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明細書 :光回折格子素子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4649609号 (P4649609)
公開番号 特開2006-337769 (P2006-337769A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成18年12月14日(2006.12.14)
発明の名称または考案の名称 光回折格子素子の製造方法
国際特許分類 G02B   5/18        (2006.01)
FI G02B 5/18
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2005-163140 (P2005-163140)
出願日 平成17年6月2日(2005.6.2)
審査請求日 平成20年5月30日(2008.5.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】小野 浩司
【氏名】江本 顕雄
【氏名】川月 喜弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100091373、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 剛
【識別番号】100097065、【弁理士】、【氏名又は名称】吉井 雅栄
審査官 【審査官】竹村 真一郎
参考文献・文献 特開平10-082904(JP,A)
特開2001-147308(JP,A)
特開平10-161295(JP,A)
調査した分野 G02B 5/18、5/30
G02F 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
屈折率もしくは表面形状が周期的に変調され、複数の周期を持つ格子が多重に形成されている光回折格子素子を干渉露光法により製造する方法であって、回折格子を形成する3つの光波の偏光状態が楕円もしくは直線偏光で、楕円偏光の長軸と短軸の比が2以上であり、3光波のうち2光波の偏光の長軸のなす角が70度~110度、残る1光波の偏光の長軸のなす角が他の2光波と35度~55度、となっていることを特徴とする光回折格子素子の製造方法。
【請求項2】
前記光回折格子素子に含まれる周期構造として、基本波周期成分及びその高調波周期成分が同一素子内に含まれていることを特徴する請求項1記載の光回折格子素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光の分割機能を有し、伝播方向を制御できる素子に関し、4分割以上の多分割を可能にする光回折型の回折格子素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光回折格子素子は、光波の分岐、伝播方向の変換、集光分散、などが可能な素子として、光記録、光情報伝送などの光エレクトロニクス分野の受動素子として広範に使用されている。これまで、光回折格子素子の作成には、様々な高分子材料の利用が検討されてきた。代表的な作成方法としては、半導体集積回路などの作成に用いるフォトレジストを用いる方法である。フォトレジストを塗布した基板に、フォトマスクや干渉法によって周期的に強度変調された紫外線によって露光し、表面に凹凸を有する回折格子を形成し、これから金型を作成して複製することができる。また、光反応することによって体積変化や屈折率変化を引き起こすようなフォトポリマーを用いることによって、屈折率及び体積のいずれか、あるいは両方(位相)が変調された光回折格子素子を形成できる。光反応性高分子材料を用いた干渉露光による作成プロセスでは、通常正弦関数に近い位相形状(Δφ)を持った光回折格子素子が形成される。正弦波状回折格子の回折効率は、格子周期が波長に対して大きいか小さいかによって異なる理論が適用されるが、十分大きい領域(Raman-Nath回折領域)では、以下の式(1)によって与えられる。
【0003】
【数1】
JP0004649609B2_000002t.gif

【0004】
ここで、mは回折の次数を表している。(1)式は、例えば1次元の回折格子を考えたときに、その位相変調関数は、下式(2)で与えられる。
【0005】
【数2】
JP0004649609B2_000003t.gif

【0006】
(2)式を展開し級数表現したものが(1)式に対応している。
【0007】
ここで、Λは格子の周期を表している。光回折格子素子は、光を分波する機能が利用されるが、例えば、±1次回折光を発生させ、2光波に分ける機能が必要な場合であっても、(1)式に示すように他の高次回折光が発生し、光の利用効率が落ちるなどの問題点があった。また、単純に2光波干渉を使って作成する光回折格子素子では、2つ以上(例えば4光波)に等分割するための多分岐光回折格子素子の作成は困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から使用されてきた、光回折格子素子は、フォトポリマー等を使用し、2光波干渉法によって正弦波状の屈折率の周期的変調や表面レリーフ構造を形成するか、金型を用いてプラスチック材料から大量に複製したものを用い、光波の伝播方向を制御するものであった。これらの光回折格子素子は、光ディスク用ヘッドの光学素子や、デジタルカメラ用CCD素子用の光学的ローパスフィルターなどとして用いられているが、より高機能な用途を考えると、例えば±1次回折光を利用する従来の光回折機能だけでなく、±2次回折光までを制御する機能を有する光回折格子素子の実現が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
屈折率もしくは表面形状が周期的に変調され、複数の周期を持つ格子が多重に形成されている光回折格子素子を干渉露光法により製造する方法であって、回折格子を形成する3つの光波の偏光状態が楕円もしくは直線偏光で、楕円偏光の長軸と短軸の比が2以上であり、3光波のうち2光波の偏光の長軸のなす角が70度~110度、残る1光波の偏光の長軸のなす角が他の2光波と35度~55度、となっていることを特徴とする光回折格子素子の製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記光回折格子素子に含まれる周期構造として、基本波周期成分及びその高調波周期成分が同一素子内に含まれていることを特徴する請求項1記載の光回折格子素子の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、複数の周期を持つ格子を多重に形成することによって高次の回折光強度も制御可能な高機能光回折格子素子を容易に形成可能となる。
【0013】
さらに、本発明では、請求項2に記載されているように請求項1記載の周期構造を高調波にすることによって特に±1次回折光だけでなく±2次回折光を制御可能な高機能光回折格子素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を図面を用いて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
回折格子素子では、どの次数の回折光がどの程度の強度で出現するかは、格子周期のフーリエ変換成分(任意の周期関数を複数の正弦関数の和に分解すること)に依存している。高次の回折光制御も含めた多分岐回折格子素子を形成するためには、このフーリエ変換成分を制御することになるが、従来技術の延長では、これらの精密な制御は困難である。
【0016】
従来の±1次回折光を利用した光波分割素子ではなく、±2次回折光まで含めた多分割回折格子素子を形成するために、本発明による光回折格子素子は、周期構造として、複数個の周波数成分を含んでいる。
【0017】
制御された多分岐回折格子素子を実現するために、本発明では、例えば、制御された基本波周期成分及びその高調波周期成分を同一素子内に含んでいる。さらに、±1次回折光、±2次回折光の4つの回折光の光強度を同一化もしくは制御するためには、第2高調波を同一素子に含ませることが必要である。
【0018】
干渉露光法によって、位相変化量が等しく周期が異なる2格子を同時形成するためには、2光束干渉露光では形成できず、制御された多光束干渉露光を行う必要がある。
【0019】
例えば図2に示すような互いにコヒーレントな3光束による干渉を考える。干渉は、(A,B)、(B,C)、(A,C)の3つの独立した回折格子ベクトルを発生させる形で形成される。厳密には、これら3つの回折格子ベクトルの方向は異なっているが、格子厚さ(感光材料の厚さ)が格子周期Λに比べて十分に薄ければ同一方向となる。格子周期は干渉縞のピッチで決まり、下式(3)で与えられる。
【0020】
【数3】
JP0004649609B2_000004t.gif

【0021】
ここで、λは波長であり、θは干渉する2光波の交差角である。(3)式より、格子周期は、交差角が小さくなると大きくなる。上記の3つの回折格子ベクトルの方向を一致させるためには、格子周期を十分大きくする必要があり、通常の記録波長(250mm~800mm)及び感光材料の厚さ(数百nm~数百μm)を考慮すると、交差角は15度程度以下が望ましい。
【0022】
さらに、4分岐素子を形成するためには、基本波周波数の振幅と第2高調波の振幅を一致させて記録する必要がある(図3)。このような条件を満足するため、鋭意設計した結果、3光波の強度比を、1:(0.8~1.2):(1.2~1.6)とし、3光波の偏光状態が楕円偏光もしくは直線偏光であって、2光波の偏光の長軸のなす角が70度~110度、残る1光波の偏光の長軸のなす角が他の2光波と35度~55度とすることによって実用上満足される4分割光回折格子素子の形成が可能であることを見出した。
【0023】
上記設計に基づいて図2に示す3光束干渉露光法によって、回折格子を形成すると、その断面は、図1に示す形態となり、屈折率変調及び形状変調で決まる位相変調の、回折格子ベクトル方向の断面形状が、高さの異なる2種類からなり、それが交互に現れ、図1に定義する形状パラメーターにおいて、TがTの0.8~1.2倍、wがwの1.1~1.6倍、hがhの2.0~3.0倍の範囲となっている(即ち、高さが低い方のピーク形状の頂点部同士の間隔Tが高さが高い方のピーク形状の頂点部同士の間隔Tの0.8~1.2倍、高さが高い方のピーク形状の幅wが高さが低い方のピーク形状の幅wの1.1~1.6倍、高さが高い方のピーク形状の高さhが高さが低い方のピーク形状の高さhの2.0~3.0倍となっている。)。
【0024】
上記設計による多分岐光回折格子素子は、例えば、光照射によって屈折率変化、物質移動、体積変化、などを生じる材料(光反応性材料)を用いることによって作成できる。このような材料について本発明では特に限定するものではなく、一般的なフォトポリマー材料やフォトレジスト材料などの有機材料を用いることができる。また、レジスト材料などに所望の形成を形成し、金型を作成した後、射出成型などによってプラスチック回折格子を量産する方法が行われているが、本発明においても有効である。
【0025】
上記の光反応性材料を溶解する溶媒、濃度及び溶解方法は特に限定されず、用いる基板や乾燥時間などによって適宜選択される。溶液を均一に塗布する方法としては、スピンコート法、グラビアコート法、コンマコート法などが考えられるが、特に限定されるものではなく、必要とされる面積、基板形状、精度などによって適宜選択される。基板は透明基板であれば特に限定されるものではなく、回折素子が使われるシステムなどに適した基板を用いることができる。このような基板としては、各種ガラス、石英、などの無機材料、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネイト、ノルボルネンなどの脂環式系高分子、セルロース系高分子、ポリエステル系高分子、などの有機材料を例示できる。基板の形状は特に限定するものではなく、回折素子が用いられるシステムに合わせて自由に選ぶことができる。また、光反応性材料厚さも得に限定するものではなく、回折効率などシステムの要請によって適宜選択できる。
【実施例】
【0026】
本発明の具体的な実施例について図面を用いて説明する。
【0027】
光反応性モノマーとしてNorland Adhesive 65 (NOA65-trimethylopropane diallyl ether, trimethylolpropanetristhiol, and isophorone diisocyanate ester)を、高分子マトリックスとしてPoly(methyl methacrylate) (PMMA)を、可塑剤としてEthylcarbazole (ECZ)を用いた。NOA65:PMMA:ECZ=7:1.5:1.5として混合し、クロロホルムに溶解してガラス基板上にスピンコートして約2μmの厚さの光反応性材料フィルムを得た。この塗布面に、He-Cdレーザー(波長:325nm)の光を2つのビームスプリッターにより3つに分け、図2の実験配置図に従って干渉し照射した。ビームの交差角は、θ=2.3°であり、このときの、格子周期は、基本波が約8μm、第2高調波が4μmであった。また、3光束のトータルの照射エネルギーは350mJ/cmであり、照射強度の比は1:1:1.4となるようにした。また、偏光は、3光波の内の2光波は互いに直交する直線偏光、残りの1光波はこれらと45度の方向の直線偏光とした。
【0028】
回折格子形成を行った後、表面の形状を原子間力顕微鏡で観察した結果、図4に示すように、理論から予想される形状とよく一致していることがわかった。形成された光回折格子素子にHe-Neレーザーを入射し、回折光の観察をした結果図5に示すように、±1次回折光、±2次回折光の強度はほぼ一致し、3次回折光より高次の回折光は、ほとんど発生せず、4分岐の回折素子として機能していることが実証された。
【0029】
以下、比較例について説明する。
【0030】
[比較例1]
光反応性モノマーとしてNorland Adhesive 65 (NOA65-trimethylopropane diallyl ether, trimethylolpropanetristhiol, and isophorone diisocyanate ester)を、高分子マトリックスとしてPoly(methyl methacrylate) (PMMA)を、可塑剤としてEthylcarbazole (ECZ)を用いた。NOA65:PMMA:ECZ=7:1.5:1.5として混合し、クロロホルムに溶解してガラス基板上にスピンコートして約2μmの厚さの光反応性材料フィルムを得た。この塗布面に、He-Cdレーザー(波長:325nm)の光を2つのビームスプリッターにより3つに分け、図2の実験配置図に従って干渉し照射した。ビームの交差角は、θ=20°とした。また、3光束のトータルの照射エネルギーは350mJ/cmであり、照射強度の比は1:1:1.4となるようにした。また、偏光は、3光波の内の2光波は互いに直交する直線偏光、残りの1光波はこれらと45度の方向の直線偏光とした。
【0031】
形成された光回折格子素子にHe-Neレーザーを入射し、回折光の観察をした結果、角度多重に起因する回折光が観察され、4分岐光回折格子素子として機能していなかった。
【0032】
[比較例2]
光反応性モノマーとしてNorland Adhesive 65 (NOA65-trimethylopropane diallyl ether, trimethylolpropanetristhiol, and isophorone diisocyanate ester)を、高分子マトリックスとしてPoly(methyl methacrylate) (PMMA)を、可塑剤としてEthylcarbazole (ECZ)を用いた。NOA65:PMMA:ECZ=7:1.5:1.5として混合し、クロロホルムに溶解してガラス基板上にスピンコートして約2μmの厚さの光反応性材料フィルムを得た。この塗布面に、He-Cdレーザー(波長:325nm)の光を2つのビームスプリッターにより3つに分け、図2の実験配置図に従って干渉し照射した。ビームの交差角は、θ=2.3°であり、このときの、格子周期は、基本波が約8μm、第2高調波が4μmであった。また、3光束のトータルの照射エネルギーは350mJ/cmであり、照射強度の比は1:1.5:1.8となるようにした。また、偏光は、3光波の内の2光波は互いに直交する直線偏光、残りの1光波はこれらと45度の方向の直線偏光とした。
【0033】
形成された光回折格子素子にHe-Neレーザーを入射し、回折光の観察をした結果、±1次、±2次の回折光強度が一致しないだけでなく、さらに高次の回折光も観察され、制御された4分岐光回折格子素子とはなっていなかった。
【0034】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の格子の位相の断面図である。
【図2】本発明に係わる光回折格子素子形成の光学系の模式図である。
【図3】基本波(a)と第2高調波(b)の振幅が等しい場合の合成格子形状(c)である。
【図4】実施例における形成された格子の原子間力顕微鏡での観察結果(上)と理論から予測された計算結果(下)である。
【図5】実施例において作成された光回折格子素子の回折光の観察結果である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図1】
3
【図5】
4