【実施例1】
【0066】
(機能性既知試料のバイオマーカー発現量と機能性未知試料のバイオマーカー発現量を直接対比して、機能性未知材料の機能性を総合評価する例)
評価培養細胞としてヒトT細胞白血病細胞株Jurkat細胞を用いた。細胞はRPMI1640培地に10%FBSを加えた培地で37℃、5%COの条件で培養した。機能性既知材料として、食材成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)(30μM)を使用し、機能性未知材料としては、ゲニステイン(3μM)、リポ酸(1mM)を使用した。各試験濃度の成分を細胞培地に供し、24時間細胞に各材料を作用させた後細胞を回収し、細胞抽出物を得、それをバイオマーカー被検試料とした。被検試料は、まずSDS-PAGEにより電気泳動を行い、タンパク質を分離し、その後PVDF膜に転写した。膜は5%スキムミルクを含むPBSでブロッキングし、その後各バイオマーカーに特異的な抗体を一次抗体として作用し、ついで西洋わさびパーオキシダーゼ(HRP)ラベルした抗マウスIgGを二次抗体として作用した。検出は、ECL plusを基質としてHRPの酵素活性により生じた化学発光をイメージアナライザーLAS-1000にて解析した。
【0067】
機能性未知試料の分析に用いたバイオマーカー候補としては、アポトーシス誘導作用に関連するマーカー(Bcl-2、PARP、DFF45、FADD、CAS)、がん細胞増殖抑制関連マーカー(RB、RB2)、ストレス関連マーカー(Hsp-70、Hsp-90)を使用し、その発現量を比較した。シグナル強度として得られた各バイオマーカー発現量のデータを標準化するために、それぞれのシグナル強度をBcl-2のシグナル強度で除し、単位Bcl-2発現量当たりのバイオマーカー発現量とした。さらに、これらの値を被検材料を作用させなかった細胞より調製した被検試料をコントロールとし、コントロールの発現量を1としたときの相対的な発現量で数値化した。
【0068】
一方、機能性既知材料としては、アポトーシス誘導作用、抗がん作用、抗アレルギー作用の機能性を持つことが証明されているエピガロカテキンガレート(EGCG)を使用し、機能性未知材料であるゲニステインおよびリポ酸の機能性の評価を行った。
【0069】
結果を表2、図7および図8に示した。図7および8において数字1~8はそれぞれ次のマーカー蛋白質に対応する。1:Hsp70、2:Hsp90、3:DFF45、4:FADD、5:CAS、6:PARP、7:RB、8:RB2。図7は、Jurkat細胞のバイオマーカー発現パターンに与えるEGCGおよびゲニステインの影響を示す。機能性未知材料としてのゲニステインを、機能性既知材料であるEGCGと、1:Hsp70、7:RB、8:RB2に関してのみ比較した場合には、コントロールと比較してEGCGは7:RB、8:RB2の発現量が1/2程度に減少しているが、ゲニステインではあまり変化していない。しかし1:Hsp70に関しては、コントロールと比較して発現量がEGCGとゲニステインでほとんど変化していない。
【0070】
【表2】
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【0071】
【表3】
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【0072】
図8は、Jurkat細胞のバイオマーカー発現パターンに与えるEGCGおよびリポ酸の影響を示す。機能性未知材料としてのリポ酸を機能性既知材料であるEGCGと1:Hsp70、7:RB、8:RB2に関してのみ比較した場合、コントロールと比較して3つのバイオマーカーの発現量の変化がEGCGとリポ酸でほぼ一致している。これまでに示したように、1:Hsp70、7:RB、8:RB2の3つのバイオマーカーの発現パターンのみを比較した場合、リポ酸はEGCG型の機能性を持つことが予測され、ゲニステインは異なるタイプの機能性を持つことが予想される、という判定となる。
【0073】
しかしながら、1:Hsp70、2:Hsp90、3:DFF45、4:FADD、5:CAS、6:PARP、7:RB、8:RB2とより多くのバイオマーカーの発現パターンを比較する場合、例えば、既知の有効成分であるEGCGのバイオマーカー発現パターンを基準パターンとし、ゲニステイン、リポ酸のEGCGとの類似性の解析には、以下のような2つの解析を用いることが例として挙げられる。
【0074】
表2に示したコントロールを1とした各バイオマーカーの値を用い、ゲニステインあるいはリポ酸とEGCGの差の平方和の平均値を求めると、ゲニステインは0.14、リポ酸は0.25となり0に近いゲニステインの方が、EGCGと類似性が高いと判断できる。また、この実施結果について、コントロール値に対して±10%以上の変化を示したものについて、発現量の増減があったものとし+あるいは-の符号を与え、±10%以内の変化については±の符号を与えた(表4)。そして、同符号を付した項目に+1点、異符号(+から-または-から+)の示した項目に-1点、その他の場合に0点を与え、EGCGのバイオマーカーを基準としたゲニステインとリポ酸の変動得点を求めた。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
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【0076】
たとえば、Hsp90の場合、EGCGでは発現が10%以上減少している。ゲニステインでは、EGCGの場合と同様に、Hsp90の発現が10%以上減少しているため、Hsp90の項目について+1点を与えた。それに対し、リポ酸の場合はHsp90の発現が10%以上増加しているため、この項目に-1点を与えている。今回の実施結果からは、ゲニステインについて0.625点、リポ酸について0.25点を得ることができた。この平均得点は-1から1の値をとる変数であり、1に近いほどEGCGによるものと同質の変動であると判断できる。したがって、本実施結果からも、ゲニステインによる変動の方が、EGCGと類似していると推定できる。
【0077】
このように、複数のバイオマーカーの発現パターンを、量と質の観点から数学的に解析することで、未知材料がもつ機能性を推定できる可能性が示された。これらの結果を総合的に評価すると、EGCG、ゲニステイン、リポ酸はともにアポトーシスを誘導することが以前から知られていたが、これに加えてEGCGと類似のバイオマーカー発現パターンを示したゲニステインは、EGCG同様に抗がん作用、抗アレルギー作用を持つ可能性が示されたこととなる。リポ酸に関しては、より大きなデータベースを準備すれば、その中より類似のバイオマーカー発現パターンを示す機能性既知材料の分析結果より、その機能性を評価できると考えることが出来る。これらの実施結果は、少数のバイオマーカーの解析のみからでは予測不可能であった機能性を多数のバイオマーカーの解析とパターン比較により正確に予測できる可能性を示すものである。好ましいバイオマーカーの数は、少なくとも4である。
【実施例2】
【0078】
(機能性既知試料のバイオマーカー発現量とその機能性値との学習結果により、機能性未知試料のバイオマーカー発現量から機能性未知材料の機能性値を推定し、総合評価する例)
バイオマーカー発現量測定及びがん細胞増殖抑制試験(個別評価系)の評価用細胞として、ヒトT細胞白血病細胞株Jurkat細胞を用いた。細胞は、10%牛胎児血清(FCS)含有PRMI1640培地を用いて、37℃、5% COガスで平衡化したCOインキュベータ内で培養した。対数増殖期にあるJurkat細胞を3×10cells/mlの細胞密度でプラスティックシャーレに接種し、次いで学習用の機能性既知材料及び機能性未知材料を添加した。
【0079】
学習用の機能性既知材料としては、EGCG、ゲニステイン、リポ酸、アラキドン酸、クルクミン、ダイゼイン、ケルセチン、シアニジン、レスベラトロール、トランス10シス12共役リノール酸(10t,12c-CLA)を用いた。これらの各化合物を表5に示す終濃度になるように細胞に添加した。機能性未知材料としては、カプサイシン及びブルーベリー葉抽出物を用いた。Jurkat細胞を24時間培養した後に、細胞を回収して4℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞数を計測した。これらの細胞数をコントロールの細胞数で除すことでがん細胞増殖抑制作用を示した。結果を表6に示す。
【0080】
【表5】
JP0004150761B2_000006t.gif

【0081】
【表6】
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【0082】
細胞数が1×10 cells/mlとなるように細胞溶解緩衝液(1 mM EDTA, 0.005% Tween20, 0.5% Triton X-100を含有するPBS)を加え、穏やかに撹拌した後にプロテアーゼ阻害剤を加え、その上清を被検試料とした。
【0083】
被検試料中に含まれる各バイオマーカー量の測定は、ELISAによって行った。バイオマーカーとしては、thioredoxin, survivin, heat shock protein 70(HSP70), X-linked inhibitor of apoptosis protein(XIAP), Fas-associated death domain protein(FADD), thioredoxin reductase 1(TXNRD1), heat shock protein 90(HSP90), IFN-inducible antiviral protein Mx(MxA), tumor-associated hydroquinone oxidase(tNOX)の9種類について測定した。またサンプルを標準化する際に用いるglycelaldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)についても測定した。
【0084】
一例として、thioredoxinの測定について説明する。以下の操作の温度は全て37℃で行った。抗ヒトthioredoxinマウス抗体(500 ng/ml:50 mM炭酸緩衝液、pH9.6)を96穴マイクロプレートの各穴に100μlずつ添加し、2時間静置してプレートに固定化した。0.05% Tween20含有PBS(TPBS)で各穴を1回洗浄した後、1% BSA含有PBSを各穴に300μlずつ添加し、2時間静置しブロッキングを行った。各穴をTPBSで3回洗浄した後、10倍に希釈した細胞抽出液を各穴に100μlずつ添加し、2時間反応させた。各穴をTPBSで3回洗浄した後、検出抗体として抗ヒトthioredoxinヤギ抗体(100 ng/ml:1% BSA含有PBS)を各穴に100μlずつ添加し、さらに1時間反応させた。各穴をTPBSで3回洗浄した後、二次抗体として西洋わさびパーオキシダーゼ(HRP)で標識されている抗ヤギIgGマウス抗体(200 ng/ml:1% BSA含有PBS)を100μl添加し、さらに1時間反応させた。最後にTPBSで4回洗浄して基質溶液{0.3 mg ABTS [p-2,2_-azino-bis-(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid) diammonium salt]と0.03% H含有0.1 Mクエン酸緩衝液, pH4}を100μlずつ添加し、10分間反応させ、405-490 nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。他のバイオマーカーについても概略は同様に行い、使用した抗体類の一覧を表7に示した。
【0085】
【表7】
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【0086】
吸光度として得られた各バイオマーカー発現量のデータを標準化するために、それぞれの吸光度をGAPDHの吸光度で除し、単位GAPDH発現量当たりのバイオマーカー発現量とした。さらに、これらの値をコントロール被検試料のバイオマーカー発現量で除すことで、試験群のバイオマーカー発現量をコントロールに対する相対値として得た。一例として、学習用既知材料をJurkat細胞に添加した際のバイオマーカー発現量を表8に示す。また機能性未知試料のバイオマーカー発現量を表9に示す。
【0087】
【表8】
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【0088】
【表9】
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【0089】
レプリコン細胞の調製:HCVのゲノムRNAは、ウイルス粒子を構成するコアとエンベロープの構造タンパク質翻訳領域、ウイルスゲノム複製などに機能する非構造タンパク質翻訳領域とに大別される。この構造タンパク質翻訳領域をルシフェラーゼ翻訳領域・EMCV IRES(脳心筋ウイルス内部リボゾーム結合配列)・ネオマイシン耐性遺伝子に置換したサブゲノムレプリコンRNAを作成し、得られたRNAをヒト肝がん細胞Huh-7の細胞質に導入する。サブゲノムレプリコンRNAが導入されたHuh-7は、同時にネオマイシン耐性能を有するので、Geneticin (G418)による選択が可能となる。このようにして得られた細胞を、HCVレプリコンRNAの産生量の評価に供試する。なお、HCVレプリコンRNAの産生量は下記に説明するルシフェラーゼアッセイ法により測定する。この細胞の継体には、DMEM10[GIBCO社のGlutaMAX Media Dulbecco_s Modified Eagle Medium (D-MEM)(1×),liquid (High glucose,contains sodium pyruvate)]にFBS(Hyclone社)10%、Penicillin-Streptomycin(GIBCO社)、およびGeneticin(invitrogen社)を添加した培地を用いる。アッセイを行なう際のアッセイ培地には、DMEM10にFBSを5%、およびPenicillin-Streptomycinを添加したもの(但し、Geneticinは加えない。)を用いる。
【0090】
ルシフェラーゼアッセイ法:マグネシウム存在下で、ルシフェリンとATPから酸化ルシフェリンとAMPを作る反応をルシフェラーゼが触媒する。ルシフェラーゼアッセイ法は、この時発生する光を発光検出器で検出して、得られた光量に基づいてルシフェラーゼ活性を評価する方法である。本発明では便宜上、この光量をHCVレプリコンRNA量とする。
【0091】
HCVレプリコンRNA産生抑制試験
白色の96wellプレートに被検細胞(レプリコン細胞)の懸濁液(2.5×10cells/ml)を90μlずつ加え、37℃、5%CO存在下、相対湿度100%の条件で24時間培養した。機能性未知材料として食材成分及び/または食材抽出物を調製した。機能性既知材料としては、EGCG、ゲニステイン、リポ酸、アラキドン酸、クルクミン、ダイゼイン、ケルセチン、シアニジン、レスベラトロール、10t,12c-CLAを用いた。表1記載の終濃度に従い上記96wellプレートに添加した。この後、さらに72時間培養し、室温で30分以上静置後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega社製、Steady-GloTM Luciferase Assay System)を100μl/well加えて、よくピペッティングした。5分以上放置してから発光検出器(ベックマンコールター社製、DTX800)で発光測定を行った。コントロールとして、上記被検材料の代わりにDMSOを用いて上記と同様にして調製した反応液について、同様に発光量を測定した。
【0092】
発光測定値から、コントロールに対する百分率を求め、被検材料の各濃度における被検細胞の相対ルシフェラーゼ活性(%)を算出した。前述するように、当該相対ルシフェラーゼ活性(%)はHCVレプリコンRNA量を反映している。得られた結果は、表10に示した。表10で示した値は複数回の測定から得られた値の平均であり,全測定を通じて得られた相対ルシフェラーゼ活性(HCVレプリコンRNA量)の最大値は2.27であった。
【0093】
【表10】
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【0094】
バイオマーカー発現量から相対ルシフェラーゼ活性を予測するニューラルネットワークを構築した。表8に示した濃度の機能性既知材料を与えたとき、表10に示した相対ルシフェラーゼ活性値を出力するようニューラルネットワークを学習させた。ニューラルネットワークの出力は最大値が1であるので、相対ルシフェラーゼ活性値の値を測定で得られた最大値2.27で除し、これをニューラルネットワークの学習時の教師信号とした。ニューラルネットワークの学習には誤差逆伝播学習法を用いた。
【0095】
ニューラルネットワークの学習の成否を判定するため、表8、表10に示した学習用データセットからダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMの2つを除いたデータセットを用いて学習を行った。
【0096】
ニューラルネットワークは入力ニューロン9、中間ニューロン4、出力ニューロン1とし、閾値調整のため中間ニューロン、出力ニューロンには常に-1を出力するニューロンからの入力を与えた。ニューラルネットワーク中の重みの初期値は-2.0から2.0までの間の乱数とし、学習係数は0.7、慣性係数は0.4に設定し、学習回数が1データ当たり40,000回に達するか、すべてのデータで推定誤差が0.1以下になったときに学習を停止させた。
【0097】
上記条件で学習を行った後に、学習結果の確認のために除いたダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMの2つのデータを学習済みのニューラルネットワークに入力したとき、表11に示したニューラルネットワークの出力(推定値)が得られた。表11には推定精度を示すために当該物質の相対ルシフェラーゼ活性の測定値(実測値)と推定誤差の絶対値も同時に示しており、これらの値は相対ルシフェラーゼ活性測定実験で得られた最大値2.27で除した後の値である。表11に示したとおり、学習に用いていない濃度での相対ルシフェラーゼ活性を規定誤差以下で推定することが可能であることが示された。
【0098】
【表11】
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【0099】
表8、表10に示した学習用データセットからダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMを除いたデータセットを用いて学習を行ったニューラルネットワークに対し、表9に示した学習に用いていない材料(機能性未知材料に相当)によるバイオマーカー発現量を提示して相対ルシフェラーゼ活性値の推定を行った。表9に示したバイオマーカー発現量を学習済みニューラルネットワークに提示したときの相対ルシフェラーゼ活性の推定値とその実測値を表12に示す。なお、相対ルシフェラーゼ活性の実測値は1回のみの測定であり、ダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMの推定時と同じく相対ルシフェラーゼ活性測定実験で得られた最大値2.27で除した後の値である。表12に示したとおり、ブルーベリー葉抽出物50μg/mlの相対ルシフェラーゼ活性については規定誤差以下で推定に成功しており、カプサイシン10μMについても1回目は、規定誤差以下での推定に成功した。
【0100】
【表12】
JP0004150761B2_000013t.gif

【0101】
相対ルシフェラーゼ活性と同様に、がん細胞増殖抑制についてもニューラルネットワークによる推定を行った。学習には表8に示したバイオマーカー発現量を入力、表6に示したがん細胞増殖抑制の1回目と2回目の平均値を教師信号とした。ニューラルネットワークの最大出力が1であるので、教師信号の値は表6の1回目と2回目の平均値中の最大値1.18に余裕分0.02を加えた1.20で除した値とした。ニューラルネットワークの構成、及び学習に用いたパラメータは相対ルシフェラーゼ活性推定時と同じである。ダイゼイン70μM、レスベラトール100μMを除いて学習を行った後、これら2つの化合物によるバイオマーカー発現量をニューラルネットワークに与えたとき、表13の出力が得られた。表13には推定精度を示すために当該物質のがん細胞増殖抑制作用の測定値(実測値)と推定誤差の絶対値も同時に示しており、これらの値は教師信号と同じく1.20で除した後の値である。表13に示したとおり、学習に用いていない濃度でのがん細胞増殖抑制作用を規定誤差以下で推定することが可能であることが示された。
【0102】
【表13】
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【0103】
表6、表8に示した学習データからダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMを除いて学習を行ったニューラルネットワークに対し、表9に示した学習に用いていない材料(機能性値未知材料に相当)によるバイオマーカー発現量を提示してがん細胞増殖抑制作用値の推定を行った。表9に示したバイオマーカー発現量を学習済みニューラルネットワークに提示したときのがん細胞増殖抑制作用の推定値とその実測値を表14に示す。なお、がん細胞増殖抑制作用の実測値は1回のみの測定であり、ダイゼイン70μM、レスベラトロール100μMの推定時と同じく教師信号と同様に1.20で除した後の値である。表14に示したとおり、ブルーベリー葉抽出物50μg/mlのがん細胞増殖抑制作用について2回目は規定誤差以下で推定に成功し、1回目と平均値についてもほぼ規定誤差での推定に成功した。カプサイシン10μMについてはすべて規定誤差以下での推定に成功した。
【0104】
【表14】
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【0105】
このように、機能性未知材料についても、複数のバイオマーカー発現量を測定するだけで、機能性の測定を実際に行わなくても当該材料が持つ複数の機能性を数値として推定することが可能であることが示された。これらの結果を総合的に評価すると機能性未知材料であるブルーベリー葉抽出物にウイルス発がん予防活性があることが推定された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の高スループット機能性評価方法、プログラム、装置は、食材、医薬、医薬候補物質等の評価に利用できる。特に食材のような多成分系物質の機能性を総合的に評価するのに適し、機能性食材開発、特定保健用食材の開発に当たり、動物実験によるin vivo評価試験を行う前の予備試験、あるいはヒトを対象にした臨床試験前の予備試験などに好適に利用できる。加えて、農水林産のごとき生物資源生産物出荷前の機能性評価試験、家畜、人工飼育魚介類等の農水産栽培試料及び同出荷物の機能性評価試験等にも利用できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係わる高スループット機能性評価方法の典型的な手順を示すフロー図である。
【図2】本発明に係わる高スループット機能性評価方法を行う計算機システムのブロック図である。
【図3】本発明において、学習法により機能性を推定する場合の典型的な手順を示すフロー図である。
【図4】本発明において、学習法により機能性を推定するときに利用する典型的なニューラルネットワークの図である。
【図5】本発明において、確率法により機能性を推定する場合の典型的な手順を示すフロー図である。
【図6】本発明において、クラスタリング法により機能性を推定する場合の典型的な手順を示すフロー図である。
【図7】本発明において、Jurkat細胞のバイオマーカー発現パターンに与えるエピガロカテキンガレート(EGCG)およびゲニステインの影響を示すグラフである。
【図8】本発明において、Jurkat細胞のバイオマーカー発現パターンに与えるエピガロカテキンガレート(EGCG)およびリポ酸の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
【0108】
1 Hsp70
2 Hsp90
3 DFF45
4 FADD
5 CAS
6 PARP
7 RB
8 RB2
21 計算機
21a 入出力インターフェース
21b 中央演算装置
21c 主記憶装置
22 ネットワーク装置
23 キーボード
24 マウス
25 モニタ
26 プリンタ
27 補助記憶装置
41 ニューロン
42 重み
43 結合リンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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