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明細書 :二酸化炭素の還元方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4724830号 (P4724830)
公開番号 特開2006-021989 (P2006-021989A)
登録日 平成23年4月22日(2011.4.22)
発行日 平成23年7月13日(2011.7.13)
公開日 平成18年1月26日(2006.1.26)
発明の名称または考案の名称 二酸化炭素の還元方法
国際特許分類 C01B  31/18        (2006.01)
FI C01B 31/18 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2005-161135 (P2005-161135)
出願日 平成17年6月1日(2005.6.1)
優先権出願番号 2004173960
優先日 平成16年6月11日(2004.6.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月10日(2008.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】池田 攻
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開昭52-088597(JP,A)
特開平04-270104(JP,A)
特開2003-260364(JP,A)
特開2000-178005(JP,A)
調査した分野 C01B 31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
二酸化炭素を300℃乃至500℃の温度下に酸化ニッケル媒体と接触させることを特徴とする二酸化炭素の還元方法。
【請求項2】
二酸化炭素を300℃乃至500℃の温度下に酸化ニッケル媒体と接触させ二酸化炭素を還元する二酸化炭素還元工程と前記二酸化炭素還元工程に用いられた酸化ニッケル媒体を600℃乃至800℃に加熱する酸化ニッケル媒体の活性化工程とよりなり、該活性化された酸化ニッケル媒体は再度二酸化炭素還元工程に用いることを特徴とする二酸化炭素の還元方法。
【請求項3】
酸化ニッケルを担体に担持させた酸化ニッケル媒体と二酸化炭素を接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素の還元方法。
【請求項4】
担体が非晶質珪酸ゲルである請求項3記載の二酸化炭素の還元方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化炭素の還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の大量排出は、地球の温暖化をもたらし、地球上の生物体系の変化や海面の上昇など地球的規模の環境問題を引き起こしつつある。
【0003】
このため、各国における二酸化炭素の排出規制等が行われつつある。
【0004】
一方、二酸化炭素は、人類の生活やエネルギー確保のための有機物の燃焼等に伴い、不可避的に発生するものであり、放置すれば、社会生活の進歩と共に益々発生量の増大を招くものである。
【0005】
他方、森林や海面など自然の力による二酸化炭素の吸収除去能力には限界があり、現状では地球上の二酸化炭素は増加の一途をたどっている。
【0006】
そこで工場等で排出される二酸化炭素を減少させるための手段として、排煙中の二酸化炭素を固定化する方法、液化する方法、或いは、還元分解する方法等が提案されている。
【0007】
例えば、固定化法としては消石灰固定、高炉スラグによる固定等が考えられるが、二酸化炭素の排出量は膨大であり、これを固定化する媒体の量も極めて大量に必要となるため、現実性に欠ける。
【0008】
また、二酸化炭素を液化する方法は、その液化された二酸化炭素の保管が問題となる。液化した二酸化炭素は深海に投棄した場合、浮上することなく、しかも表面に水の保護膜が形成され、海水中に拡散しないといわれており、深海への投棄も提案されているが、その影響等は未知であり、理論先行の感を免れない。
【0009】
最近はむしろ、地下の不透水層をキャップロックとして浮上を防ぐ、地下貯留の研究が盛んである。しかし地殻変動等によるガス洩れの可能性もあり、完全な解決策とはいえない。
【0010】
そこで、二酸化炭素を何らかの手段で還元し、一酸化炭素を得ることが考えられる。一旦、一酸化炭素に変換できれば、再度燃料として再利用できるし、メタノール等各種化学原料としても利用可能となる。
【0011】
通常二酸化炭素は、水素により還元する方法が知られており、種々の触媒も開発されている。
【0012】
特許文献1には、触媒としては、鉄、銅、亜鉛、クロム等の酸化物を用いる方法、金属銅や硫化モリブデン、炭化モリブデンをアルミナ等の担体に担持させて用いる方法等が記載されている。
【0013】
これら水素を用いる還元は、二酸化炭素を一酸化炭素に還元すると同時に同モル量の水素が水となって消費されるため、別途大量の水素の確保が必要となる。
【0014】
そこで、水素のような補助原料(還元剤)を用いることなく、リサイクル可能な媒体による二酸化炭素の還元方法が理想として求められる。

【特許文献1】特開平8-245211号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、水素等の還元剤を使用せず、循環使用可能な媒体により二酸化炭素を還元し、一酸化炭素とする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、二酸化炭素を300℃乃至500℃、好ましくは350℃乃至450℃の温度下に酸化ニッケル媒体と接触させることにより、二酸化炭素を還元する方法を提供する。
【0017】
更に本発明は、二酸化炭素を300℃乃至500℃、好ましくは350℃乃至450℃の温度下に酸化ニッケル媒体と接触させ二酸化炭素を還元する二酸化炭素の還元工程と前記二酸化炭素還元工程に用いられた酸化ニッケル媒体を600℃乃至800℃、好ましくは、650℃乃至750℃に加熱する酸化ニッケル媒体の活性化工程とよりなり、該活性化工程で活性化された酸化ニッケル媒体は、再度二酸化炭素還元工程に用い、循環使用することを特徴とする二酸化炭素の還元方法を提供する。
【0018】
また、本発明においては、媒体となる酸化ニッケルは、勿論それ自体でも媒体の役割を果すことは可能であるが、更に各種担体に担持させて用いることも包含する。それらの担体としては、非晶質珪酸ゲルが特に有効に用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、水素等の還元剤を消費することなく、二酸化炭素を還元することができるため、極めて有利に二酸化炭素の排出を抑制することが可能となり、しかも二酸化炭素の還元により得られる一酸化炭素は、それ自体着火容易な気体燃料や、酸素拡散型燃料電池の燃料として用いることができ、更にメタノールやホルムアルデヒド等の化学原料として有効に用いることができる。
【0020】
また二酸化炭素の還元反応において媒体として用いられる酸化ニッケルは熱処理を施すことにより、何ら減少することなく繰り返し再使用できるため、大量の補助原料を用いる必要がなく、コスト的にも極めて有利な方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、酸化ニッケルを媒体として二酸化炭素を還元する方法である。二酸化炭素の還元反応は基本的に次の如く示すことができる。
【0022】
【化1】
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すなわち、理論的には二酸化炭素1モルを還元するのに2価の酸化ニッケル2モルを必要とする。
【0023】
ところで、2価の酸化ニッケルは、300℃~500℃、好適には350℃~450℃、特に350℃近辺で2価から3価に少なくとも一部転移する。この範囲内において二酸化炭素は一酸化炭素に還元され、ニッケルは3価の酸化ニッケルとなると考えられる。なお酸化第二ニッケル(三二酸化ニッケル)は完全な無水物は得られず、水化物となると考えられるが、模式的に上記式の如く示すものとする。
【0024】
また3価の酸化ニッケルは、600℃~800℃、好適には650℃~750℃、特に700℃近辺で、酸素を放出し、2価の酸化ニッケルとなる。この反応は大気中でも進行するが、好ましくは不活性雰囲気中で行うことができる。この2価の酸化ニッケルは、また二酸化炭素の存在下に前記300℃~500℃に加熱すれば、3価の酸化ニッケルが生成すると同時に二酸化炭素は還元されて一酸化炭素が得られるのである。
【0025】
本発明において、媒体となる酸化ニッケルの性状や製法は、特に限定されないが、好適な高分散の酸化ニッケル媒体を得る方法の一つは、酸化ニッケルを非晶質シリカゲル、アルミナゲル等の担体に分散担持させ、開気孔型のナノ細孔を有し、ガスが浸透しやすい形態として用いることが好ましい。
【0026】
また酸化ニッケル媒体の形状は、平均粒子径0.1~数ミリメートルの顆粒状或いは平均粒径数ミリメートル~数センチメートルの塊状として用いる。
【0027】
本発明に用いる反応器は特に限定されないが、通常外部加熱式の筒式反応器であり、内部に酸化ニッケル媒体を充填して用いる。この場合、流通させる二酸化炭素をあらかじめ加熱して供給することにより、前記外部加熱設備を省略することも可能である。
【0028】
更に、媒体の加熱活性化を同一反応器内で行う場合には、一般に反応器に冷却ジャケット等、冷却設備を併設しておき二酸化炭素の還元に供し、3価の酸化ニッケルとなった酸化ニッケル媒体が充填された反応器を600℃~800℃に加熱し、酸化ニッケル媒体を活性化し、これを冷却し、再使用に供することも有効な手段である。
【0029】
更に流動床又は移動床型反応器を用い、酸化ニッケル媒体を浮遊又は移動させながら二酸化炭素を還元し、同時に酸化ニッケル媒体の一部を連続的又は間歇的に取り出し、これを加熱活性化して連続的又は間歇的に反応器へ供給するという連続反応・処理方法も行うことができる。
【0030】
これらの場合には反応器の他に酸化ニッケル媒体の加熱活性化処理を行う加熱設備の併設が必要となる。更に供給ガスの予熱設備も必要である。また流動床反応器に供給する気体は、被処理ガスである二酸化炭素或いは、駆動力や熱源を確保するために窒素ガスその他の不活性ガスを混合して用いることができる。
【0031】
二酸化炭素の還元反応は、通常短時間で進行する。一般に固定床の場合、空筒速度で、1分間500cm以下、好ましくは200cm以下であれば十分である。
【0032】
また、被処理二酸化炭素の濃度は100%から数ppmの範囲で十分に対応し得る。
【0033】
二酸化炭素の転化率は、媒体との接触時間と大概比例関係にあり、通常数秒から数分間の接触で、酸化ニッケル媒体の酸化が完了するので、理論的には数分、例えば2~3分以下の接触時間で、実質的に100%の二酸化炭素が還元される。
【0034】
なお、二酸化炭素の転化率を大きくするためには、固定床式反応器の使用が流動床や移動床式反応器を用いる場合より有利である。しかし短時間に大量の二酸化炭素を処理する場合には、流動床や移動床式反応器の使用が好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示すが、本発明はいかなる意味においても、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(酸化ニッケル媒体の合成) 試薬のメタ珪酸ナトリウム9水和物<Na2O・SiO2・9H2O>をイオン交換水に溶解し、0.74mol/Lの溶液を準備した。同様に硝酸ニッケル6水和物<Ni(NO3)2・6H2O>を溶解し、1.1mol/Lの溶液を準備した。前者を80ml採取し、500mlのポリビーカーに移し、ビュレットを用いて後者を80ml滴下し沈殿物を得た。滴下中は磁石回転子を用いて攪拌を続けた。漏斗と濾紙を用いて濾過し、イオン交換水でよく洗浄し、回収した沈殿物を室温で乾燥させた。粉末X線回折法によれば、得られた沈殿物は非晶質で、いわゆるゲルの状態であることが解った。蛍光X線分析によるゲルの化学組成は表1のようで、NiOとSiO2のモルの比がほぼ1:1のゲルが得られた。微量ではあるがNa2Oの混在が認められた。このゲル物質を媒体Aという。
【0037】
同様にして、0.74mol/Lのメタ珪酸ナトリウム9水和物溶液に0.74mol/Lの硝酸ニッケル6水和物溶液を体積比1:1の条件で滴下し沈殿物を生成させ濾過洗浄しゲルを得た。この際、あらかじめ1mol/Lの苛性ソーダ溶液を準備しメタ珪酸ナトリウム溶液に体積比1:2で混合した。最終的に溶液のpHは12.8を示した。このゲルの化学組成はNiO:SiOモル比がほぼ2:1でNiO含有率が高い。このゲル物質を媒体Bという。これら媒体Aと媒体Bとの化学組成を表1に示す。
【0038】
【表1】
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(実施例1~11及び比較例1~4) アルミナシリカ質の磁製カラム(内径約2.5cm、長さ70cm)にグラスウールを半分の高さまで詰め、その上に顆粒状(平均粒径1.0mm)にした前記酸化ニッケル媒体の合成で得られた媒体Aを2グラム充填し、更に顆粒が飛ばないようにするため、上部にグラスウールを数センチの厚さに詰めた。磁製カラム及びグラスウールは事前に600℃で空焼きし、有機物の存在を完全に除去した。カラムの上方及び下方にガラス製摺り合わせキャップを配し、その突端にシリコンゴム製のチューブを取り付け、ボンベにより下方から二酸化炭素ガスを導入した。流量は0.1L/minである。カラムは縦型管状炉により加熱される仕組みである。カラム上方のシリコンゴム製チューブを通じて出てきたガスをコック付きのガラス製デシケーターに導き、内部に設置した一酸化炭素センサー(新コスモ電機製XC-2000型)によりその濃度を読み取った。最終的にガスはデシケーター上部のコックから排出される仕組みである。結果を媒体A1回目として表2に示す。
【0039】
反応終了後の媒体を再生活性化するため、カラムに充填した顆粒を取り出しルツボに移し、箱型電気炉内で750℃で30分間加熱保持し、媒体を再生活性化した。それを再びカラムに充填し、前回と同様の方法で二酸化炭素ガスを流し還元実験をした。結果を媒体A再生後として表3に示す。
【0040】
実施例1~4と同様にして媒体Bを用いて、二酸化炭素の還元を行うが一酸化炭素センサーの代わりに0.01mol/Lの消石灰懸濁液を用い、二酸化炭素ガスを流してから20分後に懸濁液を回収し、粉末X線回折によ
り生成した炭酸カルシウムの量を求め、最終的にブランク試験の結果と比較して一酸化炭素の生成量を求めた。母ガスの二酸化炭素ガス流量は同様に0.1L/minであり、カラム充填量は12.5gである。結果を表4に示す。
【0041】
【表2】
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【0042】
【表3】
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【0043】
【表4】
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【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、何ら還元剤を消費することなく二酸化炭素を還元して、一酸化炭素を生成する方法であり、二酸化炭素の排出規制に対応し、二酸化炭素の排出量の減少に貢献するものであり、他方高濃度の一酸化炭素の生成手段ともなり得るため、メタノールやクロロメタン類、ホルムアルデヒド、その他の化学品製造原料の生産にも役立つものである。