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明細書 :レーザ干渉変位測定方法およびレーザ干渉変位測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4501000号 (P4501000)
公開番号 特開2006-105669 (P2006-105669A)
登録日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
公開日 平成18年4月20日(2006.4.20)
発明の名称または考案の名称 レーザ干渉変位測定方法およびレーザ干渉変位測定装置
国際特許分類 G01B  11/00        (2006.01)
G01B   9/02        (2006.01)
FI G01B 11/00 G
G01B 9/02
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2004-290013 (P2004-290013)
出願日 平成16年10月1日(2004.10.1)
審査請求日 平成18年12月28日(2006.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】佐々木 修己
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100119334、【弁理士】、【氏名又は名称】外山 邦昭
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
審査官 【審査官】櫻井 仁
参考文献・文献 特開平08-035811(JP,A)
特開平01-039505(JP,A)
特開昭60-203801(JP,A)
特開平09-229626(JP,A)
調査した分野 G01B 11/00~11/30
G01B 9/02
特許請求の範囲 【請求項1】
正弦波状に変調した注入電流をレーザ光源に入力し、波長を時間的に変化させながら当該レーザ光源から光を発生させる第1の工程と、
前記光を分割して被対象物の表面と参照面に各々反射させた後、前記被対象物表面からの物体光と前記参照面からの参照光を合成して干渉光を得る第2の工程と、
前記干渉光を電気的な干渉信号に変換する第3の工程と、
前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の1周期に対し一定間隔で前記干渉信号をサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して前記被対象物の変位を測定する第4の工程と、を含むことを特徴とするレーザ干渉変位測定方法。
【請求項2】
前記レーザ光源の光強度変化を電気的な検出信号に変換する第5の工程と、
前記第3の工程における干渉信号を前記検出信号で除算し、時間的な光強度変化を除去した干渉信号を得る第6の工程と、をさらに含み、
前記第4の工程は、前記第6の工程で得た時間的な光強度変化を除去した干渉信号をサンプリング取得することを特徴とするレーザ干渉変位測定方法。
【請求項3】
記第4の工程で、前記干渉信号に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、当該干渉信号の値をそれぞれサンプリング取得し、これらの各値から、前記干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、前記注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成すると共に、前記サンプリング取得した各信号から前記干渉信号の相を求め、前記被対象物の変位を測定することを特徴とする請求項2記載のレーザ干渉変位測定方法。
【請求項4】
前記第4の工程で、前記変調振幅の値がπとなるようにフィードバック制御を行なう第7の工程をさらに含むことを特徴とする請求項3記載のレーザ干渉変位測定方法。
【請求項5】
レーザ光源からの光を分割して被対象物の表面と参照面に各々反射させた後、前記被対象物表面からの物体光と前記参照面からの参照光を合成して干渉光を得る干渉光学系と、
前記干渉光学系により得られる干渉光を電気的な干渉信号に変換する第1の光電変換手段と、
前記レーザ光源に正弦波状に変調した注入電流を与え、波長が時間的に変化する光を前記レーザ光源から発生させる変調電流生成手段と、
前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の1周期に対し一定間隔で前記干渉信号をサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して前記被対象物の変位を測定する信号処理手段と、を備えたことを特徴とするレーザ干渉変位測定装置。
【請求項6】
前記レーザ光源の光強度変化を電気的な検出信号に変換する第2の光電変換手段と、
前記第1の光電変換手段で得た干渉信号を前記第2の光電変換手段で得た検出信号で除算し、時間的な光強度変化を除去した干渉信号を得る割算手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載のレーザ干渉変位測定装置。
【請求項7】
前記信号処理手段は、前記干渉信号に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、当該干渉信号の値をそれぞれサンプリング取得し、これらの各値から、前記干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、前記注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成すると共に、前記サンプリング取得した各信号から前記干渉信号の相を求め、前記被対象物の変位を測定するものであることを特徴とする請求項6記載のレーザ干渉変位測定装置。
【請求項8】
前記信号処理手段は、前記変調振幅の値がπとなるようにフィードバック制御を行なうものであることを特徴とする請求項7記載のレーザ干渉変位測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば精密加工機や精密測定器において、工作物,切削器具,測定対象物などの変位位置を精密に設定するのに用いられるレーザ干渉変位測定方法およびレーザ干渉変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の干渉計は、光源からの光を分割させて被対象物の表面と参照面に各々反射させた後、被対象物表面からの物体光と参照面からの参照光を合成して干渉させる干渉光学系と、この干渉光学系の検出面で得られる干渉光を電気信号に変換する光電変換手段とを備え、2つの光波の位相差または光路長の差を光の強度に変換することで、光の波長を単位とした超精密測定を実現している。特に、被対象物に対しては非接触での測定が可能になることから、精密加工機や精密測定器などを扱う加工現場では、有効な測定手段として利用されている。
【0003】
こうした干渉計による変位測定装置として、例えば特許文献1には、単一波長を有する光源として半導体レーザを用いた干渉光学系を用意し、被対象物の表面がλ/2(λは半導体レーザの発振波長)だけ変位する毎に、光電変換手段で得られる干渉信号の強弱が1周期変化するのを利用して、被対象物の変位を微細に測定するものが開示されている。

【特許文献1】特開平4-169817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の変位測定装置では、特許文献1のように干渉光学系において単一の波長だけを用いるよりも、レーザ光の波長を連続的に変化させ、被対象物の変位を干渉光による位相のずれとして捕えた方が、より正確な変位の測定を行なうことが可能である。そこで従来は、半導体レーザの注入電流i(t)として図7に示すような鋸波状の変調電流を入力し、当該半導体レーザの発振周波数を変調して干渉信号を得るものが知られていた。
【0005】
ところが、半導体レーザに入力する変調電流の周波数fcが高くなり、図7に示す注入電流i(t)の周期Tcが4μSec(fc=250kHz)程度になると、鋸波の急激な立下りの部分において、変調に対応した干渉信号が得られなくなり、より高速な変位の測定ができないという問題を有していた。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、従来よりも高速に、被対象物の変位を正確に測定することができるレーザ干渉変位測定方法およびレーザ干渉変位測定装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1におけるレーザ干渉変位測定方法は、正弦波状に変調した注入電流をレーザ光源に入力し、波長を時間的に変化させながら当該レーザ光源から光を発生させる第1の工程と、前記光を分割して被対象物の表面と参照面に各々反射させた後、前記被対象物表面からの物体光と前記参照面からの参照光を合成して干渉光を得る第2の工程と、前記干渉光を電気的な干渉信号に変換する第3の工程と、前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の1周期に対し一定間隔で前記干渉信号をサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して前記被対象物の変位を測定する第4の工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
この場合、正弦波状に変調した注入電流をレーザ光源に入力することで、レーザ光源から発生する光の波長も正弦波状に変化する。当該レーザ光源からの光は、被対象物の表面と参照面に各々反射して干渉し、この干渉光が電気的な干渉信号に変換されるが、レーザ光源に入力する注入電流は、急激な立上がりや立下りのない正弦波状の変化を繰り返すため、注入電流の変調周波数が例えば1.5MHz程度にまで高くなっても、干渉信号を正しくサンプリング取得することができる。そのため、正弦波状の変調周波数を基準として、被対象物の変位する時間よりも短く、変調周波数の1周期に対し一定の間隔で干渉信号をサンプリング取得すれば、当該サンプリング取得した複数の干渉信号の演算処理により、被対象物の変位を正しく測定することができる。
【0009】
そして、このような作用効果は、レーザ光源からの光を分割して被対象物の表面と参照面に各々反射させた後、前記被対象物表面からの物体光と前記参照面からの参照光を合成して干渉光を得る干渉光学系と、前記干渉光学系により得られる干渉光を電気的な干渉信号に変換する第1の光電変換手段と、前記レーザ光源に正弦波状に変調した注入電流を与え、波長が時間的に変化する光を前記レーザ光源から発生させる変調電流生成手段と、前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の一周期に対し一定間隔で前記干渉信号をサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して前記被対象物の変位を測定する信号処理手段と、を備えた請求項5のレーザ干渉変位測定装置でも実現できる。
【0010】
請求項2におけるレーザ干渉変位測定方法は、前記レーザ光源の光強度変化を電気的な検出信号に変換する第5の工程と、前記第3の工程における干渉信号を前記検出信号で除算し、時間的な光強度変化を除去した干渉信号を得る第6の工程と、をさらに含み、前記第4の工程は、前記第6の工程で得た時間的な光強度変化を除去した干渉信号をサンプリング取得することを特徴としている。
【0011】
正弦波状に変調した注入電流をレーザ光源に入力すると、レーザ光源からの光の波長だけでなく強度も時間と共に変化する。そこで、このレーザ光源の光強度変化を電気的な検出信号に変換し、別の干渉光から得られた干渉信号を当該検出信号で除算して、時間的な光強度変化を除去した干渉信号を得るようにすれば、被対象物の変位測定にとって不必要なレーザ光源の光強度変化の影響を、効果的に排除することができる。
【0012】
そして、このような作用効果は、前記レーザ光源の光強度変化を電気的な検出信号に変換する第2の光電変換手段と、前記第1の光電変換手段で得た干渉信号を前記第2の光電変換手段で得た検出信号で除算し、時間的な光強度変化を除去した干渉信号を得る割算器と、をさらに備えた請求項6のレーザ干渉変位測定装置でも実現できる。
【0013】
請求項3におけるレーザ干渉変位測定方法は、記第4の工程で、前記干渉信号に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、当該干渉信号の値をそれぞれサンプリング取得し、これらの各値から、前記干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、前記注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成すると共に、前記サンプリング取得した各信号から前記干渉信号の相を求め、前記被対象物の変位を測定することを特徴としている。
【0014】
この場合、注入電流は電流基準値を中心として正弦波状に変調され、レーザ光源の波長も、時間と共に正弦波状に変化する。ここで時間的な光強度変化を除去した干渉信号の値を、当該干渉信号に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、具体的には正弦波状変調の角周波数と時間が、それぞれωとtであるときに、cosωtの値が0,1/2,1,-1/2の時点でそれぞれS,S,S,Sとして取得すれば、簡単な演算処理によって、参照面から被対象物の表面までの離に関連した位相を求め、被対象物の変位を測定することが可能になる。また、サンプリングされた干渉信号の各値から、干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成することもできる。
【0015】
そして、このような作用効果は、前記干渉信号に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、当該干渉信号の値をそれぞれサンプリング取得し、これらの各値から、前記干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、前記注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成すると共に、前記サンプリング取得した各信号から前記干渉信号の相を求め、前記被対象物の変位を測定する信号処理手段を備えた請求項7のレーザ干渉変位測定装置でも実現できる。
【0016】
請求項4におけるレーザ干渉変位測定方法は、前記第4の工程で、前記変調振幅の値がπとなるようにフィードバック制御を行なう第7の工程をさらに含んだことを特徴としている。
【0017】
この場合、前記干渉信号の値S,S,S,Sに加えて、cosωtが-1のときの干渉信号の値Sを取得し、(S-S)/(S-S)の値が0になるように正弦波状変調の振幅の量をフィードバック制御すれば、変調振幅は相を求めるのに必要な条件である一定値(=π)となって、正確に被対象物の変位を測定することが可能になる。
【0018】
そして、このような作用効果は、前記変調振幅の値がπとなるようにフィードバック制御を行なう信号処理手段を備えた請求項8のレーザ干渉変位測定装置でも実現できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1のレーザ干渉変位測定方法及び請求項5のレーザ干渉変位測定装置によれば、注入電流の変調周波数が高くなっても、干渉信号を正しくサンプリング取得することが可能になり、従来よりも高速に被対象物の変位を正確に測定することができる。
【0020】
請求項2のレーザ干渉変位測定方法及び請求項6のレーザ干渉変位測定装置によれば、被対象物の変位測定にとって不必要なレーザ光源の光強度変化の影響を、効果的に排除することができる。
【0021】
請求項3のレーザ干渉変位測定方法及び請求項7のレーザ干渉変位測定装置によれば、簡単な演算処理によって定数A,Bを消去して、距離Pに関連した位相αを求め、被対象物の変位を測定することが可能になる。さらに、サンプリングされた干渉信号の各値から、干渉信号に含まれる変調振幅が一定となるように、注入電流の振幅を可変制御するフィードバック信号を生成することができる。
【0022】
請求項4のレーザ干渉変位測定方法及び請求項8のレーザ干渉変位測定装置によれば、変調振幅Zが位相αを求めるのに必要な条件であるZ=πの一定値となるため、正確に被対象物の変位を測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るレーザ干渉計を利用した変位測定方法および変位測定装置の好ましい実施例について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。装置の全体構成を示す図1において、1はフィゾー型の干渉光学系を構成するレーザ干渉計であり、このレーザ干渉計1は、レーザ光源である半導体レーザ10と、半導体レーザ10からの出射光を集光するレンズ21と、光路を形成するファイバ31~34およびファイバカプラ35と、ファイバ32の先端に連結され、被対象物Oの表面に対向して配置されるセルフォックレンズ22と、をそれぞれ備えている。前記ファイバ31~34は、いずれもその基端が光の分離・結合機能を有するファイバカプラ35に連結され、ファイバ31の先端が前記レンズ21に対向配置される一方で、ファイバ33,34の先端には光電変換手段であるフォトダイオード41,42がそれぞれ連結される。なお、この実施例では光路中に光ファイバ31~34を配設することにより、セルフォックレンズ22やフォトダイオード41,42などを自由な位置に配置できる柔軟な干渉光学系を構成しているが、ファイバ31~34を用いない干渉光学系であってもよい。
【0024】
本実施例におけるレーザ干渉計1は、半導体レーザ10からの出射光がレンズ21によりファイバ31の端面に集光され、当該ファイバ31を通してファイバカプラ35によりファイバ32,33へとそれぞれ分配される。ここで、ファイバ32を伝わるは参照面となるファイバ32の出射端面で一部が反射し、参照光となる。また、ファイバ32およびセルフォックレンズ22を通過した光は平行光となって被対象物Oの表面を照射し、この被対象物Oの表面からの反射光が物体光としてセルフォックレンズ22に戻る。ファイバ32,ファイバカプラ35およびファイバ34は、前記物体光と参照光との共通する伝送路となり、ファイバ34の端面に配置されたフォトダイオード41の検出面上に、これらの物体光および参照光が干渉するようになっている。一方、前記ファイバカプラ35による分配されたファイバ33の通過光は、別なフォトダイオード42の検出面上に達するようになっている。
【0025】
前記フォトダイオード41は、前記物体光と参照光との干渉光を検出面に取り込み、干渉信号S(t)を得る第1の光電変換手段に相当する。また別のフォトダイオード42は、ファイバカプラ35により分配された半導体レーザ10からの出射光の一部を検出面に取り込み、半導体レーザ10の時間的な光強度変化I(t)を表す検出信号を得る第2の光電変換手段に相当する。これらのフォトダイオード41,42で検出された各電気信号は、何れも後述する割算器43にそれぞれ入力される。
【0026】
51は、フォトダイオード41,42からの各検出結果に基づいて、半導体レーザ10の注入電流i(t)を制御するフィードバック制御装置である。このフィードバック制御装置51は、前記フォトダイオード41により検出される干渉信号S(t)を、時間的な光強度変化I(t)を表す検出信号で除算することにより、時間的な光強度変化I(t)の影響を除去した干渉信号SD(t)を出力する割算器43と、割算器43から出力される干渉信号SD(t)の位相αを求め、ファイバ32の出射端面と被対象物Oの表面との間の距離Pの変化、すなわち被対象物Oの変位量を算出すると共に、前記干渉信号SD(t)に含まれる変調振幅Zの変化を検出し、その変化に応じたフィードバック信号SFを生成する信号処理器44と、半導体レーザ10の発振波長が正弦波状に変化するような注入電流i(t)を生成し、かつ前記フィードバック信号SFにより、距離Pの変化に対して干渉信号SD(t)の変調振幅Zが一定に保たれるように、半導体レーザ10の注入電流i(t)の振幅aをフィードバック制御するフィードバック制御器45と、により構成される。
【0027】
なお、上記構成の変位測定装置において、レーザ干渉計1は、半導体レーザ10からの出射光と、被対象物Oの表面からの反射光との干渉光をフォトダイオード41で検出する一方で、前記半導体レーザ10の光強度変化を別なフォトダイオード42で検出できるあらゆる干渉光学系に適用できる。また、ここでの光電変換素子は、時間変化する光強度を短時間で測定できればよいので、フォトダイオード41,42のような追従性のよい単独の光電変換素子を用いるのが好ましい。
【0028】
次に、上記構成についてその動作原理を説明する。先ず、半導体レーザ10の発振波長を角周波数ωで正弦波状に変調するために、フィードバック制御器45は半導体レーザ10に対し次の数のような注入電流i(t)を印加する。
【0029】
【数1】
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【0030】
上式において、Iは電流基準値、aは振幅、tは時間であり、半導体レーザ10への注入電流i(t)は、時間tにより上限値I+aと下限値I-aの範囲で正弦波状に変化する。また、変調効率をβとすると、前記注入電流i(t)が与えられた半導体レーザ10の波長λ(t)は、次の数のように表され、これも時間tにより上限値λ+βaと下限値λ-βaの範囲で正弦波状に変化する。一例として、注入電流i(t)を80±1mA変化させた場合の、半導体レーザ10の波長λ(t)(ひいては位相)のシフト量は0.02nm程度である。
【0031】
【数2】
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【0032】
上記数において、λは中心波長である。半導体レーザ10は上式のように、波長λ(t)すなわち発振周波数が時間的に変化するが、その光出力強度にも時間的変化が生じている。この時間的な光強度の変化は被対象物Oの変位測定にとって邪魔になるので、後段のフィードバック制御装置51に設けられた割算器43で除去する。
【0033】
前記レーザ干渉計1において、注入電流i(t)が与えられた半導体レーザ10からレーザ光が出射されると、この出射光がレンズ21によりファイバ31の端面に集光され、ファイバカプラ35の内部でファイバ32,33にそれぞれ分配される。ファイバ33を通過する光は、そのままフォトダイオード42の検出面に達し、半導体レーザ10の時間的な光強度変化I(t)を示す検出信号に変換される。一方、ファイバ32を伝わる光は、ファイバ32の出射端面で一部が反射して参照光となるが、残りの光はファイバ32およびセルフォックレンズ22を通過し、平行光となって被対象物Oの表面に到達する。この被対象物Oの表面で反射した光は、物体光として参照光と共にセルフォックレンズ22からファイバ32を逆戻りし、ファイバ34を通過してフォトダイオード41の検出面上で干渉する。フォトダイオード41は、この干渉光を干渉信号S(t)に変換して出力する。
【0034】
フィードバック制御装置51を構成する信号処理器44は、セルフォックレンズ22から被対象物Oの表面に至る距離Pの変化を、フォトダイオード41で検出した干渉信号S(t)から測定する。但し、干渉信号S(t)の振幅には半導体レーザ10の時間的な光強度変化I(t)の影響を受けているため、信号処理器44における測定の前段階として、割算器43により干渉信号S(t)を時間的な光強度変化I(t)で除算し、時間的な光強度変化I(t)の影響を除去した干渉信号SD(t)を得る。この干渉信号SD(t)は、次の数で表わせる。
【0035】
【数3】
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【0036】
なお、上式においてAおよびBは定数である。また、Zは変調振幅、αは従来の位相であり、それぞれ次の数のように表わせる。
【0037】
【数4】
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【0038】
図2は、前記数における変調周波数成分Zcosωtの信号をグラフで示したもので、当該Zcosωtの値はZ~-Zの範囲を正弦波状に変化する。ここでのフィードバック制御装置51は、変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔(ωt=π/4毎)で、干渉信号SD(t)をサンプリング取得するのが好ましい。具体的には、図2に示すように、cosωt=0における干渉信号の値Sと、cosωt=1/2における干渉信号の値Sと、cosωt=1における干渉信号の値Sと、cosωt=-1/2における干渉信号の値Sと、cosωt=-1における干渉信号の値Sを各々検出する。このとき、干渉信号S~Sの値は、次のようになる。
【0039】
【数5】
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【0040】
ここで、Z=πのときには、S=S-S=2Bcosαとなり、S=S-S=2Bsinαとなるので、SとSの各値から定数Bを消去して位相αを求め、上記数の位相αと距離Pの関係から、被対象物Oの変位を測定することができる。また、前記変調振幅Zは、数4に示すように距離Pによって変化するため、距離Pが変化しても変調振幅Zの値が一定となるように(好ましくはZ=πとなって、信号処理器44により位相αが正確に求められるように)、信号処理器44は前記サンプリングされた干渉信号SD(t)の各値から、半導体レーザ10に対する注入電流i(t)の振幅aを可変制御するフィードバック信号Sを生成する。
【0041】
このフィードバック信号Sの生成手順は次のようになる。まず、サンプリングで検出した干渉信号の値S~Sを利用して、S=S-Sと、SSZ=S-Sの各値を算出する。SおよびSSZの各値は、上記数から次のように導き出せる。
【0042】
【数6】
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【0043】
次に、SSZ≠0であれば、Sの値をSSZの値で除算したフィードバック信号Sを得る。すなわち、フィードバック信号Sは次の数式のようになる。
【0044】
【数7】
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【0045】
したがって、フィードバック信号S=0となるように、半導体レーザ10の注入電流i(t)をフィードバック制御すれば、距離Pの変化に拘らずZ=πの関係が保たれて、前記SとSの各値から位相αを正しく算出することが可能になる。
【0046】
上記位相αの算出を可能にするフィードバック制御装置51の一例を、図3に示す。同図において、好ましい構成の信号処理器44は、変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で干渉信号SD(t)をサンプリング取得するサンプリング手段61と、このサンプリング手段61で取得した干渉信号の各値S~Sから位相αを求め、被対象物Oの変位量を算出する変位量算出手段62と、距離Pが変化しても変調振幅Zの値が一定となるように、半導体レーザ10に対する注入電流i(t)の振幅aを調整する注入電流調整手段63と、を備えている。
【0047】
より具体的には、サンプリング手段61は、半導体レーザ10の波長λ(t)を正弦波状に変調させる際のcosωtの値が0,1/2,1,-1/2,-1の時点(例えば、変調周波数の位相が0,π/4,π/2,3π/4,πの時点)で、干渉信号SD(t)の値をそれぞれ、S,S,S,S,Sとしてサンプリング取得するものである。また、変位量算出手段62は、前記SおよびSの各値から、S(=S-S)の値を算出する第1の減算手段65と、SおよびSの各値から、S(=S-S)の値を算出する第2の減算手段66と、SとSの各値から定数Bを消去して位相αを求め、上記数4の位相αと距離Pの関係から、被対象物Oの変位を算出する変位量演算手段67とを備えている。さらに、注入電流調整手段63は、前記SおよびSの各値から、S(=S-S)の値を算出する第3の減算手段68と、SおよびSの各値から、SSZ(=S-S)の値を算出する第4の減算手段69と、SSZが0でない時に、フィードバック信号S(=S/SSZ)の値を算出する割算手段70と、この割算手段70で得たフィードバック信号Sの値が0になるように、最適な振幅aの値を算出する振幅量演算手段71とを備えている。なお、第2の減算手段66と第4の減算手段69は同じ値(S-S)を算出するものであるため、共通の減算手段で構成してもよい。また、変位量演算手段67で得た被対象物Oの変位量は、表示手段,印刷手段または報知手段などに任意の形態で出力される。
【0048】
次に、本実施例の変位測定装置を利用した実験結果の一例を提示する。なお、実験では被対象物Oを擬似的に変位させるために、PZTなどの圧電素子を被対象物Oに取り付けた。また、使用した半導体レーザ10の中心波長λは690nm,光出力は25mWであった。ファイバ32の出射端面と被対象物Oの表面との間の距離Pを25mmにまで近づけた場合に、Z=πの関係が保たれる正弦波位相変調の周波数が、f=ω/2πの上限値となる。現在の実験では、上限変調周波数f=1.5MHz程度である。位相αの値は、前記サンプリングした干渉信号の値S~Sを利用して求められるので、測定時間は上限変調周波数fの3/8周期(0.25μSec)、すなわち周波数に換算すると、(8/3)×f=4MHzとなり、従来よりも遥かに短い時間で、被対象物Oの変位を正しく測定できることになる。
【0049】
前記距離Pが50mmのときに、Z=πとなる干渉信号SD(t)が得られるように、注入電流i(t)の振幅aを調整し、そのときフィードバック信号S=0になることを確認した。また、距離Pを40mm~60mmの範囲で変化させたときに、フィードバック制御によりフィードバック信号S=0が保たれることも確認した。
【0050】
実験では、被対象物Oに取り付けた圧電素子に対し、0~VまでV/8ずつ段階的に電圧を加えてゆき、距離Pにλ/16毎の変化を与え、位相αを0~2πの範囲で測定した。図4~図6は、距離Pが40mm,50mm,60mmのときの位相αの測定結果をそれぞれ示している。図中、破線は理論値で、プロット付きの実線が実験値である。実験値と理論値との差異から測定精度を求めた結果、距離P=50mmの場合は±10nm,距離P=40mmの場合は±18nm,距離P=60mmの場合は±20nmであった。
【0051】
実際は、1.5MHzの高い変調周波数と、変調振幅Zを一定とするフィードバック制御を行なうことにより、距離Pが20mm~100mmの位置にある被対象物Oの変位を、0.25μSecの短い測定時間で、10nmの高い精度で測定することが可能になる。
【0052】
以上のように、本実施例におけるレーザ干渉変位測定方法は、正弦波状に変調した注入電流i(t)をレーザ光源10に入力し、波長λ(t)を時間的に変化させながら当該レーザ光源10から光(コヒーレンス光)を発生させる第1の工程と、前記光を分割して被対象物Oの表面と参照面であるファイバ32の出射端面に各々反射させた後、被対象物Oの表面からの物体光とファイバ32の出射端面からの参照光とを合成して、干渉光を得る第2の工程と、前記干渉光を電気的な干渉信号S(t)に変換する第3の工程と、前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の1周期に対し前記第3の工程で得た干渉信号S(t)を一定間隔でサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して被対象物Oの変位を測定する第4の工程と、を含んでいる。
【0053】
またこの方法を実現するために、本実施例では、レーザ光源10からの光を分割して被対象物Oの表面とファイバ32の出射端面に各々反射させた後、被対象物Oの表面からの物体光とファイバ32の出射端面からの参照光とを合成して、干渉光を得る干渉光学系としてのレーザ干渉計1と、レーザ干渉計1により得られる干渉光を電気的な干渉信号S(t)に変換する第1の光電変換手段としてのフォトダイオード41と、レーザ光源10に正弦波状に変調した注入電流i(t)を与え、波長λ(t)が時間的に変化する光をレーザ光源10から発生させる変調電流生成手段としてのフィードバック制御器45と、前記正弦波状の変調周波数を基準として、当該変調周波数の1周期に対し一定間隔で前記干渉信号S(t)をサンプリング取得し、このサンプリング取得した信号を演算処理して被対象物Oの変位を測定する信号処理手段としての信号処理器44と、を備えたレーザ干渉変位測定装置を提供している。
【0054】
上記方法及び装置によれば、正弦波状に変調した注入電流i(t)をレーザ光源10に入力することで、レーザ光源10から発生する光の波長λ(t)も正弦波状に変化したものとなる。レーザ光源10からの光は、被対象物Oの表面とファイバ32の出射端面に各々反射して干渉し、この干渉光がフォトダイオード41によって電気的な干渉信号S(t)に変換されるが、レーザ光源10に入力する注入電流i(t)は、急激な立上がりや立下りのない正弦波状の変化を繰り返すため、注入電流i(t)の変調周波数が例えば1.5MHz程度にまで高くなっても、干渉信号S(t)を正しくサンプリング取得することができる。そのため、正弦波状の変調周波数を基準として、被対象物Oの変位する時間よりも短く、変調周波数の1周期に対し一定の間隔で干渉信号S(t)をサンプリング取得すれば、このサンプリング取得した複数の干渉信号S(t)の演算処理により、被対象物Oの変位を正しく測定できる。
【0055】
また、本実施例におけるレーザ干渉変位測定方法は、レーザ光源10の光強度変化I(t)を電気的な検出信号に変換する第5の工程と、前記第3の工程における干渉信号S(t)を第5の行程で得た検出信号で除算し、時間的な光強度変化I(t)を除去した干渉信号SD(t)を得る第6の工程と、をさらに含み、前記第4の工程は、第6の工程で得た時間的な光強度変化I(t)を除去した干渉信号SD(t)をサンプリング取得することを特徴としている。
【0056】
同様に、本実施例におけるレーザ干渉変位測定装置は、レーザ光源10の光強度変化I(t)を電気的な検出信号に変換する第2の光電変換手段としてのフォトダイオード42と、フォトダイオード41で得た干渉信号S(t)をフォトダイオード42で得た検出信号で除算し、時間的な光強度変化I(t)を除去した干渉信号SD(t)を得る割算手段としての割算器43と、をさらに備えている。
【0057】
この場合、正弦波状に変調した注入電流をレーザ光源10に入力すると、レーザ光源10からの光の波長λ(t)だけでなく強度も時間と共に変化する。そこで、このレーザ光源10の光強度変化I(t)をフォトダイオード42で電気的な検出信号に変換し、別のフォトダイオード41にて干渉光から得られた干渉信号を当該検出信号で除算して、時間的な光強度変化I(t)を除去した干渉信号SD(t)を得るようにすれば、被対象物Oの変位測定にとって不必要なレーザ光源10の光強度変化の影響を、効果的に排除することができる。
【0058】
また、本実施例におけるレーザ干渉変位測定方法は、注入電流i(t)が前記数のように表され、レーザ光源10の波長λ(t)が前記数のように表され、時間的な光強度変化を除去した干渉信号SD(t)が数のように表されるときに、前記第4の工程で、前記cosωtが0,1/2,1,-1/2のときの干渉信号SD(t)の値S,S,S,Sをそれぞれサンプリング取得し、これらの各値S,S,S,Sから干渉信号SD(t)に含まれる変調振幅Zが一定となるように、前記注入電流i(t)の振幅aを可変制御するフィードバック信号Sを生成すると共に、に含まれる定数A,Bを消去して、距離Pに関連した位相αを求め、被対象物Oの変位を測定することを特徴としている。
【0059】
同様に、本実施例におけるレーザ干渉変位測定装置は、前記cosωtが0,1/2,1,-1/2のときの干渉信号SD(t)の値S,S,S,Sをそれぞれサンプリング取得し、これらの各値S,S,S,Sから干渉信号SD(t)に含まれる変調振幅Zが一定となるように、前記注入電流i(t)の振幅aを可変制御するフィードバック信号Sを生成すると共に、前記定数A,Bを消去して前記位相αを求め、被対象物Oの変位を測定するような信号処理器44を備えている。
【0060】
この場合、注入電流i(t)は電流基準値Iを中心として正弦波状に変調され、レーザ光源の波長λ(t)も、λを中心波長として時間と共に正弦波状に変化する。ここで時間的な光強度変化を除去した干渉信号SD(t)の値を、当該干渉信号SD(t)に含まれる変調周波数の1周期に対し8分の1の間隔で、具体的にはcosωtの値が0,1/2,1,-1/2の時点でそれぞれS,S,S,Sとして取得すれば、簡単な演算処理によって定数A,Bを消去して、参照面から被対象物Oの表面までの距離Pに関連した位相αを求め、被対象物Oの変位を測定することが可能になる。また、サンプリングされた干渉信号SD(t)の各値から、干渉信号SD(t)に含まれる変調振幅Zが一定となるように、注入電流i(t)の振幅aを可変制御するフィードバック信号Sを生成することもできる。
【0061】
また、本実施例におけるレーザ干渉変位測定方法は、前記第4の工程で、前記cosωtが-1のときの干渉信号SD(t)の値Sをさらにサンプリング取得すると共に、(S-S)/(S-S)の値が0になるように前記振幅aを調整することによって、常にZ=πとするフィードバック制御を行なう第7の工程をさらに含んだことを特徴としている
【0062】
同様に、本実施例におけるレーザ干渉変位測定装置は、前記cosωtが-1のときの干渉信号SD(t)の値Sをさらにサンプリング取得すると共に、(S-S)/(S-S)の値が0になるように前記振幅aを調整することによって、常にZ=πとするフィードバック制御を行なうような信号処理器44を備えている。
【0063】
この場合、前記干渉信号SD(t)の値S,S,S,Sに加えて、cosωtが-1のときの干渉信号SD(t)の値Sを取得し、フィードバック信号S=(S-S)/(S-S)の値が0になるように、注入電流i(t)の振幅aの量をフィードバック制御すれば、変調振幅Zは位相αを求めるのに必要な条件である一定値(=π)となって、正確に被対象物Oの変位を測定することが可能になる。
【0064】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば注入電流i(t)を変化させることにより、その発振波長λ(t)が変化するものならば、半導体レーザ10以外の各種光源を利用することができる。また、割算器43としての機能を、信号処理器44に含ませてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の好ましい一実施例におけるレーザ干渉変位測定装置の全体構成を示す概略説明図である。
【図2】同上、位相変調信号の時間変化を示すグラフである。
【図3】同上、信号処理器の機能構成を示すブロック図である。
【図4】同上、距離P=40mmのときの、圧電素子への印加電圧と位相αとの関係を示すグラフである。
【図5】同上、距離P=50mmのときの、圧電素子への印加電圧と位相αとの関係を示すグラフである。
【図6】同上、距離P=60mmのときの、圧電素子への印加電圧と位相αとの関係を示すグラフである。
【図7】従来例を示す半導体レーザに対する変調信号の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 レーザ干渉計(干渉光学系)
10 レーザ光源
41 フォトダイオード(第1の光電変換手段)
42 フォトダイオード(第2の光電変換手段)
43 割算器(割算手段)
44 信号処理器(信号処理手段)
45 フィードバック制御器(変調電流生成手段)
O 被対象物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6