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明細書 :磁性砥粒及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4143727号 (P4143727)
公開番号 特開2006-176698 (P2006-176698A)
登録日 平成20年6月27日(2008.6.27)
発行日 平成20年9月3日(2008.9.3)
公開日 平成18年7月6日(2006.7.6)
発明の名称または考案の名称 磁性砥粒及びその製造方法
国際特許分類 C09K   3/14        (2006.01)
C23C  18/18        (2006.01)
C23C  18/32        (2006.01)
FI C09K 3/14 550C
C23C 18/18
C23C 18/32
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2004-372950 (P2004-372950)
出願日 平成16年12月24日(2004.12.24)
審査請求日 平成18年3月13日(2006.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】吉原 佐知雄
【氏名】張 延栄
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】澤村 茂実
参考文献・文献 坂東慎之介 他,Al2O3円管内面の精密仕上げ研磨に関する研究,砥粒加工学会誌,日本,(社)砥粒加工学会,2001年 1月 1日,第45巻 第1号,p46-49
調査した分野 C09K 3/14
B24B 37/00
C23C 18/00-20/08
特許請求の範囲 【請求項1】
活性炭粒子上に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層が形成されていることを特徴とする磁性砥粒。
【請求項2】
前記含ニッケル無電解めっき層が、無電解ニッケル-ボロンめっき層、又は無電解ニッケル-ボロン-ダイアモンド複合体めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の磁性砥粒。
【請求項3】
活性炭粒子をNiSO/ピコリン酸溶液に浸漬した後、この活性炭粒子を不活性雰囲気下にて加熱乾燥することにより、活性炭粒子上にニッケル金属元素を形成して活性炭粒子の活性化を行い、次いで、含ニッケル無電解めっきを行って、前記活性炭粒子の表面に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層を形成することを特徴とする磁性砥粒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気研磨法等に利用される磁性砥粒及びその製造方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
磁気研磨法は、研磨作用を有する砥粒を磁場の作用により運動させて被加工物の表面を研磨する精密加工方法である。この磁気研磨法は、従来の機械加工では困難な部品の研磨を可能にする方法であり、例えば、複雑形状を有する部品の表面、工具が入らない穴の内面、工具が届かない管の内面等の研磨について一部実用化されている。
【0003】
磁気研磨法において、これに使用される磁気研磨砥粒(以下、磁性砥粒という。)は、仕上げ品質及び仕上げ精度を確かなものとするために、極めて重要なものである。
【0004】
従来、磁性砥粒としては、磁性粒子と、磁性を持たない砥粒とからなるものが使用されている。磁性を持たない砥粒は、例えば、Al、SiC、ZrO、BC及びダイアモンド、立方晶窒化ホウ素、MgO、CeO又はヒュームドシリカ、からなるものであり、通常、切削工具として用いられている。なお、磁性砥粒としては、磁性粒子と砥粒とが結合していないもの、軽く結合しているもの又は結合しているもの(これを、結合磁性砥粒という。)のいずれかを使用することができる。
【0005】
結合磁性砥粒としては、高温高圧下の不活性ガス雰囲気中で鉄と焼結させた酸化アルミニウム(非特許文献1)、あるいは不活性ガス雰囲気中でのアルミニウムと酸化鉄とのテルミット反応の生成物等を代表的に例示できる。市販の結合磁性砥粒の種類は、その複雑な製造プロセスがゆえに限定されている。
【0006】
磁気研磨法に利用される磁性粒子としては、磁界によって研磨力を与える鉄粒子が最も汎用されている(非特許文献2)。しかしながら、鉄粒子の腐食性及びその軟度ゆえに、鉄粒子を含む磁性砥粒を用いて仕上げられた表面は、後洗浄を必要とすることとなり、このために、多くの時間を費やし、かつ、いくつかの超精密磁気研磨法においてはこの後洗浄工程が、律速反応的なものとなってしまうものであった。このため、このような従来の鉄粒子に変わる他の磁性粒子が早急に必要とされていた。
【0007】
ニッケルは磁性材料であり、その公知の耐食性や硬度ゆえに、研究者の注目を浴びている。ニッケルは、電解めっきや無電解めっきで簡単に析出等させることができるので、磁気研磨法の研究領域にたずさわる研究者に着目されている。特に、無電解めっきは、被めっき材が金属であろうと不活性なものであろうと、また成形されたものであろうとそうでなかろうと、その被めっき材の表面に薄い金属皮膜を形成することができる簡単な方法であるゆえに、好ましいめっき方法として利用されている。さらに、無電解ニッケル複合体めっきもまた、公知の技術である。
【0008】
なお、特許文献1には、鉄粒子からなる磁性粒子の表面に、ダイアモンド等の研磨粒子を含有した無電解ニッケルめっき皮膜を形成した磁性砥粒が報告されている。

【特許文献1】特開2002-265933号公報(請求項3)
【非特許文献1】Shinmura T., Takazawa K. and Hatano E. "Study on magnetic abrasive finishing", Ann. CIRP, vol. 39, No. 1, pp: 325-328 (1990)
【非特許文献2】Yamaguchi H., Shinmura T and Kashiwagi R., “Internal finishing of austenitic stainless steel tube by a magnetic field assisted finishing process using a slurry circulation system”, Transactions of NAMRI/SME, volume 32, pp: 175-182, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の磁性砥粒は、その体積の大部分が比重の高い磁性粒子で占められているので重くて大きな研磨効果を有するものの、より精密な研磨加工を行う際には、必要以上に被加工物の表面を研磨してしまうことから必ずしも好ましい研磨砥粒であるとは言えないものであった。また、上述したように、基材となる磁性粒子として鉄粒子を用いているため、上述したような鉄粒子の腐食性及び軟度の問題も生じるものであった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、軽量でかつより精密な表面研磨を行える磁性砥粒及びその製造方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の磁性砥粒は、活性炭粒子上に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、基材として活性炭粒子を用い、その表面上に磁性層としての含ニッケル無電解めっき層が形成されているので、磁気研磨法に用いることのできる、軽量かつ安価で、高い研磨能力を有する磁性砥粒となる。
【0013】
本発明の磁性砥粒においては、前記含ニッケル無電解めっき層が、無電解ニッケル-ボロンめっき層、又は無電解ニッケル-ボロン-ダイアモンド複合体めっき層であることを特徴とする。この発明によれば、めっき層が耐食性、硬度等に優れたものとなり、より優れた研磨能力を有する磁性砥粒となる。
【0014】
本発明の磁性砥粒の製造方法は、活性炭粒子をNiSO/ピコリン酸溶液に浸漬した後、この活性炭粒子を不活性雰囲気下にて加熱乾燥することにより、活性炭粒子上にニッケル金属元素を形成して活性炭粒子の活性化を行い、次いで、含ニッケル無電解めっきを行って、前記活性炭粒子の表面に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層を形成することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、活性炭粒子をNiSO/ピコリン酸溶液に浸漬した後、この活性炭粒子を不活性雰囲気下にて加熱乾燥することにより、活性炭粒子に付着したピコリン酸とニッケルとのキレート化アニオンがニッケル金属に還元すると共にピコリン酸が炭化する。こうして形成されたニッケル金属元素によって活性炭粒子の活性化が行われ、次いで行われる含ニッケル無電解めっきにより、活性炭粒子の表面に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層が形成される。したがって、この製造方法によれば、上述したような優れた特性を有する磁性砥粒を比較的簡単な手法により製造できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の磁性砥粒及びその製造方法によれば、軽量でかつ研磨性能に優れた磁性砥粒を安価に得ることができ、さらに、この磁性砥粒を用いて磁気研磨法による精密研磨を行うことができる。このため、被加工物の表面の精密加工が可能となると共に、複雑な形状を有する被加工物を容易に加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の磁性砥粒及びその製造方法について、図面に基づき詳細に説明する。

【0023】
本発明の磁性砥粒は、活性炭粒子上に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層が形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の磁性砥粒においては、活性炭粒子の露出表面にめっき層が形成されているのみならず、その細孔中にもめっき層が入り込んでいる。その結果、基材である活性炭粒子がめっき層を堅固に保持している。こうしたいわゆるアンカー効果によって、活性炭粒子とめっき層とが高い結合力で結合し、得られた磁性砥粒は、機械的強度にも優れたものとなる。
【0025】
本発明の磁性砥粒において、基材として用いられる粒子状の活性炭は、公知のように、大きな比表面積と吸着能を有する多孔質の炭素質物である。活性炭は、一般に、木炭、椰子ガラ、石炭チャーその他の原料を十分に炭化したのち、水蒸気による高温処理、あるいは塩化亜鉛などの水溶液の含浸と高温焼成などの方法で賦活して製造されるものであり、比表面積800~1200m/g、容積0.2~2cm/g、細孔径1~4nm程度のものである。
【0026】
なお、本発明において基材として用いられる活性炭としては、特に限定されるものではないが、例えば、比表面積が800~1200m/g、容積が0.2~2cm/g、細孔径が1~4nm程度のものがより望ましい。
【0027】
また、活性炭粒子の粒径としては、加工対象である被加工物の材質や形状及びその被加工物への加工目的等に応じて適宜選定され得るが、超精密加工等の上からはある程度その粒径が小さいものが望ましい。こうした観点から、活性炭粒子の平均粒径は、通常0.02~100μm、より望ましくは0.02~10μmである。
【0028】
なお、所望粒径の活性炭粒子は、例えば、市販の活性炭を公知の適当な方法にて粉砕し、分級することによって得ることができる。
【0029】
活性炭粒子の表面に形成される無電解めっき層は、少なくとも磁場により活性炭粒子を運動させることができる磁気特性を有するものであればよい。
【0030】
無電解めっき層の形成材料としては、特に、ニッケル又はニッケル合金からなる磁性材料であることが好ましい。ニッケル合金としては、Ni-P合金やNi-B合金を好ましく挙げることができ、さらにそれらの合金中に他の元素が含まれるものであってもよい。還元剤に次亜りん酸塩を使えばニッケル-りん(Ni-P)合金めっきが得られ、硼素化合物を使えばニッケル-ボロン(Ni-B)合金めっきが得られる。還元剤に次亜りん酸塩を使ったニッケル-りん合金めっきは、機械的・電気的・物理的特性等が優れていることや、複雑な形状の製品にもめっき皮膜を均一に被覆できるという利点がある。一方、還元剤に硼素化合物、例えばジメチルアミノボロン(DMAB)を使ったNi-B合金めっきは、めっき皮膜上に酸化膜が形成され難いので、熱処理時に変色しない、はんだの濡れ性が良好、導電率がNi-P合金めっきに比べて著しく低い、等の特徴を有しているため、特にNi-B合金からなる無電解めっき層を形成することが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の磁性砥粒において、高い研磨能力を付与する上からは、このような含ニッケル無電解めっき層中に、砥粒、特にダイアモンド粒子を配してなる無電解ニッケル複合体めっき層とすることもできる。このような無電解ニッケル複合体めっき層としては、ニッケル-ダイアモンド複合体(ニッケル-ボロン-ダイアモンド複合体、ニッケル-リン-ダイアモンド複合体等のニッケル合金-ダイアモンド複合体を包含する。)が望ましく、特にニッケル-ボロン-ダイアモンド複合体が望ましい。
【0032】
このような無電解含ニッケル複合体めっき層を形成するのに用いられるダイアモンド粒子としては、特に限定されないが、例えば、平均粒径が1~100nm、より望ましくは1~10nm程度のものが用いられる。
【0033】
含ニッケル無電解めっき層の厚さは、磁気研磨用の磁性砥粒に要求される磁気特性を確保できる厚さであればよく、したがってその厚さは、無電解めっき層を形成する材料の種類に応じて適宜変化させることが望ましい。例えば、無電解めっき層の形成材料として、Ni-P合金、Ni-B合金等を用いた場合、これらの材料からなる無電解めっき層は、上述した活性炭粒子上に0.1~1μm程度の厚さで形成されることが望ましい。
【0034】
次に、本発明の磁性砥粒の製造方法として、無電解めっき法によって含ニッケル無電解めっき層を活性炭粒子の表面に形成する方法について詳細に説明する。
【0035】
まず、必要に応じ、所望粒径とされた活性炭粒子の清浄化処理を行う。この清浄化処理は、適当な酸、水等の適当な溶媒を用いて行うことができる。例えば、HCl水溶液中に、次いで脱イオン水中に、室温(25℃±2℃。以下同じ。)にてそれぞれ24時間程度浸漬処理することによって好適に行い得る。
【0036】
このように清浄化された基材となる活性炭粒子は、次いで、活性化処理に供される。
【0037】
一般に、無電解ニッケルめっき法においては、被めっき物の表面を活性化する必要があり、従来、このような活性化のための触媒付与・増感処理は、錫溶液、パラジウム溶液又は錫-パラジウム錯体溶液等を用いて、被めっき物の表面に金属元素又は金属錯体を吸着させ、さらに吸着させた金属元素又は金属錯体を酸化還元反応等によって活性な金属元素を表面に生成させる方法が採られていた。
【0038】
本発明の磁性砥粒の製造方法においては、このような従来の方法に代えて、活性炭粒子をNiSO/ピコリン酸溶液に浸漬した後、この活性炭粒子を不活性雰囲気下にて加熱乾燥するという処理によって、被めっき物である活性炭粒子の表面に、含ニッケル無電解めっきの自己触媒としてのニッケル金属元素のシードを形成する。
【0039】
本発明者らの研究によれば、アニオンは、中性及びカチオン状態に比べてより容易に活性炭上に吸着されることが明らかとなった。ここで、ピコリン酸は、NiSOに作用してキレート化ニッケルアニオンを形成する。活性炭の非常に優れた還元能力ゆえに、吸着されたピコリン酸とニッケルとのキレート化アニオン(Niピコリン酸アニオンともいう。)は、例えば、不活性雰囲気下で700~1000℃、代表的には約700℃で、金属ニッケルに還元され、同時にピコリン酸は炭化される。
【0040】
図2は、後述する実施例において、このようなNiピコリン酸アニオンが吸着した後の活性炭粒子のX線回折(XRD)スペクトル(曲線1)、及び還元処理した後の活性炭粒子のX線回折(XRD)スペクトル(曲線2)の一例を示すものである。700℃での還元処理後(曲線2)において、金属ニッケルのピークが、2θ=44.6°において観測されている。
【0041】
このようにして形成される金属ニッケルのシードは、その後の含ニッケル無電解ニッケルめっきのための自己触媒として機能する。
【0042】
次いで、このようにして金属ニッケルのシードによって活性化された活性炭粒子は、無電解めっき法によって含ニッケルめっき層で被覆される。すなわち、上記のように金属ニッケルのシードを付与されて活性化された活性炭粒子は、成膜後に磁気特性を有することになるニッケルイオン種を含む無電解めっき液に浸漬される。活性化された活性炭粒子をめっき液に浸漬することにより、磁気特性を有する無電解めっき層を生成することができる。こうした無電解めっきの原理は、上記したような活性炭粒子の表面に付着した自己触媒のニッケル元素で、めっき液中の還元剤が酸化され、その際に放出される電子によって、めっき液中の磁性体となるイオン種が還元され、その結果、磁気特性を有する無電解めっき層が生成する。
【0043】
ここで、活性炭粒子への無電解めっきは、上記したように一般に800~1200m/gという、活性炭粒子の広大な比表面積ゆえに、一般的な被めっき物に対する無電解めっきと比べて技術的な考慮が必要である。
【0044】
例えば、還元剤に硼素化合物、例えばジメチルアミノボロン(DMAB)を使った無電解Ni-B合金めっきを行う場合には、めっき浴中の還元剤であるDMABの初期濃度を、従来のめっき法よりも高く設定することが望ましく、具体的には例えば約2倍程度に設定することが望ましい。無電解めっき処理時間の最初の半期は、活性炭粒子の細孔が、析出するめっき層によって埋められるのみである。この時点で無電解めっきを中止すると、活性炭の黒色は、何ら顕著な変化をせず、また、この時点での活性炭粒子の形態も、走査型電子顕微鏡写真の画像から何ら顕著な変化が見られない。還元剤DMABのめっき浴中への滴下による、さらに半期の無電解めっき処理の後に、めっきされた活性炭粒子は金属光沢を放つようになる。後述する実施例に係る図2の曲線3は、計1時間の無電解めっき処理後の活性炭粒子のXRDスペクトルを示すものであるが、2θ=25.2°での活性炭のグラファイトピークが消失し、代わりに、ニッケル堆積を表す2θ=44.6°でのピークが観察された。めっきされた活性炭粒子のXRDスペクトルは、活性炭の表面が完全に堆積物によって覆われたことを示唆するものである。
【0045】
なお、無電解めっき処理に際しては、個々の活性炭粒子の表面に所定厚さの無電解めっき層を形成できるように、活性炭粒子をめっき液中で均一に分散させることが好ましく、具体的には、機械攪拌、エアー等のガス攪拌、超音波ホモジナイザー等による超音波攪拌等の攪拌手段を用いることが好ましい
また、含ニッケル無電解めっきとしての、ニッケル-ダイアモンド複合体めっき(ニッケル-ボロン-ダイアモンド複合体、ニッケル-リン-ダイアモンド複合体等のニッケル合金-ダイアモンド複合体めっきを包含する。)もまた、結合型の磁性砥粒を製造するために用いることができる。このような複合体めっきは、公知のように、ニッケルめっき液中にダイアモンド粒子を分散配合しておくことによって形成することが可能である。
【0046】
なお、ニッケルめっき層にダイアモンド粒子が高含有率で含まれていると、磁性砥粒の磁性特性に影響を及ぼす可能性がある。このため、無電解めっき処理において、当初のめっき液におけるダイアモンド粒子の配合割合を低く設定することが望ましい。例えば、(1)ダイアモンド粒子の配合割合をニッケルめっき液100mlに対し、0.1~0.3mg程度とするか、あるいは、(2)めっき層の表面領域のみにダイアモンド粒子を包含させるために、当初のめっき液にはダイアモンド粒子を添加しておかず、無電解めっき処理時間の後半にダイアモンド粒子をめっき液中に添加する、といった手法をとることが望ましい。
【0047】
このようにして製造される本発明に係る磁性砥粒は、そのままの態様で例えば磁気研磨法等の精密加工用の砥粒として使用したり、液状媒体と共に磁性砥液として使用したりすることができる。
【0048】
本発明の磁性砥粒を磁性砥液の構成材料として使用する場合には、無電解めっき層の厚さを変えて磁性砥粒の重さを調整し、磁性砥液中での浮遊の程度や沈降の程度を調整することも可能である。
【0049】
磁性砥液を構成する液状媒体は、磁性砥粒を自由に動き易くさせる媒体であればよく、被加工物の種類や磁性砥粒の比重等を考慮して適宜選定される。例えば、水、水性潤滑剤、油、油性潤滑剤等を用いることができる。また、磁性砥液中の磁性砥粒の含有量についても、加工用途や被加工物に応じて適宜調整される。
【0050】
本発明の磁性砥粒は、磁気研磨法による各種被加工物の精密加工への適用が期待でき、例えば、次世代半導体や医療分野の製造プロセス等に用いられるスーパークリーンパイプ等のように、精密研磨が要求される製品やパイプ内のような微小空間の高精度の研磨が要求される製品等の研磨に有効である。また、例えば、ハードディスク装置のハードディスク基板表面のテクスチャ加工への応用が挙げられる。また、例えば、半導体基板に銅配線を形成するダマシン工程で使用される化学的機械的研磨(CMP)の代替工程としての応用が期待できる。ダマシン工程とは、絶縁膜上の配線溝にバリア層と銅めっき層を形成した後、表面の不要な銅を取り除く工程である。本発明の磁性砥粒は、こうした応用に限定されず、本発明の磁性砥粒の機能を発揮できる各種の用途に広く適用可能である。
【0051】
(無電解めっき方法及び活性炭用無電解めっき活性化剤)
無電解めっき方法及び活性炭用無電解めっき活性化剤は、上記磁性砥粒及びその製造方法の発明を完成させる過程で達成されたものである。この無電解めっき方法及び活性炭用無電解めっき活性化剤は、活性炭一般に適用されるものであり、活性炭の形状が粒子状であるか否かにかかわらず適用することができ、粒子であっても板であってもよく、特に限定されない。

【0052】
すなわち、無電解めっき方法は、活性炭とNiSO/ピコリン酸溶液とを接触させた後、この活性炭を不活性雰囲気下にて加熱乾燥することにより、活性炭上にニッケル金属元素を形成して活性炭の活性化を行い、次いで、含ニッケル無電解めっきを行って、前記活性炭の表面に含ニッケル無電解めっき層を形成することを特徴とする。この発明は、上記本発明に係る磁性砥粒の製造方法を研究している過程で完成した発明である。この発明によれば、活性炭をNiSO/ピコリン酸溶液に浸漬した後、この活性炭を不活性雰囲気下にて加熱乾燥することにより、活性炭に付着したピコリン酸とニッケルとのキレート化アニオンがニッケル金属に還元すると共にピコリン酸が炭化する。こうして形成されたニッケル金属元素によって活性炭の活性化が行われ、次いで行われる含ニッケル無電解めっきにより、活性炭の表面に磁性を有する含ニッケル無電解めっき層を形成することができる。

【0053】
また、活性炭用無電解めっき活性化剤は、NiSO/ピコリン酸溶液からなることを特徴とする。この発明によれば、活性炭用無電解めっき活性化剤としてNiSO/ピコリン酸溶液を適用すれば、活性炭上に無電解めっき層を形成することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0055】
(実施例1)
活性炭(三菱化学株式会社製、商品名:三菱ダイヤホープ008)を、微細粒に粉砕し、篩にかけ、200~320メッシュのサイズの粉砕粒子を無電解めっきの原料基材として用いた。図1は、この実施例1において、上記の活性炭粒子を用いて磁性砥粒を製造する各工程を示したフローチャートである。
【0056】
まず、上記のように所定サイズとされた活性炭粒子を、攪拌した1M HCl水溶液中に室温(25℃±2℃。以下同じ。)にて24時間浸漬し、次いで、攪拌した脱イオン水中に室温にて24時間浸漬することにより洗浄した。その後、清浄化された活性炭粒子を、空気中、200℃で5時間乾燥させた。
【0057】
次いで、活性炭粒子の活性化のために、清浄化した活性炭粒子を、攪拌したNiSO/ピコリン酸溶液(モル比1:2.5、pH2.8~3.0)中に、室温にて3時間浸した。その後、活性炭粒子を濾去し、余剰のNiSO及びピコリン酸溶液と分離した。次いで、処理された活性炭粒子は、窒素雰囲気下に700℃で2時間乾燥され、これによって、活性炭粒子に吸着したNiイオンを金属Niに還元し、吸着したピコリン酸を炭化した。
【0058】
次いで、活性炭粒子へのニッケルめっきを、無電解めっき技術を用いて行った。めっき反応を維持するために、改良ドロッピングめっき法(Modified dropping plating method)を用いた。めっき浴は、当初、0.1M硫酸ニッケル(II)、0.025Mジメチルアミノボロン錯体(DMAB)、0.025Mグリシン、及び0.5M硫酸アンモニウムを含む、pH9.0の溶液300mlであり、浴温70℃で用いた。一方、0.2gの活性炭粒子を、20mlの0.255M DMAB水溶液中に超音波分散させた。次いで、活性炭粒子を分散させたDMAB溶液を400rpmの攪拌速度で機械的攪拌を行いながら、上記の最初のめっき浴中に添加した。30分間のめっきの後、0.255M濃度の還元剤(DMAB)を、めっき浴中へ30ml/hの速度で滴下した。さらに、30分間の経過後、ニッケルめっきされた活性炭粒子を濾去し、脱イオン水で洗浄し、そしてオーブンにて乾燥した。
【0059】
ニッケルめっきされた活性炭粒子を、X線回折装置(XRD)及び走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。得られた結果を図2及び図3にそれぞれ示す。なお、XRDは、Rint200/AFC-2Cを用いて測定し、また、SEM画像は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S4500、加速電圧20.0kV)を用いて観察した。
【0060】
この実施例において、無電解めっきの最初の30分間は、活性炭の細孔が、析出するめっき層によって埋められるのみであった。この時点で無電解めっきを中止すると、活性炭の黒色は何ら顕著な変化をせず、また、この時点での活性炭の形態も、走査型電子顕微鏡写真の画像から何ら顕著な変化が見られなかった。還元剤であるDMABのめっき浴中への滴下による、さらに30分間の無電解めっき処理の後に、めっきされた活性炭粒子は金属光沢を放つようになった。図2の曲線3は、計1時間の無電解めっき処理後の活性炭粒子のXRDスペクトルを示すものであるが、2θ=25.2°での活性炭のグラファイトピークが消失し、代わりに、ニッケル堆積を表す2θ=44.6°でのピークが観察された。めっきされた活性炭粒子のXRDスペクトルは、活性炭の表面が完全に堆積物によって覆われたことを示唆するものである。
【0061】
活性炭表面上のめっきの完全性は、さらに、図3のSEM画像によっても証明される。めっき処理前(図3(a))及び処理後(図3(b))の活性炭の形態は、大きな違いがある。活性炭上のニッケルめっき層のランダムで多エッジ的な形態は、磁気研磨法における切歯として期待できるものであった。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、めっき浴中の、0.1M硫酸ニッケル(II)、0.025Mジメチルアミノボロン(DMAB)、0.025Mグリシン、及び0.5M硫酸アンモニウムを含むpH9.0の溶液300mlに、平均粒径80nmのダイアモンド粉末(トーメイダイヤ株式会社製)を0.1mg添加する以外は、実施例1と同様にして、活性炭粒子へのめっき処理を行い、ニッケル-ダイアモンド複合体めっき活性炭粒子を得た。得られた複合体めっき活性炭粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。得られた結果を図3(c)に示す。図3に示す粒子形態の写真からは、ダイアモンド粉末の部位を判別できなかったが、図3(b)に示す実施例1で得られた粒子において、活性炭表面に形成されためっき層と同一の完全性が観察できた。
【0063】
(実施例3)
実施例1と同様に、0.1M硫酸ニッケル(II)、0.025Mジメチルアミノボロン(DMAB)、0.025Mグリシン、及び0.5M硫酸アンモニウムを含むpH9.0、の溶液にて、30分間めっき処理を行った後に、このめっき溶液に、平均粒径80nmのダイアモンド粉末(トーメイダイヤ株式会社製)を1mg添加する以外は、実施例1と同様にして、活性炭粒子のめっき処理を行い、ニッケル-ダイアモンド複合体めっき活性炭粒子を得た。得られた複合体めっき活性炭粒子は、実施例2において得られたものと同様に、活性炭表面に完全性のあるめっき層を有するものであった。
【0064】
(実施例4)
実施例1及び2において製造された磁性砥粒を用いて、磁気研磨処理を行った。試料として、表面粗さRaが0.273の純銅板を用い、10mm×10mmの区画をそれぞれ研磨加工した。実施例1で製造されたニッケル無電解めっき活性炭と加工用オイルとの混合物、あるいは実施例2で製造されたニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭と加工用オイルとの混合物を、研磨用のスラリーとして用いた。研磨条件を表1に示す。
【0065】
【表1】
JP0004143727B2_000002t.gif

【0066】
研磨処理前後の試料の表面形態及び表面粗さは、VK-8500デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製)を用い、レーザ波長685nm、出力0.45mW及び解像度0.01μmの条件で測定した。
【0067】
図4は、それぞれ30分間のニッケル無電解めっき活性炭による研磨及びニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭による研磨前後における、銅板試料表面の写真であり、図4(a)は未処理状態、図4(b)はニッケル無電解めっき活性炭での研磨処理後、図4(c)はニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭での研磨処理後の状態を示すものである。ニッケル無電解めっき活性炭によって仕上げられた試料表面は、表面粗さRaが0.221となり、ニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭によって仕上げられた試料表面は、表面粗さRaが0.05まで改善された。ニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭によって30分間研磨することにより鏡面状表面を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の磁性砥粒の製造方法の一実施例において、活性炭を用いて磁性砥粒を製造する各工程を示したフローチャートである。
【図2】本発明の磁性砥粒の製造方法の一実施例において得られたニッケルめっき活性炭粒子のXRDチャートであり、図中、曲線1はニッケル-ピコリン酸吸着後の活性炭粒子、曲線2はさらに還元処理後の活性炭粒子、曲線3はニッケルめっき活性炭粒子のXRDスペクトルである。
【図3】(a)は本発明の磁性砥粒の製造方法の一実施例において用いた活性炭の未処理状態の走査電子顕微鏡写真(倍率2,300倍)、(b)はこの活性炭にニッケル無電解めっきした状態の走査電子顕微鏡写真(倍率2,300倍)、(c)はこの活性炭にニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっきした状態の走査電子顕微鏡写真(倍率2,300倍)である。
【図4】ニッケル無電解めっき活性炭による研磨及びニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭による研磨前後における、銅板試料表面の写真であり、(a)は未処理状態、(b)はニッケル無電解めっき活性炭での研磨処理後、(c)はニッケル-ダイアモンド複合体無電解めっき活性炭での研磨処理後の状態を示すものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3