TOP > 国内特許検索 > マイクロトラップスクリーニング方法および装置 > 明細書

明細書 :マイクロトラップスクリーニング方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3783055号 (P3783055)
公開番号 特開2004-239836 (P2004-239836A)
登録日 平成18年3月24日(2006.3.24)
発行日 平成18年6月7日(2006.6.7)
公開日 平成16年8月26日(2004.8.26)
発明の名称または考案の名称 マイクロトラップスクリーニング方法および装置
国際特許分類 G01N   1/22        (2006.01)
G01N   1/10        (2006.01)
G01N   1/36        (2006.01)
G01N  30/06        (2006.01)
FI G01N 1/22 L
G01N 1/22 N
G01N 1/10 C
G01N 1/28 Z
G01N 30/06 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2003-031164 (P2003-031164)
出願日 平成15年2月7日(2003.2.7)
審査請求日 平成15年2月7日(2003.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】屋敷 幹雄
【氏名】福永 徳人
【氏名】奈女良 昭
【氏名】西田 まなみ
【氏名】小嶋 亨
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 国際公開第02/086488(WO,A1)
特開2002-168737(JP,A)
特開平06-050949(JP,A)
特開平03-142337(JP,A)
Chromatography Vol.20,No.3(1999) p.237-246
調査した分野 G01N 1/00-28
特許請求の範囲 【請求項1】
試料を封入することにより内部を少なくとも2相により構成される容器と、前記1相内にガスを供給可能なガス供給手段と、ガスを供給された前記1相とは別の相を構成する物質を導入可能であり、かつ、市販のガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムを切断して製造された使い捨てにするマイクロトラップ管を有するトラップ手段とを含んで構成されることを特徴とするマイクロトラップスクリーニング装置。
【請求項2】
試料を封入することにより内部を少なくとも2相により構成される容器と、前記1相内にガスを供給可能なガス供給手段と、ガスを供給された前記1相を構成する物質を導入可能であり、かつ、市販のガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムを切断して製造された使い捨てにするマイクロトラップ管を有するトラップ手段とを含んで構成されることを特徴とするマイクロトラップスクリーニング装置。
【請求項3】
前記切断を、検査試料に最適な長さで行うことを特徴とする請求項1又は2項に記載のマイクロトラップスクリーニング装置。
【請求項4】
前記トラップ手段が、前記マイクロトラップ管とその端部に連結された針部とを含んで構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロトラップスクリーニング装置。
【請求項5】
前記トラップ手段が、前記マイクロトラップ管とこれに外装したステンレス管とを含んで構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロトラップスクリーニング装置。
【請求項6】
前記容器を加熱可能な容器加熱手段をさらに有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロトラップスクリーニング装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、分析化学分野に属する技術であり、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、薄層クロマトグラフィー(TLC)等の分離分析装置に試料を供給するための前処理として、検体からサンプリングした試料から目的成分を抽出・濃縮する技術に関し、特に、生体からの試料等、極微量な試料から迅速に高精度の分析結果が要求される医療現場等においても、簡易な手段でこれらの達成に寄与できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
GC、HPLC、CE、TLC等の分離分析装置で定性・定量分析を行う場合には、その前処理として、サンプリングした試料を一旦、目的成分(群)について抽出、精製、濃縮等行う必要のある場合が多い。
これらの前処理法には、古くから目的成分に応じた様々な方法が用いられているが、近年、固相抽出(SPE)法、ヘッドスペース(HS)法、パージトラップ(PT)法、固相マイクロ抽出(SPME)法等が使用されている。
【0003】
【非特許文献1】
”最新の分離・精製・検出法”、p94-104、(株)エヌ・テ ィー・エス、1997.
【非特許文献2】
奈女良 昭、屋敷幹雄、小嶋 亨、福永徳人、法中毒学における固相マイクロ抽出 (SPME)法、法中毒、16, 1-16, 1998.
【非特許文献3】
(社)日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会編、”キャピラリーガスクロマトグラフィー” p66-79、朝倉書店、1997
【0004】
【発明が解決使用とする課題】
これらの従来の方法は、試料中の希薄な目的成分を、分析の妨害となる物質から分離抽出し、濃縮した後、分析装置へ導入するに際して、種々の利点を持つ反面、以下のような欠点がある。
すなわち、SPE法の欠点は、液体試料に限定されること、低沸点化合物の分析に対しては適用が困難であること、さらに、分析装置に導入する際には、濃縮捕集した目的成分を1~10ml程度の溶媒を用いて脱離するため、折角、濃縮された成分が希釈されてしまうこと等である。
また、HS法の欠点は、比較的低沸点化合物の分析に限定されること、および、古典的な操作の場合は濃縮効率が低いこと、そのため目的成分が極希薄濃度である場合には不適当であること、さらにこれを補うために別途、冷却や再濃縮機能を具えた装置を用いる場合には設備が高価となり、操作が複雑になること等である。
【0005】
また、PT法の欠点は、HS法に比べ、より高い沸点化合物にも適用できるが、設備や操作が複雑であること、および、前回使用した試料の一部や特定成分がトラップ管あるいは装置配管等に残留してしまいキャリーオーバーを生じ、次回の分析に悪影響を及ぼす場合が多いこと等である。
さらに、SPME法の欠点は、上記各方法の欠点を補いつつも未だ繰り返し分析を行う際のキャリーオーバーの問題が解決されていないこと、抽出効率も比較的低いこと、このため、共存物質の影響を受け易いこと等である。
【0006】
また、これらの種々の前処理法は精密分析とスクリーニング分析両者にさほどの区別もされずに用いられており、迅速性、簡便性、経済性も求められるスクリーニング分析では必ずしもその要求を満たしてない。
そこで、本発明は、上記従来の各前処理操作の利点を維持しつつ、キャリーオーバーを含めた上記問題点を解消することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成とする。
請求項1記載のマイクロトラップスクリーニング方法は、サンプリングした試料を、分析装置に供給する前処理として前記試料から目的成分を抽出するマイクロトラップスクリーニング方法において、スクリーニングを、使い捨てのマイクロトラップ管を用いて行うことを特徴とする。
請求項2記載のマイクロトラップスクリーニング方法は、請求項1記載の方法において、前記使い捨てのマイクロトラップ管として、市販のガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムを所定の長さに切断して使用することを特徴とする。
請求項3記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、試料を封入することにより内部を少なくとも2相により構成される容器と、前記1相内にガスを供給可能なガス供給手段と、ガスを供給された前記1相とは別の相を構成する物質を導入可能な、使い捨てにするマイクロトラップ管を有するトラップ手段とを含んで構成されることを特徴とする。
請求項4記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、試料を封入することにより内部を少なくとも2相により構成される容器と、前記1相内にガスを供給可能なガス供給手段と、ガスを供給された前記1相を構成する物質を導入可能な、使い捨てにするマイクロトラップ管を有するトラップ手段とを含んで構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、使い捨てにするマイクロトラップ管を有するトラップ手段と、前記マイクロトラップ管に試料を導入可能な試料導入手段とを含んで構成されることを特徴とする。
請求項6記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、請求項3~5のうちいずれか1項に記載の装置において、前記マイクロトラップ管が、ガスクロマトグラフィー用のキャピラリーカラムを、所定長さに切断して形成されたものであることを特徴とする。
請求項7記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、請求項3~6のうちいずれか1項に記載の装置において、前記トラップ手段が、マイクロトラップ管とその端部に連結された針部とを含んで構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項8記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、請求項3~6のうちいずれか1項に記載の装置において、前記トラップ手段が、マイクロトラップ管とこれに外装したステンレス管とを含んで構成されることを特徴とする。
請求項9記載のマイクロトラップスクリーニング装置は、請求項3~8のうちいずれか1項に記載の装置において、前記容器を加熱可能な容器加熱手段をさらに有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の装置で使用される容器は、サンプリングした試料を封入できる容器であれば、材質、形状等特に限定されない。また、容器は、本体とキャップからなる、例えば、セプタム付バイアル等を好適に使用することができるが、これに限定されず、特に請求項5記載の発明にあっては、容器自体をシリンジ等で構成しても差し支えない。
容器にトラップ手段またはガス供給手段を接続する場合は、セプタム付バイアルにあっては、セプタムを貫通させることにより容易に行える。
ガス供給手段は、試料を入れることにより少なくとも2相で構成された容器内部の1相に不活性ガス等を供給し、気相部や液相部に含まれる目的成分をトラップ手段に供給するものであり、例えば、針を具えたシリンジ等を例示できる。容器がセプタム付バイアルの場合、このシリンジ内にガスを入れた後、該針で容器のセプタムを貫通させることにより容易に容器への接続が可能となる。また、サンプリングおよび前処理が野外で行われる場合は、携帯用小型ボンベ等をガス源として使用することもできる。ガス源としては各種のガス源を適宜使用することが可能であり、ガス源から容器へは直接または配管および針状部等を介して接続し、容器内に断続的にまたは連続的にガスを供給する。供給されるガスとしては、窒素、ヘリウム等の不活性ガスが一般的であるが、目的成分に応じて各種ガスを使用しても差し支えない。
【0011】
また、トラップ手段は、マイクロトラップ管を有するが、これを使い捨てにするため、本発明では従来装置で問題となっていたキャリーオーバーの問題を解消できる。使い捨てをより現実的なものとするために、ガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムを所定長さに切断して使用することが好ましい。その理由は、個々のマイクロトラップ管の性能の均一性や経済性が確保し易いからである。ガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムは、15~60mの長さが標準的であり、その内部の均一性は品質管理されており、コーティング効率等の数値で示されている。したがって、キャピラリーカラムの一部を切断して個々に用いた場合であっても、試料物質の抽出を行う分配相あるいは吸着相の量および性質のバラツキは試料抽出における効率やスクリーニング分析に求められる結果の再現精度からは無視できる程度である。なお、このような市販のキャピラリーカラム自体は高価であるが、本発明装置で用いるマイクロトラップ管の長さは、試料および目的物質等により適宜設定され、それは略数センチメートルレベル(例えば、0.5cm~100cm、好ましくは5cm~10cm)であるため、1本のキャピラリーカラムから多数本のマイクロトラップ管を得ることができ、充分に経済的である。これにより、必要とされるレベルの均一性を有するトラップ管を極めて安価に入手できる。
【0012】
マイクロトラップ管の材質としては、溶融シリカ管、ホウケイ酸ガラス、ステンレス管等を使用でき、これは市販されている一般的なGC用キャピラリーカラムの材質でもある。溶融シリカ製のキャピラリーカラムから形成したマイクロトラップ管の場合、管の外表面が試料と接触する可能性のある場合には、目的物質の吸着を防止するために、管外周の皮膜(ポリイミド樹脂膜、アルミ薄膜等)は除去することが好ましく、さらにステンレス管の場合には、構成成分である金属により目的物質が吸着されたり、該金属が触媒作用をするのを避けるために、管内外表面とも不活性化処理することが好ましい。
使用前に、不活性気流下で複数本を同時に加熱処理することにより、バックグラウンドの低減と各トラップ管の均一化を行うことが好ましい。本発明での利用に適したカラムの内径は、非限定的に0.1~1.2mm、好ましくは0.2~1.0mmである。
なお、容器内には、必要に応じて、内部標準、塩類、凝固防止剤、抱合体の解離を促進する試薬等を試料と共に添加してもよい。
トラップされた成分は、加熱や微量溶媒等により、脱離され、GC、HPLC、CE、TLC等の分析装置の注入口に導入され、分析に供される。
【0013】
また、トラップ手段が、マイクロトラップ管と先端に連結された注射針等の針部とを含んで構成される場合は、容器のセプタムを注射針により貫通して接続でき、管と針部の連結部分は、テフロン製チップ等を使用すると好ましい。なお、針はGC等の注入口セプタムの貫通にも使用でき、脱離後の試料をGC等へ送り込む際にも使用される。
また、トラップ手段が、マイクロトラップ管とこれに外装したステンレス管とを含んで構成される場合は、マイクロトラップ管の導入流れ下流端部におけるステンレス管を小内径として、マイクロトラップ管の抜けを防止する形状にすることが好ましい。また、この場合は、針部を連結することなく、ステンレス管によりセプタムを貫通することができる。上記と同様GC等の注入口セプタムの貫通にも使用できる。
さらに、マイクロトラップ管自体でセプタムを貫通させることも可能である。
なお、マイクロトラップ管を通過した流体は、反試料導入側端部から排出されるが、流体が気体の場合はそのまま該端部を開口させて空気中に排出させてもよく、また、気体、液体を問わず配管を接続して回収することもできる。
【0014】
本発明の装置が、容器加熱手段をさらに有する場合は、揮発し難い物質の揮発をより容易にして抽出率を上げることが可能となる。なお、容器内にスターラーバーを具えて攪拌することも、効率的な抽出を可能とする。容器加熱手段の具体例としては、当業界で一般的に用いられる各種加熱装置が使用できる。
目的成分をトラップしたマイクロトラップ管は、密封容器に入れ、必要に応じて温度管理下におき、保管、運搬等に供される。
【0015】
【実施例】
以下に本発明を、液体試料をサンプリングした場合について、実施例により具体的に説明する。
図1を参照する。セプタム1および密封用キャップ2を具えたバイアル3内に、上部空間(ヘッドスペース)の気相部4を残して、試料5(液体)が封入されている。ガス供給手段を構成するガス配管6の先端には前記セプタム1を貫通する注射針7が接続され、注射針7の先端は前記試料5内に浸漬される。また、トラップ手段を構成するマイクロトラップ管8はそれ自体でセプタム1を貫通して、その下端を気相部4内に開口する。なお、セプタム1の貫通は、マイクロトラップ管下端に連結した注射針(図示せず)によってもよく、外装したステンレス管(図示せず)を介して行ってもよい。マイクロトラップ管の上端は、試料の性状に応じて、開口したままであっても、あるいは配管(図示せず)を連結する等により通過した流体を回収する構成であってもよい。
この例では、注射針7の先端が液体試料の液相内部に達しているため、例えば微量の不活性ガスを連続的に導入した場合は、液体中に溶解している目的成分はパージされて気相部4へと移行し、さらにマイクロトラップ管に導入されて、マイクロトラップ管8内面の液体(または固体)よりなる固定相に気/液分配(または気/固吸着)保持され、濃縮される。
抽出終了後は、マイクロトラップ管を容器から外し、試料の性質に応じて、密封容器に入れて、適宜温度管理下において、分析装置のある施設へと運ぶことができる。
【0016】
図2を参照する。図1と同じ部材には同じ符号を付す。この例では、ガス供給手段を構成する注射針7の下端は、気相部4に開口する。このため、連続的なパージガスの導入により、気相部4中の目的成分および液体から気相部に移行した目的成分は分圧平衡の原理に基づいて連続的にマイクロトラップ管内に導入され、マイクロトラップ管内で同様に濃縮される。
抽出後の運搬については、上記と同様である。
【0017】
図3を参照する。図1と同じ部材には同じ符号を付す。注射針7は、図2の例と同様に気相部4に開口しており、マイクロトラップ管8の下端は試料5内に浸漬される。
この例では、ガスの導入により液体試料は直接マイクロトラップ管内に導入され、マイクロトラップ管内では液/液分配(または液/固吸着)により目的成分が濃縮される。なお、図では液体試料のマイクロトラップ管内への導入が効率的に行えるよう容器底部内面形状を逆円錐形状としている。
また、便宜的な方法としては気体、液体を問わず流体試料をシリンジ内にサンプリングし、これからマイクロトラップ管内にゆっくりした速度で圧入することも可能である。
【0018】
分析装置への導入の際は、GCへの導入にあっては、マイクロトラップ管を加熱して、抽出した物質を脱離させることにより行われる。この場合、マイクロトラップ管の反GC側から適宜な流量の不活性ガスを導入しつつ加熱し、抽出された物質を熱脱離させGCに導入する方法が一般的に用いられる。あるいは、トラップ管の反GC側を密封し、トラップ管を適当な方法で加熱することで、トラップ管に抽出された物質を脱離させ、気化部の加熱体積膨張による圧力でその大部分をGCで導入させることも便宜的に可能である。
また、沸点の高い物質や不揮発性の物質の場合は、HPLCで分析するが、この場合の導入は、マイクロトラップ管のHPLC側にHPLC用サンプリングバルブに適したシリンジ針、反HPLC側にマイクロシリンジや注射筒針取付部に適合した口金を取り付け、マイクロトラップ管内に脱離用溶媒を満たした状態で一定時間放置し、その後シリンジプランジャーを押し込んで溶媒と共に脱離試料をサンプリングバルブに導入する。なお、この際の脱離用溶媒は極微量(例えば10μL以下)で充分であるため、従来手法程には希釈されず、微量分析の障害とはならない。また、6方バルブを用いたループサンプラーを使用してループ部に耐圧性樹脂を用い、その内部にマイクロトラップ管を挿入してループへの溶媒充填、脱離、バルブ切換によるHPLCへの導入を行うこともできる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によると、以下の効果を得ることができる。
本発明は、動的抽出であり、マイクロトラップ管を用いるため、抽出効率を大幅に上げることができ、100%の回収率も可能である。その結果、高精度の分析が可能となり、したがって、生体試料など試料量が少ない検体の分析にも使用可能となる(必要試料量:1ml未満でも可能)。
これは、SPME法においても、本発明と同様に、トラップ部材を直接液体中に浸漬可能であり、また、ヘッドスペースからの抽出も可能であるが、いずれの場合も静的手法であるのに対して、本発明は動的抽出であるため、多量に付加できること、また、SPME法は抽出相を試料または試料ヘッドスペース中に直接暴露するため、試料と抽出相との体積比(相比)が極めて大きく、目的物質に対する抽出相の分配係数が大きい場合でも、実際に抽出される物質の量が少なくなり、抽出効率としては、せいぜい10~20%程度であるのに対して、本発明では、マイクロトラップ管を使用するため、トラップ管内の空間容積が極めて微小であり、分配平衡における相比(試料空間容積/抽出相容積)が小さいため、分配平衡において、より多量の試料抽出を行うことができ、また分析装置への脱離、導入の際、溶媒脱離を行わないか、使用しても極微量であるため、脱離した試料が拡散することなく、GC等の分析装置に導入できることによる。この結果、抽出絶対量が増加することと、試料バンドの拡がりが小さくなり、S/N比が向上するため、相対的には高感度が得られる(検出感度:pptレベル)。
【0020】
また、SPME法やそれに類する抽出法では、回収率を向上させるために、抽出相の膜厚を増加させる方法も試みられているが、試料容積に対しての抽出相容積の増加比に制限があり、大きな効果は期待できないばかりでなく、抽出相内での試料物質拡散に時間がかかるため、分配平衡、抽出時間の増加が不可欠となる。一方、本発明では、抽出部分における試料体積を大幅に減少させたため、抽出相の膜厚はかえって小さくすることが可能であり、これにより、分配平衡、抽出時間の短縮が図られる。
【0021】
さらに、マイクロトラップ管を使い捨てにすることにより、キャリーオーバーを完全に回避することができる。
なお、分析装置への導入は、マイクロトラップ管の加熱温度の調節により、脱離温度による選択的な脱離が可能となり、目的成分を限定したスクリーニングができる。
本発明では、PT法と異なり、大がかりな装置を必要とせず、構造、操作手順が簡単であるため、初心者でも操作でき、このことからも、キャリーオーバーの回避に資することができ、野外や分析装置設置場所から離れた場所での試料採取や濃縮が可能でるため、検体を運搬する必要がなく、検体のある場所で試料採取、濃縮できる。したがって、検体を移送する手間が省けるのみならず、検体移送中の変質を防止できる。
さらに、GC等の分析装置の改造が不要であるため、経済的かつ至便性がある。
【0022】
さらに、GC用キャピラリーカラムを所定長さに切断して使用する場合には、カラムの材質やサイズ、また固定相の種類が豊富なため試料に応じた選択性が非常に高く、管長さも、検査試料に最適な長さに容易に調節できるので、装置の汎用性が高い。加えて、品質が保証されており、マイクロトラップ管の均一性が確保でき、さらに経済性も得られる。
また、液相による濃縮捕集も可能であるため、この場合には高沸点物にも応用でき、汎用性が得られる。
加熱装置を有する場合には、試料の加熱により水蒸気蒸留の原理により、揮発し難い物質も捕集可能となり、低沸点化合物から高沸点化合物まで適応できる。なお、生体成分に含まれる生体を構成する高分子化合物は加熱や水蒸気蒸留によっても気相を介してトラップ管内に移行できないため捕集されない。また、GC分析やHPLC分析に適さないその他の高分子物質が捕集されたとしても、脱離の際にトラップ管内に残留するため、分析の障害にならない。
【0023】
本発明による精度の確保や確認は、一般的な分析法に順じ、試料中でのサロゲート化合物の添加や脱離された溶媒への内部標準の添加で向上させることができ、使い捨てのマイクロトラップ管での再現性に対する懸念も毎回または定期的に検証することで払拭できる。
以上説明したように、本発明では、キャリーオーバーの問題を解決し、さらに、従来から用いられているSPE法、HS法、PT法、SPME法等の利点を保持しつつ、それらの弱点を補強し、試料検体から目的成分を簡易かつ経済的に、高い効率で抽出でき、簡便な方法で分離分析装置への導入が行える。
すなわち、本発明の装置では、対象とする検体試料は、気体、液体、固体を問わず、しかも、極低沸点化合物から高沸点化合物まで、さらに、高分子化合物をも分析用前処理することが可能である。
また、分析に妨害となる検体試料中の共存物質を分析装置に導入することなく、生体試料等のように微量試料からも、簡単な操作で抽出、濃縮、分析装置への導入が可能である。
したがって、本発明の装置は、医療現場での生体試料の分析、水質検査、食品成分分析等において、非常に利用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一態様であって、ガスを液体試料中に供給する場合を示す。
【図2】本発明の装置の一態様であって、ガスを気相部に供給する場合を示す。
【図3】本発明の装置の一態様であって、液体をトラップ管に導入する場合を示す。
【符号の説明】
1 セプタム、3 バイアル、4 気相部、5 液体試料、6 ガス配管、7 注射針、8 マイクロトラップ管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2