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明細書 :微細凹凸形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283819号 (P5283819)
公開番号 特開2006-320872 (P2006-320872A)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 微細凹凸形成方法
国際特許分類 B05D   5/06        (2006.01)
G02B   5/02        (2006.01)
G02B   6/00        (2006.01)
FI B05D 5/06 104B
G02B 5/02 C
G02B 6/00 331
請求項の数または発明の数 1
全頁数 16
出願番号 特願2005-148587 (P2005-148587)
出願日 平成17年5月20日(2005.5.20)
審査請求日 平成20年5月19日(2008.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】朝倉 浩一
【氏名】黒田 章裕
【氏名】武重 日香里
【氏名】石原 司
個別代理人の代理人 【識別番号】100122954、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷部 善太郎
【識別番号】100162396、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 泰之
審査官 【審査官】横島 隆裕
参考文献・文献 特開2003-151766(JP,A)
特開2003-147339(JP,A)
特開2001-259517(JP,A)
特開2005-113110(JP,A)
特開2004-161747(JP,A)
特開平09-047716(JP,A)
特開昭54-040836(JP,A)
反町和則、長谷川富市,ロールコーティング時に生ずるしまの間隔と深さに関する実験的研究,日本機械学会論文集(B編),日本,The Japan Society of Mechanical Engineers,1991年 7月 1日,58巻547号(1992-3),第131-136頁
調査した分野 B05D 1/00-7/26
G02B 5/00-5/136
G02B 6/00
特許請求の範囲 【請求項1】
表面に天然ゴム、ジエン系ゴム又は非ジエン系ゴムを薄くコーティング又は固定させて柔軟にした金属ブロックを基材表面に接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、該ブロックを移動させながら、含有される撥水化処理超微粒子の平均一次粒子径が1~50nm、及び/又は表面処理剤中の該撥水化処理超微粒子の含有比率が2~60質量%である表面処理剤を基材上に塗布する際に、フィンガリング不安定性を生じさせることにより気液界面に凹凸構造を形成させ、さらにこの気液界面から揮発性物質を蒸発又は基材を繰り返し水浴させることにより基材表面上に微細凹凸の周期が0.1~50μmの微細凹凸構造を形成することを特徴とする微細凹凸形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンガリング不安定性を利用した凹凸及び微細凹凸構造を有する表面及びその凹凸及び微細凹凸形成方法に関する。
さらに詳しくは、材料の表面に凹凸及び微細凹凸を形成させることで、高い撥水性を持つガラス、レンズ、繊維等の材料や、汚染防止能に優れた材料、光散乱性に優れたパネル、光ファイバー等の照明、アンテナ、電線、鉄塔等の積雪、防雪、つらら対策材料・塗料、導体基盤表面の凹凸形成、光触媒を併用して触媒効果を向上させる凹凸表面基材材料、排気ガス処理触媒の比表面積向上等に有用で、加工も容易であることを特徴とする高い撥水性表面を対象として繰り返し再現性のある凹凸及び微細凹凸形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種材料の表面に微細な凹凸を形成させる試みが各種なされている。例えば塗膜から成分を溶出させて凹凸を形成させる方法(特許文献1)、平均細孔径200nm以下の微細な細孔を設けた塗膜とその製造方法(特許文献2)、100nm~2μmの微小多孔を有する膜構造体とその製造方法(特許文献3)、励起粒子ビームを用いる方法(非特許文献1)、メッキ、フラクタル型構造の形成(非特許文献2)を用いる方法等が報告されている。
【0003】

【特許文献1】特開2001-017907号公報
【特許文献2】特開2001-152138号公報
【特許文献3】特開2001-207123号公報
【特許文献4】特願2004-053791号公報
【非特許文献1】http://www.jvia.gr.jp/j/shinkusangyo/shiryou/thinfilmworld/film23.pdf
【非特許文献2】T. Onda, S. Shibuichi, N. Satoh, K. Tsujii, Langmuir, 12, 2125-2127(1996)
【非特許文献3】Kondepudi, D. K. & Prigogine, I.; Modern Thermodynamics -From Heat Engines to Dissipative Structures-, John Wiley & Sons, New York, Chap. 19: Dissipative Structures, pp. 427-457. (1998),参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の公知の方法でも、材料表面に凹凸構造をつくることはできるが、工程の煩わしさ、各材料毎に専用の設備が必要である等の問題がある上に、周期の構造を制御することが難しいという根本的な問題がある。特に特許文献2は滑水性を示すこと、微細な凹凸を形成できることから塗膜の特性としては優れたものであるが、塗膜を形成させるまでの工程が長く、産業的に不利な問題があった。また、特許文献3は塗膜に穴が形成される下に凹の構造を持っており、上に凸の構造塗膜と比べて撥水性が低下する問題を抱えている。
【0005】
また、本発明者らは、固体基材上の液膜が、揮発性成分の蒸散及び水との接触により脱濡れを起こして凹凸構造を形成する際に、形成される凹凸構造の空間周期を制御する技術を開発し、これを利用して撥水性表面及び光散乱製表面を形成すること(特許文献4)を開示してきた。しかし、上記技術は、液膜作成後の乾燥処理及び水処理により、ミクロンからサブミクロのレベルの周期凹凸構造を形成させて、機能を発現させるものであるが、高い撥水性の表面に再現性よく、凹凸及び微細凹凸構造を形成することは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、これらの方法による撥水性表面形成の再現性が低い原因を追求したところ、最初の固体基材上に液膜を塗布する方法の差異が、機能に対し、影響を与えるためであることを確認した。
すなわち、基材上に表面処理剤を塗布して気液界面を形成させるにあたり、コーターに取り付けるブロック表面に天然ゴム等の各種ゴムを薄くコーティングしたブロックを基材に接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、該ブロックを移動させながら表面処理剤を基材上に塗布する際にフィンガリング不安定性を生じさせることにより、表面処理剤表面に平均0.1~1.0mmの間隔を有する凹凸を持つ気液界面を生じさせた後、該気液界面から揮発性物質を蒸発させる、又は繰り返しの水浴により前記凹凸表面に0.1~50μmの周期を持つ微細凹凸を形成させることで高い撥水性表面を繰り返し安定して形成することが可能であることが明らかになった。
【0007】
ここでいう「フィンガリング不安定性」とは、空気等の気体が注入されるという非平衡系条件下において、ゆらぎに対して系が不安定化することを示し、本発明においては、ブロックと液膜とが離れる際に形成され、それが痕跡として残存したものを「フィンガリング構造」という。
フィンガリング構造が出現するメカニズムは、「散逸構造」という概念(非特許文献3)の範疇に含まれる「フィンガリング不安定性」に由来し、構造的に成長した部位ほどさらに成長が促進されるような非平衡環境下で、構造的なゆらぎが成長することによりフィンガリング(指状)構造が形成されるもので、工業的技術として実現するのに極めて簡易な方法である。
【0008】
すなわち、本発明は、平均0.1~1.0mmの間隔を有する凹凸構造を有する凹凸構造の表面に、さらに周期0.1~50μmの範囲にある微細凹凸構造を有することを特徴とする表面にある。
【0009】
第2の本発明は、ブロックを基材表面に接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、フィンガリング不安定性を利用して該ブロックを移動させながら表面処理剤を基材上に塗布する際に、フィンガリング不安定性を生じさせることにより気液界面に凹凸構造を形成させ、該気液界面から揮発性物質を蒸発又は基材を繰り返し水浴させることにより微細凹凸構造を形成することを特徴とする表面の凹凸及び微細凹凸形成方法にある。
【0010】
第3の本発明は、ブロック表面に天然ゴム、ジエン系ゴム又は非ジエン系ゴムを薄くコーティング又は固定したブロックを基材と接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たすことを特徴とする前記の表面の凹凸及び微細凹凸形成方法にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、常温・常圧下で凹凸構造が形成されるように設計した表面処理剤を基材に塗布して乾燥するだけで、繰り返し再現性のある状態で、自発的に微細凹凸構造が材料表面に形成できる利点がある。また、塗布・乾燥された凹凸及び微細凹凸構造が高い撥水性を持ったときに、滑水性を有し、ガラス、レンズ、繊維等の材料や、汚染防止能に優れた材料、アンテナ、電線、鉄塔等の積雪、防雪、つらら対策材料・塗料、半導体基盤表面の凹凸形成、光触媒を併用して触媒効果を向上させる凹凸表面基材材料、排気ガス処理触媒の比表面積向上等に利用可能である。さらに、周期のコントロールされた微細凹凸は光を均一に乱反射させる機能を有しており、照明パネルや光ファイバーに処理するだけで、効率的な光拡散照明が可能である。さらに、微粒子として酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線遮蔽性材料を用いることで、ガラス等に紫外線遮蔽効果を付与することも考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
我々は固体基材上の液膜が、揮発性成分の蒸散及び水との接触により脱濡れを起こして凹凸構造を形成する際に、形成される凹凸構造の空間周期を制御する技術を開発し、これを利用して撥水性表面を形成したが、再現性に問題がでる場合があった。そこで金属ブロックをコーターに取り付け、その金属ブロックの自重による圧力を利用して、液膜の気液界面における撥水性発現の再現性が低い原因を追求したところ、最初の固体基材上に液膜を塗布する方法の差異が、機能に対し影響を与えるためであることが確認された。すなわち、ブロックを基材に接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、該ブロックを移動していく過程でブロックと液膜とが離れる際に形成されるフィンガリング不安定性が十分に発現しない状態で表面処理剤が塗布されて気液界面が形成されると、撥水性が悪くなることが判明した。
【0013】
そこで、本発明者らはフィンガリング不安定性を十分に発現させるために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。すなわち、基材上に表面処理剤を塗布して気液界面を形成させるにあたり、コーターに取り付けるブロック表面に天然ゴム等の各種ゴムを薄くコーティングしたブロックを基材に接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、該ブロックを移動させながら表面処理剤を塗布して気液界面を生じさせた後、該気液界面から揮発性物質を蒸発させる、又は繰り返し水浴させることで高い撥水性表面を繰り返し安定して形成することが可能となった。
【0014】
フィンガリング構造が出現するメカニズムは、先に述べたように「散逸構造」という概念(非特許文献3)の範疇に含まれる「フィンガリング不安定性」に由来し、構造的に成長した部位ほどさらに成長が促進されるような非平衡環境下で、構造的なゆらぎが成長することによりフィンガリング(指状)構造が形成されるもので、本発明における表面の凹凸及び微細凹凸形成方法は、工業的技術として実現するのに極めて簡易な方法であり、工業的利用性は高い。
【0015】
本発明では、表面処理剤の塗工に際してアプリケーター又はブロックを使用することが挙げられるが、上記金属ブロック表面に基材表面と表面処理剤との関係から金属ブロック表面に天然ゴム等を薄くコーティング又は固定して、柔軟で表面処理剤と親和性の高いブロックとしたものを用いるのが極めて効果的である。
また、ブロック表面にコーティング又は固定するコーティング材は、天然ゴムに限らず、ジエン系ゴムや非ジエン系ゴムにおいても同様の効果が認められ、金属ブロックへの密着性が良く、柔軟で表面処理剤との親和性の高い素材で、ブロックを移動させる場合にフィンガリング不安定性を示す素材であれば素材に限定されないことが明らかになった。
【0016】
このような観点から、天然ゴム、ブタジエンとスチレンの共重合物(SBR)、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合物(NBR)、ネオプレン(CR)、ブタジエンの重合物(BR)やイソプレンの重合物(IR)等のジエン系ゴム、さらには、エチレンとプロピレンの共重合物(EPM)、エチレン、プロピレン、少量の非共役ジエン化合物(EPDM)、ハイパロン、ウレタンゴム又は多硫化ゴム等の非ジエン系ゴムや耐溶剤性に優れるシリコーンゴムやフッ素系ゴムが好適に用いられることがわかった。
【0017】
また、本発明ではアプリケーター又はブロック等を使用して液膜を形成するが、アプリケーターを用いて0.5ミリインチ(12.7μm)よりも薄い膜厚の液膜を形成することは設備が複雑で大掛かりになるため、アプリケーターの代わりに天然ゴム等をコーティング又は固定した金属ブロックをコーターに取り付け、その金属ブロックの自重による圧力を利用して、液膜を形成することが簡便な方法として挙げられる。
【0018】
したがって、本発明においては、アプリケーター又はブロック表面に天然ゴム、ジエン系ゴム、又は非ジエン系ゴム等を薄くコーティング又は固定したブロックを基材と接するように互いに密着させ、その間隙に表面処理剤を満たし、該ブロックを移動させながら表面処理剤を塗工して気液界面を生じさせる際のフィンガリング不安定性を利用することにより、その表面に平均0.1~1.0mmの間隔を持つ凹凸構造が形成され、さらに表面処理剤表面から揮発性物質を蒸発させる、又は繰り返しの水浴により、高い撥水性表面を形成することができる。
【0019】
なお、本発明における凹凸構造とは、その凸部と凸部の平均間隔が0.1~1.0mmの範囲にあることを指す。凸部の間隔はビデオマイクロスコープ等を用いて光学的に測定したものを用いることが好ましい。また、平均間隔が0.1mm未満の場合、その後の揮発性物質の蒸発等でさらに微細構造が形成されたとしても撥水性は上がらない。一方、1.0mmを越えると、非塗工部位が形成されたりする場合があり、塗膜の均一性に欠ける問題が発生するため好ましくない。
【0020】
次に本発明に用いる表面処理剤の説明と共に、上記平均0.1~1.0mmの間隔を持つ凹凸構造の表面に形成される0.1~50μmの周期を持つ微細凹凸構造の形成について解説する。
本発明に用いられる表面処理剤としては、本発明者らが出願している特許文献4記載の表面処理剤を用いることができる。
すなわち、本発明の表面処理剤は、例えば平均一次粒子径が1~50nmの範囲にあり、揮発性溶媒を含む溶媒中で機械的に分散されている撥水化処理超微粒子スラリーを含み、さらにその微粒子が表面処理剤の総量に対して5~60質量%の範囲で含まれ、場合によって撥水性樹脂成分が表面処理剤の総量に対して0.1~5質量%の範囲で含まれているものが挙げられる。
【0021】
以下に発明に用いる表面処理剤の説明を簡単にするために、揮発性環状シリコーン中に微粒子が20質量%の量になるように分散された撥水化処理超微粒子スラリーにエタノールを20%程度配合した系を例にとって示す。
このような製剤の外観は液状のスラリー状を示す。このスラリーを、例えばガラス板に薄く塗布すると、30℃程度の室温では、エタノールがすぐに揮発を始める。エタノールは、塗膜の中よりも表面の方がより飛びやすく、塗膜表面の微粒子と環状シリコーンの濃度は塗膜内部に比べて高くなる。
【0022】
しかし、環状シリコーンが残っているために流動性は確保されている。このような状態では、塗膜表面に収縮力が働くが、その際に濃度ゆらぎに基づいて収縮力に不均一性が生ずる。ところが、その濃度ゆらぎを解消する物質の拡散も同時に進行する。
【0023】
例えば、上記の状態で、撥水化処理超微粒子として機械的に分散させたオクチルシリル化微粒子酸化チタンを用いると、本発明で言うところの微細凹凸構造を形成させることができる。逆に、200nmサイズの顔料級酸化チタンのような大きな微粒子のみを用いた場合は、微粒子が大きすぎて収縮力がうまく働かなくなり、構造が形成できない。また、撥水性樹脂成分を大量に配合した場合で、同様の理由で収縮力がうまく働かなくなり、構造が形成できないが、本発明に示したような範囲の量を用いた場合では、液膜の流動性は残っており、構造を形成させることができる。上述の非揮発成分が微粒子だけの場合、出来上がった構造は物理的には完成しているものの界面活性剤等により液膜が崩れてしまう問題を有しているが、撥水性樹脂成分を配合した場合は、出来上がった塗膜は微粒子と樹脂からなる強固な構造体となっており、耐久性に優れる特徴を持っている。そのため、本発明で得られる凹凸部を上から電子顕微鏡観察した場合、微粒子は単独では存在せず、線状の構造体として観察される。
【0024】
散逸構造としての周期構造の形成を利用した表面処理は従来行われてなく、類似の成分が入っていても意図的に力のバランスを変化させてやらないと構造が形成できない。従って、本発明では、上記のように特性成分が特定の割合配合されている上にさらに揮発性物質の蒸発又は繰り返し水につけることによって、0.1~50μmの周期を持つ上に凸の凹凸構造をその表面に形成できることが必要である。上に凸の表面構造とは、表面処理剤塗布直後の平滑な界面に対して、凹凸形成後に上に凸の凹凸が形成される状態を指し、また下に凹とは表面処理剤塗布直後の平滑な界面に穴が開いている状態をいう。表面処理剤で処理した塗面が上に凸であることは、電子顕微鏡観察から明らかである。通常の表面処理剤は、高粘度の油剤が配合されていたり、揮発性が極めて高いか低く設定されているため、塗膜表面は平滑になるように設計されている場合が多く、これらの公知技術は本発明とは異なる技術である。
【0025】
本発明で用いる表面処理剤における平均一次粒子径が1~50nmの範囲にある撥水化処理超微粒子においては、平均一次粒子径は電子顕微鏡観察による粒度分布観察により求めたものを用いる。
なお、一次粒子径がこの範囲に入っていても表面処理剤中に存在している二次凝集体の平均粒子径が200nm以上であり、二次粒子の個数が粒子全体の個数の30%を超える場合には、実質的に周期性のある塗膜は形成できないので、本発明で用いる表面処理剤の範囲を超えると考えられる。
【0026】
本発明に用いる表面処理剤では、この範囲の粒度分布を持つ撥水化処理超微粒子の1種以上を配合する。本発明で用いる撥水化処理の例としては、10質量%エタノール水溶液に分散しないような処理が好ましく、例えばアルキルシラン処理、アルキルチタネート処理、アルキルアルミネート処理、シリコーン(メチルハイドロジェンポリシロキサン)処理、ペンダント処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理後にオレフィン化合物を付加したもの)、金属石鹸処理、末端反応性シリコーン処理、末端反応性パーフルオロポリエーテル処理、フルオロアルキルシラン処理、パーフルオロアルキルリン酸及びその塩処理又はシランカップリング剤処理等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いる表面処理剤では、これらを単独又は複数組み合わせて用いても構わない。この中、特に微粒子の分散性を向上させることができるアルキルシラン処理、アルキルチタネート処理又はアルキルアルミネート処理が好ましく、中でもオクチルシリル化処理したものが特に好ましい。また、フッ素系処理微粒子については、配合量が増えると製剤が乾燥する過程で相分離を起こし塗膜制御がしにくいこと、またフッ素系処理微粒子は撥水撥油性を示すことが多く、そのため、表面処理した材料にうまく固定できず、水や雪との接触等で微粒子が脱離したり凝集したりする場合があることから、製剤に配合する場合には撥水化処理の超微粒子の総量に対して0.001~30質量%の範囲に抑えることが好ましい。また、フッ素系処理微粒子は本発明の比較例にも示したが、塗膜に静かに水滴を落とした場合には高い接触角を示すものの、流れのある水等に対しては逆に塗膜全体に濡れが発生し、撥水性が失われるような現象が発生する場合もある。
【0028】
本発明で用いる表面処理剤に含有される超微粒子としては、酸化チタン、低次酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、無水珪酸、酸化セリウム、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ランタン、バナジウム、タングステン、鉄、酸化鉄、水酸化鉄、酸化コバルト、水酸化コバルト、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、アルミン酸珪酸マグネシウム、アルミン酸珪酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化スズ、炭化珪素、窒化珪素、窒化チタン又は酸化インジウム・酸化スズ複合体及びこれらの複合化合物の1種以上から選ばれることが好ましく、特に超微粒子が、酸化チタン、低次酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、無水珪酸、酸化セリウム、金、銀、白金、酸化鉄、水酸化鉄又は酸化コバルトの1種以上から選ばれることが好ましい。
【0029】
また、表面処理の目的により微粒子を変更することが好ましい。例えば紫外線防御を目的にするのであれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等が好ましく用いられ、光散乱を目的とするのであれば屈折率の高い酸化チタンを含ませることが好ましく、また透明性を確保したいのであれば、無水珪酸が好ましい。
本発明で用いる表面処理剤における微粒子の形状としては、棒状、紡錘状、球状、不定形状等各種の形状のものを用いることが可能である。
また、微粒子の触媒活性を封鎖する目的で、シリカ、アルミナ又はリン酸亜鉛等の化合物で表面処理が行われていることも好ましい。
【0030】
本発明で用いる表面処理剤では、平均一次粒子径が1~50nmの範囲にあり、揮発性溶媒を含む溶媒中で機械的に分散されている撥水化処理超微粒子スラリーを用いることが好ましい。撥水化処理超微粒子を揮発性溶媒を含む溶媒中で機械的に分散する方法としては、湿式の媒体型粉砕機を用いて粉砕を行う方法、ロールミルを用いる方法又はスラリーを高圧噴射する方法等が挙げられるが、管理が容易で量産性に優れる湿式媒体型粉砕機を用いる方法が最も好ましい。
【0031】
本発明で用いる表面処理剤における揮発性溶媒としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、テトラキストリメチルシロキシシラン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル又は軽質イソパラフィンの1種以上から選ばれることが好ましく、特に作業上、安全性が高い1気圧下での沸点が、100~260℃の範囲にある揮発性溶媒を用いることが好ましい。この範囲であると、機械的粉砕時の作業上の安全性が高いメリットがある。これらの例としては、デカメチルシクロペンタシロキサン(沸点210℃)、メチルトリメチコン(沸点190℃)又はテトラキストリメチルシロキシシラン(沸点222℃)が挙げられる。
【0032】
本発明で用いる表面処理剤では、これらの揮発性溶媒と共に不揮発性の溶媒も併用することが可能ではあるが、最終的な表面処理剤中の不揮発性油剤の量が20質量%未満となるようにする必要がある。不揮発性油剤の量が20質量%を超えると、構造が形成しにくくなる他、得られた構造の強度が低下する問題がある。また、本発明で用いるスラリー中の撥水化処理超微粒子の割合としては、スラリーの総量に対して5~55質量%の範囲が好ましく、より好ましくは25~50質量%が挙げられる。5質量%未満では微粒子の量が少なすぎて塗膜の構造が制御できず、55質量%を超えると、微粒子の二次凝集体を十分に一次粒子に解除できず、凝集粒子が多く混入する結果、塗膜の凹凸構造が形成しにくくなる問題がある。
【0033】
本発明で用いる撥水化処理超微粒子スラリー中の微粒子はできるだけ均一に分散していることが好ましい。均一に分散していると均一な凹凸構造を形成することができる。
また、本発明で用いる表面処理剤では、撥水化処理超微粒子と共に撥水化処理していない超微粒子や顔料を配合することは可能ではあるが、構造が形成しにくくなるため、その配合は最小限とする必要がある。具体的には撥水化処理超微粒子の質量に対して20質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
本発明で用いる表面処理剤における平均一次粒子径が1~50nmの範囲にあり、揮発性溶媒を含む溶媒中で機械的に分散されている撥水化処理超微粒子スラリーの表面処理剤への配合量としては、微粒子が表面処理剤の総量に対して1~60質量%の範囲で含まれる。この範囲であれば凹凸構造を安定的に形成することができる。1質量%未満では構造が形成できず、また60質量%を超えると、微粒子濃度が高くなりすぎ、微粒子の凝集等が発生するため、塗膜の凹凸構造が均一とならない場合がある。
【0035】
本発明で用いる表面処理剤では、1気圧下の沸点が40~99℃の範囲にある揮発性溶媒の1種以上を同時に含むことが好ましい。この範囲にある揮発性溶媒としては、例えばエチルアルコール(沸点78℃)、プロピルアルコール(沸点97℃)又はイソプロピルアルコール(沸点83℃)等の低級アルコール類が挙げられるが、特にエチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0036】
本発明ではこの揮発性溶媒を表面処理剤の総量に対して2~60質量%の範囲で含むことが好ましい。この範囲であれば、均一な液膜の塗布がし易く、構造が形成し易いというメリットがある。
2質量%未満では、粘度が高すぎて薄い液膜として塗布するのが困難なため構造ができにくい問題があり、60質量%を超えると、塗膜の殺菌等に有効ではあるものの、揮発性が高いために表面処理剤を均一に塗り難いこと、作業環境の溶媒濃度が高くなってしまう問題がある。
なお、この条件は大気下での開放系での作業を考慮したものであり、専用の溶媒回収装置や塗布装置を用いた場合は、さらに高濃度又は未配合の溶液を用いることも可能である。
【0037】
本発明の表面処理剤は、材料に表面処理した際に溶媒の蒸発又は繰り返し水につけることによって、0.1~50μmの周期を持つ上に凸の微細凹凸構造をその表面に形成することが特徴である。周期が0.1μm未満では撥水性が向上せず、周期が50μmを超えても塗膜の凹凸が足りず、撥水性が向上しない問題がある。
また、凹凸構造の形成は、例えば20~60℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは35~45℃である。
【0038】
本発明では、表面処理剤で材料を覆った後、塗膜が乾燥してきた段階で繰り返し水につけることでさらに凹凸構造を成長させることが可能である。これは、微粒子、溶媒や樹脂の水をいやがる力により、揮発性溶媒が蒸発する時に発生する表面収縮力以上の収縮力が得られるためである。凹凸構造の確認は、非接触型の表面微細凹凸計や電子顕微鏡観察により確認することが好ましい。
【0039】
また、その周期については、電子顕微鏡観察で得られた写真をイメージスキャナーにてデータ化し、画像解析ソフト(例えば米国National Institutes of Health (NIH) http://www.nih.gov/より配布されている周期解析ソフトが挙げられる)を用いてパワースペクトルから周期を確認する方法が挙げられる。
【0040】
本発明では、塗膜の周期構造の形成は、塗膜全てが均一に示していることが好ましいが、種々の条件(塗布条件、塗布量等)によりムラが発生する場合があることから、塗布面積の50%以上が周期を持った凹凸構造を示していれば本発明に該当すると言える。50%未満では凹凸構造に起因する各種の特性(撥水性、光学特性、耐雪性等)が悪くなる問題がある。本発明の表面処理剤の塗布量は、材料の特性にも依存するが、例えば材料表面に0.01~2mg/cm2程度の量を処理することが好ましい。0.01mg/cm2未満であると、均一な塗膜が形成しにくい問題があり、2 mg/cm2を越えると、凹凸形成が部分的にうまくいかない部位が発生する可能性がある。
【0041】
本発明で用いる撥水性樹脂成分としては、揮発性溶媒に溶解する特性を持ったものが挙げられ、さらにシリコーンレジン等の撥水性の樹脂成分と、シリコーン化プルランのような親水性の樹脂成分を化学修飾により撥水化したものが挙げられる。撥水性樹脂成分の例としては、トリメチルシロキシケイ酸、パーフルオロアルキル化シリコーンレジン、ポリスチレン、ニトロセルロース、エチルセルロース、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、変性アルキド樹脂又はカルナウバロウ等、通常使用される樹脂成分を用いることができる。また、触媒を配合し、シリコーンレジン等、各種レジンを熱や光等によって後硬化させることも好ましい。
【0042】
本発明で用いる撥水性樹脂成分の配合量は、表面処理剤の総量に対して0.1~10質量%の範囲が挙げられる。この範囲であれば、凹凸構造を形成しながら微粒子の材料への固定化が可能となる。また、0.1質量%未満では微粒子を固定する能力が弱く、10質量%を超えると、凹凸構造が形成しにくくなる問題がある。
【0043】
本発明では、上記によって得られた塗膜を材料ごと焼成して基材に固定化することが可能である。本発明の表面処理剤による凹凸塗膜は、微粒子と樹脂成分と後述の添加剤程度からなる構成物であるため、自動車用ガラス等、長期間の使用には耐えられない。そこで、塗膜自体を焼成処理し、塗膜の凹凸構造を基材表面に強固に固定することが可能である。
【0044】
この場合の焼成温度としては、例えば300~800℃の範囲が好ましい。温度が低すぎると、炭素が残って着色したりする問題があり、温度が高すぎると基材自体が溶融してしまったりして塗膜構造が維持できない場合がある。但し、焼成しただけであると、凹凸構造は親水性又は弱い撥水性を示す状態となっており、滑水性等の特性が得られないため、用途によってはさらにシリコーン処理、フッ素化合物処理又はシラン処理等により塗膜表面を撥水化処理することで、優れた特性が得られるようになる。また、焼成する場合は、表面処理剤に不揮発性のシリコーン油、好ましくは1~30×10-6m2/sの動粘度範囲にあるものを併用することが好ましい。この場合、シリコーン油は焼成時にシリカに化学変化し、微粒子を固定するため、塗膜の強度が向上するメリットがある。
【0045】
本発明で言う基材とは、例えばガラス、シリコンウェハー、繊維、合成樹脂、建材、光ファイバー、樹脂フィルム、鉄塔、船底等の塗装面、電線、金属板、半導体基盤、セラミックス、排気ガス処理触媒(例えば脱硝装置、三元触媒等)等の原材料又は該原材料からなる構造物が挙げられるが、特にガラス、シリコンウェハー、繊維、合成樹脂、光ファイバー、排気ガス処理触媒の原材料又は該原材料からなる構造物であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いる表面処理剤では、上記以外に各種の油剤、顔料、色材(着色剤)、添加剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤等を配合することが可能であるが、表面処理剤使用温度での動粘度が1×10-3m2/s以上の液状成分の配合量が表面処理剤の質量に対して10質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。これは、動粘度が1×10-3m2/s 以上の油剤では、揮発性溶媒の蒸発に伴う収縮力、拡散を阻害する方向に働くため、周期凹凸構造が形成しにくくなるためである。
なお、この動粘度の基準は、表面処理剤を使用する時点での動粘度であり、反応性モノマーのように処理時は低粘度で時間とともに高粘度化するものについては、もとのモノマー段階での動粘度を採用する。また、表面処理温度が高く、蒸発等の要因で動粘度が実質的に測定できない場合は、室温条件下等、管理が可能な測定条件で測定することができる。
【0047】
本発明で塗布する表面処理剤では、これらの添加剤成分の内、水や多価アルコール等、水溶性成分を除く成分量の合計が、表面処理剤の総量に対して30質量%以下、より好ましくは20質量%以下となるようにすることが好ましい。この剤型では、水溶性成分は塗膜の構造形成にあまり影響を与えないことがわかっているが、他の成分、特に油溶性成分は構造形成や周期に影響を与える場合が多い。
さらに、顔料・色材(ここでは一次粒子径が50nm~1mmのものを想定している)については配合することは可能であるが、配合量の合計量が表面処理剤の総量に対して0.0001~20質量%の範囲に限定することが好ましく、さらに上記超微粒子と同様の撥水化表面処理がされていることが好ましい。そして、顔料・色材の質量と同等以上の質量の上記超微粒子を配合していることが好ましい。
【0048】
これらの顔料・色材は、前記の理由により構造を形成しないが、上記超微粒子と組み合わせることで構造を形成することができる。但し、上記超微粒子と組み合わせて配合したとしても、顔料・色材量が多くなりすぎると物質の拡散が阻害される結果、構造が形成できなくなるため上記の配合量の範囲にあることが好ましい。
また、顔料の内、特に光触媒活性を示すアナターゼ型酸化チタンや貴金属担持酸化チタン、色素担時酸化チタンであって、平均一次粒子径が5nm~0.3μmの範囲にある粒子を用いると防汚材料としての機能が得られる。これら光触媒を配合する場合は、本発明の表面処理剤の質量の10%以下、より好ましくは5%以下配合することが好ましい。但し、光触媒粒子の分散状態によっては凹凸形成に支障がでる場合があるため、機械分散を併用する等して凹凸の形成に支障のない程度の濃度の光触媒を混入し、光触媒効果のある凹凸表面を形成させることが重要である。
凹凸が形成されると、光触媒の接触面積をかせげるメリットがある。
【0049】
本発明で用いる表面処理剤では、上記顔料・色材と共にモノマー又は反応性原料を用いることも好ましい。モノマー又は反応性原料としては、種々の公知の化合物、例えば熱反応性化合物、光(紫外線反応性化合物、赤外線反応性化合物)、電子線、プラズマ反応性化合物、触媒により反応する化合物、ラジカル反応性化合物、不飽和脂肪酸等の金属イオンと反応して架橋体を形成する化合物等が挙げられる。具体的には例えばエポキシ化合物、アクリルアミド系モノマー(アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド等)、アクリル系モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸イソブチル等)、アクリル系オリゴマー、乾性油(アマニ油、ケシ油等)、ポリビニルケイ皮酸系化合物、不飽和ポリエステル系化合物、重クロム酸系化合物、エン・チオール系化合物、変性シリコーン系化合物、アリルジグリコールカーボネート、多官能性環状カーボネート化合物、多官能性(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等)、シアノアクリレート、フタル酸系化合物又はアクリルシリコーン系化合物等が挙げられるが、1気圧下での沸点が100℃未満の化合物はそれ自体が蒸発し、コントロールが難しいことから、オリゴマー化等により、1気圧下の沸点を100℃以上にすることが好ましい。
【0050】
なお、光反応開始剤、ラジカル反応開始剤等の反応補助成分又は反応開始剤又はイオン補足剤についてはこの限りではない。但し、これらのモノマー、反応性原料を用いた場合で、屋外で使用する等、使用環境が室温又は大気温度下にある場合では、25℃での動粘度が1×10-3m2/s 以上の液状成分の配合量が表面処理剤の質量に対して10質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。但し、処理温度が高温又は減圧条件下である場合であって、閉鎖空間で処理を行う場合では、その温度での動粘度が1×10-3m2/s 未満であれば、配合量制限はない。
【0051】
本発明の表面処理剤の設計方法の例を以下に示す。
まず、使用目的に合わせた超微粒子の種類を決定する。例えば紫外線に関するものであれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン又は酸化セリウム等の素材が利用でき、光散乱に関するものであれば、酸化亜鉛、二酸化珪素、酸化ジルコニウム等が好ましく、触媒に関するものであれば酸化セリウム、白金、ロジウム又はパラジウム等が好ましく、撥水性を目的とする場合は、酸化チタン、酸化セリウム、二酸化珪素又は酸化ジルコニウム等が好ましく、防汚材料としては、光触媒活性を有する酸化チタンが好ましい。次にこれらの超微粒子を撥水化処理するが超微粒子は、凝集性が強いため、凝集を解除し、かつ再凝集を防止する必要がある。
【0052】
再凝集防止効果に優れた表面処理方法としては、オクチルトリエトキシシランによる処理が挙げられ、溶剤中で超微粒子とオクチルトリエトキシシランを同時に湿式粉砕し、破断面を逐次オクチルトリエトキシシランで反応させ、再凝集を防止することで高度な分散処理粉体が得られる。
【0053】
この素材をそのまま、又は再度溶媒中でスラリー化したものを用意する。このスラリーを10%ずつ濃度を振り、接着剤、樹脂、反応性化合物等、塗膜を固定する成分の量を数水準設定し、残量を揮発性溶媒を用いて100%とする。そして、それぞれのサンプルの水浴前接触角と水浴後接触角の差を求めグラフ化すると、その成分組成に特異的に接触角が上昇する領域がでてくる。
その領域は、通常散逸構造に基づく凹凸の周期構造を形成している領域と一致する。この領域が設定できたら次に実用上必要な添加成分、着色剤等のその他成分をこの領域の組成物に添加したものを、添加量別に数水準作成し同様の操作を行う。この操作で、接触角の差が大きなもので使用目的に合致した領域にあるものを調べることで、目的の表面処理剤の組成を得ることができる。
【0054】
表面処理剤を塗布する速度を制御できるコーターを利用し、これに膜厚を制御できるアプリケーター、又は塗布圧を制御できるブロックを使用して実験を行った。形成された表面処理剤の液膜は乾燥処理を行った後、さらに水処理を行い、水処理前後の表面の撥水性を測定した。また、顕微鏡観察及び電子顕微鏡による表面観察も行った。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、実施例で用いた各種特性に対する評価方法、表面処理剤の調製も併せて示す。
【0055】
(1)接触角の測定方法
5cm×10cm×3mmの表面が親水性のガラス板を用意し、この片面に表面処理剤を12mg塗布し、送風乾燥機を用いて37℃にて10分間乾燥した。接触角測定装置(協和界面科学社製接触角測定装置(CA-DT型))を用いて水滴と接触させた直後の写真撮影データから接触角を測定した。また、このガラス板を35℃の水流(4L/分)に水平方向から30度の角度で傾けた状態で、100回/分の割合で、1分間水流に出し入れした後の接触角を測定した。
【0056】
(2)凹凸の確認と周期の測定
走査型電子顕微鏡を用い、3000倍の倍率で測定した写真から凹凸形成の確認を行い、さらに写真から前記のNIHイメージソフトウェアにより、パワースペクトルから周期を測定した。
【0057】
(3)表面処理剤の形成
オクチルシリル化微粒子酸化チタン(オクチルトリエトキシシラン10質量%処理シリカ・アルミナ処理微粒子酸化チタン。平均粒子径35nm。溶媒としてトルエンを使用し、ビーズミル中で反応させた後、乾燥、加熱処理を行ったもの)40質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン(環状揮発性シリコーンの1種。沸点210℃)60質量部を、粗混合した後、ビーズミル(横型サンドグラインドミル)を用いて微粉砕し、オクチルシリル化微粒子酸化チタンが均一に分散したオクチルシリル化微粒子酸化チタンスラリーを得た。また、オクチルシリル化微粒子酸化亜鉛(オクチルトリエトキシシラン10質量%処理微粒子酸化亜鉛。平均粒子径10nm。溶媒としてトルエンを使用し、ビーズミル中で反応させた後、乾燥、加熱処理を行ったもの)45質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン55質量部を、粗混合した後、ビーズミル(横型サンドグラインドミル)を用いて微粉砕し、オクチルシリル化微粒子酸化亜鉛が均一に分散したオクチルシリル化微粒子酸化亜鉛スラリーを得た。これらの素材を使用し、表1の処方にて製品(光拡散を行う表面処理剤)を得た。
なお、表中の単位は質量%である。
【0058】
[表1]
成分A
オクチルシリル化微粒子酸化チタンスラリー 1
オクチルシリル化微粒子酸化亜鉛スラリー 40
メチルトリメチコン 10
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業製KF96A10cs) 10
トリフルオロフ゜ロヒ゜ル化トリメチルシロキシケイ酸50質量%
テ゛カメチルシクロヘ゜ンタシロキサン溶液 2
デカメチルシクロペンタシロキサン 8
モノイソステアリン酸ソルビタン 1

成分B
エチルアルコール 5
防腐剤 適量
防カビ剤 適量

成分C
精製水 適量

【0059】
成分Aを均一に混合した後、溶解させた成分Bを加えた後、成分Cを加え、攪拌した後、容器に充填して表面処理剤とした。
【実施例1】
【0060】
スリット幅0.5ミリインチ(12.7μm)のアプリケーターを用いて塗布速度を12cm/secとし、平滑な表面処理剤の液膜を形成した。そして、揮発性成分を蒸発させた後の塗布表面は、液膜の厚さに応じて水との接触角として70~100度を示した。しかし、さらに水浴処理を行っても、いずれの場合も水の接触角は上昇せず、高い撥水性の表面とはならなかった。
図1は、表面処理剤の液膜を塗布した直後の表面を観察した結果である。この写真の解析結果から、ほぼ完全に平滑な平面となっていることが判る。
【実施例2】
【0061】
アプリケーターの代わりに金属ブロックをコーターに取り付け、その金属ブロックの自重による圧力を利用して、液膜を形成した。コーティング速度を低下させることにより、液膜厚が低下する傾向が認められた。そして、揮発成分を蒸発させた後の塗布表面における水の接触角は70~110度となった。しかし、さらに水浴処理を行っても、いずれの場合も水の接触角は上昇せず、高い撥水性の表面とはならなかった。
図2は、表面処理剤の塗布速度を12cm/secとして液膜を塗布した直後の表面を観察した結果である。この写真の解析結果から、数mm周期の非常に緩やかな凹凸が形成されている平面となっていることが判る。
【実施例3】
【0062】
実施例2で用いた金属ブロックの周囲に天然ゴムを固定し、より柔軟でまた表面処理剤との親和性の高いブロックとして、実施例2と同様の実験を行った。この場合もコーティング速度を低下させることにより、液膜厚が低下する傾向が認められた。そして、揮発性成分を蒸発させた後の塗布表面における水の接触角は70~110度であった。さらに、この後水浴処理を行うと、水の接触角は30~40度上昇して140度すら超える高い撥水性の表面となる場合があった。
図3は、表面処理剤の塗布速度を12cm/secとして液膜を塗布した直後の表面を観察した結果である。
【0063】
この写真の解析結果から、表面に数100μm間隔でかなり明瞭な凹凸構造が形成されていることがわかる。
これは、粘性の表面処理剤薄膜中に水や空気が吹き込まれる際に頻繁に形成されるフィンガリング構造、すなわち、空気等が注入されるという非平衡系条件下において、ゆらぎに対して系が不安定化して生じる構造が、ブロックと液膜とが離れる際に形成され、それが痕跡として残存したものと考えられる。
実施例3においても、表面処理剤の液膜を形成し、揮発成分を蒸散させた後の表面の水との接触角は、実施例1及び実施例2の場合と差異が認められなかったが、これらの表面を水浴処理すると、その後における表面の水の接触角は、実施例1及び2ではほとんど変化しなかったが、実施例3においては、142度となり、高い撥水性表面となった。この原因について、水処理前後の液膜の表面を電子顕微鏡により観察したところ、図4に示すように、液膜の塗布時に自発的に形成された凹凸構造の凹部において、周期が数μmの凹凸構造が形成されていることが確認された。
【実施例4】
【0064】
実施例3と同様に金属ブロックをブタジエンとスチレンの共重合物(SBR)からなるジエン系ゴムで表面を薄くコーティングを施すことにより、より柔軟でまた表面処理剤との親和性の高いブロックとして、実施例3と同様の実験を行った。この場合もコーティング速度を低下させることにより、液膜厚が低下する傾向が認められた。そして、揮発性成分を蒸発させた後の塗布表面における水の接触角は70~110度であった。さらに、この後水浴処理を行うと、水の接触角は30度上昇して135度の高い撥水性の表面となった。
【実施例5】
【0065】
実施例3及び4と同様に金属ブロックをポリウレタンからなる非ジエン系ゴムを表面に薄く固定し、柔軟でまた表面処理剤との親和性の高い金属ブロックとして、実施例3と同様の実験を行った。この場合もコーティング速度を低下させることにより、液膜厚が低下する傾向が認められた。そして、揮発性成分を蒸発させた後の塗布表面における水の接触角は80度であり、さらに、この後、水浴処理を行うと、水の接触角は40度上昇して120度の高い撥水性の表面となった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】表面処理剤の塗布速度を12cm/secとして液膜を塗布した直後の表面の顕微鏡写真(縦4.6cm×横6.0cm)
【図2】表面処理剤の塗布速度を12cm/secとして液膜を塗布した直後の表面の顕微鏡写真(縦4.6cm×横6.0cm)
【図3】表面処理剤の塗布速度を12cm/secとして液膜を塗布した直後の表面の顕微鏡写真(縦4.6cm×横6.0cm)
【図4】液膜の塗布時に自発的に形成された凹凸構造の凹部において、周期が数μmの凹凸構造が形成された表面の電子顕微鏡写真
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3