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明細書 :キトサンを含む抗菌組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4592459号 (P4592459)
公開番号 特開2006-265116 (P2006-265116A)
登録日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発行日 平成22年12月1日(2010.12.1)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 キトサンを含む抗菌組成物
国際特許分類 D06M  13/355       (2006.01)
D06M  15/03        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01N  25/00        (2006.01)
A01N  25/10        (2006.01)
A01N  43/16        (2006.01)
D06M 101/32        (2006.01)
FI D06M 13/355
D06M 15/03
A01N 63/00 A
A01N 25/00 101
A01N 25/10
A01N 43/16 A
D06M 101:32
請求項の数または発明の数 6
全頁数 6
出願番号 特願2005-081928 (P2005-081928)
出願日 平成17年3月22日(2005.3.22)
審査請求日 平成20年2月22日(2008.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】戸倉 清一
【氏名】田村 裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100106518、【弁理士】、【氏名又は名称】松谷 道子
【識別番号】100116311、【弁理士】、【氏名又は名称】元山 忠行
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
【識別番号】100127638、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 美苗
審査官 【審査官】安田 周史
参考文献・文献 特開昭64-061572(JP,A)
特開2001-207381(JP,A)
特開平07-011579(JP,A)
特開平04-257301(JP,A)
特開平03-076871(JP,A)
特開平09-158048(JP,A)
調査した分野 D06M 13/355
D06M 15/03
特許請求の範囲 【請求項1】
キトサン、ゼラチンおよび架橋剤を含有する抗菌性組成物を、PET繊維表面に付着させてなるPET繊維製品。
【請求項2】
架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項1のPET繊維製品
【請求項3】
PET繊維製品がカーペットである、請求項1または2PET繊維製品
【請求項4】
キトサン、ゼラチンおよび架橋剤を含有する抗菌性組成物を、PET繊維製品に適用し、乾燥させ、熱処理することを含む、PET繊維製品の抗菌処理方法。
【請求項5】
架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項4の抗菌処理方法。
【請求項6】
PET繊維製品がカーペットである、請求項4または5の抗菌処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサン誘導体を含む抗菌組成物および該抗菌組成物が表面に付着してなる高分子製品に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子製品、特に絨毯、カーペットなどに使用される合成繊維製品に抗菌性を付与することが望まれている。抗菌性を与える物質として近年、キトサンを使用することが注目されている(特許文献1、2)。
【0003】
キトサンは、甲殻類から得られるキチン(β-1,4-ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)を熱濃アルカリ液中で脱アセチル化した誘導体(β-1,4-ポリ-D-グルコサミン)であり、生体適合性に優れた分子量5万~50万程度の天然高分子である。キトサンには、生分解性があり、抗菌性(特に大腸菌等、食品中などで増殖する菌の生育を阻害する作用)、保湿性、抗アレルギー性等の作用を示すばかりでなく、他の抗菌剤と比べて人体や環境に安全であることから、キトサンを含む繊維や膜などを開発する研究が盛んになってきている。
なお、キトサンの抗菌性は、分子量10,000以上で発揮されるが、分子量4,000程度では発揮されない。
【0004】
キチン・キトサンを高分子表面に塗布する方法として、例えば、高分子製品の表面に紫外線を照射した後、キチン・キトサン溶液を付着させ、乾燥させる方法(特許文献3)が知られている。
しかし上記方法においては、キチン・キトサン分子は、それらのアミノ基を介した化学結合により高分子表面に付着しているため、アミノ基を失ったキトサンは十分な抗菌性を発揮できないうえ、洗濯などでキトサン膜が剥離するなどの問題がある。
【0005】
一方、キトサン誘導体とポリエチレングリコール誘導体を用いて合成繊維製品を加工する方法も提案されている(特許文献4)。
しかしこの方法は耐久性にすぐれた親水性能を付与することを目的とするものであり、抗菌性に関する開示はなされていない。
【0006】
したがって、高分子製品にキトサンの有する抗菌性を十分に付与することができる技術が望まれている。なお、高分子製品とキトサンとは溶融しないため、溶融以外の方法でキトサンの抗菌性を高分子製品に付与する技術が求められている。

【特許文献1】特開平7-229063号公報
【特許文献2】特開平10-219084号公報
【特許文献3】特開平9-194617号公報
【特許文献4】特開平11-247067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、人体に安全であり、かつ十分な抗菌性を付与することができる抗菌組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キトサン、ゼラチンおよび架橋剤を含有する抗菌組成物を提供する。
本発明はまた、本発明の抗菌組成物が表面に付着してなる高分子製品を提供する。
さらに本発明は、本発明の抗菌組成物を高分子製品に適用し、乾燥させる高分子製品の抗菌処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、種々の高分子製品に、キトサンの抗菌性を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の抗菌組成物は、キトサン、ゼラチンおよび架橋剤を含有するものである。好ましくは、キトサン濃度、ゼラチン濃度および架橋剤濃度はそれぞれ0.1~1.0重量%、0.02~0.2重量%および0.05~0.2重量%である。
【0011】
本発明においてキトサンとは、分子量10,000~200,000、好ましくは10,000~75,000、より好ましくは10,000~40,000、脱アセチル化度75~98%のものをいう。
【0012】
ゼラチンは、市販のものでもよいし、天然(動物の骨、皮)由来のものでもよい。また、かかる市販または天然由来のゼラチンをアルカリ加水分解したゼラチン、酸加水分解したゼラチンを用いてもよい。ゼラチンの分子量は10,000~100,000程度のものが好ましい。なお、ゼラチンは本発明の抗菌組成物において結合剤(バインダー)として作用すると同時に、ゼラチンは染色性が良好なことから、高分子製品、特に繊維製品の染色性が向上する。
【0013】
架橋剤は、化学反応によってゼラチン分子を架橋させる作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、グルタルアルデヒド、多価グリシジル化合物が挙げられる。多価グリシジル化合物としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。かかる多価グリシジル化合物としては、市販のものを使用することもでき、例えば、ナガセケムテックス(株)製、「デナコールEX-931」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-411」、「デナコールEX-252」、「デナコールEX-314」、「デナコールEX-614B」、「デナコールEX-201」、「デナコールEX-211」等が挙げられる。架橋剤としてはグルタルアルデヒドが特に好ましい。
【0014】
本発明の抗菌組成物の調製方法は、本発明の抗菌組成物が得られる限り特に限定されず、各成分を同時に水に添加してもよいし、それぞれ水溶液とした後に混合してもよい。あるいは、成分の一部の水溶液に残りの成分を添加してもよい。そのような調製方法としては例えば、キトサン水溶液とゼラチン水溶液を混合した液に架橋剤を添加する方法が挙げられる。
【0015】
本発明による抗菌組成物が表面に付着してなる高分子製品とは、本発明による抗菌組成物を適用され、水分を乾燥により除去することにより、本発明の抗菌物質、即ちキトサンがその表面に付着した高分子製品である。本発明の抗菌組成物を付着される高分子製品は特に限定されず、合成高分子からなる製品であっても天然高分子からなる製品であってもよい。本発明においては、抗菌物質であるキトサンがゼラチンの接着力および架橋剤による化学反応によって高分子製品に付着する。
【0016】
高分子製品の主成分である高分子素材は、天然または合成のいずれであってもよく天然高分子としては、綿、麻、羊毛など、合成高分子としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、全芳香族ポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル系、ポリフッ素系、ポリエポキシ系などが挙げられる。具体的には、ポリオレフィン系合成高分子として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンの共重合物または混合物が、ポリエステル系高分子化合物として、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、ポリエチレン2・6ナフタレート、ポリアリレート、PETとPBTの共重合物または混合物が、全芳香族系ポリマーとして、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリ-p-フェニレン・テレフタルイミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミド、ポリアリレン・サルファイトが例示される。
【0017】
高分子製品とは、上記のような高分子素材からなる成形品または繊維製品を意味する。具体的には、高分子素材製の成形品、糸、紐、ロープ、織物、不織布などの繊維製品、シート、フィルムなどが挙げられる。
【0018】
かかる高分子製品のなかでも合成繊維製品が好ましく、合成繊維製品としては特に再生材料として注目されているPET繊維製品が好ましい。合成繊維製品の具体例としては、特にハウスダストによるアレルギーなどが問題になっていることから、カーペットが好ましい。また、作業服や白衣など、衛生面が重視される繊維製品なども例示される。
【0019】
本発明の抗菌組成物を繊維に付着させる場合、繊維重量に対するキトサンおよびゼラチンの付着量は、それぞれ、0.2~1.0重量%および0.2~0.8重量%が好ましい。
【0020】
本発明の抗菌処理方法は、本発明による抗菌組成物を高分子製品に適用する工程および乾燥させる工程を含む。ここで抗菌組成物の適用は、高分子製品に対して抗菌組成物をスプレー装置などにより噴霧して行ってもよいし、抗菌組成物に高分子製品を浸漬して行ってもよい。
【0021】
乾燥工程は、抗菌組成物から水分を実質的に除去される限りいかなる方法を用いて行ってもよいが、例えば、繊維をコンベアに載せて100~110℃で10~20分間熱風乾燥するとよい。乾燥により水分を実質的に除去することにより、抗菌物質であるキトサンを含有する硬化膜が形成される。
【0022】
本発明の抗菌処理方法において所望によりさらに熱処理工程を含めてもよい。熱処理は繊維をコンベアに載せて、110~130℃にて10~30分間程度行うとよい。熱処理は、乾燥工程と同時に行ってもよいし、乾燥工程の前または後に行ってもよい。熱処理によって架橋反応が促進される。
【0023】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
(有)グラスベンチャー製キトサン(分子量40,000、脱アセチル化度95%)を4%酢酸水に溶解し、1重量%のキトサン水溶液を調製した。また、宏榮化成(株)製牛骨由来アルカリ処理ゼラチン(分子量100,000)を水に溶解し、1重量%のゼラチン水溶液を調製した。これらの水溶液を1.5:1.0の比率で混合し、さらに架橋剤としてグルタルアルデヒドを0.1重量%になるように添加し、本発明の抗菌組成物である塗布液を得た。
【0025】
PET繊維の製造設備の押出ノズルと延伸紡糸部との間に、塗布液の噴霧設備を設置した。噴霧設備に上記塗布液を注入し、キトサン、ゼラチンの付着量が0.68、0.45(繊維に対する重量%)となるように噴霧設備を調節して塗布液をPET繊維に適用し、乾燥及び熱処理工程を施して、試料を作成した。
【0026】
得られた試料を用いて、筒編み地(7cmx20cm)を作り抗菌性試験の被験サンプルとした。抗菌性試験の方法はシェイクフラスコ法で行った。
【0027】
大腸菌株OW6(Escherichia coli OW6)、枯草菌株168(Bacillus subtilis 168)をLB液体培地(トリプトンペプトン10g/l、イーストエクストラクト5g/l、NaCl5g/l、MnCl・4HO 0.1mM、pH7.0)中で37℃、120rpmで16時間培養した。得られた培養液0.02mlを、被験サンプルまたは対照サンプル(3cmx3cm)を浸したLB液体培地20mlを含むフラスコに入れて、37℃、120rpmで7時間培養し濁度(波長650nmで測定)の変化を調べた。測定結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
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【0029】
以上の結果から、キトサンで加工したPET繊維は大腸菌株OW6および枯草菌株168の増殖を抑制し、抗菌性を示すことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の抗菌組成物は、様々な高分子製品、特にカーペット、作業服、白衣などの繊維製品に用いることができる。