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明細書 :熱音響装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4652821号 (P4652821)
公開番号 特開2006-189218 (P2006-189218A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成18年7月20日(2006.7.20)
発明の名称または考案の名称 熱音響装置
国際特許分類 F25B   9/00        (2006.01)
FI F25B 9/00 311
F25B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-002624 (P2005-002624)
出願日 平成17年1月7日(2005.1.7)
審査請求日 平成19年12月16日(2007.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】坂本 眞一
【氏名】渡辺 好章
個別代理人の代理人 【識別番号】100111349、【弁理士】、【氏名又は名称】久留 徹
審査官 【審査官】千壽 哲郎
参考文献・文献 特開2000-088378(JP,A)
特表2002-535597(JP,A)
特開平11-344266(JP,A)
特開平11-337206(JP,A)
調査した分野 F25B 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
作動流体が封入される管と、第一高温側熱交換器及び第一低温側熱交換器に挟まれ第一のスタックからなる第一の熱交換器と、第二高温側熱交換器及び第二低温側熱交換器に挟まれ第二のスタックからなる第二の熱交換器とを具備してなり、前記第一高温側熱交換器に高温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二低温側熱交換器を冷却して当該熱を出力し、若しくは、前記第一低温側熱交換器に低温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二高温側熱交換器を加熱して当該熱を出力する熱音響装置であって、
前記第一の熱交換器と第二の熱交換器とを同じ構成とし、当該第一の熱交換器および第二の熱交換器を管内の音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数箇所設け、第一の熱交換器および第二の熱交換器の加熱・冷却を選択することによって、複数の第一の熱交換器に熱を入力して第二の熱交換器から熱を出力し、若しくは、第一の熱交換器に熱を入力して複数の第二の熱交換器から熱の出力するようにしたことを特徴とする熱音響装置。
【請求項2】
前記管に対して、前記第一の熱交換器もしくは第二の熱交換器の位置を変更するための可変機構を設けた請求項1に記載の熱音響装置。
【請求項3】
前記第一の熱交換器もしくは第二の熱交換器を管の一部に取り付け、当該管の一部を、管の本体に対してスライド可能に分離した請求項1に記載の熱音響装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響効果を利用して冷却対象物を冷却し、若しくは、加熱対象物を加熱することのできる熱音響装置に関するものであり、より詳しくは、管内に発生する音エネルギーを増幅させ、また、その増幅された音エネルギーから熱エネルギーに効率よく変換することのできる熱音響装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響効果を利用した熱交換装置に関しては、下記の特許文献1などに記載されるものが存在する。
【0003】
この特許文献1に記載される装置は、周長が音波の波長の整数倍であるループ状の共鳴管と、音波の1/4波長の奇数倍の間隔をもって配置される複数のスピーカと、これらのスピーカから発せられる音波の位相を1/4周期の奇数倍だけ異なるようにする音波発生制御手段と、ループ状の共鳴管内の所定位置に配設される蓄冷部材とを有してなるもので、一方向にのみ進行する音波だけを共鳴管内に残し、共鳴と同じように音波の振幅を増幅させるようにしたものである。この熱音響装置によれば、各スピーカから放出された音波がループ状の共鳴管内で2方向に進行し、その際、スピーカが配置される間隔によって一方向の波を重ね合わせて増幅させ、また、他方向については逆位相の波で打ち消して、一方向へのみ増幅された音波を発生させることができる。

【特許文献1】特開平10-325625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載される装置は、スピーカを用いて音波を入力するものであるため、廃熱などを利用して冷却対象物を冷却することはできない。また、上記特許文献1のように、管の外部にスピーカを取り付ける構造では、スピーカの音波が管の外周部で反射されてしまい、管内に安定した音波を入力することができない。また、スピーカを管の近傍に取り付けた場合は、管全体がスピーカと同様に振動してしまい、管内の音波をうまく打ち消し合わせることができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、管内に大きい定在波及び進行波を確実に発生させることのできる熱音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、作動流体が封入される管と、第一高温側熱交換器及び第一低温側熱交換器に挟まれ第一のスタックからなる第一の熱交換器と、第二高温側熱交換器及び第二低温側熱交換器に挟まれ第二のスタックからなる第二の熱交換器とを具備してなり、前記第一高温側熱交換器に高温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二低温側熱交換器を冷却して当該熱を出力し、若しくは、前記第一低温側熱交換器に低温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二高温側熱交換器を加熱して当該熱を出力する熱音響装置であって、前記第一の熱交換器と第二の熱交換器とを同じ構成とし、当該第一の熱交換器および第二の熱交換器を管内の音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数箇所設け、第一の熱交換器および第二の熱交換器の加熱・冷却を選択することによって、複数の第一の熱交換器に熱を入力して第二の熱交換器から熱を出力し、若しくは、第一の熱交換器に熱を入力して複数の第二の熱交換器から熱の出力するようにしたものである。
【0007】
このように構成すれば、あらかじめ高温側熱交換器と低温側熱交換器に挟まれたスタックを音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に取り付けておけば、熱の入力位置及び熱の出力位置を選択するだけで音波発生側のスタックや熱出力側のスタックの数を増減させることができるようになる。
【0008】
また、このような発明において、前記管に対して、第一の熱交換器もしくは第二の熱交換器の位置を変更するための可変機構を設けるようにする。
【0009】
この一態様として、第一の熱交換器もしくは第二の熱交換器を管の一部に取り付け、当該管の一部を、管の本体に対してスライド可能に分離するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、作動流体が封入される管と、第一高温側熱交換器及び第一低温側熱交換器に挟まれ第一のスタックからなる第一の熱交換器と、第二高温側熱交換器及び第二低温側熱交換器に挟まれ第二のスタックからなる第二の熱交換器とを具備してなり、前記第一高温側熱交換器に高温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二低温側熱交換器を冷却して当該熱を出力し、若しくは、前記第一低温側熱交換器に低温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって前記第二高温側熱交換器を加熱して当該熱を出力する熱音響装置にいて、前記第一の熱交換器と第二の熱交換器とを同じ構成とし、当該第一の熱交換器および第二の熱交換器を管内の音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数箇所設け、第一の熱交換器および第二の熱交換器の加熱・冷却を選択することによって、複数の第一の熱交換器に熱を入力して第二の熱交換器から熱を出力し、若しくは、第一の熱交換器に熱を入力して複数の第二の熱交換器から熱の出力するようにしたので、熱の入力位置及び熱の出力位置を選択するだけで音波発生側のスタックや熱出力側のスタックの数を増減させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る熱音響装置1の第一の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
この実施の形態における熱音響装置1は、図1に示すように、全体として略長方形状に構成されたループ管2の内部に、第一高温側熱交換器4、第一低温側熱交換器5、第一のスタック3aからなる複数の第一の熱交換器300と、第二高温側熱交換器6、第二低温側熱交換器7、第二のスタック3bからなる複数の第二の熱交換器310とを設けて構成されるもので、第一の熱交換器300側の第一高温側熱交換器4を加熱することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波による音エネルギーを第二の熱交換器310側へ移送することによって第二の熱交換器310側に設けられた第二の熱交換器310側で熱エネルギーに変換し、第二低温側熱交換器7を冷却させるようにしたものである。
【0013】
そして、この実施の形態では、音圧の高い定在波及び進行波をループ管2内に発生させるべく、音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数の第一の熱交換器300を配置し、また、ループ管2内に発生した定在波及び進行波の音エネルギーから熱エネルギーへの変換効率を良くすべく、音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数の第二の熱交換器310を配置するようにしている。以下、この熱音響装置1の具体的構成について詳細に説明する。
【0014】
熱音響装置1を構成するループ管2は、閉曲線をなすように一対の直線管部2aと、これらの直線管部2aを連結する連結管部2bとを設けて構成される。これらの直線管部2a、連結管部2bは、金属製のパイプによって構成されるが、材質は金属に限らず、透明なガラス、若しくは、樹脂などによって構成することもできる。透明なガラスや樹脂などの材料で構成した場合は、実験等における第一のスタック3aや第二のスタック3bの位置の確認や管内の状況を容易に観察することができる。
【0015】
そして、このように構成されたループ管2の内部には、第一高温側熱交換器4、第一低温側熱交換器5、第一のスタック3aからなる複数の第一の熱交換器300と、第二高温側熱交換器6、第二低温側熱交換器7、第二のスタック3bからなる複数の第二の熱交換器310とを設けている。これらの複数の第一の熱交換器300はいずれも同じ構成を有しており、また、それぞれの第二の熱交換器310も同じ構成を有している。
【0016】
この第一高温側熱交換器4及び第一低温側熱交換器5は、共に熱容量の大きい金属などで構成され、図3に示すように、その内側にループ管2の軸方向に沿った微小径の導通路30を設けている。これらの熱交換器4、5のうち、第一高温側熱交換器4は、第一のスタック3aの上面に接するように取り付けられ、外部から供給される廃熱などによって相対的に第一低温側熱交換器5よりも高い温度に加熱される。なお、この第一高温側熱交換器4は、廃熱だけでなく、外部から供給される電力などを用いて加熱できるようにしても良い。
【0017】
一方、第一低温側熱交換器5は、同様に、第一のスタック3aの下面に接するように取り付けられ、その外周部分に水などを循環させて相対的に第一高温側熱交換器4よりも低い温度、例えば、15℃~16℃に設定される。
【0018】
これら第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との間に設けられる第一のスタック3aは、ループ管2の内側壁面に接する円柱状のもので、図3に示すように、熱伝導率の異なる複数のスタック構成要素3eL、3eHを積層して構成される。これらのスタック構成要素3eL、3eHは、例えば、セラミクス、燒結金属、金網、金属製不織布などの素材が用いられ、第一高温側熱交換器4側から順に、熱伝導率の低いスタック構成要素3eL、熱伝導率の高いスタック構成要素3eH、熱伝導率の低いスタック構成要素3eLと配される。これらのスタック構成要素3eL、3eHのうち、熱伝導率の高いスタック構成要素3eHは、相対的に熱伝導率の低いスタック構成要素3eLよりも厚く構成され、このようにすることによって、作動流体と熱交換を行いうる面積を大きくしている。これらの各スタック構成要素3eL、3eHの内側には、図2に示すように、ループ管2の軸方向に沿った微小径の貫通した導通路30を複数有している。これらの各スタック構成要素3eL、3eHは、それぞれ密着するように上下方向に積層されている。なお、このように各スタック構成要素3eL、3eHを積層する場合、接着剤を用いて積層すると、その内側に設けられた微小径の導通路30を溢れ出た接着剤で塞いでしまう可能性がある。このため、接着剤を用いることなく、例えば、第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との幅を第一のスタック3aの厚み幅と同じ幅に設定し、この第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との挟み込み力によってそれぞれのスタック構成要素3eL、3eHを挟み込む。また、この第一のスタック3aがループ管2の起立する直線管部2a内に設けられる場合は、それぞれのスタック構成要素3eL、3eHの自重によって各スタック構成要素3eL、3eHを密着させるようにする。
【0019】
また、この各スタック構成要素3eL、3eHの平面方向における熱伝導率は一定となるように、例えば、単一の素材で構成される。平面方向における熱伝導率が不均一であると、第一のスタック3aの内側と外側で温度差が生じ、不均一な音波が発生して定在波及び進行波の発生時間が遅くなり、熱交換の効率性が悪くなってしまう。このため、各スタック構成要素3eL、3eHを単一の素材で構成し、平面方向における熱伝導率を同じにする。
【0020】
そして、このように構成された第一の熱交換器300、第一低温側熱交換器5、第一のスタック3aで構成された第一の熱交換器300は、第一高温側熱交換器4の向きを統一した状態でループ管2内における音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に設けられる。図4は、ループ管2を開放した状態であって、音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置と、第一の熱交換器300及び第二の熱交換器310との位置関係を示したものである。一般に、音波の特性は、第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との温度差やループ管2内の圧力などによって変化する。このため、第一の熱交換器300の位置を変更するための可変機構を設け、若しくは、音波の波長を圧力で調整するための圧力調整機構を設けると良い。この可変機構としては、例えば、図5に示すように、第一の熱交換器300を取り付けたループ管の一部20を、ループ管2の本体に対してスライド可能に分離し、その分離したループ管の一部20をループ管2の本体に対してスライドさせるようにして第一の熱交換器300の位置を調整する機構などが考えられる。また、圧力調整機構としては、後述する気体注入装置9a、9bなどが考えられる。
【0021】
次に、このように構成された第一の熱交換器300の作用について説明する。まず、この第一の熱交換器300の第一高温側熱交換器4を加熱するとともに第一低温側熱交換器5を冷却すると、この第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5の方向(軸方向)へ向けて熱が移送される。この際、第一高温側熱交換器4で約600℃に加熱された熱が第一のスタック3aを介して第一低温側熱交換器5へ移送されことになるが、第一のスタック3aの端部に設けられた熱伝導率の低いスタック構成要素3eLによってその熱の移送が阻害される。これにより、第一低温側熱交換器5にその熱が移送されることなく、第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5の温度差を大きくすることができる。一方、この第一高温側熱交換器4で約600℃に加熱された熱は、第一のスタック3aの導通路30内の作動流体を介して、第一低温側熱交換器5側へ移送される。これによって第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との間に温度勾配が形成されるが、この作動流体に生じた温度勾配によって作動流体のゆらぎが生じ、第一のスタック3aとの間で熱交換を行いながら音波が発生する。このとき、相対的に熱伝導率の高いスタック構成要素3eHとの間で大きな熱交換が行われ、迅速に音波を発生させて熱交換の効率性を向上させることができる。
【0022】
このように発生した音波は、ループ管2内において定在波及び進行波となり、複数箇所の第一の熱交換器300で増幅される。そして、音圧の高い音エネルギーとして、第二の熱交換器310側へと移送される。
【0023】
この第二の熱交換器310は、第二高温側熱交換器6、第二低温側熱交換器7、第二のスタック3bから構成される。この第二高温側熱交換器6及び第二低温側熱交換器7は、共に熱容量の大きい金属などで構成され、第一のスタック3aと同様に、第二のスタック3bの両端側に取り付けられるとともに、その内部に定在波及び進行波を導通させるための微小径の導通路30を設けている。この第二高温側熱交換器6は、外周部分に水を循環させて、例えば、15℃~16℃に設定される。一方、第二低温側熱交換器7は、熱の出力部を有しており、外部の冷却対象物を冷却できるようにしている。この冷却対象物としては、例えば、外気や、発熱を伴う家電製品、パーソナルコンピュータのCPUなどが考えられる。また、第二のスタック3bは、第一のスタック3aと同様の構成を有している。すなわち、第二高温側熱交換器6側から順に、熱伝導率の低いスタック構成要素3eL、熱伝導率の高いスタック構成要素3eH、熱伝導率の低いスタック構成要素3eLと3層に配している。また、熱伝導率の高いスタック構成要素3eHは相対的に熱伝導率の低いスタック構成要素3eLよりも厚く構成される。このように構成された第二の熱交換器310は、図4に示すように、ループ管2における音波の粒子速度変動と音圧変動が同相になる位置の近傍に設けられる。また、この第二の熱交換器310は、図5に示すように、第二の熱交換器310を固定したループ管の一部20をループ管2の本体に対してスライド可能に分離し、その分離したループ管の一部20をループ管2の本体に対してスライドさせるようにして第二の熱交換器310の位置を調整する機構内に組み込まれる。
【0024】
なお、第一の熱交換器300と第二の熱交換器310を全て同じ構造にしておき、それぞれ第一の熱交換器300と第二の熱交換器310を兼用できるようにしておいてもよい。この場合、第一の熱交換器300に設けられた第一高温側熱交換器4や第一低温側熱交換器5、及び、第二の熱交換器310に設けられた第二高温側熱交換器6や第二低温側熱交換器7をあらかじめ高温側・低温側に設定しておかずに、適宜、各熱交換器4、5、6、7の金属板を加熱・冷却を選択することによって第一高温側熱交換器4、第一低温側熱交換器5、第二高温側熱交換器6、第二低温側熱交換器7と設定する。このようにすれば、音圧を上げたい場合は、図7に示すように、第一の熱交換器300の数を増やした熱音響装置1b、すなわち、熱の入力箇所が3カ所の熱音響装置1bとすれば良く、また、音圧が充分で冷却温度が充分でない場合は、図8に示すように、第二の熱交換器310の数を増やした熱音響装置1c、すなわち、冷熱の出力箇所が3カ所の熱音響装置1cとすれば良い。
【0025】
このループ管2の内部には、ヘリウム、アルゴンなどのような不活性ガスが封入される。なお、このような不活性ガスに限らず、窒素や空気などのような作動流体を封入しても良い。これらの作動流体は、0.01MPa~5MPaに設定される。
【0026】
このような作動流体を封入するに際してプラントル数が小さく、また、比重も小さいヘリウムなどを使用すれば、音波の発生までの時間を短縮化することができる。しかし、このような作動流体を用いると、音速が早くなってしまい、スタック内壁との間でうまく熱交換を行うことができない。また、逆に、プラントル数が大きく、また、比重も大きいアルゴンなどを使用すると、今度は粘性が高くなって音波を迅速に発生させることができなくなる。このため、好ましくは、ヘリウムとアルゴンの混合ガスを用いるようにする。このような混合ガスの封入は、次のようにして行う。
【0027】
まず、始めにプラントル数が小さく、また、比重も小さいヘリウムをループ管2内に封入しておき、迅速に音波を発生させる。そして、発生した音波の音速を低下させるべく、次にアルゴンなどのようなプラントル数が大きく、また、比重も大きいガスを注入する。このアルゴンの混入に際しては、図1に示すように、上側に設けられた連結管部2bの中央部分にヘリウム気体注入装置9aとアルゴン気体注入装置9bを設け、そこからアルゴンを注入する。すると、アルゴンは、左右の直線管部2aに均一に分離し、下方に向かって内部のヘリウムと混合する。これらの混合ガスの圧力は、0.01MPa~5MPaに設定される。
【0028】
次に、このように構成された熱音響装置1の動作状態について説明する。
【0029】
まず、ループ管2にヘリウム気体注入装置9aを用いてヘリウムを封入しておき、この状態で第一の熱交換器300の第一低温側熱交換器5及び第二の熱交換器310の第二高温側熱交換器6の外周部分に水を循環させる。この状態で第一の熱交換器300の第一高温側熱交換器4を約600℃に加熱し、また、第一低温側熱交換器5を約15~16℃に設定する。すると、第一高温側熱交換器4から第一低温側熱交換器5への方向に熱が移送される。この際、第一高温側熱交換器4からの熱が第一のスタック3aの部材を介して第一低温側熱交換器5へ移送されるが、この熱の移送は、熱伝導率の低いスタック構成要素3eLの存在によって阻害される。これにより、第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との温度差を大きくすることができる。一方、この第一高温側熱交換器4の熱(600℃)は、第一のスタック3aの導通路30内の作動流体によって第一低温側熱交換器5側へ移送される。これにより第一高温側熱交換器4と第一低温側熱交換器5との間に温度勾配が形成され、この作動流体に生じた温度勾配によって作動流体のゆらぎが生じ、第一のスタック3aとの間で熱交換を行いながら音波が発生する。このとき、相対的に厚く、かつ、熱伝導率の高く構成されたスタック構成要素3eHとの間で大きな熱交換が行われ、迅速に音波を発生させ、熱交換の効率性を向上させることができる。また、他の第一の熱交換器300についても同様に音波を発生させることができ、複数の第一の熱交換器300によって音波を増幅させることができる。このように発生した音波は、定在波及び進行波による音エネルギーとして、第二の熱交換器310側へ移送される。この音エネルギーは、エネルギー保存の法則に基づき、第一の熱交換器300での熱エネルギーの移送方向(第一高温側熱交換器4から第一低温側熱交換器5の方向)と逆方向、すなわち、第一低温側熱交換器5から第一高温側熱交換器4の方向に移送される。
【0030】
そして、この定在波及び進行波が発生した直後に、連結管部2bの上側に設けられたアルゴン気体注入装置9bからアルゴンを注入し、一定の圧力に設定して熱交換の効率性を良くする。
【0031】
次に、第二の熱交換器310側では、定在波及び進行波に基づいて、第二のスタック3bの導通路30内の作動流体を膨張・収縮させる。そして、その際に熱交換された熱エネルギーを音エネルギーの移送方向と逆方向、すなわち、第二低温側熱交換器7から第二高温側熱交換器6側へ移送する。このとき、第二高温側熱交換器6側に高い熱が蓄積され、また、第二低温側熱交換器7側に低い熱が蓄積される。そして、これらの温度差によって、高い熱が第二のスタック3bを介して第二低温側熱交換器7側へ移送されるが、第二高温側熱交換器6及び第二低温側熱交換器7側に熱伝導率の低いスタック構成要素3eLを設けているため、熱の移送が阻害される。これによって、第二低温側熱交換器7の温度をより低くすることができ、冷却対象物をより冷却することができる。
【0032】
また、この第二の熱交換器310で熱エネルギーに変換されなかった音エネルギーは、第二の熱交換器310の導通路30を通過し、次の位置に存在する第二の熱交換器310に移送される。そして、そこで同様にして音エネルギーから熱エネルギーへと変換され、その第二の熱交換器310の第二低温側熱交換器7を冷却する。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、作動流体が封入されるループ管2と、このループ管2内に設けられ第一高温側熱交換器4及び第一低温側熱交換器5に挟まれ第一のスタック3aからなる第一の熱交換器300と、第二高温側熱交換器6及び第二低温側熱交換器7に挟まれ第二のスタック3bからなる第二の熱交換器310とを具備してなり、第一高温側熱交換器4に高温の熱を入力することによって自励による定在波及び進行波を発生させ、この定在波及び進行波によって第二低温側熱交換器7を冷却して当該熱を出力する熱音響装置1において、第一の熱交換器300と第二の熱交換器310とを同じ構成とし、第一の熱交換器300および第二の熱交換器310をループ管2の音波の粒子速度変動と音圧変動が同相となる位置の近傍に複数箇所設け、第一の熱交換器300および第二の熱交換器310の加熱・冷却を選択することによって、複数の第一の熱交換器300に熱を入力して第二の熱交換器310から熱を出力し、若しくは、第一の熱交換器300に熱を入力して複数の第二の熱交換器310から熱の出力するようにしたので、熱の入力位置及び熱の出力位置を選択するだけで音波発生側のスタックや熱出力側のスタックの数を増減させることができるようになる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0035】
えば、上記実施の形態では、第一のスタック3a側を加熱して第二のスタック3b側を冷却する熱音響装置1を例に挙げて説明したが、これとは逆に、第一のスタック3a側を冷却して第二のスタック3b側を加熱するようにしても良い。この熱音響装置1の例を図6に示す。
【0036】
図6において、上記実施の形態と同じ符号を示すものは同じ構造を有するものを示している。この実施の形態における熱音響装置1bは、第一の実施の形態と同様に、複数の第一の熱交換器300と複数の第二の熱交換器310を有する。そして、この実施の形態では、第一低温側熱交換器5にマイナス数十度、若しくは、これよりも低い温度に冷却するとともに、第一高温側熱交換器4及び第二低温側熱交換器7に不凍性の液体を循環させる。すると熱音響効果の原理により、第一のスタック3aに形成された温度勾配によって自励の音波が発生する。この定在波及び進行波の音エネルギーの進行方向は、第一のスタック3aにおける熱エネルギーの移送方向(第一高温側熱交換器4から第一低温側熱交換器5の方向)と逆方向に向かうように発生し、他の第一の熱交換器300で増幅される。この定在波及び進行波による音エネルギーは、第二のスタック3b側へ移送され、第二のスタック3b側では、定在波及び進行波に基づく作動流体の圧力変化及び体積変化によって作動流体が膨張・収縮を繰り返し、その際に生じた熱エネルギーを音エネルギーの移送方向と逆方向である第二低温側熱交換器7から第二高温側熱交換器6側へ移送する。このようにして第二高温側熱交換器6を加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態を示す熱音響装置の概略図
【図2】同形態におけるスタックを軸方向から見た図
【図3】同形態におけるスタックの断面図
【図4】同形態における第一の熱交換器及び第二の熱交換器の可変機構を示す図
【図5】同形態における定在波と第一の熱交換器及び第二の熱交換器との位置関係を示す図
【図6】他の実施の形態における熱音響装置の概略図
【図7】他の実施の形態における熱音響装置の概略図
【図8】他の実施の形態における熱音響装置の概略図
【符号の説明】
【0038】
1・・・熱音響装置
2・・・ループ管
2a・・・直線管部
2b・・・連結管部
3a・・・第一のスタック
3b・・・第二のスタック
30・・・導通路
30eL、30eH・・・スタック構成要素
4・・・第一高温側熱交換器
5・・・第一低温側熱交換器
6・・・第二高温側熱交換器
7・・・第二低温側熱交換器
300・・・第一の熱交換器
310・・・第二の熱交換器
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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