TOP > 国内特許検索 > 高分子薄膜の製造方法 > 明細書

明細書 :高分子薄膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4654066号 (P4654066)
公開番号 特開2006-312698 (P2006-312698A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成18年11月16日(2006.11.16)
発明の名称または考案の名称 高分子薄膜の製造方法
国際特許分類 C08F   2/00        (2006.01)
C08F   2/46        (2006.01)
FI C08F 2/00 C
C08F 2/46
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2005-136532 (P2005-136532)
出願日 平成17年5月9日(2005.5.9)
審査請求日 平成20年3月13日(2008.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】栗原 和枝
【氏名】水上 雅史
【氏名】鐘 国倫
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】松元 洋
参考文献・文献 特開2002-080512(JP,A)
特開2000-143705(JP,A)
調査した分野 C08F 2/00-2/60
C08J 7/00-7/18
特許請求の範囲 【請求項1】
表面にOH基を有する固体表面に対して水素結合で組織化可能なアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、アクリル酸ニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド、及びメタクリル酸ニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性モノマーとそれを溶解する極性溶媒のハロゲン化炭化水素との溶液を固体表面に接触させ、固体表面に前記重合性モノマーの分子マクロクラスターを形成し、次いで前記極性溶媒のハロゲン化炭化水素よりも前記重合性モノマーの溶解性が低い低溶解性の溶媒に前記重合性モノマーを溶解した溶液を接触させて重合反応させることを特徴とする高分子薄膜の製造方法。
【請求項2】
低溶解性の溶媒が、非極性溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の高分子薄膜の製造方法。
【請求項3】
低溶解性の溶媒が、炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載の高分子薄膜の製造方法。
【請求項4】
光照射により重合反応させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高分子薄膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、ナノスケールでの膜厚調節が可能とされる高分子薄膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜を調製する技術としてスピンキャスト法やLangmuir-Blodgett 法などが代表的なものとして知られているが、前者の方法では数十nmのごく薄い薄膜を作るのは難しく、後者では複雑な道具を必要とし、また数十nmの厚みの膜を調製するためには、多数回の繰り返し積層を必要としている。
【0003】
一方、本願の発明者らは、水素結合で組織化した分子マクロクラスター形成(たとえば非特許文献1-2)を利用する方法によってこれらの従来の問題点を解決し、非極性溶媒から水素結合性の分子を固体基板上に吸着させ数十nmの厚みの薄膜を固体基板上に簡便に調製可能としている。この新しい方法では重合性モノマーの分子マクロクラスターの形成を介して高分子薄膜の形成を実現している。たとえば、重合性モノマーとしてのアクリル酸のシクロヘキサン溶液中で、あるいはアクリルアミドのクロロホルム溶液中で固体基板表面に形成した重合性モノマーの界面分子マクロクラスターにUV光(紫外光)を照射して重合反応させナノスケールの膜厚を有する高分子薄膜を製造可能としている(特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
しかしながら、発明者らにより開発された分子マクロクラスター形成を介しての従来の高分子薄膜の形成方法においては、膜厚はマクロクラスターの厚みよりほぼ決まってしまい、その制御は困難であった。

【特許文献1】特開2000-143705号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 124, 12889-12897(2002)
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan, Vol.53, No.1 (2004), p.1102
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記のとおりの背景から、発明者らのこれまでの薄膜形成方法の特長を生かし、しかも生成させる薄膜の膜厚の調節を容易とすることのできる改善された新しい高分子薄膜の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の高分子薄膜の製造方法は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:表面にOH基を有する固体表面に対して水素結合で組織化可能なアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、アクリル酸ニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド、及びメタクリル酸ニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性モノマーとそれを溶解する極性溶媒のハロゲン化炭化水素との溶液を固体表面に接触させ、固体表面に前記重合性モノマーの分子マクロクラスターを形成し、次いで前記極性溶媒のハロゲン化炭化水素よりも前記重合性モノマーの溶解性が低い低溶解性の溶媒に前記重合性モノマーを溶解した溶液を接触させて重合反応させる。
【0010】
第2:低溶解性溶媒が、非極性溶媒である。
第3:低溶解性溶媒が、炭化水素である。
第4:光照射により重合反応させる。
【発明の効果】
【0011】
上記のとおりの本願発明の方法によれば、従来全く予測、予期できなかったナノスケールでの膜厚の調製が可能とされて、所要の高分子薄膜が得られる。しかも、この膜厚の調節は極めて簡便、かつ容易に行われることになる。
【0012】
すなわち、本願発明においては、まず比較的溶解度の高い溶媒中でモノマーの分子マクロクラスターを基板上に形成させ、この溶液を除去して溶解度の低い溶媒のモノマー溶液に置換し、この溶液中で重合反応を行うことで得られる高分子薄膜の厚みを制御可能としている。
【0013】
これまでの発明者らの検討において、分子マクロクラスターの厚みは分子の特性により決まることがわかっている。そのため、分子マクロクラスターをそのまま重合させた場合、膜厚を自在に制御することは困難であった。それに対して、まず比較的溶解度の高い溶媒中から分子マクロクラスターを基板上に形成させた後、溶解度の低い溶媒にモノマーを溶かした溶液中で重合を行うことで、モノマー濃度、光照射時間の重合反応の条件の選択により膜厚を制御することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明においては、重合性モノマーは、固体基板に対し、またモノマー分子の相互の間において水素結合で組織化されて分子マクロクラスターを形成可能なものとして選択される。
【0015】
重合性モノマーは、所要の温度において液状であって、かつ熱や光、さらには放射線、触媒の存在下等の条件のもとでホモ重合、あるいは共重合可能なものである。本願発明においては、炭素・炭素不飽和結合を有するものであり、より具体的にはエチレン性不飽和結合を有するものが例示される。本願発明では、アクリル酸あるいはそのエステル、アミド、ニトリル等の誘導体、メタクリル酸あるいはそのエステル、アミド、ニトリル等の誘導体がこれらモノマー化合物として挙げられる。
【0016】
これらの重合性モノマーは、単一化合物でもよいし、複数種の化合物として用いられてもよい。
【0017】
重合性モノマーの分子マクロクラスターを形成するための高溶解性の溶媒は、重合反応のために用いる溶媒よりも重合性モノマーの溶解性が高い。このような高溶解性の溶媒としては、極性溶媒であるクロロホルム、ジクロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が使用される
【0018】
一方の重合反応のための低溶解性の溶媒としては、非極性溶媒あるいは低極性溶媒として知られているものから選択することができる。たとえばヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の炭化水素が例示される。
【0019】
なお、当然のことではあるが、以上の高溶解性の溶媒、そして低溶解性の溶媒のいずれのものも、その水素結合性は、重合性モノマーの水素結合性よりも弱いことが必要とされている。
【0020】
分子マクロクラスター形成のための高溶解性溶媒溶液における重合性モノマーの濃度としては、その種類によっても相違するが、一般的には10mol%未満、より好ましくは2mol%以下とすることが考慮される。一方、重合反応のための低溶解性溶媒溶液においては溶解度において制約があるが、上記のほぼ1/10程度とすることができる。そしてその実際の濃度は、生成される薄膜の膜厚を決める一つの条件となる。
【0021】
固体表面については、水素結合による組織化を可能とするように、表面にOH基等を有するものが好適に用いられる。たとえば酸化膜表面を有するシリコン、ガラス、酸化物セラミックス等であってよい。
【0022】
分子マクロクラスター形成のための操作温度は-10℃~30℃程度の室温もしくはその近傍であってよい。また重合反応は、上記とおり各種の形態でよい。代表的には、たとえば光照射による重合反応が例示される。このような重合反応のために、溶液には、微量の重合開始剤、重合触媒、重合促進剤の少なくとも1種を含有させてもよい。
【0023】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん本願発明は以下の例によって限定されることはない。
【実施例】
【0024】
基板にはシリコンプリズムを用い、硝酸/過酸化水素=4/1、超純水で洗浄した。乾燥後、水蒸気プラズマ処理を行った。クロロホルム溶液からAAm分子を基板に吸着後、開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を加え、クロロホルム溶液を除き、濃度調整したAAmのシクロヘキサン溶液に入れ換えて紫外線照射して高分子ナノ薄膜を調製した。その評価をATR-FTIR分光法、ellipsomelry、AFM、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて行った。
【0025】
すなわち、シリコンプリズム基板表面にAAm濃度0.1mol%のクロロホルム溶液中でAAm吸着層を形成し、その後クロロホルム溶液を取り除き、AAm濃度0.1mol%のクロロホルム溶液をシクロヘキサンで希釈して調整したAAm濃度0.001mol%のシクロヘキサン溶液に入れ換えて7時間紫外線照射を行った。その時のAT-FTIRスペクトルを図1に示した。紫外線照射7時間後に3340cm-1、3190cm-1付近に会合のNH伸縮振動、1670cm-1付近にC=0伸縮振動の大きな吸収変化が観測された。これより溶液からAAm分子が基板表面へ更に吸着していると考えられる。紫外線照射終了後、シクロヘキサン溶液を取り除くと、高波数側では3340cm-1、3190cm-1付近に会合のNH伸縮振動が紫外線照射7時間と比べて若干強度が減少し、低波数側では1670cm-1付近にC=0伸縮振動がほぼ同じ強度で観測された。得られた高分子ナノ薄膜の膜厚をエリプソメーターで測定したところ、平均膜厚12nm、標準偏差1.2nmであった。
【0026】
シクロヘキサン中のアクリルアミドモノマー濃度の上昇、紫外光照射時間を長くすることで、ポリアクリルアミド薄膜の厚みは増大した。すなわち、厚みの制御が可能であることが示された。
【0027】
比較として、アクリルアミドモノマーのシクロヘキサン溶液中でアクリルアミドマクロクラスターを基板上に形成させ、そのまま紫外光照射を行ったところ、膜厚は1nm以下であった。このことから、クロロホルム中で形成されたアクリルアミドマクロクラスターが重合の起点として効果的に作用していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例におけるATR-FTIRスペクトル図である。
図面
【図1】
0