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明細書 :磁性砥粒及び磁性砥液

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4143726号 (P4143726)
公開番号 特開2005-255881 (P2005-255881A)
登録日 平成20年6月27日(2008.6.27)
発行日 平成20年9月3日(2008.9.3)
公開日 平成17年9月22日(2005.9.22)
発明の名称または考案の名称 磁性砥粒及び磁性砥液
国際特許分類 C09K   3/14        (2006.01)
B24B  37/00        (2006.01)
H01L  21/304       (2006.01)
FI C09K 3/14 550C
B24B 37/00 D
B24B 37/00 H
H01L 21/304 622B
H01L 21/304 622D
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2004-070614 (P2004-070614)
出願日 平成16年3月12日(2004.3.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年3月8日 社団法人表面技術協会発行の「第109回講演大会講演要旨集」に発表
審査請求日 平成18年3月13日(2006.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】吉原 佐知雄
【氏名】坂井 勇磨
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】澤村 茂実
参考文献・文献 特開2005-068620(JP,A)
特開2001-26769(JP,A)
特開2005-144643(JP,A)
特開2001-26770(JP,A)
特開2002-265933(JP,A)
特開2001-64630(JP,A)
調査した分野 C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
特許請求の範囲 【請求項1】
樹脂粒子上に磁気特性を有する材料からなる磁性層が形成され、該磁性層が研磨粒子を含有することを特徴とする磁性砥粒。
【請求項2】
前記樹脂粒子の平均粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁性砥粒。
【請求項3】
前記研磨粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性砥粒。
【請求項4】
前記磁性層が、研磨粒子としてダイヤモンド粒子、酸化アルミニウム粒子又は炭化ケイ素粒を含む無電解めっき層であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性砥粒。
【請求項5】
樹脂粒子上に磁気特性を有する材料からなる磁性層が形成され、該磁性層が研磨粒子を含有する磁性砥粒と、当該磁性砥粒を遊動させる液状媒体とを有することを特徴とする磁性砥液。
【請求項6】
前記磁性砥粒の比重が前記液状媒体の比重よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の磁性砥液。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性砥粒及び磁性砥液に関し、更に詳しくは、磁気研磨法等に利用される磁性砥粒及びその磁性砥粒を含む磁性砥液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気研磨法は、研磨作用を有する研磨砥粒を磁場の作用により運動させて被加工物の表面を研磨する精密加工方法である。この磁気研磨法は、従来の機械加工では困難な部品の研磨を可能にする方法であり、例えば、複雑形状を有する部品の表面、工具が入らない穴の内面、工具が届かない管の内面等の研磨について一部実用化されている。
【0003】
磁気研磨法で利用される研磨砥粒は、磁場の作用により被加工物に対して相対運動するものである。一般的には、磁性を有する研磨粒子を含む磁性砥粒や、磁性を有しない非磁性の研磨粒子と磁性を有する粒子との混合物からなる磁性砥粒が知られている。前者の場合は磁場により研磨粒子自体が運動するが、後者の場合は、磁場により運動するのは磁性を有する粒子であり、研磨粒子は磁性を有する粒子と共に運動して被加工物の表面を研磨する。したがって、後者の磁性砥粒は、磁性を有する粒子が磨耗して研磨屑になり易く、被加工物の表面が汚染されてしまう等の問題がある。
【0004】
一方、前者の磁性砥粒にはそうした問題がなく、例えば、磁性粒子と研磨粒子との焼結体を粉砕した磁性砥粒や、磁性粒子の表面に研磨粒子を含有した無電解めっき皮膜を形成した磁性砥粒(例えば特許文献1を参照。)が報告されている。

【特許文献1】特開2002-265933号公報(請求項3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の磁性砥粒は、その体積の大部分が比重の高い磁性粒子で占められているので重くて大きな研磨効果を有するものの、より精密な研磨加工を行う際には、必要以上に被加工物の表面を研磨してしまうことから必ずしも好ましい研磨砥粒であるとは言えないものであった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より精密な表面加工を可能にする磁性砥粒及びその研磨砥粒を含む磁性砥液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の磁性砥粒は、樹脂粒子上に磁気特性を有する材料からなる磁性層が形成され、該磁性層が研磨粒子を含有することを特徴とする。

【0008】
この発明によれば、磁性砥粒の中核が樹脂粒子であるので、磁性砥粒が軽量化し、その結果、より精密な表面加工を行うことができる。磁性砥粒の軽量化は、表面加工の際の磁性砥粒の動きを容易にするので、複雑な形状を有する被加工物を容易に加工できるという利点がある。更に本発明の磁性砥粒によれば、樹脂粒子を構成する樹脂の比重を調整することが可能なので、磁性砥粒を液状媒体に混合して磁性砥液(スラリー)として用いる場合においては、磁性砥粒が磁性砥液上に浮いた状態、磁性砥液中に浮遊した状態、又は、磁性砥液中に沈んだ状態に容易に調整することができる。
【0009】
本発明の磁性砥粒は、上記本発明の磁性砥粒において、前記樹脂粒子の平均粒径が100μm以下であることを特徴とする。この発明によれば、磁性砥粒の中核となる樹脂粒子の平均粒径が100μm以下であるので、磁性砥粒の大きさが小さくなり、より精密な表面加工が可能となる。
【0010】
本発明の磁性砥粒は、上記本発明の磁性砥粒において、前記研磨粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。この発明によれば、磁性層に含まれる研磨粒子の平均粒径が100nm以下であるので、被加工物の表面をナノメートルレベルの精度の精密な表面加工が可能となる。
【0011】
本発明の磁性砥粒は、上記本発明の磁性砥粒において、前記磁性層が、研磨粒子としてダイヤモンド粒子、酸化アルミニウム粒子又は炭化ケイ素粒を含む無電解分散めっき層であることを特徴とする。この発明によれば、磁性層が研磨粒子としてダイヤモンド粒子、酸化アルミニウム粒子又は炭化ケイ素粒を含む無電解分散めっき層であるので、鋭利な研磨粒子を備えた研磨砥粒を容易に作製することができる。こうして得られた磁性砥粒は、より精密な表面加工を行うことができる。

【0012】
上記目的を達成するための本発明の磁性砥液は、樹脂粒子上に磁気特性を有する材料からなる磁性層が形成され、該磁性層が研磨粒子を含有する磁性砥粒と、当該磁性砥粒を遊動させる液状媒体とを有することを特徴とする。この発明によれば、比重の調整が容易な磁性砥粒を有するので、例えば磁性砥粒が磁性砥液上に浮いた状態、磁性砥液中に浮遊した状態、又は、磁性砥液中に沈んだ状態等に容易に調整することができる。
【0013】
本発明の磁性砥液は、上記本発明の磁性砥液において、前記磁性砥粒の比重が前記液状媒体の比重よりも小さいことを特徴とする。この発明によれば、磁性砥粒の比重が液状媒体の比重よりも小さいので、液状媒体に浮かんだ磁性砥粒により被加工物の表面の精密加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の磁性砥粒によれば、磁性砥粒を軽量化することができるので、被加工物の表面をより精密に加工することが可能となると共に、複雑な形状を有する被加工物を容易に加工することができる。
【0015】
本発明の磁性砥液によれば、比重の調整が容易な磁性砥粒を有するので、例えば磁性砥粒が磁性砥液上に浮いた状態、磁性砥液中に浮遊した状態、又は、磁性砥液中に沈んだ状態等に容易に調整することができ、その結果、被加工物の表面の精密加工を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の磁性砥粒及び磁性砥液について、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
(磁性砥粒)
図1は、本発明の磁性砥粒の一例を示す模式断面図である。本発明の磁性砥粒1は、樹脂粒子2上に研磨粒子4を含有する磁性層3が形成されている構成を有している。なお、図1においては、磁性層3から突出した研磨粒子4のみを表し、磁性層3の内部に含有される研磨粒子4は図の簡略化のために省略している。
【0018】
樹脂粒子2は磁性砥粒1の中核をなす基体であり、いわゆるプラスチック粒子と言われるものであれば各種の材質からなるものを用いることができる。特に耐熱性を有する硬質プラスチック粒子は、被加工物の表面加工の際に発生する熱に対して耐熱性を有するので好ましく用いられる。こうした樹脂粒子2は、磁性砥粒1の大部分の体積を占めてその中核をなしているので、磁性砥粒全体の重さを軽くすることができる。磁性砥粒1の軽量化は、より精密な表面加工を行うのに有利であると共に、表面加工の際の磁性砥粒の動きを容易にするので複雑な形状を有する被加工物を容易に加工することができるという利点がある。
【0019】
樹脂粒子2の材質の選定にあたっては、樹脂粒子の比重を考慮することがより好ましい。例えば、本発明の磁性砥粒1が液状媒体と共に磁性砥液を構成する場合には、その液状媒体の比重との関係で樹脂粒子の比重が考慮される。具体的には、液状媒体よりも比重の小さい材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に浮かせた状態で用いることができる。また、液状媒体と同程度の比重の材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に浮遊した状態で用いることができる。また、液状媒体よりも比重の大きい材質からなる樹脂粒子を用いることにより、最終的に得られた磁性砥粒を磁性砥液に沈めた状態で用いることができる。このように、樹脂粒子上に形成される磁性層の重さを考慮しつつ、樹脂粒子の材質を比重を考慮して選定することにより、最終的に得られた磁性砥粒の磁性砥液中での状態を上記のように制御することができる。磁性砥液中での磁性砥粒の状態制御は、例えば磁気研磨法等の精密加工において、特にナノメートルレベルの精密加工及びその精度調整に有効である。
【0020】
樹脂粒子2の形状は、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定され、例えば、球形状(真球形状も含む)、角形状、針状、鱗片状等の各種の形状が挙げられる。特に入手の容易さや磁性砥粒としての運動の容易さの観点から、球形状の樹脂粒子2が好ましく用いられる。
【0021】
樹脂粒子2の粒径についても、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定される。例えば、本発明の磁性砥粒1を用いてナノメートルレベルの精密加工を行う場合には、樹脂粒子2の平均粒径が100μm以下であることが好ましい。このときの平均粒径の下限は特に限定されず、例えば市販のプラスチック粒子の中から入手可能な範囲のものであればよいが、例えば平均粒径が2μm以上のものを用いることができる。なお、後述する実施例においては、一例として、平均粒径6μmから30μmの範囲で入手可能な硬質プラスチック微粒子(ジビニルベンゼンを主成分とした架橋共重合体樹脂からなる微粒子。積水化学工業製のLCD用スペーサ用途品)を用いている。平均粒径の算出にあたっては、真球形状の樹脂粒子についてはその直径が用いられ、真球以外の球形状の樹脂粒子については最も長い長軸径と最も短い短軸径との平均径が用いられ、角形状、針状及び鱗片状の樹脂粒子については、3次元方向で最も長い寸法を有する長さが用いられる。
【0022】
磁性層3は、研磨粒子4を含有した態様で樹脂粒子2上に形成される。磁性層3の形成材料としては、少なくとも磁場により運動可能な磁気特性を有するものであればよく、例えば鉄系の金属又は合金からなる強磁性材料であることが好ましい。磁性層3の形成方法は特に限定されないが、磁性層3を無電解めっきで形成する場合には、Ni-B系の無電解めっき皮膜や、Ni-P系の無電解めっき皮膜であることが好ましい。これらのうち、Ni-B系の無電解めっき皮膜は、Ni-P系の無電解めっき皮膜に比べて磁性が強いので好ましく選ばれる。
【0023】
磁性層3の厚さは、磁性砥粒1に要求される磁気特性を確保できる厚さであればよく、例えば、磁性砥粒1がナノメートルレベルの精密加工に用いられる場合には、上述した100μm以下の樹脂粒子2上に1~5μm程度の厚さの磁性層3を形成することが望ましい。また、磁性砥粒1を磁性砥液の構成材料として用いる場合には、磁性砥液を構成する液状媒体の比重を考慮して、磁性層3の厚さを調整する。
【0024】
研磨粒子4は、磁性層3に含有されて鋭利な砥粒として作用する。研磨粒子4としては、研磨粒子として利用可能な各種の無機粒子や化合物(酸化物、炭化物、窒化物等)粒子を用いることができ、例えばダイヤモンド粒子、アルミナ(酸化アルミニウム)粒子及び炭化ケイ素粒子等を挙げることができる。ダイヤモンド粒子は、極めて硬く砥粒として望ましい特性を有すると共に、微小なものが得られるので入手が容易であるという利点があり、好ましく用いられる。また、このダイヤモンド粒子は、その表面が疎水性を示すので、例えば本発明の磁性砥粒が水媒体に浮かぶ場合に、磁性砥粒が水をはじいて水媒体の表面から突出した態様で被加工物を加工できるという特質がある。
【0025】
研磨粒子4の形状は、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定され、例えば、球形状(真球形状も含む)、多角形状、針状等の各種の形状が挙げられる。特に入手の容易さや磁性砥粒としての運動の容易さの観点から、球形状や多角形状の研磨粒子4が好ましく用いられる。
【0026】
研磨粒子4の粒径についても、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定される。例えば、本発明の磁性砥粒1を用いてナノメートルレベルの精密加工を行う場合には、研磨粒子4の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。このときの平均粒径の下限は特に限定されず、例えば市販の研磨粒子の中から入手可能な範囲のものであればよいが、例えば平均粒径が10nm以上のものを用いることができる。なお、後述する実施例においては、一例として、平均粒径100nmのダイヤモンド粒子を用いている。平均粒径の算出にあたっては、上述した樹脂粒子の場合と同様である。
【0027】
磁性層3中の研磨粒子4の含有量についても、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定される。研磨粒子の含有量を多くすることにより、研磨性能を向上させて研磨効率を向上させることができる。一方、研磨粒子の含有量をあまり多くしないことにより、研磨効率を抑えて徐々に研磨を進行させ、精密な加工を行うこともできる。なお、本発明の磁性砥粒においては、磁性層の形成方法やその種類及び研磨粒子の種類や特性によって含有させることができる量の範囲が個々に異なるので一概に規定できないが、例えば、後述する実施例においては、研磨粒子(ダイヤモンド粒子)を磁性層中に1~10重量%程度の範囲内で含有させることが好ましい。
【0028】
磁性層3に含まれる研磨粒子4のうち、少なくとも磁性層の表層近傍に取り込まれた研磨粒子の一部が磁性層3の表面から突出していることが望ましい。そうした態様となっていることにより、加工初期においても十分な研磨機能を発揮することが可能となる。なお、磁性層の表層近傍に取り込まれた研磨粒子の一部が磁性層3の表面から突出していない場合であっても、加工中に磁性層の表層が磨耗して研磨粒子が露出するので、上記の態様の場合と同様の効果を得ることができる。
【0029】
(磁性砥粒の好ましい作製方法)
本発明の磁性砥粒1の作製方法として、無電解めっき法によって研磨粒子4を磁性層中に含有させる方法を好ましく挙げることができる。
【0030】
例えば、成膜後に磁気特性を有するイオン種を含む無電解めっき液中に研磨粒子4を入れて攪拌し、無電解分散めっき液を調製する。次いで、所定の温度等に設定された無電解分散めっき液中に、触媒活性化処理された樹脂粒子2を添加して攪拌することにより、その樹脂粒子2上に、研磨粒子4を含有した磁性層3を形成することができる。なお、触媒活性化処理とは、プラスチック等の樹脂製品上に無電解めっきを施す際の通常より周知の前処理方法のことであり、この無電解めっきにおいては、こうした前処理方法を採用している。
【0031】
研磨粒子4を磁性層3となる無電解めっき皮膜中に均一に分散させることができるように、機械攪拌、エアー等のガス攪拌、超音波ホモジナイザー等による超音波攪拌等の攪拌手段を用いることが好ましい。なお、こうした手段は無電解めっき皮膜中の研磨粒子4の含有量にも影響するので、条件を変更することにより、研磨粒子4の含有量を調整することができる。
【0032】
(磁性砥液)
本発明の磁性砥粒1は、そのままの態様で例えば磁気研磨法等の精密加工用の砥粒として使用したり、液状媒体と共に磁性砥液として使用したりすることができる。ここで、磁性砥液を構成する液状媒体は、磁性砥粒を自由に動き易くさせる(本明細書において「遊動させる」という。)という役割がある。
【0033】
本発明の磁性砥粒1を磁性砥液の構成材料として使用する場合には、上述したように磁性砥粒1の比重を調整することにより、例えば磁性砥粒が磁性砥液上に浮いた状態、磁性砥液中に浮遊した状態、又は、磁性砥液中に沈んだ状態等にすることができ、こうした各種の態様を選択して精密加工を行うことができる。特に、磁性砥粒の比重を液状媒体の比重よりも小さくした場合には、液状媒体に浮かんだ磁性砥粒により被加工物の表面の精密加工を効果的に行うことが可能となる。
【0034】
液状媒体としては、被加工物の種類や磁性砥粒の比重等を考慮して適宜選定され、例えば水、水性潤滑剤、油、油性潤滑剤等を用いることができる。また、磁性砥液中の磁性砥粒の含有量についても、加工用途や被加工物に応じて適宜調整される。
【0035】
(磁性砥粒の使用)
本発明の磁性砥粒1は、各種被加工物の精密加工への適用が期待できる。例えば、ハードディスク装置のハードディスク基板表面のテクスチャ加工への応用が挙げられる。ハードディスク基板表面のテクスチャ加工は、ハードディスク基板の円周方向に同心円状の微細な凹凸を形成するものであり、磁気ヘッドとハードディスクとの吸着を防ぐと共にハードディスク基板上に設けられた磁性膜の磁気異方性を円周方向に付与するために行われる。
【0036】
本発明の磁性砥粒1を用いたテクスチャ加工は、磁性砥粒1がハードディスク基板の円周方向に相対運動するように、磁場やハードディスク基板を運動させることにより行われる。本発明の磁性砥粒は、被加工物であるハードディスク基板に対する摩擦力及び破壊力が小さいので、ハードディスク基板の表面を必要以上に深く削ることがない。背景技術の欄で説明した従来型の磁性砥粒では、ハードディスク基板の表面を必要以上に深く削り取ることがあり、その削り跡が基板表面に盛り上がって突起物が形成されてしまうことがあったが、本発明の磁性砥粒1を用いたテクスチャ加工によれば、そのような突起物を形成し難くすることができる。
【0037】
また、本発明の磁性砥粒の他の使用例として、半導体基板に銅配線を形成するダマシン工程で使用される化学的機械的研磨(CMP)の代替工程としての応用が期待できる。ダマシン工程とは、図2に示すように、絶縁膜5上の配線溝にバリア層6と銅めっき層7を形成した後(図2(A)を参照)、表面の不要な銅を取り除く工程(図2(B))である。本発明の磁性砥粒1をこのダマシン工程に適用することにより、銅配線を形成した半導体基板表面が深く削り取られないので、深く削り取られることにより生じるディッシング(配線部分が皿状に研磨されること)やエロージョン(配線が密な箇所の絶縁膜部分が削られること)の発生を防ぐことができる。
【0038】
本発明の磁性砥粒及び磁性砥液は、こうした応用に限定されず、本発明の磁性砥粒及び磁性砥液の機能を発揮できる各種の用途に広く適用可能である。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
(実施例1)
樹脂粒子として平均粒径100μmの硬質プラスチック粒子(積水化学工業株式会社製、製品名:SP-L100)を用い、以下の前処理をした。前処理として、まず、硫酸200cm/dm及び三酸価クロム400g/dmを含む70℃のエッチング液に樹脂粒子を15秒間浸漬してエッチングし、その後1分間水洗した。次に、この樹脂粒子に対して、錫溶液(上村工業株式会社製、製品名:S-10X)への浸漬、水洗、銀溶液(上村工業株式会社製、製品名:MSA-27)への浸漬、水洗、パラジウム溶液(上村工業株式会社製、製品名:A-10X)への浸漬、水洗、をこの順で1分間ずつ行った。
【0041】
次に、硫酸ニッケル0.1mol/L(リットル。以下同じ。)、ジメチルアミンボラン0.025mol/L、グリシン0.5mol/L、硫酸鉛1mg/L、研磨粒子としてのダイヤモンド粒子(トーメイダイヤ株式会社製、商品名:MD100、平均粒径:約100nm、比表面積:約60m/g)5.0g/Lを含むNi-B系無電解めっき液を、pH調整剤としてアンモニアと硫酸を用いてpH9.0に調整した。このめっき液に、上記前処理をした樹脂粒子を1.5g/L添加し、めっき液の温度を70℃として、エア攪拌しながら無電解めっきを60分間行って、本発明の磁性砥粒を得た。
【0042】
得られた磁性砥粒の表面を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により調べたところ、図3に示すように、研磨粒子であるダイヤモンド粒子が磁性層であるNi-Bめっき層に固着されていた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の磁性砥粒の一例を示す模式断面図である。
【図2】ダマシン工程の一例を示す断面図である。
【図3】実施例で得られた磁性砥粒の反射電子像である。
【符号の説明】
【0044】
1 磁性砥粒
2 樹脂粒子
3 磁性層
4 研磨粒子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2