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明細書 :マイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719877号 (P4719877)
公開番号 特開2007-002273 (P2007-002273A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
公開日 平成19年1月11日(2007.1.11)
発明の名称または考案の名称 マイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置
国際特許分類 C23C   4/12        (2006.01)
H05H   1/30        (2006.01)
FI C23C 4/12
H05H 1/30
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2005-180539 (P2005-180539)
出願日 平成17年6月21日(2005.6.21)
審査請求日 平成20年5月15日(2008.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】安井 利明
個別代理人の代理人 【識別番号】100082773、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 肇
【識別番号】100149320、【弁理士】、【氏名又は名称】井川 浩文
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開2003-236338(JP,A)
特開2005-089814(JP,A)
特開2004-349199(JP,A)
国際公開第2003/098980(WO,A1)
特表平11-506805(JP,A)
調査した分野 C23C 4/12
H05H 1/30
特許請求の範囲 【請求項1】
プラズマ形成ガスと溶射粒子を空洞共振器の中心に据えられた中空アンテナを通じてその先端に供給し、空洞共振器に投入したマイクロ波でアンテナ先端に強電場を生成させることによりプラズマを発生させ、その熱でもって溶射粒子を溶融し、下流に置かれた基材に吹き付けることにより溶射膜を形成する製造方法。
【請求項2】
中空アンテナ内から作動ガスとともにエアロゾル化した溶射粒子を供給することを特徴とする請求項1に記載の溶射法。
【請求項3】
外導体である空洞共振器と、この空洞共振器の中心に据えられた耐熱性および熱伝導性に優れた金属で構成された内導体である中空アンテナとを備え、前記中空アンテナを通じてその先端にプラズマ形成ガスを供給するとともに、前記空洞共振器に投入したマイクロ波で前記中空アンテナ先端に強電場を発生させることによりプラズマを発生させることを特徴とするマイクロ波プラズマトーチ。
【請求項4】
さらに、前記中空アンテナを囲むようにガラス管を設置してなることを特徴とする請求項3に記載のマイクロ波プラズマトーチ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置に関する。

【背景技術】
【0002】
金属やセラミックスの厚い膜を高速で成膜する方法としては一般には溶射法が知られている。溶射法は主に溶射原料を融解し、当該融解溶射原料を高速で基材にぶつけて堆積させる方法である。溶射法を用いれば一般に数μm~数mmの厚膜作製が可能である。溶射法としては、直流放電もしくは高周波放電を用いるプラズマ溶射は使用されているが、マイクロ波プラズマを用いたプラズマ溶射は実用化されていない。
【0003】
一方、マイクロ波を用いたプラズマトーチは、5kW以上の大電力のものは溶解炉用として、空洞共振器の中実のアンテナを用い、その周辺にガスを供給するため、アンテナ先端の下流にしか溶射粒子を供給できず。1.5kW以下の小電力のマイクロ波プラズマトーチは、発光分析装置に利用されている(特許文献1参照)。当該報告では、分析のためにトーチ先端へ溶液試料を投入しているが、溶射のように固体粉末で供給しているものはない。
【0004】
従来のマイクロ波によるプラズマ生成は、作動ガスをトーチ近傍から供給するため溶射粒子を供給することは困難であったためマイクロ波放電を用いたプラズマ溶射は実用化されていない。
【0005】
しかし、マイクロ波プラズマにより溶射を行う試みが全くなされていなかったわけではない。方形空洞共振器内にガラス管を設置し、作動ガスと共に溶射粉末をガラス管内に投入して溶射が試みられている(非特許文献1参照)。しかし、当該報告では、窒素ガスを用いて溶射を行っているが、プラズマの温度が300℃と低く、錫のような低融点材料での溶射しか報告されていない。高温が得られないため市場性は低いと考えられる。
【0006】

【特許文献1】特開平09-147790号公報
【非特許文献1】P.Mavromatidis,A.Shaw,A.I.Al-Shamma’s,J.Lucas and W.Lucas, Journal of Materials Processing Technology ,Vol.153—154(2004),294-299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、プラズマ溶射法では、直流放電もしくは高周波放電が用いられていたが、マイクロ波放電を用いて行うことは困難であった。
【0008】
本発明の目的は、マイクロ波プラズマトーチ及びそれを用いたマイクロはプラズマ溶射法により、供給した固体の溶射原料粉末を加熱溶融し、加速し、皮膜を形成する方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるマイクロ波プラズマトーチは、プラズマ形成ガスを空洞共振器の中心に据えられた中空アンテナを通じてその先端に供給し、空洞共振器に投入したマイクロ波でアンテナ先端に強電場を生成させることによりプラズマを発生させる装置である。
【0010】
さらに詳細には、中空アンテナは耐熱性と熱伝導性に優れた金属管で作られており、先端に強電場を生成することにより、局所的な絶縁破壊を起こし、高温プラズマの生成が可能であるマイクロ波プラズマトーチである。これらは、アンテナ材料としては、W-Cu合金を使用できるがMoやWなどの高融点材料で製作されたパイプの外側を金など電気伝導性が良い材料で被覆したものも使用できる。
【0011】
本発明によるマイクロ波プラズマ溶射装置は、前記の中空アンテナ先端へエアロゾル化した溶射粒子を供給し、アンテナ先端で生成しているプラズマによって溶射粒子を溶融し、下流に置かれた基材に吹き付けることにより溶射皮膜を形成する装置である。このエアロゾルの生成のために、溶射粒子としては数μm以下の粒子を用い、これをプラズマ形成ガスで噴霧することによりエアロゾルを生成する。
【0012】
中空アンテナを囲むようにガラス管を設置し、その内部にプラズマ制御ガスを流すことにより、熱的ピンチによりプラズマの安定を図ることができるうえ、アンテナを空冷することができる。

【発明の効果】
【0013】
本発明によるマイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、中空アンテナ先端へエアロゾル化した溶射粒子をプラズマ形成ガスと共に投入し、マイクロ波プラズマによる加熱・溶融よって溶射が可能であるため、1kW以下の低電力でも溶射が可能である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のマイクロ波プラズマトーチについて説明する。
【0015】
本発明のマイクロ波プラズマトーチは、プラズマ形成ガスを空洞共振器の中心に据えられた中空アンテナを通じてその先端に供給し、空洞共振器に投入したマイクロ波でアンテナ先端に強電場を生成させることによりプラズマを発生させる装置である。
【0016】
空洞共振器は、マイクロ波の入射ポートとプラズマ噴出口を備えており、その内部に中空アンテナが設置される。円筒形空洞共振器(例えば、内径120mm)を用い、その中心軸上に中空アンテナ(例えば、外径6mm)を設置することにより、円筒形空洞共振器を外導体、中空アンテナを内導体とする半同軸型共振器構造を成している。この内径と外径の比及び円筒形空洞共振器の長さを調整することにより、アンテナ先端での強電場の発生を制御できる。また、プラズマ噴出口がある円筒形空洞共振器底面と中空アンテナの先端との間隙長さを調整することにより強電場の発生を制御できる。この強電場によりプラズマ形成ガスの絶縁破壊が容易になる。
【0017】
中空アンテナは耐熱性と熱伝導性に優れた金属管で作られており、先端に強電場を生成することにより、局所的な絶縁破壊を起こし、高温プラズマの生成が可能であるマイクロ波プラズマトーチである。これらは、アンテナ材料としては、W-Cu合金を使用できるがMoやWなどの高融点材料で製作されたパイプの外側をAuなど電気伝導性が良い材料で被覆したものも使用できる。
【0018】
中空アンテナとしては、マイクロ波入射ポート側ではインピーダンス整合をとるためにその外径を太くし、アンテナ先端では強電場を発生させるために細くすることが望まれる。このため、多段構造やテーパー構造をもつアンテナを使用することが可能である。また、プラズマが生成されるアンテナ先端近傍でのみを耐熱性をもった材料(例えばW-Cu合金)とし、それ以外は電気伝導性の良い材料(例えばCu-Zn合金)で製作することも可能である。
【0019】
プラズマ形成ガスを窒素とした場合、高流量・大電力でマイクロ波プラズマトーチを動作させた場合、溶射粒子をプラズマ形成ガスに投入した場合などにおいて、プラズマが不安定になることがある。中空アンテナの周りにガラス管を設置し、これにプラズマ制御ガスを流すことにより、外周を冷やされたプラズマの熱ピンチにより安定化することができる。このガラス管としては、マイクロの伝送に影響を及ぼさない石英ガラス管を使用することが望ましい。
【0020】
本発明のマイクロ波プラズマ溶射装置について説明する。
【0021】
プラズマ形成ガスにより数μm以下の溶射粒子をエアロゾル化させ、空洞共振器の中心に据えられた中空アンテナ先端に供給する。マグネトロンで発生したマイクロ波は導波管を通じて円筒形の空洞共振器に投入される。空洞共振器には中空のアンテナ棒がその中で最も強電場が生成するような位置に設置される。アンテナ棒の先端にエアロゾル化した粒子とガスが供給され、プラズマが発生する。このプラズマの熱でもって溶射粒子は加熱・溶融され、ガスの気流に乗って下流に置かれた基材に吹き付けられ、皮膜を形成する。

【実施例1】
【0022】
プラズAr流量15L/min、マイクロ波電力1kW以下の実験条件で、発光分光測定からアンテナ先端下流のプラズマにおいて1000℃を超える温度のプラズマが得られていた。熱電対を用いた間接的な測定でも1000℃近い温度であることが確認されており、溶射の可能な高温度場が得られている。

【実施例2】
【0023】
本発明の方法で得られた溶射法において、溶射膜を形成することができることを見出した。粒径3μmのAl粒子を用い,Ar流量15L/min、マイクロ波電力1kW以下の実験条件で、SS400基材上に溶射を行ったところ、約4分間で約200μmの皮膜を得ることができた。またその皮膜堅さは、バルクの硬さとほぼ同等であった。
また、アパタイトの一種である燐酸カルシウム粉末を用いた実験では、Ar流量15L/min、マイクロ波電力1kW以下の実験条件で約4分間の溶射で200μmの膜が得られた。この結果、1kW以下の低電力で金属及びセラミックスの溶射にマイクロ波プラズマを溶射に用いることができることが示された。


【産業上の利用可能性】
【0024】
上述の装置は、マイクロ波プラズマトーチとして高温の熱プラズマ熱源として利用可能であると共に金属やセラミックの溶射装置として利用可能である。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明におけるマイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置を示す図である。
【図2】本発明におけるプラズマ制御ガスを用いたマイクロ波プラズマトーチ及びマイクロ波プラズマ溶射装置を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
101: 空洞共振器
102: 中空アンテナ
103: マイクロ波入射ポート
104: 導波管
105: プラズマ噴出口
106: プラズマ形成ガス
107: 溶射粒子
108: プラズマ制御ガス
109: ガラス管
110: プラズマ
111: マイクロ波
112: 基材



図面
【図1】
0
【図2】
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