TOP > 国内特許検索 > ダイアモンド電極及びこれを用いた無電解ニッケルめっき浴の管理方法並びに測定装置 > 明細書

明細書 :ダイアモンド電極及びこれを用いた無電解ニッケルめっき浴の管理方法並びに測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4324672号 (P4324672)
公開番号 特開2006-090835 (P2006-090835A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月2日(2009.9.2)
公開日 平成18年4月6日(2006.4.6)
発明の名称または考案の名称 ダイアモンド電極及びこれを用いた無電解ニッケルめっき浴の管理方法並びに測定装置
国際特許分類 G01N  27/30        (2006.01)
C23C  18/16        (2006.01)
C23C  18/34        (2006.01)
G01N  27/48        (2006.01)
G01N  27/49        (2006.01)
FI G01N 27/30 B
C23C 18/16 Z
C23C 18/34
G01N 27/48 311
G01N 27/46 306
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2004-276533 (P2004-276533)
出願日 平成16年9月24日(2004.9.24)
審査請求日 平成18年3月13日(2006.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】吉原 佐知雄
【氏名】張 延栄
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】大竹 秀紀
参考文献・文献 特開2002-322598(JP,A)
特開平11-083799(JP,A)
特開2001-174374(JP,A)
特開平01-501324(JP,A)
特開2001-021521(JP,A)
特開平07-270372(JP,A)
調査した分野 G01N 27/30
C23C 18/16
C23C 18/34
G01N 27/48
G01N 27/49
特許請求の範囲 【請求項1】
ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極、並びに対向電極及び参照電極を、ポテンショスタットに接続してなる測定装置を用い、無電解ニッケルめっき浴より採取した試料を所定濃度に希釈して得られた試料溶液にこれら電極を浸漬し、
まず(1)試料溶液中で、作用電極の電極電位を、試料溶液中のNiイオンが作用電極上にNiとして析出される還元側条件に所定時間保持し、(2)次いで、試料溶液中で、作用電極の電極電位を、析出したNi表面がオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)となる酸化側条件に所定時間保持し、(3)さらに、試料溶液中で、作用電極の電極電位を微分パルスボルタンメトリー法に基づき、前記(2)段階における作用電極の電極電位を開始電位として所定電位まで電位走査することにより、電圧-電流曲線を記録してピーク電流値を読み取り、これを予め作成しておいた検量線と対比して、めっき浴中に含まれるニッケル濃度を求めることを特徴とする無電解ニッケルめっき浴の管理方法。
【請求項2】
前記作用電極を前記所定電位まで電位走査した後に、作用電極の電極電位を規定濃度の硫酸水溶液中で酸化条件側に所定時間保持し、作用電極の洗浄を行うことを特徴とする請求項に記載の無電解ニッケルめっき浴の管理方法。
【請求項3】
前記(1)段階の前に、作用電極の電極電位を規定濃度の水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液中で酸化条件側に所定時間保持し、作用電極の前処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解ニッケルめっき浴の管理方法。
【請求項4】
前記ホウ素ドープダイアモンド電極はホウ素のドーズ量が1×1019~2×1019 atoms/cm3であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の無電解ニッケルめっき浴の管理方法。
【請求項5】
前記ホウ素ドープダイアモンド電極が回転電極であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の無電解ニッケルめっき浴の管理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアモンド電極及びこれを用いた無電解めっき浴の管理方法並びに測定装置に関し、更に詳しくは、ニッケル無電解浴のニッケル濃度管理に適したダイアモンド電極及びこれを用いた無電解めっき浴の管理方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無電解めっき法は、金属上や各種素材上への薄膜形成法として各種の分野で広く応用されており、特に無電解ニッケルめっきは最も多く研究がなされ且つ実用化されているものの1つである。また、近年では、例えば、半導体装置製造における導体パターン、スルーホール、ビア等の形成技術等としても用いられており、信頼性向上等の必要性からめっき品質に対する要求はますます高くなっている。
【0003】
無電解ニッケルめっきの場合、還元剤に次亜りん酸塩を使えばニッケル-りん(Ni-P)合金めっきが得られ、硼素化合物を使えばニッケル-ボロン(Ni-B)合金めっきが得られる。還元剤に次亜りん酸塩を使ったニッケル-りん合金めっきは、機械的・電気的・物理的特性等が優れていることや、複雑な形状の製品にもめっき皮膜を均一に被覆できること等の特性から、種々の分野に使用されている。一方、還元剤に硼素化合物、例えばジメチルアミノボロン(DMAB)を使ったNi-B合金めっきは、めっき皮膜上に酸化膜が形成さえ難いので、熱処理時に変色しない、はんだの濡れ性が良好、導電率がNi-P合金めっきに比べて著しく低い等の特徴を有しているが、その一方で、めっき浴が不安定で管理が難しい、コストが高い等の理由から、主として半導体や電子部品等の特殊な用途に用いられているのが現状である。
【0004】
このような無電解ニッケルめっきにおいて、めっき浴中におけるニッケル濃度の管理は極めて重要な項目である。無電解ニッケルめっきを行うと、ニッケル成分が消費されてその濃度が徐々に低下していくので、ニッケル濃度を既定値に維持するためには、その消費量に応じてニッケル成分を随時補給する必要がある。このとき、ニッケル成分以外の他の成分は、一般的には、ニッケル成分の補給量を指標として比例的に補給されている。
【0005】
従来、このような無電解ニッケルめっき浴中のニッケル濃度の分析方法としては、主に分光光度法が用いられている。例えば、めっき浴から定期的にめっき液をサンプリングして吸光度測定を行い、得られた吸光度値を予め作成しておいた検量線(Ni-B濃度 対 吸光度)に対照させることにより濃度測定を行っていた。
【0006】
無電解ニッケルめっき液には各種錯化剤が配合されており、ニッケル成分はニッケル錯イオンとして存在し、そのニッケル錯体は緑色系の波長範囲の光を強く吸収し、この波長範囲での吸光度とニッケル濃度には良好な比例関係が存在する。この特徴を利用して上記したような定量分析が行われていた。特定の波長範囲で測定を行うためには光を分光する必要があるが、装置の多くは干渉フィルターで光を選択する手法を採用している。この他に、回折格子やプリズム等を用いたモノクロメーターを使って単色光に極めて近い波長を得る方法も知られている。

【特許文献1】特開2002-322598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した分光光度法を用いてニッケル濃度を測定する方法は、機構的に複雑になり、比較的高価になること、また、測定に比較的長時間を要する等の問題があり、改善が望まれていた。
【0008】
また、上記特許文献1には、めっき液中のめっき成分の濃度を電気化学的に測定する方法が提案されている。しかし、無電解ニッケルめっき液中には、金属塩、還元剤、錯化剤及び添加剤等が含まれており、これらの影響によりニッケル濃度の定量は難しく、容易で再現性のある測定方法が要望されていた。また、電気化学的な測定方法において、測定に用いられる作用電極(センサー電極)は被めっき物となり、測定操作を繰り返す上で酸やアルカリ溶液に晒されるので、酸やアルカリ等に対する耐食性が良好で、長期間安定して再現性よく測定できる電極も必要であった。
【0009】
本発明は、上記したような従来技術における問題点を解決するためになされたものであって、より安価でかつ迅速な手法によりニッケル無電解めっき浴中のニッケル濃度を定量できる無電解ニッケルめっき浴の管理方法及び測定装置並びにこのようなめっき浴管理において、用いられ得る長期的に安定で再現性良く測定できる作用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る電極は、無電解ニッケルめっき浴の電気化学的なNi濃度測定に作用電極として用いられる電極であって、ホウ素のドーズ量が1×1019~2×1019 atoms/cm3 であることを特徴とするホウ素ドープダイアモンド電極である。
【0011】
本発明においては、さらに、回極電極であるホウ素ドープダイアモンド電極が示される。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る無電解ニッケルめっき浴の管理方法は、ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極、並びに対向電極及び参照電極を、ポテンショスタットに接続してなる測定装置を用い、無電解ニッケルめっき浴より採取した試料を所定濃度に希釈して得られた試料溶液にこれら電極を浸漬し、まず(1)試料溶液中で、作用電極の電極電位を、試料溶液中のNiイオンが作用電極上にNiとして析出される還元側条件に所定時間保持し、(2)次いで、試料溶液中で、作用電極の電極電位を、析出したNi表面がオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)となる酸化側条件に所定時間保持し、(3)さらに、試料溶液中で、作用電極の電極電位を微分パルスボルタンメトリー法に基づき、前記(2)段階における作用電極の電極電位を開始電位として所定電位まで電位走査することにより、電圧-電流曲線を記録してピーク電流値を読み取り、これを予め作成しておいた検量線と対比して、めっき浴中に含まれるニッケル濃度を求めることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の無電解ニッケルめっき浴の管理方法においては、前記作用電極を前記所定電位まで電位走査した後に、作用電極の電極電位を規定濃度の硫酸水溶液中で酸化条件側に所定時間保持し、作用電極の洗浄を行うことが望ましい。
【0014】
本発明の無電解ニッケルめっき浴の管理方法においては、前記作用電極を前記所定電位まで電位走査する前に、作用電極の電極電位を規定濃度の水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液中で酸化条件側に所定時間保持し、作用電極の前処理を行うことが望ましい。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る無電解ニッケルめっき浴管理用の測定装置は、無電解ニッケルめっき浴より採取した試料の希釈溶液を入れるための容器と、当該容器内に配置される、ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極並びに対向電極及び参照電極と、当該各電極が接続されるポテンショスタットとで少なくとも構成されることを特徴とする無電解ニッケルめっき浴管理用の測定装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホウ素ドープダイアモンド電極を作用電極として用いる電気化学的手法により、より安価で、迅速に、無電解ニッケルめっき浴中のニッケルの検量が可能となる。無電解ニッケルめっき浴中には、金属塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等が含まれることにより、電気化学的手法によるニッケル量の定量は極めて困難であることが予想されるが、本発明においては、これらの影響の少ない上述したような三段階的手法を用いることにより、正確性良くニッケル量の定量が可能となった。さらに、作用電極として、酸及びアルカリ溶液中で安定性に優れるホウ素ドープダイアモンド電極は、無電解ニッケルめっき浴のニッケル量の定量において、長期的に安定な再現性の良いセンサー電極となり得るものであることから、無電解ニッケルめっき浴の長期にわたる安定した管理が可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のホウ素ドープダイアモンド電極及びこれを用いた無電解ニッケルめっき浴の管理方法並びに管理用の測定装置につき、具体的な実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
(ホウ素ドープダイアモンド電極)
本発明は、無電解ニッケルめっき浴の電気化学的なNi濃度測定に作用電極として用いられる電極であって、ホウ素のドーズ量が1×1019~2×1019 atoms/cm3であることを特徴とするホウ素ドープダイアモンド電極である。
【0019】
本発明に係るホウ素ドープダイアモンド電極は、特に限定されるものではないが、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により作製することができる。具体的には、真空チャンバ内に所定形状を有する単結晶シリコーン等の基材を設置し、水素ガス、アセトン等の炭素源、さらにメタノールで溶解した酸化ホウ素をアセトンと混合した後に水素ガスのバブリングによって、それぞれチャンバ内に導入し、マイクロ波を照射して、これらのガスをプラズマ状にし、基材表面にボロンドープされたダイアモンド薄膜を形成するものである。この形成条件は特に限定されるものではないが、例えば、水素ガス流量:300SCCM(at22℃)、バブリング用の水素ガス流量:3.0SCCM(at22℃)、チャンバ内温度:540℃、マイクロ波照射条件:内圧70Torr、出力1400Wといった条件を用いることができる。
【0020】
図1(a)は、このようにマイクロ波プラズマCVD法により作製されたホウ素ドープダイアモンド電極の一例における表面の電子顕微鏡写真(倍率3000倍)及びその図面であり、図1(b)は、同表面のより拡大された電子顕微鏡写真(倍率7000倍)及びその図面である。図1(b)に見られるように、表面には三角形や四角形に成長したダイアモンドの特徴的な結晶粒が存在する。
【0021】
このようにして得られるホウ素ドープダイアモンド薄膜の膜厚は特に限定されるものではないが、例えば10~20μm程度が適当である。
【0022】
本発明に係るホウ素ドープダイアモンド電極は、上記したように、ホウ素のドーズ量が1×1019~2×1019 atoms/cm3であるために導電性が付与され、例えば、四端子法で0.01~1.0Ω・m、より好ましくは0.01~0.1Ω・mといった抵抗率ρを示す。
【0023】
また、このようにして得られるホウ素ドープダイアモンド電極は、(1)電位窓(水溶液中の水が分解しない電位範囲、即ちこの溶液において電気化学測定ができる範囲)が広い、(2)充電電流が小さい、(3)酸、アルカリ溶液中で非常に安定である、といった特性を有するため、無電解ニッケルめっき浴中のニッケル濃度を測定する上で特に好ましいものとなる。
【0024】
(無電解ニッケルめっき浴管理用の測定装置)
次に、本発明に係る無電解ニッケルめっき浴の管理方法において用いられる測定装置の構成につき説明する。
図2は、本発明に係る無電解ニッケルめっき浴の管理方法において用いられる電気化学測定装置の構成例を示す図面である。本発明に係る測定装置1は、無電解ニッケルめっき浴より採取した試料の希釈溶液5を入れるための容器と、その容器内に配置される、ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極2並びに対向電極4及び参照電極3と、それらの各電極が接続されるポテンショスタット6とで少なくとも構成される。
【0025】
この電気化学測定装置においては、電気化学セルの構成としていわゆる3電極方式を用いる。すなわち、図2に示すように、電気化学測定装置1においては、電気化学セルは、負極であり被めっき物でもある上記ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極2と、その作用電極2との電位差を測定するための参照電極3と、正極である対向電極4とで構成されている。これらの各電極は試料溶液5中に浸漬されている。そして、これらの電極は、3電極系を測定する上での公知の装置であるポテンショスタット6に電気的に接続されている。なお、図2に示す構成例においては、ポテンショスタット6には、測定されたデータから濃度を算出する、例えばパーソナルコンピュータ等より構成される演算部7が接続されている。
【0026】
参照電極3としては、特に限定されるものではないが、例えば、飽和KClカロメル電極(SCE電極)、飽和KCl銀塩化銀電極、Ag/AgCl電極等を用いることができ、好ましくはSCE電極である。
【0027】
また、対向電極4としては、特に限定されるものではないが、安定な電極材料(自身が反応することのないような電極材料)例えば、Pt電極、Au電極、カーボン電極等を用いることができ、好ましくはPt電極である。
【0028】
また、ポテンショスタット6は、参照電極3の電位が変わらないように(参照電極に電流を流さないように)作用電極2の電位を制御するために使用され、参照電極3に対する作用電極2の電位が設定したい電位になるように、作用電極2と対向電極4との間の電流を流すことができる。加えて、ポテンショスタット6は、作用電極2と対向電極4との間の電流値を測定するための装置でもある。
【0029】
測定された電流値は、以下に詳述するように、無電解ニッケルめっき浴中のめっき成分濃度を求めるためのデータとして利用される。すなわち、測定された電流値は、ポテンショスタット1に接続された演算部6で解析されて、ニッケルめっき成分濃度の算出が行われる。また、演算部6でめっき成分の不足量を計算し、そのデータを図示しない制御部に送り、めっき成分を自動供給するようにしてもよい。
【0030】
また、図2に示す構成例においては、ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極2は回転電極とされており、モータ等の適当な駆動装置8に接続され、さらにこの駆動装置8は、回転制御装置9に電気的に接続され、所定回転数、例えば、100~5000rpm、代表的には例えば3000rpmで定速回転できるようにされている。しかしながら、本発明において、ホウ素ドープダイアモンド電極からなる作用電極2は、上記したように非常に感度が良好なものであるので、必ずしもこのような回転電極の形態を有する必要はなく、静止電極の形態としてマグネティックスターラー等の攪拌子と組み合わせて用いることも可能である。
【0031】
(無電解ニッケルめっき浴の管理方法)
本発明において、上記したような電気化学測定装置を用いて無電解ニッケルめっき浴中のニッケル濃度を、以下に詳述するようにして測定する。
【0032】
まず、実際に無電解ニッケルめっき浴中のニッケル濃度を測定するに先立ち、作用電極は、前処理として、規定濃度の水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液中で作用電極の電極電位を酸化条件側で所定時間保持する処理が施されることが望ましい。このような前処理を施すことで、ニッケルがめっきされない条件で作用電極を一定状態に保つことができる。使用される媒体としての水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液の濃度としては、特に限定されるものではないが、モル濃度が0.05~0.2M程度の水溶液、例えば、0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液を好適に用いることができる。また、作用電極の電極電位は、参照電極(SCE)基準で1.5~2.4V程度、例えば+1.5Vとし、この電位に30~70分間、例えば30分間保持すれば良い。
【0033】
そして、本発明において、無電解ニッケルめっき浴中のニッケル濃度の測定は、微分パルスボルタンメトリー法に基づき行われる。まず、無電解ニッケルめっき浴より採取した試料は、測定のために、所定濃度、例えば1000~2000倍、代表的には1000倍に希釈され、水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液、例えば0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液を適量添加して測定用の試料とする。例えば、回転電極の場合は、希釈しためっき浴を0.3ml採取し、さらに水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液を加えた計10mlの電気分解溶液を測定用試料として使用する。また、静止電極の場合は、希釈しためっき液を0.2ml採取し、さらに水酸化ナトリウム/硝酸アンモニウム水溶液を加えた計10mlの電気分解溶液を測定用試料として使用する。
【0034】
このようにして調製された試料溶液を、図2に示すように測定セル中に入れ、このセル中に各電極を浸漬した後、まず(1)試料溶液中で作用電極の電極電位を、試料溶液中のNiイオンが電極上にNiとして析出される還元側条件に所定時間保持する。還元側条件としては、参照電極(SCE)基準で、-1.0~-2.0V程度のマイナス電位、例えば-2.0Vとし、この電位に60~120秒間、例えば60秒間保持する。この条件下におくことにより、作用電極表面にニッケルがめっきされる(Ni(II)溶液→Ni/電極°)。
【0035】
次いで、(2)試料溶液中で、作用電極の電極電位を、(1)段階において作用電極に析出したNiの表面がオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)となる酸化側条件、すなわちNi2+がNi3+に酸化される酸化側条件に所定時間保持する。酸化側条件としては、参照電極(SCE)基準で+1.0~+1.5V程度のプラス電位、例えば+1.0Vとし、この電位に60~120秒間、例えば60秒間保持する(Ni/電極→NiOOH/電極°)。このように、オキシ水酸化ニッケルとすることによって、測定感度、特に測定の選択性を高めることができる。
【0036】
そして、その後、(3)試料溶液中で、作用電極の電極電位を微分パルスボルタンメトリー法に基づき、前記(2)段階における作用電極の電極電位を開始電位として所定電位まで電位走査し、溶出信号(NiOOH/電極→Ni(OH)2/電極°)、すなわち電圧-電流曲線を記録してピーク電流値を読み取る。ここで、微分パルスボルタンメトリー法(DPV:Differencial Pulse Voltammetry)は、公知のように、一定速度で増大ないし減少する直流電圧に一定周期毎に一定パルス電圧を重畳する方法であり、S/N比が良好となり、高い分解能のピークを得ることができる。電位走査条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、(2)段階における作用電極の電極電位+1.0Vの開始電位から、終点電位として+0.2~-0.2V、代表的には0Vまで、掃引速度50mV/秒、パルス電圧50mV、パルス間隔20msといった条件にて行われる。
【0037】
このようにして、ピーク電流値を読み取り、これを予め作成しておいた検量線と対比してめっき浴中に含まれるニッケル濃度を決定する。検量線は、測定に用いたものと同じ媒体に、既知量のニッケルを数段階の濃度となるように加えた試料に対して、以上説明した手順で操作してそれぞれのピーク電流値を読み取り、それぞれのニッケル濃度に対してそれぞれのピーク電流値からブランクのピーク電流値を差し引いた値をプロットすることにより得られる。
【0038】
さらに本発明の無電解ニッケルめっき浴の管理方法においては、このようにして、電位測定に使用した作用電極を、規定濃度の硫酸水溶液中で作用電極の電極電位を酸化条件側に所定時間保持して、作用電極の洗浄を行うことが望ましい。このような洗浄操作を行う理由は、後述する実施例において示すように、長期的に安定な再現性の良い測定が可能となることが見出されたためである。なお、洗浄操作に使用する硫酸水溶液の濃度としては、特に限定されるものではないが、モル濃度が0.05~0.5M程度の水溶液、例えば0.1M HSO水溶液を好適に用いることができる。また、酸化側条件としては、参照電極(SCE)基準で、+1.0~2.4V程度のプラス電位、例えば+1.0Vとし、この電位に60~120秒間、例えば60秒間保持する処理を例示することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
(実施例1:ホウ素ドープダイアモンド電極の作製)
マイクロ波プラズマCVD法によりホウ素ドープダイアモンド電極を作製した。マイクロ波プラズマCVD装置(セキテクノトロン株式会社製、商品名:ASTeX2115)の真空チャンバ内に回転ディスク状の単結晶シリコーン基材を設置し、ここに水素ガス、アセトン等の炭素源、さらにメタノールで溶解した酸化ホウ素をアセトンと混合して水素ガスのバブリングによって、それぞれチャンバ内に導入し、例えば水素ガス流量:300SCCM(at22℃)、バブリング用の水素ガス流量:3.0SCCM(at22℃)、チャンバ内温度:540℃、マイクロ波照射条件:内圧70Torr、出力1400Wにて反応を起こし、基材表面に厚さ20μmのホウ素ドープダイアモンド薄膜を形成した。図1(a)は、このようにマイクロ波プラズマCVD法により作製されたホウ素ドープダイアモンド電極の一例における表面の電子顕微鏡写真(倍率3000倍)及びその図面であり、図1(b)は、同表面のより拡大された電子顕微鏡写真(倍率7000倍)及びその図面である。
【0041】
得られたホウ素ドープダイアモンド回転電極は、ホウ素のドーズ量が1×1019~2×1019 atoms/cm3であり、例えば、四端子法で測定した結果、0.5Ω・mの抵抗率を示した。
【0042】
また、基材として、回転ディスク状ではない矩形の単結晶シリコーンを用い同様の条件にて処理を行って、静止電極も併せて作製した。
【0043】
(実施例2:検量線作成)
実施例1において作製されたホウ素ドープダイアモンド電極を作用電極として用い、図2に示すような電気化学測定装置を構成した。
【0044】
作用電極の前処理;測定に先立ち、ホウ素ドープダイアモンド電極を、0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液中で、参照電極(SCE)基準で+1.5Vの電位で30分間保持して、前処理を行った。
【0045】
測定;(1)種々の既知濃度のNiを含む0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液中で、ホウ素ドープダイアモンド電極を参照電極(SCE)基準で-2.0Vで60秒間保持した。次いで、(2)上記既知濃度のNiを含む溶液中で、作用電極の電極電位を、参照電極(SCE)基準で+1.0Vとし、この電位に60秒間保持した。その後、(3)上記既知濃度のNiを含む溶液中で、作用電極の電極電位を参照電極(SCE)基準で+1.0Vから0Vまで、掃引速度50mV/秒、パルス電圧50mV、パルス間隔20msで電位走査し、電圧-電流曲線を記録し、ピーク電流値を読み取り、溶液のNi既知濃度により検量線を作成した。
【0046】
図3は、記録された電圧-電流曲線であり、また図4は、得られた検量線を示すものである。なお、図3及び図4中において、(a)図は、ホウ素ドープダイアモンド電極として回転電極を用いた場合のデータを示すものであり、(b)図は、静止電極とし溶液の攪拌を行った場合のデータを示すものである。図4に示すように、いずれの場合においても、直線性の検量線が得られた。
【0047】
作用電極の洗浄;ホウ素ドープダイアモンド電極は、各試料溶液の測定後に、0.1M HSO水溶液中に、参照電極(SCE)基準で、+1.0Vで、60秒間保持され、洗浄処理が施された。
【0048】
(実施例3:試料測定)
実施例1において作製されたホウ素ドープダイアモンド電極を作用電極として用い、図2に示すような電気化学測定装置を構成した。
【0049】
作用電極の前処理;測定に先立ち、ホウ素ドープダイアモンド電極を、0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液中で、参照電極(SCE)基準で、+1.5Vの電位で30分間保持して、前処理を行った。
【0050】
試料溶液;ニッケルめっきを行っている、0.1M NiSOを含むNi-B無電解浴から試料を採取し、これを純水にて1000倍に希釈し、0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液中に適当に添加して試料溶液とした。
【0051】
測定;(1)試料溶液中で、ホウ素ドープダイアモンド電極を参照電極(SCE)基準で、-2.0Vで60秒間保持した。次いで、(2)上記試料溶液中で、作用電極の電極電位を、参照電極(SCE)基準で+1.0Vとし、この電位に60秒間保持した。その後、(3)試料溶液中で、作用電極の電極電位を参照電極(SCE)基準で+1.0Vから0Vまで、掃引速度50mV/秒、パルス電圧50mV、パルス間隔20msで電位走査し、電圧-電流曲線を記録し、ピーク電流値を読み取った。
【0052】
試料溶液に関し、得られた電圧-電流曲線を図3(a)、(b)中に太線にて示す。なお、図4(a)に示す検量線から、ホウ素ドープダイアモンド電極として回転電極を用いた場合における試料溶液のNi濃度は、0.10μMと判断され、図4(b)に示す検量線から、ホウ素ドープダイアモンド電極を静止電極とし且つ溶液の攪拌を行った場合における試料溶液のNi濃度は、0.098μMと判断された。なお、その試料溶液のNi濃度をICP(高周波誘導結合プラズマ分光分析法)測定した結果は、0.099μMであった。
【0053】
作用電極の洗浄;ホウ素ドープダイアモンド電極は、各試料溶液の測定後に、0.1M HSO水溶液中に、参照電極(SCE)基準で、+1.0Vで、60秒間保持され、洗浄処理が施された。
【0054】
(実施例4:不純物の影響)
試料中における不純物の影響を調べるため、過剰な量のPbを添加した試料溶液を準備して、Ni濃度の測定を行った。試料溶液として、いずれも、5.18μMのNi2+を含むが、Niイオンとのモル比(Pb2+:Ni2+)で、1:1、4:1、8:1の割合でさらにPbを含有する0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液を試料として準備し、実施例3に示したと同様の手順でNi濃度を測定して、Pbを含まない比較対照溶液の電圧-電流曲線と対比した。
【0055】
得られた結果を図5に示す。図5に示すように、過剰な不純物を含んでいても、Ni濃度測定特性にあまり変化は見られず、本発明に係る測定方法がニッケル浴中の不純物等の影響を受け難いものであることが示された。
【0056】
(実施例5:洗浄処理による電極の安定性)
洗浄処理による電極の安定性を調べるために、(1)新規なホウ素ドープダイアモンド電極、(2)別の試料溶液の測定後に、0.1M HSO水溶液中に、参照電極(SCE)基準で、+1.0Vで、60秒間保持され、硫酸洗浄処理を施されて、1日経過したホウ素ドープダイアモンド電極、及び(3)別の試料溶液の測定後に、0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液中に、参照電極(SCE)基準で、+1.0Vで、60秒間保持され、アルカリ洗浄処理を施されたホウ素ドープダイアモンド電極を用意し、実施例3に示したと同様の手順で、DPV法により、既知濃度5.18μMのNiを含む0.1M NaOH/0.1M NHNO水溶液のNi濃度測定を行い、各電極で、得られた電圧-電流曲線を比較した。
【0057】
その結果を図6に示す。図6に示すように、(2)の硫酸洗浄処理を施した電極(図中、「Aft. 1D」)は、(1)の新規な電極(図中、「Original」)とほぼ同様の特性を示し、ホウ素ドープダイアモンド電極に硫酸洗浄処理を施すことで、再現性良く繰り返し測定を行い得ることが示された。なお、(3)のアルカリ洗浄処理を施した電極(図中、「Clean in blank」)においては、プラス電位が高いところでは、新規な電極とは異なる測定値を示した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a)は、実施例においてマイクロ波プラズマCVD法により作製されたホウ素ドープダイアモンド電極の一例の表面の電子顕微鏡写真(倍率3000倍)及びその図面であり、(b)は、同表面のより拡大された電子顕微鏡写真(倍率7000倍)及びその図面である。
【図2】本発明に係る無電解ニッケルめっき浴の管理方法において用いられる電気化学測定装置の構成例を示す模式図である。
【図3】実施例において各種濃度のNiを含む試料溶液を、本発明に係るホウ素ドープダイアモンド電極を用いたDPV法により測定した結果得られた電圧-電流曲線を示すチャートであり、(a)は回転電極による測定値で、(b)は静止電極による測定値である。
【図4】実施例において得られたNi濃度とピーク電流値との検量線を示すチャートであり、(a)は回転電極に関するもので、(b)は静止電極に関するものである。
【図5】実施例で得られた、種々の濃度のPbを不純物としてNiと共に含む試料溶液を、本発明に係るホウ素ドープダイアモンド電極を用いたDPV法により測定した結果得られた電圧-電流曲線を示すチャートである。
【図6】ホウ素ドープダイアモンド電極の洗浄処理の影響を調べる上で、実施例において得られた、DPV法により測定した電圧-電流曲線を示すチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 電気化学測定装置
2 作用電極
3 参照電極
4 対向電極
5 試料溶液
6 ポテンショスタット
7 演算装置
8 駆動装置
9 回転制御装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5